イングリッシュ・オープニングの創生(13) 

(by Yamagishi, edit ayu)

2005年02月15日

イングリッシュ・オープニングの創生(13)

第2章 20世紀のイングリッシュ・オープニング(7)

アリョーヒンの指し方

これまでの試合から黒は白のセンター進攻を遅らせること
はできても阻止することはできないことが分かりました。シ
シリアン・ディフェンスでは黒は一般に d6 のバックワード・
ポーンを d5 と突いて白の e 筋のポーンと相殺できれば
形勢互角にできます。しかしイングリッシュ・オープニング
の白は同様の方針はとれません。それは白の立場として
ドローっぽくなるのでは不満足だからです。従って黒の e
筋のポーンと交換するもっと強力な手が求められました。
そしてついに早期にポーンを f4 と突く手が最も効果的で
あることが分かってきました。

これは必ずしも新しい考え方ではありません。以前に紹介
したようにワイヴィル(Wyvill)が試みています。しかし彼は
ポーンを e3 と突きキング側ナイトを e2 に置いてから f4 と
突いていました。これは現代の感覚からすると手間がかか
りすぎています。

【第7局】アリョーヒン(A.Alekhine) − タラシュ(S.Tarrasch)
ウィーン、1922年

  1.c4 e5 2.Nc3 Nc6 3.g3 g6 4.Bg2 Bg7 5.d3 Nge7 6.f4

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現在(1950年頃)ではポーンを d4 と突くよりも、f4 と突いて
黒のセンターを破壊する方が強力であると考えられています。

  6...d6 7.Nf3

新しい指し方の 7.Nh3 については次回に紹介します。

  7...O-O 8.O-O h6 9.e4 f5 10.Nd5

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この戦型のポイントとなるこの手は、一番最初のスタントン
対サン・タマン戦で既にスタントンにより試みられています。
違いはアリョーヒンがポーンを交換する前にナイトを d5 に
跳ねたのに対し、スタントンはセンターの緊張を解消してか
らナイトを跳ねたことです。アリョーヒンの手法はよりダイナ
ミックな指し方です。

  10...Nxd5 11.exd5 Nd4 12.fxe5 Nxf3+ 13.Bxf3 dxe5
  14.Be3 Bd7 15.Qb3

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クィーンとビショップで b7 の地点に圧力をかけるのは19
世紀に指されていた指し方の二つ目の特徴です。

  15...Qc8 16.c5 Kh7 17.Qc4 g5 18.d4

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  18...Qe8

18...e4 とポーンを突くのは 19.Bg2 で黒のポーンが動けな
くなります。さらに白は準備してから g4 とポーンを突いて
黒のポーンを破壊することができます。

  19.c6 bxc6 20.dxc6 Be6 21.d5 Bg8 22.Bg2

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  22...Kh8

22...e4 なら 23.g4 です。

  23.Rae1 Qg6 24.b4 Rfd8 25 Rd1 f4 26.Bf2 Bh7 27.Rfe1

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  27...Qc2

クィーンの交換は白を利するだけです。替わりに 27...Qh5
は 28.d6 f3 29.g4 です。恐らく 27...Qf7 と引いて白の
28.d6 を阻止しながら 28...f3 を狙うのが最善だったでしょう。

  28.Qxc2 Bxc2 29.Rd2 Ba4 30.d6!

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中央突破を図ります。ここから興味深い戦いが展開されます。

  30...Rxd6 31.Rxd6 cxd6 32.c7 Rc8 33.Rc1 Bd7 34.Bb7 e4

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  35.Bxe4!

35.Bxc8 とルークを取るのは 35...Bxc8 36.Rd1 Bf8
37.Bc5 e3! となってあまりはっきりしません。本譜の方が
簡明です。

  35...d5! 36.Bxd5 Be5 37.Re1 fxg3 38.Rxe5 gxf2+
  39.Kxf2 Rxc7 40.Re7 Rc2+ 41.Ke3 Bb5 42.Rxa7 Rxh2
  43.a4

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  43...Bf1

43...Rh3+ は 44.Kd4 Ra3 45.Ra8+ の後 46.axb5 とビショ
ップを取られます。

  44.b5 Rb2 45.Kd4

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  45...g4

タラシュはビショップと引き換えに白の2個のポーンを取る
予定でしたがうまくいきません。45...Bxb5 の後 46.Kc3 Rb1
47.Rb7 Rc1+ 48.Kd2 で白の必勝形です。

  46.Kc3 Rb1 47.Be4 Rc1+ 48.Kd2 Rc4 49.b6 Rxe4
  50.b7 Rb4 51.Ke3 Bc4 52.Ra8+ Kg7 53.b8=Q Rxb8
  54.Rxb8 h5 55.Rb4 Bd5 56.a5 g3 57.a6 1-0

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本局に於いてアリョーヒンは広い陣地の確保自体が優勢
につながるだけでなく、現代のマスターには柔軟性が要求
されていることも示してくれました。それゆえに、複雑な戦い
や駒の交換の後の 45 手目の後で彼は非常に微差の有利
にもかかわらず着実に勝利をものにすることができました。

投稿者 yamagishi : 16:04 | コメント (0)