第4章 ルーク・エンディング
4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)
B ルーク+ルーク列以外のポーン
(b)6段目のポーン
ポーンが6段目にあると黒の引き分けの可能性が高まる。黒キングはポーンから2列以上離れてはならず且つ狭い側にいなければならないが、黒ルークの位置はそれほど重要ではなくなる。
系統的にこの型のエンディングを調べる前に重要な基本形を見てみよう。
図154
タラシュ、1906年
この局面は引き分けで、三つの特徴がある。
1)ポーンが6段目にいる。
2)黒キングはポーンから1列離れている。
3)黒ルークはポーンから3列離れている。
1.Rd8
1.Kd6+ は 1...Kf8 又は 1...Kf6 2.Rf7+ Kg6 で黒が楽に引き分けにできる。他の手は本譜の手順に戻って来る。
1...Ra7+
1...Ra1? は 2.Ke8! Kf6 3.e7 Ke6 4.Rb8 Ra6 5.Kf8 で白が勝つ。しかし 1...Ra6 2.Rd6 Ra8! は可能である。
2.Rd7
他に適当な手がない。2.Ke8 は 2...Kf6 でたちまち引き分けだし 2.Kd6 は 2...Ra6+ 3.Ke5 Ra5+ 4.Rd5 Ra1 5.Kd6 Kf8 でやはり引き分けである。
2...Ra8
後で出てくるようにルークはa6以外のどこでも良い。
3.Rd6
油断のならない手で黒は正確に受けなければならない。白ルークがd列の他の枡に動けば 3...Ra7+ 4.Ke8 Kf6 で良いが、この手に対しては 5.e7+ でチェックがかかるので白の勝ちになる。
本譜の手の代わりに白はルークで手待ちをすることはできない。例えば 3.Rb7 Ra1 3...Kg6 でも良い。4.Ke8+ 4.Kd7 は 4...Ra8 5.e7 Kf7 で同じ局面になるし 4.Kd6+ は 4...Kf6 5.Rf7+ Kg6 で引き分け形である。4...Kf6 5.e7 Ra8+ 6.Kd7 Kf7 7.Rb1 Ra7+
で明らかに引き分けである。
3...Kg6!
唯一の受けの手である。3...Ra7+(3...Ra1 も同様)は 4.Ke8 Kf6 5.e7+、この手順中 4...Ra8+ なら 5.Rd8、および 3...Rb8 は 4.Rd8 Rb7+ 5.Kd6 Rb6+ 6.Kd7! Rb7+(6...Kf6 は 7.Rf8+ から 8.e7)7.Kc6 でいずれも白の勝ちとなる。
4.Rd7
4.Kd7 なら 4...Kf6、4.Rd8(d1)なら 4...Ra7+ 5.Ke8 Kf6 で白は何も進展が図れない。
4...Kg7 5.Rc7 Ra1 6.Rd7 [訳注 実戦ならば 4...Kg7 の時点で同形三復により引き分けです。]
6...Ra2
この手は黒ルークがa8に戻る必要がないことを示すためのものである。ただし 6...Ra6? だけはだめで 7.Ke8+ Kf6 8.e7 Ke6 9.Kf8! で黒ルークがf列でチェックをかけることができないので黒の負けとなる。
7.Ke8+
白が 7.Rd6 で次の 8.Ke8 を狙ってきた場合の黒の唯一の受けは 7...Ra8! である。
7...Kf6 8.e7 Ke6!
9.Kf8
どうやっても白は勝てない。9.Rd1 は 9...Ra8+ 10.Rd8 Ra7 で何にもならない。
9...Rf2+ 10.Ke8 Ra2 1/2 - 1/2
(この節続く)
訳注 2006年11月にモスクワで開催されたタリ記念大会のアロニアン対カールセン戦で図154の局面になりました。棋譜は http://www.chessgames.com/perl/chessgame?gid=1437592 で見られます。アロニアンが 73.Rd6 と指した時カールセンは 73...Ra7+ と間違えアロニアンが 74.Ke8 と指した時カールセンが投了しました。あのカールセンが基本的なエンディングを間違えたということで大変話題になりました。