2005年04月15日

「ルイ・ロペスの進化」(5)

第2章 白がセンターを閉鎖状態に保つ

アンデルセンの戦法

モーフィーのルイ・ロペスの指し方と対照的にアンデルセン
はクイーン・ポーンを d3 に留め、自分の白枡ビショップを黒
の c6 のナイトと交換し、二つのナイトを保持して動き回るの
を好んでいました。その考え方は全体として、ほぼ同時代の
強豪のド・ラ・ブルドネ(de la Bourdonnais)やモーフィーとは
異なり、センターでの攻撃は側面での攻撃より優るというこ
とにアンデルセンが気付いていなかったことを示唆していま
す。しかし彼の手法は堅固な陣形を築いたのも確かで、セ
ンターで白が不利をこうむるということはありません。

【第4局】アンデルセン(A.Anderssen) - マックス・ランゲ(Max Lange)
1868年、アーヘン(Aachen)

  1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.d3 d6
  6.Bxc6+ bxc6

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  7.h3 g6 8.Nc3 Bg7 9.Be3 O-O 10.g4 Re8 11.Ne2 d5
  12.Ng3?

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ある解説者は悪手に違いないと言っています。しかし代わ
りに推薦する 12.Nd2 でも主導権は黒にあったでしょう。

  12...Nxg4

類を見ないサクリファイスです。13.hxg4 と取れば 13...Bxg4
(14...Qf6 の狙い) です。以下 14.Kf1 ならば 14...dxe4
15.Nxe4 f5 で駒を取り返すことができます。また 14.Rg1
ならば 14...Qf6 15.Nf5 gxf5 16.exf5 Bxf5! (ただし 16...Qxf5
には 17.Nh4 があります)です。

  13.Bg5 Nf6 14.Qe2 Qd6 15.Qd2 Rb8 16.b3 c5 17.c4

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  17...dxe4 18.dxe4 Bb7 19.Qe3 Nxe4!

双ビショップのための筋を開きます。

  20.Nxe4 Qc6

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  21.Nfd2

黒のサクリファイスの見事さは 21.Ned2 e4! で g7 ビショッ
プの筋を通す変化に示されます。

  21...f5 22.f3 fxe4

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  23.fxe4

23.Nxe4 と取ると 23...Qb6 が強手で以下 24.Qxc5 (24.Nxc5
は 24...e4!) Qxc5 25.Nxc5 Bxf3 となります。

  23...Re6 24.O-O-O a5 25.a4 Qb6 26.Qc3

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  26...Qb4

安全ですが最短の勝ち方ではありません。26...Rd6 で次
に d4 に上がりさらにクィーンを d6 に回して白の d2 のナ
イトを釘付けにすれば勝負は中盤戦で決したでしょう。

  27.Qxb4 cxb4 28.Rde1 h6 29.Bh4 g5 30.Bg3 h5

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巧妙な手です。

マックス・ランゲは双ビショップを最高に生かす方法を心得
ていました。この手は 31.h4 を防ぐと共に自分の g7 のビ
ショップのために h6 の地点を空けています。

  31.Re2 Rd8 32.Rg1 Rg6 33.Bh4 Rd3 34.Bxg5 Rxh3
  35.Reg2 Kh7

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  36.Kd1

ここでの推奨された手順は 36.Bd8 Rxg2 37.Rxg2 Bh6
38.Kd1 Bxd2(?) で、異色ビショップが残るので白が引き分
けにできる可能性が高いというものでした。しかし黒は
38...Rd3! 39.Bxc7 Bxe4 と指すことができ双ビショップの筋
が開いてその働きが非常に強力になります。

  36...Bc8 37.Bd8 Bg4+ 38.Kc2 Rc6 39.Nf1 Rc3+
  40.Kb2 Bh6

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  41.Rg3

41.Ng3 なら 41...Be3 で次の ...Bd4 の狙いが非常にきつく
なります。

  41...Rc1 42.Rd3!

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非常に巧妙な誘いの隙です。もし 42...Be2 なら 43.Rd7+ Kh8
44.Bxc7 Rxc7 45.Rxc7 Rxf1 46.Rxf1 Bxf1 47.c5 h4 48.c6 h3
(48...Bh3 は 49.Rf7 Bg4 50.Rf5 途中 49...Be6 なら 50.Rf6)
49.Rc8+ Kh7 50.c7 Ba6 51.Ra8 Bb7 52.Rb8 で引き分けに
持ち込めます。

同時代の解説者によるこの分析はその当時に特徴的な
妙手順を良く表しています。

  42...Re1!

ビショップで d2 の地点を監視しています。

  43.Rd5 Re2+ 44.Ka1 Rxe4 45.Ng3 Rd4 46.Rxd4 exd4
  47.Ne4 Bg7 48.Kb1 d3 49.Kc1

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  49...Bh6+ 50.Kb2 d2 51.Nf6+ Rxf6 52.Bxf6 d1=Q
  53.Rxd1 Bxd1 54.Bd8 Bf4 0-1

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この名局におけるマックス・ランゲの指し回しは今日の基準
に照らしても素晴らしいものです。注目すべき重要な要点は、
戦略に基づくセンターの開放、双ビショップによる局面の
支配の仕方、両者による見事な収局の技法です。優勝が
かかっていたこの重要な試合でマックス・ランゲは自身が
解説者としてだけでなく優れた実戦派でもあることを証明し
てみせました。

投稿者 yamagishi

2005年04月18日

「ルイ・ロペスの進化」(6)

第2章 白がセンターを閉鎖状態に保つ

シュタイニッツの戦法(白番で)−
白がセンターを固定したままキング側で進攻する

シュタイニッツの時からルイ・ロペスの進歩において重要な
新時代が始まります。前局で我々はアンデルセンがルイ・
ロペスの本質的な点、即ちセンターの支配を評価できてい
なかったことを見てきました。シュタイニッツは大局的判断
から側面での攻撃はセンターが安定している場合にのみ
成功することに気付いていました。モーフィーとは対照的に
彼はセンターを支配することは追求せず、自分の陣形を強
固にすることで満足していました。センターが安定している
時、そしてその時だけシュタイニッツは敵のキングに対して
攻撃を開始しました。ラスカーとの世界選手権戦における
本局は彼の深遠な戦略の典型的な一例です。

【第5局】シュタイニッツ(W.Steinitz) - ラスカー(Em.Lasker)
1894年、第2局

  1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nf6 4.d3 d6 5.c3 Bd7

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ラスカーはセンターをあまり気にしないという印象を不当に
与えてきたようです。それはともかくここで彼は局面にマッ
チした手を指すことができませんでした。黒の立場でこの
戦型を有利に運ぶ手順が既に何年か前に示されていまし
た。その手順とは 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6
5.d3 d6 6.c3 です。本譜とは 3...a6 4.Ba4 の交換がある点
が異なります。さらに 6...g6 7.Nbd2 Bg7 8.Nf1 O-O 9.h3 d5
10.Qe2 b5 11.Bc2 d4 12.g4 Qd6 と続き黒の面白い形勢で
す(グンズベルク対チゴーリン戦、1890年)。

白はどのみちビショップを引かなければならないのでラス
カーの手は手損になります。

  6.Ba4

将来のビショップの交換を避けるための手です。

  6...g6 7.Nbd2 Bg7

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  8.Nc4

自然な手は 8.Nf1 ですが、この手は重要な変化で、黒の
...d5 への対策を強化しています。

  8...O-O 9.Ne3 Ne7 10.Bb3

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  10...c6

ここでは 10...Ng4 として e3 の強力なナイトと交換し f 筋の
ポーンを突き進めて行くことも十分考えられました。

  11.h4 Qc7 12.Ng5

好手です。表面的には単純に攻撃を狙っている手に見え
ますが、真の目的はセンターの防御にあることが後に分か
ってきます。

  12...d5 13.f3 Rad8 14.g4

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前局と比較するとシュタイニッツがいかに慎重に攻撃を準
備しているかが分かります。

  14...dxe4

この手も少し疑問です。黒はセンターの緊張を解消するの
が早過ぎます。

  15.fxe4 h6 16.Qf3!

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  16...Be8

16...hxg5 とナイトを取ると 17.hxg5 Nh7 18.Nf5! で、g5 の
ポーンを守り Qh3 を狙います。

  17.Bc2 Nd7 18.Nh3

ナイトを引いて受けに参加させます。

  18...Nc5 19.Nf2

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  19...b5

この反撃も時期尚早です。ラスカーは 19...f6 なら白の攻撃
を止められたと言っていました。しかし白は 20.h5 g5 21.Nf5
としてキング側を安全にしてから Be3 とし適当な準備をして
から d4 でセンターから行動を起こすことができました。実際
のところ黒のいくつかの疑問手が形勢の悪化につながりま
した。

  20.g5 h5 21.Nf5

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  21...gxf5

21...Ne6 の方が良い受けでした。その場合白は 22.Nxg7 Nxg7
23.Be3 として黒枡での強さを生かしていくことになったでしょう。

  22.exf5 f6 23.g6 Nxg6

他に適当な受けはありません。23...Bd7 なら 24.Qxh5 Rfe8
25.Qh7+ Kf8 の後白は h 筋のポーンを突いて行くだけです。

  24.fxg6 Bxg6 25.Rg1

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  25...e4

ラスカーは後に最善の受けは 25...Kh7 26.Rxg6 Kxg6 27.d4+
で、まだ戦う余地があっただろうと評していました。

  26.dxe4 Kh7 27.Rxg6 Kxg6 28.Qf5+ Kf7 29.Qxh5+ Kg8
  30.Qxc5 Qe5 31.Be3 a6 32.a4 Rfe8 33.axb5 axb5

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  34.Qxe5 Rxe5 35.Ra6 Rc8 36.Ng4 Re7 37.Bc5 Ree8
  38.Ne3 Bf8 39.Bd4 Kf7 40.h5 Be7 41.Bb3+ Kf8 42.Nf5 1-0

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投稿者 yamagishi