第1章 キングズ・ギャンビット受諾
キーゼリツキー・ギャンビットの現代の指法
今日ではキーゼリツキー・ギャンビットはほとんど指される
ことがなくなっているので、現代ではどのように指されてい
るのかを語ることは至難になっています。1914年にバーデ
ン・バイ・ウィーン(Baden bei Wien)で開催された最後の
ギャンビット大会では全く指されませんでした。それは恐
らく黒が難なく有利になるとみなされていたためでしょう。
第一次世界大戦後の布局に対する偏見なき取り組みと
いうべき見解の変化はキングズ・ギャンビットにも影響を
与えました。シュピールマン(Spielmann)はかつてレティ
(Reti)やルビーンシュタイン(Rubinstein)と共に「Larobok
i Schack」を改訂するよう依頼され、キングズ・ギャンビッ
トのところに来た時少し新しい変化を書き足せば済むと
予想していたところ、すぐに文中の古い変化の多くが現
代の見方と相容れないので全く新しい観点から布局の
分析を行なう必要があったと語っていました。ルビーン
シュタインは黒の仮想的な弱点の f7 を狙うための白の
6.Bc4 は 6...d5 によって攻撃が頓挫してしまうので正着
ではないと考えました。それゆえに彼は白がすぐに黒の
キング側のポーンの形を崩すのを推奨しました。これは
フィリドール(Philidor)の古い研究に基づいた構想です。
彼の提唱は革新的でしたが耳を貸すものはほとんどいま
せんでした。それは多分本がスウェーデン語でだけ出版
されたことと、この布局が一般的に不人気だったことに帰
せられます。
本局はルビーンシュタインの推薦を例証する本当に唯一
の試合です。
【第6局】シュトルツ(G.Stoltz) - ゼーミッシュ(F.Samisch)
スヴィーネミュンデ(Swinemunde)、1932年
1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Nf3 g5 4.h4 g4 5.Ne5 Nf6 6.d4
この簡明な手はルビーンシュタインの構想に沿ったもの
です。白は自分のセンター・ポーンを犠牲にしても黒の f
ポーンを取り払おうとします。
6...d6 7.Nd3 Nxe4 8.Bxf4
8...Qe7
黒はフィリドールの研究手順を踏襲しています。ルビーン
シュタインはここで 8...Bg7 9.c3 O-O 10.Nd2 Re8 11.Nxe4
Rxe4+ 12.Kf2 Qf6 13.g3 Bh6 14.Be2 という変化手順を紹
介し白が有利であるとしています。
9.Qe2 Bg7 10.c3
10...h5
黒は危険に気付いていません。ポーン得で安泰で、いつ
でも強制できるクィーン交換によって白の予想される攻撃
を撃退できるのものと楽観しています。この手の代わりに
10...Bf5 としてクィーン側へのキャッスリングを目指してい
れば安全でした。
11.Nd2!
ポーン損の白が自分からクィーンの交換を迫ってくること
を全然予期していなかった黒にとってこの手は全く意表の
手だったに違いありません。フィリドールはここで 11.g3 を
推奨していて 11...d5 12.Bg2 c5 13.Nd2 Be6 で黒が有利
としています。
11...Nxd2 12.Kxd2 Qxe2+ 13.Bxe2
13...Bf5
13...O-O ならば 14.Be3! Bf5 15.Nf4 Bg6 16.Nd5! です。
14.Rhf1 Nd7
14...Nc6 と展開すると 15.Bg5! Bg6 16.Nf4 O-O 17.Bd3!
Bxd3 18.Nxd3 f6 19.Be3 Kf7 20.Nf4 Rh8 21.Nd5 Rac8
22.Bg5 と攻撃が続きます(ベッカー(Becker)の研究)。
15.Nb4 Nf6 16.Bb5+!
16...Bd7
16...c6 と受けるのは 17.Nxc6 bxc6 18.Bxc6+ Ke7
19.Bxa8 Rxa8 20.Bg5 Be6 21.Rf2 の後 22.Raf1 です。
17.Rae1+ Kd8
17...Kf8 とこちらによけるのは 18.Bxd7 Nxd7 19.Nd5 Rd8
20.Nxc7 Nf6 (20...Nb6 21.Bg5) 21.Bg5 で白の勝勢です。
18.Bg5! Bxb5 19.Rxf6! 1-0
19...Bxf6 と取っても 20.Bxf6+ Kd7 21.Re7+ Kd8 22.Rxf7+
Ke8 23.Re7+ Kf8 24.Rxc7 で白の勝ちです。
駒がこんなに減少しても白の攻撃は衰えませんでした。