第4章 攻め方
第15局
本局のあなたは白番で、指導パートナーは元世界選手権者のマックス・エイベ博士である。対戦相手はイタリアのマスターのネストレルである。この試合は1956年のレンツァハイデ(スイス)団体戦大会で指された。局面図までの手順は次のとおりである。
1.d4 Nf6 2.c4 d6 3.g3 Nbd7 4.Bg2 e5 5.Nf3 c6 6.O-O Be7 7.Nc3 O-O 8.Qc2 Qc7 9.b3 Re8 10.Bb2 Nf8
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11.c5
5点。この意表のポーン突きで数手後には中原が白の優位に変わる。理にかなったゆっくりした手は 11.e4、11.Rfd1、11.Rad1 である(それぞれ2点)。しかし 11.dxe5 は0点である。キング翼インディアン防御と古インディアン防御から通常現れるこのような局面の中原での単純なポーン交換はすぐに互角の形勢に至ってしまうことが経験によって知られている。
11...Ng6
11...dxc5 は 12.dxe5 N6d7 13.Ne4 Ng6 14.Qc3 Bf8 15.Nd6! となる。一方 11...exd4 に対してエイベ博士の用意していた手は 12.cxd6 Qxd6 13.Rad1 c5 14.e3 で、有利な態勢でポーンを取り返せる。
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12.cxd6
1点。
12...Bxd6
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13.Rac1
2点。最強の手である。覚えておいた方が良い軽い手筋の 14.Nb5! で双ビショップ体勢を得ることと同時に局面を開放させる狙いをもっている。
13...Qe7
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14.dxe5
1点。今取らないと黒の 14...e4 による反撃が厳しくなる。
14...Nxe5
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15.Nxe5
1点。
15...Bxe5
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16.e4
3点。16...Bxc3 は 17.Qxc3 で詰みの狙いがあるので黒はポーンを取れない。この局面の特徴はお互いの多数派ポーンの価値にある。黒はクイーン翼で3対2の優位にある。経験の教えるところによると他の条件が同じならばクイーン翼での多数派の方が有利である。しかしこの局面では二つの要因がこの判定よりも重要である。一つ目は白が半開放c列と白枡の対角筋を支配しているので黒が自分の多数派ポーンを活動させるのはきわめて難しい。二つ目は白の多数派ポーンが黒にとって非常に脅威である。即ち白は f4 から e5 と先手でポーンを突ける可能性があり、しかもこれらの多数派ポーンがb2のビショップから支援されている。実際エイベ博士はこの局面は戦略的に白の勝ちであると考えていた。
16...Bd7
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17.h3
2点。軽率な 17.f4 Bd4+ 18.Kh1 Ng4 は2点減点である。
17...h6
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18.f4
1点。
18...Bd4+
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19.Kh2
2点。gポーンとhポーンの守りにもなるので 19.Kh1(1点)よりわずかに良い。
19...Bb6
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20.e5
1点。
20...Nh7
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21.Rce1
2点。この地点が多数派ポーンをさらに f5 と進めて行く準備のための自然な場所である。21.Rcd1(1点)は必然性に欠ける。
21...Ba5
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22.f5
1点。
22...Bc7
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23.Na4
3点。23.f6(1点)は 23...gxf6 24.exf6 Qd6 で黒のビショップ群が白キングの方面を直射しているので黒に反撃を許す。しかし白は f6 突きを急ぐ必要はない(黒は ...f6 と突くと e6 と突き越されるので実際はできない)。だからまず自分の駒をもっと良い地点に移動させる。23.Nb5 と 23.Nd5(共に1点)は可能だが 23...cxb5(cxd5)24.Qxc7 Bc6 で白はそれほど有利でなくなる。
23...Rad8
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24.Nc5
2点。
24...Bc8
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25.Nd3
1点。これでナイトがキング翼での作戦に加わる用意が整った。
25...Qd7
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26.Rd1
2点。26.Be4(0点)は 26...Ng5 でだめである。本譜の手で白は 27.Nf4 Qxf5? 28.Be4 を狙っている。
26...Qe7
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27.h4
2点。白はまだ f6(1点)を急がない。白は局面が開放状態になった時に備えてまず黒の反撃の可能な芽を全部摘み取っておく。本譜の手は黒ナイトがg5に出て来れないようにした。
27...g6
この手は負けを早めた。しかし他の手ならば白は 28.Qc1 でh6のポーンを狙って f6 突きをもっと強力にする。
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28.fxg6
2点。28.e6(2点減点)は 28...Qxh4+! がある。
28...fxg6
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29.Nf4
2点。
29...Bf5
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30.Qc4+
2点。これで白の1ポーン得になる。30...Qf7 は 31.e6 Bxe6 32.Qc3 で白の勝ちである。30...Kg7 は 31.e6+ Nf6 32.Nh5+ gxh5 33.Rxf5! Rf8 34.Rdf1 である。この手順中 31...Kg8 なら 32.Rd7 Rxd7 33.exd7+ がひどい。
30...Be6
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31.Nxg6
4点。31...Bxc4 なら 32.Nxe7+ Rxe7 33.Rxd8+ Bxd8 34.bxc4 で白が収局で勝つ。
31...Qg7
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32.Rxd8
4点。32.Qc2 は3点。本譜の手は 32...Bxc4 ならば 33.Rxe8+ で良い。
32...Bxd8
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33.Qc2
1点。
33...Bc7
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34.Nf4
2点。狙いは Nxe6 と Nh5 である。
34...Bxe5
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35.Bxe5
1点。
黒投了。
黒の最後の手は見落としで 35...Qxe5 36.Qg6+ で少なくともルークを取られる。
診断 本局から得られる大きな教訓は相手が2ビショップのような駒を持っている場合は局面が開放状態になると急に威力を発揮するので攻撃は入念に準備しなければいけないということである。あなたが白の17,23,24,27,28手目でもっと明白で強制的な手を選んでいたらそれは攻撃をあせって十分な準備を怠るからかもしれない。白の30,31,32手目で間違えたらその局面で戦術的な手の可能性や決め手となるような手筋が存在するかどうか全力で読んでみるようにしなければならない。