第1章 キングズ・ギャンビット受諾
カニンガム・ギャンビット(復活版)
スコットランドのマスターのカニンガム(A.Cunningham、
1650-1730)によって創始され以前は人気のあったこの
防御法は19世紀に良く指されました。しかし 1.e4 e5
2.f4 exf4 3.Nf3 Be7 4.Bc4 Bh4+ の後白は
5.Kf1! によって有利になれるのでポーンを犠牲(5.g3 fxg3
6.O-O)にする必要がないことが分かってからは廃れてし
まいました。
第二次世界大戦以来クモッホ(Kmoch)がこの防御法を
復活させました。彼はビルガー(Bilguer)の「Handbuch
des Schachspiels」(チェスのハンドブック)の示唆に従って
(4...Bh4+ の代わりに)4...Nf6 を推奨しました。
【第9局】クレーマー(H.Kramer) - エイベ(M.Euwe)
番勝負、1941年
1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Nf3 Be7 4.Bc4
4...Nf6!
この単純な展開の手がこれまでの100年もの間注目を
逃れてきたことは、いかにチェスの進化が先入観によって
妨げられるかということのさらなる証拠です。以前は
4...Bh4+ だけが指されていました。そしてルークを取らせ
る次のような複雑な戦型が精力的に研究されていました。
4...Bh4+ 5.Kf1 d5 6.Bxd5 Nf6 7.Nc3 Nxd5 8.Nxd5 f5
9.Nxh4 Qxh4 10.Nxc7+ Kd8 11.Nxa8 fxe4 12.Qe1 Qe7
13.Qf2 Nc6
これは黒が有利であると考えられていました。しかし後の
研究によって白が 14.b4 (15.b5 および 15.Qc5 の狙い)
Qxb4 15.Qh4+ Kd7 (15...Ne7 16.Qxf4) 16.Qg4+ Kd8
17.Qxg7 で有利になることが示されました。
5.e5
5.Nc3 と受ける手もあり 5...Nxe4 6.Bxf7+ Kxf7 7.Nxe4
Rf8 となります。
5...Ng4
この手は 6...Bh4+ があるのですぐには退却させられな
いのでここでは強手になっています。
6.d4
6.O-O とキャッスリングすると 6...Nc6 7.d4 d5 8.exd6e.p.
Bxd6 9.Re1+ Ne7 で黒有利となります。
6...d5 7.Bb3
7.Bd3 の方が堅実でした。また 7.exd6e.p. Bxd6 は白が
悪いでしょう。
7...Bh4+ 8.Kf1
8...b6!
もちろん 8...Nf2 は 9.Qe1 Nxh1 10.Qxh4 でナイトが逃げ
られないのでダメです。
9.Bxf4 Ba6+ 10.c4
他に指しようがありません(10.Kg1? Bf2#)。
10...dxc4 11.Ba4+ b5
12.Nc3
12.Bc2 は 12...b4 です。
12...bxa4 13.Qxa4+ c6 14.h3 Nh6
15.d5
15.e6 は 15...O-O 16.Bxb8 Bb5! の好手で駒損になりません。
15...Nf5 16.Rd1 O-O 17.g4 Qb6 18.Qc2
18...Qe3!!
思いもよらぬ手です。昔からのキングズ・ギャンビットの
精神にピッタリです。黒は駒得を維持しています。
19.Bxe3 Nxe3+ 20.Ke2 Nxc2 21.Nxh4 cxd5 22.Rxd5
Bb7 23.Rc1 Bxd5 24.Nxd5 Nd4+ 25.Ke3 Ne6 0-1
この防御法はまだあまり研究されていませんが棋理にか
なっていると考えられていて多くの質の高い試合が生ま
れることでしょう。不自然な 4...Bh4+ の研究に多くの時
間がかけられ自然な手の 4...Nf6 が気付かれずにいたこ
とを考えると、旧式の布局に現代の取り組みをもって臨め
ば色々な新型が創造されるであろうし、特にキングズ・
ギャンビットにおいてそれが期待されます。