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2007年12月 アーカイブ

2007年12月01日

実戦に役立つエンディング(6)

第1章 初歩のエンディング

1.4 キング+ポーン対キング

 このエンディングは次章のポーン・エンディングで採り上げても良かったのだが、本章では最も簡単なエンディングを採り上げているのでこの章に入れるのが適当だと判断した。この種のエンディングでは一般的な原則を挙げるのが難しい。それはすべてが駒の配置によって変わってくるからである。勝ちはポーンが昇格できる場合にのみ可能であることは言うまでもない。そこで要件は昇格が可能かそうでないかをはっきりさせることにある。

 もちろん敵キングが遠く離れていてポーンのクイーン昇格を阻止できない場合は白の勝ちは明白である。同様に白キングが自分のポーンが取られてしまうのを防げない時も引き分けになることは明らかである。それでここでは黒キングがポーンの前方に待ち構えている場合に議論を絞ることにする。まず図6のようにポーンが6段目にいて黒キングがその前方の最下段にいる基本的な局面を調べよう。

YKeres006.JPG 図6

 左半分はこのエンディングの典型的な局面である。もともとポーンがもっと後ろの位置にいたとしても、黒がこのポーンの6段目への前進を防ぐことはできないので必ずこの局面に到達できる。勝ちかどうかはどちらの手番かによって決まる。白の手番ならば

1.c7+ Kc8 2.Kc6

ステイルメイトになるので引き分けである。それに白は同じ局面で黒に手番を渡すこともできない。例えば

1.Kd5 Kc7 2.Kc5

の後黒は正着の

2...Kc8!

を指せば以下 3.Kd6 Kd8 でも 3.Kb6 Kb8 でも図6左側と同じ状況になる。黒の受け方は易しい。つまり自分のキングをできるだけ長くc7とc8に留め、白キングが6段目に来たらすぐにそれと相対するように指せば良い。

 このようなエンディングに関連して二つのキングの位置に関する非常に重要な関係を紹介しておきたい。すべてのポーン・エンディングにおいて図6のようにキング同士が向かい合っている時(即ち同じ列または段で1枡だけ離れた位置にいる時)「見合い」、もっと正確には「近接見合い」の位置にあると言う。3又は5枡離れている場合は「遠方見合い」と言う。1、3又は5枡離れた斜めの見合いの場合もある。

 このような状況で相手に手番が渡っている時「見合いを取る」と言う。そのような場合相手は見合いを失っている。以上により図6の左半分を次のように定義することができる。「この局面で勝ちがあるかどうかはどちらが見合いを取っているかによる。白が取っているならば白の勝ちである。黒ならば引き分けである。」

 この規則はルーク・ポーン以外の全ての類似の局面に当てはまる。例えば図6の右半分では白が見合いを取っていても勝てない。

1...Kh8 2.h7

ステイルメイトになってしまう。

(この節続く)

2007年12月02日

実戦に役立つエンディング(7)

第1章 初歩のエンディング

1.4 キング+ポーン対キング(続き)

 ポーンが6段目でなくもっと後ろにある場合は黒の引き分けの可能性はもっと大きくなる。図7の下半分を考えてみよう。

YKeres007.JPG 図7

 この局面や類似の局面はどちらの手番でも引き分けである。黒は前にあげた原則に従って指せば良い。手順は次のようになる。

1.c3+ Kc4 2.Kc2 Kc5 3.Kd3 Kd5 4.c4+ Kc5 5.Kc3 Kc6 6.Kd4 Kd6 7.c5+ Kc6 8.Kc4 Kc7 9.Kd5 Kd7 10.c6+ Kc7 11.Kc5 Kc8! 12.Kd6 Kd8!

これで黒が見合いを取っている既知の引き分けの局面に到達した。

 これでキング+ポーンのエンディングが済んだと思われるかもしれないが実際はそうではない。例えば白キングが自分のポーンの前の地点を占めていたらどうなるだろうか。この場合にも勝ちかどうかの一般的な原則はない。しかし白の勝ちの可能性ははるかに高くなる。特に図7の上半分のようにポーンが前進している場合は特にそうなる。

 白キングは自分のポーンの直前の要所に到達することができた。そしてどちらの手番であろうとポーンがどれほど後ろにいようと白の勝ちは動かない。黒の手番ならば 1...Ka8 2.Kc7 又は 1...Kc8 2.Ka7 の後ポーンが進んで白が簡単に勝つ。白の手番でも特に問題はない。1.Ka6 Ka8 2.b6 で白が見合いを取っているので前に説明したとおり白が勝つ。類似の局面はすべて勝ちであるが例外はやはりルーク・ポーンの場合である。

 しかしナイト・ポーンの場合はちょっとした注意点を指摘しておきたい。図7の上半分で白の手番の場合ちょっと見には 1.Kc6 1...Kc8 2.b6 で白の勝ちのように思われるかもしれない。しかし正着は 1.Ka6! である。もっとも白は 1.Kc6 の後でもやり直して 1.Ka6 の局面に戻すことができる。1.Kc6 に対して黒は 1...Ka7! と応じる。ここで白が不注意に 2.b6+? と指すと黒は 2...Ka8! と応じ以下 3.Kc7 でも 3.b7+ Kb8 4.Kb6 でもステイルメイトで引き分けになる。従って白は恥を忍んで 2.Kc7 Ka8 3.Kb6! Kb8 4.Ka6! と勝ちの局面に戻らなければならない。

(この節続く)

2007年12月03日

実戦に役立つエンディング(8)

第1章 初歩のエンディング

1.4 キング+ポーン対キング(続き)

YKeres008.JPG 図8

 白キングが自分のポーンの前にいるけれどそのポーンがあまり進んでいない場合は図8の左半分のようになる。この典型的な局面で勝ちがあるかどうかはどちらの手番かによる。もし白が見合いを取っていれば次のような手順で白が勝つ。1...Kb7 2.Kd6 Kc8 (2...Kb8 3.Kd7) 3.c5 Kd8 4.c6 Kc8 5.c7 しかし白の手番ならば次のような手順で周知の引き分けの局面になる。1.Kd5 Kd7 2.c5 Kc7 3.c6 Kc8! 4.Kd6 Kd8

 この例から白のポーンがもっと後ろにあれば白が簡単に勝つことが分かる。それはポーンを動かすことにより常に見合いが取れるからである。そこでこの種のエンディングに対処する際に有用な原則は次のようになる。「まず白キングをできるだけポーンより先に進め(もちろんポーンを取られないように)、それからポーンを進める。」

 図8の右半分はこの原則の応用例である。もし黒の手番ならば 1...Kg4 又は 1...Kf4 で簡単に引き分けである。しかし白の手番ならば次のような巧妙な手順で白の勝ちになる。1.Kg3! これで見合いを取る。1.Kf3? は 1...Kf5! で黒が見合いを取り引き分ける。1...Kf5 2.Kf3! 見合いを保つ。2.f4? は 2...Kf6 で引き分けになってしまう。2...Ke5 3.Kg4 Kf6 4.Kf4! ポーンを動かさずに先にキングを動かすという原則を応用してここでも白が見合いを取る。4.f3? は間違いで 4...Kg6 5.Kf4 Kf6! で引き分けになる。4...Ke6 5.Kg5! Kf7 6.Kf5 ここは 6.f3 でも良いが 6.f4? はだめで 6...Kg7! で引き分けになる。6...Kd7 7.Kg6 Ke8 8.f4 キングが6段目に達したので今度はポーンを動かす番である。8.Kg7 は意味がなく 8...Ke7 9.f4 Ke6 に 10.Kg6 とするしかない。8...Ke7 9.f5 Kf8 10.Kf6! ここでも見合いを取らなければならない。10.f6? は 10...Kg8 で引き分けである。10...Ke8 11.Kg7 Ke7 12.f6+ これでポーンがクイーンに昇格できる。

(この節続く)

チェス500名局(3)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第3局

白 エリスカセス
黒 グリューンフェルト
1933年、モラフスカ・オストラバ

 本局は典型的な現代風の指し方で、消耗戦を連想させる。そこで見られるのは「精算の捨て駒」とも呼ぶべき技法である。

 その観点から見ていくとまず華麗な 27.Nf5 による駒損は一時的なもので白は開通したg筋に侵入口を確保する。その後の 40.h5 はbポーンを捨ててもすぐに取り返しb筋に活動拠点が得られることを見越している。最後に 45.Qf7+ は大切なポーンも捨てるが、ルークが敵陣に侵入するというもっと重要な代償を得る。

 最終手の 53.Rh8 も理論的には、深く進入したdポーンをおとりにして最後に残った役駒を精算することが目的と言える。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 Bb6 5.d4 Qe7 6.O-O Nf6 7.d5

Y071203A.JPG

7...Nb8

 後でd7の地点から戦闘に復帰するつもりである。7...Nd8 は長いことそのままでいなければならないだろう。7...Na5 は 8.Bd3 の後 9.b4 で野垂れ死にする。

8.Bd3

 中原地帯は閉鎖されたが白は永続する圧力に期待をかけている。危険がないとはいえない精力的な指し方は 8.d6 からのポーンの犠牲に始まる。以下 8...Qxd6 9.Qxd6 cxd6 10.Bd5 となりクイーンがいなくなったにもかかわらず白が一帯を制圧している。

8...d6 9.Nbd2 a6

 10.Nc4 の狙いに備えて黒は活動的なビショップを取られないようにする。

10.Nc4 Ba7 11.a4 O-O 12.b4 Ne8

Y071203B.JPG

 次に 13...f5 と突いて攻勢に移ろうという意図である。しかし白は次の手でそれを阻止する。

13.Qc2 g6

 黒はそれでもなお ...f5 と突く望みを捨てない。それと同時に現在働いていないキング翼のナイトの活用も意図している。しかし黒の陣形は凝り形のままである。

14.Bh6 Ng7 15.Ne3 f6

 黒は狙っていた ...f5 突きを断念しなければならないと自分の方から認めた。

16.Rad1 Rf7 17.Kh1

Y071203C.JPG

17...Nd7

 他の手たとえば 17...Kh8 でも白は 18.Rg1 で次にポーンを g4 に突き積極的な攻勢を開始するだろう。

18.g4 Nf8 19.Rg1 Bxe3 20.fxe3 Bd7 21.Rg3

Y071203D.JPG

21...c6

 黒は 21...Rc8 と準備してからこの反抗を行ないたいところだが 22.Bc4 で完全にその目論見はつぶされる。

22.Bc4 cxd5 23.Bxd5 Be6 24.Rdg1 Rc8 25.Nh4 Bxd5 26.exd5

Y071203E.JPG

26...Rc7

 26...Kh8 に対しても白は本譜と同じく 27.Nf5 で応じる。以下 27...gxf5 28.gxf5 で、黒のg7のナイトは動くと 29.Rg8# で詰んでしまうので動けなくなる。

27.Nf5

 主戦場に巧妙に兵力を集中した白はいよいよ敵の防御を崩しにかかる。

27...gxf6

 27...Nxf5 28.gxf5 g5 とg筋を開けさせないのは 29.h4 あるいはもっと手っ取り早く 29.Bxg5 fxg5 30.Rxg5+ で抵抗を打ち破られる。

28.gxf5 Qe8 29.Qg2 Qd7

Y071203F.JPG

30.Rxg7+ Rxg7 31.Bxg7 Qxg7 32.Qc2 Ng6 33.fxg6 h6

Y071203G.JPG

 33...h5 なら白は本譜と同じように指し進めしかもさらに効果的になる。ここで全体的には黒が敵の攻め足を食い止めることに成功し、白は新たな戦場を求めることになる。

34.Qf5 Qf8

 34...Rxc3 とポーンを取ると 35.Qe6+ Kh8 (35...Kf8 は 36.Qxd6+) 36.Qe8+ Qg8 37.g7+ Kh7 38.Qg6# で詰んでしまう。

35.c4 Kg7

 ここでも 35...Rxc4 とポーンを取るのは 36.Qe6+ Kg7 (36...Kh8 は 37.g7+ でひどい) 37.Qd7+ K 任意 38.Qh7# で詰んでしまう。

36.Rc1 b6

Y071203H.JPG

37.e4 Qe7 38.Qf2 Rb7 39.h4

Y071203I.JPG

39...a5

 39...Qd7 と受ける方が良かった。39...Kxg6 とポーンを払うのは自殺手とも言うべき手で 40.Rg1+ でgファイルからの殺到が厳しすぎる。

40.h5 axb4 41.Rb1 b3 42.Rxb3 Qd7

Y071203J.JPG

43.Qf5

 白は決定的な要所を占拠した。黒はクイーンの交換に応じることもできなければ(43...Qxf5 44.exf5 で 45.a5 が狙い) 43...Qxa4 で最悪の事態を逃れることもできない(44.Rf3)。

43...Qe7 44.Qe6 Qc7 45.Qf7+ Qxf7 46.gxf7 Ra7

Y071203K.JPG

 47.a5 に備えた。しかし白ルークの敵陣への侵入で勝敗が決する。

47.Rxb6 Rxa4 48.Rxd6 Rxc4 49.Rxf6 Kf8 50.d6 Rxe4 51.d7 Rd4 52.Rxh6 Kxf7 53.Rh8 黒投了

Y071203L.JPG

 投了も止むを得ない。53...Rxd7 とポーンを取るよりないが 54.Rh7+ Ke6 55.Rxd7 Kxd7 56.h6 で黒キングが「正方形」の外側にいるのでhポーンの勝利への進軍を止めることができない。

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一手一手の定跡習得(1)

doctor-peter 1870 - Asahigaoka 1852
B76 ICC 15m++0s 2003.09.11

1. e4 c5 2. Nc3 Nc6 3. Nf3

YItte0001.JPG

3...g6

ナイドルフ派としては 3...e5 と指して 4.d4 を拒否すべきでした。本譜は良く知らないドラゴン戦法に誘導されてしまいました。

4. d4 cxd4 5. Nxd4 Bg7 6. Be3 Nf6 7. f3 O-O 8.Qd2 d6 9. Nb3 a5 10. O-O-O a4 11. Nd4 a3 12. b3 Bd7 13. Nxc6 Bxc6 14. Bh6 Qa5 15. Bxg7 Kxg7 16. Nd5 Bxd5 17. exd5 Rfc8 18. g4 Qxd2+ 19. Rxd2 Rc3 20. Be2 Rac8 21. Rhd1 Nxd5 22. Kb1 Ne3 23. Rc1 f5 24. gxf5 Nxf5 25. Bd3 Nd4 26. Be4 Nxf3 27. Rf2 Ne5 28. Rcf1 R8c7 29. Bd5 Ng4 30. Rf7+ Kh6 31. Be6 Rxc2 32. Bxg4 Rb2+ 33. Ka1 Rcc2 34. Be6 Rxa2+ 35. Kb1 Rcb2+ 0-1

2007年12月04日

実戦に役立つエンディング(9)

第1章 初歩のエンディング

1.4 キング+ポーン対キング(続き)

 最後にルーク・ポーンに関する二つの例外的な場合について触れておきたい。この種のエンディングではポーンが他の筋にいる場合は絶望的な局面でも防御側が引き分けにできる可能性が大きい。例えば図9の左半分では白の手番でも勝てない。

YKeres009.JPG 図9

 1.Ka7 Kc7 2.a6 Kc8 3.Ka8 (3.Kb6 Kb8) Kc7 4.a7 Kc8

で白自身がステイルメイトになる。原則的には黒キングが急所のc8(盤の反対側の場合ならf8)の地点に到達できれば引き分けにできると言える。この原則の明らかな例外は白キングが既にc6又はb6の地点を占めていて 1.a7 とポーンを突ける場合である。

 図9の右半分はポーンがルーク筋以外の場合だったら負けなのに引き分けにできる例である。ここでも白は手番でも勝てない。

1.h5 Kf6 2.Kh7 Kf7 3.h6 Kf8

 これで直前に見た引き分けの局面と同じになる。だから一般的にはルーク・ポーンに対しては黒は引き分けにできる。

 これで初歩的なエンディングを終えることにする。次章からはポーン、クイーン、ルーク、ビショップ及びナイト・エンディングの順にもっと複雑なエンディングについて採り上げる。そして色々なエンディングに応用できるような一般原則を含むような局面だけを解説する。前に述べたように終盤の参考書を編集するつもりはなく、全てのチェス愛好家が知っておかなければならない重要で基本的な局面だけを採り上げるつもりである。

(この節・章終わり)

JCAの間違い捜し(1)

JCAのホームページや機関誌のCHESS通信の色々な間違い(誤字のたぐいからクイズの局面図の間違いまで)についてこれまでメールでこっそりJCAに知らせてきましたが、いっこうに改善に向けての兆しが見られません。指摘されたら直せば良いという考えのようです。(間違いはお前たちが見つけろということのようです。)これまで何十回も指摘してきて私も疲れました。これからはメールで知らせるのは止めて、ここに発表することにしました。

「第78回チェスネット競技会 12月号」
http://www.jca-chess.com/web-kyougikai78.html

YJCA001.JPG

「白先」と書いていて棋譜のところが「1. ・・・」となっています。これは黒の手から始まる時に使う記号です。

「スパスキイ」と書いてありますが普通は「スパスキー」です。「Key」を「キイ」と表記するようなものでしょう。

どうやらチェスをあまり知らない人がJCAのホームページの更新作業をしているようです。

一手一手の定跡習得(2)

Asahigaoka 1859 - CheekyChimp 1949
C63 ICC 15m++15s 2003.09.12

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 f5 4. Nc3 fxe4 5. Nxe4 Nf6 6. Nxf6+ Qxf6 7. Qe2 Be7 8. Bxc6 dxc6 9. Nxe5 O-O 10. O-O Bd6 11. d4 c5

YItte0002.JPG

12. c3

定跡は 12.Be3 でした。

12...cxd4 13. cxd4 c5 14. Be3 Re8 15. f4 b6 16. Qf3 Ba6 17. Qd5+ Qe6 18. Qxe6+ Rxe6 19. Rfd1 g5 20. dxc5 bxc5 21. Nd7 gxf4 22. Nxc5 Bxc5 23. Bxc5 Rg6 24. Rd6 Rxd6 25. Bxd6 Rd8 26. Bxf4 Bb7 27. Rc1 Rd7 28. Rc7 Rd1+ 29. Kf2 Bd5 30. Rxa7 Rd4 31. Be3 Rc4 32. Bh6 Rc2+ 33.Ke3 Rxg2 34. Ra5 Be6 35. Rg5+ Rxg5 36. Bxg5 Bxa2 37. Kd4 Kf7 38. b4 Ke6 39. Kc5 Kd7 40. Kb6 Kc8 41. Bf4 Bd5 42. b5 Be4 43. Kc5 Kb7 1/2-1/2

2007年12月05日

実戦に役立つエンディング(10)

第2章 ポーン・エンディング

 ポーン・エンディングから始めるのは奇異に感じる人がいるかもしれないが、これにはそれなりの理由がある。まず、ポーン・エンディングは駒数が少なくて形が比較的単純であり(内容は必ずしもそうとは限らないが)、エンディングの概観と対処の仕方を学ぶのに最も適している。次にポーン・エンディングは通常は他のエンディングから移って来て、エンディングの理論全般の基礎となっているからである。

 これまで見てきた初歩のポーン・エンディングは全てのポーン・エンディングの基礎となるものであった。もし読者がポーン・エンディングは最も易しいという印象をもたれたら残念ながらそれは当たっていない。いずれ分かるが一部のポーン・エンディングは非常に複雑で、慣れていない人にはどう指したらよいか難しい。

2.1 キング+ポーン対キング

 初歩のエンディングで見て来たこのエンディングをまた採り上げる。図10は以前紹介した原則をそのまま適用できない例である。この機会に「遠方見合い」についてもっと詳しく説明する。

YKeres010.JPG 図10

 もし黒の手番ならばキングが何の妨げもなくf4の地点に到達でき、これまで見てきたように引き分けになる。白の手番だと状況はもっと複雑である。この局面をもう少し詳しく調べなければ結果については答えられない。これまでの例で見てきたように、白キングがf6の地点に到達した時に黒の手番になっていれば白の勝ちである。白の初手は当然 1.Ke2 (1.Kg2 でも同様) で、黒は最善の受けが要求される。明らかに 1...Kf5? は 1.Kf3! で白の目的を達成させるし、1...Ke5 2.Ke3 Kf5 3.Kf3 も同様である。唯一の正しい受けは 1...Ke6 である。 2.Ke3 には 2...Ke52.Kf3 には 2...Kf5 で見合いを取って引き分けにできる。1...Ke6! により黒は遠方見合いを取り、両方のキングが近づくにつれて近接見合いになった。この例は遠方見合いの基本的な構図である。後に遠方見合いの応用のもっと複雑な例を紹介する。

 見合いの理論は重要だが適度に簡明である。しかし「対応枡」の理論を理解していれば見合いを用いなくても済む。この理論は時には見合いの応用よりも幅広く理解し易い。そこで図10をもう一度見てみよう。

 「対応枡」とは何だろうか。白キングがf3にいて黒キングがf5にいる局面を考える。これはすでに知っているように黒の手番ならば白が勝つ。この2枡のことを「対応枡」と呼ぶことができる。つまり黒キングがf5にいる時、白キングは勝つためにはf3にいる必要がある。逆に黒が引き分けるためには白キングがf3に来た時に自分のキングを対応枡のf5に置かなければならない。

 受け手の立場からもっと他の対応枡の組を見つけてみよう。白キングがf4に到達するとどう変化しても白の勝ちになるので黒はそれを許してはいけないことが分かっている。だから白キングがe3にいて次にf4に行こうとしている場合、黒キングはe5,f5又はg5に行ける状態でなければならない。しかしg5は白キングがe3からe4に行くとf4の地点を確保されてしまうので良くない。f5も白キングがe3からf3に行った場合このf5の地点を占めなければならないのでだめである。そうすると残るはe5だけである。これがe3に対する対応枡となる。それでは白のe2の枡に対応する黒の枡はどこだろうか。白はe2からe3とf3の両方に行けるので、黒の対応枡はe5とf5とに行ける枡、即ちe6又はf6ということになる。

 このように考えていくと黒の正しい受けを再び見つけることができる。1.Ke2 の後 1...Ke6 だけが引き分けにできる。これまでの考察から他の手ではすべて黒が負けることが分かる。

 以上はもちろん対応枡の簡単な例である。後にこの考え方の非常に役に立つ例を紹介する。

(この節終わり)

チェス500名局(4)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第4局

白 ド・ラ・ブルドネ
黒 マクドネル
1834年、番勝負

 本局はルークの使い方の好例である。ルークは一般に考えられているよりも柔軟に使えることが示される。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 d6

 狙いを持って展開する 4...Nf6 の方が積極性がある。

5.d4 exd4 6.cxd4

Y071205A.JPG

6...Bb6

 6...Bb4+ なら白には 7.Nc3 と 7.Kf1(8.d5 から 9.Qa4 の狙い)の二途がある。本譜では黒のビショップは敵の中原に睨みを利かせ続ける。

7.d5

 中原を閉鎖する。とりわけ自分のビショップの利きも止まる。しかし白は代わりに他の駒が自由に動けるようになることを期待している。最も強硬な手は 7.Nc3 である。

7...Ne5

 7...Na5 は悪手で 8.Bd3 と引かれた後 9.b4 でナイトを取られる手が残る。7...Nce7 と引くのは 8.e5 で白に楽しみが多い局面である。

8.Nxe5 dxe5 9.Nc3 Nf6

Y071205B.JPG

 この型にはまった手よりも、白の守備の要のナイトが交換でいなくなったことに乗じて 9...Qh4 と出る手が面白かった。

10.Bg5 O-O

 早急に釘付けを緩和するために黒が 10...h6 と指しても白は 11.Bh4 g5 12.Bg3 Qe7 あるいは 11.Bxf6 Qxf6 で互角の局面にしたりはしない。代わりに手順の妙で 11.Bb5+ Bd7 12.Bxd7+ Qxd7 13.Bxf6 gxf6 14.Qf3 Qd6 15.O-O で全局的に圧倒する。

11.Qf3 Qd6

 この手はナイトの釘付けを解消し、白の手によっては局面が単純化される。似たような構想でもっと効果的だったのは 11...h6 12.Bxf6 Qxf6 13.Qxf6 gxf6 という進行で、ここで 14.g4 なら 14...Kh7 でさっさと引き分けの形を作り上げる。

12.Bxf6 Qxf6 13.Qxf6 gxf6

Y071205C.JPG

14.g4

 これは見事な構想である。受け(14...f5 からの捌きを封じる)と攻め(g筋から攻め込む)とを兼ね備えている。14...Bxg4 は 15.Rg1 h5 16.h3 でビショップを取られるのでこのポーンは取れない。

14...Kg7

 せっかちな性格のマクドネルは逆襲(後の 18...h5)を計画する。しかしここは 14...Kh8 の方が穏当だった。他に受ける手としては 14...h6 又は 危険な駒を取り除く 14...Ba5 があった。しかし黒は敵の策略を意に関していないようである。

15.Ne2 Rh8 16.Rg1 Kf8 17.Rg2

Y071205D.JPG

 f2を守ってキングが動けるようにするのと、重要なg筋にルークを重ねる目的である。

17...Ke7 18.O-O-O h5

 黒の14手目から狙っていた手である。もっと賢明な手は 18...Bd7 の後 19...Rag8 とルークを活用する手であろう。

19.g5

Y071205E.JPG

19...f5

 ここが勝負所である。黒はまたもや敵の手を軽視し形勢を楽観しているようである。次のように難解な変化があった。

19...fxg5 20.Rxg5 Bxf2 (21...Be3+ の狙い)

A) 21.Rxe5+ Kd6 これはルークの逃げ場がなく黒の勝ち。

B) 21.Kd2 (21...Be3+ の防ぎ) Bh4 で受け切れる。

C) 21.d6+ cxd6 22.Rg7 Be6 23.Bxe6 Kxe6 24.Rf1 Be3+ 25.Kd1 Raf8 これは黒の陣形がしっかりしている。

D) 21.Rg7 (22.d6+ の狙い) Kf8 22.Rg2 Be3+ 23.Kc2 Rg8 黒陣は安泰である。

E) 21.Rg2 (最善の攻撃手) Be3+ 22.Kc2 これなら互角の形勢。

20.Nc3 Bc5

 21.d6+ cxd6 22.Nd5 に備えた手。

21.g6 Bd6 22.gxf7 Kxf7

Y071205F.JPG

23.f4

 すぐに 23.Rdg1 とルークを重ねると黒に 23...f4 と封鎖される。

23...exf4 24.Rdg1 Kf8

 24...Bd7 は 25.Rg7+ Ke8 26.e5 Bf8 (26...Bxe5 は 27.Re1) 27.R8g6 で白の独壇場となる。

25.Rg6

 全力による総攻撃への準備。

25...f3 26.exf5 Be5 27.d6

Y071205G.JPG

 7.d5 以来20手もの間封印されていた筋を再び開ける。その効果は絶大である。

27...cxd6 28.Rg8+ Rxg8 29.Rxg8+ Ke7 30.Nd5+ Kd7 31.Bb5# 1-0

Y071205H.JPG

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一手一手の定跡習得(3)

Asahigaoka 1863 - NickCliveUK 1927
C87 ICC 30m++0s 2003.09.16

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 a6 4. Ba4 Nf6 5. O-O d6 6. Re1 Be7 7. c3 O-O 8. h3 Nd7

YItte0003.JPG

9. Bxc6

定跡は 9.d4 でした。

9...bxc6 10. d4 f5 11. exf5 Rxf5 12. dxe5 Nxe5 13. Nxe5 Rxe5 14. Rxe5 dxe5 15. Qxd8+ Bxd8 16. Nd2 Bf5 17. Nf3 Bf6 18. Be3 Rd8 19. Kf1 e4 20. Nd4 1-0

2007年12月06日

実戦に役立つエンディング(11)

第2章 ポーン・エンディング

2.2 キング+ポーン対キング+ポーン

 この型のエンディングでもやはり全てが駒の配置によるので勝ちか引き分けかの一般的な原則を述べることはできない。しかし普通は引き分けになるので、ここでは主に白が強制的に勝てる局面に話を限る。以下では局面を2種類に分けて考えることにする。

A ポーンが同じ列にある場合

 この場合は図11を基本的な局面として考えることができる。

YKeres011.JPG 図11

 このような局面はどちらの手番であろうと駒の配置がいくら後ろにあろうと引き分けである。白の手番ならば黒は見合いを取っているので 1.Kg4 Kg6 2.Kf4 Kf6 で簡単に引き分けにできる。黒の手番ならば次のようにポーンを取られる。

1...Ke6 2.Kg5 Ke7 3.Kf5 Kd6 4.Kf6 Kd7 5.Ke5

 ここで 5...Kc6 でも 6.Ke6 でポーンは助からない。しかし黒は次のように初歩のエンディングで示した原則を応用して引き分けにできる。

5...Ke7! 6.Kxd5 Kd7!

 これで見合いが取れて引き分けになる。

 しかし駒の配置を一段ないしは二段上に上げれば状況はがらりと変わる。もちろん白の手番ならば勝ちのないことは変わりない。しかし黒の手番ならば今度は負けになる。上で見たように黒はポーンを取られる。そしてその時白キングは6段目に達する。ポーンがルーク筋以外ならばすべて白の勝ちである。例外は黒ポーンがg7又はb7にいる場合である。この場合黒キングは隅に逃げ込めば良い。白キングが近づいてくればステイルメイトになる。ポーンがルーク筋にある場合はこれまでと同じように引き分けである。

(この節続く)

一手一手の定跡習得(4)

mdavid 1916 - Asahigaoka 1885
B90 ICC 15m++2s 2003.09.19

1. e4 c5 2. Nf3 d6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 a6 6. f3 e5 7. Nb3 Be6 8. Be3 b5

定跡は 8...Nbd7 でした。

9. Qd2 Nbd7

手順前後で定跡形に戻りました。

10. O-O-O Rc8 11. g4 Nb6 12. g5 Nfd7 13. Nd5

YItte0004.JPG

13...Nxd5

定跡は 13... Bxd5 14. exd5 Nc4 でした。

14. exd5 Bf5 15. Bd3 Bxd3 16. Qxd3 Be7 17. h4 O-O 18. f4 f5 19.gxf6 Bxf6 20. fxe5 Nxe5 21. Qe4 Nc4 22. Bd4 Re8 23. Qg4 Ne3 24. Bxe3 Rxe3 25.Nd4 Rc4 26. Kb1 Qc7 27. c3 b4 28. Qf4 Re7 29. cxb4 Rxb4 30. Rhg1 Be5 31. Qg4 Qc3 32. Rg2 Bxd4 33. Rxd4 Qxd4 34. Qc8+ Kf7 35. Qf5+ Qf6 36. Qh5+ Kf8 0-1

2007年12月07日

実戦に役立つエンディング(12)

第2章 ポーン・エンディング

2.2 キング+ポーン対キング+ポーン

A ポーンが同じ列にある場合(続き)

 次に両方のキングにもっと動く余地がある場合を少し考えてみよう。まず図12から。

YKeres012.JPG 図12

 このような局面は実戦でよくできるので正しい結果を知っておくことは大切である。白が黒のポーンを取ることができればたとえその時手番でも黒が見合いを取ることができないので白が簡単に勝つことは既に学んだ。手順は次のようになる。

1.Kc4

 勝つための唯一の手である。1.Kd4 は 1...Kd8 で黒が見合いを取り引き分けになる。

1...Kd7 2.Kb5!

 再び斜めの見合いを取る。2.Kc5? は 2...Kc7! で引き分けになってしまう。

2...Kc7 3.Kc5 Kd7 4.Kb6 Kd8 5.Kc6 Ke7 6.Kc7 Ke8 7.Kd6 Kf7 8.Kd7

 後は白が簡単に勝つ。

 これは一つの想定手順である。黒は 1...Kf7 で次のように白ポーンに対する逆襲を企てることもできる。

1.Kc4! Kf7 2.Kc5 Kg6

 このように両方のキングがそれぞれ反対側からポーンに近づいて来る局面も良く現れる。ここでのよくある間違いは 3.Kd6? でそれは 3...Kf5! で黒の勝ちに変わる。このような局面で覚えておくと役に立つ原則は1枡下(ここなら d7)からポーンを攻撃することである。そうすれば次の手 (Kd6) で自分のポーンを守りながら相手のポーンを攻撃することができる。したがって白の正着はつぎのようになる。

3.Kc6!

白キングは d7 の地点を目指し黒キングは f5 の地点を目指す。ここでは白の方が先に到着する。

3...Kg5

 3...Kf5 ならば 4.Kd6 で白の勝ちであることはすぐ分かる。

4.Kd7! Kf5 5.Kd6

 これで白の勝ちである。

(この項続く)

「ヒカルのチェス」(45)

「Chess Life」2001年12月号

******************************

U.S.オープン ブリッツ選手権
2001年8月9日 マサチューセッツ州フレーミングハム

記 FM ポール・トゥルーオング

 マサチューセッツ州フレーミングハムで開催された2001年U.S.オープンのブリッツ選手権戦でドイツのGMローラント・シュマルツ(4回の世界電撃チェス選手権者と本大会の優勝候補)と小生(5度の元南ベトナム選手権者)が14戦中12ポイントの成績で同点優勝した。才能溢れる2001年米国ジュニア選手権者のIMヒカル・ナカムラ(ニューヨーク)が11-3の成績で単独3位に入った。その後にクリストファー・トゥーリン(ロード・アイランド)とブレーデン・ブルニバル(ニューハンプシャー州)が10-4の成績で続いた。

 最終回戦を迎えてシュマルツとトゥルーオングが10点で並び、米国マスターのジェームズ・クォン(カリフォルニア州)が9.5点で追い、さらにその後に二人のIMのローレンス・カウフマン(メリーランド州)とヒカル・ナカムラ(ニューヨーク)が共に9点で続いていた。シュマルツとトゥルーオングは既に対戦を終えていたので、シュマルツはクォン(2301)と、トゥルーオングはカウフマン(2401)と対戦した。ナカムラはスイス式組み合わせの気まぐれのせいでエキスパートのアナトリー・レビン(マサチューセッツ州)(2023)と対戦した。

 クォンは善戦したが超早指しのシュマルツの敵ではなかった。信じられないようなブリッツの申し子のナカムラも早々と2-0でレビンに勝った。シュマルツとナカムラは白番と黒番の両方とも勝ったが、トゥルーオングはカウフマン相手の黒番の初戦でかなりてこずっていた。

(以下省略)

******************************

(この号終わり)

一手一手の定跡習得(5)

Asahigaoka 1871 - Popolator 1953
C18 ICC 15m++0s 2003.09.20

1. e4 e6 2. d4 d5 3. Nc3 Bb4 4. e5 c5 5. a3 Bxc3+ 6. bxc3 Qc7 7. Qg4 f5 8. Qg3 Ne7

YItte0005.JPG

9. Ne2

定跡は 9.Qxg7 でした。

9...O-O 10. Nf4 cxd4 11. cxd4 Nbc6 12. Qc3 Bd7 13. Be3 Rac8 14. Bd3 Nxe515. Qxc7 Nxd3+ 16. Nxd3 Rxc7 17. Rb1 b6 18. Ne5 Nc6 19. Nxd7 Rxd7 20. g3 Rc821. O-O Kf7 22. Rfc1 Na5 23. Bf4 Nc4 24. Rb3 h6 25. h4 Kf6 26. Re1 g5 27. hxg5+hxg5 28. Be5+ Nxe5 29. dxe5+ Kg6 30. c3 Rdc7 31. Re3 Rc4 32. Kg2 f4 33. gxf4gxf4 34. Rh3 R8c7 35. Rb4 Kg5 0-1

2007年12月08日

実戦に役立つエンディング(13)

第2章 ポーン・エンディング

2.2 キング+ポーン対キング+ポーン

A ポーンが同じ列にある場合(続き)

 ポーンがルーク筋にある場合は当然勝つ可能性は少なくなる。しかし図13の局面は巧妙で思いがけない手順が存在する。

YKeres013.JPG 図13 白の手番
シュラーゲ対アフーエス、ベルリン、1921年

 この局面は1921年ベルリンでの大会でのシュラーゲ対アフーエス戦に現れた。白の手番で黒は当然ポーンを取られる。しかし白が5手かけて黒ポーンを取る間に黒キングは引き分けにできるc7の地点に到達するので問題ないように見える。本当にこの局面は引き分けの局面なのだろうか。実戦の進行は 1.Ke6 Kc3 2.Kd6? Kd4 3.Kc6 Ke5 4.Kb7 Kd6 5.Kxa7 Kc7 で以下引き分けになった。

 しかし実際には白キングが正しい道筋を選んでいれば勝つことができた。ポーン・エンディングではキングが斜めの道筋を通っても同じ手数で同じ地点に到達し、しかも敵のキングの進路を制限できることがある。白は次のように指すべきであった。

1.Ke6 Kc3 2.Kd5!

 こう指しても白は5手で黒ポーンが取れる。しかも黒キングのd4-e5-d6の道筋を妨げている。従って黒はc7の地点に間に合わずに負けてしまう。

2...Kb4

 2...Kd3 なら 3.Kc6 Ke4 4.Kb7 Kd5 5.Kxa7 Kc6 6.Kb8 でやはり白が勝つ。

3.Kc6 Ka5 4.Kb7 Kb5 5.Kxa7 Kc6 6.Kb8

 これでポーンがクイーンに昇格できる。

 単純だが非常に参考になる例だった。面白いことに図13で黒キングがb2でなくもっと条件の悪そうなh2にいたならば、白は黒キングの進路をじゃまして無駄な手を指させることができないので引き分けになるところであった。

(この項続く)

一手一手の定跡習得(6)

Asahigaoka 1909 - Tich 1994
B76 ICC 15m++0s 2003.09.20

1. e4 c5 2. Nf3 d6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 g6 6. Be3 Bg7 7. f3 O-O 8. Qd2 Nc6 9. O-O-O Nxd4 10. Bxd4 Be6

YItte0006.JPG

11. h4

定跡は 11. Kb1 (11...Qa5?! 12. Nd5) でした。

11... h5 12. Be2 Qa5 13. Kb1 Kh8 14. g4 hxg4 15. h5 gxh5 16. fxg4 Nxg4 17. Rdg1 Kg8 18. Bxg7 Kxg7 19. Bxg4 Kf6 20. Rxh5 Qxh5 21. Bxh5 Rg8 22. Qf4+ 1-0

2007年12月09日

実戦に役立つエンディング(14)

第2章 ポーン・エンディング

2.2 キング+ポーン対キング+ポーン

B ポーンが異なる列にある場合

 この場合もしポーンが相手のキングによって止められてしまうと、白が敵ポーンを有利な条件の下で取れない限り結果は通常は引き分けである。この例として図14を考えてみよう。

YKeres014.JPG 図14 白の手番
デドルレ 1921年

 白が黒ポーンを取るのは簡単である。例えば 1.Kc3 Ke5 2.Kb4 Kd5 3.Kxa4 で何も問題ないように見える。しかし黒にも策があり 1...a3 で引き分けにできる。以下 2.bxa3 なら 2...Ke6 3.Kc4 Kd6、2.b4 なら 2...Ke6 3.Kb3 Kd6 4.Kxa3 Kc6 5.Ka4 Kb6 である。白が勝つためにはこの黒の手を考慮に入れなければならない。そして自分のポーンをできるだけ後ろに置いたままの状態でキングで黒ポーンを取らなければならない。その手順は次のとおりである。

1.Kb1 a3

 最善の受けである。1...Ke5 は 2.Ka2 Kd4 3.Ka3 Kc5 4.Kxa4 Kb6 5.Kb4! で白が簡単に勝つ。

2.b3!

 後で分かるように 2.b4 は引き分けにしかならない。

2...Ke5 3.Ka2 Kd5 4.Kxa3 Kc5 5.Ka4 Kb6 6.Kb4!

 これで白の勝ちである。

 明らかに白ポーンがb4にあったらこの最後の手は指せないところであった。本譜ではおなじみの勝ちの局面になった。

(この項続く)

一手一手の定跡習得(7)

Jdelva 2154 - Asahigaoka 1926
E99 ICC 15m++12s 2003.09.22

1. d4 Nf6 2. c4 g6 3. Nc3 Bg7 4. e4 d6 5. Nf3 O-O 6. Be2 e5 7. O-O Nc6 8. d5 Ne7 9. Ne1 Nd7 10. Be3 f5 11. f3 f4 12. Bf2

YItte0007.JPG

12...Nf6

定跡は 12...g5 でした(少しでも長く白の c5 を防ぐ)。

13. c5 g5 14. cxd6 cxd6 15. Rc1 Ng6 16. Nb5 Rf7 17. Nxa7 Bd7 18. Bb5 Bxb5 19. Nxb5 Rxa2 20. Qb3Ra8 21. Na3 g4 22. Bb6 Qb8 23. Nb5 Bf8 24. Bc7 Qc8 25. Nxd6 Bxd6 0-1

ナボコフの「ディフェンス」余話

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「Chess Life」
2001年12月号

「Larry Evans on Chess」

GM ラリー・エバンズ

「ルージン防御」
バート・ホーチバーグ、ニューヨーク市

質問 「ルージン防御」という映画でトゥラチ対ルージン戦に次の局面が現れた。

Y071209A.JPG

 絶望的な時間不足の中でルージンは 1...Nxf4 と指した。トゥラチは 2.exf4 と応じ黒が次の手を封じて試合は指しかけとなった。傷心したルージンはうつむいたまま対局場を後にした。彼のナイト切りは実際は勝ちにつながる決め手だったのだが、ルージンには知るよしもなかった。我々にしても同様である。後になって初めて彼はその後の妙手に気付くことになる。

 ルージンは精神を患い保養所で治療を受ける。差し掛けからどのくらいの時間が経過したかは映画では語られない。しかし何日かは当然経過しただろう。少なくともこれ自体異例のことである。指し掛けの試合は指定の日時に再開されるものである。もし一方の対局者が現れない場合は不戦敗となる。ルージンの自殺後彼のフィアンセのナタリアは彼のチェスのノートを見つける。彼女はそれを友人に見せ、信じられないことだがその友人はトゥラチと試合の審判員を説得し対局を再開させることに成功する。

 ナタリアはルージンの代わりに勝ちを決める手を指し 2...Re3+ 3.Kg4 f5+ 4.Kg5 Kg7 5.Nd5 Rh3! 6.gxh3 h6+ 7.Kh4 Bf2# でトゥラチのキングを詰みに仕留める。大変見事で大変崇高である。もちろん全くのナンセンスであり、そもそも規則に違反している。審判がこのようなことを許すなんて想像できるだろうか。第一に対局者は自分で指さなければならない。第二に対局中にノーを見るなどははっきりした不正である。

 ナボコフの小説は人格の破綻を描いている。ナボコフは音楽か美術を用いた方が良かったのかもしれない。しかし彼自身チェスを指すのでチェスの脅迫的な魅力を良く理解していた。映画はそれらのほとんどをとらえることには成功している。しかしチェスの現場(ナボコフの本には棋譜や図はない。映画のチェスの局面はイギリスのGMジョン・スピールマンの創作である)は無茶苦茶である。

 チェスを愛する者として映画の中で右下隅が正しく白枡になっているチェスの局面が現れればほっとする。しかし我々は常識も高めていかなければならないと思う。大衆向けのメディアでのチェスの扱いで見え見えの不合理や愚行は言い逃れや黙認を許さず声高に批判すべきだと思う。

回答 バート・ホーチバーグ氏は「Chess Life」の元編集長だが、この件について2001年9月号の「Games」という雑誌にも記事を書いている。ナボコフの小説では普通の生活とチェスへの情熱の間で行き詰まったルージンが窓から飛び降りるところで終わっている。ナボコフは『ルージンが手を離し氷のような空気が彼の口に流れ込んできた瞬間、彼はどんな永遠が余儀なくそして容赦なく彼の前に広がっているかをまざまざと見た。』と書いている。これはベルリンの著名なチェス棋士で彼の友人だったクルト・フォン・バルデレーベンの1924年の自殺が基とされている。最近でもエストニアの若いGMのレンビット・オルが結婚の破綻とエリートの大会に招待されないことを苦にして同じようにして自らの命を絶った。

 映画は息を飲むような映像の連続の後、まやかしの結末で終わる。プレビューの観客の1人でニューヨークのチェス・エキスパートは次のように笑い転げた。「1時間と50分の間みんな展開に引き込まれて魅了されながら座っていた。残念ながら最後の10分間はこじつけで、全くのでっち上げのラストだった。そこまでの映画のせっかくの評価がほとんどぶち壊しだった。」とGMロン・ヘンリーは書いていた。

 しかしとりえもある。映画の最後の局面は技術的に正しい。黒は2ポーン損だが 1...Nxf4! 2.exf4 Re3+ 3.Kg4 f5+ 4.Kg5 Kg7 5.Nd5 Rh3! 6.gxh3 h6+ 7.Kh4 Bf2# で詰みで黒が勝っている。もっとも 1...Nxf4 には 2.Nd1! Ne6 3.Bxa6 で白が優勢のままだった。

 最後にオランダのチェス作家のティム・クラッベの次の文章にとどめを刺す。「チェスの悲劇的な魅力を『男は弱過ぎて女が彼に代わって仕事を仕上げてやらなければならない』というフェミニストのパンフレットに変えるのにはある種の悲しい勇気が必要だ。」

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「ディフェンス」
ウラジーミル・ナボコフ 若島正・訳
河出書房新社 ISBN4-309-20328-0

Y071209B.JPG

2007年12月10日

実戦に役立つエンディング(15)

第2章 ポーン・エンディング

2.2 キング+ポーン対キング+ポーン

B ポーンが異なる列にある場合

 お互いに相手のポーンを止められない時には非常に面白い状況になる。その場合直前の例で見たようにチェスでは2地点間の最短の道筋は必ずしも直線とは限らないという事実を利用したキングの動きで勝てることが良くある。そこでGMドゥラスのエンディングを見てみよう。

YKeres015.JPG 図15

 ちょっと見たところでは両方のポーンともまだ原位置にあり白キングの位置がわずかに勝っているだけなので互角の局面に思われる。しかし驚くべきことに、白の手番であることとこの最小限の有利が最終的には白に必ず勝ちをもたらす。しかし勝つためには白は極度の正確さが要求される。特にキングの位置には注意が必要である。

1.Kc5!

 明らかに白キングは自分のポーンの前進を助けなければならない。さもないと黒キングによって止められてしまう。しかしどうして白キングはわざわざ黒ポーンが将来クイーンに昇格した時チェックになるような地点に行くのであろうか。以下の手順でその理由が分かる。

a)1...Kg6

 黒はキングで白ポーンを止めようとする。1...g5 と競争するのは次のb)で述べる。

2.b4 Kf7 3.b5 Ke7 4.Kc6!

ここで 1.Kc5! でなければならなかった理由が分かる。4.b6 Kd7 と 4.Kb6 g5 5.Kc7 g4 は引き分けである。

4...Kd8

 要点は黒キングが最下段の不利な位置に置かれたということである。このため後に白クイーンによってチェックされる。

5.Kb7! g5 6.b6 g4 7.Ka7 g3 8.b7 g2 9.b8=Q+ で白の勝ち。

b)1...g5

 今度は敵ポーンの前進を止める代わりに黒が自分のポーンを突き進めてみる。チェックでクイーンに昇格できるかもしれない期待が持てる。しかし白キングの適応能力は次のような巧妙な手順で勝利する。

2.b4 g4 3.Kd4!

 黒ポーンは味方のキングの助けが必要である。これにより白はクイーンができた時にチェックになる地点に黒キングを追いやることができる。3.b5? は 3...g3 で逆に黒の勝ちとなる。

3...Kg5

 3...g3 は 4.Ke3 Kg5 5.b5! で本譜と同じになる。ただし 5.Kf3? は間違いで 5...Kf5 で引き分けになる。

4.b5 g3

 黒が 4...Kf4 で白キングを押さえようとすると白ポーンが先にチェックでクイーンに昇格する。

5.Ke3 Kg4 6.b6 Kh3 7.b7 g2 8.Kf2 Kh2 9.b8=Q+ で白の勝ち。

(この節続く)

一手一手の定跡習得(8)

roberto401 2244 - Asahigaoka 1921
E97 ICC 20m++0s 2003.09.22

1. d4 Nf6 2. c4 g6 3. Nc3 Bg7 4. e4 d6 5. Nf3 O-O 6. Be2 e5 7. O-O Nc6 8. d5 Ne7 9. b4 Nh5 10. g3 f5 11. Ng5 Nf6 12. f3

YItte0008.JPG

12...Kh8

定跡は 12...f4 でした。

13. exf5 gxf5 14. Bd3 c6 15. dxc6 bxc6 16. a3 d5 17. cxd5 cxd5 18. Re1 e4 19. fxe4 fxe4 20. Bf1 Ng4 21. Be3 Bxc3 22. Bd4+ Bxd4+ 23. Qxd4+ Kg8 24. Nxe4 Qb6 25. Nc5 Rf7 26. Rxe7 Rxe7 27. Qxd5+ Kg7 28. Qxa8 Qf6 29. Ra2 Re1 30. Qg2 Ne3 31. Rf2 Nxg2 32. Rxf6 Kxf6 33.Kxg2 Bh3+ 34. Kxh3 Rxf1 35. a4 Rc1 36. Nd7+ Ke7 37. Nc5 Rc4 38. Na6 Kd7 39. Kg2 Kc6 40. Kf3 Kb6 41. Nc5 Rxb4 42. Nd7+ Kc6 43. Nf6 Rxa4 44. Nxh7 Kd6 45. Nf6 Ke6 46. Ne4 Ke5 47. Nc5 Ra3+ 48. Kg4 Kf6 49. Nd7+ Ke7 50. Nb8 a5 51. h3 a4 52. Nc6+ Kf7 53. Ne5+ Kg7 54. Nc4 Ra1 55. Ne3 Re1 56. Nc2 Re2 57. Na3 Re4+ 58. Kf3 Rb4 59. Nc2 Rb3+ 60. Kf4 a3 61.Nxa3 1-0

チェス500名局(5)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第5局

白 シュピールマン
黒 ヤノフスキー
1907年、カールスバート

 この好局の見どころは白がe筋を完璧に利用するところである。白はポーンを一時的に犠牲にして(8.O-O)この筋を開通させ、後にはまたポーンを犠牲にして(19.d6)この筋を支配下に治めた。

 次々と敵陣に侵入した白の駒(18.Re7, 25.Nfe7+, 29.Ne7)は敵を壊滅させた。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 d6 5.d4 exd4 6.cxd4 Bb6

Y071210A.JPG

7.h3

 7.Be3 又は 7.Nc3 には黒の 7...Bg4 がうるさいので、白はわざわざ一手かけて黒のこの手を完全に封じた。

7...Nf6 8.O-O

 8.Nc3 とポーンを守ると次のようないつもの単純化の手順がある。8...Nxe4 9.Nxe4 (9.Bxf7+ Kxf7 10.Nxe4 Re8 はキャッスリングはできなくなったが黒が良い。9.Qe2 なら 9...O-O でよい。) d5

 だから白は攻勢を取るためにポーンを取らせた。

8...Nxe4 9.Re1 O-O 10.Rxe4 d5 11.Bg5

Y071210B.JPG

 白は際どい所でこの手を利かせる。黒は 11...f6 とはできなかった。それは 12.Bb3 fxg5 13.Nc3 で白が良くなる。

11...Qd6 12.Bxd5 Qxd5 13.Nc3 Qd7 14.d5

 この中原の孤立ポーンはブロックの役割をはたす。

14...f6 15.Be3

Y071210C.JPG

15...Nd8

 e6の地点に利かせるためにここに引いた。15...Ne7 と引くのは 16.Bxb6 axb6 17.Qb3 Kh8 18.Nd4 で白には色々な狙いがある。

16.Bxb6 axb6 17.Qe2

 e筋を強化した。

17...Nf7 18.Re7 Qd8

 次に 19...Ne5 を見ている。

19.d6

Y071210D.JPG

 ポーンを突き捨てて他の駒の働き良くする。

19...Nxd6

 ここは勝負所である。19...Qxd6 とクイーンで取るのは 20.Nb5 (20.Rd1 でも良い)で明らかに白が良い。19...c6 は 20.d7 Bxd7 21.Rd1 Ne5 22.Rdxd7 Nxd7 23.Qe6+ Kh8 24.Rxd7 という好手順で有利な駒割りになる。19...cxd6 は 20.Nb5 (本手は 20.Re3 で後で黒のクイーン翼の乱れをつく) Ra5 21.Rd1 Ne5 で 22...Rxb5 を狙い形勢不明である。

20.Nd5 Rf7 21.Re1 Bd7 22.Nh4

Y071210E.JPG

 もう一つのナイトの働きに負けまいとするかのように飛び跳ねた。

22...Ra5

 最下段の大切な守りを放棄するよりも黒は 22...c6 と催促する方が良かった。

23.Rxf7 Nxf7 24.Nf5

 このナイトも戦闘に加わった。24...Bxf5 と取ると 25.Qe8+ Qxe8 26.Rxe8# で詰んでしまう。

24...Ne5

Y071210F.JPG

 ルークへの出動命令をこの後取り消して混乱をきたす。それよりも黒キングは自ら 24...Kf8 と守りを買って出るべきだった。

25.Nfe7+ Kh8 26.b4 Ra8 27.f4 Ng6 28.Nxg6+ hxg6 29.Ne7

Y071210G.JPG

29...Qe8

 黒陣の危険な状況は次の変化からも分かる。29...Be8 30.Rd1 で黒クイーンは奥まったb8に引っ込むしかない。その後白は 31.Qg4 で必殺の 32.Qh4# を狙う。

30.Qf2 g5 31.fxg5 fxg5

 詰みを逃れるためとはいえ黒陣は既にぼろぼろである。

32.Qd2 b5 33.Qxg5 Ra6 34.Re4

Y071210H.JPG

34...Rh6

 黒はもはや受けが効かない。34...Qf7 と守っても 35.Rh4+ Rh6 36.Rxh6+ gxh6 37.Qxh6+ Qh7 38.Ng6+ (38.Qf8+ でも同様に詰む) Kg8 39.Qf8# で詰みになる。

35.Nf5 Qg6

 交換損を避けるための手だが代わりにビショップを取られる。35...Qxe4 も 35...Re6 も 36.Qxg7# があるのでだめである。黒は 35...Qf8 36.Nxh6 gxh6 も手を少し延ばすだけとみて本譜の手を選んだ。

36.Qd8+

 36.Nxh6 と交換得すると黒は 36...Qxg5 でなく(37.Nf7+ から 38.Nxg5) 36...Qxe4 で助かる。

36...Kh7 37.Qxd7 Rh5 38.Rg4 Rg5 39.Rh4+ 黒投了

Y071210I.JPG

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2007年12月11日

実戦に役立つエンディング(16)

第2章 ポーン・エンディング

2.2 キング+ポーン対キング+ポーン

B ポーンが異なる列にある場合

 前回はほんの少数の駒数のポーン・エンディングの中にも単純にはいかないものがあることを示した素晴らしいスタディであった。比較的単純な局面から驚くほど深い着想を秘めた例はまだ数限りなくある。ここではもう一つだけスタディを採り上げる。それはキング+ポーン同士のチェスの局面の中で恐らく最も有名なものである。

YKeres016.JPG 図16
レティ 1922年

 白の手番であるが、クイーンに昇格しようとしている黒ポーンを止めるには少なくとも2手足りないので負けは避けられないように見える。白のポーンは黒キングによって簡単に止められるのでほとんど助けにならないように見える。しかしここでもチェス盤における幾何の原則を用いることにより白キングは奇跡を呼び起こすことができる。

1.Kg7 h4 2.Kf6 Kb6

 黒キングに一手かけさせることにより白は一手稼いだ。2...h3 は 3.Ke7 h2 4.c7 で両方のポーンが同時にクイーンに昇格するので引き分けになる。黒の最初の2手は逆でも良い。1...Kb6 でも 2.Kf6 で次に 3.Kg5 があるので 2...h4 としなければならない。

3.Ke5!

 手順全体の核心の手である。白には次に 4.Kf4 で黒ポーンを捕まえる手があるので黒は以下のように進めるしかない。

3...h3 4.Kd6 h2 5.c7 h1=Q 6.c8=Q

 これで明らかな引き分けである。

 最初の局面で誰がこのような可能性を予想したであろうか。もちろんこれまでの例ですべてが尽くされたわけではない。しかし最も単純なポーン・エンディングにさえ色々な可能性が含まれているということはお分かりになったと思う。後にもっと複雑な局面が単純化されて行く過程に出会うことになる。

(この節終わり)

一手一手の定跡習得(9)

Asahigaoka 1914 - Nikolay 2145
B39 ICC 15m++0s 2003.09.22

1. e4 c5 2. Nf3 Nc6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 g6 5. c4 Bg7 6. Be3 Nf6 7. Nc3 Ng4 8.
Qxg4 Nxd4 9. Qd1 e5

YItte0009.JPG

10. f4

定跡は 10. Bd3 又は 10. Nb5 でした。

10... d6 11. Be2 O-O 12. O-O Be6 13. Nd5 Rc8 14. Bd3 a6 15. f5 Bxd5 16. cxd5 Re8 17. fxg6 hxg6 18. Qg4 Rc7 19. Rac1 Qc8 20. Qxc8 Rexc8 21. Rxc7 Rxc7 22. Rc1 Rxc1+ 23. Bxc1 f5 24. g3 fxe4 25. Bxe4 Ne2+ 0-1

2007年12月12日

実戦に役立つエンディング(17)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 キング+2ポーン対キング+ポーンの局面はポーン・エンディングの中でも非常に複雑な部類に入る。局面の可能性は多種多様である。全体の理解を得ようとするならば体系的に学ばなければならない。一つの原則はポーンの数の優勢な側は自分のパスポーンが他のポーンから離れていて敵のキングをおびき寄せることができるならば勝つことができるということである。

 もちろん簡単には勝てない局面も多い。我々にとって関心があり以降で採り上げるのはそういう局面である。

 孤立ポーンがパスポーンの場合

 2ポーン対1ポーンのエンディングを白ポーンの配置によって分類する。まず白ポーンが孤立していてその内の一つがパスポーンとなっている場合を調べる。前に述べたように白ポーンがある程度離れていると白が比較的簡単に勝つ。そこでここではポーンが1列だけ離れている場合だけを考える。この場合パスポーンは黒キングを主戦場からあまり遠くへ誘い出すことができない。図17は典型的な局面である。

YKeres017.JPG 図17

 この局面はどちらの手番であろうと白の勝ちである。ここでは白の手番として考える。

1.d5 Kd7

 1...Kc5 は 2.Ke5 Kxb5 3.d6 Kc6 4.Ke6 で白の簡単な勝ちである。

2.Ke5 Ke7 3.d6+ Kd8!

 最も巧妙な受けで、白にはちょっとした問題がある。3...Kd7 だったら 4.Kd5 で勝てるが、本譜の手に対しては 4.Kd5 Kd7 又は 4.Ke6 Ke8 5.d7+ Kd8 でうまくいかない。しかし白はここで初歩のエンディングの一つに誘導することができる。

4.d7!

 これが勝つための最も簡単な手で、ポーンを捨てて見合いを取りその後黒ポーンを取って標準の勝ち方に持ち込むことができる。4.Kd4 Ke8 5.Ke4 Kd8 6.Ke5! というもっと手の込んだ勝ち方もありこれについては後にまた触れる。

4...Kxd7

 4...Ke7 ならば 5.d8=Q+ Kxd8 6.Kd6 で勝てる。

5.Kd5 Kc7 6.Ke6 で白の勝ち

(この節続く)

チェス500名局(6)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第6局

白 ベッカー
黒 マティソン
1929年、カールスバート

 名局の多くは軟弱なf7の地点への攻撃を戦略の基礎においている。本局ではこの古くからのテーマに新しい一面が見られる。白の二つのナイトが入れ替わり立ち代り重要なf筋に出没する。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 d6 5.d4 exd4 6.cxd4 Bb6 7.Nc3

Y071212A.JPG

 この手の目的はコンパクトであると同時に動き易い中原を何としても維持することである。

7...Nf6 8.O-O Bg4

 この手は白の中原に挑むのが可能であることを証明しようとするものである。

9.Be3 O-O

 9...Bxf3 は 10.gxf3 で中原が強化され、二重ポーンの不利が埋め合わされる。一方開通したg筋も白に有利に働く (Kh1 から Rg1)。

10.Bb3

 10...Nxe4 11.Nxe4 d5 で中原の黒の劣勢を和らげようという黒の狙いを未然に防いだ。

10...Re8 11.Qd3

Y071212B.JPG

11...Bh5

 ここでも 11...Bxf3 12.gxf3 は白の目的のお手伝いになるだけである。本譜の手で黒は次に 12...Bg6 とビショップを引いて敵のeポーンに狙いを定める気である。

12.Nd2 Ng4

 この手は時期尚早の反撃である。この局面の要求に合った手は、前の手で触れたように 12...Bg6 である(13...d5 を狙う)。ただし 13.d5 Ne5 14.Qe2 で白の形はしっかりしている。

13.Nd5 Nxe3 14.fxe3

Y071212C.JPG

 白は双ビショップの特権は失ったが、代わりに開通したf筋は非常に利用価値がある。

14...Rf8 15.Rf2 Ne7 16.Nf4 Bg4

 これで重要なf7を守る黒の駒が一つ減った。白はそこをめがけて早急に全兵力を集中させる。

17.Raf1 Qc8

 18.Ne6 という手が生じてきたのでその狙いに対処するのが最善である。

18.h3 Bd7 19.Nc4

Y071212D.JPG

19...g6

 何とか駒を捌こうという 19...Bb5 は 20.Nxb6 Bxd3 21.Nxc8 Bxf1 22.Nxe7+ Kh8 23.Rxf1 で黒の駒損に終わる。

20.g4

 この手から白の猛攻が始まる。

20...Kg7 21.e5

 この手は次に 22.Nxb6 axb6 23.Nh5+ gxh5 24.Rxf7+ Rxf7 25.Rxf7+ で詰めようという手である。

21...d5

 ポーンを与えてなんとか相手の攻勢を和らげようとする。

22.Nxb6 axb6

Y071212E.JPG

23.e4

 23.Nxd5 Nxd5 24.Bxd5 とポーン得するのは 24...Be6 で受け側としても何とか息がつける。しかし白はそれに見向きもせず攻撃に全精力を注ぐ。

23...dxe4 24.Qxe4 Bc6 25.Qe3

 26.Nh5+ をひそかに狙っている。

25...Kh8

Y071212F.JPG

26.Nh5

 それでもこれを決行する。もう少し迫力には欠けるが 26.Ne6 でも良かった。

26...gxh5

 取らないと 27.Qh6 が来る。

27.Rxf7 Rxf7 28.Rxf7

Y071212G.JPG

 f7の地点が占領されて黒は受けがなくなった。

28...Nd5

 28...Bd5 でも29.Qh6 である (29...Bxf7 30.Qf6+ 31.Kg8 31.Bf7+ で3手の詰み)。

29.Qh6 Qg8 30.Bxd5 Qg6

 30...Bxd5 は 31.Qf6+ で詰む。

31.Rf8+ 黒投了

Y071212H.JPG

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一手一手の定跡習得(10)

Asahigaoka 1930 - Pilvex 2139
C99 ICC 20m++0s 2003.09.27

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 a6 4. Ba4 Nf6 5. O-O Be7 6. Re1 b5 7. Bb3 O-O 8. c3 d6 9. h3 Na5 10. Bc2 c5 11. d4 Qc7 12. Nbd2 cxd4 13. cxd4 Bd7 14. Nf1 Rac8

YItte0010.JPG

15. Bd3

定跡は 15. Ne3(又は 15. Re2)でした。

15... Nc6 16. d5 Nb4 17. Bb1 Nc2 18. Bxc2 Qxc2 19. Qxc2 Rxc2 20. b3 Rfc8 21. Bg5 h6 22. Bxf6 Bxf6 23. Ne3 R2c5 24. b4 Rc3 25. Kf1 Bd8 26. Ke2 Bb6 27. Red1 Bxe3 28. fxe3 R3c4 29. a3 Rxe4 30. Nd2 Rh4 31. Rdc1 Rd8 32. Rc7 a5 33. bxa5 Ra4 34. Nb3 b4 35. axb4 Bb5+ 36. Kd2 Rxb4 37. Kc3 Re4 38. a6 Rxe3+ 39. Kb4 Bxa6 40. Rxa6 Rb8+ 41. Ka4 Rexb3 42. Rac6 R8b4+ 43. Ka5 Rb5+ 44. Ka6 Rxd5 45. Rc8+ Kh7 46. Rd8 Rd1 47. Ka7 Ra3+ 48. Kb7 d5 49. Rc7 Rb1+ 0-1

2007年12月13日

実戦に役立つエンディング(18)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 孤立ポーンがパスポーンの場合(続き)

 今度は全体の配置を1段下に下げたらどうなるかを見てみよう。

YKeres018.JPG 図18

 この局面もやはり白の勝ちである。しかし今度は自分のポーンに対する黒の逆襲にもっと注意しなければならない。具体的には次のようになる。

1.d4 Kc4

 何の望みもないのは 1...Kd6 2.Ke4 Ke6 3.d5+ Kd7 4.Ke5 Ke7 5.d6+ Kd7 6.Kd5 から 7.Kc5 で白の勝ちである。

2.Ke4 Kxb4 3.d5 Kc5

 黒は白ポーンが先にクイーンに昇格するのを防ぐためにこの不利な地点にキングを置かなければならない。

4.Ke5 b4 5.d6 b3

 5...Kc6 でも 6.Ke6 で同じことである。

6.d7 b2 7.d8=Q b1=Q

 両者同時にクイーンができたが黒クイーンは次の手順で取られてしまう。

8.Qc8+ Kb4 9.Qb7+ で白の勝ち

(この節続く)

一手一手の定跡習得(11)

pulpi32 1920 - Asahigaoka 1940
B87 ICC 15m++8s 2003.10.03

1. e4 c5 2. Nf3 d6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 a6 6. Bc4 e6 7. O-O b5 8. Bb3
Be7 9. f4 Bb7 10. f5 e5 11. Nde2

YItte0011.JPG

11... Nxe4

定跡は 11... Nbd7 でした。

12. Nd5 Nf6 13. Nxe7 Qxe7 14. Bg5 Nbd7 15. Ng3 d5 16. Kh1 O-O 17. Nh5 Qd6 18. Bxf6 Nxf6 19. Nxf6+ Qxf6 20. Qh5 Rad8 21. Rad1 e4 22. Rf4 e3 23. Rh4 h6 24. Rh3 Rfe8 25. Re1 Re5 26. Rhxe3 Rxf5 27. Qe2 d4 28. Re8+ Rxe8 29. Qxe8+ Kh7 30. Qe2 Rg5 31. Qd3+ g6 32. Rg1 Qc6 33. Qd2 Qf6 34. c4 Rh5 35. Bd1 Rxh2+ {White resigns} 0-1

2007年12月14日

実戦に役立つエンディング(19)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 孤立ポーンがパスポーンの場合(続き)

 図18のような局面はすべて白の勝ちと思われるかもしれない。しかし驚くべき例外がある。それは図19のように黒と白のポーンがビショップ列にある場合である。

YKeres019.JPG 図19

 ちょっとみただけでは何も変わりないように思われる。例えば 1.e4 Ke6 2.Kf4 Kf6 3.e5+ Ke7 4.Kf5 Kf7 5.e6+ 又は 1...Kd4 2.Kf4 Kxc4 3.e5 Kd5 4.Kf5 c4 5.e6 c3 6.e7 c2 7.e8=Q 8.c1=Q 8.Qd8+ の後 9.Qc7+ でこれまで見てきたように白が勝つ。しかし実際には以下のようにわずかな違いがある。

1.e4 Kd4! 2.Kf4 Kxc4 3.e5 Kb3!!

 この手で黒は白キングが遠く離れている時そのクイーンはビショップ列の7段目のポーンに勝つことができないという特異な事実を利用している。ただし 3...Kd3 はだめで 4.e6 c4 5.e7 c3 6.e8=Q c2 7.Qe3+ で白が勝つ。

4.e6 c4 5.e7 c3 6.e8=Q c2

 これで白は黒キングがb2の地点に行くことを阻止できないので引き分けである。この局面については後のクイーン・エンディングの章でもっと詳しく述べる。それでも一応ここで言及しておく価値はあるだろう。

 図18の局面の駒配置が1段下だったら黒はいつでも白ポーンを攻撃できるので引き分けであることは明らかである。しかし驚くべきことに、2段上に上げて黒ポーンが原位置にいるようにすると白の勝つ可能性はやはり制限を受けてしまう。黒キングは白ポーンの前に立ちはだかり通常はステイルメイトで終わる。しかしここでは指摘するに留めておく。

 最後に図17から図19の局面で黒の手番ならば白が簡単に勝つことを述べておく。この場合白ポーンは攻撃を受けることがないので白は自分のパスポーンを進めるだけで良い。ただし唯一の例外はやはり黒ポーンが原位置にある場合である。

(この節続く)

「ヒカルのチェス」(46)

「Chess Life」2002年1月号

 読者からの便りのページにヒカルについての投稿が掲載されました。

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ヒカルはすごい

 チェスは僕の人生でいつも大きな部分を占めてきました。チェスを指し始めてから11年で今は17歳です。最年少マスターのヒカル・ナカムラの記事を読みました。チェスを指し始めてからたった3年で彼の成し遂げたことはものすごいです。今の僕はまだ「クラスC」(1400-1599)の棋力です。でもいつかもっと強くなりたいです。ヒカルが短い間にあんなことができるなら僕にももっと強くなるチャンスがあると思います。ヒカルの記事を書いてくれて感謝しています。

デイブ・マーシニアク
インディアナ州マンスター

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 2001年7月24日から29日にかけてオクラホマ州タルサで米国ジュニアチェス選手権戦が行われました。選抜された10人の総当たり戦でヒカルは7.5ポイントで単独優勝しました。

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Y071214A.JPG

 ものすごい速さで指したヒカル・ナカムラは37手でフィリップ・ワンを詰みに仕留め米国ジュニア選手権を獲得した。唯一の問題はボビー・フィッシャーが1956年に記録した最年少米国ジュニア選手権の記録を抜くかということである。新チャンピオンにおめでとうを言います。

(以下省略)

Y071214B.JPG
左がヒカル・ナカムラ、右がティム・レッドマン

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(この号終わり)

一手一手の定跡習得(12)

Asahigaoka 1943 - kidkoala 2066
C97 ICC 15m++0s 2003.10.04

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 a6 4. Ba4 Nf6 5. O-O Be7 6. Re1 b5 7. Bb3 d6 8. c3 O-O 9. h3 Na5 10. Bc2 c5 11. d4 Qc7 12. Nbd2 Bd7 13. Nf1 Nc4 14. b3 Nb6

YItte0012.JPG

15. d5

定跡は 15. Ne3 でした。

15... c4 16. Be3 a5 17. Bxb6 Qxb6 18. bxc4 bxc4 19. Rb1 Qc5 20. Qe2 Rab8