イングリッシュ・オープニングの創生(2) 

(by Yamagishi, edit ayu)

2005年01月12日

イングリッシュ・オープニングの創生(2)

第1章 19世紀のイングリッシュ・オープニング(2)

「1851年ロンドン大会で指されたイングリッシュ・オープニング」

1851年の大会に参加した英国の選手たちによってイング
リッシュ・オープニングが指されたということは、一人の傑出
した選手によって「派」が創出されることもあり得るということ
を示しています。本局はオープニングの一歩前進と考えるこ
とができます。というのはスタントンが以前のシステムの本質
を維持しつつ全く別の新しい着想を導入したからです。

【第2局】スタントン(H.Staunton) − ホルヴィッツ(B.Horwitz)
ロンドン、1851年

  1.c4 e6 2.Nc3 f5 3.g3 Nf6 4.Bg2 c6 5.d3 Na6 6.a3

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ここまでの展開は現代(1950年頃)の定跡から見ると奇異に
写ります。しかし現代の視点で批評するのが目的ではあり
ません。我々の目的は当時の定跡理論に照らして局面を
分析することにあります。今日では多分 6.e4 と突くでしょう。

  6...Be7 7.e3 O-O 8.Nge2 Nc7

ホルヴィッツはこの手を常用していました。「過剰防護
(overprotection)」はニムゾヴィッチ(Nimzovich)だけの発明
ではなかったのです。

  9.O-O d5 10.b3 Qe8 11.Bb2

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  11...Qf7

本局に特徴的なセンターでの慎重な指し回しは現代でも
良く見られるものです。しかし白が自陣を強化する手がまだ
あるのに対し、黒にはこれ以上強化する手が見当たりませ
ん。従って黒はセンターで 11...e5 と戦端を開くべきでした。
もし 12.d4 または 12.f4 とくれば 12...e4 と突き越すことが
できました。白が他の手を指すならば黒は ...Qh5 で、ダッチ・
ディフェンスと同様の攻撃態勢をしきます。

  12.Rc1 Bd7 13.e4!

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スタントンは黒が 13...Rad8 と備える前にセンターで行動を
開始した方が良いと判断しました。

  13...fxe4

13...e5 ならば 14.exd5 cxd5 15.cxd5 Ncxd5 16.Nxd5 Nxd5
17.Bxe5 でポーン得になります。(訳注 17...Bxa3 でポーン
を取り返せるようです。)

  14.dxe4 Rad8 15.e5 Nfe8

15...Ng4 には 16.Nf4 Nxe5 17.cxd5 exd5 18.Nxd5 (18...cxd5
なら 19.Rxc7) が一番簡明です。

  16.f4

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  16...dxc4

この手はセンターを放棄するので指したくないが、16...Bc8
としても 17.cxd5 Nxd5 18.Nxd5 cxd5 19.Nd4 で白有利です。

  17.bxc4 Bc5+ 18.Kh1 Be3 19.Rb1

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  19...g6

敗着です。f6 を弱めてしまいました。d6 の弱点とあいまって
致命的です。

  20.Qb3 Bc8 21.Ne4 Bb6 22.Rbd1 Na6 23.Qc3 Rxd1
  24.Rxd1 Nc5 25.Nd6 25...Qc7

この手では 25...Na4 26.Qc2 Nxd6 27.Qxa4 Nf5 と交換して
圧力を弱める方が優ります。

  26.Qc2 Ng7 27.g4 Qe7 28.Bd4 Qc7 29.a4 Na6
  30.c5 Ba5 31.Qb3 b6 32.Ne4 bxc5 33.Nf6+

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スタントンの卓越した技量が良く現れています。優勢なキン
グ側で攻撃をかける前に、あらかじめ c5 のポーンを犠牲に
してクィーン側での黒の反撃を封じています。

  33...Kh8 34.Qh3!

クィーンとナイトのコンビはまたたくまに攻撃態勢を整えて
しまいました。

  34...Ne8 35.Ba1

クィーン側の黒のポーンはバラバラになっているので白の
攻撃をしのげる可能性はほとんどありません。

  35...Nxf6 36.exf6 Kg8 37.Be5 Qb7 38.Be4 Qf7
  39.Ng1 Bd8 40.g5 Bb7 41.Nf3 Re8 42.Bd6 Bxf6

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  43.gxf6 Qxf6 44.Ng5 Qg7 45.Be5 Qe7 46.Bxg6 1-0

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理詰めで指された本局においてポジッショナル・プレイの
新要素、即ち両側フィアンケットが出現しました。これが単
なる思い付きで指されたのではないことは、白の両ビショッ
プ展開の後のポーンの形に注目すれば明らかです。

中盤戦におけるスタントンの技量も注目に値します。相手の
片側での反撃を封じてから反対側の攻撃に向かう彼の戦い
方を見ると、70年後にカパブランカによって典型的に示され
た戦略を連想します。

投稿者 yamagishi : 19:41 | コメント (0)