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「ヒカルのチェス」(56)

「Chess Life」2003年1月号 (3/4)

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 スターブリッジでの大活躍(続き)

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チェス一家のヒカル・ナカムラ

 コンチネンタル・オープンで優勝しGM3人を破り2766の実効レイティングをあげたのにこの14歳のIMの言うことにはこれまでの最高の成績ではないと言う。最初の(そしてまだ唯一の)GM基準を達成したバーミューダ・オープンでは4人のGMを破ったそうだ。

 ヒカルによれば本大会中の一局のアレックス・シャバロフ戦では序盤で圧倒しながらその後優勢を失い相手の時間切迫でやっと勝ったのだそうだ。他方最終戦のカミル・ミトン戦では優勢を維持し1時間も時間で勝っていたが引き分けにした。それで十分だった。

 この若いスターは義理の父親で著名なスニル・ウィーラマントリからチェスのコーチを受け、元公立学校教師で母親のキャロリン・ウィーラマントリから自宅学習を受けている。通常の学校のスケジュールの制約がないのでより多くの大会に参加することができるのである。しかし彼はコンチネンタル・オープンより一週間弱前に終了したU.S.オープンは見送っていた。明らかにこの休養と勉強が良い結果につながった。

 ヒカルはまだチェスのプロになりたいのかどうか確信がない。もっとも1年以内にGMの称号を取るようなことがあればそうなるかもしれないとは認めている。(半月後のサンフランシスコの大会で0.5点の差で二つ目のGM基準達成を逃がした。)彼はチェスを芸術というより「頭脳スポーツ」と考えている。そして戦術の方が好きである。

 5年前家族の中で注目のスターは兄のアスカ(現在16歳)だった。10歳でマスターになった弟に抜かれるのは面白くなかっただろうが二人の仲は良い。(アスカは昨年のU.S.ジュニア招待大会で弟と対局しなければならず負かされて残念な気持ちを味わった。)家族の中のもう1人のチェス選手についてはヒカルは義理の父を負かすことについてそうしたくない心境だったことを認めている。「でもIMになった時僕は迷いなく勝てると分かった。」

 スニルは後にヒカルの才能は必ずしも誰の目にも明らかだったわけではないと私に語ってくれた。1995年に家族でU.S.オープンに行った時スニルはアスカと自分の対局に集中するためにヒカルを自由対局室に置いていた。その部屋でオスカー・タンから戦術についての即席の手ほどきを受けた後ヒカルの才能は目覚め始めた。それからまもなく彼は手に乗るコンピュータで一日に十何局もチェスを指すようになった。そして今日の彼を有らしめている能力と決断力の結合したものをしばしば見せ付けるようになった。例えば彼は棋譜を覚えておき先後を違えてコンピュータが指したのと同じ手順を試していた。しばらくしてスニルは息子が貴重な棋譜を自分に与えてくれていることに気がついた。あこがれていた世界記録のギネスブックの米国最年少マスターの認定でビナイ・バットの記録を破れなくてもヒカルの決意は強まるばかりだった。

 チェス以外好きなことはテニスと野球をすること(野球は見るのも好きでヤンキースのファンである)、シャーロック・ホームズなどの推理小説を読むこと、それからアクション映画を観ることである。音楽(チェスの能力と関連が深い)について尋ねるとトランペットを吹いていたとのことだった。テキサスとダラスの両大学の奨学金と高校卒業時には恐らくサムフォード給費がもらえるので何をしようと彼の前途は洋々である。父親兼コーチもそれを誇らしく見守っている。

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(この号続く)

訳注 自宅学習(home schooling)について小学館のランダムハウス英和大辞典第2版に次のような説明があります。『「教員」の有資格者が家庭に子供たちを集めて教育すること:反学校教育の一種。米国の教育者H.Holtが提唱したGWS(growing without school学校へ行かなくても成長する)運動と相まって広がりつつある。認定によって「学校卒業」とみなされるため、学校信仰に疑問を持った親たちが支持している。』

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2008年02月15日 11:29に投稿されたエントリーのページです。

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