2005年05月08日

「ルイ・ロペスの進化」(10)

第4章 シュタイニッツ防御

ベルリン防御が流行の頂点に達しルイ・ロペスに対する
有効な防御法の問題を解決しそうに思われた時、シュタ
イニッツは直感的に隙だらけのポーンの陣立てを疑問視
し独自の道を歩みました。

彼は堅固なセンターを築いた側は側面での攻撃でつぶ
される恐れはほとんどないと確信していました。そして
この理論に基づいて適切な防御法を捜し求めました。

しかし残念ながら彼は気質的に自分の理論の正しさを
実証する選手としては不適当でした。センターの支配を
維持するために彼はしばしば奇妙な手順を用いました。
そしてそれは彼の戦法と理論に不信感を抱かせました。
今日(1950年頃)では彼の理論は躊躇なく受け入れられ
ています。チェスの技術の進歩により彼の基本理論は
実戦で成功を収めています。さらに有効な指し方は第5
章の「遅延シュタイニッツ防御」で説明します。

シュタイニッツの戦法

本局はシュタイニッツのセンターの理論を良く表しています。

【第8局】ラスカー(Em.Lasker) - シュタイニッツ(W.Steinitz)
世界選手権戦第7局、1894年

  1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 d6 4.d4 Bd7 5.Nc3 Ne7

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シュタイニッツは定常的にこの手を指していましたが、
「自然な」...Nf6 を好んだ同時代の選手からは批判され
ていました。センターを維持しようとする彼の考え方は
正しかったのですが、間違っていたのはその手段である
ことが後で分かります。

  6. Be3

これまではラスカーは 6.Bc4 と指しました。そしてシュタ
イニッツは 7.Ng5 という狙いに備えてセンターの維持を
放棄しました(もっとも 1899 年の対シュレヒター戦のよう
に 6...h6 とすれば可能ですが)。その代わり 6...exd4
7.Nxd4 Nxd4 8.Qxd4 Nc6 9.Qe3 で少し手得をしました。

  6...Ng6 7.Qd2 Be7 8.O-O-O a6 9.Be2

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  9...exd4 10.Nxd4 Nxd4 11.Qxd4 Bf6 12.Qd2 Bc6
  13.Nd5 O-O

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白がセンターを支配した局面に至りました。シュタイニッツ
と同時代の選手は彼の明らかな方針変更について「セン
ターを維持するためにわざわざ ...Ne7 と指したのにどうして
ほどなくそれを放棄するのか」と聞いたのももっともなこと
です。この場合に限って言えば後から分かってきますが
彼はキング側の攻撃に反撃するために縦筋を開けたかった
のです。これは通常お互い逆にキャッスリングした場合に
見られます。

  14.g4

このポーン突きは時期尚早です。これからラスカーが若い
時には(訳注 この時 26 歳)まだ完全にはシュタイニッツ
のセンターの理論を評価していなかったことを示しています。

  14...Re8 15.g5

この手の前に 15.f3 が必要でした。

  15...Bxd5 16.Qxd5

この手よりも 16.gxf6 の方が優りました。しかしそれでも
黒はキング側の攻撃に対するセンターからの十分な反撃
が可能だったでしょう。

  16...Re5!

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周到な一連の受けの始まりです。

  17.Qd2 Bxg5 18.f4 Rxe4!

この手が受けの核心です。局面がここまで進めばこの手を
見つけるのはさほど難しくありません。しかしシュタイニッツ
がこの種の手を事前に思い描くのには自分の理論に対する
強い確信が必要だったことでしょう。

  19.fxg5 Qe7 20.Rdf1 Rxe3 21.Bc4

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  21...Nh8

当時の批評家たちはこの手で 21...Rf8 と守った方が良い
と言っていました。しかしシュタイニッツとしては恐らく
22.h4 Qe5 23.h5 Nf4 24.g6 hxg6 25.hxg6 Nxg6 で h 筋を
こじあけられるのを避けたかったのでしょう。もしそうなれば
黒は白からの不意打ちに気をつけなければならなくなります。

  22.h4 c6 23.g6!

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紛れを求める唯一の筋です。

  23...d5

この手の代わりに 23...hxg6 24.h5 g5 25.h6 gxh6
26.Rxh6 Re8 もあり白の攻撃をしのぐことができたでしょう。

  24.gxh7+ Kxh7 25.Bd3+ Kg8 26.h5 Re8 27.h6 g6

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  28.h7+ Kg7 29.Kb1 Qe5 30.a3 c5 31.Qf2 c4

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  32.Qh4!

この手についてシュタイニッツは「一見白は g6 のポーンを
取って勝てそうですが、実際は 32.Bxg6 fxg6 33.Qh4 Nf7
34.h8=Q+ Rxh8 35.Rxf7+ Kxf7 でうまくいきません。」と
評しています。

  32...f6

ラスカーは「シュタイニッツの 32 手目は 32...Kf8 を予想し
ていました。それに対しては 33.Bf5 でドローになる可能性
が大きいと感じていました。このビショップは Rhg1 がある
ので取れません。」と言っています。

  33.Bf5! kf7 34.Rhg1 gxf5

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この取りは危険過ぎます。一手前でキングを寄らずにビショ
ップを取ったのと同じことになりました。

  35.Qh5+ Ke7 36.Rg8 Kd6

36...Kd8 と逃げるのは 37.Ka2 (38.Rfg1 の狙い) Re1
38.Qxe8+! Qxe8 39.Rxe1! でダメです。

  37.Rxf5 Qe6 38.Rxe8 Qxe8 39.Rxf6+ Kc5 40.Qh6 Re7

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  41.Qh2!

41.Rf8? には 41...Rxh7! の切り返しがあります。

  41...Qd7

41...Qd8 の方が良い受けだったのではと言われていまし
たが白には 42.Qf2+ Kb5 43.a4+ Kxa4 44.Qc5 という追及
があります。(訳注 Fritz8 によると以下 44...Re1+
45.Ka2 Ra1+ 46.Kxa1 Qxf6 47.Ka2 Qf3 でドローのようで
す。従って 41...Qd7 が敗着ということになります。)

  42.Qg1+ d4 43.Qg5+ Qd5 44.Rf5 Qxf5 45.Qxf5+ Kd6
  46.Qf6+ 1-0

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本局はシュタイニッツのセンターの理論を良く具現化して
います。と同時にラスカーのチェス戦術の天賦の才も良く
発揮されています。興味深いのは批評家達が異口同音
にセンターを維持する目的のシュタイニッツ流の ...Ne7 を
非難していることです。実戦的にはこの手はほとんど成功
を収めませんでした。今日(1950 年頃)ではシュタイニッツ
の理論は正しかったけれどもただしそれは「遅延シュタイ
ニッツ防御」によってのみ成し遂げられるということが知ら
れています。

投稿者 yamagishi

2005年05月14日

「ルイ・ロペスの進化」(11)

第4章 シュタイニッツ防御

ラスカーの貢献

晩年の 1898 年のウィーン大会と 1899 年のロンドン大会
でシュタイニッツは(...Ne7 でなく)より自然な ...Nf6 に転向
しました。これはセンターを維持する彼独自の試みが戦術
的に実現不可であることを彼が認めた証左でした。ラスカー
との記念すべきドローの1局を除いて彼はひどい不調で、
タラシュ(Tarrasch)、ピルズベリー(Pillsbury)、ショーウォー
ルター(Showalter)に負けました。

いまやこのシステムを実戦で指せるようにするのは彼の
後継者のラスカーの手に委ねられました。ラスカーの鋭い
感覚はすぐにシュタイニッツ防御の限界を見抜きました。
世界選手権者は黒の問題がキング側ナイトの展開である
ことに気付きました。そしてシュタイニッツと同じく f6 の地点
は白からのポーンの e5 突きにさらされるので良い位置で
はないと認識しました。そのため彼は h7 を経て f8 にナイ
トを移動しました。これは単純に見えて実際は深い構想の
防御法でした。

【第9局】ベルンシュタイン(O.Bernstein) - ラスカー(Em.Lasker)
親善試合、モスクワ、1914年

  1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nf6 4.O-O d6 5.d4 Bd7
  6.Nc3 Be7

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  7.Re1 exd4 8.Nxd4 O-O 9.Bxc6 bxc6 10.Bg5 h6 11.Bh4

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  11...Nh7

1921 年のカパブランカ(Capablanca)との世界選手権戦第
3局でラスカーはもっと堅固に 11...Re8 と指し、以下
12.Qd3 Nh7 13.Bxe7 Rxe7 14.Re3 Qb8 15.b3 Qb6 と進み
ました。本局と同じような構想の下に進行していることが
見て取れます。つまりクィーン側で圧力をかけながら同時
に自分自身の e5 の地点をしっかりと支えています。しかし
白の戦略的な構想は 1914 年のサンクト・ペテルブルクで
のベルンシュタイン対ラスカー戦に一番良く現われていま
す。その試合では 11...Re8 12.e5 Nh7 13.Bg3 a5 14.Qd3 Bf8
15.exd6 cxd6 16.Rxe8 Qxe8 と進みましたが、白は黒の
センターを壊滅させるには至りませんでした。

  12.Bxe7 Qxe7 13.Qd3 Rfe8 14.Re3 Nf8 15.Qc4 c5

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  16.Nd5

このナイト跳ねは大変脅威的に見えます。しかし 16.Nf3 Be6
17.Qa6 として黒のポーン構造の弱点を狙う方が簡明でした。

  16...Qe5 17.Nb3 Be6!

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この手は ...c6 の狙いです。そしてラスカーの戦術の才能
を発揮できる面白いねじりあいの局面に進んで行きます。

  18.Qe2?

ここは18.Qa4 とかわすべきでした。以下 18...Qxb2 19.Nxc7 c4
20.Nxe8 cxb3 21.axb3 Bd7 22.Qa3 Qxa3 23.Rxa3 Bxe8
24.Rd3 という進行が予想され形勢はほぼ互角でした。

  18...Qxb2 19.c4

ここでは 19.Nxc7 は良くありません。それは 19...Bxb3 と
取られて a1 のルークが当たりになるからです。白のクィー
ンが a4 にいれば a2 のポーンで取り返して a1 のルーク
に紐がつきなんともありませんでした。

  19...Qxe2 20.Rxe2

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  20...Bxd5 21.cxd5 a5! 22.a4 Nd7 23.f3 Reb8

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他の選手なら a8 のルークで守っていなければならないの
で 21...a5 をためらったかもしれません。しかしラスカーは
白の a 筋のポーンの方がもっと弱くなることを見通してい
ました。このあたりにラスカーの大局観の素晴らしさが良く
現われています。

  24.Re3 Rb4 25.Nc1 Nb6 26.Rea3 f5!

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  27.Nd3 fxe4! 28.Nxb4 axb4 29.Re3 Nxd5 30.Rxe4

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  30...Nc3 31.Re7 b3 32.Rxc7 b2 33.Rf1 Rxa4 0-1

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この戦型はラスカー、カパブランカ、シュレヒター(Schlechter)
のような一流選手たちによってしばしば用いられました。
一見柔軟性に欠ける防御のように見えながら実際は個人
の創造性の余地の大きい防御です。それは本局のラスカー
の指し手を 11 手目の解説中の対カパブランカ戦と比較し
ても分かるでしょう。

投稿者 yamagishi : 14:00 | コメント (2)

2005年05月17日

「ルイ・ロペスの進化」(12)

第4章 シュタイニッツ防御

白の攻撃的戦型−ショーウォルターの戦法

前局に見られるようなシュタイニッツ防御の大局的な指し方
では、白の目標はポーンをe5に突き進めて黒のクィーン側の
形を崩し黒に収局に弱点となるダブル・ポーンを作らせること
でした。しかし黒はe5の地点を過剰に守ることによりこの狙い
に対処することができました。

白はキング側での攻撃を成功させる望みがほとんどありませ
んでした。それは黒の欠陥のないポーンの形と素通しのb筋
が白の攻撃の可能性を上回っていたからでした。

ショーウォルターのような攻撃型の選手たちが黒のc6のナイト
を早期に交換することにより黒にポーンでなくビショップで取り
返すようにさせて黒に代償を得られなくしようとしたのはもっとも
なことです。

ピルズベリーが採用して成功を収めたこの戦法は今日
(1950年頃)でも最強と考えられでいます。彼のバルデレー
ベンとの試合はこのシステムの好例です。

【第10局】ピルズベリー(H.N.Pillsbury) - フォン・バルデレーベン(C.von Bardeleben)
ミュンヘン、1900年

  1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nf6 4.O-O Be7 5.Nc3 d6
  6.d4 Bd7 7.Bxc6 Bxc6 8.Qd3

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  8...exd4

黒はセンターを放棄するのが1手早過ぎました。正しい手順
は 8...Nd7 9.Be3 (9.d5 は 9...Nc5 の後 10...Bd7) exd4
10Bxd4 O-O 11.Nd5 Bxd5 12.exd5 Bf6 13.Rfe1 Bxd4
14.Qxd4 (マローツィー(Maroczy)対カパブランカ(Capablanca)、
ロンドン、1922年)でした。この試合で黒は 8...Nd7 と 12...Bf6
でe5の地点(防御の要)を支えるのに成功しました(シュタイ
ニッツと同じ手法です)。

  9.Nxd4 Bd7 10.b3

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ラスカー(Em.Lasker)対カパブランカの世界選手権戦第14局
では 10.Bg5 O-O 11.Rad1 h6 12.Bh4 Nh7 13.Bxe7 Qxe7
14.Nd5 Qd8 15.c4 と進行し白が有利になりました。しかし
本譜の手のほうがより永続的な主導権を得られそうです。

  10...O-O 11.Bb2

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  11...Re8

より良い受けの手順は 11...c6 12.Rad1 Qc7 13.Rfe1 Rfe8
14.Nde2 Rad8 15.Nf4 Bf8 16.Qg3 Kh8 17.f3 Qa5
18.Nce2 Ng8 19.a3 Ne7 (ピルズベリー対シュタイニッツ、
ウィーン、1898年)でした。

  12.Rae1 Bf8 13.f4 Qe7 14.h3

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  14...c5

この手は弱体化を招きそうですが他に展開の方法がありま
せん。それに黒にはある構想がありました。

  15.Nf3 Bc6

白の 16.Nd5 を誘ってd6のポーンの弱点を覆い隠そうという
構想です。

  16.Nd5 Bxd5 17.exd5

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  17...Qd7

一見 17...Qd8 の方が強い受けのような感じがしますが
18.Ng5 g6 19.f5 Rxe1 20.Rxe1 Bg7 21.fxg6 hxg6 22.Rf1
という面白い継続手があり次の 23.Qf3 が強力な攻めに
なります。この変化はd3のクィーンがいかに好位置にいて
離れたキング側に圧力を及ぼしているかを示しています。

  18.Bxf6 gxf6 19.Nh4 b5 20.Qf5 Qxf5 21.Nxf5 Reb8

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  22.h4 a5 23.h5 h6 24.Rf3 a4 25.Kh2 axb3 26.axb3 Ra2

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  27.Re2 c4 28.bxc4 bxc4 29.Rc3 Rb4? 30.Re8 Rbb2
  31.Rg3+ 1-0

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本局はショーウォルター式の攻撃の見事な実例でした。
29手目より前の黒の悪手を指摘するのが困難です。

投稿者 yamagishi

2005年05月20日

「ルイ・ロペスの進化」(13)

第4章 シュタイニッツ防御

カパブランカの戦法

カパブランカはシュタイニッツ防御を受け入れた3人目の
世界選手権者でした。彼はそればかりを指していたとい
うわけではありません。しかしその正当性への信頼は
1914年のサンクト・ペテルブルクでの大会でラスカーに
負けて以来この偉大なライバルに対して定常的にこの
防御を用いてきたことで明らかです。二人の試合は必ず
しもこの防御に最終回答を与えたわけではありませんが、
その指し方に多くの新しい可能性が明示されました。

【第11局】エイベ(M.Euwe) - カパブランカ(J.R.Capablanca)
ロンドン、1922年

  1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nf6 4.O-O d6 5.d4 Bd7
  6.Nc3 exd4

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カパブランカは 7.Re1 (或いは 7.Bxc6 Bxc6 8.Qd3) で
強制されるより前にセンターを放棄します。その代わり
前局に見られるショーウォルターの戦型を回避しています。
カパブランカの予防の手法の好例がここに見られます。

  7.Nxd4 Be7

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  8.Re1

8.b3 の方が有用な手に見えますが 8...Nxd4 9.Qxd4 Bxb5
10.Nxb5 Nd7 11.Ba3 a6 12.Nc3 Bf6 13.Qe3 O-O
14.Rad1 Bxc3! (ラスカー対カパブランカ、ニューヨーク、
1924年) で白は互角の形勢しか得られません。

  8...O-O 9.Bf1 Re8 10.f3

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タラシュ(Tarrasch)は 10.b3、11.Bb2 を推奨していました。

  10...Nxd4!

カパブランカらしい手です。この手は 1921 年のラスカー
対カパブランカの世界選手権戦第12局での 10...Bf8
11.Bg5 h6 12.Bh4 g6 13.Nd5 Bg7 14.Nb5 g5 15.Ndxc7 gxh4
16.Nxa8 Qxa8 17.Nc7 (17.Qxd6 の方が良かった) となる
危険性を避けています。

  11.Qxd4 Be6

この手は白の 12.b3 に対して 12...Nd7 から 13...Bf6 を
用意すると共に 12...d5 を狙っています。

  12.Qf2 c6 13.Bd2

もし 13.Be3 なら 13...Qa5 です。

  13...Qb6

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  14.Na4

ナイトが遊び駒になりますが 14.b3 d5 でも黒有利です。

  14...Qxf2+ 15.Kxf2 d5 16.e5

16.exd5 と取ると 16...Nxd5 と取り返されて 17...b5、
18...Bc5+、19...Nb4 を狙われます。

  16...Nd7

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  17.g3

17.f4 の方が良い手ですがそれでも 17...b5 18.Nc3 Bc5+
19.Kf3 f6 20.exf6 Nxf6 で 21...d4 を狙われて白良くあり
ません。

  17...Bf5 18.Rac1 b5 19.Nc3 Bc5+ 20.Kg2 Nxe5

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カパブランカの着実な指し回しで白のセンターが壊滅し
ました。

  21.g4 Bg6 22.Kg3 h5 23.Bf4 f6 24.Bxe5 fxe5
  25.Bd3 Bf7

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黒は当然双ビショップを保持します。

  26.g5 g6 27.Re2 Bd6 28.Kg2 Kg7 29.Rce1 Re7
  30.Nd1 Rf8 31.Nf2 Be8 32.b3 Ref7

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黒の勝ちは確実です。それでもカパブランカが容赦なく
相手の弱点につけこんでいく様を見るのは興味をそそら
れます。

  33.c4 Rxf3 34.cxd5 cxd5 35.Bb1 Bc6 36.Rd1 R3f4
  37.Be4 Bc5 38.Nd3 dxe4! O-1

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39.Nxc5 とビショップを取れば 39...Rg4+ で白のキングが
即詰みになります。

カパブランカの真骨頂が現われた一局でした。何よりも
印象的なのはシュタイニッツ防御の厳しい制約の中で
彼がよどみなく一見何の苦心もない指し回しを披露する
ことができたことです。

2005年05月23日

「ルイ・ロペスの進化」(14)

第4章 シュタイニッツ防御

[Convekta(http://www.convekta.com/)から「Strategy 2.0」
というチェスソフトが発売されています。その中の講義(問題も
1,000題以上収録されています)の「Advantage in Space(広さ
の優位性)」という章にシュタイニッツ防御の局面がいくつか
取上げられています。今回からそれらを順に紹介していきます。
シュタイニッツ防御では黒はいつまでもセンターの緊張関係を
放置しておくことはできません。放置しておけばどうなるかは
黒の1手目(1...Nxd4)に対する解説を参照してください。本譜で
は白が Re1 とするまで放置していましたがこれでは遅すぎて
互角の形勢は望めません。−Yamagishi]

広さの優位性

陣地の広さは形勢判断における重要な要素です。自陣の陣地
が広ければよどみなく駒を配置することができ、ある側面から
反対側の側面に駒を移動させることも容易です。逆に陣地が
狭いと駒の移動に支障をきたすこともあります。ドイツの名棋士
タラシュは陣地の広さの重要性を強調していました。彼は陣地
が狭ければ敗北の原因になることさえあると言っていました。

【参考第1局】タラシュ(Tarrasch) - シュレヒター(Schlechter)
ライプチヒ、1894年

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  1.Re1!

タラシュによればこの手によってルイ・ロペスのシュタイニッツ
防御に疑問が提示されるそうです。その理由は黒が ...exd4
によってセンター・ポーンの交換を余儀なくされ、従って白に
広さの優位性を与えることになるからだそうです。

  1...Nxd4

センターの緊張関係を放置する 1...O-O? は 2.Bxc6! Bxc6
3.dxe5 dxe5 4.Qxd8 Raxd8 (4...Rfxd8 5.Nxe5 Bxe4
6.Nxe4 Nxe4 7.Nd3 f5 8.f3 Bc5+ 9.Kf1) 5.Nxe5 Bxe4
6.Nxe4 Nxe4 7.Nd3 f5 8.f3 Bc5+ 9.Nxc5! Nxc5 10.Bg5! Rd5
11.Be7 Re8 12.c4 (タラシュ対マルコ(Marco)、ドレスデン、
1892年) で白の駒得または交換得になります。

  2.Nxd4 exd4 3.Bxd7+ Qxd7 4.Qxd4 O-O 5.b3!

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この手は a1-h8 の斜筋にビショップで睨みをきかせる意図です。

  5...Rfe8 6.Bb2 Bf8 7.Rad1

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白はより多くの領域を支配しているので形勢も明らかに白有利
です。白の駒は活動性に優っています。特に白は3段目を利用
して駒をキング側に移動させることができます。

  7...Qc6 8.Rd3! Re6 9.Rde3 Rae8 10.h3 Qb6 11.Qd3 c6
  12.Na4! Qc7 13.c4!

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白はさらに陣地を広げます。

  13...Nd7 14.Kh1 f6 15.Qc2 Ne5 16.Nc3 Nf7 17.g4 Qa5
  18.Rd1

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  18...Qb6 19.h4 Ne5 20.Rg3 Nf7 21.f3 Nh8 22.Ne2 Qc7
  23.Rdg1

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白は陣地の広さを利用して攻撃に都合の良い配置替えを行う
ことができました。

  23...Qf7 24.Nd4 R6e7 25.g5! fxg5 26.Rxg5 g6

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  27.Nf5 Re5 28.f4 Rxf5 29.exf5 Bg7 30.fxg6 1-0

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投稿者 yamagishi

2005年05月26日

「ルイ・ロペスの進化」(15)

第4章 シュタイニッツ防御

[引き続き「Strategy 2.0」からで、今回は陣地の狭さをどう
克服するかがテーマです。−Yamagishi]

広さの優位性

陣地の狭い方は駒を交換して単純化を図るべきです。駒が
多いとお互い移動の邪魔になります。

【参考第2局】タイヒマン(Teichmann) - ニムゾヴィッチ(Nimzowitsch)
カルルスバート(Carlsbad)、1907年

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  1.Bg5 Nxd4! 2.Qxd4 Bxb5! 3.Nxb5 Re8

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駒の交換の結果 d7 の地点が空きました。ここを利用して
黒は Nf6-d7 から Be7-f6 として陣形の再編成を行うことが
できます。

  4.Nc3 Nd7! 5.Bxe7 Rxe7 6.Rad1 Nb6!

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弱い d5 の地点に利かせました。

  7.Re3 Re6 8.b3 Qg5! 9.Rg3 Qe5! 10.Qd2 f5!
  11.Nd5 Rc8 12.c4

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  12...Nxd5

12...fxe4? には 13.Rg5 があります。

  13.exd5 Ree8 14.Re3 Qf6 15.Rde1 Kf8!

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黒は e 筋を利用して大駒を交換しようとしています。そうな
れば白陣の広さは効果がなくなります。

  16.g3 b6 17.Kg2

17.Re6 と突っ込んでも 17...Rxe6 18.Rxe6 Qf7 でその後
19...Re8 で互角です。

  17...Rxe3 18.Qxe3 Qf7 19.f4 Re8 20.Qxe8+ Qxe8
  21.Rxe8+ Kxe8

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  22.Kf3 Kf7 23.h3 Kf6 24.Ke3 Ke7 25.b4 a6 1/2-1/2

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投稿者 yamagishi

2005年05月29日

「ルイ・ロペスの進化」(16)

第4章 シュタイニッツ防御

[引き続き「Strategy 2.0」からで、前回と全く同じ局面から
です。シュタイニッツ防御のような決まりきった形でも創造
の余地は大いにあります。前局の白は 1.Bg5 と展開しまし
たが、カパブランカは b5 に展開したビショップを元の f1 に
引き戻しました。この手の真意は果たして何なのでしょうか。
−Yamagishi]

広さの優位性

陣地の広い方は相手を楽にさせるような駒の交換を避ける
べきです。

【参考第3局】カパブランカ(Capablanca) - ホジェス(Hodjes)
ニューヨーク、1915年

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  1.Bf1!

渋い好手です。白は交換されないようにあらかじめビショッ
プを引きました。

  1...Nxd4 2.Qxd4 Bc6 3.b4!

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  3...Kh8

黒は陣地の狭さによる不利をこうむっています。この陣形
での常套手段の 3...Nd7? は 4.b5! Bf6 5.Qd2 Bxc3 6.Qxc3
でビショップが取られます。3...Ne8 は 4.Bb2 Bf6 5.Qd2+/-
で e8 のナイトが使えません。

  4.Bb2! Ng8 5.Nd5

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  5...f6

5...Bf6 は 6.Nxf6 Nxf6 で双ビショップの白が有利です。

  6.Nf4+/-

白は展開に優り優勢です。

  6...Qc8 7.Re3!

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白は主導権を生かします。

  7...Qg4 8.g3 Qc8 9.Bc4!

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e6 の弱点を狙います。

  9...Bd7 10.Qd5 c6 11.Qh5 Qe8 12.Qd1!

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  12...Nh6 13.Ne6 Bxe6 14.Bxe6+/-

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双ビショップの白が優勢です。黒は e7 のビショップが遊ん
でいます。

  14...Qg6 15.Kg2 Bd8 16.Qxd6 Bb6 17.Re2 f5

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  18.exf5 Nxf5 19.Qd3 Nh4+ 20.Kh1

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  20...Rxf2 21.Rxf2 Bxf2 22.Qxg6 Nxg6 23.Rf1 Rf8
  24.Rd1 1-0

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投稿者 yamagishi : 21:07 | コメント (0) | トラックバック

2005年06月01日

「ルイ・ロペスの進化」(17)

第4章 シュタイニッツ防御

[三たび「Strategy 2.0」からの同一局面からです。実はこ
の試合は本講座の第13回の試合と同じです。しかし違っ
た観点からの解説を読むのも参考になると思います。その
回では白の Bf1 引きには何の解説も付いていませんでした。
本局で黒のカパブランカは自分の指した手に直面すること
になりました。−Yamagishi]

広さの優位性

陣地の狭い方は常に駒の交換によって局面を単純化しド
ローを目指して来ると考えてはいけません。押し込められ
た形には時には大きな反発力が潜んでいることがあります。

【参考第4局】エイベ(Euwe) - カパブランカ(Capablanca)
ロンドン、1922年

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  1.Bf1 Re8!

黒の反撃の構想は開いたe筋のe4のポーンに圧力をかけ、
自身はe5の地点を確保することにあります。

  2.f3

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  2...Nxd4

1921年にハバナで行われたラスカー対カパブランカの世界
選手権戦では 2...Bf8 3.Bg5 h6 4.Bh4 g6 5.Nd5 Bg7 6.Nb5 g5
(6...Rc8 7.c4+/=) 7.Ndxc7 gxh4 8.Nxa8 Qxa8 9.Nc7?! (ラス
カーによれば 9.Qxd6 Rd8 10.Qf4 h3 11.Rad1 で白に主導権
あり) Qd8 10.Nxe8 Nxe8 と進み形勢不明でした。

  3.Qxd4 Be6!

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d6-d5 でセンターからの反撃を狙います。

  4.Qf2 c6! 5.Bd2 Qb6! 6.Na4 Qxf2+ 7.Kxf2 d5!

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e4のポーンの交換の後は白のセンターでの優位はなくなります。

  8.e5

8.exd5 は 8...Nxd5 で白のa4のナイトが遊んでいて黒やや
有利です。

  8...Nd7 9.g3? Bf5! 10.Rac1 b5! 11.Nc3 Bc5+ 12.Kg2 Nxe5-+

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投稿者 yamagishi

2005年06月04日

「ルイ・ロペスの進化」(18)

第4章 シュタイニッツ防御

[今回は英国のチェス雑誌「CHESS」2004年12月号の「ABC
of the RUY LOPEZ」(ルイ・ロペスの初歩)という単発講座から
です。スーパーGMのアナンドがどのようにシンプルにシュタイ
ニッツ防御をつぶしたかを見てみます。将棋の羽生さんに「簡
単に、単純に考える」という本がありますがそれと一脈通じる
ものがあります。解説は英国のIMアンドルー・マーティンです。
−Yamagishi]

【参考第5局】アナンド(V.Anand) - ミロス(G.Milos)
サンパウロ、2004年

シンプル。私はいつでもどこでもチェスに対するシンプルな
取り組み方を強く信奉しています。ロペスの「締め付け」は
他のオープニングでは得られない自由度を白に与えます。
最近のサンパウロでの試合でアナンド(Vishy Anand)がどの
ように強豪GMを手玉に取ったかを鑑賞してください。

  1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nf6 4.O-O d6?!

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シュタイニッツが好んで指していた退嬰的な手です。実際
非常に受け好きの人にも薦められません。黒がこのような
手を指すということは主導権を放棄し相手の間違いを待って
いるだけで、薦められない戦略です。

アナンドはシンプルに正確にそして効果的に駒を配置し
黒を劣勢に追いやります。

  5.d4 Bd7 6.Nc3 Be7 7.Bxc6! Bxc6 8.Re1

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これがシンプル・チェスです。白はセンターを確保し黒にe5
の地点の面倒を見させます。

  8...exd4

仕方がありません。

  9.Nxd4 Bd7 10.h3!

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神経の細かい手です。こういうところを気にしない選手も多く
みかけられます。白は黒からの ...Ng4 や ...Bg4 を気にせず
に Qf3 が狙えます。

  10...O-O 11.Qf3!

黒はいろいろ困難を抱えています。白はさらに Bf4 や Rad1
でセンターに兵力を集中し e4-e5! を意図しています。Nf5 や
Nd5 という手もありそうです。黒は完全に守勢に追い込まれ
ました。

  11...Re8

11...c6 も同様の手ですが黒の問題を解決するには至りま
せん。12.Bf4 Qb6 13.Rad1 Rad8 (13...Qxb2 14.Rb1 Qa3
15.Nd5+-) 14.b3 Rfe8 15.Re3 Bc8 16.Red3 h6 17.Nde2 Qc7
18.Ng3 Nd7 19.Qe3 Nf8 (Lanka - Callergard, Jyvaskyla 1991)
という実戦例がありここで実戦の 21.Nh5 でもあるいは
21.Qxa7 でも白良しです。

  12.Bf4 c6 13.Rad1

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白にとって理想的な駒の展開です。黒は反撃策を見出すの
に苦労しています。

  13...Qb6 14.Nb3 a5

14...d5 としても 15.e5 Ne4 16.Nxe4 dxe4 17.Qxe4+/- で
黒は何の代償も得られません。

  15.Bxd6 Bxd6

15...a4 なら 16.Bxe7 Rxe7 17.Nd4 Qxb2 18.Rb1 Qa3 19.Nd5
で白勝ちです。

  16.Rxd6 a4 17.Nd2 Qxb2

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黒はこの手に期待していました。しかし白の次の手によって
ものの見事に打ち砕かれます。

  18.e5! Qxc2

18...Bc8 は 19.Rb1 Qa3 20.Qd3 Rxe5 21.Nc4 で白の勝ち
です。

  19.Re2! Bf5

19...Qc1+ とチェックしても 20.Kh2 で後が続きません。

  20.exf6 Rxe2 21.Nxe2 Bg6 22.a3 Re8 23.Qe3! 1-0

Y050604F.GIF

多くのルイ・ロペスの試合では黒は白の締め付けを突破し
ようとして早い段階で攻勢をかけるか、あるいは安全な、
時にはかなり退嬰的な手を指して難を逃れようとします。
しかしどちらに対してもセンターへの兵力集中、迅速な駒の
展開およびセンターの制圧によるシンプルな指し方は最も
有効です。本局でもアナンドは駒を効果的な地点に素早く
配置し簡単に勝ってしまいました。

[第4章終り−Yamagishi]

投稿者 yamagishi