「Schach Magazin 64」2009年6月号(2/2)
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ナカムラの2回目の優勝(続き)
セントルイスでの米国選手権戦
優勝を決めた最終戦の試合をお送りする。
2ナイト防御 [C58]
白 H.ナカムラ
黒 J.フリーデル
2009年米国選手権戦、セントルイス
1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.Ng5 d5 5.exd5
5...Na5
5...Nxd5 はナイトでf7に切り込まれる可能性があるので今日ではほとんど見られない。穏やかな変化の 6.d4 exd4(6...Nxd4 7.c3)7.O-O という進行もここでの白の勝率が80%に上るのでやはり見る気がしない。7...Be7 の後ナイトのf7切りは可能であるどころか次のように決め手となってしまう。8.Nxf7 Kxf7 9.Qh5+ g6 10.Bxd5+ Ke8 11.Qf3 Rf8 12.Bxc6+ bxc6 13.Qxc6+ Bd7 14.Qc4 黒は1ポーン損とキャッスリングができなくなったことにより敗勢である。
6.Bb5+ c6 7.dxc6 bxc6
ここで 8.Be2 と引くのが普通で、8...h6 の後ナイトをf3に戻せば ...e4 でまた追い立てられるかもしれない。また 9.Nh3 と引けば 9...Bxh3 で二重ポーンにさせられるかもしれない。これは見た目ほど悪い形ではない(それどころかシュタイニッツやフィッシャーのような世界チャンピオンが二重ポーン側を持って指したことがある)。しかし皆の好みに合う指し方でもない。そこでナカムラはあまり試みられていない手を採用した。
8.Bd3
ここで ...h6 とくるならもちろん 9.Ne4 である。
8...Be7 9.Nc3 O-O 10.O-O
Bd3 の利点についてはもう言ってある。この手には欠点もあり、それはdポーンの動きを邪魔していることである。だからクイーン翼ビショップは他のやり方で動かなければならない。黒は白が b2-b3 と突くことを期待して次の手を指した。
10...Rb8
11.b3 なら 11...c5 12.Bb2 c4! の意図である。ナカムラはそれを見抜いて次の手を指した。
11.h3!
通気孔を空けるのはいつも気持ちの良いものである。しかしこの手にはもっと良いことがある。それは 11...h6 12.Nf3 の後黒が ...Bg4 と指すことができず、例えば 12...Bd6 13.Re1 Re8 という具合にe5のポーンの守りに専念しなければならないということである。それは黒からすればあまり面白いことではない。なぜならポーンを1個くれてやったのに攻撃ではなく別のポーンの守りを行なわなければならないからである。しかしもっとうまい手は見つからなかった。解説者と黒にも分からないままである。そこでフリーデルは次のように指して・・・
11...c5 12.b3 Rb4 13.Re1 Bb7 14.Ba3
・・・ここでルークを敵陣に送り込んだがうまくいかなかった。
14...Rf4 15.g3 Rd4 16.Nf3
2個目のポーン(e5)が取られそうである。黒は初志貫徹を図った。
16...Rxd3 17.cxd3
この交換損は黒にとって十分でない。しかしこの後 17...Qd7! 18.Kh2(18.Nxe5 は 18...Qxh3 19.Nf3 Nh5 から ...Nxg3 の狙いで黒にかなりの主導権がある)18...Bc8 19.Ng1 Nc6 20.Na4 Nb4 となれば白陣に対する利きを最大限に利用できただろう。戦力損の代償として少なくとも双ビショップと敵の弱いポーンに対する攻撃など黒に有利な点がある。実戦ではそのようなものは何もない。
17...Qxd3? 18.Nxe5 Qf5 19.g4 Qf4 20.d4!
これこそ「達人の手」である。ポーンでもクイーンでも取れるので黒は予期していなかった。しかしよく読んでみると 20...cxd4?? は 21.Bc1! でクイーンが捕まってしまう。20...Qxd4 も 21.Qxd4 cxd4 22.Bxe7 でひどい駒損になる。だからd4のポーンはそのままにしておかなければならない。これらを回避しようとした手もうまくいかなかった。
20...Rd8 21.Qe2
ここでの黒の最善手は 21...Qh6 だが白はc5のポーンを取って2ポーン得になる。21...Qxd4 は 22.Nxf7! Qxc3 23.Nxd8 Bxd8 24.Rad1 Bc7 25.Rd3 とされるので黒は
21...Rxd4?
と指した。20手目の時にはクイーンが捕まるのを読んでいたのにここでは見落としていた。それとも内心勝負をあきらめていたのだろうか。
22.Bc1
この手を見て黒は白旗をかかげた。
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(この号終わり)