「Chess Life」2009年8月号(3/8)
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表紙特集
ヒカル!(続き)
カームスキーはシュールマンとジョシュ・フリーデルに引き分けに持ち込まれた後、第5回戦はファン待望のナカムラ戦で黒番だった。世界中の観戦者がこの試合を待っていた。この対戦はほぼ5年ぶりである。
英国で「Chess」誌を発行しているIMマルコム・ピーンは次のように述べている。「カームスキー対ナカムラ戦はどの試合も興味をそそられる棋風の対決である。英国では誰もがナカムラに感嘆していると思う。なぜなら80年代のいわゆる英国のチェスの爆発と呼ばれる時期に輩出した選手たちに少し似ているからだ。彼らの棋風は古典的な棋風には染まらずロシアチェス派と対極を成すようなものだった。これに対してカームスキーは従来の伝統的なチェスで育ち非常に「正統的」な指し方をする棋風である。」試合は期待にたがわず熱戦の末引き分けに終わった。
ナカムラ対カームスキー(第5回戦)
その日遅くナカムラが感想を語ってくれた。「二人ともそんなに研究してなかった。まずこちらが一種の反グリューンフェルトを指して彼を驚かせた。それから彼がいつもは指さない ...a6 を指してきた。だから裏のかき合いをしたようなものだった。彼よりはその戦型をよく知っていると思ったが実際は ...Be6 と ...Nbd7 の戦型はそんなによく分かっていなかった。黒はそれでもたぶん問題ないだろうがこちらは研究が行き届いていなかった。」
「最も実戦的だと思う手を指したがしょせん一局のチェスである。どちらにも心理的な駆け引きがあった。」
16.Rd1
「エミル[・ストフスキー]が序盤でe6のビショップを取るべきだったと考えていると聞かされた。それなのに Rd1 と f3 を指してひどい局面になった。」とナカムラが語ってくれた。彼の助手のクリス・リトルジョンは観戦席に座ってストフスキーの実況解説を聞いていた。「こちらの方が形勢が良いと思っていたがその後悪くなって最後にまたチャンスがあったと思う。」
16...Ng4 17.Bxg4 Bxg4 18.f3 Ne5 19.Bf2 Nc4 20.Nc6
20...Bxc3+ 21.bxc3 Qc7 22.Nb4 Be6 23.O-O Rfd8 24.Bd4
24...a5 25.Nd3 b4 26.Nf4 Qd7 27.Rc1 Na3 28.Qd2
の後ナカムラは自分のウェブサイトで 28...Nb5 はカームスキーがチャンスを逃がした手だと指摘し次のように書いている。「28...Bc4 と指していたら黒がかなり優勢だったろう。しかしガータを非難するわけにはいかない。なぜならリブカの好むこのような変化のほとんどは人間にとっては詰みの狙いが怖くてしかたがないのである。」
29.Bc5 Rd2 30.Qh4 f6 31.cxb4 axb4 32.Qh6 Rxa2
の後「自分の方に何か手があるような感じがしたが見つけることができなかった。あるいは何もないのかもしれない。しかし直感的に何かあるはずだと思った。33.Rd1 で勝ちにならないのは実に残念だった。」実際それは負けてしまう。[33.Rcd1 Qxd1 34.Nxe6 Qxf1+ 35.Kxf1 Rd1#]
「時間があまり残っていなかった。だから安全策で引き分けに持っていった。」
実況Chess.FMウェブキャストでストフスキーはこの戦型が現れる可能性が高いと言っていた。後でジェニファー・シャへードと私がこのことをヒカルに話すとにこりともしないで次のように皮肉った。「僕はほとんど何でも指すんだから彼は天才のようだ。確かにこれは長いこと指してなかった。最近グリューンフェルトに対しては、特にオリンピアードでも、他の誰とも[オニシュク、シュールマン、アコビアン]Rb1 と指していた。僕が長い間指さなかったことを考えれば僕が指しそうな最上位三つのうちの一つだと彼が考えたならばちょっと驚きだ。でも彼はでかした。ガータはよく研究していたから明らかにあの手はうまくいった。」
選手権戦までの何週間の間ナカムラの研究のほとんどはリトルジョンがしていたけれども、ナカムラにはライバルたちを詳細に研究する機会が豊富にあった。「しばらくの間彼らについての資料を溜め込んでいた。だから一晩で研究したわけではない。」
第5回戦が終わったところでナカムラが首位から半点離されていたがジェニファーと私は彼が早指しの優勝決定戦を望んでいるのか気になっていた。「そんなことはない」というのが断固たる返事だった。「すっきり優勝したい。同点1位ならそれでもよい。しかし本当に優勝決定戦にもつれ込まないで優勝したい。たぶん[早指しでは]自分が有利だろうが、それでも早指しでは何が起こるか分からない。」
首位のシュールマンとアコビアンから半点差で6選手がひしめき合っていた。「カームスキーかナカムラが連勝し始めるだろうか」とIMピーンがChess.FMの聴衆に語っていた。「しかしこのくらいの参加人数では遅かれ早かれお互い当たってしまうのもだ。」
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(この号続く)