第2章 現代のキングズ・ギャンビット受諾
ブロンシュテインの指法
若い世代のマスターのうちケレス(Keres)だけでなくブロ
ンシュテインもキングズ・ギャンビットを採用しています。
ブロンシュテインの場合はキングズ・ギャンビットは不正
でもなければ無茶でもないという確固たる信念を表明し
ています。最も大切な対局で用いていることは彼のこの
布局への信頼の現われです。
本局はキングズ・ギャンビットが大抵のクィーンズ・ギャン
ビットよりも退屈な試合になることがあることの良い実例
です。
【第14局】ブロンシュテイン(D.Bronstein) - ラゴージン(V.Ragosin)
ザルツヨバーデン(Saltsjobaden)、1948年
1.e4 e5 2.f4 d5 3.exd5 exf4 4.Nf3 Nf6 5.Bb5+
5...Nbd7
5...c6 の方が良さそうですが 6.dxc6 Nxc6 7.d4 Qa5+
8.Nc3 Bb4 9.Qe2+ Be6 10.O-O O-O 11.Bd2 Qb6
12.Bxc6 bxc6 13.Bxf4 (トマス(A.R.B.Thomas)対サージャ
ント(E.G.Sergeant)、フィーリクストウ(Felixstowe)、1949
年)によればそうでもなさそうです。この戦型の実戦例は
ほとんどないので確かな判断は得られません。多くの選
手(本局のラゴージンもそうです)は黒の攻撃の可能性は
長続きせず白の収局の展望の方が勝るのでこの戦型を
避けています。
6.O-O Nxd5 7.c4 N5f6 8.d4 Be7 9.Bxf4 O-O
10.Ba4 Nb6 11.Bb3 Bg4 12.Nc3 c6 13.Qd2 a5
この手は黒のポーンの形を弱めます。しかし白のセンター・
ポーンによって動きが制約されているので他に指す手が
ほとんど見つかりません。
14.a3 a4 15.Ba2 Nbd7 16.Rae1 Rfe8 17.Ng5 Bh5
18.Kh1 Bg6
19.Nf3 Nh5 20.Be3 Qc7 21.Qd1 Qa5 22.Bd2 Qa7
23.c5!
23...b6
23...b5 で a ポーンに紐を付けようとしても 24.cxb6e.p. が
あります。
24.Bg5 Bxg5 25.Nxg5 Nhf6
a ポーンを犠牲にするのは黒の最善の策のようです。
26.Rxe8+ Rxe8 27.Qxa4 Qxa4 28.Nxa4 bxc5 29.dxc5
29...Re2 30.Bc4 Rc2 31.Bb3 Re2 32.Nf3 Ne4 33.Bd1
33...Re3
33...Nf2+ は 34.Kg1 Nxd1 35.Rxd1 です。
34.Kg1 Nexc5 35.Nxc5 Nxc5 36.Re1 Rxe1+ 37.Nxe1
黒はポーンを取り返しました。しかし白のパス・ポーンが
非常に強力で、自分がパス・ポーンを作るのには手数が
かかるため形勢はまだ芳しくありません。
37...Kf8
37...Nd3 は 38.Nxd3 Bxd3 39.Kf2 Kf8 40.Ke3 で白キン
グの働きが強くなります。
38.Kf2 Ke7 39.Ke3 Kd6 40.b4 Na6 41.Be2 Nc7
42.Nf3 Nd5+
43.Kd4 Nf4 44.Bf1 f6 45.Nd2 Ne6+ 46.Kc3 Nc7
47.Nc4+ Ke7
48.Nb6 Nb5+ 49.Kb2 Bf5 50.a4 Na7 51.Kc3 h5
52.Kd4 Kd6
53.Nc4+ Kc7 54.Kc5 Bd7 55.Nd6 h4 56.Be2 f5
57.g3 hxg3 58.hxg3 Nc8 59.Nxc8 Bxc8 60.Bf3
60...Bb7
60...Bd7 は 61.a5 g5 62.a6 Bc8 63.b5 cxb5 64.a7 で白
が勝ちます。
61.a5 g5 62.Bg2 f4 63.gxf4 gxf4 64.Bf3 Ba6
65.Bxc6 Be2 66.b5 f3 67.a6 1-0
67...f2 としても 68.b6+ Kd8 69.a7 f1=Q 70.a8=Q+ Ke7
71.Qe8+ Kf6 72.Qf8+ の後 73.Qxf1 から 74.b7 です。
前局と本局はキングズ・ギャンビット受諾の現代の戦型
を象徴しています。しかし黒がこの布局の主要な課題を
避けているので(本局の黒の5手目に対する解説を参照)
将来どのようになるのかについては不透明です。従って
シュタイニッツ(Steinitz)のように危険な戦型に嬉々として
乗り込んでいくマスターが現われるか、あるいはルイス・
パウルセン(Louis Pausen)式に複雑な防御法に対処して
いくマスターが現われるまで、実戦で復活することは考え
られないでしょう。
(第2章終わり)