第3章 大局観
第14局
本局のあなたは白番で、指導パートナーは世界ジュニア選手権者で既に一流のマスターと認められているソ連のボリス・スパスキーである。対戦相手はパウル・ケレスである。この試合は1957年の全ソ連選手権戦で指された。局面図までの手順は次のとおりである。
1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 Bb4 4.Bg5 h6 5.Bh4 c5 6.d5 d6 7.e3 e5 8.Qc2 Nbd7
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9.Nge2
2点。この戦型では局面が閉鎖的になり易く、それゆえにビショップよりもナイトの方が使い易い。だから黒は局面を閉鎖的に保とうと努め、白は相手の黒枡ビショップを交換させ斜筋を通して自分の双ビショップに活躍させようとする。もちろん白はその過程で二重ポーンをできるだけ避けようとする。その意味で 9.a3(0点)は 9...Bxc3+ 10.Qxc3? Nxd5! で間違いである。本譜の手は棋理にかなっている。
9...Nf8
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10.a3
1点。
10...Bxc3+
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11.Nxc3
1点。
11...Ng6
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12.Bg3
1点。12.Bxf6 はもちろん全然筋の通らない手である。
12...Nh5
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13.Bd3
1点。この手の後黒が 13...Nxg3 と白のビショップを取れば 14.hxg3 Ne7(14...Qf6 ならば 15.Nb5)15.f4 f6 16.Bg6+ となって陣形が乱れる。他の手は黒が安全に ...Nxg3 とできるので0点。
13...Ne7
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14.f4
1点。白はまだ前の手の変化になってもかまわない。14.Bh4 は 14...g5 15.Bg3 f5 から ...f4 を狙われるので良くない。
14...exf4
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15.exf4
1点。この手でも又は 15.Bxf4(1点)g5 16.Bg3 Nxg3 でもg列に二重ポーンができるがどちらの形の方が弱いのかは一概に言えない。
15...f5
このポーンは攻撃目標となるばかりでなく味方のビショップの利きも妨げている。15...O-O の方が良かった。
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16.O-O
2点。16.O-O-O(1点)はここではかなり危険である。黒は ...a6 から ...b5 ですぐに反撃に移れる。
16...Nxg3
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17.hxg3
1点。
17...O-O
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18.Rae1
この手と 18.Rfe1 は1点。18.Nd1 も1点で次に Ne3 で黒の弱いfポーンに圧力をかける。
18...Bd7
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19.Re2
この手と 19.Nd1、19.Rf2 は1点。
19...Kh8
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20.Rfe1
1点。
20...Ng8
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21.Nd1
1点。
21...Qf6
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22.Qc3
4点。素晴らしい判断である。弱いポーンのような陣形上の弱点や「不良」ビショップは収局で付け入るのが一番良い。理由は駒の交換が進むほど弱点が露わになり攻撃し易くなるからである。22.Ne3(1点)は 22...Rae8 で白の次の手が難しくなる。それから Qc3 とするのはクイーン交換されて白自身のポーンの形が乱れてしまう。
22...a6
22...Qf7 と交換を避ける方が良かった。もっとも 23.Ne3 の後自然な 23...Rae8 は 24.Qa5 で黒ポーンの形がさらに緩んでくる。
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23.Qxf6
1点。
23...Nxf6
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24.Ne3
1点。
24...Ng8
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25.b4
2点。「陽動作戦」の別の例で、現代のマスターの手法の特徴となっている。片翼で黒を弱点の守りに釘付けにした白は他翼の方に注意を向ける。25.Rb1(1点)と準備してから行くのは 25...a5 26.b4 axb4 で黒が素通しのa列から反撃してくるのであまり良くない。25.Kf2(1点)のようなどっちつかずの手は黒に同様の手でクイーン翼を守る余裕を与える。
25...Rac8
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26.Rb1
1点。次の狙いは bxc5 である。すぐに 26.bxc5(1点)と取っても良い。
26...b5
戦略的に押しまくられている黒は戦術で死中に活を求めようとする。
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27.cxb5
この手と 27.bxc5 は1点。
27...axb5
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28.bxc5
1点。これで黒はb列に二つ目の弱いポーンが残される。
28...Rxc5
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29.Reb2
2点。この手は良い手というだけでなく黒が 29...Rc3 で単純化により引き分けの局面を狙っているので必要な手でもある。本譜の手の後ならば白は 30.Rb3 で応えることができる。
29...Re8
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30.Bxf5
3点。30.Kf2(1点)も長引くが白が勝つ。しかし 30.Nxf5(2点減点)は 30...Rxd5 があるので悪手である。本譜の手に対して 30...Bxf5 ならば 31.Nxf5 Rxd5 32.Rxb5 Rxb5 33.Rxb5 で白のaポーンが勝負を決める。
30...Rxe3
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31.Bxd7
1点。
31...Rxg3
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32.Rxb5
1点。この手に対して 32...Rxb5 とくれば 33.Rxb5 Rxa3 34.Rb8 Kh7 35.Bf5+ g6 36.Bxg6+ Kxg6 37.Rxg8+ Kf7 38.Rd8 Ke7 39.Rh8 Rd3 40.Rxh6 Rxd5 となり、ルーク+2連結ポーン対ルーク+1ポーンの収局は白の勝ちである。
32...Rc2
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33.Bh3
2点。
33...Rxa3
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34.Rb8
1点。
34...Rxh3
負けを覚悟の乱暴である。34...Raa2 としても 35.Rd8 で白の勝ちは動かない。
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35.gxh3
1点。
35...Rd2
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36.Rd8
1点。この攻め合いを目指す手が最も確実である。白は黒ナイトを取る手を狙っている。
36...Kh7
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37.Rxd6
1点。
37...Ne7
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38.Rd7
3点。黒の交換損戦術の骨子はこの収局は白がちょっとでも安易な手を指せば簡単に引き分けになってしまうことにあった。例えば 38.Rb7? なら 38...Rxd5 39.Rxd5 Nxd5 で引き分けの形である。白は 38.Rb5(2点)でも勝てるが本譜の手のほうがすっきりしている。もし黒が 38...Nxd5 なら 39.f5!(39.Rb5 は 39...Rd1+ 40.Kf2 Ne3、39.Rbb7 も 39...Kg6 40.Rxg7+ Kf5 で黒が助かる可能性が大きい)39...Nc3 40.Rxd2 Nxb1 41.Rd3! で黒のナイトが動けず白キングによって簡単に取られてしまう。
38...Nf5
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39.Rb6
2点。この手も黒キングが ...Kg6-h5-h4 と逆襲してくる手段を防いだ正確な手である。
39...Ne3
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40.d6
2点。
40...Nf5
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41.Kf1
1点。41.Rd8 も同じく1点。
41...Nd4
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42.Ra7
1点。他には 42.Re7、42.Rd8、42.Rc7、42.Rdb7 もみな1点。
42...Ne6
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43.f5
1点。
43...Nc5
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43.f6
1点。
黒投了。
診断 本局は白の理詰めの勝利といえる。黒が自陣に弱点を作り出すと黒の駒はまずその守りに縛り付けられた。それから白は反対翼で勝利につながる敵陣突破を果たした。本局の成績が悪かったらあなたが戦略の主題とは無縁な手を指す傾向があることを示している。これを避けるには実際に手を指す前にそれが作戦に合った手かどうかを必ず確かめるのが良い。