« 一手一手の定跡習得(79) | メイン | 実戦に役立つエンディング(88) »

あなたの棋力診断(5)

第3章 大局観

第5局

 本局のあなたは黒番で、指導パートナーは世界で最も負かし難いことで定評のあるアルゼンチンのフリオ・ボルボチャンである。対戦相手はイディゴラスである。この試合は1956年にマル・デル・プラタで行なわれた。局面図までの手順は次のとおりである。

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.g3 Bg7 4.Bg2 O-O 5.Nf3 d6 6.O-O Nc6 7.b3 Rb8 8.Bb2 a6 9.d5 Na5 10.Nd4 Bd7 11.Nd2 c5 12.dxc6e.p. bxc6 13.Rb1

YRate05.JPG

**********

13...c5

 2点。この局面での黒の有利さはほんのわずかである。黒は中央列でのポーンの数では勝っているが弱点を作らずに前進させることはほとんどできない。白の陣形には特に弱点はない。もっとも黒はb列に大駒を重ねてaポーンを前進させて重圧をかけることはできるかもしれない。それでも白が建設的な作戦を見つけることは非常に難しい。それは黒が中原をしっかり押さえ込んでいるために白が両翼で主導権を発揮する見込みは非常に小さくなっているからである。13...c5 は黒の中原の押さえ込みを強化する。13...e5 は 14.N4f3 でdポーンが弱くなるので0点である。

14.Nc2

**********

14...Qc8

 2点。黒がb列で行動を起こすには白の白枡ビショップを交換で消すことが必要である。他に考えられる手は 14...Bc6 と 14...Nc6 だが少し根拠に欠ける。

15.Ne3

**********

15...Nc6

 2点。すぐに 15...Bh3 と交換を挑むのは 16.Bxf6 Bxf6 17.Nd5 がかなり厄介なので0点。それで黒はナイトを中央に引き戻してeポーンに紐をつけた。

16.Nd5

**********

16...Nxd5

 1点。

17.cxd5

**********

17...Ne5

 2点。17...Nd4(1点)は 18.e3 又は 18.Nf3 ですぐに中央の位置から追い払われるので本譜の手の方が少し良い。ポカの 17...Bxb2? は 18.dxc6 で駒損になるので6点減点。17...Ne5 に対して 18.f4 は 18...Ng4 で明らかに白が悪い。

18.Qc2

**********

18...Bh3

 1点。

19.Nc4

**********

19...Bxg2

 1点。

20.Kxg2

**********

20...Nxc4

 1点。この交換も必要である。20...Nd7(0点)は白のナイトがあまりに好位置だし、放っておくと 21.Nxe5 で二重ポーンと孤立ポーンができてしまう。

21.bxc4

**********

21...Bxb2

 1点。

22.Rxb2

**********

22...Rxb2

 2点。他の手ならば白は 23.Rfb1 でb列を支配し有利を勝ち取る。

23.Qxb2

**********

23...Qg4

 2点。駒交換にもかかわらず黒が優勢を保っている理由がはっきりする。このようなポーンの陣形はキングズ・インディアン防御などの序盤で黒が ...c5 と突いた型からよく生じる。白陣の弱点は連鎖ポーンの土台のc4が攻撃を受け易いことにある。これに反し黒の連鎖ポーンの土台のe7ははるかに守るのが容易である。ぱっとしない 23...Qc7 と 23...Qb8 は 24.Rb1 とされるので1点減点である。

24.Qc2

**********

24...Rb8

 1点。

25.e4

**********

25...a5

 3点。この手の狙いは 26...a4 27.Qxa4(取らないと 27...a3)Qxe4+ から ...Rb4 でポーン得することである。

26.h3

**********

26...Qh5

 3点。今度の狙いは 27...a4 28.Qxa4 Qe2 である。

27.f3

**********

27...Qe5

 2点。ついに白はルーク交換に追い込まれた。しかしクイーン+ポーンのエンディングでも黒は問題を抱えている。

28.Rb1

**********

28...Rxb1

 1点。

29...Qxb1

**********

29...a4

 3点。白は黒の作戦を妨げることはできない。例えば 30.a3 なら 30...Qc3 31.Qa2 Qb3 である。

30.Qc2

**********

30...a3

 1点。

31.Qe2

**********

31...g5

 この手と 31...h5 に5点。クイーン翼では当面これ以上何もすることがない(31...Qb2 は 32.Kf2 なので0点)。そこで黒は反対翼で侵入口を作るつもりである。

32.Kf2

**********

32...h5

 1点。

33.Qd2

**********

33...h4

 2点。

34.gxh4

**********

34...gxh4

 1点。

35.Kf1

**********

35...Kf8

 2点。35...Qg3? は 36.Qg2 で黒が劣勢のポーン・エンディングになるので6点減点である。

36.Ke2

**********

36...Ke8

 2点。

37.Ke3

**********

37...f5

 2点。黒はポーン・エンディングに移行する前にできるだけ陣形上の優位を拡大させておくつもりである。

38.Qc2

**********

38.Kf7

 この手と 38...f4+ に2点。

39.Qd3

**********

39...f4+

 1点。

40.Kf2

**********

40...Qb2+

 1点。白投了。この後の想定手順は 41.Qe2 Kf6 42.Kf1 Ke5 43.Qd3 Qa1+ 44.Ke2 Qxa2+ から 45...Qb2 で黒が簡単に勝つ。

診断 強い選手でも黒で自在に指しこなすのは非常に難しいものである。しかし経験豊かなマスターになるとそのような場合でも少しずつ陣形上の優位を積み重ねていく。本局の成績が悪かった場合、そもそも黒が有利であることを十分認識できていなかった可能性がある。引き分けの試合が非常に多い人は、くみ取るべき教訓ははっきりしているだろう。

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)

About

2008年02月20日 15:30に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「一手一手の定跡習得(79)」です。

次の投稿は「実戦に役立つエンディング(88)」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。