第3章 大局観
第11局
本局のあなたは黒番で、指導パートナーはブラジルのカルバーリョである。対戦相手はイタリアのプリマベーラである。この試合は1952年にヘルシンキで開催された国際団体戦で指された。局面図までの手順は次のとおりである。
1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 c5 4.cxd5 exd5 5.Nf3 Nc6 6.g3 c4 7.Bg2 Bb4 8.O-O Nge7 9.Bf4 O-O 10.Ne1
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10...Bg4
3点。この局面の最も大きな特徴はクイーン翼で黒ポーンが多数派で可動性もあるということである。クイーン翼で多数派の側はほとんど常に収局を目指すべきである。そうすれば敵キングがまだ反対翼にいるうちに側面のポーンからパスポーンを作ることができる。しかし黒のクイーン翼の多数派と引き換えに白は中原で多数派となっている。そしてもし白が e4 と突くことができれば黒のcポーンは孤立し容易に攻撃目標となる。黒は e4 を 10...f5(1点)で直接防ぐことができた。しかしそうすれば黒のdポーンが白の小駒によって攻撃にさらされる。例えば 11.Nc2 Ba5 12.Ne3 Be6 13.Bg5 という具合である。そこで黒は e4 を間接的な手段で防いだ。もし白が適切な準備無しにポーンを突けば自分のdポーンが非常に弱くなってしまう。
11.Nc2
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11...Ba5
1点。11...Bd6(1点減点)は 12.Nxd5 Nxd5 13.Bxd5 Bxf4 14.Bxc6 で良くない。
12.h3
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12...Be6
2点。12...Bf5(1点)の方が融通が利いて良さそうに見えるが 13.e4! Bxc3(13...dxe4 は 14.Ne3)14.bxc3 Bxe4 15.Bxe4 dxe4 16.Qe2 でポーンを取り返して白が良い。
13.Kh2
(13.e4 の方が良かったがそれでも黒は 13...f5! で局面を閉鎖的に保つ。)
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13...Qd7
2点。これでほぼ展開を完了し、d列における自分の立場を強化してさらに e4 突きを抑止している。直接的な ...f5 は1点。後に Bg5-Bxe7 で白がいくらか楽になる。
14.f3
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14...Rad8
2点。14...f5 は1点。
15.Qd2
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15...Ng6
2点。これはe7のナイトが釘付けにされないようにして ...f5 と指すためである。
16.Bg5
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16...f6
1点。一貫性のある継続手はもちろんこれしかない。
17.Be3
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17...f5
1点。
18.Bg5
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18...Rde8
2点。この位置は白のeポーン突きを依然としてくじくためである。しかし 18...Rb8(2点)でできるだけ早く ...b5 突きを狙うのも可能である。みずから釘付けに入る 18...Nce7 と 18...Nge7 は2点減点である。
19.e3
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19...b5
1点。釘付けのおかげで多数派ポーンの動員は特に準備が要らない。
20.a3
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20...a6
1点。2手前に ...Rdb8 と指していれば良かった理由はbポーンをさらに突き進めるためにこの準備が必要なかったことである。つまり 20...Bc7 と指してその後すぐに ...a5 と指すことができた。
21.Rae1
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21...h6
1点(前の手でこの手を選択していたらその手も1点)。黒はまず2ビショップ体勢にしてから次の段階に進む。
22.Bf4
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22...Nxf4
1点。
23.exf4?
これは黒にとって大助かりである。23.gxf4 がはるかに良かった。
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23...Bf7
3点。駒交換が進んで収局に近づくと遠方の多数ポーンがほとんど常に大切になってくる。それで黒は唯一の開通列で大駒の総交換をしむける。白はほとんど拒めない。さもないと黒はe列でクイーンとルークを2重または3重に重ねてついには敵陣に侵入してくる。23...Bb6(2点)も白をdポーンの守りに縛り付けて強い手である。23...b4? は1点減点である。理由は将来的にパスポーン作りを容易にするためにはポーンを連結させておくのが黒にとって非常に大切だからである。
24.Rxe8
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24...Rxe8
1点。
25.Re1
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25...Rxe1
この手と 25...Re7、25...Re6 はどれも1点。
26.Qxe1
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26...Qe6
1点。
27.Qxe6
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27...Bxe6
1点。
28.Kg1
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28...Bb6
2点。白のdポーンが弱いので黒は多数派ポーンを楽に進攻させることができる。これはつまり白が23手目でeポーンで取ったのが悪手であったことの現れである。
29.Ne2
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29...a5
1点。
30.Kf2
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30...b4
1点。
31.axb4
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31...axb4
1点。
32.Ke3
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32...Kf7
1点。
33.g4
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33...g6
1点。もちろん黒は 33...fxg4?(3点減点)で相手の二重ポーンを解消してやることはない。
34.h4
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34...h5
3点。これで最終的にキング翼のポーンが固定され、白の最後の希望である Bh3 から h5 で暴れる手を防いでいる。
35.g5
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35...Bc8!
3点。35...Ba5(1点)や 35...b3(36.Na3! Ba5 37.Nb1 で黒は敵陣突破が容易でなくなるので1点減点)よりも残りの小駒を働かせる方がずっと確実である。
36.Bf1
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36...Ba6
1点。
37.Kd2
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37...Ke6
1点。
38.Ke3
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38...Bb5
1点。前の手でこの手を選んでいたらそれも1点。
39.Bh3
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39...Ba4
1点。
40.Na1
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40...Bd1
2点。白の1ポーンが落ちる。
41.Bg2
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41...Bxe2
1点。
42.Kxe2
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42...b3
2点。すぐにポーンを取る(1点)よりもずっと強い手である。
42.Kd2
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43...Bxd4
1点。
白投了。
診断 基本的にこの試合から得られる教訓は簡単である。クイーン翼でポーンが多数で、それが可動性があり攻撃にさらされていなければ、自信を持って駒を交換して収局に向かうことができる。本局での成績が悪かったらこの原則の理解が不十分であることを示している。