2005年09月05日

「激闘争覇のクィーンズ・ギャンビット」(第1回)

初めに

1950 年頃までの100年間で最も際立った変化を遂げた布局が
あるとすればきっとそれは現代を代表する布局であるクィーンズ・
ギャンビットでしょう。その現代性にもかかわらずクィーンズ・ギャ
ンビットは記録(ラーサ(von der Lasa)によればおよそ1500年頃)
に残る最も古い布局の一つで、キングズ・ギャンビットをしのぎま
す。

キングズ・ポーン布局と比較して長い間クィーンズ・ギャンビットは
退屈で面白くない布局で慎重な人向けの布局とみなされてきま
した。それにひきかえキングズ・ポーン布局は勇敢な人にうって
つけでした。今日ではこの分類はこじつけであると考えられてい
ます。それはクィーンズ・ギャンビットのオーソドックス防御の多く
の試合で簡潔で華麗な手筋が見られるからです(例えば第12局
のアリョーヒン対ラスカー戦)。他方キングズ・ギャンビット受諾は
活気に乏しく機械的な指し手の試合になることがあります(サン
タシエレ(Santasiere)対レビン(Levin)戦)。実際のところ閉鎖型の
布局に精通し閉鎖陣形から開放陣形への移行に熟達すること
により試合は鑑賞派の人にも絶賛される活気ある試合になりま
す。これに対し「純粋」な開放型の布局は早い駒交換により引き
分けに終わりがちです。

第1章 オーソドックス防御

最初はオーソドックス防御から始めます。この名称はタラシュ
(Tarrasch)に由来します。構造的な弱点のない狭い陣形のこの
古い戦法を信心深く指し続ける人達を揶揄してタラシュはこう名
付けました。これに反してタラシュ防御(3...c5)は自由で開放型
の布局ですが恒常的な弱点(d5 の地点の孤立ポーン)を受忍し
なければなりません。

オーソドックス防御は19世紀の後半に人気の頂点をむかえまし
た。もっともそれは堅固さよりも優秀な防御法が他に少なかった
ことに起因するものでした。たとえば「スラブ(Slav)」防御はまだ
一般化していなかったしタラシュ防御もまだ人気が出ていませ
んでした。

オーソドックス防御の特徴は白がクィーン側のビショップを早く
展開できることです(1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Nf6 4.Bg5)。これと
は対照的に黒のクィーン側のビショップは閉じ込められたままで、
この駒をうまく展開させることが布局における黒の主要な問題と
なっています。

19世紀のオーソドックス防御

オーソドックス防御の発展の歴史の研究としてまずシュタイニッ
ツ(Steinitz)の試合を取り上げます。それは実戦で白のクィーン
側ビショップを g5 にかかるのを始めたのは彼だからです。実の
ところこの手はスタントン(Staunton)との番勝負第15局でサン・
タマン(Saint-Amant)によって既に指されています。ただしそれ
はポーンを c5 に進めてからでした。従って彼の動機はシュタイ
ニッツのとは完全に異なっていました。シュタイニッツの構想は
黒の d5 のポーンに圧力をかけて、いずれ黒に ...dxc4 とさせて
センターを放棄させることでした。

シュタイニッツの指し方

【第1局】シュタイニッツ(W.Steinitz) - アンデルセン(A.Anderssen)
ウィーン(Vienna)、1873年

  1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Nf6 4.Bg5

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スタントンは今日(1950 年頃)でも最強と考えられているこの手
を危険であると判断していました。彼の考えは白の b 筋のポー
ンが弱くなるかもしれないからというものでした。そのような見解
は長い年月続きました。たとえばグンズブルク(Gunsburg)は 1895
年のヘースティングズ(Hastings)の大会でピルズベリー(Pillsbury)
がこの手を連採した時同様の見解を述べています。

  4...Be7 5.e3 O-O 6.Nf3 b6

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このありふれた手がクィーン側ビショップの展開の問題を解決す
る最も簡単な手段に見えます。

  7.Bd3 Bb7 8.O-O Nbd7 9.cxd5 exd5 10.Rc1 c5 11.dxc5

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現代の大局観手法の創始者としてのシュタイニッツらしい手です。
彼はピルズベリーのように(次局参照)キング側攻撃を構築するの
ではなく代わりに黒の陣形に永久的な弱点を作らせようとしてい
ます。

  11...bxc5 12.Qa4 Ne4?

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この手は破滅につながる悪手でした。12...Qb6 としてクィーン側
ビショップを残せば形勢はまだこれからでした。黒は c 筋と d 筋
のポーンを守るために小駒の交換を避けるようにしなければいけ
ません。

  13.Bxe4 dxe4 14.Rfd1 Bxg5

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  15.Nxg5!

正確な指し手です。すぐに 15.Rxd7 と取るのは 15...Qc8 16.Nxg5 Bc6!
でせっかくのルークを取られてしまいます。

  15...Qxg5 16.Rxd7 Rfb8 17.Qb3 Bc6 18.Qxf7+ Kh8

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  19.h4 Qg4 20.Rxa7 Rxa7 21.Qxa7 Rxb2 22.Qxc5 Qe6

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  23.Rd1 h6 24.Rd6 Qf7 25.Nd1 Re2 26.Kf1 1-0

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「古典」派と「現代」派を代表する両雄のこの対戦は現代の大局
観手法の幕開きでした。1873 年時点では特に認識されていま
せんでした。その証拠に大会の記録本にはこの試合について特
に何も言及されていませんでした。

黒のポーンを孤立させその弱点を利用しようとするシュタイニッツ
の構想はピルズベリーの構想より根本的に優れていました。ピ
ルズベリーはこの試合から23年後に同じ局面で黒のキング側へ
の攻撃を行なう別の構想を創案しました。その試合については
次局で解説します。

投稿者 yamagishi

2005年09月08日

「激闘争覇のクィーンズ・ギャンビット」(第2回)

第1章 オーソドックス防御

ピルズベリーの指し方

19世紀も終わり近くになった頃ピルズベリーが白のナイトをe5の
強力な地点に据えてキング側攻撃の基礎にする戦法に成功して
以来クィーンズ・ギャンビットは人気が高まりました。今日(1950
年頃)では彼がかつては単調だとみなされていたこの布局に吹き
込むことができた活力に誰もが感嘆しています。

本局は彼の戦法が広く知られるようになってから指された試合
の一つです。

【第2局】ピルツベリー(H.N.Pillsbury) - シファーズ(E.Schiffers)
ウィーン(Vienna)、1898年

  1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Nf6 4.Bg5 Be7 5.e3 O-O 6.Nf3 b6

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  7.cxd5 exd5 8.Bd3 Bb7 9.Ne5

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興味深いことに黒の防御の改良に合わせてピルツベリーも手順
に工夫を凝らしています。本局ではキャッスリングの前にNe5を
指し、キング側攻撃に関係のないRc1も省略しています。

  9...Nbd7 10.f4 Ne4 11.Bxe7 Qxe7 12.Bxe4 dxe4 13.O-O

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  13...f5

手を決め過ぎました。白はe5の地点が安泰になります。13...Rfe8
の後 ...Nf8、...f6 として白のナイトを追い払うべきでした。

  14.g4

ピルツベリーの棋風に忠実な攻撃的な手です。後年ピルツベリー
は(前局でシュタイニッツによって示されたように)黒の弱点はクィ
ーン側にあることを認めました。そして実際最後の出場となった
1904年のケンブリッジ・スプリングズ(Cambridge Springs)での
大会の対バリー(Barry)戦では 14.Qb3+ Kh8 15.Rfd1 Nf6 16.Rac1 c6
17.Ne2 と指して危なげなく勝ちました。

  14...Nxe5

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  15.fxe5

15.dxe5 と取るのは 15...Rad8 の後 ...Rd3 で白良くありません。

  15...Qg5 16.Rf4 h5

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  17.Qb3+ Kh7 18.Raf1 hxg4 19.d5!

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  19...g3

白の狙いは 20.Nxe4 fxe4 21.Rxf8 ですが 19...Ba6 で防ぐことが
できました。以下 20.R1f2 なら 20...Bd3、20.Nxe4 なら 20...Qe7! です。

  20.h4!

20.Nxe4? は 20...gxh2+ 21.Kxh2 fxe4 22.Rxf8 Rxf8 23.Rxf8 Qh4+
で白は永久チェックによる引き分けを選ぶしかありません。

  20...Qe7 21.Qd1 g6 22.h5 Kg7 23.Qd4

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  23...Rad8

黒は局勢を過信しました。23...c5 24.dxc6e.p. Bxc6 25.e6+ Kh6
ならば黒はポーンを得し、代償の白の攻撃も最小限に抑えること
ができました。

  24.e6+ Kh6 25.hxg6 Kxg6 26.Qe5! Qh7 27.R4f2!!

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この手は黒にとって全く予期していなかった手でしょう。ルーク
捨ての華麗さに堪能しつつ白の駒のセンター化からこのような
手筋が生まれてくることにも注意しなければなりません。

  27...gxf2+ 28.Rxf2 Qh6 29.Rg2+ Kh7 30.Qxc7+ Kh8
  31.Rh2 Rg8+ 32.Kf2 Qxh2+ 33.Qxh2+

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  33...Kg7 34.Qc7+ Kh6 35.Qxb7 Rg7 36.Qa6 Kg6 37.Ne2 Kf6 38.Qc4 Rdg8

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  39.Nf4 Rh7 40.Qc3+ Kg5 41.d6 Rh2+ 42.Ke1 Kg4 43.Kd1 Kf3
  44.Qe1 Rxb2 45.Ne2 1-0

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投稿者 yamagishi

2005年09月11日

「激闘争覇のクィーンズ・ギャンビット」(第3回)

第1章 オーソドックス防御

オーソドックス防御でのフィアンケットに対する現代の戦型

これまでの2局ではオーソドックス防御でのフィアンケットに対し
昔の二人の偉大な名手がどのように指していたかを見てきまし
た。現代の達人たちが同じ定跡をどのように指すのかを見るのも
興味深いものがあります。それによって特に棋理の観点からチェ
スに対する見方がどのように変化してきたかが明らかになるで
しょう。

【第3局】アリョーヒン(A.Alekhine) - クッキールマン(J.Cuckiermann)
パリ(Paris)、1933年

  1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Nf6 4.Bg5 Be7 5.e3 Nbd7 6.Nf3 O-O
  7.Rc1 b6 8.cxd5 exd5 9.Bb5

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以前にカパブランカの指した手で彼はその場の思いつきで指し
たと言っていました。この手は黒にとって解決の難しい接近戦
の問題を突きつけています。それは一つには白のビショップを
追い払うとさらに弱点が生じるからで、もう一つは白が黒の小駒
と交換をすることによって黒のポーンの弱点を利用しようとして
いるからです。

  9...Bb7 10.O-O a6 11.Ba4 c5?

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この局面は第1局のシュタイニッツ対アンデルセン戦と類似して
います。その時にはこの弱体化の手は白のビショップが a4 で
なく d3 にいる時に指されました。

  12.Bxd7!

アリョーヒンによればこの手は 12.dxc5 Nxc5 (1913 年ベルリン
でのカパブランカ対タイヒマン(Teichmann)戦参照)より強制力が
あります。本譜で 12...Qxd7 と取れば 13.dxc5 bxc5 14.Na4! で
白が大いに優勢です。

  12...Nxd7 13.Bxe7 Qxe7 14.dxc5 Qxc5

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d5 のポーンを守るためにこう取るしかありません。

  15.Nd4 Rac8 16.Nf5 Kh8!

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この手は 17.Nxd5 Qxd5 18.Ne7+ に備えました。また 17.Nxg7
と来れば 17...d4! (17...Kxg7 には 18.Qg4+ で d7 のナイトが取
られます。) 18.Qxd4 Qxd4 19.exd4 Rg8 でナイトが逃げれば
20...Rxg2+ があります。

  17.Ne2 Qb4 18.Qd4 Qxd4 19.Nexd4 Rxc1 20.Rxc1

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  20...Nc5

20...Rc8? は 21.Rxc8+ Bxc8 22.Nd6 でビショップが取られます。

  21.Nd6 Ba8 22.b4 Nd3 23.Rc7 Kg8

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  24.Nc8!

アリョーヒンは 24.a3 だと 24...Ne5 の後 25...Nc4 でビショップが
助かると解説しています。本譜の手でビショップは助かりません。

  24...Nxb4 25.Nxb6

次に 26.Ra7 でビショップを殺す手があります。

  25...Rb8

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最後のもがきです。26.Ra7 なら 26...Bb7 27.Nd7 Rc8 28.g3 Bc6
でビショップが助かります。

  26.Nd7 Rd8 27.a3 Nd3 28.Ra7 Rc8 29.Kf1 1-0

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30.Nb6 に対する受けがありません。

カパブランカが始めアリョーヒンによって改良されたこの戦型は
局面の問題に対する我々の取り組みが昔の達人たちの大多数
とどのように異なっているかを明白に示しています。そしてシュタ
イニッツの大局観に基づく構想が 40 年後にカパブランカによって
も正しかったことが証明されています。

投稿者 yamagishi

2005年09月14日

「激闘争覇のクィーンズ・ギャンビット」(第4回)

第1章 オーソドックス防御

オーソドックス防御の現代の戦型

今日でも最も堅実な防御法とみなされているオーソドックス防御
は 19 世紀の終わり頃にラスカーとメーソン(Mason)によってしば
しば用いられた時注目されました。この防御法における黒の目
的はクィーン側ビショップの展開を後回しにして役駒の交換によ
り自陣の狭さを緩和することです。しかしそれはセンターの放棄
(...dxc4)を伴うので第一次世界大戦終了まであまりはやりませ
んでした。戦後になってセンターについての新しい概念が登場
し始めました。

ラスカーの指し方

【第4局】シュタイニッツ(W.Steinitz) - ラスカー(Em.Lasker)
番勝負第18局、1894年

  1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Nf6 4.Bg5 Be7 5.Nf3 O-O 6.e3 Nbd7 7.Rc1

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第12局と第16局でシュタイニッツは 7.c5 と指しましたがうまく
いきませんでした。ラスカーは本譜の手の方が優ると評しました。
今日(1950 年頃)では評価が確定してお決まりの手順のように
指されています。しかしこの手は大多数の人が考えるような単な
る手待ちではありません。この手は解放を図る黒の 7...c5 を防い
でいます。以下 8.Bxf6 Nxf6 9.dxc5 Bxc5 (9...dxc4 10.Qxd8 Rxd8
11.c6! bxc6 12.Bxc4) 10.cxd5 exd5 11.Nxd5 Qa5+ 12.Qd2 という
進行になります。

  7...c6

この手は現代の防御法の特徴です。以下に見られるように単純化
を意図しています。

  8.Bd3 dxc4 9.Bxc4 Nd5 10.Bxe7 Qxe7 11.e4

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白は目的とするセンターの占拠を成し遂げたように見えますがこ
の手は早過ぎました。白がどのようにしてセンターの支配を利用
するかという問題にまだ答える必要があります。黒のキングに対
する直接攻撃は黒の陣形が堅すぎるので賢明ではありません。
従って白の戦略は黒が ...e5 や ...c5 によってセンターを解体しよ
うとするのを阻止することに向けなければなりません。

  11...Nf4

「交換の後 ...e5 が可能だが、白のセンターが強力になり面倒か
もしれない。」とメーソンが今日の典型的な見解で評しています。
しかし実際は次局のように 11...Nxc3 12.Rxc3 e5 13.O-O exd4
14.Qxd4 b5 で黒は布局における問題を解決できます。

  12.g3

ラスカーはこの手で白の陣形が弱くなったと考え、替わりに 12.O-O
の後 13.Qd2 を推奨しました。しかしそれでも 12.O-O e5 13.dxe5 Nxe5
14.Nxe5 Qxe5 15.g3 Nh3+ 16.Kg2 Ng5 17.f4? Bh3+ の後 18...Qc5
で、クィーン側ビショップが幸便に展開できたことにより黒が布局
の問題を解決できています。

  12...Ng6 13.O-O

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  13...Rd8

13...e5 は 14.d5 cxd5 の後白が必ず役駒で取り返すことができる
のでそれほと強い手ではありません。従って黒はクィーン側ビショ
ップを b7 に展開することに専念します。

  14.Qe2 b5

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両対局者が局面に要求されている問題を完全に理解していること
が見て取れます。つまり黒のクィーン側ビショップの展開のことで
す。それは白が有利になる唯一の方法は黒の ...c5 を阻止するこ
とにあるからです。

  15.Bb3 Bb7 16.Qe3 a6 17.Ne2 Rac8 18.Rfd1 Re8

...c5 と指せるようにするためにはこのルークを d 筋からよけておか
なければなりません。

  19.Ne1 c5

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白が Nd3 でちょうど黒の c 筋のポーンをせき止めようとした時に
黒は重要な解放の手 ...c5 を指すことができました。ラスカーはこ
の手で形勢は黒が良いかもしれないと評しています。

  20.dxc5 Nxc5 21.Bc2 Rc7 22.f3 Rec8 23.Bb1 Ne5 24.b3 f6

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  25.Rc2

この手は黒にセンターの解体を許します。しかし一見より強そうな
25.Rd2 は 25...f5 が防げません。以下 26.exf5 exf5 27.Bxf5? Nxf3+
28.Kf2 Nxd2 29.Qxe7 Rxe7 30.Bxc8 Nde4+ で黒の駒得になります。

  25...f5 26.exf5 exf5 27.Qf2

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27...Nxf3+ に備えました。

  27...g6 28.Nf4 Ncd7 29.Nd5 Qd6 30.Rcd2 Rc1 31.Ne3 Rxd1

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白が受け入れられないクィーンとルーク2個との交換を誘いラス
カーは一組のルークの交換に成功します。これにより白の守備
力を大きく減少させることができます。

  32.Nxd1 Qe6 33.Kf1

黒からの 33.Nxf3+ 34.Nxf3 Bxf3 35.Qxf3 Qe1+ に備えました。

  33...Rc5 34.Qe3 Rd5 35.Rxd5 Qxd5

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  36.Nc3 Qc6 37.Kf2 Kg7 38.Ne2 Qd6 39.Nd4 Qf6 40.Ng2?

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  40...Nc6

「時間切迫のためとしか説明のできないとんでもない見落とし。
40...Bxf3 ならばはっきりポーン得になり形勢も黒の勝勢になって
いたはず。」とラスカーは言っています。

  41.Ne6+ Kg8 42.Bc2 Qe5?

「またしても見落としで勝ちを逃がした。42...Nce5 43.Nd4 Bxf3 で
楽に勝っていた。」とラスカーは評しています。

  43.Ngf4 Qxe3+ 44.Kxe3

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  44...Nb4 45.Bb1 Ne5 46.Nd4 Kf7 47.a3 Nd5+ 48.Nxd5 Bxd5

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  49.Bd3 Ke7 50.Be2 Kd6 51.f4 Nd7 52.g4

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クィーン側での黒の優位が顕著になる前に白は行動を起こさなけ
ればなりません。

  52...fxg4 53.Bxg4 Nb6 54.h4 Bb7 55.Be6 Nd5+ 56.Bxd5 Kxd5

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  57.Nf3 Bc8 58.Ng5 h5 59.Ne4 Bf5 60.Nc3+ Kc5 61.Ne4+ Kd5 1/2-1/2

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シュタイニッツ対ラスカーの第一次世界選手権戦の名局の一つと
考えられるこの試合は新しい防御法の特徴を明白に示しています。
黒はセンターを放棄しますが、精力的な反撃によって白のセンター
を破壊することに努めて均衡を維持しようとします。ラスカーのこの
計画の遂行はみごとなものです。もっとも布局における白の弱手に
いくぶん助けられた面もあります。

我々の観点にとってはるかに重要なのは華麗な中盤戦です。白は
完全にセンターを掌握していましたがそこから先に何もすることが
できませんでした。これについてはあまりシュタイニッツを責めるこ
とはできません。彼はセンターはそれ自体が目的ではなく、目的の
ための手段に過ぎないことを理解していませんでした。あの偉大な
教師であるタラシュ(Tarrasch)でさえもこのことに気付くことができ
なかったのですから。

もし白が、黒が展開を完了する前にセンターの支配を具体的な優
位、例えばキング側攻撃に転換できなければ、あるいはまた黒の
順調な展開を妨害できなければ、白のセンターは突然資産から重
大な負債に変わってしまうかもしれません。センターのこの動的な
概念(グリュンフェルド(Grünfeld)防御に明白に現われています。)
はつい最近まで不完全に理解されていました。そしてそれは受け
入れられた基本的な原則でさえ長い経験の中でどのように大きく
修正されなければならないかということを物語っています。

投稿者 yamagishi

2005年09月17日

「激闘争覇のクィーンズ・ギャンビット」(第5回)

第1章 オーソドックス防御

オーソドックス防御の現代の戦型

ショーウォルターの戦法

ラスカーはクィーンズ・ギャンビットのオーソドックス防御を指せる
戦法にするのに尽力しましたが、その一方今日(1950 年頃)でも
黒にとって最も堅実と考えられる防御法を創案したのはショー
ウォルターでした。ショーウォルターがこの防御法をたびたび採
用したのはこの防御法が単なる幸運な経験以上のものである
証拠です。

【第5局】ビルズベリー(H.N.Pillsbury) - ショーウォルター(J.Showalter)
番勝負、1897年

  1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Nf6 4.Bg5 Be7 5.e3 Nbd7 6.Rc1 O-O 7.Nf3 c6

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  8.Bd3 dxc4 9.Bxc4 Nd5 10.Bxe7 Qxe7 11.O-O Nxc3 12.Rxc3 e5 13.e4

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19 世紀の教義では論理的とされるこの手は 13...e4 を阻止し
センターにおける優位を確保します。

  13...exd4 14.Qxd4 b5

思い切った手です。現代の定跡は 14...Nb6 15.Bb3 Be6 を薦め
て互角の形勢と判定しています。

  15.Be2 c5 16.Qd5 Rb8 17.Rd1 c4

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  18.Re3

この守勢の手はピルズベリーのこれまでの戦略にそぐわないもの
です。18.e5 Nc5 19.Nd4 Bb7 20.Nf5! が良い手順でした。

  18...Nf6 19.Qg5 h6 20.Qh4 Qb4

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タイミングの良い逆襲です。21...Ng4 を狙っています。

  21.Nd4 Rb6

21...Qxb2 とポーンを取っていると 22.Nc6 Rb7 23.e5 Nd7 (23...Nh7
24.Ne7+ Kh8 25.Nxc8 Rxc8 26.Rd8+) 24.Ne7+ Kh8 25.e6 で
白の攻めにはずみがつきます。

  22.b3 Re8 23.Nc2 Qc5 24.b4 Qg5

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クィーンの交換になれば形勢は黒が良くなります。それは白が
開いた d 筋をあまり利用できないのに対し黒のパス・ポーンは
収局に向けての資産となる可能性があるからです。

  25.Qxg5 hxg5 26.e5 Ng4 27.Bxg4 Bxg4

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  28.Rd5

28.Rd2 で次の 29.Rg3 を狙う方が優りました。

  28...Be6 29.Rd4 Bf5 30.Ne1 Rc6 31.g4 Bb1

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  32.a3 c3 33.Rd1 Bg6 34.Kf1 Rec8 35.Rc1

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黒が 35...Ra6 でポーン得を狙っているので仕方ありません。

  35...Rc4

35...Kf8 の方が良かったようです。36.Nd3 と来れば 36...Bxd3+
37.Rxd3 Ke7 で白の e5 のポーンが弱くなります。

  36.e6 f6 37.e7 c2

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  38.Rxc2 Bxc2 39.e8=Q+ Rxe8 40.Rxe8+ Kf7 41.Ra8 Ba4

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白は危険なパス・ポーンを取り除くことに成功しました。しかし黒の
ルークとビショップの方が白のルークとナイトより働いているので
形勢はまだ黒が有利です。

  42.Rxa7+ Kg6 43.Nd3

うまい捌きです。43.f3 のような守り一方の手では 43...Rc3 から
44...Rxa3 で長持ちしません。

  43...Rxg4

43...Rc3 なら 44.Nc5 Rxa3 45.Ne6 です。

  44.Nc5 Bd1

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  45.Rd7

45.Ne6 は 45...Bf3 46.Rxg7+ Kf5 47.Nc5 Rc4 で黒の攻勢が
強まります。

  45...Bf3 46.Rd3 Bg2+ 47.Ke2 Rh4 48.Rd7 Rxh2 49.Ne6 Rh4

Y050917L.GIF

  50.f3 Rc4 51.Rxg7+ Kf5 52.Nc7 Rc2+ 53.Ke3 Bf1

Y050917M.GIF

  54.Kd4 Rc4+ 55.Ke3 Rc3+ 56.Kf2 Bc4 57.Re7 Rxa3 58.Ne8 Ra2+

Y050917N.GIF

  59.Kg3

59.Ke1 は 59...Kf4 で危険になります。

  59...Bf1 60.Nd6+ Kg6 61.Ne4 Rg2+ 62.Kh3 f5 63.Re6+ Kg7!

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63...Kf7 は 64.Rf6+ でせっかくのポーンが取られます。

  64.Nc5 Rb2+ 65.Kg3 Rxb4

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以下 91 手目で黒が勝ちました。

ショーウォルターは自分の新防御法の構想を遺憾なく発揮しまし
たが同時代の選手たちはその重要性を評価することができませ
んでした。そして彼の防御法は長い年月の間無視されていました。

しかしピルズベリー自身はこの「単純化」防御を第一印象とは異
なり重要であることに気付いていたに違いありません。というのは
以降の試合で彼が白のクィーン側ビショップの早期交換を避けよう
としていたからです。

投稿者 yamagishi

2005年09月20日

「激闘争覇のクィーンズ・ギャンビット」(第6回)

第1章 オーソドックス防御

オーソドックス防御の現代の戦型

ショーウォルターの戦法

【第6局】ビルズベリー(H.N.Pillsbury) - ショーウォルター(J.Showalter)
番勝負、ニューヨーク、1897年

  1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Nf6 4.Bg5 Be7 5.e3 Nbd7
  6.Rc1 O-O 7.Nf3 c6 8.Bd3 dxc4 9.Bxc4 b5

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この手はオーソドックス防御の2番目に重要な戦型で黒はクィー
ン側ビショップを b7 の地点に展開します。ショーウォルターの布
局の指し方は明快かつ独特で、第4局でのラスカーのように二
つの戦型を混在させることなくあくまでも一つの戦型を貫いてい
ます。この戦型の重要性はもう少し手が進むと明らかになります。

  10.Bd3 a6 11.O-O c5 12.Ne4 c4 13.Nxf6+ Nxf6

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  14.Bb1 Bb7 15.Ne5 Ne4 16.Bxe7 Qxe7 17.f3 Nd6

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  18.Qc2 g6 19.Qd2 f6 20.Ng4 Nf7 21.e4 Rad8 22.Qe3 h5

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ビルズベリーはうまくキング側での攻撃態勢を布きました。ショー
ウォルターはポーンの形を弱めないと均衡が保てません。黒の
最終手は危険を伴いますが 23.e5 を防いで必要な手です。23.e5
の後ナイトを f6 に地点に飛び込まれては白の勝ちの局勢になっ
てしまいます。

  23.Nf2 Kg7 24.Nh3 Qd6 25.Rcd1 Qb6 26.Rfe1 Rd7

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黒は白のセンターに圧力をかけることによって白の来るべき攻撃
に備えています。

  27.e5 fxe5 28.Ng5 Nxg5 29.Qxg5 Rf6 30.Qxe5 Rd5

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ここが形勢の分岐点でした。31.Qb8 が良い候補手とされ 31...Rxd4
32.Kh1 Rxd1 33.Rxd1 と進めば黒にとって難しい形勢です。しかし
黒は 31...Rd6 と指すのが良く以下 32.Be4 Bd5 33.Qxb6 Rxb6
34.Bxd5 exd5 と進めば黒はクィーン側が数的優位なので形勢有利
です。

  31.Qe4 e5! 32.Kh1 exd4 33.Qe8 Rd8

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  34.Qe7+

34.Re7+ は 34...Kh6 とかわすのがうまく白は 35.Rxb7 と自ら交換
損をするしかなくなります。

  34...Rf7 35.Qe5+ Qf6 36.a4 d3 37.axb5 axb5

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  38.Kg1

38.Qxb5 とポーンを取るのは 38...Bxf3 39.Rf1 (39.gxf3 Qxf3+
40.Kg1 Rf5) Bc6 40.Rxf6 Bxb5 で黒の勝ちの収局になります。

  38...Qxe5 39.Rxe5 Rd5 40.Re3 Rfd7 41.Kf2 Kf6 42.Rde1 R5d6

Y050920I.GIF

  43.h4 b4 44.Rc1 Ba6 45.Ba2 Rc7 46.Bb1 c3
  47.bxc3 bxc3 48.Bxd3 Rxd3 49.Rxd3 Bxd3

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  50.Ke3 Bf5 51.Kd4 c2 52.Ke3 Rd7 53.g4 Rd1 0-1

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投稿者 yamagishi

2005年09月23日

「激闘争覇のクィーンズ・ギャンビット」(第7回)

第1章 オーソドックス防御

オーソドックス防御の現代の戦型

ルビーンシュタインの歩数争奪戦法

ルビーンシュタインの名前は主に白の側からのオーソドックス防御
と密接に結びついています。明快な防御法がまだ見つかっていな
かった時代に彼の戦法は大きな成功を収めました。今日(1950 年
頃)では彼の貢献は単なる移行的なものとみなされています。それ
は彼の歩数争奪(tempo struggle)の骨子である 8.Qc2 に対して
幾つかの互角になる戦型が考案されているからです。

ルビーンシュタインの布局作戦はカパブランカが有力な防御法を
完成させるきっかけとなりました。その防御法は今日でも重要で
す。それはオーソドックス防御において互角の形勢を達成するに
は細心の正確さと接近戦の技術が必要であることが分かってい
るからです。

【第7局】ルビーンシュタイン(A.Rubinstein) - マローツィ(G.Maroczy)
イェーテボリ(Göteborg)、1920年

  1.d4 Nf6 2.Nf3 d5 3.c4 e6 4.Bg5 Be7 5.e3 Nbd7 6.Nc3 O-O 7.Rc1

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  7...Re8

その当時席巻していた定説によればこの手は(前局でショーウォ
ルターが指していた) 7...c6 に優るとされていました。即ちいずれ
は ...c5 と指さなければならないので 7...c6 と指して一手損をす
ることはないというものでした。今日では本譜の手は黒に難局を
もたらすとされています。

  8.Qc2 dxc4

ここで 8...c6 は 9.Bd3 dxc4 10.Bxc4 Nd5 11.Bxe7 Qxe7 12.Ne4! N5f6
13.Ng3 で黒は解放手の ...e5 の実現が難しくなります。それは白
が Nf5 と Ng5 の二通りの狙いを持っているためです。これらの狙
いは黒が 7...Re8 と指して f7 の地点を弱めて攻撃にさらされるよ
うになったために起こったものです。

  9.Bxc4 c5 10.O-O cxd4 11.Nxd4 a6

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当時 9...c5 と 10...cxd4 とによってセンターの均衡を回復すること
はクィーン側ビショップを展開することよりも重要であると考えられ
ていました。後者の指し方はショーウォルターによって(第6、7局
を参照)既に形勢互角になることが示されました。

  12.Rfd1 Qa5 13.Bh4 Ne5 14.Be2 Ng6 15.Bg3 e5

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黒は一見陣形を解放したように見えます。またクィーン側ビショッ
プを c8-h3 の斜筋に沿って展開できるようにもなり、最も棋理に
かなった構想と考えられます。しかしルビーンシュタインははるか
先まで読んでいました。

  16.Nb3 Qc7 17.Qb1! Qb8

この手は白からの 18.Nb5 で交換得する狙いに備えました。

  18.Bf3

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  18...Qa7

特筆に価する局面です。黒がクィーン側ビショップを戦闘に参加さ
せようとしたその矢先に白は手筋でそれを妨害します。もし黒が
18...Bg4 とビショップを展開させれば 19.Bxg4 Nxg4 20.Nd5 で
21.Nc7 と 21.Nb6 の決定的な両様の狙いがあります。また 18...Be6
ならば 19.Nd4! で、最後に 18...Bd7 ならば 19.Nd5! Nxd5 20.Bxd5
です。

  19.Na5!

黒からの 19...Rb8 から 20...b5 を Nc6 の狙いで防いでいます。

  19...Bb4 20.Nc4 Bd7 21.Nd5

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  21...Nxd5 22.Bxd5 Be6 23.Qe4! Bxd5 24.Rxd5 Rac8 25.Rcd1

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布局からルビーンシュタインが得た唯一の優位は d 筋の支配だ
けです。しかしそれだけで勝利には十分です。25...f5? と来れば
26.Qxf5 Rxc4 27.Rd7 で決まりです。

  25...Bf8 26.b3

g7 の地点での詰みを防がれたのでナイトにひもを付けて前記の
...f5 の変化に備えました。

  26...b5 27.Nd6 Bxd6 28.Rxd6 Rc7

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  29.h4 f6 30.Qd5+! Kh8 31.h5 Nf8 32.h6 Ng6 33.Qe6!

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  33...Rf8 34.Rd7 gxh6 35.Bh4! 0-1

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35...Nxh4 なら 36.Qe7 までです。

投稿者 yamagishi

2005年09月26日

「激闘争覇のクィーンズ・ギャンビット」(第8回)

第1章 オーソドックス防御

オーソドックス防御の現代の戦型

カパブランカの解放捌き

先達の試合の堅固さと自分の棋風に特徴的な簡明な指法とを
組み合わせた戦法を完成させるのはカパブランカに委ねられま
した。今日(1950 年頃)では彼の指法はあまねく知れ渡っている
ので彼の同時代の選手たちがカパブランカの防御法の真価に
気付くのがどのくらい遅かったのかを評価するのは困難です。
それでもこの防御法が完成する前に達人たちがクィーンズ・ギャ
ンビットに対する適切な防御法を見つけようと苦闘しながら果た
せずルビーンシュタインが白で難なく有利を得ていたことは記憶
にとどめておくと良いでしょう。

カパブランカの防御法が知られるようになり 1922 年のロンドン
での大会でのヴィドマール(Vidmar)や同年のヘースティングズ
(Hastings)でのタラシュ(Tarrasch)のように他の強豪たちによっ
ても採用されるようになった時(解説中の参考棋譜を参照)本筋
からのほんのわずかな逸脱でも形勢が傾くことが分かってきま
した。

本局はルビーンシュタインが創始し当時は強いと考えられていた
手順に対しカパブランカが自分の防御法で戦った試合です。

【第8局】マーシャル(F.Marshall) - カパブランカ(J.R.Capablanca)
ニューヨーク、1918年

  1.d4 d5 2.Nf3 Nf6 3.c4 e6 4.Nc3 Nbd7 5.Bg5 Be7 6.e3 O-O 7.Rc1 c6 8.Qc2

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  8...dxc4

1914 年サンクト・ペテルブルクでの対ルビーンシュタイン戦でカ
パブランカは 8...Re8 9.Bd3 dxc4 10.Bxc4 b5 11.Bd3 a6? と指し
12.Ne5 の後ポーンを失いました(訳注 12...Bb7 13.Nxd7 Qxd7
14.Bxf6 Bxf6 15.Bxh7+)。本局のより堅固な戦法は「試行錯誤」
の結果生み出されたのかもしれません。

  9.Bxc4 Nd5 10.Bxe7 Qxe7 11.O-O

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  11...Nxc3

1922 年ロンドンでのカパブランカ対ヴィドマール戦では 11...b6?
12.Nxd5 cxd5 13.Bd3 h6 14.Qc7 Qb4 15.a3! でほどなく白が勝
勢になりました。これから分かることはカパブランカと同時代の
強豪たちでさえ彼の防御法の微妙なあやについてすぐには理解
できていなかったということです。

  12.Qxc3 b6 13.e4

1922 年ロンドンでのアリョーヒン対カパブランカ戦は 13.Qd3 c5!
14.Ba6 Bxa6 15.Qxa6 cxd4 16.Nxd4 Nc5 17.Qb5 までで引き分
けになりました。この試合の後その当時の偉大なチェス教師タラ
シュはカパブランカの戦法を改良しようとし(13.Qd3 の後) 13...Rd8?
の手順を入れましたが 14.Qe2 c5 15.Bb5 cxd4 16.Nxd4 Bb7
17.Rc7 Rab8 18.Rd1 Bd5 19.Nc6 で投了しました(ボゴリュボフ
対タラシュ、ヘースティングズ、1922年)。この局面は旧来の概念
では評価できないことを強調しておく必要があります(この参考局
について言えば手得が敗因になっています。)。

  13...Bb7 14.Rfe1 Rfd8 15.d5

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  15...Nc5!

この手はカパブランカが同じ大会の前の回でコスティッチ(Kostic)
相手に指した 15...Nf8 よりも強い手です。本譜の手は 16...Nxe4
や 16...cxd5 を狙っています。

  16.dxe6 Nxe6 17.Bxe6 Qxe6 18.Nd4!

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カパブランカは a2 のポーン当たりで先手が取れると思っていたが
白の手には驚かされたと解説しています。18...Qxa2 は 19.Ra1 で
クィーンが取られます。

  18...Qe5!

絶対手です。カパブランカの素晴らしい直感力はポーンを犠牲に
ほんのわずかな主導権を得る手を選びました。ポーンを守る 18...Qd7
は 19.Nf5 f6 20.Qg3 Kh8 21.Rcd1 Qf7 22.h4 で白が圧倒的な
態勢になります。

  19.Nxc6 Qxc3 20.Rxc3 Rd2

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  21.Rb1

この手は悪手でした。カパブランカによれば 21.Ne7+ Kf8 22.Rc7 Re8
(22...Bxe4? 23.f3!) 23.Rxb7 Rxe7 24.Rb8+ Re8 25.Rxe8+ Kxe8 で
引き分けになるところでした。

  21...Re8 22.e5

22.f3 なら 22...f5 23.exf5 R8e2 です。

  22...g5! 23.h4 gxh4 24.Re1

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マーシャルは自分の駒の守りに縛り付けられるよりも反撃にすべ
てをかけます。

  24...Re6 25.Rec1 Kg7 26.b4 b5 27.a3 Rg6 28.Kf1 Ra2

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  29.Kg1

29.e6 の方が良かったようです。

  29...h3 30.g3 a6 31.e6 Rxe6 32.g4

ナイトが動けば 32...h2+ 33.Kxh2 Rh6+ 34.Kg1 Rh1# という詰み
があります。

  32...Rh6

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  33.f3

33.g5 は 33...h2+ 34.Kh1 Rxc6 35.Rxc6 Rxf2 で黒の勝ちです。

  33...Rd6

この手はすぐ目につく 33...h2+ よりも優ります。

  34.Ne7 Rdd2 35.Nf5+ Kf6 36.Nh4 Ke5 37.Nf5 Rg2+ 38.Kf1 h2
  39.f4+ Kxf4 0-1

Y050926I.GIF

この試合から分かることは防御の構想(クィーン側ビショップの展開)
を遂行するためにはカパブランカの用いたような絶妙な戦術が必要
だということです。巧妙なポーンの犠牲により黒は楽な展開になった
とカパブランカは言っています。

投稿者 yamagishi

2005年09月29日

「激闘争覇のクィーンズ・ギャンビット」(第9回)

第1章 オーソドックス防御

オーソドックス防御の現代の戦型

カパブランカの貢献(白で)

ショーウォルター(Showalter)は黒が ...e5 と突くことによりクィーン
側ビショップを c8-h3 の斜筋に展開させることもあるいは (...b5 の
後) ...c5 と突くことにより b7-h1 の斜筋に展開させることもできる
ことを示しました(第5、6局参照)。このように黒には自由度がある
ように見えます。しかしカパブランカは実際には黒は白の指し手に
よって特定の戦型しか選べないことを証明しました。本局はその
例です。

【第9局】カパブランカ(J.R.Capablanca) - スタイナー(Steiner)
ブダペスト、1928年

  1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 d5 4.Bg5 Nbd7 5.e3 Be7 6.Nf3 O-O

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  7.Rc1 c6 8.Bd3 dxc4 9.Bxc4 Nd5 10.Bxe7 Qxe7 11.O-O Nxc3 12.Rxc3 b6

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本局で示されるように黒の可能な手は 12...e5 だけです。

  13.Qc2! c5

13...Bb7 とは指せません。理由は 14.Bd3 の後黒は自陣を弱める
14...f5 という手を指さなければならないからです。14...g6 は 15.Be4
で c6 のポーンが落ちます。この場合もし白のクィーンとルークの
順序が逆だとこの変化は成立しません(逆だと 16.Bxc6 の後 16...Rc8
でビショップを釘付けにされます)。

  14.dxc5 Nxc5 15.b4

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  15...Na6

黒は白のポーンを攻撃することにより先手を取ろうとしています。
15...Nd7 とこちらに引くのは 16.Bd3 g6 17.Rc7 で 18.Be4 の狙い
がきつくなります。

  16.a3 Bb7 17.Bd3 g6 18.Rc1!

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黒がルークをぶつけて来るのを阻止しています。18...Rac8 は
19.Rxc8 Rxc8 20.Qxc8+ Bxc8 21.Rxc8+ Kg7 22.Bxa6 で駒交換
は白の圧倒的な割得になります。

  18...Rad8 19.Ne5 Qd6 20.f4 Nb8 21.Rc7 Ba8 22.Rxa7 Nc6

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  23.Rxa8

強手です。23.Nxc6 は 23...Bxc6 24.Qxc6 Qxd3 で黒にも反撃の
可能性が出てきます。

  23...Nxe5 24.Rxd8 Rxd8 25.Be2!

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  25...Qd2

必死の反撃です。25...Nd7 と逃げるのは 26.Rd1 Qe7 27.Qc7 Kf8
28.Bb5 で終わりです。

  26.Qxd2!

駒得には目もくれないカパブランカらしい簡明な決め手です。26.fxe5
は 26...Qxe3+ 27.Kh1 Rd2 で黒もまだ粘れます。

  26...Rxd2 27.Rc8+ Kg7 28.Kf1 Nd7

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黒はナイトの釘付けを避けることができません。白の 26 手目の
要諦です。

  29.Rd8 Kf6 30.Bb5 Rd5 31.a4!

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またしても強手です。31.Bxd7 は 31...Ke7 32.Rb8 Rxd7 33.Rxb6 Ra7
で黒はまだまだねばれます。

  31...Rxb5

31...Ke7 でポーン収局にするのは 32.Rxd7+ Rxd7 33.Bxd7 Kxd7
34.Ke2 で黒絶望です。

  32.axb5 Ke7 33.Rc8 e5 34.Rc6 e4 35.Ke2 f5 36.Kd2 Kf7 37.Kc3 1-0

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この試合から c 筋で白のルークが上に、クィーンが下にいる時は
黒はビショップを b7-h8 の斜筋に展開させることができないことが
分かります。無理にすればクィーン側が致命的な弱点を抱え込み
ます(無事にできる場合の例は第8局を参照)。

投稿者 yamagishi

2005年10月02日

「激闘争覇のクィーンズ・ギャンビット」(第10回)

第1章 オーソドックス防御

オーソドックス防御の現代の戦型

ボゴリュボフの貢献

本局は前局と対を成す興味深い試合で、ボゴリュボフは黒の解放
手 ...e5 を白が妨げることができることを示します。それによって黒
の展開を一つの戦型に制限しています(11手目の解説を参照)。

【第10局】ボゴリュボフ(E.D.Bogolyubov) - トマス卿(Sir G.A.Thomas)
カールスバート(Carlsbad)、1929年

  1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Nf6 4.Bg5 Nbd7 5.e3 Be7 6.Nf3 O-O 7.Rc1 c6 8.a3

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  8...Ne4

最善手です。ここで 8...dxc4 9.Bxc4 Nd5 は白の重要な 8.a3 という
手が生きる局面になってしまいます(第8局を参照)。

  9.Bxe7 Qxe7 10.Qc2 Nxc3 11.Qxc3

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  11...Re8

黒は ...e5 を目指します。しかしこの試合でそれが不可能であること
が分かります。カパブランカの 11...dxc4 12.Bxc4 b6 から ...c5 という
指し方が最善でした。

  12.Rd1

この手で白は黒からの 12...dxc4 13.Bxc4 e5 を牽制しています。
無理に来れば 14.dxe5 Nxe5 15.Nxe5 Qxe5 16.Qxe5 Rxe5 17.Rd8+
で黒キングが詰まされます。まったく大したことのないように見える
手が大きな意味を持つ場合があることは本局を同じ大会のイェーツ
(Yates)対ギルグ(Gilg)戦と比較すると良く分かります。その試合で
は同じ局面から白が 12.Be2 と指し以下 12...dxc4 13.Bxc4 e5
14.O-O e4 と進んで互角の形勢になりました。

  12...Qf6 13.Be2

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  13...b6

黒は ...e5 と指すつもりであった作戦を変更しました。たとえ
13...g6 で準備をしても以下 14.O-O dxc4 15.Bxc4 e5 16.dxe5 Nxe5
17.Nxe5 Qxe5 (17...Rxe5 18.f4!) 18.Qxe5 Rxe5 19.Rd8+ Kg7
20.Rfd1 で最下段の駒が釘付けになり黒の破綻です。

  14.O-O Ba6 15.b4 Rac8 16.Rc1

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  16...e5

16...c5 は 17.bxc5 bxc5 18.Qa5 です。

  17.Rfd1 exd4

17...e4 は 17.Nd2 で白は最終的には f3 で黒の締め付けを突破
することができます。

  18.Qxd4!

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  18...Ne5

18...Qxd4 は 19.Nxd4 c5 20.Bg4! が強烈です。

  19.Nxe5 Qxe5 20.Qxe5 Rxe5

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  21.b5!

決まりをつけに行きます。21...cxb5 なら 22.cxb5 Bb7 23.Rxc8+ Bxc8
24.Rc1 の後 Rc7 で勝勢の局面になります。

  21...Bb7

黒はポーンを犠牲にしてしのぎます。

  22.bxc6 Rxc6

22...Bxc6 23.cxd5 Bb7 よりも優ります。

  23.cxd5 Rxc1 24.Rxc1

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  24...Kf8

24...Rxd5? には 25.Bf3 があってダメです。

  25.Rc7 Bxd5 26.Rxa7 Bb3 27.Kf1 Rc5 28.Bd3 Rc1+ 29.Ke2 Ra1

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  30.e4 g6 31.h4 Ke8 32.Bb5+ Kd8 33.Ke3 Ra2 34.g3 Kc8 35.Be8

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白は a3 のポーンと引き換えに黒の f7 のポーンを取る作戦です。
そうなれば白はキング側でポーン2個優勢になります。

  35...Kb8 36.Rd7 Kc8

36...Ba4 は 37.Bxf7! Rxa3+ 38.Rd3! で、36...Rxa3 は 37.Rd3 で
白の勝ちです。

  37.Ra7 Kb8 38.Re7! Rxa3 39.Kd4! Kc8 40.Ke5

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  40...Kd8 41.Kf6 Bc4(Fritz8 によれば 41...Ba4 で黒の勝勢です。)
  42.f4 b5 43.Bxf7 Ra6+ 44.Be6!

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  44...b4

44...Rxe6+ ならば面白いクィーン収局になります。手順は以下
45.Rxe6 Bxe6 46.Kxe6 b4 47.Kf7! b3 48.e5 b2 49.e6 b1=Q
50.e7+ Kc7 51.e8=Q Qb3+ 52.Kg7 Qxg3 53.Qe7+ で、その後
54.Qg5 で白は黒の二つのポーンを取れるでしょう。

  45.f5 gxf5 46.exf5 Bxe6

46...Rb6 は 47.Rd7+ Ke8 48.Rxh7 Kd8 49.Rh8+ Kc7 50.Rc8+ の
後 Rxc4 で白の勝ちです。

  47.fxe6 Ra3 48.Rd7+ Ke8 49.g4 Rf3+

Y051002L.GIF

  50.Kg5 Re3 51.Rxh7 Rxe6 52.Rb7 Re4 53.h5 Kf8 54.h6 Kg8 55.Kh5 0-1

Y051002M.GIF

この試合は c 筋で白のクィーンの下にルークがいる時にのみ黒が
クィーン側ビショップを b7-h1 の斜筋に展開できるということを立証
しています。さらに白が黒に押し付ける戦型を黒が受け入れなけれ
ばならないということも裏付けています。ここにオーソドックス防御の
真髄が表現されています。言葉で言えば簡単ですがオーソドックス
防御の展開は手間がかかり複雑です(第9局も参照)。

投稿者 yamagishi

2005年10月05日

「激闘争覇のクィーンズ・ギャンビット」(第11回)

第1章 オーソドックス防御

オーソドックス防御の現代の戦型

アリョーヒンの防止戦法

これまで見てきた試合から防御の局地戦の要点を習得し白が
黒に強要する戦型に合わせて防御の作戦を適応させれば黒が
互角の形勢を達成できることが分かりました。その後は ...e5
又は ...c5 とポーンを突いてクィーン側ビショップを自由に展開
させることができるようになるでしょう。

1922 年ロンドンでの対カパブランカ戦の後アリョーヒンはこの
ことに気付きました。そして少なくとも一時的に黒の解放手を
防ぎ、その得られた時間を利用して黒が ...dxc4 でセンターを
放棄した後白が得る空間の少しの優位を地固めすることを目
的とした新しい戦法を創案しました。最初彼はこの新戦法で
大きな成功を収め、カパブランカでさえアリョーヒンとの番勝負
で形勢の釣り合いを保つのに大きな困難をきたしました。

【第11局】アリョーヒン(A.Alekhine) - カパブランカ(J.R.Capablanca)
世界選手権戦第22局、ブエノスアイレス(Buenos Aires)、1927年

  1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 d5 4.Bg5 Nbd7 5.e3 Be7 6.Nf3 O-O
  7.Rc1 c6 8.Bd3 dxc4 9.Bxc4 Nd5

Y051005A.GIF

  10.Bxe7

以前にアリョーヒンはもっと攻撃的な 10.Ne4 を指したことが
ありましたが 10...f6 11.Bh4 Qa5+ 12.Ke2 N7b6 と黒に反撃
され危険すぎることが分かりました。

  10...Qxe7 11.Ne4 N5f6

これが正しい手順です。11...Qb4+ はカパブランカが第6局で
指した手ですが以下 12.Qd2 Qxd2+ 13.Kxd2 Rd8 14.Rhd1 N5f6
15.Nxf6+ Nxf6 16.Bb3! (16...b6 の防ぎです。16...c5 も同じで
17.Ke1! cxd4 18.Rxd4 Rxd4 19.Nxd4 で白優勢です。) と進み
解放手の ...c6 と ...e5 のいずれも指すことができませんでした。

  12.Ng3 Qb4+ 13.Qd2 Qxd2+ 14.Kxd2

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  14...Rd8 15.Rhd1 b6 16.e4 Bb7 17.e5 Ne8 18.Ke3

Y051005C.GIF

  18...Kf8

第16局でカパブランカはすぐに 18...c5 と指しましたが 19.d5 exd5
20.Bxd5 Bxd5 21.Rxd5 で不利な局面になりました。

  19.Ng5

第28局でアリョーヒンは 19.h4 と指しましたが、本譜の手の方が
ずっと優ることを認めています。

  19...h6 20.N5e4 Ke7 21.f4 f5

Y051005D.GIF

  22.Nc3

22.exf6e.p. は22...Ndxf6 で黒は d5 の地点を支配し十分な反撃
の機会が出てきます。

  22...Nc7 23.Nge2 g5 24.h4 g4

黒は 24...gxh4 25.Rh1 Rg8 26.Rxh4 Rxg2 と指すこともできました。

  25.Ng3 a5 26.Bb3

Y051005E.GIF

  26...Rac8

第24局でカパブランカはより強い手の 26...b5 を指しすぐに互角
になりました。

  27.a3 Rf8 28.Rd2 Ba8

ルークのために b 筋を空けました。

  29.Rdc2 c5

29手目にしてようやく黒は互角の形勢を与えてくれる眼目の手を
指すことができました。

  30.dxc5 Nxc5

アリョーヒンはこの手を決定的な誤りとし、30...bxc5 の後 b 筋と
d5 の地点を占拠すれば黒は十分反撃できるだろうと言っています。

  31.Na4 N7a6

Y051005F.GIF

  32.Bxe6!

非常に見つけ難い類の切りです。白はビショップの代わりにポーン
2個と攻撃を得ます。

  32...Kxe6 33.Nxb6 Rb8

アリョーヒンは 33...Rcd8 の方がはるかに良いと考え以下 34.Rxc5 Nxc5
35.Rxc5 Rb8 36.Na4 (36.Nxa8 Rb3+) Rfc8 37.Rxc8 Rxc8 38.b4 axb4
39.axb4 で白の有利はほんのわずかなものでしかないとしました。

  34.Nxa8 Rb3+

34...Rxa8 とナイトを取るのは 35.Ne2! で Nd4+ の他にも b4 や
Rxc5 の狙いが残ります。

  35.Rc3 Rxc3+

Y051005G.GIF

  36.bxc3!

カパブランカの予期しない手でした。彼は多分 36.Rxc3 を予期し
36...Rxa8 37.b4 axb4 38.axb4 Nxb4! 39.Rxc5 Ra3+ の後 Nd3(+)
で黒が優勢であると読んでいたのでしょう。

  36...Rxa8 37.Rd1 Rf8

37...Nb7 は 38.Rb1 でルークを侵入されるので仕方のない手です。

  38.Rd6+ Ke7 39.Rxh6 Nc7 40.Rh7+ Kd8 41.c4 N7e6

Y051005H.GIF

  42.Ra7?

この手は悪手でした。アリョーヒンは Ne2-c3-d5 で黒の ...Nxf4
による反撃を封じて楽勝(d5 に陣取ったナイトの圧倒的な威力で)
だったと指摘しています。

  42...Nc7 43.Rxa5 N5e6 44.h5

44.Ne2 の方が強い手ですがアリョーヒンによればそれでも 44...Kd7
45.Nd4 Nxd4 46.Kxd4 Rb8! 47.Ra7 Kc6 48.e6 Kb6 49.Ra4 Nxe6+
50.Ke5 Re8 51.Kxf5 g3! で黒はしのげます。

  44...Kd7 45.h6

Y051005I.GIF

  45...Nxf4! 46.Kxf4 Ne6+ 47.Ke3 f4+ 48.Kf2 fxg3+ 49.Kxg3 Rh8 50.Rd5+ Ke7

Y051005J.GIF

  51.c5 Rxh6 52.c6 Nf8 53.Rc5 Kd8 54.Kxg4 Rg6+ 55.Kf3 Kc7

Y051005K.GIF

非常に面白い局面です。白は小駒の代わりにポーン4個を獲得
していますが黒はルークの交換を許さないので白は勝てません。

  56.g4 Ne6 57.Rd5 Nd8 58.Rc5 Ne6 59.Rd5 Nf8 60.Ra5 Rxc6 61.Ke4 Rc1

Y051005L.GIF

  62.Ra7+ Kc6 63.Ra6+ Kd7 64.Ra7+ Ke6 65.Ra6+ Ke7 66.a4 Nd7 67.Rh6 Re1+

Y051005M.GIF

  68.Kd4 Nxe5 69.a5 Nxg4 70.Rh7+ Kd6 71.a6 Ra1 72.a7 Nf6 73.Rb7 Nd7

Y051005N.GIF

  74.Rb2 Rxa7 75.Rd2 Nc5 76.Kc4+ Kc6 77.Rh2 Ra4+ 78.Kc3 Rg4 79.Kd2 Rg3

Y051005O.GIF

  80.Rh5 Kb5 81.Ke2 Kc4 82.Rh4+ Kc3 83.Kf2 Rd3 84.Rf4 Kd2
  85.Kg2 Rd5 86.Kf3 Kd3 1/2-1/2

Y051005P.GIF

大変な長手数の試合でした。そして進行を追って行くのも非常に
困難でした。実際アリョーヒンの解説がなかったらほとんど不可
能だったかもしれません。注意すべき二つのポイントがあります。
第1は26手目まで純粋な局地戦の戦いが起こらなかったことです。
26手目から第24局と違う展開になりました。第2は最終的に黒が
...c5 で解放することができたことです。もっともこの重要な手を
準備するのに29手を要しました。

投稿者 yamagishi

2005年10月11日

「激闘争覇のクィーンズ・ギャンビット」(第12回)

第1章 オーソドックス防御

オーソドックス防御の現代の戦型

ラスカーの受けの戦法

本局は前局とは異なる防御の戦法です。ラスカーはより積極的な、
しかしより危険を伴う戦型を採用しました。彼は早期に解放手 ...e5
を指すことに成功しましたがそれにもかかわらず短手数で負けて
しまいました。

【第12局】アリョーヒン(A.Alekhine) - ラスカー(Em.Lasker)
チューリヒ(Zürich)、1934年

  1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Nf6 4.Nf3 Be7 5.Bg5 Nbd7 6.e3 O-O

Y051011A.GIF

  7.Rc1 c6 8.Bd3 dxc4 9.Bxc4 Nd5 10.Bxe7 Qxe7
  11.Ne4 N5f6 12.Ng3 e5

Y051011B.GIF

多少の危なっかしさを甘受してもこの防御につきものの問題を解決
しようとする積極的ながらかなり危険な試みです。

  13.O-O exd4 14.Nf5

単に 14.exd4 と取る方が白にとって有望です。アリョーヒンは
14.exd4 Nb6 15.Re1 Qd6 16.Bb3 Bg4 17.h3 で d4 のポーンを
犠牲にする筋もあると言っていました。e 筋が開いているので
白は攻勢をとることができます。しかしポーンを犠牲にしなくても
14.Nxd4 Nb6 15.Bb3 で白は攻勢をとることができます。

  14...Qd8 15.N3xd4

Y051011C.GIF

  15...Ne5 16.Bb3 Bxf5 17.Nxf5 Qb6?

Y051011D.GIF

ごく普通の手に見えますが実際は敗着でした。17...g6 ならほぼ
互角でした(エイベ(Euwe)対フロール(Flohr)、ノッティンガム
(Nottingham)、1936年)。

  18.Qd6! Ned7

18...Ng6 には 19.Nh6+ があります。

  19.Rfd1 Rad8 20.Qg3 g6 21.Qg5

Y051011E.GIF

白の狙いは 22.Rd6 Ne4 23.Rxg6+ Kh8 24.Qh6 です。

  21...Kh8 22.Nd6 Kg7 23.e4! Ng8 24.Rd3 f6 25.Nf5+ Kh8 26.Qxg6!! 1-0

Y051011F.GIF

アリョーヒンは黒の17手目の無駄手の後は白の最終攻撃はこれ
以上はない速やかさで行なわれたと評していました。アリョーヒン
の攻めを見るにつけ「常緑の局」や「不滅の局」の時代から長足の
進歩を遂げた攻撃の技法や閉鎖局面から開放局面へ移行させる
技法に目を見張らざるをえません。

ラスカーの防御法がカパブランカの防御法の改良になるのかは
判断が困難です。それはラスカーの防御法が滅多に指されない
のと白の他の指し方が実戦の厳しい試練にさらされたことがない
からです。しかしアリョーヒン自身は 11.Ne4 は通常の 11.O-O
より良い手ではないと言っています。このことは黒がほぼ互角を
達成できることを示唆しているようです。

まとめ

オーソドックス防御における問題とはとりもなおさず黒がどのように
クィーン側ビショップを展開すべきかということです。これまでの試合
をとおして過去や現在の巨匠たちがこの問題をどのように解決しよう
としたかを明らかにすることに努めてきました。

第1局でアンデルセンは ...b6 という単刀直入な手で解決しようと
しました。シュタイニッツがこの防御法との初の対戦で負かしたの
にもかかわらずこの防御法はその後の50年間実戦で指され続け
ました。この間にピルズベリーは有名な Ne5 に基づく戦法を創案し、
キング側攻撃による勝利をもたらしました。しかし防御の技術も
進歩しピルズベリーでさえ1904年ケンブリッジ・スプリングズでの
最後の大会では自分の戦略を引っ込め、キング側での幻影の弱点
を攻める代わりに黒のクィーン側の恒常的な弱点につけ込む指し方
に転向しました。カパブラカは白側でより確実な戦型を考案しアリョー
ヒンはそれを改良しました(第3局参照)。

次に見てきたのはラスカーの指し方に象徴的に現われている現代
の防御法でした。それはポーンの弱点を作るのを避け自らセンター
を放棄(...dxc4)し ...e5 又は ...c5 という解放手を指せるようにする
ものでした。その目的は二つあり一つはセンターの均衡を回復する
ことでもう一つはクィーン側ビショップの出口を確保することでした。
この目的はショーウォルターによって理想的に実行されましたが
正当に評価されることも広く採用されることもありませんでした。

次の変革期は 1907 年から 1920 年の間に起こりました。ルビー
ンシュタインはこの間にクィーンズ・ギャンビットの白で目ざましい
勝利を重ねました。当時はそれは彼の卓越した大局観指法に
よるものとみなされていましたが、今日(1950 年頃)では彼の大
成功の理由は彼の技術だけでなく明快な防御法がまだ見つかっ
ていなかったためというのが定説です。現在では彼の「歩数闘争
(tempo struggle)」戦法(Qc2)には5種類もの有力な防御法が考案
されています。黒にとって明快な戦型はカパブランカによって創案
されました。彼は第一次世界大戦の間に古いショーウォルターの
指し方を復活させ、防御を戦術的に強化して今日「カパブランカの
解放捌き」と呼ばれる戦法を登場させました。アリョーヒン攻撃(Ne4)
は主としてその意外性の効果で白の可能性を広げましたがやがて
それも克服されて行きました。

訳注

(1) 常緑の局(Evergreen Game) - シュタイニッツによって名付け
られた次の非公式試合
アンデルセン(Anderssen) - デゥフレスネ(Dufresne)、ベルリン、1852年
1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.b4 Bxb4 5.c3 Ba5 6.d4 exd4
7.O-O d3 8.Qb3 Qf6 9.e5 Qg6 10.Re1 Nge7 11.Ba3 b5 12.Qxb5 Rb8
13.Qa4 Bb6 14.Nbd2 Bb7 15.Ne4 Qf5 16.Bxd3 Qh5 17.Nf6+ gxf6
18.exf6 Rg8 19.Rad1 Qxf3 20.Rxe7+ Nxe7 21.Qxd7+ Kxd7
22.Bf5+ Ke8 23.Bd7+ Kf8 24.Bxe7# 1-0

(2) 不滅の局(Immortal Game) - ファルクビア(Falkbeer)によって
名付けられた次の非公式試合
アンデルセン(Anderssen) - キーゼリツキー(Kieserizky)、ロンドン、1851年
1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Bc4 Qh4+ 4.Kf1 b5 5.Bxb5 Nf6 6.Nf3 Qh6
7.d3 Nh5 8.Nh4 Qg5? 9.Nf5 c6 10.g4 Nf6 11.Rg1 cxb5 12.h4 Qg6
13.h5 Qg5 14.Qf3 Ng8 15.Bxf4 Qf6 16.Nc3 Bc5 17.Nd5!? Qxb2
18.Bd6 Bxg1 19.e5 Qxa1+ 20.Ke2 1-0 (20...Na6 21.Nxg7+ Kd8
22.Qf6+ Nxf6 23.Be7#; 20...Ba6 21.Nc7+ Kd8 22.Nxa6 +-)

投稿者 yamagishi