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第1部 開放型
第1章 ジュオコ・ピアノ
第8局
白 シュタイニッツ
黒 ラスカー
1896-7年、
本局の見どころは重要な原則である手段の経済性である。黒は役駒を得して受けに回るかそれともポーン得に甘んじて陣形的優位を取るかの選択に直面して、ちゅうちょすることなく見せかけの得を放棄する。
1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 Nf6 5.d4 exd4 6.cxd4
6...Bb4+
おとなしく 6...Bb6 と下がるのは白に次のように中原での優位を利用されるだろう。7.d5 Ne7 8.e5 Ne4(8...Ng4 でも同じく白は強手の 9.d6 で有利を確保する)9.d6(くさびを打ち込む)cxd6 10.exd6 Nxf2 11.Qb3 Nxh1(11...O-O は 12.Ng5 で勝勢)12.Bf7+ Kf8 13.Bg5 で白が勝つ。
7.Nc3 Nxe4 8.O-O
8...Bxc3
8...Nxc3 とナイトで取るのは 9.bxc3 Bxc3 の後威勢のいい 10.Qb3(既に1619年にグレコによって示唆されていた)で白のチャンスが広がる。
9.bxc3
ここは黒の捌きを防ぐために 9.d5 と「正義の一撃」を見舞うチャンスだった。駒損はすぐに取り返せる。
9...d5
この手は良い手で黒の陣形がしっかりする。9...Nxc3 は悪手で 10.Qe1+ でこのナイトを取られる。
10.Ba3
c4のビショップを見捨てたこの手は無理筋であることが証明される。しかし 10.Bd3 と逃げても 10...O-O 11.Bxe4 dxe4 12.Ng5 Qd5 で局面は黒がやはり優勢である。
10...dxc4 11.Re1
11...Be6
この手は役駒を返し1ポーン得で十分だという判断である。役駒得にこだわる 11...f5 は危険で 12.Nd2(13.f3 の狙い)Kf7 13.Nxe4 fxe4 14.Rxe4 で黒キングの安全が危うい。
12.Rxe4 Qd5 13.Qe2 O-O-O
これで黒は序盤の課題をすべて解消した。
14.Ne5 Rhe8
15.Nxc6
白の読みはナイトがいなくなれば異色ビショップなので引き分けになり易いだろうということである。
15...Qxc6 16.Re1 Rg8
自分のビショップでe筋がふさがっているのでキング翼から攻勢をかけようという意図である。
17.Re5 b6 18.Bc1 g5
読みの入ったポーン捨て。白は取らない方が良かった。
19.Rxg5 Rxg5 20.Bxg5 Rg8 21.f4 Bd5
この手は次に 22...h6 を狙っている。それを防いで 22.Qh5 と来てもやはり 22...h6(22...Bxg2 は23.Qxf7)が成立し以下 23.Qxh6 Qxh6 24.Bxh6 Rxg2+ で黒の優勢である。
22.g3 Kb7 23.h3 Qb5 24.Kh2 Rg6 25.Qc2 f6
ビショップを追い払うと同時に 26.Re5 によるルークの侵入も防いでいる。
26.Bh4 Bc6 27.g4 Qd5
クイーンとビショップの組み換えにより対角筋での黒の利きが揺るぎないものとなった。
28.Qf2
最強の受けは 28.f5 だった(28...Rh6 に対しては 29.Qf2 Rxh4 でなく29.Bg3 Qf3 30.Qe2)。これを逃がしたため黒は新たな兵力を投入することができた。
28...h5 29.g5 fxg5 30.Bxg5 h4
敵陣を完全に封鎖した。31.Rg1 なら 31...Rxg5 である(32.Rxg5 は32...Qh1# で詰み、32.fxg5 なら 32...Qd6+)。
31.Rf1 Rg8 32.Qd2 a5 33.a4
33...Re8
次に 34...Re3 を狙っている。33...Bxa4 はゆるみで 34.Qg2 でクイーンを交換されてしまう。
34.f5 34...Rg8 白投了
白は手詰まりで指す手がない。どう指しても何かを損する。
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