「先を読む頭脳」(羽生善治、伊藤毅志、松原仁著、新
潮社発行、本体1300円)の137ページで羽生さんが
ボビー・フィッシャーについて次のように語っています。
『同様に「天才」を感じる棋士では、将棋界ではなくチェ
スの世界のボビー・フィッシャーという方がいます。千九
七二年に世界選手権を制して、アメリカに初めてチェス
の世界タイトルをもたらした英雄です。
私がフィッシャー氏に惚れ込んだ理由は、何よりも彼が
残した棋譜の素晴らしさにあります。
チェスの場合、実力者同士の対局になると差がつきにく
く、引き分けに終わることも多いのです。サッカーで言え
ばスコアレス・ドローか、一対〇で決着がつくことがほと
んどです。
ところがフィッシャー氏だけは、勝つときには三対〇くら
いの大差をつけて勝ってしまうのです。棋譜を見ていくと、
こんな手順が盤上に実際に現れるのかと惚れ惚れする
ことがよくあります。
絵画や音楽などの芸術と同様に理屈では説明できない
世界で、一目見て「凄い」と感じる美しさがあるのです。
その点で、谷川九段と共通している部分があると思いま
す。』