******************************
第1部 開放型
第1章 ジュオコ・ピアノ
第20局
白 チゴーリン
黒 タラシュ
1902年、モンテ・カルロ
キング翼の攻撃を企図し気の付き難い狙いと必要ならば捨て駒を織り交ぜて勝利を飾るのは偉大なマスターの資質というべきものである。
本局はそのような攻撃の見事な実例である。
1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.Nc3 Nf6
この戦型は「イタリア4ナイト試合」と呼ばれている。
5.d3 d6 6.Be3
これは堅実な手である。
6...Bb6
6...Bxe3 7.fxe3 とビショップを交換すると二重ポーンにもかかわらず白の中原が引き締まりf列も白が使えるようになるので本譜の手の方が良い。
7.Qd2
クイーンはこの位置が良い。7.Qe2 は 7...Bg4 とかかってこられるのが不快である。
7...Be6
7...O-O なら白には対称形の 8.O-O と好戦的な 8.O-O-O があるが選択は棋風の問題である。
8.Bb5
駒組を続けようとするならこの手に限る。8.Bb3 は 8...Bxb3 9.axb3 Bxe3 10.fxe3 d5 11.exd5 Nxd5 12.Nxd5 Qxd5 で局面の単純化を図られ互角の形勢となってしまう。
8...O-O 9.Bxc6 bxc6 10.d4 Ba5 11.Qd3 Qb8
白は狙われたbポーンを守る気がしない。12.Rb1 と守れば 12...Bxa2 だし 12.dxe5 は 12...Qxb2 と取られて受けに窮する。12.O-O-O とキャッスリングしながら守ると黒は 12...Bxc3 13.Qxc3 Nxe4 14.Qxc6 でなくもっと厳しく 12...Qb7 13.dxe5 dxe5 14.Nxe5 Rab8 で主導権を握る。
12.O-O Qxb2
このクイーンによるポーンのかすめ取りで白はさらにポーンを犠牲にして攻撃態勢を整えることができる。
13.Bd2 Bxc3 14.Bxc3 Qb5 15.dxe5
15...Bc4
この俗な駒得主義は良くなかった。15...Qxd3 16.cxd3 Nd7 が簡明で白は優勢でもほんのわずかの差でしかなかった。
16.Qe3 Ng4 17.Qg5 Nxe5 18.Nd4
縦方向からの攻撃のために駒を温存した。18.Nxe5 は 18...f6 でたちまち黒が優勢になる。
18...f6 19.Qg3 Qa6 20.Nf5 Ng6 21.h4
21...Be6
21...Bxf1 と交換得に飛びつくのは 22.Rxf1 Rf7 23.h5 で黒が危険過ぎる。
22.Nd4 Bd7 23.h5 Ne7 24.f4 c5 25.Nf3 Qc4 26.Nh4
直接的にはビショップを守り間接的にはeポーンも守っている(26...Qxe4 なら 27.Rae1 で黒の駒損になる)。[訳注 27...Nf5 で黒の勝勢のようです。]
26...Qe6
次に 27...Qg4 を意図している。
27.f5 Qf7 28.h6 Kh8 29.hxg7+ Qxg7
30.Qh2 Rf7 31.Rf3 Rg8 32.Raf1 Qg5 33.Bb2
筋を変えてビショップを働かせようという手である。
33...Bb5 34.Bc1 Qg4 35.Re1
35...Rgg7
難しい局勢の中で黒の選択の余地は限られている。しかるに白の方は態勢を良くする手が色々ある。黒は 35...Bc6 と指すのが良かった。
36.Bh6 Rg8 37.Bf4 Rfg7 38.Bh6 Rf7 39.Bd2 Bc6 40.Rf4
40...Qg5
40...Qg3 とぶつけるのは誤りで 41.Ng6+ Rxg6 42.fxg6 で白の交換得になる。
41.Rf2 Qh5 42.Rf3 Rg4
この反撃を狙う手は裏目に出た。
41.Rh3
ようやく決定的な駒の再編成が完了した。黒は 44.Ng6+ の狙いが受からない。
43...Rfg7
43...Kg8 とあらかじめチェックを避けても 44.Nf3 で黒クイーンが「詰み」になる。
44.Ng6+ hxg6 45.fxg6 黒投了
******************************