イングリッシュ・オープニングの創生(7) 

(by Yamagishi, edit ayu)

2005年01月28日

イングリッシュ・オープニングの創生(7)

第2章 20世紀のイングリッシュ・オープニング(2)

フロールの指し方

ニムゾヴィッチを除けばフロールはイングリッシュ・オープニ
ングの理解に他のどのマスターよりも貢献しました。

センターへの進攻の支援に駒をより効果的に使用するため
に、彼はそれまで防御が非常に難しいと考えられていた
局面に導いてしばしば成功を収めました。

本局は彼がこのオープニングで勝った数多くの有名な勝局
の好例です。

【第2局】 フロール(S.Flohr) − ランダウ(S.Landau)
ケメリ(Kemeri)、1937年

  1.c4 Nf6 2.Nc3 e5 3.Nf3 Nc6 4.e3 d5 5.cxd5 Nxd5

Y050128A.GIF

  6.Qc2

この手の代わりに 6.Bb5 Nxc3 7.bxc3 Bd6 (7...e4 8.Ne5!)
8.d4 Bd7 9.e4 exd4 10.cxd4 Bb4+ 11.Bd2 Bxd2+ 12.Qxd2 O-O
(ニムゾヴィッチ − シュピールマン、ベルリン、1928年)
と指すのもあり白良しとされています。フロールの手はでき
るだけ駒の交換を避けようという手です。

  6...Be7 7.a3 Nxc3

戦略的な疑問手です。

  8.bxc3 O-O 9.d4 Bd6 10.Be2 Qe7 11.O-O

Y050128B.GIF

  11....Bg4

すぐに 11...e4 12.Nd2 f5 13.Nc4 と指すのはアンデルセン
対モーフィーの試合に似た局面になります。本譜の手は
12...e4 の反撃が狙いです。

  12.h3!

うまい催促です。12...Bh5 と引けば13.Nxe5 Bxe2 14.Nxc6
でポーンを得します。従って黒はピンを維持できません。

  12...Bd7 13.c4 b6 14.Bb2

Y050128C.GIF

  14...Rae8

黒はセンターの緊張を維持する方を選びましたが、14...exd4
15.exd4 Bf5 16.Qd1 (16.Qxf5 Qxe2) で単純化する方が優
りました。

  15.c5!

白はポーンを犠牲にして黒のポーンの形をくずします。

  15...bxc5 16.dxe5 Nxe5 17.Nxe5 Bxe5 18.Bxe5 Qxe5

Y050128D.GIF

  19.Rfc1!

自信を持って指したこの手にフロールの棋風の特徴が現れ
ています。ビショップを f1 に置いてキング側を守るために
ルークを移動させました。

  19...Qg5 20.Qxc5 Re5 21.Qxa7 Bxh3

Y050128E.GIF

  22.Bf1!

19手目から始まる白の正確な守りの主眼をなす手です。

  22...Qg6 23.Rc5!

23.Qxc7 Rg5 よりも簡明です。

  23...Rxc5 24.Qxc5 Rc8 25.a4 h5 26.a5 h4

Y050128F.GIF

  27.Qd5!

27...Bxg2 28.Bxg2 h3 29.Qd5 Qxg2+ 30.Qxg2 hxg2 の狙い
に備えました。

  27...Bf5 28.a6 Be4 29.Qd7 Bf5 30.Qe7 h3 31.a7

Y050128G.GIF

  31...Be4

31...hxg2 と来れば 32.Bxg2 Bh3 33.a8=Q Rxa8
34.Rxa8+ Kh7 35.Qh4+ で白の勝ちです。

  32.Qd7! Ra8 33.Qxh3

黒の攻撃をはね返したフロールの指し回しは見事です。

  33.c5 34.Qd7 Qc6 35.Qxc6 Bxc6 36.Ra5

Y050128H.GIF

  36...Be4

黒はビショップをこの斜筋に置かなければなりません。
37...Bd7 は 38.Be2 で 39.Bf3 を狙って白の勝ちです。

  37.f3 Bb7 38.Rxc5 Rxa7 39.Rc7 f6 40.Kh2 Kh8
  41.Bb5 Ra3 1-0

Y050128I.GIF

目的の明快さと単刀直入な戦略の本局はチェスの技法の
名局です。アンデルセン対モーフィー戦と比較すると、19
世紀だったなら決定的と考えられる黒のキング側攻撃を
フロールがいかに冷徹に守りきったかということに気付か
されます。

今でも受けの名手はあまりいませんが、本局のフロールの
指し方はそれまでの50年ほどの間に受けの技術が格段に
進歩したということが良く分かります。

投稿者 yamagishi : 15:41 | コメント (0)