第3章 大局観
第7局
本局のあなたは黒番で、指導パートナーはフランス系ポーランド人のマスターで現在は米国に住んでいるステファン・ポペルである。対戦相手はイギリスで最も有望な若手選手の1人であるムーアである。この試合は1955-56年にヘースティングズで開催された第2最高メジャー大会の1局である。局面図までの手順は次のとおりである。
1.d4 Nf6 2.Nf3 e6 3.c4 Bb4+ 4.Bd2 Qe7 5.e3 O-O 6.Bd3 Nc6 7.a3 Bxd2+ 8.Nbxd2 d6 9.O-O e5 10.d5 Nb8 11.e4
**********
11...Bg4
2点。このような閉鎖的な局面ではビショップ、特に白のそれはとりわけ利きに乏しい。だから黒は自分のナイトが黒枡のc5、d4及びf4を占める機会を増やすために自分のビショップを相手のナイトと交換して構わない。11...a5 と 11...c5 も良い手なので1点。
12.Qc2
**********
12.Nbd7
この手と 12...a5 は1点。
13.b4
**********
13...a5
1点。
14.Rfc1
**********
14...axb4
2点。a列を開けること自体には効果はない。だが黒は相手のクイーン翼を固定するための面白い作戦を立てている。それは数手で明らかになる。14...Rfc8 も2点。これも大局観に裏打ちされた手で ...Nf8-g6-f4 と ...c6 をもくろんでいる。
15.axb4
**********
15...c5
2点。この手に対する白の応手は定まっている。実際 16.bxc5 Nxc5 と 16.b5 Nb6 は白のビショップが非常に無力な駒になってしまう。
16.dxc6e.p.
**********
16...bxc6
1点。
17.Ne1
17.Rxa8 Rxa8 18.c5 の方が積極性があって良かった。
**********
17...c5
2点。これでクイーン翼を固定する黒の駒繰りは完了した。白に遠方パスポーンができるがこの局面ではあまり重要でない。それはこのポーンは長い間進むことができないからである。
18.b5
**********
18...Nb6
1点。
19.Nf1
**********
19...Qb7
3点。多目的の手である。Ra6 に備え、状況によりa列でのルーク交換とクイーンによるa列の占拠を準備し、白のeポーンをにらんでいる。
20.Ne3
**********
20...g6
2点。20...Be6(1点)21.Nf5 Bxf5 22.exf5 でも黒が優勢であるが、白のeポーンを移動させない方が理にかなっている。
21.Nxg4
**********
21...Nxg4
1点。
22.Be2
**********
22...Nf6
2点。22...f5 は0点。この手では 23.exf5 gxf5 24.Qd2 から Bf3 の狙いで白の無力なビショップが息を吹き返す。
23.Bf3
**********
23...Rxa1
1点。この局面での白のビショップのように戦略的に無能な駒をかかえていることによる不利益は駒交換によって際立ってくるのが普通である。
24.Rxa1
**********
24...Ra8
1点。
25.Rd1
**********
25...Ne8
2点。黒はどの駒で当たりのdポーンを守るのが良いかということである。クイーンとルークは明らかにa列からの侵入に必要である。b6のナイトはbポーンをせき止めながら白のcポーンを攻撃している。このcポーンは黒の最初の攻撃目標となる。
26.Be2
**********
26...Ra4
2点。26...Ra5 と 26...Ra3 は1点。
27.f3
**********
27...Qa8
この手と 27...Qa7 は1点。
28.Rd2
**********
28...Qa5
2点。28...Ra1 は1点。
29.Kf2
**********
29...Kf8
1点。黒は当面陣容を向上させることができそうにないので、収局に向けて自分のキングを中央に差し向ける。
30.g3
**********
30...Ke7
1点。
31.Ng2
**********
31...Nxc4
4点。前手か前々手でもこの手が成立していたのでいずれかで選んでいたら4点。
32.Bxc4
**********
32...Rxc4
1点。
33.Qxc4
**********
33...Qxd2+
1点。
34.Kf1
**********
34...Qd1+
1点。35.Kf2 は 35...Qd4+ なので白はナイトを受けに使わなければならない。
35.Ne1
**********
35...Qb1
1点。
36.Qa4
**********
36...Nc7
2点。白投了。二つ目のポーンが落ちるので形勢は絶望的である。
診断 黒の素晴らしい大局観指法の主眼は白のビショップを無力にすることであった。黒は着実に(11,13,15及び18手目)黒枡の支配を強固にし、白のビショップを守勢一方に追いやり、その後a列から侵入した。多くの選手は内在する大局的な優位が局面にしっかり確立されるよりも前に攻撃しがちである。そういう人にとって本局はまたとない教訓となるであろう。