第4章 ルーク・エンディング
4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)
B ルーク+ルーク列以外のポーン
(c)2段目から6段目までのポーン
ポーンがもっと後ろにいればそれに従って黒の引き分けの可能性も増してくる。全ての可能な局面について系統的に分析するのはその材料があまりに多過ぎて本書では手に負えなくなるので行なわない。覚えておくべき要点は黒はこれまで紹介してきた受けの手段をそのまま使うということで成功する可能性も高まる。
しかし5段目のポーンの場合は新たな状況が発生する。それは黒キングがポーンの昇格枡を占めている又はそれを狙うということである。この点において図162は実戦的に非常に重要である。
図162
クリングとホルビッツ、1851年
この局面は1世紀以上も前に研究され重要な受けの手段があることが発見された。まず白の手番でどのようにして勝ちになるのかから見ていこう。
1.Kc7!
勝つにはこの手しかない。1.Ra8 は 1...Rd2 2.Kc6 Ke7! で引き分けになる。この手段は黒の手番から始まる分析のところで出てくる。すぐに 1.Kc6 とするのも 1...Ke7 2.Rd7+ Ke8 でだめである。
1...Ra1
1...Rc1+ は 2.Kd7 Ra1 3.Rc8 から 4.d6 で図161のように白が勝つ。
2.Rb8!
既に図161で説明したように 2.d6? は 2...Ra7+ 3.Kb6 Ra1 で引き分けになる。
2...Ra7+ 3.Rb7 Ra8
4.Kd7!
4.d6? は 4...Ke6 5.d7 Ke7 で引き分けになってしまう。本譜の手に対して黒は手待ちするしかない。
4...Kf6 5.d6 Kf7
6.Rb1
ここでは多くの道がローマに通じている。クリングとホルビッツの示した手順は 6.Rc7 Kf6 7.Rc1 Ra7+ 8.Kc6 Ra6+ 9.Kc7 Ra4 10.Rd1 である。レベンフィッシュとスミスロフは 6.Kc6+ Ke8(6...Kf6 なら 7.Re7)7.Kc7 Kf7 8.Rb8 Ra7+ 9.Kb6 を推奨した。しかし本譜の手が最も論理的と思われる。
6...Ra7+
7.Kc8
又は 7.Kc6 Ra6+ 8.Kc7 Ra7+ 9.Rb7 Ra8 10.Rb8 で白の勝ちとなる。
7...Ke6 8.d7 Ra8+ 9.Kb7 Rd8 10.Kc6
これで白の容易な勝ちである。
この勝つ手順には何も目新しいところはない。しかし黒の手番で引き分けにする手順は興味深く参考になる。
図162(再掲)
1...Ra1!
この手は 2.Kc7 を防ぐためである。図161の分析で見たように白は黒ルークの横からのチェックを許すことができない。
2.Rc8
これで黒の負けのように見える。2...Ra6+ なら 3.Kd7 Ra7+ 4.Rc7 で前に示したように白の勝ちになる。他の手なら Kd7 から d6 の狙いに受けがないように見える。
2...Rd1!
これが解答である。白ルークがd8から去ったので黒ルークはすぐにd列に戻り白ポーンの前進を防ぐ。単純だが大変効果的な手で、もっと複雑な局面でもよく現れるので記憶しておく価値がある。
3.Rc2
黒の手の意味は 3.Kc6 なら 3...Ke7! で白ポーンを止めることにある。続いて 4.Rc7+ なら 4...Kd8 5.Rh7 Rd2! 6.Kd6 Kc8 7.Rh8+ Kb7 で前とあまり変わりない局面になる。
白は本譜の手の代わりに 3.Rc5 としても 3...Ke8 4.Kc7 Ke7 で局面の進展が図れない。
3...Ke8!
白から 4.Re2 で遮断されて負け形になる前にちょうどこの手が間に合った。
4.Ra2 Rd3
黒はキングを動かすと 5.Re2 とされるので動かせない。黒ルークがd列から離れると 5.Ra8+ から 6.Kd7 で白が勝つ。
5.Ra8+ Kf7
6.Ra7+
6.Kc6 なら 6...Ke7!、6.Rd8 なら 6...Ra3! で良い。
6...Ke8
白は何も進展を図ることができない。
(この節続く)