« 一手一手の定跡習得(61) | メイン | 実戦に役立つエンディング(69) »

「ヒカルのチェス」(54)

「Chess Life」2003年1月号 (1/4)

 2003年8月8日から11日にかけてマサチューセッツ州のスターブリッジ(Sturbridge)で開催された第32回コンチネンタル・オープンでIMナカムラが優勝しました。

******************************

 スターブリッジでの大活躍

・・・・・

 オープン部門の参加者は48名でその内グランドマスターは13名だった。しかし0.5点の差(6試合で5.5点)で単独優勝したのはGMではなく開始順位11位で14歳のIMヒカル・ナカムラだった。彼は昨年は素晴らしい活躍を見せ、IMの称号を獲得しGM基準を1回達成した。しかしスターブリッジでの成績は過去最高のものだろう。

 2戦2勝の後の対戦相手はGMアレックス・ストリプンスキーだった。ヒカルはルーク+ビショップ対ルークのエンディングを強固な意志で長手数の154手で勝ち切った。

 次の対戦相手は手強い二人のGMだった。一人はペンシルバニア州のアレックス・シャバロフでもう1人は常連で米国の選手になりかけているチェコのパベル・ブラトニーだった。ナカムラはこの二人に対して見事なチェスを指し共に倒した。その2局をナカムラの自戦解説でおおくりする。

グリューンフェルト防御 [D85]
白 GMアレックス・シャバロフ
黒 IMヒカル・ナカムラ
コンチネンタル・オープン、2002年

自戦解説 IMヒカル・ナカムラ

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 d5 4.cxd5 Nxd5 5.e4 Nxc3 6.bxc3 Bg7 7.Nf3 O-O

Y080201A.JPG

8.Be2 c5 9.Rb1 Nc6 10.d5 Ne5 11.Nxe5 Bxe5 12.Qd2 e6 13.f4 Bg7 14.c4 b6

Y080201B.JPG

15.O-O?!

 ここから白が苦しい展開になった。15.Bb2!? が良かった。

15...exd5 16.cxd5 Bd4+ 17.Kh1 f5!

Y080201C.JPG

 黒は中原から反攻を始める。

18.e5

 18.Bd3 と一旦守っても 18...fxe4 19.Bxe4 Bf5 20.Qd3 Qd7 でやはりdポーンは守れない。

18...Qxd5! 19.Bf3 Qc4 20.Bb2 Rb8

Y080201D.JPG

21.Rbc1

 シャバロフは新しい手を試してきた。これまでは 21.Bxd4 が指されていた。

21...Qxa2 22.Rc2 Qf7 23.Bxd4 Rd8! 24.Rb1 Rxd4 25.Qe3

Y080201E.JPG

25...Qe7?!

 勝利への最も確実な手は 25...Bb7 26.e6 Qe7 27.Bxb7 Rxb7 だった。

26.Qa3!? Be6 27.Rxc5 Re8 28.Rc3 Rxf4

Y080201F.JPG

29.Qc1 Rd4 30.Qe3 Red8 31.Rbc1 Kg7 32.h3 f4?

Y080201G.JPG

 この手はポーンの結び付きを弱める悪手だった。

33.Rc7! R8d7 34.Qxd4 Rxc7 35.Rxc7 Qxc7 36.Qxf4 Qe7 37.Qa4 a5

Y080201H.JPG

 a列のパスポーンを進ませるためにbポーンは捨てるつもりだった。

38.Qc6 h5 39.Qxb6 a4 40.Qa5 a3 41.Bd5 Bxd5 42.Qxd5 Qa7 43.Qa2

Y080201I.JPG

 37...a5 と指した時この展開を読んでいて黒が勝てるのではないかと思っていた。

43...h4 44.Qe6 Qf7 45.Qa6 a2 46.Kg1 Qd5 47.Qf6+ Kh7

Y080201J.JPG

48.Qe7+

 48.Qxh4+ とポーンを取るのは 48...Kg8 49.Qa4 Kf7 で白が負ける。

48...Kg8 49.Qe8+ Kg7 50.Qe7+ Qf7 51.Qa3 Kh7 52.Qa4 Qd5 53.Qxh4+ Kg8 54.Qa4

Y080201K.JPG

54...Kg7?

 54...Kf7! 55.Qf4+ Ke8 56.Qa4+ Ke7 57.Qa7+ Ke6 58.Qa6+ Kxe5 で黒の勝ちだった。

55.Kh1 Qd2 56.Kh2 Qf2 57.h4 Kf7 58.Qd7+ Kg8 59.Qe8+ Kg7 60.Qa4 Kf8

Y080201L.JPG

61.e6??

 白は黒クイーンのためにh2-b8の筋を通して引き分けを逃がしてしまった。正着は 61.Qb4+ で以下 61...Kf7 62.Qc4+ Ke7 63.Qb4+ Kd7 64.Qd6+ Kc8 65.Qc6+ Kb8 66.Qd6+ Kb7 67.Qb4+ Kc6 68.Qc4+ Kd7 69.Qd5+ で引き分けだった。

61...Qd2!

 ただし 61...Qb2? は誤りで 62.Qf4+!(62.Qd7 は 62...Qe5+ 63.Kh3 Qf5+ 64.Kg3[64.Kh2 Qf4+ 65.Kh3 a1=Q 66.e7+ Kg7 67.e8=Q+ Kh6 68.Qd1! は引き分け]Qe5+ 65.Kh3 Qf5+ で引き分け)Kg7 63.e7 Qe2 64.Qf8+ Kh7 65.e8=Q Qxe8 66.Qxe8 a1=Q 67.Qe7+ で黒の方が引き分けを目指さなければならない。

62.Qa3+ Ke8 63.Kh3 Qd5 64.Qa6 Ke7 65.Qa7+ Kxe6

Y080201M.JPG

66.Qe3+ Kf7 67.Qa7+ Kg8 68.Qb8+ Kg7 69.Qa7+ Qf7 70.Qd4+ Kh7 71.Kh2? Qg7! 白投了

Y080201N.JPG

 万事休す。

******************************

(この号続く)

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)

About

2008年02月01日 10:56に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「一手一手の定跡習得(61)」です。

次の投稿は「実戦に役立つエンディング(69)」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。