第4章 ルーク・エンディング
4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)
B ルーク+ルーク列以外のポーン
(c)2段目から6段目までのポーン
ポーンがナイト列にある場合に白が必ず勝てるためには黒キングがポーンから少なくとも3列離れていなければならない。これをわざわざ示す必要はないであろう。ただポーンが3段目にある場合は要領は同じであるが興味深い点もある。いろいろな可能性は極めて複雑で次の例に見られるように非常に正確な手順が要求される。
図170
グリゴリエフ、1937年
この局面を詳しく分析する前に要点を少し述べよう。白がキングを先に進めれば次のような手順をたどる。1.Kc3 Rc8+ 2.Kd4 ここで黒がチェックを続けるのは勧められない。例えば 2...Rd8+ 3.Kc5 Rc8+ 4.Kd6 Rb8 の後 5.Rf1+ で黒キングがさらに追われてしまう。そこで次のように進む。2...Rb8 3.Kc4 Rc8+ 4.Kd5 Rb8 白はポーンを守らなければならないが 5.Rb1 は 5...Ke7 で黒キングをクイーン翼に近づけさせてしまう。そして 5.Re3 Kf5 6.Rf3+ Kg4
は白ルークが追われてしまう。だから白はまずキングを進める準備をしなければならない。
上の分析から分かることは黒キングが比較的良い位置にいるということである。もし黒キングの位置がf8だったら 1.Re4 から 2.b4 で白が楽に勝つ。f4も良い位置でなく白が次のように勝つ。
1.Kc3 Rc8+ 2.Kd4 Rb8 2...Rd8+ は 3.Kc5 Rc8+ 4.Kd6 Rb8 5.Rb1! Ke4 6.b4 Kd3 7.b5 Kc2 8.Kc7! で白が勝つ。3.Rb1! 3.Kc4 はだめで 3...Rc8+ 4.Kd5 Rb8 5.Rb1 Ke3! 6.b4 Kd3 7.b5 Kc2 8.Rb4 Kc3 で引き分けになってしまう。3.Rf1+ も 3...Kg5 4.Rb1 Kf6 でだめである。3...Kf5 4.Kd5! 貴重な手が稼げる。4...Kf6 5.b4 Ke7 6.Kc6
から 7.b5 で白が楽に勝つ。
黒はキングがf5にいる時も次のように負ける。
1.Kc3 Rc8+ 2.Kd4 Rb8 3.Kc4 Rc8+ 4.Kd5 Rb8 4...Rd8+ は 5.Kc5 Rc8+ 6.Kd6 Rb8 7.Rb1 Ke4 8.b4 Kd3 9.b5 Kc2 10.Kc7! で白が勝つ。5.Rb1 これで前の変化と同じになる。
黒キングがf7の場合は本譜の中で分析する。黒キングがさらに上のほうに来て例えばf3にいる場合は次のように白が楽に勝つ。
1.Re6 Kf4 2.Ka3 Kf5 2...Ra8+ は 3.Kb4 Kf5 4.Rc6 Ke5 5.Kc5 から 6.b4 で白が勝つ。3.Ra6 Ke5 4.b4 Kd5 5.Ka4 Kc4 6.Rc6+ Kd5 7.b5 Ra8+ 8.Kb4
時々ではあるが黒キングをもう1列右側に追いやってから分析を続けなかった所がある。これが白の勝ちであることは後で示す。
これまで出てきた変化はf6の地点を除いてすべて黒キングの位置が悪いことを示している。このことは図170で黒キングが実質的に手詰まりの状態にいるという驚くべき結論に到達する。この事実に気付けば最も簡明な勝つ手順を見つけるのはもはや難しいことではない。
1.Re4
この手と次の手の目的は図170で白ルークがe3にいる局面にすることである。何でこれが必要かは後で分かる。最初の時に次の変化を示した。1.Kc3 Rc8+ 2.Kd4 Rb8 3.Kc4 Rc8+ 4.Kd5 Rb8 5.Rb1 Ke7
グリゴリエフはここから次の手順で引き分けになると考えていた。6.Kc6 Rb4! 7.Re1+ Kd8 7...Kf6 は 8.Re3 Rb8 9.Kc7 Rb4 10.Kd6! で本譜と同じになる。8.Re3 Rh4!
9.Re5? Rh6+ 10.Kb7 Rh7+ 11.Kb8 Kd7! 12.Rc5 Rh4 13.Rb5 Kc6
しかし後にコパイェフは次のような白の正しい手順を見つけた。
9.Rg3! Rh6+ 10.Kb7 Rh7+ 11.Kb8 Rh4 11...Kd7 なら 12.Rg6! Rh4 13.Rb6 から 14.b4 で白が勝つ。12.Rd3+ Ke7 13.Kc7 Rb4 14.Re3+ Kf6 15.Kd6
これで本譜と同じように白の勝ちとなる。
しかしこの手順は本譜よりもずっと手数がかかりしかも難解である。
1...Kf5
1...Kf7 は 2.Kc3 でポーンを b4 と突けるので白が勝つ。
2.Re3
2...Kf6
2...Kf4 は 3.Ke1 で既に分析した黒キングがf3、f4又はf5のいずれかの局面になる。本譜の手の局面は黒キングが元々f7にいた局面からも生じる。つまり 1.Re3 の後黒は 1...Kf6 と指すよりない。しかし白は 1.Re4 Kf6 2.Kc3 Rc8+ 3.Kd4 Rb8 4.Kc4 Rc8+ 5.Kd5 Rb8 6.b4 Kf5 7.Rh4
でも楽に勝てる。
本譜の 2...Kf6 の代わりに黒は 2...Rh8 3.b4 Kf4! 4.Re1 Rh3!
で白キングの進出を防ぐ巧妙な受けがある。それでも白は次のようなうまい手段で勝つことができる。5.Kc2! 5.b5? は 5...Rh5 でもちろんだめである。5.Re8 は 5...Kf5! 6.b5 Rd3! 7.b6 Rd6 8.Rb8 Ke6、5.Ka2 は 5...Rd3! 6.b5 Rd5 7.Rb1 Ke5 8.Ka3 Kd6 9.b6 Kc6 で引き分けになる。5...Kf5 手待ちの 5...Rg3 は 6.b5 Rg5 7.b6 Rc5+ 8.Kd3 Rb5 9.Re6 で黒が負ける。6.b5
6...Kf6 6...Rg3 は 7.b6 Rg7 8.Kc3 Rb7 9.Rb1 Ke6 10.Kc4 Kd7 11.Kb5 Kc8 12.Ka6 Rd7 13.Rh1 Rd8 14.Ka7 Rd7+ 15.Ka8 で白が勝つ。7.b6 Kf7 7...Rh8 は 8.Kc3 Rb8 9.Rb1 Ke6 10.Kc4 Kd7 11.Kb5 Kc8 12.Rc1+ で 12...Kb7 は2手詰みとなる。8.Rb1 Rh8 9.Kc3 Ke6 10.Kb4 Kd7 11.Rc1! Rc8 12.Rc5
これで白の勝ちとなる(12...Rc6 13.Kb5)。
この変化は黒の新しい防御法だけでなく白の巧妙な勝ち手順も含んでいる。注意すべきは黒の 4...Rh3! の後黒キングがf4でなくf5だったら
5.Kc2 Kf6 6.b5 Rh5 7.b6 Rc5+ 8.Kd3 Rb5 で白が 9.Re6 と指せないので引き分けとなることである。5.b5 も 5...Rd3! 6.Kc2 Rd5 7.Rb1 Rc5+ 8.Kd3 Ke5 9.b6 Rc8 で引き分けになる。それではここで本譜に戻る。
3.Kc3
白はここで 3.Re1 で図170の局面で黒の手番とすることができる。しかし既に知ったように黒は 3...Rh8! と別の防御法に変えることができる。これに対して白は 4.Re3 と応じるしかない。4.b4? は 4...Rh3! 5.Kc2 Kf7 6.b5 Rh5 7.Rb1 Ke6 で引き分けになってしまう。
3...Rc8+ 4.Kd4
4...Rb8
4...Rd8+ は 5.Kc5 Rc8+ で本譜に戻る。
5.Kc5 Rc8+ 6.Kd6!
6...Rb8
6...Rd8+ は 7.Kc7 Rd4 8.Kc6 Rh4 9.Kb5 Rh5+ 10.Ka4 でポーンが前進できる。
7.Rf3+!
これまでの手順はこの手を指すためであった。白ポーンがe3のルークで守られていたので白は 5.Kc5 から 6.Kd6 と指すことができ、この結果さらに黒キングを1列遠くへ追いやることができた。
7...Kg5
(この節続く)