第2章 展開の優位
第3局
本局のあなたは黒番で、指導パートナーは著者である。対戦相手はロンドンの著名な選手のグリーンである。この試合は1956年にボグノーで行なわれた。局面図までの手順は次のとおりである。
1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.g3 Bg7 4.Bg2 O-O 5.Nf3 d6 6.O-O Nc6 7.d5 Na5 8.Nd2 c6 9.Nc3 cxd5 10.cxd5
**********
10...Ng4
2点。白の狙いは 11.b4 Ng4 12.Bb2 で駒得を図ることである。しかしこの狙いは単に 10...Bd7(3点)でもっと経済的に防ぐことができた。もし 11.b4 なら 11...Rc8 で良い。私の手の狙いはナイトをe5の地点に据えることだったが完全に安定した地点とは言えなかった。
11.Rb1
**********
11...Bd7
2点。もちろん黒は白が h3 と一手かけてくれるまでナイトをe5の地点に動かさない。
12.h3
**********
12...Ne5
1点。
13.b3
**********
13...Qc8
3点。白の直前の手は見落としで、黒は早速それにつけ込む。
14.b4
**********
14.Nac4
4点。手の選択に迷った時は通常は不確かな手筋よりも永続的な陣形の優位を確保する手を選んだ方が良い。例えば 14...Qxc3(1点)15.bxa5 は 15...Qxa5 ならば 16.Rxb7 から 17.f4 の狙いで、また 15...Rab8 でも 16.Bb2 Qxa5 17.f4 で乱戦になる。
15.Kh2
**********
15...Nxd2
2点。強手の 15...Ne3(2点)16.fxe3 Qxc3 も落ち着いた 15...b5(2点)も良い手だった。黒の本譜の手は一本道の手順で7段目を占拠する構想を思い描いていた。
16.Qxd2
**********
16...Bf5
この手と 16...Nc4、16...Ng4+ は2点。この手に対して当然の 17.e4 は 17...Bxh3! ではまりとなる。
17.Ne4
**********
17...Qc4
3点。黒はc筋から進入すると同時に白に次の手で白枡ビショップを隠居させる。白がそれを嫌って 18.Qe3 と指せば黒は手順に白のaポーンが取れる。
18.f3
**********
18...Rfc8
2点。黒は状況によっては後でa列をこじ開けたくなるかもしれないのでこの手の方が 18...Rac8(1点)よりわずかに良い。
19.Rd1
**********
19...Qc2
2点。
20.Rb2
**********
20...Qa4
3点。黒の直接の狙いは 21...Nc4 である。それと共に ...Rc7、...Rac8、...Rc2 で7段目にまた殺到する準備でもある。
21.Qe1
**********
21...Rc7
2点。21...Nc4(2点)も同様に強い手である。
22.Nd2
**********
22...Bc2
2点。もちろん白の直前の手はポカである。しかしいずれにしても白の形勢は非常に困難な状況だった。
23.Nb3
**********
23...Bxd1
1点。
24.Qxd1
**********
24...Rac8
3点。25...Rxc1 を狙っていて 24...Qxb4(1点)よりも強い手である。
25.Rd2
**********
25...Qxb4
1点。
26.h4
**********
26...a5
4点。白はさらなる戦力損が避けられなくなった。
27.a3
**********
27...Qb6
2点。27...Qb5 は 28.Nd4 で白が少し長く抵抗を続けることができるので1点。
28.a4
**********
28...Rc3
4点。
29.Bh3
**********
29...R8c7
2点。
30.f4
**********
30...Qxb3
黒がさらに駒得を重ねる(1点)。
白投了
診断 白の苦戦は浮き駒(13手目)の危険性に十分な注意を払わなかったことに起因している。多くの試合がこの種の戦術的なポカで失われる。このような敗戦を失くすには手を指す前にいつも盤面全体を見渡して(a)現在の局面と(b)自分の指した後の局面に何か見落としがないか注意する必要がある。罠や初歩的な見落としに引っ掛かり易い人にはこのアドバイスをいくら強調してもし過ぎることはない。
この試合の二つ目の要点は黒が永続性のある戦略的な優勢を保ち、白の反撃を招くような(黒の14手目)訳の分からない戦いを避けたことである。そこであなたが本譜と違う手を選んだなら指し方の方針に整合性を欠き目に映った手に飛び付くからかもしれない。