イングリッシュ・オープニングの創生(6) 

(by Yamagishi, edit ayu)

2005年01月25日

イングリッシュ・オープニングの創生(6)

第2章 20世紀のイングリッシュ・オープニング(1)

19世紀の後半においてはイングリッシュ・オープニングは
めったに指されませんでした。シュタイニッツ(Steinitz)は
復活させようと少し試みました。ツーケルトルト(Zukertort)、
さらにはその後もメーソン(Mason)が同様のことを行いまし
た。しかし後の二人はクィーンズ・ギャンビットの有利な型
に転移させる手段として用いていました。

20世紀の初頭には復活に向けての更なる試みが行われ
ました。特にブレーメンではしばしば用いられました。実際
ドイツでは「ブレーメン試合」として知られるようになりました。
後にルビーンシュタイン(Rubinstein)も時折指しましたが、
彼は一定の戦型を持っていませんでした。

第一次大戦後ニムゾヴィッチとレティ(Reti)が幾つかの新
戦法を編み出した時、イングリッシュ・オープニングの真の
復活が起こったのでした。

「ニムゾヴィッチの貢献」

「超現代派」の他の仲間と共にニムゾヴィッチはイングリッ
シュ・オープニングの再生に助力しました。彼は本当にアン
デルセンが残していった所から続行しました。即ち白番で
シシリアン・ディフェンスを指すということです。彼のオープ
ニングは成功を収めました。その理由は主に相手が気付
かずに無理な指し方をしていたことにあります(アンデル
センと対戦したモーフィーと同様です)。20世紀最高の
ギャンビット選手といわれるシュピールマンと彼との対戦
は興味を惹かれます。そして本局は白番でのシシリアン・
オープニングは一手早いゆえに明らかに有利であるという
スタントンの説を実証することになりました。

【第1局】ニムゾヴィッチ(A.Nimzovitch) − シュピールマン(R.Spielmann)
カルルスバート(Carlsbad)、1929年

  1.e3 e5 2.c4 Nf6 3.Nf3

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  3...e4

ニムゾヴィッチは「黒は一手遅れていることを認識して、お
となしく 3...d6 4.d4 Nbd7 としてキング側ビショップをフィアン
ケットすべきである。」と評しています。

  4.Nd4 Nc6 5.Nb5

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  5...d5

この手が後の苦戦の遠因でした。黒は局面を閉鎖状態に
しておくべきでした。 5...a6 6.N5c3 が正しい指し方です。

  6.cxd5 Nxd5 7.N1c3 Nf6 8.Qa4 Bf5 9.Nd4 Bd7
  10.Nxc6 Bxc6 11.Bb5 Qd7 12.Bxc6 Qxc6
  13.Qxc6+ bxc6 14.b3 O-O-O 15.Bb2 Bb4
  16.a3 Bxc3 17.Bxc3 Rd3 18.O-O

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  18...Rhd8

「機械的な展開」とニムゾヴィッチは形容し、代わりに
18...Rg8! 19.f3 Nd5 20.fxe4 Nxc3 21.dxc3 Rf8 という手順
を推奨しています。彼は「このような控えめなルークのエネ
ルギーの用い方(18...Rg8!)はギャンビットではありえない。
しかし優勝を狙うならば必要不可欠である。」と皮肉っぽく
評しています。

  19.f3 Nd5 20.Bxg7!

いまや白はナイトに対するビショップの優位性を示すことが
できます。やはりルークは g8 にあったほうが良いことが分
かります。

  20...Rxd2 21.Bd4 f5 22.fxe4 fxe4 23.Bxa7 Rd3
  24.b4 Nxe3 25.Bxe3 Rxe3 26.Rfe1 Rb3 27.Rxe4 Rd2
  28.Re7 h5 29.Rf7

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黒の狙いは 29...h4 30.h3 Rg3 でした。本譜の手は 30.Rf2
で単純化する狙いで、黒の次の手をうながしています。

  29...Rbb2 30.Rg7 Kb7 31.h3 Rdc2 32.Rg5 Kb6
  33.Rf1 c5

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シュピールマンはオープニングの誤った構想からできた
c筋の弱いポーンをようやく解消する希望が出てきました。
しかしそれは期待はずれに終わります。

  34.Rf4 c4 35.h4 Ra2 36.Rf6+! Kb7 37.Rb5+

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ニムゾヴィッチのルーク使いは絶妙です。この手の目的は
攻守両用です。6段目のルークでg2のポーンを守りもう一
方のルークで黒のh5とc7のポーンを攻撃することができ
ます。

  37...Kc8 38.Rg6 Rd2 39.Rc5 Rac2 40.Rg7 Kb8
  41.Rcxc7 Rxg2+ 42.Rxg2 Rc1+ 43.Kf2 Kxc7
  44.Rg5 c3 45.Rxh5

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  45...Rh1

45...c2 ならば 46.Rc5+ Kb6 47.Ke2 で大丈夫です。

  46.Rc5+ Kb6 47.Kg3 Rc1 48.Kf2 Rh1

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  49.Ke3!

この手は 49.Rxc3 Rxh4 50.Ke3 Kb5 よりも優ります。

  49...Rh3+

49...Rxh4 ならば 50.Kd3 Rh3+ 51.Kc2 の後 Rxc3 で白の
容易な勝ちです。

  50.Kd4 c2 51.Rxc2 Rxh4+ 52.Kc3 Kb5 53.Kb3
  以下省略。70手目で白勝ち。

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この試合では二つの根本的に異なる定跡理論の対決を
まのあたりにすることができました。ニムゾヴィッチはシュ
ピールマンの展開の仕方は、常時ギャンビット主義とその
指し方を変えることができない結果であるとも皮肉ってい
ます。

投稿者 yamagishi : 16:23 | コメント (1)