第4章 ルーク・エンディング
4.6 ルーク対小駒
4.6.1 ルーク対ビショップ
この例でルーク+ポーン対ビショップの分析を終えることにする。一部の例外を除いてこの型のエンディングは白の勝ちであるが非常に精密な手順が必要な場合がある。ルーク対ビショップ+1ポーン又はビショップ+2ポーンのエンディングは通常は引き分けであるが駒の配置の状況によってはいずれかの勝ちになる場合もある。多くの可能性の中から両者が2ポーンを持ち実戦に役立つ局面を選んだ。
図221
ポーンは全て同じ翼にありパスポーンはない。そして黒は「正しい」ビショップを持っている。黒はポーンを黒枡に置いて正しい防御態勢を作りビショップは白キングの進入を防いでいる。問題はポーンを進めることにより白が何かできるのか、あるいは黒はハリネズミ陣を守り切ることができるのかということにある。
1.b4!
すぐに 1...a5! を防ぐことによってのみ白は勝つことができる。もし黒が先にこの手を指せば白がこの後どう指したらよいかは難しくなる。ビショップは対角筋に留まり追い払うことはできない。白キングがb5から進入しようとすれば黒はビショップをc6に置いてキングを1段目と2段目で往復させる。
白の唯一の可能性は 2.a4 Bf3 3.Rf7 により 3...Be4 に対して 4.b4 axb4 5.Rf4 とすることである。黒は危ないように見えても 5...Bd3! 6.Rxb4 Ka7 7.Kc6 Ka6 8.Rxb6+ Ka5 9.Rb3 Bg6!
で引き分けにできる。しかし黒はこのように進める必要もない。代わりに 3...Bg2 4.Rf2 Bh1 として 5.b4 に対して 5...axb4 6.Rb2 Kb7 7.Rxb4 Ka6 8.Rb5 Bf3 9.Kc7 Bd1 10.Rxb6+ Ka5
と指すことができる。だから白は何も勝つ可能性がないことになる。
1...Bf3
1...a5 なら 2.bxa5 bxa5 3.Kc5 a4 4.Kb6 Kc8 5.Rc7+ から 6.Rc4 で黒のポーンが取られる。
2.a4 Be4
3.a5!
3.b5 Bf3 は面白い局面になる。
ここで白が 4.Rg1 のような当たり障りのない手を指せば黒は抜け目なく 4...a5! と指すことができる。そして 5.bxa6e.p. と取ってくれば黒は 5...Ka7 から 6...Kxa6 と指す。白がポーンを取らなければ黒はビショップを対角筋に保ち白キングはbポーンを攻撃することができない。この着想は1971年モスクワでのシュテイン対バーン戦(ただし色が逆)で見られた。しかしたとえこうすることができなくても黒は 3.b5 の後防御が可能なはずである。白は何かするためには a5 と突かなければならず ...bxa5 の後白キングがこのポーンを取り返す。そして黒はビショプをc8-h3の筋に置き白キングがa6に侵入したらすぐに ...Bc8+ で追い返すようにする。白キングがc5に戻ったら黒のビショップも対角筋に戻る。白が何かできるかどうかは難しい。
3...bxa5 4.bxa5
4...a6
黒は遅かれ早かれこの手を指さなければならない。4...Bd3 は 5.Rg3 の後 6.a6 又は 6.Kc6 とされる。本譜の手の後局面は新たな段階をむかえ白は難解な状況に直面する。白は Rxa6 とルークを犠牲にして勝てるように黒キングをポーンから十分遠くへ追いやらなければならない。エネボルドセンによる次の分析はこれが可能であることを示した。
5.Kc5 Bd3 6.Kb6 Kc8 7.Rc7+
7...Kd8
これで白の第1段階が終わった。7...Kb8? は 8.Rd7 で黒の負けとなる。しかし白は黒キングをさらに遠くに追いやらなければならない。
8.Rc5
8...Be2
8...Bb5 はもちろん 9.Rxb5 でだめである。8...Ke7 は 9.Rd5 から 10.Kc7 で本譜より進行が早くなる。
9.Kb7 Kd7 10.Rd5+ Ke6 11.Rd2 Bc4
ビショップがどこへ逃げても大した違いはない。白は自分の構想を邪魔されずに進めることができる。
12.Kc7 Bb5 13.Rd4!
黒を手詰まりに追い込んで黒キングをさらに遠くへ追いやる。ここで 13...Ke5 とくれば 14.Rd6 で本譜と同じになる。
13...Bf1 14.Rd6+
14...Ke5
14...Ke7 は 15.Rd1 から 16.Re1+ で白が勝つ。
15.Kc6 Be2 16.Kc5 Bb5 17.Rb6
17...Be2
17...Bd3 なら 18.Rb3、17...Bf1 なら 18.Rb1 でやはりルークがd列に行ける。(訳注 「e列に行ける」の間違いのようです。)
18.Rb8
この手は 18.Rb2 Bd3 19.Rb3 より早い。本譜の手に対して 18...Bb5 は 19.Rxb5 で負ける。
18...Bd3 19.Re8+
19...Kf6
19...Kf5 なら 20.Kd4 でもっと早く勝つ。
20.Kd6
原訳注 20.Kb6 の後 21.Ra8 から 22.Rxa6 で本譜の手を8手短縮できる。
20...Kf5
20...Kf7 なら 21.Re7+ Kf8(21...Kf6 なら 22.Re3)22.Ke6 から 23.Kf6 で白が勝つ。
21.Re5+ Kf4 22.Kd5 Bb5 23.Kd4
23...Ba4
23...Bf1 なら 24.Re8 である。
24.Re6 Bb5 25.Rf6+ Kg5 26.Rf8
黒キングを十分遠くまで追いやった。もしまだ不十分ならば 26.Ke5 で同じ過程を繰り返していたところである。
26...Kg6 27.Kc5 Kg7 28.Ra8 Kf7 29.Kb6 Ke7 30.Rxa6
これで白の勝ちになる。
非常に長い手順であった。しかし黒キングを追う基本的な着想が分かれば理解するのは容易であろう。
(この節続く)