第3章 クイーン・エンディング
3.3 クイーン対クイーン(+ポーン)(続き)
B クイーン対クイーン+ポーン
このエンディングは実戦的に難しいばかりでなく分析するのにも複雑過ぎる。通常は相手のクイーンによって両方のキングがチェックされる局面に至るので全ての変化を完全に分析するのは実際上不可能になる。従ってここでは一、二の具体的な例で説明できるような指針となる原則を示すに留める。
考えられる局面の可能性はあまりに多いので7段目にポーンがある局面だけを採り上げることにする。このように局面を絞っても本書程度の内容では完全に解明することが期待できないような複雑な局面も数多く存在する。
ポーンを持っている側はまれにしかその昇格に成功しなかったので長い間この種のエンディングは引き分けに終わるのが普通であると考えられてきた。それでもポーンがビショップ列にある場合だけ勝つ可能性があると考えられていた。しかし最近になって非常に多くの正確な分析により7段目にポーンのある局面のすべてで非常に勝つ可能性が高いことが示されてきた。ルーク列のポーンは例外に当たるがそれでも勝てる例のあることが発見されている。
このような局面で防御側と攻撃側の両者が直面する困難を示すために一、二の局面を特に掘り下げて説明することにする。これにより似たような局面で一般に適用できる勝つための幾つかの方策を特定できるであろう。
図94
この局面は1942年のアリョーヒン対シュトルツ戦で現れる可能性があった。攻撃側の中央列にポーンがある場合このような局面に到達する可能性は高いだろう。白キングはチェックを受けた時ポーンのどちら側へも逃げることができるので白の勝つ可能性は大きい。
白の手番ならば 1.Qc2+ Ka3(a5)2.Qc3+ の後 3.Kf8 ですぐに勝てるので、黒の手番で黒がどのように守るのかを調べてみよう。黒にはあまり多くの選択の余地がないので明らかな白の勝ちの局面になるまで分析することができる。
(A)
1...Qb3+
1...Qa7 は 2.Kf8 ですぐに黒の負けが確定する。1...Ka3 と 1...Qc7 はそれぞれ(B)と(C)で調べる。
2.Kf8
この手が最も簡明である。他に 2.Qe6 Qf3+ 3.Qf6 Qh5+(3...Qd5+ は 4.Kg7 Qg2+ 5.Kf8 で白の勝ち)4.Kg7 Qg4+ 5.Kf8 Qb4 6.Qa6+ Kb3 7.Qe6+ から 8.Kg8 でも白が勝つ。
2...Qb4
2...Qa3 は 3.Qd7+ から白にクイーンを交換される。
3.Qe5!
このような局面ではやたらにチェックを繰り返すよりも全てを含みに残した落ち着いた手の方がはるかに有効であることが多いことを覚えておくと良い。黒は手詰まりに陥っている。
3...Kb3
3...Qa3 は 4.Kg7 で白が勝つ。3...Ka3 は 4.Qa1+ から白にクイーンを交換される。
4.Qe6+ で白が勝つ。
5.Kg8 の後ポーンがクイーンに昇格する。
(B)
図94(再掲)
1...Ka3
この手の意味は白クイーンが中央の重要なd4又はe4の地点を先手で占めることのないようにしようというものである。
2.Qf4!
もちろん勝つ手段は他にもある。本譜の手は 3.Kf8 を狙っているので黒はクイーンを動かさなければならない。
2...Qa7
2...Qb3+ と 2...Qd7 はどちらも 3.Kf8 で黒が負ける。2...Qd5+ は 3.Kg7 Qg2+(3...Qb7 と 3...Qd7 も同じ)4.Kf8 で白が勝つ。
3.Ke6
3...Qa8
この手は絶対手である。3...Qb6(a6)+ には 4.Qd6+ がある。
4.Qd6+
4...Kb2
4...Ka4 には 5.Qd7+、4...Ka2(b3)には 5.Qd5+ がある。
5.Qe5+
5...Kc2(c1)
5...Ka2(b3)には 6.Qd5+ があり 5...Kb1 には 6.Qb5+ から 7.e8=Q がある。
6.Qc5+ で白が勝つ。
白はd5の地点でクイーンを交換できるか 7.Qb5+ からポーンをクイーンに昇格させることができる。
(C)
図94(再掲)
1...Qc7 2.Qe4+
白の狙いはクイーンをd4に置くことである。そうなれば Kf8 ですぐに勝てる。黒の手はこの白の狙いを防ぐものでなければならない。
2...Kb3
この手は絶対手である。2...Ka3 は 3.Qd4 でたちまち白の必勝形になる。4.Kf8 の狙いに対して 3...Qb7 と指しても 4.Qa1+ がある。2...Ka5(b5)は 3.Kf6 Qb6(d6)+ 4.Qe6! で黒はこれ以上チェックをかけるわけにいかない。
3.Qe3+
もちろん勝つ手段は他にもある。しかし本譜の手はこのようなエンディングで良く現れる重要な構想を含んでいるので学んでおく価値がある。
3...Kc2
3...Ka2 は 4.Kf6 で白が勝つ。3...Kc4 は 4.Qc1+ で黒クイーンが素抜かれる。黒キングのほかの動きは白クイーンがチェックでd4の地点に行ける。
4.Kg6
白キングは1段目へのはるかな帰還を開始する。黒はいくらチェックをかけてもこれを阻止できない。
4...Qc6+
4...Qd6+ は 5.Kg5 Qd5+ 6.Kh4! Qc4+(6...Qh1+ は 7.Kg3)7.Kg3 Qg8+ 8.Kf2 Qf7+ 9.Ke1 で本譜と同じになる。
5.Kg5 Qg2+ 6.Kf4
6...Qh2+
6...Qf1+ は 7.Kg3 でチェックが途切れる。
7.Kf3
7...Qh5+
7...Qh3(h1)+ は 8.Kf2 Qh2+ 9.Kf1 Qh1+ 10.Qg1! で本譜と同じになる。
8.Kg2
8...Qg6+
8...Qg4+ は 9.Kf1 Qd1+ 10.Qe1!、8...Qd5+ は 9.Kf1 Qh1+ 10.Qg1! で黒はこれ以上チェックをかけるとクイーンの交換を招いてしまう。10...Qh5 としても 11.Qf2+ Kd3 12.Qg3+ で白クイーンは結局はe8の地点への利きを得る。これこそが眼目の構想である。黒キングが2段目にいる時白キングは1段目まで後退する。黒からのチェックにはクイーンでさえぎって逆にチェックするのが白の狙いで黒のチェックは非常に制約を受けることになる。黒キングがb列にいる場合同じ手法は例えばa列でも明らかに成立する(白キングがa8、クイーンがa7、黒キングがb2)。
9.Kf1 Qe8
チェックはクイーンの交換につながる。
10.Ke1! で白が勝つ。
この後黒がどう指そうと 11.Qe6 から 12.Qd6 と 13.Qd8 を妨げることができない。
(この節続く)