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「キングズ・ギャンビットの不思議」第15回

第3章 キングズ・ギャンビット拒否

「キングズ・ギャンビット拒否」は「キングズ・ギャンビット
受諾」と同じくらい古い戦法ですが「受諾」ほど人気が出
たことはなく劣った戦法とみなされていました。「受諾」は
戦型が複雑化し種類も増えていきましたが「拒否」は簡
明な対抗策と思われていました。可能性が尽くされたわ
けではありませんが防御は簡単にはいかないというのが
一般的な認識です。

モーフィーの指法

モーフィーは定期的に本局の戦型を採用しました。この
戦型では白は黒の強力な c5 のビショップの効果を殺ぎ
その後で f 列での攻撃を開始することを目的としています。

黒のキング側ビショップをブロックするために白は d4 と
指すことが必要であると考えられていました。この手は
「浮きポーン」を産み出します。これらのポーンが強いか
弱いかは生じる戦いの主題となる課題です。

【第15局】モーフィー(P.Morphy) - ボーデン(S.Boden)
ロンドン、1858年

  1.e4 e5 2.f4 Bc5 3.Nf3 d6

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  4.c3

この手は最も古い手の一つで白はポーン・センターの確
立を目指します。今日ではこの戦型が唯一白の主導権
を保持すると考えられています。

代わりに 4.Bc4 は 4...Nf6 5.Nc3 Nc6 6.d3 Be6 7.Bb5 a6
8.Bxc6+ bxc6 9.Qe2 exf4 10.Bxf4 Qb8! 11.Nd1 O-O
12.c3 Re8 13.Be3 Bxe3 14.Nxe3 Ng4 (シュピールマン
(Spielmann)対タラシュ(Tarrasch)、ピスチャン(Pistyan)、
1922年)で局面が単純化されます。

  4...Bg4 5.Be2

5.Qa4+ の方が強い応手です(次局を参照)。

  5...Nc6

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  6.b4

6.Nxe5 は 6...Bxe2 7.Nxc6 Bxd1 8.Nxd8 Bc2 9.Nxb7 Bb6
10.b4 Bxe4 となって黒良しです。

  6...Bb6 7.b5 Na5

レーベンタール(Lowenthal)はモーフィーとの番勝負第4
局で 7...Nce7 と指しましたが本譜の手の方がこの布局
の精神にふさわしい手です。

  8.d4 Bxf3 9.Bxf3

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  9...exd4 10.cxd4 Qf6 11.Be3 Nc4 12.Bf2 Qxf4 13.O-O

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  13...Nf6

ここまでは白ポーンの弱点を突くボーデンの戦略的指し
方は非の打ちどころがありません。モーフィーはポーンを
犠牲にしてやっと持ちこたえることができました。しかし本
譜の黒の手はゆっくりし過ぎていて白に立ち直りを許しま
した。正着は 13...Ne3 で以下 14.Qc1 (14.Qd2? Qxh2+!
15.Kxh2 Nxf1+) Bxd4 15.Nc3 Qe5 16.Bxe3 Bxc3 となれ
ば黒の優勢はゆるぎなかったでしょう。

  14.Qd3 Na5 15.Nc3

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  15...O-O

ここで 15...Ng4 は 16.Nd5 Nxf2 (訳注 16...Qxh2# で頓
死です) 17.Rxf2 で、ポーン損の代償に d5 のナイトが強
力なので白が優勢です。

  16.g3 Qh6 17.Kg2 Rae8 18.Rae1 Kh8 19.Be3 Qg6
  20.Ne2

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モーフィーのチェスの特徴は完璧とも言える駒の連係で
す。それは時として個々の動きの意味をぼかす要素とも
なっています。この局面を13手目の局面と比較すると白の
駒は皆センター化されているのに比し黒の駒は周辺に
追いやられていることが分かります。本譜の手は大局上
のはめ手です。黒クィーンを僻地のh7に押し込め、d5の
地点を支配して黒の動きを押さえ込むことを狙っています。

  20...h6

20...Nxe4? とポーンを取るのは 21.Nf4! Qf5 22.g4! で成
立しません。

  21.Bd2 d5 22.Nf4 Qh7 23.e5 Qxd3 24.Nxd3

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  24...Nc4

今すぐに 24...Ne4 と跳び込むのは 25.Bxe4 dxe4
26.Bxa5 exd3 27.Bxb6 axb6 28.Rd1 でダメです。

  25.Bb4 Ne4 26.Bxf8 Rxf8

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黒の防御戦略はこの犠牲に基づいていました。しかしこ
こで思わぬ手が待ち受けていました。

  27.Nf4!

正確な手です。27.Bxe4 は 27...dxe4 28.Nf4 (28.Rxe4?
Nd2) Kg8 で黒は交換損の代わりに2個目のポーンを狙
います。

  27...Ned2

ここで 27...c6 は 28.Bxe4 dxe4 29.Ng6+ でまた交換得
を重ねます。キングズ・ギャビット拒否の主題の構想であ
る開放 f 列の活用が決め手となっています。

  28.Bxd5!

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白は交換得を返却します。これが最短の勝ち方です。モー
フィーの収局の指し方はカパブランカ(Capablanca)の簡明
でエレガントな手法を彷彿とさせます。

  28...Nxf1 29.Bxc4 Nd2 30.Bd5 Bxd4 31.e6!

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興味深い局面です。黒は布局で勝ち取ったポーンを保持
しています。しかし駒数の減少にも関わらず受けがありま
せん。

  31...g5 32.e7 Re8 33.Bxf7 gxf4 34.gxf4 Rxe7
  35.Rxe7 1-0

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モーフィーはこの布局でかなりの成功を収めました。もっと
もセンターのみならず両翼でも作戦を行なう彼の戦略は危
険であったことは疑いありません。当時は強いセンターと
弱いセンターの違いは発見されておらず、モーフィーは自
分の戦術能力を頼りに問題を解決していました。

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2006年06月20日 21:42に投稿されたエントリーのページです。

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