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チェス世界選手権争奪史(34)

第2章 ビルヘルム・シュタイニッツ(続き)

 この試合の後対局地はセントルイスに移動し2月3日から試合が再開された。今やシュタイニッツは20年前にアンデルセンと対局していた時とほとんど似た状況に立たされていた。アンデルセンとの番勝負では初めの方の地すべり的連敗を止めた後一進一退の戦いになった。しかし今回はそれとは違って世界選手権戦の歴史の中でも恐らく最も劇的な運命の逆転をまのあたりにした。第6局はシュタイニッツがルイロペスで長い捌きの末に勝った。第7局ではクイーン翼ギャンビットのシュタイニッツ戦法として今なお知られている戦法に後に取り入れられた構想がマスターの試合に登場した。

クイーン翼ギャンビット
白 ツーカートルト
黒 シュタイニッツ

1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Nf6 4.e3

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 第15局、第17局それに第19局ではツーカートルトがここで 4.Bg5 と指した。この手は後に米国選手のハリー・ピルズベリーによって流行戦法になった。

4...c5 5.Nf3 Nc6

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 これがいわゆるタラシュ防御の標準型である。もちろんその名前で知られるようになったのはずっと何年も後のことである。今日クラブの選手でもクイーンポーン布局について知っていることのほとんどは1886年では未知の局面だった。

6.a3

 この手は 6.cxd5 Nxd5 で準タラシュ防御という風変わりな名前を付けられ今日までよく研究された戦法を避けたい人たちによって時おり指されている(これに対して 6...exd5 と取るのは純正タラシュ防御である)。6.a3 の後本譜のようにクイーン翼ギャンビット受諾にもなるし 6...Be7 7.dxc5 で先後逆のクイーン翼ギャンビット受諾にもなる。

6...dxc4 7.Bxc4 cxd4

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 ここがシュタイニッツの当時としては新構想の局面である。白のdポーンを孤立させてせき止め、d5の地点に駒を居座らせ(できればナイト)、後にこのポーンを取ってしまう意図である。これ以降の100年近くの研究と実戦でもこの作戦が正当かどうか明らかにすることができなかった。孤立dポーンを持っている側は明らかな陣形上の弱点の代わりにそれらを埋め合わせるいくつかの見返りを得ている。それらは駒の動き易さ、ナイトのためのe5の橋頭堡、それに孤立ポーンの前進を中心としたいろいろな戦術の手段である。1930年代に後に世界チャンピオンになるミハイル・ボトビニクはそのような変化で白の可能性を実証しいくつかの傑作を残した。また1969年のボリス・スパスキー対チグラン・ペトロシアンの世界選手権戦ではスパスキーが黒にも孤立dポーンに動的な手段があることを示した。

8.exd4 Be7 9.O-O O-O

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 この局面は現代ではニムゾインディアン防御の手順からも生じることがある。白はここですぐに 10.Qd3! と指すべきで、その後 Bg5、Rad1、Rfe1 と進めてやや優勢である。g5のビショップは眼目のd5突きとからめて戦術的手段を秘めている。これに対してe3ではe列の邪魔になるだけである。

10.Be3? Bd7 11.Qd3

 ここでの白の最善手は 11.d5 で、孤立ポーンを解消すれば互角の局面になる。

11...Rc8 12.Rac1

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 白のルークは前述のように本来d1とe1に配置すべきである。本局におけるツーカートルトの指し手を評価する際には、頼りにすべき前例の知識がないまま彼が非常に難しい戦術上の問題に直面していたことを思い起こすことが大切である。これに対して現代のマスターたちなら誰でもほとんど当然のことのように駒を正しい地点に配置するだろう。

12...Qa5 13.Ba2 Rfd8 14.Rfe1 Be8 15.Bb1 g6

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 白には攻撃手段がない。そこで黒は駒を白の孤立ポーンめがけて進ませることができる。黒は戦略的に既に勝負に勝ったと言ってもほとんど誇張ではない。

16.Qe2 Bf8 17.Red1 Bg7 18.Ba2 Ne7

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19.Qd2

 これはみえみえの 20.Nd5 だけが狙いの取るに足らない手である。19.Rd2 でd列にルークを重ねるか 19.Bg5 として 19...Nf5 に 20.d5! を用意する方が良かった。

19...Qa6! 20.Bg5 Nf5

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21.g4?

 ここで 21.d5 はもちろん白クイーンの不運な位置を利用して 21...Bc6 で応じられる。しかしエマーヌエール・ラスカー推奨のある意図-当ててみよ-を持った 21.Qe1 が本譜のかなり注意力散漫な手よりも良かった。

21...Nxd4 22.Nxd4 e5

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23.Nd5

 23.Qe2 は 23...exd4 24.Qxa6 bxa6 25.Nd5 Rxc1 26.Rxc1 Rxd5 となって駒の取り合いから黒に強力なパスポーンが残るので本譜の方がまだましである。

23...Rxc1 24.Qxc1 exd4 25.Rxd4 Nxd5

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26.Rxd5

 26.Bxd8 は 26...Bxd4 27.Bxd5 Qe2 で黒が早く勝つ。

26...Rxd5 27.Bxd5 Qe2 28.h3

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28...h6

 本筋ではない 28...Bxb2 もだいぶ研究の対象にされた。以下は 29.Qc8 Qd1+ 30.Kh2 Be5+ 31.f4 Qd2+ 32.Kg3!-シュタイニッツ指摘の手-となって黒が勝てない。

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29.Bc4?

 ここは 29.Be3 が正着で(29.Bxh6? は 29...Bxh6 30.Qxh6 Qd1+ から 31...Qxd5 でビショップを取られて明らかに悪い)以下 29...Bxb2 30.Qb1 Kh7(31.Qxg6+ の狙いを防いだ)31.Bxb7 Bb5 32.Be4 となれば白の非常に困難な局面だがまだ戦う余地があった。本譜の手では負けが決まった。

29...Qf3 30.Qe3 Qd1+ 31.Kh2 Bc6 32.Be7 Be5+!

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33.f4 Bxf4+ 34.Qxf4 Qh1+ 35.Kg3 Qg1+ 白投了

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(この章続く)

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2009年09月19日 09:38に投稿されたエントリーのページです。

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