第2章 ポーン・エンディング
2.7 実戦例(続き)
次の例は図13に現れたような巧みなキングの動きが見られる。
図59 白の手番
ラスカー対タラシュ、1914年
タラシュは白が投了してもおかしくないとの想定でこの局面に持ち込んだ。実際黒はキングの助けがなくてもクイーン翼で勝つことができる。その手順は 1...c4 2.bxc4 bxc4 の後 3...a4 から 4...c3 である。これに対して白キングは成すすべがなく、hポーンも容易に止められてしまうように見える。しかしタラシュの夢想だにしない手順で世界チャンピオンは引き分けを実現した。
1.h4 Kg4
2.Kg6!
これが核心の手である。タラシュは 2.Kf6 しか読んでいなかった。それは 2...c4 3.bxc4 bxc4 4.Ke5 c3! 5.bxc3 a4 でこのポーンが止まらない。ラスカーの手は 3.h5 を見せて黒にこのポーンを取らせることによって貴重な一手を稼いでいる。これにより白キングは自分のポーンがじゃまになる黒枡の斜筋 (a1-h8) の代わりに白枡の斜筋 (b1-h7) をたどることができる。すぐに分かるようにこれは天と地ほどの違いがある。
2...Kxh4 3.Kf5
3...Kg3
多分ここらあたりでタラシュは勝利の夢から目覚めたことだろう。もし彼が当初の予定どおりに手を進めたら以下のように負けてしまう。3...c4 4.bxc4 bxc4 5.Ke4 c3 6.bxc3 a4?(6...Kg5 7.Kd5 Kf6 ならまだ引き分けにできる)7.Kd3!
白キングはc3のポーンによって邪魔されずにb2に到達できる。
4.Ke4 Kf2 5.Kd5 Ke3
黒の方が負けないように指さなければならなくなった。
6.Kxc5 Kd3 7.Kxb5 Kc2 8.Kxa5 Kxb3 1/2-1/2
(この節続く)