あなたの棋力診断(How Good Is Your Chess?)
レナード・バーデン(Leonard Barden)
初めに
多くのチェス愛好家は実戦の十分な時間や機会が足りないと感じている。そうでない人でも本から知識を吸収しようという動機が不十分なために自分の読みが一般原則に習熟した相手に通じないという悩みを抱えている。ここに本当の問題点がある。つまり自分の実戦に良く現れる問題を採り上げてくれない本には関心が持ち難いのである。本書はそのような問題を二つのやり方で解決しようというものである。まず実戦の色々な側面、即ち大局観、攻撃、駒捨ての手筋、受けそれから収局といった最も良く遭遇する局面が現れる試合を選んだ。それから読者がマスターによって指された手を一緒に考えて且つその手の説明を読むことによって実際の試合に参加している状況を作り出している。
本書は好局集として読むこともできる。各々の手の質問に答える必要もなくただ楽しむために指し手を並べるだけで良い。そのためにほとんどの場合近年の大会で指され英語圏の読者には馴染みの薄い試合を選んである。
本書のもっと楽しく役に立つ使い方は読者が試合でマスターのパートナーとなったと想像して彼の手を推量することである。そのためには紙かカードでページをおおい1行ずつずり下げると良い。どの試合でも局面図までの手が示されてありその後からは星印でそのすぐ後にパートナー側の指し手が書いてある。だからその手を予想した後で紙をずり下げるのである。各試合とも最高点は50点である。棋力の適正な評価のために8章(訳注 第1章 中原の支配 2局、第2章 展開の優位 1局、第3章 大局観 11局、第4章 攻め方 8局、第5章 受けの技法 2局、第6章 手筋 6局、第7章 封じ込めの技術 1局、第8章 収局 4局)の中からそれぞれ最低1局ずつ選んでその平均点を用いるのが良い。平均点が出たら次の表と照らし合わせておおよその棋力が判定できる。
| 8局の平均点 | 国際レイティング | 対応する棋力 |
| 45-50 | 2400以上 | マスターやグランドマスター級の強さ。米国または英国選手権戦への参加資格あり。プロになることも考えよ。 |
| 40-44 | 2300-2399 | U.S.オープン、英国選手権、主要な国際オープン大会での上位の成績。 |
| 35-39 | 2200-2299 | 英国選手権の平均レベル。週末のローカルなオープンでの優勝。クラブや州のチャンピオン。 |
| 30-34 | 2100-2199 | クラブの強豪選手。国内オープンでの勝率50%。米国のアマチュアのチャンピオン級。 |
| 25-29 | 2000-2099 | クラブの上級選手。国内オープンで時々勝率50%。16歳未満のジュニアの国際大会選手。 |
| 15-24 | 1800-1999 | クラブの平均よりは上の選手。 |
| 8-14 | 1400-1799 | 家庭で又は時々指す選手からクラブの中くらいの選手程度。 |
| 0-7 | 1400未満 | 初心者かそれに近いレベル。実戦の経験を積むためにチェス・クラブか週末のオープンで指すのが良い。 |
第1章 中原の支配
第1局
本局のあなたは白番で、指導パートナーは前世界選手権者のミハイル・ボトビニクである。本局の相手はスイスのマスターのグロープである。この試合はボトビニクが1956年にチューリヒで時計を用いて行なった同時対局の8局の内の一局である。局面図までの手順は次のとおりである。
1.Nf3 Nf6 2.c4 d5 3.cxd5 Nxd5 4.e4 Nf6 5.Nc3 e6 6.d4 c5
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7.d5
4点。黒の2手目は白に中原での優位を与えた悪手である。強気の 7.d5 で白は主導権を握った。7...exd5 に対して 8.exd5 はパスポーンができるが孤立し容易にせき止められるのでほとんど価値がない。代わりに 8.e5 d4 9.exf6 dxc3 10.Bb5+ Nc6 11.Qe2+ Be6 12.O-O Qxf6 13.Bg5 で白は1ポーンを犠牲に好調な展開になる。堅実な 7.Bc4、7.Bf4、7.Bg5 及び 7.Be2 はそれぞれ1点。7.Be3 は 7...Ng4 がうるさいので0点。
7...a6
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8.Bg5
2点。次の 9.e5 が厳しい。8...h6 で追い払おうとすれば 9.Bh4 g5 10.Bg3 で黒のポーンの形が乱れる。魅力的な 8.d6(8...Qxd6 9.Qxd6 Bxd6 10.e5)は0点。黒はこの手に対しては 8...e5 9.Nxe5 Bxd6 と応えて互角である。パッとしない 8.Bf4 と 8.Be2 はそれぞれ1点。
8...Qb6
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9.Bxf6
2点。中原が半開状態でクイーン翼ポーンも既に動いているので、キング翼のポーンも乱せば黒キングの安全な居場所はたちまちどこにもなくなる。
9...gxf6
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10.Qd2
2点。10.Qc2 は黒ビショップが 10...Bh6 に出て来れるので1点。
10...h5
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11.Be2
1点。
11...Nd7
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12.O-O
3点。開いたg筋を怖がる必要はない。なぜなら黒は自分のキングのせいで勢力が二分されているので大駒で攻撃態勢を整えることは期待できないからである。12.Rd1 は1点。12.O-O-O?? は 12...Bh6 があるので6点減点。
12...h4
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13.a4
3点。このポーンがさらにa5に進めば黒のcポーンを無理やり孤立化させ攻撃目標にできる。13.h3 は1点。黒はまだ 13...h3 14.g3 とするわけにはいかない。こう形をきめてしまうと自分の黒枡ビショップがf4の地点に行けなくなる。f4の地点からは白キングに少し重圧をかけると共に自分のクイーン翼の弱い黒枡に利いているのでクイーン翼にキャッスリングできる可能性が出てくる。
13...Bh6
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14.Qc2
1点。
14...Bf4
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15.a5
1点。
15...Qc7
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16.Rfd1
1点。黒のポーンの弱点は恒久的なのであわてて攻める必要はない。だから落ち着いて自陣の整備に努めることができる。
16...Ne5
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17.Nxe5
1点。
17...Bxe5
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18.h3
1点。ここに来てようやくこの手が必要となった。
18...Bd7
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19.Na4
3点。白は展開が完了したので攻撃を開始することができる。この手を指すに当たり白は 19...Qxa5 の変化を読んでおく必要があるがそれは 20.Nxc5 Qc7 21.dxe6 Bxe6 22.Qa4+ Qc6 23.Bb5! で大丈夫である。
19...Bxa4
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20.Rxa4
2点。この手は Rc4 から b4 という狙いを含んでいる分 20.Qxa4+(1点)より勝る。
20...Rc8
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21.Rc4
1点。
21...Qxa5
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22.b4
2点。
22...Qa3
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23.Rxc5
3点。23.bxc5(2点)でも良いが本譜の手の方が決定的な敵陣突破を図ることができる。
23...Rd8
23...Rxc5 と交換に応じるのは 24.Qxc5(次に 25.Qc8+ がある)Qc3 25.Qxc3 Bxc3 26.Rc1 で白が駒得する。
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24.dxe6
2点。黒キングは白の大駒の砲火にさらされるようになった。24.Rc8 は 24...O-O で黒が一息つけるので0点。
24...Bd6
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25.Rxd6
5点。鮮やかな決め手で必勝形になる。25.Rc8 と 25.exf7+ は少しぬるいのでそれぞれ2点。
25...Rxd6
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26.Rc8+
2点。
26...Ke7
26...Rd8 と受けるのは 27.Qc7 Rxc8 28.Qd7+ で詰みになる。
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27.Qc7+
2点。27.Rxh8(1点)でも良いが本譜の手の方がきれいに決まる。
27...Kxe6
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28.Bg4+
1点。
28...f5
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29.Bxf5+
1点。
29...Ke5
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30.Qc5+
4点。30.Rxh8 と 30.Qe7+ Re6 はそれぞれ1点。
黒投了。
診断 本局の得点が低かったら二つの理由が考えられる。もし前半で得点が低ければ展開が済む前に早まった攻撃を仕掛けているからかもしれない。逆に後半の得点が低ければ読みに正確さを欠いていることが考えられる。