第3章 大局観
第10局
本局のあなたは黒番で、指導パートナーはアルゼンチンのグランドマスターのエルマン・ピルニクである。対戦相手はハンガリーのグランドマスターのラスロ・サボである。この試合は1955年にマル・デル・プラタで指された。局面図までの手順は次のとおりである。
1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.f3 O-O 6.Be3 Nbd7 7.Qd2 c5 8.Nge2 Re8 9.dxc5 Nxc5 10.Nd4 Ne6 11.Be2
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11...Nxd4
2点。『一般的に交換は凝り形を楽にしてくれる。』
12.Bxd4
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12...Be6
1点。攻撃的な 12...Qa5 も1点。
13.O-O
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13...Qa5
1点。13...Rc8 は0点。この手に対して白は浮いている黒のaポーンに付け込んで 14.Nd5! Bxd5 15.exd5 と指すことができる。これでクイーン翼でポーンが多数になり、同時に黒に ...a6 または ...b6 でポーンの形を弱めさせることができる。
14.Rfd1
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14...Rac8
2点。ここで 15.Nd5 ときても 15...Qxd2 16.Rxd2 Nxd5(黒のaポーンは今度は大丈夫である)17.exd5 Bxd4+ 18.Rxd4 Bd7 19.b4(19...a5 でポーンの進攻を止められるのを防ぐため)19...b6 20.a4! で、白は多数派ポーンを可動性のある状態に保てないから(多数そのものでなく可動性こそ重要な要因である)黒はこのエンディングを引き分けにできる。最後の 20.a4 の代わりに 20.a3 なら 20...a5 21.Rb1 Ra8 22.Kf2 axb4 23.axb4 Ra2 でやはり黒は適切に反撃できる。
15.b3
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15...a6
1点。厳密にはこの手は必要ない。黒は 15...Nd7 または 15...Nh5(いずれも2点)で黒枡での反撃を目指すのがより理にかなった指し方だった。
16.Qb2
この非中央化の手は序盤の「マロツィ縛り」(c4とe4のポーン対d6のポーン)の結果として白がここまで維持してきた優位の多くを失ってしまう。16.Qe3 が良い手だった。
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16...Nh5
2点。16...Nd7 は 17.Bxg7 Kxg7 18.Nd5+ から 19.b4(物量の始動)だし、他の手も 17.Nd5 を許すので明らかにこの手が良い。
17.Bxg7
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17...Nxg7
1点。
18.Rac1
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18...Rc7
2点。黒の狙いは ...Rec8 から ...b5 である。黒は 19.Nd5 を警戒する必要はなくなっている。なぜなら 19...Bxd5 20.exd5(20.Rxd5 の方が良いが危害は無い)20...Qc5+ から 21...Nf5 で困るのは白の方である。本譜の手以外でもかまわない。例えば 18...Nh5、18...Qe5、18...Qg5 である(全て黒枡での反撃を意図している。これは白の16手目の緩着がe3の地点で交わる二つの黒枡の斜筋を弱めてから急に黒が利用できるようになった)。これらの手はいずれも1点である。
19.Kh1
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19...Qe5
1点。19...Rec8 も1点。
20.Qa3?
これも非中央化の緩着である。20.Qd2 が正着だった。
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20...Nh5
1点。
21.Nd5
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21...Bxd5
1点。
22.Rxd5
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22...Qf4
2点。22...Qe6、22...Qf6 又は 22...Qg7(いずれも1点)23.Rcd1 よりも働きがある。
23.Rcd1
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23...Qh6
3点。この尋常でない手は見え見えの 24...Ng3+ から ...Nxe2 又は ...Qe3# を狙っている。
24.Kg1
これしかない。
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24...Qe3+
1点。
25.Kf1
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25...Nf4
1点。
26.R5d2
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26...Rc5
3点。黒の狙いは痛烈な 27...Nh3! 28.gxh3 Rg5 である。ここまでの黒の最後の4手は全て黒枡だけで活動していることに留意されたい。
27.Qb2
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27...Nxg2!
4点。27...Nh3 は 28.Qd4! で受かるので1点減点。
28.Rd5
28.Kxg2 は 28...Rg5+ 29.Kh3(29.Kh1 は 29...Qf2 30.Bd3 Qxf3+ 31.Rg2 Qxd1+)29...Qf2 30.f4 Qg2+ 31.Kh4 Qxh2+ 32.Kxg5 Qg3+ 33.Bg4 h6+ 34.Kxh6 Qh4+ であと1手で詰みになる。
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28...Rxd5
1点。
29.Rxd5
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29...e6
精妙なこの手は3点。29...Nf4(2点)又は 29...Nh4(1点)よりも速やかに勝ちが決まる。
30.Rxd6
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30...Qf4
1点。
31.Rd7
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31...Qxh2
1点。
32.Qf6
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32...Rf8
1点。
33.c5
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33...Nf4
2点。33...Qh1+ 34.Kf2 と 33...Ne3+ 34.Ke1 ははっきりした勝ち筋はない。
34.Bc4
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34...Qg2+
1点。34...Qh3+ 35.Kf2 Qg2+ 36.Ke3 は勝ちが難しくなるので0点。
35.Ke1
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35...Qxf3
1点。
36.Qd4
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36...h5
3点。前進あるのみ!このポーンをさえぎるものはない。
37.Rxb7
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37...h4
1点。
38.Qe5
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38...Rd8
5点。急転直下の終局となった(38...h3 は1点のみ)。39.Rb8(他の手なら 39...Rd1# で詰み)39...Ng2# で詰みなので白は投了した。
診断 本局は白ポーンがc4とe4、黒ポーンがd6にある時に出現する「マロツィ縛り」の局面の実地教育である。白の領域の優位は黒枡の弱点と引き換えに得られた。この弱点を十分に守らなかったのは黒の失敗で直接の敗因につながった。本局のあなたの得点が低かったら黒の攻撃がこれらの黒枡の弱点を利用したものであることを低く評価したのではなかったかと振り返って見るのが良いだろう。