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「ヒカルのチェス」(3)

1996年

「Chess Life」1996年10月号(2)

この号で「Your First Move」という初心者のための上達
連載講座にウィーラマントリの著書のある章がそのまま
転載されています。前々回の自戦解説を読めば気付き
ますが彼の解説は手の変化の羅列でなく指し手の意味
やチェスの考え方の説明が主となっています。これは彼
のこの著書でも同じです。アスカとヒカルが急激に強くな
ったのは彼らに才能があったことは無論ですが父親の直
接指導があったことも寄与していると思います。指導の
内容の一端を知る意味でこの転載講座を和訳します。全
部で4ページで分量が多いので4回に分けて掲載します。

ウィーラマントリの本の題名は「Best Lessons Of A Chess
Coach」です。日本アマゾンで1,700円台で売っています。
皆で買って上げましょう(私は本稿を訳すにあたり買いまし
た)。

http://www.amazon.co.jp/gp/product/0812922654/249-3182130-2694764?v=glance&n=52033011

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「One To Remember」(忘れえぬ一局)(1/4)
第4章の抜粋
「Best Lessons Of A Chess Coach」(チェス教師の最強授業)
Sunil Weeramantry and Ed Eusebi

1972年の英国での私の試合から1局を採り上げる。人
は一生のうちに何千局もの試合をするだろうが、その中
には想像力を刺激するゆえに決して忘れられない試合も
ある。誰でもそのような経験を持っていることだろう。この
試合はそのような一局である。今回も複合枡の弱点を突
く例である。しかしそのような段階に至る状況は前局とは
全く異なっている。私が白キングの周りの黒枡を弱体化
させるまたとない機会にどのように飛びついたかをお目
にかける。私はルークを丸々捨てて黒枡ビショップをおび
き出した。そのビショップは弱体化した枡の守り駒だった。
そして攻撃は成功し勝ちを収めた。


ビルツ防御(Pirc defense) [B09]
オーストリア攻撃(Austria Attack)

白:R. Harris
黒:Sunil Weeramantry
ロンドン、1972年

  1.e4 d6 2.d4 Nf6

ビルツ防御はユーゴスラビアのGMバスヤ・ピルツ(Vasja
Pirc)によって広められた。ピルツと現代防御(Modern
Defense)との本質的な違いは、ピルツでは黒が2手目に
キング側ナイトを展開することである。

  3.Nc3 g6 4.f4

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この戦型をオーストリア攻撃という。この戦型では白はセ
ンターを広く占拠し黒はそれには構わずキング側ビショッ
プをフィアンケットする。それゆえに戦いは広大ポーン・セ
ンター
フィアンケットになる。古典的展開対超現代派と
言うこともできる。

白の戦略はセンターを構築し、役駒を展開し、陣形を強
化し、その後で黒の役駒に対しセンター・ポーンを前進さ
せることである。黒の作戦はフィアンケットを完了し、白が
先制してくる前にポーンでセンターに襲い掛かることであ
る。

実は私は広大なセンターに対抗するのが好きである。キ
ング側フィアンケットの使い手は目の前にポーンの壁を見
せ付けられると燃えてくる。それは格好の標的となるから
である。相手がセンターを構築している間にその時間を
利用して展開でリードを図ることができる。

実際のところセンターは非常に強大であるが、フィアンケ
ットも負けてはいない。フィアンケットを甘く見てはいけな
い。非常に危険な存在である。これはさも同じくらいの強
さの二人の戦士が異なった武器で戦っているようなもの
である。古代の剣闘士でいえば一方が剣と盾を持ち、他
方が網と三叉矛を持っているようなものである。

  4...Bg7 5.Nf3 O-O

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ここでは有力な別の手もある。つまり 5...c5 ですぐにセン
ターに襲い掛かることもできる。この手は名高い1972年
の世界選手権戦でボピー・フィッシャー(Bobby Fischer)が
ボリス・スパスキー(Boris Spassky)に対して用いてから
人気が出た。その試合は激闘の末引き分けに終わった。

質問 5...O-O の後白には幾つかの選択肢がある。どの
ような手が考えられるか。

解答 6.f5

間違い。何が問題かというと陣形を固めないうちにセン
ター・ポーンで攻撃を始めたことである。時機尚早である。
ポーン損になることを確認しなさい(5.f5 gxf5 6.exf5 Bxf5)。

ポーンを一つ損してもフィアンケットの陣形を乱した価値
があると考える人がいるかもしれない。しかしそうではな
い。ビショップが f5 に出てきた後 g6 に下がってキャッス
リングした囲いを守るのでポーンがただ損になっている。
もし f5 と突きたいのならまず Bd3 と出てもっと f5 の地
点に利かしてから行なうのが正しい手順である。

解答 6.e5

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面白そうな手である。私はこの手を指したことも指された
こともある。この変化での私の最近の実戦例では、IMカ
ムラン・シラジ(Kamran Shirazi)に黒を持って勝ち、GMパ
トリック・ウルフ(Patrick Wolff)に白を持って負けている。
どちらの試合とも白の攻撃が時期尚早という定跡の評価
を裏付けているようである。

黒は 6...dxe5 と取っても大丈夫であるが 7.dxe5 Qxd1+
8.Kxd1 で白のほうがやや有利となる。白のセンターでの
支配地域が広く、ポーンの陣形が拮抗しているので黒が
白の支配に挑むのは難しい。白のキングが動いたことは
クイーンが交換済みであることと黒がまだ十分に展開し
ていないことで特に危険ではない。

黒は 6...Nfd7 で迎え撃つこともできる。7.h4 はシラジ戦
とウルフ戦での進行である。

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質問 側面攻撃に対する最良の応手は何か。

解答 センターでの反撃である。

そのとおり。側面攻撃に対する最善の策はセンターから
反撃することである。
なぜだか分かりますか?攻撃側は
攻撃補強のために盤の一方から他方へ支障なく役駒を
移動させなければならない。もし相手が中間で戦闘を仕
掛ければ攻撃側は攻め駒の連係を失ってしまう。

質問 考え方が分かったところで黒はどう指したら良いか?

解答 7...c5

そのとおり。この手は大変良い手である。白の連鎖ポー
ンの根元に攻撃をかけ、二箇所でポーンが接触している。
もし白が c5 のポーンを取れば黒は e5 のポーンを取る。
白が d6 のポーンを取れば黒は d4 のポーンを取る。もし
白がどちらのポーンも取らなければ黒は両方のポーンを
取る!つまりまず d4 のポーンを取りその次に e5 のポー
ンを取る。もし白の両方のポーンがなくなれば白のセン
ターも消滅する。連鎖ポーンを破壊するにはその根元を
崩すと共に連鎖の他の箇所にも圧力をかけることである。

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(この号続く)

コメント (2)

Ichiro:

World OpenでSunilの写真をとりました。使うのなら、送りましょうか?

Yamagishi:

それは貴重な生写真(?)ですね。ぜひ送ってください。

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2006年07月17日 20:52に投稿されたエントリーのページです。

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