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2008年01月 アーカイブ

2008年01月01日

実戦に役立つエンディング(37)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 パスポーンのない連結ポーンの場合(続き)

b)せき止められたポーンがない時(続き)

 図33の局面で白ポーンがルーク列にある場合がまだ残っている。これは明らかに黒の引き分けの可能性が増す。しかし一般原則を挙げるのは難しいので個別に考えることが必要である。まず黒ポーンがナイト列にあり白キングが自分のポーンの前にまだ来れない局面を考える。図37を基本図とする。

YKeres037.JPG 図37

 黒は簡単に引き分けにできる。黒番なら 1...g6+! でたちまち引き分けの形である。白番なら次のように進む。

1.Ke5 Ke7 2.Kd5 Kf7

 2...Kd7? は 3.h6 で白が勝つ。

3.Kd6 Kf8

 ここは 3...Ke8 4.Ke6 Kf8 5.Kd7 Kf7 でも良い。

4.Ke6

YKeres037A.JPG

4...Ke8

 この手は絶対手である。4...Kg8 は 5.Ke7 Kh8 6.Kf7 Kh7 7.h6 gxh6 8.g6+ で白が勝つ。つまり黒は白がポーンを g6 に進める前に隅に追い込まれてはいけないということである。

5.Kf5 Kf7

 最初の局面に戻ってしまった。

6.g6+ Kg8

YKeres037B.JPG

 黒はキングがg8とh8を往復するだけで簡単に引き分けにできる。

 図37の局面を1列下に下げても結果は変わらない。白はキングが自分のポーンの前に行けた場合にだけ勝ちの可能性が生まれる。例えば図37で黒キングをh7に移動した局面はどちらの手番でも白が勝つ。

YKeres037C.JPG

 白の手番ならば 1.Ke6 Kg8 2.Ke7 Kh7 3.Kf7 Kh8 4.Kg6 ただし 4.h6? はだめで 4...Kh7! で引き分けになる。4...Kg8 5.h6 gxh6 6.Kxh6 で白が勝つ。黒の手番ならば 1...Kg8 1...Kh8 は 2.Kg6 Kg8 3.h6 で前の変化と同じ。1...g6+ は 2.Kf6 gxh6 3.Kf7 で白の勝ち。2.Kg6 Kh8 3.Kf7 3.h6? は誤りで 3...Kg8! で引き分け。3...Kh7 4.h6 gxh6 5.g6+ で白が勝つ。

(この節続く)

一手一手の定跡習得(30)

Asahigaoka 1987 - Anthony2StronG 2137
C13 ICC 30m++0s unrated 2003.11.29

1. e4 e6 2. d4 d5 3. Nc3 dxe4 4. Nxe4 Nd7 5. Nf3 Ngf6 6. Bg5 Be7

YItte0030.JPG

7. Bxf6

定跡は 7.Nxf6+ でした。(黒がd7のナイトで取り返せる時は Nxf6 とナイトで取り、そうでない時は Bxf6 とビショップで取ります。参考 1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 Nf6 4.Bg5 dxe4 5.Nxe4 Be7 6.Bxf6)

7... Bxf6 8. Nxf6+ Nxf6 9. Bd3 O-O 10. c3 b6 11. O-O Bb7 12. Re1 Qd6 13. h3 c5 14. Qe2 cxd4 15. Nxd4 Rfd8 16. Rad1 Qd5 17. Qf3 Qxf3 18. Nxf3 Bxf3 19. gxf3 Rd7 20. Bb5 Rxd1 21. Rxd1 Kf8 22. Ba6 Ke7 23. Kg2 Nd5 24. Kg3 Rd8 25. f4 g6 26. Kf3 h5 27. Bb7 Nf6 28. Rxd8 Kxd8 29. Ke3 Nd7 30. Kd4 Kc7 31. Bf3 Kd6 32. b4 b5 33. c4 bxc4 34. Kxc4 e5 35. f5 Nf6 36. fxg6 fxg6 37. Kb5 e4 38. Be2 Nd5 39. Kc4 Ke5 40. a3 Nf4 41. Bf1 g5 42. a4 g4 43. hxg4 hxg4 44. b5 Nh3 45. a5 Kd6 46. Kd4 Nxf2 47. Ke3 Nd3 48. Kxe4 Nc5+ 49. Kf4 Ne6+ 50. Kxg4 Nd4 51. b6 1/2-1/2

「ヒカルのチェス」(49)

新年特別版

「NEW IN CHESS」2007年第8号

 ヨーロッパのチェス大会に参加したGMナカムラの活躍が特集で報じられました。まずは目次ページから。

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Y080101A.JPG
ヒカル・ナカムラがヨーロッパを行く

34ページ ナカムラの大遠征
 アメリカやヨーロッパの選手達は大西洋の反対側の大会では本来の実力を発揮できずに終わりがちである。しかし例外もある。最近のヨーロッパ遠征でヒカル・ナカムラはバルセロナとコルシカの大会で相次いで優勝した。

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 本誌での特集は5ページでした。その内の1ページはGMナカムラの大きな写真でした。

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Y080101B.JPG
ナカムラの大遠征
カジノの誘惑に負けずにヒカル・ナカムラはバルセロナで立派な成績を収めた。「この悪徳に近づかなかったので良いチェスが指せたと考えたい。」

 アメリカとヨーロッパのチェス界の違いについては多くのことが言われ書かれてきた。一つの有力な見解は大西洋の一方の側の選手は他方の側の特殊性に合わせることが難しいのかもしれないということである。しかし例外がある。カームスキーとオニシュクに次ぐアメリカ第3位のグランドマスターのヒカル・ナカムラは最近のヨーロッパ遠征で伝統的な総当たり戦によるバルセロナ市カジノ大会と快速勝ち抜き戦のコルシカ・マスターズ大会で相次いで優勝した。これらの好成績に気を良くしてナカムラは印象とそれぞれの大会からの好局の解説を承諾してくれた。

Y080101N.JPG
バルセロナでの恒例の記念写真。前列の左からミハル・クラセンコブ、マルク・ナルシソ、ブガル・ガシモフ、ヒカル・ナカムラ、ラファエル・バガニアン、ミゲル・イレスカス。

Y080101D.JPG

解説 ヒカル・ナカムラ
[A14]
ミハル・クラセンコブ
ヒカル・ナカムラ

バルセロナ、2007年、第2回戦

 ヨーロッパではここ何年か総当り方式の大会に出たことがなかったので喜んでバルセロナ市カジノ大会への参加を決めた。チェス以外のことについて言えば当地は近くに海辺やレストランがあってとても楽しめる場所だった。ギャンブルやポーカーにはとても心惹かれたが何とかこらえることができた。この悪徳に近づかなかったので良いチェスが指せたと考えたい。大会について言えば最初の5試合で4ポイントととても良い出だしだった。その中にはIMフルビアとGMバガニアンからの勝利があり、GMクラセンコブには鮮やかなクイーン切りを決めた。しかし第6回戦の相手のキューバのGMレニエル・ドミンゲスも絶好調で5試合で3.5ポイントと半ポイントの差で私を追っていた。だから何としても勝って大会の主導権を握りたかった。しかしこの試合に勝ったにもかかわらず第7回戦のGMオムス戦では作戦負けして手痛い敗北を喫した。このため大いに頑張らなければならなくなったが幸いにも調子を取り戻して最後の2回戦を勝って大会に優勝することができた。全体的には非常に申し分ない結果で大会の印象も非常に良いものとなった。それから特に大会主催者皆様の親切や気遣いに感謝したい。これからお見せしたい試合はなるほどと思われるだろうがクラセンコブに対するクイーン切りである。(編集部注 勝ったナカムラが本誌最後のページの一問一答集(Just Checking)の中で「生涯最高の試合」に挙げている。)

1.Nf3 Nf6 2.c4 e6 3.g3 d5 4.Bg2 Be7 5.O-O O-O 6.b3!?

Y080101E.JPG

 現在トップレベルのチェスで流行しているはずのカタロニア定跡をはずすこの手にはちょっと驚いた。特に黒はあまり良い成績を残していないのでなおさらだった。

6...a5 7.Nc3

 これに代わる手は 7.Bb2 で例えば 7...Na6 8.d3 a4 9.Qc1 Bd7 10.Nbd2 c6 11.Ne5 Qa5 12.Bc3 Bb4 13.Bxb4 Qxb4 14.a3 Qd6 15.Nxd7 Qxd7 16.b4 e5 17.Qc2 Nc7 18.Rac1 で引き分け(ティマン対ナイディッチュ、ブラールディンゲン、2005年)という実戦例がある。

7...c6 8.d4 Nbd7 9.Qc2 b6 10.e4 Ba6

Y080101F.JPG

11.Nd2

 11.e5 は 11...Ne8 12.Ne2 Rc8 13.Rd1 Nc7 で形勢はほぼ互角であるが、黒としては次の手で ...c5 と指して中原で乱戦に持ち込むつもりだった。

11...c5!

 強気の新手である。1992年オビエドでのルネ対ブロンシュテイン戦では 11...Rc8 12.Re1 c5 13.dxc5 d4 14.Na4 Nxc5 15.Nxc5 Bxc5 16.Qd3 e5 17.Bh3 Rb8 18.Nf3 Re8 19.Bg5 b5 20.Nd2 Bb4 21.Red1 h6 22.Bxf6 Qxf6 23.Rac1 Bc3 24.Bd7 bxc4 25.bxc4 Red8 26.Bb5 で黒が投了した。

12.exd5 cxd4

Y080101G.JPG

13.Nb5

 13.d6 は 13...Bxd6 14.Bxa8 dxc3 15.Ne4 Qxa8 16.Nxd6 Ne5 で白の白枡が弱いので十分に交換損の代償がある。

13...exd5

 13...Bxb5 には白は 14.dxe6!(非常に重要な中間手。14.cxb5 は 14...e5! で黒優勢)fxe6 15.cxb5 Rc8 16.Nc4 と応じ、前の変化と異なりビショップの働きが強いので白が優勢である。

14.Nxd4 Rc8 15.Re1 b5

Y080101H.JPG

16.Bb2

 16.Nf5 なら 16...Bc5 17.Bb2 Re8 と進み、白にも相応の利点があるが、c4ポーンに対する厳しい集中砲火により黒の方が良い。

16...Re8 17.Qd1 bxc4 18.bxc4 Qb6 19.Rb1 dxc4

Y080101I.JPG

20.Nc6?!

 20.Bc3 Qc5 21.Qc2 なら黒が少し良い程度だった。

20...Rxc6! 21.Bxf6?!

 白は最後の望みを 21.Rxe7 Rxe7 22.Ba3 Re5 23.Rxb6 Rxb6 に賭けるしかなかったがそれでも見込みはほとんどなかっただろう。黒のルークは白のクイーンを圧倒し、c列のパスポーンは危険な存在である。しかし多分最も重大なことはそんなことをしたらチェス界から非常に華麗で気付き難いクイーン切りを奪っていたことであった。

21...Qxf2+!

Y080101J.JPG

22.Kxf2 Bc5+ 23.Kf3

 23.Kf1 は 23...c3+ 24.Re2 c2 で白は大きな駒損が避けられない。23.Re3 は 23...Bxe3+ 24.Ke1 Bxd2+ 25.Kxd2 Rd6+ 26.Kc2 Rxd1 27.Rxd1 Nxf6 で黒が駒得で勝勢である。

23...Rxf6+ 24.Kg4

Y080101K.JPG

24...Ne5+

 クイーン切りの核心である。対局後クラセンコブはf2でのクイーン切りは読んでいたが ...Bc8 を見落としていたと言っていた。だから彼は Rf6-g6-h6 の繰り返しで引き分けになると考えていた。

25.Kg5

 25.Rxe5 は 25...Bc8+ 26.Kh4 Rxe5 27.g4 Bf2+ 28.Kh3 Rh5# で詰まされる。

25...Rg6+

Y080101L.JPG

26.Kh5

 26.Kf4 も 26...Nd3+ 27.Kf3 Rf6+ 28.Kg4 Bc8+ 29.Kh4 Rxe1 30.Qh5 Rf4+ 31.gxf4 Bf2+ 32.Kg5 f6# で詰む。

26...f6

 26...Bc8 の方が正確だった。

27.Rxe5

 27.Bd5+ Kh8 28.Kh4 Rh6+ 29.Qh5 g5+ 30.Kh3 の方が長引くが白が絶望的なことには変わりがない。

27...Rxe5+ 28.Kh4 Bc8 白投了

Y080101M.JPG

 白は無駄なチェックをして手数を延ばすことはできるがいずれ ...Rh6+ で詰まされる。

Y080101C.JPG
コルシカ・マスターズの最終戦でヒカル・ナカムラ(右)はルスタム・カシムジャーノフと対戦した。「彼も戦術派なので私の方に分があると思っていた。」

Y080101N1.JPG

解説 ヒカル・ナカムラ
[D45]
ルスタム・カシムジャーノフ
ヒカル・ナカムラ

コルシカ・マスターズ快速戦、2007年、第4回戦第1局

 バルセロナ大会の何日か前にある友人がコルシカで大会が行なわれると教えてくれた。日程と飛行機の便とその価格を調べて参加することに決めた。結果的には大正解だった。そして大会で優勝して元を取り返した。決勝戦までは優勝するなどとは全然期待していなかった。勝ち抜き戦への予選ではまあまあ順調だった。悪い試合は1試合だけで第6回戦のファン・ベリー戦で負けてしまった。しかしこの敗戦にもかかわらず10試合で8ポイントで予選を通過した。勝ち抜き戦では白番でとんでもないポカのためにGMミハレフスキー戦に負けて不安なスタートをきった。幸いにも巻き返しがきいて第2戦目を勝ち決定戦も楽に勝つことができた。このパターンはその後も続きファン・ベリー戦とバレエフ戦も決定戦で勝ち残った。決勝戦の相手の元FIDE世界選手権者ルスタム・カシムジャーノフにとってはそこ迄の道のりははるかに楽なものだった。彼が決定戦まで行ったのは準決勝でのカルポフ戦だけだった。だから彼は決勝戦においては私よりかなり優位に立っていた。しかし彼も戦術派なので私の方に分があると思っていた。

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.Nc3 e6 5.e3 Nbd7 6.Qc2 Bd6 7.e4!?

Y080101O.JPG

 この手はちょっと意外だった。この戦型はあまり指されず退屈な展開になるとみなされている。

7...dxe4 8.Nxe4 Nxe4 9.Qxe4 Bb4+ 10.Bd2 Bxd2+

Y080101P.JPG

11.Nxd2 c5 12.dxc5 Qa5 13.a3 Qxc5 14.b4

Y080101Q.JPG

14...Qe7

 この手は新手である。これまでの実戦例は2006年モスクワでのスベツシュキン対ガルキン戦の 14...Qc7 15.Bd3 Nf6 16.Qe2 O-O 17.O-O Rd8 18.c5 Bd7 19.Nf3 Ba4 20.Rac1 a6 21.Rfe1 h6 で互角の形勢である。この試合は最終的に黒が勝った。

15.Bd3 a5 16.Rb1 axb4 17.axb4 Nf6 18.Qe3 O-O

Y080101R.JPG

19.O-O Rd8 20.Nf3 Qc7 21.Ne5 b6 22.Rfd1 Bb7

Y080101S.JPG

23.Bf1?

 ルスタムは当然そうに見えるこの手をかなり早く指した。しかし彼は黒の次の手を見落としていて、勝ち目があるのは私の方だけになった。

23...Be4! 24.Nd3

Y080101T.JPG

24...Ra3?

 どういうわけかクイーンでc4のポーンを取れないと錯覚をしていた。この間違いで勝ちを非常に難しくしてしまった。

 24...Qxc4 とこのポーンを取ってしまうべきで以下は例えば 25.Nc5 Rxd1 26.Rxd1 Qxb4 27.Nxe4 Qxe4 28.Qxb6 Nd5 29.Qb7 Rf8 で黒が圧倒的に優勢だった。

25.Ra1 Rc3

Y080101U.JPG

26.Qf4?!

 ルスタムは圧迫を緩和したかったのだと思う。しかしクイーンを交換することによって形勢は逆に悪化してしまった。26.f3 と指すべきで 26...Bxd3(26...Bf5 は間違いで 27.Qe5! Qxe5 28.Nxe5 Rb8 29.Rd6 で白が勝勢になる)27.Rxd3 Rcxd3 28.Bxd3 Nh5 と進めばほぼ互角かもしれないが白の方が楽しみの多い局面だった。

26...Qxf4 27.Nxf4 Rxd1 28.Rxd1 g5!

Y080101U1.JPG

 ここで攻勢に出なければ弱いb6のために簡単にこの終盤が台無しになってしまう。

29.Nh3 g4 30.Nf4 Kg7 31.h3 h5 32.hxg4 hxg4

Y080101V.JPG

33.Rd6 e5 34.Ne2 Rxc4 35.Rxb6?

 35.b5! と指すべきだった。

35...Bd3

Y080101W.JPG

36.Ng3?

 この手が敗着となった。白は 36.f3 gxf3 37.gxf3 Nd5 38.Rb5 Rg4+! 39.fxg4 Bxb5 のように指すべきで黒が勝勢に近いが、本譜と違い負けと決まったものでもない。

36...Rc1 37.Rd6 e4

Y080101X.JPG

38.Nf5+

 38.Rd4 ならば 38...Bxf1 39.Nxf1 g3! で、白はやはりeポーンと ...Ng4 の両方を同時に受けることができない。

38...Kg6 39.Ne3 g3! 40.fxg3 Bxf1 41.Kf2

 41.Nxf1 は 41...e3 でこのeポーンを止めることができない。

41...Bd3 42.Nd5 Kg5 白投了

Y080101Y.JPG
(訳注 f6のナイトをルークとビショップのどちらで取っても 43...Rf1+ で素抜かれてしまいます。)

Y080101Z.JPG
コルシカ大会の主催者のレオ・バテスティがヒカル・ナカムラの優勝の言葉を聞いている。もしかしてヒカルはシナトラの「マイウェイ」を歌っているのかも。

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 この雑誌の最終ページは「Jest Checking」という、チェス選手に対する肩のこらない一問一答集です。今月号の選手はヒカル・ナカムラでした。

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Y080101%23.JPG

Just Checking

名前 ヒカル・ナカムラ
現在のレイティング 2648
世界順位 61位
誕生日 1987年12月9日
出生地 日本の大阪府
住所 ニューヨーク市ホワイトプレーンズ

好きな色は何ですか。
青です。

好きな食べ物は何ですか。
イタリア料理と日本料理です。

好きな飲み物は何ですか。
赤ワインです。

今まで読んだ本の中で最も面白かったのは何ですか。
ダン・ブラウンのダ・ヴィンチ・コードです。

最も好きな映画は何ですか。
スター・ウォーズ、エピソード6のジェダイの帰還です。

最も好きな男優は誰ですか。
ロビン・ウィリアムズです。

最も好きな女優は誰ですか。
ナタリー・ポートマンです。

最も好きな音楽は何ですか。
クラシカル・ロックと日本のポップスです。

好きな画家あるいは芸術家はいますか。
パブロ・ピカソです。

今までで最高の成績は何ですか。
リビアで2004年に行なわれたFIDE世界選手権戦で16強に残ったことです。

今まで対局した試合の中で最高の試合はどれですか。
2007年バルセロナでのクラセンコブとの試合です。

今まで見た中で最高の試合は何ですか。
1999年ヴェイク・アーン・ゼーでのカスパロフ対トパロフ戦です。

大きな影響を受けたチェスの本はありますか。
ボビー・フィッシャーの「My 60 Memorable Games」(忘れ得ぬ60局)です。

チェスの世界最高の国はどこですか。
ロシアです。

過去から現在までで好きなチェス棋士は誰ですか。
ガリー・カスパロフです。

好きなヒーローは誰ですか(チェス意外でも良い)。
慈善の目的で寄付をする人なら誰でも。

今の自分でなかったら誰又は何になりたかったですか。
シェフか映画監督です。

晩餐に三人招待するとしたら誰ですか。
ウォーレン・バフェット、スティーブン・コルベール、スティーブ・ジョブズです。

自分の性格で一番良い所はどこですか。
信念と自身です。

自分の性格で一番悪い所はどこですか。
傲慢な所です。

夢がありますか。
世界チャンピオンになることです。

何か習いたいことがありますか。
スノーボードです。

最も怖いのは何ですか。
失敗することです。

家が火事になったら何を持って逃げますか。
自分のアイポッドです。

どの持ち時間制が良いですか。
現在のFIDE式の90分+30秒累加です。

今から10年後にチェスを指している自分を想像できますか。
はい。しかしコルチノイのように70歳台までチェスを指しているとは思えません。

また米国人の世界チャンピオンを見ることができるでしょうか。
私がなれなければ他の誰も世界チャンピオンになれないでしょう。

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(この号終わり)

2008年01月02日

実戦に役立つエンディング(38)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 パスポーンのない連結ポーンの場合(続き)

b)せき止められたポーンがない時(続き)

 白のポーンがもっと後ろにあり白キングが自分のポーンの前にいる余地がある時は黒のポーンがナイト列にあっても引き分けの可能性は非常に少なくなる。その例が図38である。

YKeres038.JPG 図38

 どちらの手番であっても白が楽に勝つ。

1.Kf5

 黒の手番ならば 1...Kf8 2.Kg6 Kg8 3.h5 Kh8 4.h6 Kg8 5.g5 と進んで白が勝つ。

1...g6+

 他の手ではこれまで見てきたように白キングがg6の地点を占めて白が勝つ。

2.Ke5

 2.Kg5? は間違いで 2...Kg7 3.Kf4 Kf6 で引き分けになる。

2...Ke7 3.g5 Kf7 4.Kd6 で白が勝つ。

YKeres038A.JPG

(この節続く)

一手一手の定跡習得(31)

radomirleskier 2077 - Asahigaoka 1989
E76 ICC 10m++10s 2003.11.30

1. d4 Nf6 2. c4 g6 3. Nc3 Bg7 4. e4 d6 5. f4 O-O 6. Nf3 Na6 7. Be2 e5 8. dxe5 dxe5 9. Qxd8 Rxd8 10. Nxe5 Nc5 11. Bf3

YItte0031.JPG

11... Nd3+

定跡は 11... Be6 でした。

12. Nxd3 Rxd3 13. Bd2 Bg4 14. Bxg4 Nxg4 15. h3 Rad8 16. Rd1 Nf2 17. Kxf2 Rxd2+ 18. Rxd2 Rxd2+ 19. Kg3 Rd3+ 20. Kh2 Bxc3 21. bxc3 Rxc3 22. Re1 Rxc4 23. Re2 Rd4 24. Kg3 Rd3+ 25. Kf2 c5 26. Rc2 b6 27. e5 h5 28. Ke2 Rg3 29. Kf2 Rd3 30. Ke2 Rg3 31. Kf2 Rd3 1/2-1/2

チェス500名局(12)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第12局

白 シューモフ
黒 フォン・イェーニッシュ
1845年、サンクト・ペテルブルグ

 本局の見どころは動きすぎの手(例えば 7.exf6、8.Qe2+、12.Qh5、14.Qb5+)がどのように無駄手と化し相手の展開を助けてしまうかという所にある。最後には白キングの守りが薄くなって当然の帰結を迎えた。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 Nf6 5.d4 exd4 6.e5 d5

Y080102A.JPG

 この手は黒の陣形をくつろげる良い手である。

7.exf6

 この駒の取り合いは黒の展開を助ける。7.Bb5 又は 7.Be2 が普通の手で黒は 7...Ne4 で中原にナイトを据えることになる。

7.dxc4 8.Qe2+

 白は単に 8.fxg7 又は 8.cxd4 とすべきところを、1ポーン損のまま攻撃に活路を見出そうとする。

8...Be6 9.fxg7

 9.Ng5 は 9...Qxf6 と肝心のポーンを取られてしまう。

9...Rg8

Y080102B.JPG

10.cxd4

 10.Bg5 と指す方が良かった。ここでも 10.Ng5(狙いは 11.Nxe6 fxe6 12.Qh5+ から 13.Qxc5)は 10...Qd5 11.Nxh7 O-O-O 12.Nf6 Qxg2 で成立しない。

10...Nxd4 11.Nxd4 Bxd4

Y080102C.JPG

12.Qh5

 このクイーンの単独出撃は白の形勢悪化につながった。

 ここでは 12.O-O Qf6 13.Nc3 Qxg7 14.g3 と進めるべきであったがこの後 14...O-O-O で形勢は黒が良い。

12...Qf6 13.O-O Rxg7

 黒は平然と 13...O-O-O と指すこともできた(14.Bg5 は 14...Qxg7 で空振りに終わる)。しかし本譜の手は白の駒繰りの不都合をあからさまにする。

14.Qb5+

 白は遅ればせながら 14.Nc3 と展開すべきだった。

14...c6 15.Qxb7

Y080102D.JPG

 黒キングはキャッスリングできなくなったので白クイーンの面目は立った。しかし自分のキングが狙いすました強襲に遭う。

15...Rxg2+

 ルークを犠牲の殴り込みである。

16.Kxg2 Qg6+ 17.Kh1 Bd5+ 18.f3 Bxf3+ 0-1

Y080102E.JPG

 白の次の一手で詰みである。

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2008年01月03日

実戦に役立つエンディング(39)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 パスポーンのない連結ポーンの場合(続き)

b)せき止められたポーンがない時(続き)

 黒のポーンがナイト列でなくルーク列にある場合は引き分けの可能性がはるかに大きくなる。図39がその基本図である。

YKeres039.JPG 図39

 白は手番の場合だけ勝てる。黒の手番の場合は次のように引き分けになる。1...Kf4 2.Ke2 Ke4 3.Kd2 Kd4(この局面なら 3...h3 4.g3 Kf3 でも良いが、白のポーンがもっと上にある場合は駄目である)4.Ke2(4.Kc2 なら 4...Ke3)Ke4 5.h3 Kf4 6.Kf2 Ke4 で白はこれ以上どうしようもない。

1.Ke3 h3

 良くないのは 1...Kf5(1...Kg5 も 2.h3 Kf5 3.Kf3 で白の勝ち)で 2.Kf3 Kg5 3.Ke4! Kg4 4.h3+!(4.Ke5? は 4...h3 5.g3 Kf3 でだめである)Kg3 5.Kf5 Kxg2 6.Kg4 で白が勝つ。

2.g3 Kf5

 2...Kg5 なら 3.Kf3 Kf5 4.g4+ で白が勝つ。

YKeres039A.JPG

3.Kd4!

 3.Kf3 は間違いで 3...Kg5 と応じられ 4.g4? なら 4...Kh4! で引き分けになる(5.Kf4 はステイルメイト)。本譜の手は見合いを取りに行く。

3...Kg5 4.Ke5 Kg4 5.Ke4 Kg5 6.Kf3!

YKeres039B.JPG

 黒は手詰まりに陥っていて 6...Kf5 g4+ 又は 6...Kh5 7.Kf4 で負ける。

 図39の局面を1段または2段上に移動しても白先白勝ちと黒先引き分けは変わらない。しかし3段上に上げて白ポーンがg5とh5の枡に来るようにするとどちらの手番でも引き分けになる。

YKeres039C.JPG

 黒の手番ならもちろん 1...Kf7 である。白の手番なら次のように黒をステイルメイトにしかできない。1.Ke6 h6 黒はキングを動かしても良い。2.g6 Kg8 3.Kf6 Kf8 4.g7+ Kg8 5.Kg6

(この節続く)

一手一手の定跡習得(32)

Asahigaoka 1998 - empire 2002
B42 ICC 15m++0s 2003.12.05

1. e4 c5 2. Nf3 e6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 a6 5. Bd3 Qc7 6. O-O Nf6 7. Qe2

本稿(24)で習得した手です。

7... d6

YItte0032.JPG

8. Be3

定跡は 8. c4 でした。

8... Be7 9. f4 Nc6 10. Nc3 Bd7 11. f5 Ne5 12. fxe6 fxe6 13. Kh1 O-O 14. Nf3 Nxf3 15. Rxf3 Ng4 16. Rxf8+ Rxf8 17. Qxg4 e5 18. Nd5 1-0

2008年01月04日

実戦に役立つエンディング(40)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 パスポーンのない連結ポーンの場合(続き)

b)せき止められたポーンがない時(続き)

 ここまでで図39に類似した局面は黒の手番ならばすべて引き分けになることが分かった。それでは局面を少し変えた図40はどうなるのだろうか。

YKeres040.JPG 図40

 白の手番ならばこれまで見てきたように引き分けにしかならない。しかし黒の手番ならば見合いのために白が勝つ。

1...Ke5

 1...Kg5 2.Ke4 は前に出てきた白勝ちの局面になる。1...h4 は 2.g4+ Ke5 3.Ke3 でもっと簡単に白が勝つ。

2.Ke3 Kf5 3.Kd4 h4

 これが黒の唯一の可能性である。他の手ではいずれ黒ポーンが落ちる。

4.g4+ Kf4 5.Kd5

YKeres040A.JPG

5...Kg5

 5...Kg3 と逆襲するのは局面が1段下なら成立するのだがこの局面ではうまくいかない。だから図40の局面が1段下ならどちらの手番でも引き分けである。

6.Ke5 Kg6 7.Kf4 Kf6 g5+ で白が勝つ。

YKeres040B.JPG

 図40の局面を1段上に上げても結果は変わらない。しかし2段上に上げると図39の局面を3段上に上げたのと同じようにどちらの手番でも引き分けになる。

(この節続く)

一手一手の定跡習得(33)

Asahigaoka 1992 - nightflier 2091
C18 ICC 20m++20s unrated 2003.12.18

1. e4 e6 2. d4 d5 3. Nc3 Bb4 4. e5 c5 5. a3 Bxc3+ 6. bxc3 Qc7 7. Qg4 f5 8. Qg3 cxd4

YItte0033.JPG

9. Bd3

定跡は 9. cxd4 でした。

9... Qxc3+ 10. Kd1 Ne7 11. Rb1 Nbc6 12. Ne2 Qa5 13. Qxg7 Rg8 14. Qxh7 Nxe5 15. Bb5+ Kd8 16. Bd2 Qc7 17. Bb4 N5g6 18. Nxd4 e5 19. Re1 a6 20. Rxe5 Qxe5 21. Ba5+ Qc7 22. Bxc7+ Kxc7 23. Bd3 Rh8 24. Qf7 Rf8 25. Qg7 Rg8 26. Qf6 Rf8 27. Qb6+ Kb8 28. Qd6+ Ka7 29. Bxa6 Rb8 30. Qb6+ Ka8 31. Bb5 1-0

「ヒカルのチェス」(50)

「Chess Life」2002年6月号

 表紙とその説明

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Y080104A.JPG

表紙について・・・
 「ウィーラ・ファミリー」は6-0の成績で大会に優勝した。左上から時計回りにマイケル・エレンボーゲン、アスカ・ナカムラ、スニル・ウィーラマントリそしてヒカル・ナカムラ。

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 2002年2月16日から18日にかけてニュージャージー州パーシッパニーで開催された第26回アマチュア・チーム東部大会でヒカルのチームが優勝しました。

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 チーム戦優勝をめぐる戦いは賞金がかかっていないにもかかわらず熾烈を極めた。平均レイティングが 2100 を超えるチームが30もあった。若いIMのヒカル・ナカムラに率いられた一家チームの「ウィーラ・ファミリー」が6-0で完勝し一位になった。彼らは最終戦で「Hampe Samisch on Rye」チームを3-1で負かした。

Y080104B.JPG

 ヒカル・ナカムラは今年の優勝チームのウィーラ・ファミリーの主将だった。チームのメンバーはヒカル、義父のスニル・ウィーラマントリ、兄のアスカ・ナカムラそれにマイケル・エレンボーゲンだった。ヒカルは5-1の成績だった。次の棋譜でヒカルの黒番での指し回しが見られる。

キングズ・インディアン防御 [E66]
白 FMコンスタンティン・ドルギツァー(ジャララバード・ビショップス)
黒 IMヒカル・ナカムラ(ウィーラ・ファミリー)
米国アマチュア・チーム東部、ニュージャージー州パーシッパニー、2002年

1.Nf3 Nf6 2.c4 g6 3.d4 Bg7 4.g3 O-O 5.Bg2

Y080104D.JPG

5...d6 6.O-O Nc6 7.d5 Na5 8.Nfd2 c5 9.Qc2

Y080104E.JPG

9...a6 10.Nc3 Bd7 11.b3 b5 12.Bb2 Rb8 13.Rae1

Y080104F.JPG

 白は 13.Rab1 と指して本譜の黒の17手目の交換損を牽制するのが普通である。

13...e5 14.Nd1 Nh5 15.f4 Qe7 16.e4 bxc4 17.bxc4 Rxb2!

Y080104G.JPG

18.Nxb2

 18.Qxb2 とクイーンで取ると 18...exf4 19.Qb6 Bd4+ 20.Kh1 Nxg3+! 21.hxg3 fxg3 という変化になる。

18...exf4 19.Nd3

 19.gxf4 は 19...Bd4+ 20.Kh1 Qh4 で次の 21...Ng3+ に対する適当な受けがない。

19...fxg3 20.h3 Bd4+ 21.Kh1

Y080104H.JPG

21...Bxh3! 22.Bxh3 g2+ 23.Kxg2 Qg5+ 24.Kh1 Qh4

Y080104I.JPG

 白の駒は連係が取れなくなっている。

25.Rf3 Nf4 26.Nxf4 Qxe1+ 27.Rf1 Qe3 28.Qd1

Y080104J.JPG

28...Bc3 29.Nb1 Qxe4+ 30.Qf3 Qxf3+ 31.Rxf3

Y080104K.JPG

31...Bg7 32.Nd2 Bh6 33.Bf1 Re8 34.Nb3

Y080104L.JPG

34...Nb7 35.Ng2 Re5 36.Kg1 f5 37.Bd3 Re7 38.Kf2

Y080104M.JPG

38...Nd8 39.Nf4 Bxf4 40.Rxf4 Rb7 41.Ke3 Nf7 42.Na5

Y080104N.JPG

42...Re7+ 43.Kd2 Ne5 44.Rf2 h5

Y080104O.JPG

 白にとっては指すのがつらい局面である。あきらめるには早過ぎるが、そうかといって黒が着々とポーンを進めてくる間に有効な対抗策があるわけでない。

45.Bxf5?

 このポカは追い込まれた状況から早く逃れたいという欲求から指されたとしか説明できない。45.Nc6 の後ならば変化によってはこのような手は駒を精算する強力な道具になる。しかしタイミングを注意深く計らなければならない。45.Nc6 が正着のようである(45.Nb3? h4 46.Nc1 h3 47.Ne2 でナイトを引き戻すのは手がかかり過ぎる)。e5のナイトが扇の要の役割を果たしている。だから白はこの機会を利用して白のナイトとルークを両当たりにするのが良いのである。

Y080104P.JPG

 45...Nxc6(45...Rb7 46.Nxe5 dxe5 47.Bxf5 gxf5 48.Rxf5 h4 49.Rh5 は形勢互角)46.dxc6 Rc7(白はさらにポーンを取られるが代わりに黒ポーンをせき止めるための時間が得られる)47.Ke3 Rxc6

Y080104Q.JPG

 48.Kf4(ここで 48.Bxf5 なら以下のように重要なhポーンが取れるので引き分けにできる 48...gxf5 49.Rxf5 Rb6 50.Rxh5 Rb2 51.Rh6 Rxa2 52.Rxd6 a5 53.Rc6 a4 54.Rxc5)Rb6 49.Kg5 Kg7

Y080104R.JPG

 50.Bf1(50.Re2 Kf7 51.Rf2)Rb1 51.Bg2 Rg1 52.Re2(52.Rb2)Kf7 53.Kh6 Kf6 54.Bd5 f4 55.Re6+ Kf5 で形勢不明である。

Y080104S.JPG

45...gxf5 46.Rxf5 Rh7 白投了

Y080104T.JPG

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 2001年度(2001年4月から2002年3月)のグランプリの16歳未満でIMナカムラが2位になりました。このグランプリは主要な大会の成績に応じて得点がもらえ年間の総得点で順位が決まる仕組みです。

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Y080104U.JPG

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(この号終わり)

2008年01月05日

実戦に役立つエンディング(41)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 パスポーンのない連結ポーンの場合(続き)

b)せき止められたポーンがない時(続き)

 これまでの分析から黒は自分のポーンが原位置にある時最も引き分けの可能性が大きくなると結論付けることができる。この場合白キングが自分のポーンの前にいても黒は引き分けることができる。図41でそのことを説明する(図38で黒ポーンをナイト列からルーク列へ、そして黒キングをg7へ移した)。

YKeres041.JPG 図41

(1)まず白の手番から始める。

1.Kf5

 1.h5 は 1...h6+ 2.Kf5 Kf7 で既知の引き分けになる。

1...Kf7 2.Ke5

 2.g5 は 2...Ke7(又は 2...Kg7)3.h5 Kf7 で引き分けになる。

2...Ke7 3.g5 Kf7

YKeres041A.JPG

 この後白はどうすることもできない。図41の局面を1段下げても白の手番ならば引き分けである。

(2)次は黒の手番の場合である。

1...Kf7

 最も普通の受け方であるが 1...Kh8 や 1...Kf8 でもかまわない。黒は白ポーンの前進を気にする必要はないのである。キングの動きのうちで 1...Kg8? だけが誤りで 2.Kh6 Kh8 3.g5 Kg8 4.h5 Kh8 5.g6 hxg6 6.hxg6 で白が勝つ。すなわち黒は常に Kh6 に対して ...Kg8 と応じられるようにしなければならない。1...h6+? も間違いで 2.Kf5 Kf7 3.h5 で白が勝つ。

2.Kh6

 2.Kf5 は 2...Ke7 3.Ke5 Kf7 4.Kd6 Kf6 で良くない。この手順中 4.h5 に対しては 4...Ke7 である。最初に黒が 1...Kh8 と指していたら白はここで 2.Kf6 と指すだろうがそれでも 2...Kg8 3.g5 Kf8!(3...Kh8? は 4.Kf7! でだめである)4.h5 Kg8 でやはり引き分けである。

2...Kg8

YKeres041B.JPG

3.g5 Kh8 4.h5 Kg8 5.g6 hxg6 6.hxg6 Kh8 で引き分けである。

 図41の局面をもっと下に下げると黒の手番でも引き分けにできない。例えば白ポーンがg2とh2、キングがg3、黒ポーンがh5、キングがg5とする。

YKeres041C.JPG

 1...Kf5 1...h4+ は 2.Kf3 Kf5 3.h3 で、この手順中 2...h3 なら 3.g3 Kf5 4.g4+ で白が勝つ。2.Kf3 Ke5 3.g3 Kf5 4.h3 で図40と同じになり黒が負ける。

 以上で2ポーン対1ポーンの最も重要な局面の体系的な分析を終わる。読者はこの種のエンディングの総合的な概要が理解できたものと思う。もちろん他にももっと多くの興味深く参考になる例がある。しかし本書の範囲を超えるので省略せざるを得なかった。興味を持たれた読者はエンディングの専門書を参照されたい。

(この節終わり)

一手一手の定跡習得(34)

Asahigaoka 1930 - Namik 1955
B33 ICC 10m++7s 2003.12.19

1. e4 c5 2. Nf3 Nc6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 e5 6. Ndb5 d6 7. Bg5 a6 8. Na3 b5 9. Bxf6 gxf6 10. Nd5 Bg7

YItte0034.JPG

11. c4

定跡は 11. Bd3 でした。

11... b4 12. Nc2 a5 13. Qh5 Ne7 14. Nce3 Nxd5 15. Nxd5 Be6 16. Be2 Bxd5 17. cxd5 Qb6 18. Qg4 O-O 19. Rc1 b3 20. a3 Qd4 21. Rc3 h5 22. Qxh5 Qxe4 23. O-O Qg6 24. Qh3 f5 25. Rfc1 a4 26. Rg3 Qf6 27. Rcc3 e4 28. Rxg7+ Qxg7 29. Rg3 Rfc8 30. Rxg7+ Kxg7 31. Qg3+ Kh8 32. Qxd6 Rc2 33. Bf1 Rac8 34. Qf6+ Kg8 35. d6 R2c6 36. d7 1-0

2008年01月06日

実戦に役立つエンディング(42)

第2章 ポーン・エンディング

2.4 キング+2ポーン対キング

 この種のエンディングは通常は簡単な白の勝ちなので少し注釈が必要である。それはぜひ知っておかなければならない例外が少しあるからである。例えば2個またはそれ以上のポーンがルーク列にある場合は勝ちがない。黒が有利な状態で1個のポーンを取ることができる場合も引き分けになる。

 これまでの分析から5段目と6段目に二重ポーンがある場合も白が勝てないことが分かる。例えば図42の場合黒の手番でも次のように引き分けである。

YKeres042.JPG 図42

1...Kc8! 2.Kd6 Kd8 3.c7+ 他の手では黒キングがc7に戻る。3...Kc8 これで 4.c6 でも 4.Kc6 でもステイルメイトになる。

YKeres042A.JPG

(この節続く)

一手一手の定跡習得(35)

Asahigaoka 2013 - Charles-Chaplin 2050
B82 ICC 15m++5s unrated 2003.12.24

1. e4 c5 2. Nf3 d6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 a6 6. f4 e6 7. Qf3 Qb6 8. Nb3 Qc7

YItte0035.JPG

9. Be3

定跡は 9. g4 でした。

9... b5 10. Bd3 Nbd7 11. O-O-O Bb7 12. Rhe1 Nc5 13. Nxc5 dxc5 14. f5 c4 15. fxe6 cxd3 16. Bf4 Qe7 17. Nd5 Nxd5 18. exd5 fxe6 19. Rxe6 Qxe6 20. dxe6 Bxf3 21. gxf3 dxc2 0-1

続・ナボコフの「ディフェンス」余話

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「Chess Life」
2002年3月号

「Larry Evans on Chess」

GM ラリー・エバンズ

「ルージン防御」(続き)
ウィリアム・グレイ、ペンシルベニア州フラックビル

質問 去年の12月号で怒った読者が映画「ルージン防御」の中の試合規則のひどい違反を指摘していた。私もがっかりさせられた。しかしどうして離れた所で映画の中での話にイライラしなければならないのだろうか。あれは「芸術上の例外的自由」と呼ばれるものである。もっと重要な問題、例えばFIDEの状況、薬物検査などがある。

回答 物議をかもす問題の他にも大衆メディアでチェスがどのように見られているかも調べてみてはどうだろうか。一般に映画はゲームの王様をチェスを指す人は頭が良いことを示す補強物として用いている。盤の右下隅が白枡かどうか、あるいは発せられる唯一の言葉が「チェック」だけかどうかを誰が気にするだろうか。しかしナボコフはまじめなフィクションの小説を書いた。そしてあの映画は彼の小説に忠実であることを標榜していた。それなのにどうしていい加減な結末で終わらせるのだろうか。

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2008年01月07日

実戦に役立つエンディング(43)

第2章 ポーン・エンディング

2.4 キング+2ポーン対キング

 図43では面白い形の引き分けが見られる。

YKeres043.JPG 図43

 一見絶望的な状況だが黒の手番ならば引き分けにできる。1...Kg7 2.Ke6 Kf8 ここで 3.h6 でも 3.Kf6 でもステイルメイトになる。fポーンを取らせてhポーンだけ残しても勝てない。

(この節続く)

一手一手の定跡習得(36)

Asahigaoka 1930 - blackwood 2336
B42 ICC 3m++12s unrated 2003.12.24

1. e4 c5 2. Nf3 e6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 a6 5. Bd3 Nc6 6. Nxc6 dxc6

YItte0036.JPG

7. e5

定跡は 7. Nd2 でした。

7... Qa5+ 8. Bd2 Qxe5+ 9. Qe2 Qxe2+ 10. Kxe2 e5 11. Nc3 Be6 12. f4 exf4 13. Bxf4 Nf6 14. Rhe1 Bc5 15. Ne4 Nxe4 16. Bxe4 O-O 17. h3 Bc4+ 18. Kf3 Rfe8 19. Rad1 Rad8 20. Bc7 Rxd1 21. Rxd1 g6 22. b3 Be6 23. Bf4 f5 24. Bd3 Rd8 25. Bg5 Rd7 26. Bf6 Kf7 27. Bc3 Bd5+ 28. Kg3 Bd6+ 29. Kf2 Be7 30. Bc4 Bf6 31. Bb4 b5 32. Bxd5+ Rxd5 33. Rxd5 cxd5 34. Ke3 Ke6 35. Bc5 Bb2 36. Bb4 Ke5 37. Bf8 f4+ 38. Kd3 Kf5 39. Bd6 g5 40. Be7 h5 41. Ke2 Bf6 42. Bd6 Ke4 43. Bc5 g4 44. Bb6 f3+ 45. gxf3+ gxf3+ 46. Kf2 Bh4+ 47. Kf1 d4 48. Ba5 d3 0-1

チェス500名局(13)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第13局

白 第1フュジリエ
黒 ボンベイ
1853年、ボンベイ

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 Nf6 5.d4 exd4 6.e5 d5

Y080107A.JPG

7.Bb5

 身をかわして早期のこぜりあいを避けた。7.exf6 dxc4 はぬるい。しかし 7.Be2 と引く手はある。

7...Ne4 8.Bxc6+

 8.Nxd4 に対して手堅く指すなら 8...Bd7 である。

 8.cxd4 には黒は 8...Bb4+ でなく(9.Kf1 の後 10.Qa4 がある)8...Bb6 と引くのが良く、それで形勢は互角である。

8...bxc6 9.cxd4

Y080107B.JPG

9...Bb6

 9...Bb4+ なら白は前の変化と同じく 10.Kf1 の後 11.Qa4 を狙う。

10.O-O Bg4

 この手は 10...O-O 11.h3 よりも活発な戦いになる。

11.Be3 O-O

Y080107C.JPG

12.Qc2

 誘いの隙を見せて局面の進展を図った。12.Nbd2 は 12...Nxd2 13.Qxd2 Bxf3 14.gxf3 Qh4、12.h3 は 12...Bh5 13.g4 Bg6 でどちらも思わしくない。

12...Bxf3 13.gxf3 Ng5 14.Qf5 f6 15.Qg4 h6 16.f4

Y080107D.JPG

16...f5 17.Qg2 Ne6 18.Rd1 Qh4 19.Qg3 Qh5 20.Nc3 Rfe8 21.Rd2

Y080107E.JPG

21...Nf8 22.Ne2 Re6 23.Qg2 Rg6 24.Ng3 Qh4 25.Kh1

Y080107F.JPG

 14手目からここまで白は落ち着いて駒の組み換えを進めてきた。そして自陣を固めるだけでなく反撃も狙っていた。

25...Ne6

 25...Qg4 には 26.h3、25...Qd8 には 26.Qh3 なので、本譜でのポーン損は避けられなかった。

26.Nxf5 Rxg2 27.Nxh4 Rg4 28.Ng2 Rf8 29.h3

Y080107G.JPG

29...Rgxf4

 交換損は仕方ない。29...Rg6 と引くのは 30.Nh4 Kh7 31.f5 でもっとひどいことになる。

30.Nxf4 Nxf4 31.Kh2 Ng6 32.Kg3 Kf7

Y080107H.JPG

33.b4 Ke6 34.Rg1 Rf7 35.h4 a5 36.a3 axb4

Y080107I.JPG

37.axb4 Ne7 38.Kh3 Kd7 39.h5 Ke6 40.Rg4 Rf3+

Y080107J.JPG

41.Kg2 Rf7 42.Rd1 Kd7 43.Rg1 Nf5 44.Kh3 Ke7 45.Rf4

Y080107K.JPG

45...Ke8

 45...Kf8 とg7のポーンを過剰に守れば 46.e6 Rf6 47.Rg6 で白は優勢のまま駒交換を進めることができる。

46.Rxf5

 これが決め手である。キングとルークが敵陣に侵入できる。

46...Rxf5 47.Rxg7 Rxh5+ 48.Kg4 Rh1

Y080107L.JPG

49.Kf5 Rd1 50.Ke6 Kf8 51.Bxh6 Rh1 52.Rg6+ Rxh6 53.Rxh6

Y080107M.JPG

 先を見通した戦略のおかげで白は再び交換得した。後は平穏無事なルーク対ビショップエンディングである。

53...Bxd4 54.Rh3 Bb2 55.f4 d4 56.f5 Bc3 57.f6 黒投了

Y080107N.JPG

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2008年01月08日

実戦に役立つエンディング(44)

第2章 ポーン・エンディング

2.4 キング+2ポーン対キング

 最後に図44は特別な引き分けの局面である。

YKeres044.JPG 図44

 白番では 1.Kh8 Kf8 2.h7 Kf7 でステイルメイトになる。

(この節終わり)

一手一手の定跡習得(37)

Asahigaoka 2032 - jmdm 2204
B76 ICC 15m++0s 2003.12.30

1. e4 c5 2. Nf3 d6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 g6 6. Be3 Bg7 7. f3 Nc6 8. Qd2 O-O 9. O-O-O d5 10. Qe1 e5 11. Nxc6 bxc6

YItte0037.JPG

12. Bc5

定跡は 12. exd5 でした。

12... Re8 13. Bd3 Qa5 14. Ba3 Rb8 15. Nxd5 Bh6+ 16. f4 Qd8 17. Qh4 Bg7 18. fxe5 Rxe5 19. Nxf6+ Bxf6 20. Qg3 Qa5 21. Bc4 Rb7 22. Rhf1 Bg5+ 23. Kb1 h5 24. h4 Bg4 25. Rd6 Rxe4 26. Rxg6+ Kh7 27. Rxg5 Rbe7 28. Rxa5 Re3 29. Bxe7 Rxg3 30. Rxf7+ Kh6 31. Bg5+ Kg6 32. Rf6+ Kg7 33. Rf7+ 1/2-1/2

2008年01月09日

実戦に役立つエンディング(45)

第2章 ポーン・エンディング

2.5 キング+2ポーン対キング+2ポーン

 ポーンの数が同じ時は通常は引き分けになるのでこの種のエンディングに特定の原則を挙げることはできない。しかし駒の損得以外に駒の配置が結果に重大な影響を及ぼしている場合がある。それを陣形の優位と呼ぼう。最も重要で簡単な例のいくつかをこれから紹介していく。もちろんこのような局面の特徴はもっと複雑なエンディングにも見られるが、そのようなエンディングは本書の範囲を超えるので扱わない。

 パスポーンの生成

 これはポーンが相手の防御線を強行突破することによって成される。この強行突破は普通は両方のキングが盤の別の所にいてそのためパスポーンの阻止や支援ができない時に起こる。ポーンの強行突破は通常は一つのポーンを捨てることを伴う。そのため敵味方の両方にパスポーンができる。だから仕掛ける側は敵のポーンが自分のポーンよりも危険な存在にならないように正確に読んでおかなければならない。図45を考えてみよう。

YKeres045.JPG 図45

 白キングを近づけるという通常の原則に従っても何もならない。1.Ke4 Ke6 で引き分けが避けられない。しかし白は一つのポーンを捨てることによって勝つことができる。

1.c5!

 このような突き捨てを決行する時には以下のことを読んでおかなければならない。一番目は 1...bxc5 2.a5 の後黒キングが白のパスポーンを止められないということである。二番目は新たにできた黒のパスポーンを白が止めることができることである。三番目はポーン捨てを拒否しても得にならないことである。

1...b5

 黒の手として三番目を選んだ。最初の二つは大丈夫である。1...bxc5 2.a5 でこのaポーンは黒に捕まらない。2...c4 3.a6 c3 4.Ke3 で白は黒のcポーンを止めることができる。もし黒がポーンを取らずに 1...Ke6 と指せば 2.cxb6 Kd7 3.a5 で白の勝ちは簡単である。

2.a5!

 2.axb5 は間違いで 2...cxb5 3.c6 Ke6 で引き分けになる。本譜の手の後黒はbポーンがパスポーンになるが白キングが十分近くにいる。

2...b4 3.Ke4 b3 4.Kd3 で白が勝つ。

 黒は白のaポーンのクイーン昇格を防ぐことができない。

(この節続く)

一手一手の定跡習得(38)

Asahigaoka 2017 - AliPasha 2132
B33 ICC 15m++0s 2004.01.01

1. e4 c5 2. Nf3 Nc6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 e5 6. Ndb5 d6 7. Bg5 a6 8. Na3 b5 9. Bxf6 gxf6 10. Nd5 f5 11. Bd3 Be6 12. O-O Bxd5 13. exd5 Ne7

YItte0038.JPG

14. c4

定跡は 14. c3 でした。

14... e4 15. Be2 Bg7 16. Rb1 O-O 17. Nc2 Ng6 18. Nb4 Qg5 19. Qc1 Nf4 0-1

チェス500名局(14)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第14局

白 シューモフ
黒 コーリッシュ
1862年、サンクト・ペテルブルグ

 第12局と同じようにシューモフは本局でも自陣の安全に気を配らない。相手陣に進攻することばかりに気を取られてどんどん自分の駒が出払ってしまい、キングの守りや開通g列が危うくなった。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.O-O

Y080109A.JPG

4...Nf6

 相手のeポーンを攻撃することによって黒はキャッスリングを早めることができる。4...d6 なら白は 5.c3 と応じ 5...Bg4 に対して 6.Qb3、又はこちらの方が勝るかもしれないが 6.d4 exd4 7.Qb3 と逆襲に出る。

5.d4

 5.c3 なら 5...Nxe4 と取っても大した危険はない。本譜の大胆な手の代わりに白は 5.d3 又は 5.Nc3(イタリア4ナイト試合)と穏やかな手を指すこともできた。

5...Bxd4

 この手が最善である。5...Nxd4 なら 6.Nxe5、5...exd4 なら 6.e5 (マックス・ランゲ攻撃)で乱戦になる。

6.Nxd4

Y080109B.JPG

6...Nxd4

 ここでも 6...exd4 とポーンで取るのは 7.e5 で白に有利に展開する。

7.f4

 これほど激しくない 7.Bg5 もあった。

7...d6 8.fxe5 dxe5 9.Bg5

Y080109C.JPG

9...Qe7

 クイーン側へキャッスリングするつもりである。9...Be6 なら白は 10.Na3 が良い手である。

10.b4

 不必要に 10...Qc5 を恐れて自陣を弱めてしまった。10.Nc3 が普通の手で以下のような展開が考えられる。
(a)10...c6 11.Ne2 Bg4 12.c3 これで目障りな敵駒を追い払うことができる。
(b)10...Be6 11.Bd3 O-O-O 12.Kh1 形勢は互角である。
(c)10...Qc5(魅力的な手だが鮮やかに咎められる)11.Bxf7+ Kxf7 12.Qh5+ Ke6 13.Bxf6 gxf6 14.Nd5 これで白が勝つ。

10...Be6

Y080109D.JPG

11.Bxf6

 この手から始まる駒交換で黒の中原がこじんまりと引き締まるので 11.Bd3 と交換を避ける方が良かった。白の次の手ではなおさら Bd3 の方が良かった。

11...gxf6 12.Bxe6 fxe6 13.Qh5+

Y080109E.JPG

13...Qf7 14.Qh4 O-O-O 15.Na3 f5

 黒は積極策に出て主導権を握った。

16.Qf2 Qh5

Y080109F.JPG

17.Rae1

 17...Ne2+ を防ぎ逆に 18.exf5 exf5 19.c3 Nc6 20.Qxf5+ を狙っている。しかし黒は当然だまって待つようなことはせずキング翼のポーンを強化した。

17...f4 18.c3 Nc6 19.b5

 白が他の手を指してもやはりd筋とg筋を抑えている黒の優勢である。

19...Nb8 20.Qxa7 b6

Y080109G.JPG

 黒は格好の餌で敵の駒を主戦場から離脱させることができた。

21.Qa4 Rhg8 22.Rd1

 ルークをぶつけた手は甘かった。何をおいても 22.Rf2 と指すべきだった。

22...Rxg2+

 ルークの殴り込みである。この後は鮮やかな好手順が用意されていた。

23.Kxg2 Qe2+

Y080109H.JPG

24.Kh1

 24.Rf2 は 24...Rg8+ 25.Kh1 Qxf2 26.Qc2 Qf3+ で詰まされる。24.Kh3 は 24...Rg8(次に一手詰み)25.Rd8+ Rxd8(25...Kxd8 は誤りで 26.Qd1+ でクイーンを交換される)26.Qc4 Rd3+ で白の勝ち。

24...Rd2 白投了

Y080109I.JPG

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2008年01月10日

実戦に役立つエンディング(46)

第2章 ポーン・エンディング

2.5 キング+2ポーン対キング+2ポーン

 遠方パスポーン

 ポーン・エンディングにおいて遠方パスポーンは最もありふれていて重要な陣容上の優位の一つである。「遠方」とは主戦場からポーンが離れていることを意味している。そのようなポーンの主要な利点は敵キングをおびき寄せ、攻撃側のキングが他の場所で自由に活動できるところにある。遠方パスポーンは大変強いので相手のポーン得なども上回ることがよくある。

YKeres046.JPG 図46

 パスポーンがなければ黒キングにc4又はe4から侵入されて白が負けるところであるが、パスポーンのおかげで結果が逆転する。

1.f5

 このポーンは取られてしまう運命であるが黒キングを主戦場(bポーン)から遠ざけ白が速やかに勝つ。

1...Ke5 2.f6 Kxf6 3.Kxd4 Ke6 4.Kc5 Kd7 5.Kxb5 Kc7 6.Ka6 で白が勝つ。

YKeres046A.JPG

 この例からパスポーンは主戦場から遠い所にあるほど価値が高くなることが明らかである。例えば白のパスポーンがf4でなくh4にあればa6にも黒のポーンがあったとしても白が勝つ。読者はこれを自分で確かめられたい。

(この節続く)

一手一手の定跡習得(39)

Asahigaoka 1873 - Arnakowitsch 1928
B67 ICC 3m++12s 2004.01.01

1. e4 c5 2. Nf3 Nc6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 d6 6. Bg5 e6 7. Qd2 a6 8. O-O-O Bd7 9. f4 b5

YItte0039.JPG

10. Nxc6

定跡は 10. Bxf6 gxf6 11. Kb1 でした。

10... Bxc6 11. Bd3 Be7 12. Kb1 Qb6 13. Rhf1 b4 14. Ne2 Nxe4 15. Bxe4 Bxe4 16. Bxe7 Kxe7 17. f5 Bxf5 18. Qg5+ Kf8 19. Nd4 Re8 20. Nxf5 exf5 21. Qxf5 f6 22. Qd7 Rd8 23. Qe6 Qc7 24. g4 Qe7 25. Qc4 a5 26. g5 Qf7 27. Qa6 Qc7 28. gxf6 gxf6 29. Rxf6+ Kg7 30. Rfxd6 Rxd6 31. Qxd6 Qxd6 32. Rxd6 Rf8 33. Rd1 Rf2 34. Rh1 h5 35. h4 a4 36. a3 bxa3 37. bxa3 Rf4 38. Kb2 Kh6 39. Kc3 Kg7 40. Rh3 Kg6 41. Rd3 Rxh4 42. Rd4 Rxd4 43. Kxd4 h4 44. Ke4 Kg5 45. c4 Kg4 46. Ke3 Kg3 47. c5 h3 48. c6 h2 49. c7 h1=Q 50. c8=Q Qf3+ 51. Kd2 Qxa3 52. Qg8+ Kf4 53. Qf7+ Ke5 54. Qg7+ Ke4 55. Qg6+ Kf4 56. Qf6+ Kg4 57. Qg6+ Kh4 58. Qh6+ Kg3 59. Qg5+ Kh2 60. Qh4+ Kg2 61. Qg4+ Kh2 62. Qh4+ Kg2 63. Qg4+ Kh2 64. Qh4+ 1/2-1/2

2008年01月11日

実戦に役立つエンディング(47)

第2章 ポーン・エンディング

2.5 キング+2ポーン対キング+2ポーン

 保護パスポーン

 パスポーンが別のポーンによって守られている時非常に強い武器になり、敵の遠方パスポーンよりも強力である(もちろんこの遠方パスポーンがクイーンになれない場合)。保護パスポーンの強みは敵キングの動きを制限し、それと共に自分のキングが自由に動けることにある。図47がこれらの特長を良く表している。

YKeres047.JPG 図47

 白のb5の保護パスポーンは黒のh筋のポーンよりも強力である。白は次の手順で勝つ。

1...h5 2.Kd3 Kd5

 黒は白キングに自分のhポーンを取られないようにしようとする。

3.Ke3 Ke5 4.Kf3 Kd5

 黒キングは白のbポーンがクイーンに昇格しないようにこれ以上遠くに行けない。

5.Kg3 で白が勝つ。

YKeres047A.JPG

 白は黒のhポーンを取ってからクイーン翼に戻ってくる。この間黒キングはただ指をくわえて見ているしかない。

(この節続く)

一手一手の定跡習得(40)

Arnakowitsch 1938 - Asahigaoka 1852
B23 ICC 3m++12s 2004.01.01

1. e4 c5 2. Nc3 Nc6 3. f4 g6 4. Nf3 Bg7 5. Bb5

YItte0040.JPG

5... a6

定跡は 5... Nd4 でした。

6. Bxc6 bxc6 7. O-O Nf6 8. d3 O-O 9. f5 Rb8 10. fxg6 hxg6 11. Rb1 d6 12. Bg5 Qa5 13. e5 dxe5 14. Nxe5 Qc7 15. Bf4 Nh5 16. Nxg6 Nxf4 17. Nxf4 Qe5 18. Qf3 Bd7 19. Kh1 Rb4 20. a3 Rbb8 21. Nh5 Qg5 22. Nxg7 Kxg7 23. Qf2 Rh8 24. Qxf7+ 1-0

「ヒカルのチェス」(51)

「Chess Life」2002年10月号 (1/3)

 2002年5月23日から27日にかけてイリノイ州オーク・ブルックで開催されたシカゴ・オープンでIMナカムラは5ポイントでオープン部門の8-15位に入賞しました。

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 2002年6月5日から14日にかけてボリビアのラ・パスで開催された汎アメリカ・ジュニア大会にIMナカムラが参加しました。ラ・パスは富士山の高さくらいの所にある都市です。

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 ツァイ、ナカムラがボリビアで活躍

 記 IMジョン・ドナルドソン

Y080111B.JPG

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 デンバーは「標高1マイル市」という別称で知られるが、2002年汎アメリカ・ジュニア大会の開催地であるボリビアのラ・パスと比べると海水面程度かもしれない。空港に着陸し息を切らす様を想像してみると良い。それがちょうど汎アメリカ大会米国代表のシンディ・ツァイとヒカル・ナカムラが高度13,600フィートのエル・アルト空港に降り立った時の有様だった。

 これはシンディとヒカルが米国から初めてボリビアでの国際大会に参加した時に遭遇した唯一のめったにない経験ではなかった。米国から20時間かけて着いて6月4日から14日まで毎日彼らは他の都市では味わえない経験をした。対局する時は12,500フィート、寝る時は11,000フィートの所であった。何しろラ・パスは巨大なすり鉢状になっていて各所で高さが異なり最大で1,000メートル以上も差があるのである。街を散策していても三方はいつも上り坂で、20,000フィート近いイリマニ山は地平線にそびえ立っていた。人口約200万のうちほとんどはスペイン語でなくインディオのアイマラ語とケチュア語を話している。

 ラ・パス市では全ての建物が集中暖房とお湯が完備されているというわけではないということに気付かされる。これは夜には気温が華氏40度以下に下がるのだから些細なことではない。

 20歳未満が対象の汎アメリカ・ジュニアと汎アメリカ女子選手権戦はボリビア・チェス連盟が主催した。メキシコのホルゲ・ベガが主審を務めマリオ・イベル・ロペスが審判を務めた。争われたのは国際マスターと女流国際マスターの称号、9試合によるグランドマスターと女流グランドマスターの基準、それから20歳未満の世界ジュニアと世界女流選手権戦への参加権だった。参加者は北・中央・南アメリカから来て汎アメリカ・ジュニアはスイス式、汎アメリカ女流は総当りで行なわれた。

 シンディとヒカルは共に第1位にシードされた。しかし手ごわい参加者、高地への順応(シンディはフロリダ州ゲインズビル、ヒカルはニューヨーク市ホワイト・プレーンズにいて海水面程度の高さで生活している)、腸内細菌叢の問題などでことは簡単に運ばなかった。

(途中省略)

 14歳のヒカル・ナカムラは二つ目のGM基準達成を目指して汎アメリカ大会にやって来た。彼は三者同点で首位になりもう少しのところでGM基準を逃がした。ヒカルの対戦相手の合計得点は、ヒカルと同順位で共にインターナショナル・マスターのラファエル・プラスカ(ベネズエラ)とダニエル・ミエレス(エクアドル)の対戦相手の合計得点を上回っていたが、FIDE方式順位付けの漸進得点法で負けてしまった。9試合のGM基準達成者はプラスカに決まった。ヒカルのGM基準達成の目的はかなえられなかったが、彼の猛勉強の姿勢と闘争心には大いに感心させられた。この二つの特質に明らかな才能が組み合わさっているのだから彼の将来は約束されたようなものである。

 ボリビアの人たちはこの大会への米国の参加をことのほか喜んでくれて我々を居心地良くしてくれた。シンディとヒカルは米国のために素晴らしい大使となって多くの新しい友達を作った。米国チェス連盟と米国チェス信託は米国教育理事のトム・ブラウンズコームと協力して二人の参加と私のコーチの任務を可能にしてくれた。

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(この号続く)

2008年01月12日

実戦に役立つエンディング(48)

第2章 ポーン・エンディング

2.5 キング+2ポーン対キング+2ポーン

 保護パスポーン(続き)

 この種のエンディングの場合白は必ず保護しているポーンを黒が攻撃することによって引き分けにならないように確認しておかなければならない。このようなことを防ぐためには保護されているポーンは少なくとも4段目にいなければならない。例えば図48では保護されているポーンが3段目にいるので白は勝てない。

YKeres048.JPG 図48

1.Ke3 Kc3 2.Kxf3 Kb2 3.b4 Kxa2 4.b5 Kb2 5.b6 a2 で引き分けである。

YKeres048A.JPG

(この節続く)

一手一手の定跡習得(41)

boris52 2099 - Asahigaoka 1841
B50 ICC 2m++8s 2004.01.04

1. e4 c5 2. Nf3 d6 3. c3 Nf6 4. Be2

YItte0041.JPG

4... Nc6

定跡は 4... Nbd7 又は 4... Bd7 でした。

5. d4 Nxe4 6. d5 Nb8 7. Qa4+ 1-0

2008年01月13日

実戦に役立つエンディング(49)

第2章 ポーン・エンディング

2.5 キング+2ポーン対キング+2ポーン

 保護パスポーン(続き)

 しかし4段目の保護パスポーンでも逆襲を防ぐのに必ずしも十分でないことがある。

YKeres049.JPG 図49

 白は次のように進めても勝てない。1.Kf4 h5 2.Kg5 Ke4 3.Kxh5 3.b5 は Kd5 4.Kxh5 Kc5 で引き分け。3...Kd3! 4.b5 Kxc3 5.b6 Kd2 6.b7 c3 7.b8=Q c2

YKeres049A.JPG

 やはりビショップ筋のポーンの特殊性により理論的引き分けである。

(この節続く)

一手一手の定跡習得(42)

swimjt 2204 - Asahigaoka 2010
E76 ICC 15m++15s 2004.01.04

1. d4 Nf6 2. c4 g6 3. Nc3 Bg7 4. e4 d6 5. f4 O-O 6. Nf3 Na6 7. Be2 e5 8. fxe5 dxe5 9. d5 Nc5 10. Bg5 h6 11. Bxf6 Qxf6 12. b4 Na6 13. Rb1

YItte0042.JPG

13... Bg4

定跡は 13... c5 でした。

14. O-O Rad8 15. c5 c6 16. d6 Qe6 17. Qa4 Qd7 18. Bxa6 bxa6 19. Qxa6 f5 20. Qc4+ Kh8 21. h3 fxe4 22. hxg4 exf3 23. gxf3 Rf4 24. Qe2 h5 25. gxh5 gxh5 26. Ne4 Rg8 27. Kf2 Qg4 28. Ke1 Qh4+ 29. Kd1 Rgf8 30. Rb3 Bh6 31. Rd3 Rxe4 32. fxe4 Rxf1+ 33. Qxf1 Qxe4 34. d7 Qg4+ 35. Qe2 Qg1+ 36. Kc2 Qc1+ 37. Kb3 Qb1+ 38. Ka4 1-0