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実戦に役立つエンディング(1)

実戦に役立つエンディング (Practical Chess Endings)
   パウル・ケレス (Paul Keres)

YKeres000.JPG

 序文

 チェスのオープニング定跡、中盤戦、大会そして実戦集については無数ともいえる数の本が世界中で出版されてきた。しかしエンディングについては試合の最も重要な部分の一つにもかかわらず比較的少ない数の本しか書かれてこなかった。

 実際のところ終盤戦の良い指し方や勉強にかけた時間の報酬の重要性は強調してもし過ぎることはない。本書の目的は読者に終盤戦における実戦的な知識を伝えることにある。

 多くのチェス愛好家は終盤戦が退屈だと考えているために勉強することを毛嫌いしている。ある程度はそれも正しい。というのはエンディングの定石は内容が比較的無味乾燥で、正確な読みを必要とし個人の想像力を発揮する余地がほとんどないからである。それでもこの分野には面白さが多くあり、全てのチェス愛好家は必要な技術をマスターすることにより自らの技量を向上させるように努めるべきである。

 本書では基本原則に的を絞るために例題の数を減らし通常よりも説明を詳しくするようにした。これにより終盤の理論がいくらかでも楽しく感じられることを期待した。必然的に多くの理論的に片寄った分析を排し、実戦に最も役立つような教材に制限することになった。

 本書を上梓するにあたりエンディングに対する興味を喚起すると共に、一般的なチェス選手の終盤の平均的な技術レベルの向上につながれば幸いである。

パウル・ケレス(Pau Keres)
1972年7月 タリン(Tallinn)にて

 はじめに

 チェスの試合は普通はオープニング、中盤およびエンディングの三つの段階からなっている。オープニングでは対局者は最も効果的に自分の駒を展開し有利な中盤戦の可能性が得られるように努める。中盤は最も内容豊かで明らかに最も難しい部分である。そこでは対局者は決定的な有利あるいは少なくとも優勢な終盤を目指す。そして最後のエンディングはオープニング又は中盤で得た有利を勝ちにつなげなければならない段階である。

 結果的にエンディングは試合の最も重要な段階の一つであることは明らかである。オープニングや中盤では不正確な手あるいははっきりした悪手を指しても必ずしも敗勢の局面に陥らない冗長さがある。これはこの二つの段階では複雑さのために相手の誤りに気付き咎めることが実戦では困難なことがあるという事実により説明できる。これに反して終盤では悪手は決定的な局面になり易く、またチャンスが巡ってくることはまれである。

 終盤技術を完璧にする必要性は証明するまでもなく明らかである。世界の一流のチェス選手達はこの分野に格段の注意を払い、現代の見事な終盤の試合を数多く見ることができる。

 確かに純粋に技術的な観点からは終盤の勉強は例えばオープニングの定跡や中盤の戦略よりもはるかに面白さに欠けると認めざるを得ない。しかしこの勉強は必須であり、少なくともほとんどのエンディングは勝ちや引き分けの可能性の正確な分析に役立つという有利な面がある。

 以降の本文では実戦的な種々のエンディングの正確な手順のための最も重要な原則を読者に説明するように努めた。現在の終盤理論は全体では分厚い何冊もの本になるということは誰にも分かる。それは少し覗き見しただけでもしり込みしてしまうような分量である。それゆえに本書の目的は膨大な資料から最も実戦に役立つエンディングを厳選することにより幾分なりとも読者の負担を軽くすることにある。例えばチェス用語の必須のイロハを用いながらすべての基本的な終盤の局面を分析する。そのようなやり方を軽んじてはいけない。偉大な選手の中には終盤に弱点があった選手も知られている。

第1章 初歩のエンディング

 本章ではすべての選手にとって基本中の基本に属しことさら詳しい説明を必要としない局面について考察する。ここでわざわざ採り上げるのは完璧を期すためである。まず、単独のキングを詰めるのに必要な駒の組み合わせを調べる。

1.1 キング+クイーン対キング

 これは常に勝ちである。唯一の危険性はステールメイトの可能性である。

YKeres001.JPG 図1

 この局面からの勝ち方の一例は次のとおりである。

1.Qc3 Ke4 2.Kb7 Kd5

 明らかに黒キングはできるだけ長く中央にとどまろうとする。

3.Kc7 Ke4 4.Kd6 Kf4 5.Qd3 Kg5 6.Ke5 Kg4 7.Qe3 Kh5 8.Kf5 Kh4 9.Qd3 Kh5 10.Qh3#

 この手順は多分最短の勝ち方ではなく 1.Kb7 の方がもっと早く詰むだろう。しかし上にあげた手順はこのような駒配置で黒キングがいかに簡単に詰まされるかを示したものである。


コメント (2)

keres65:

ついに出ましたか、このケレス本。
残念ながら私は持っていません。
不思議なのは、マスターたちが諸人(?)推薦する有名な本な
のに、何故に版を重ねる出版社が現れていないのでしょう。
どうしてなのかな~?
あのドーヴァー社でも出さない(出せない)理由があるのでしょ
うか?

Yamagishi:

私もこのケレス本はエンディングの名著だと思います。出版元はBatsfordです。同社から同じ頃に出版された「Think Like a Grandmaster」と「Play Like a Grandmaster」はいまだに入手可能なのに不思議です。Hardinge Simpoleでも復刊古典に入れていません。

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2007年11月26日 15:50に投稿されたエントリーのページです。

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