第4章 ルーク・エンディング
全てのエンディングの中でルーク・エンディングが最もよく現れることは疑いない。このためルーク・エンディングは恐らく最も良く研究され、ほとんどの例は実戦から取ったものである。それにもかかわらずエンディングの理論の中で最も難解な部分を成している。そして主要な専門家の中でもほんの僅かな者しか完全に理解していない。世界最高のグランドマスターでさえもルーク・エンディングの技法を習得するためには懸命に勉強しなければならなかった。カパブランカは精通の域に到達する以前のまだ若い頃に千局以上のルーク・エンディングを徹底的に研究したと言われている。
以上の観点からするとルーク・エンディングに熟達する重要性はいくら強調しても強調し過ぎることはないであろう。クイーン・エンディングのように可能性は広大無辺である。しかしルーク・エンディングの場合は分類と評価はもっと容易である。以降の節では基本的な局面を選りすぐって採り上げることにする。
4.1 ルーク対ポーン
ルークは通常は1ポーンに勝つ。しかし例外も多い。特にキングが素早く駆けつけられずルークが単独でポーンを止めなければならない時は特にそうである。時にはポーンがルークより強力なこともある。その古典的な例から始めよう。
図113
サーベドラ、1895年
この局面は1895年の実戦に現われ引き分けに終わった。対局後サーベドラは次のような卓越した着想で白が勝てることを指摘した。
1.c7 Rd6+
ルークがd8又はc5の地点に行けないのでこの手は必然である。以下の何手かはこのことから理解できる。
2.Kb5 Rd5+ 3.Kb4 Rd4+ 4.Kb3 Rd3+ 5.Kc2!
黒が 5...Rd1 とはできないのを見越してここで初めて白はキングをc列に移す。これで決まりのように見えるが黒はまだ終わりではない。
5...Rd4 6.c8=R!
6.c8=Q は 6...Rc4+! 7.Qxc4 でステイルメイトになってしまう。白から 7.Ra8# を見られているので黒の応手は限られている。
6...Ra4 7.Kb3
白は黒のルークを取れるか 8.Rc1# で詰ますことができる。古典的な美にいろどられた輝かしい局面であった。
(この節続く)