第2章 現代のキングズ・ギャンビット受諾
ルビーンシュタインの指法
第一次世界大戦後に超現代派が現われました。ルビー
ンシュタインも幾つかの新構想をひっさげてキングズ・ギャ
ンビットの復活を模索しました。彼の主眼点はキングズ・
ギャンビットは大局観に基づいて指せるし白はポーンを犠
牲にすることによってセンターの支配を得、キング側の黒
のポーンの形を乱すことができるというものでした。彼は
自分の主張を「Larobok i Schack」中の素晴らしい研究に
留めることなく、実戦でそれらを採用しました。アンデルセ
ン(Anderssen)と並ぶ妙技は彼の功績です。本局は新手
法によって正統な防御陣形と戦う彼の2回目の試みです。
【第12局】ルビーンシュタイン(A.Rubinstein) - イェーツ(F.D.Yates)
ヘースティングズ(Hastings)、1922年
1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Nf3 Nf6 4.Nc3 d5 5.exd5 Nxd5
6.Nxd5 Qxd5 7.d4
7...Be7
タラシュ(Tarrasch)が1893年に指摘していたこの手は前
局の 7...Bd6 よりはるかに勝る手です。それは f4 のポー
ンを(...Qe4+ により)間接的に守っているうえにこのビショッ
プが攻撃にさらされないからです。
8.Bd3 g5 9.Qe2 Bf5 10.Bxf5 Qxf5
11.g4
ルビーンシュタインの構想を体現した面白い手です。この
手は黒のポーン群をばらばらにするためにブロックし、もし
必要ならばポーンも犠牲にしようとするものです。しかし
もっとゆっくりと 11.Bd2 (11...Qxc2 なら 12.Rc1) の後
12.O-O-O と指すのも考えられました。
11...Qd7!
この手は 11...Qe6 12.Qxe6 fxe6 13.h4 gxh4 14.g5 O-O
15.Rxh4 Bd6 16.Bd2 Nc6 17.c4 (ルビーンシュタイン対コ
スティッチ(Kostic)、ハーグ(The Hague)、1921年) よりも
ずっと良い手です。その試合は黒が優勢を維持しました。
ルビーンシュタインがその試合と同じ手順を踏んだのは
白にもっと良い手を見つけていたからかもしれません。し
かしイェーツはその機会を与えず、しかもポーンを犠牲に
する本譜の手はこの布局の精神に合致しています。なぜ
なら白が 12.Nxg5 とポーンを取るのは 12...Nc6 13.c3
O-O-O 14.Nf3 Rhe8 又は 12...Nc6 13.Bxf4 Nxd4
14.Qe4 O-O-O 15.O-O-O Qxg4 16.Rxd4 Bxg5 で黒が
ポーン得を維持するので白が良くないからです。
12.Bd2 Nc6 13.O-O-O O-O-O 14.h4 f6 15.c4
15...Qxg4
かなり危険を伴う手筋の攻撃が始まり、白にもチャンスが
生まれます。受けに徹した 15..Rde8 なら 16.hxg5 fxg5
17.d5 Nd8 18.Qf2 Kb8 となり黒の優勢が明らかだったで
しょう。
16.hxg5 fxg5 17.d5
17...Nb4
17...Nb8 と引くと 18.Rdg1 Qd7 19.Bc3 Rhe8 20.Rxh7 と
ポーンを取られます。
18.Qxe7 Nd3+ 19. Kc2 Qxf3 20.Qe6+ Kb8 21.Rh3
21...Qxd1+!
このクィーン切りが黒の唯一のチャンスです。21...Nc5
22.Rxf3 Nxe6 23.dxe6 Rde8 24.Re1 a5 で駒損に甘んじ
る順は黒の敗勢でしょう。
22.Kxd1 Nf2+ 23.Ke1 Nxh3 24.Qxh3 h5 25.Bc3 g4
26.Qh4
26...Rhg8
26...Rde8+ 27.Kf1 Rh7 でポーンを捨てない変化は、黒の
ポーン群をせき止めながら白のクィーン側のポーンの進攻
が速く黒が良くありません。
27.Qxh5 g3 28.Bd4 Rde8+ 29.Kd2
29.Kf1 は 29...f3 で白が負けます(Fritz9 によると 29...g2+
30.Kg1 Re1+ 31.Kf2 g1=Q+ 32.Kf3 Qg3# で即詰みです)。
29...Ref8
30.d6
30.Qf3 は 30...g2 31.Bg1 Rg3 32.Qf2 b6 で黒に ...Rg4
から ...f3 の狙いが残ります。
30...cxd6 31.Qh6 Ka8 32.Qxd6 Rd8 33.Qc5 Rxd4+!
34.Qxd4 g2 35.Qg1 Rg3 36.b4 a6 37.Ke2 f3+ 1/2-1/2
38.Kf2 なら 38...Rh3 39.Qd1 Rh1 40.Qd8+ で千日手の
チェックによる引き分けです。
この試合の特徴は明快な戦略にあります。前局と比較す
ると早い動きに気付かされます。それは38年という懸隔
の間に技術全般が進歩したことの現われです。黒は中盤
で目標を見失いましたがそれでも防御システムの強固さ
を証明し白が早い段階でもっと攻撃的に指す必要がある
ことも証明しました。