第2章 ビルヘルム・シュタイニッツ(続き)
これで士気を鼓舞されたかのようにシュタイニッツは第14局も堂々と勝ち、チェスの歴史で最も劇的な巻き返しを成し遂げるかのように見えた。ここでスケジュールにより一週間の休みに入った。これは本来なら年長の選手にとって絶好の休養となるはずだった。しかしこの中断で恩恵を受けたのはラスカーの方だった。ラスカーは第15局を楽勝し対戦成績を8-4とリードした。第16局でシュタイニッツは布局と中盤戦の初めでしくじったがいつものように徹底抗戦し36手目の後で次の勝負どころの局面を迎えた。
ここでシュタイニッツは 37.Kg2? と指し 37...Rb2+ 38.Kg3 Rxb7 39.Bxb7 Ne2+ 40.Kf3 Nxc1 41.Kxe3 Nxa2
となって結局負けた。しかし 37.Rc7+ Kf6 38.Be4 Ne2+! 39.Kg2 Nxf4+ 40.Kf3 e2 41.Rc1
41...Nd5(41...Ke5? 42.Rb1!)42.Bxd5 exd5 43.Kxe2 Rxb7 44.Rc5 Rb2+ 45.Ke3 Rxa2 46.Rxd5
と指していれば白が引き分けにできたはずだった。
このような時に半点を逃がせば落胆も計り知れなかったに違いない。しかしそれでも巨匠はなおもあきらめず第17局に勝って盛り返した。しかしこれは彼の最後の勝ちどきとなった。1894年5月26日の第18局で52手でシュタイニッツが投了し世界選手権はエマーヌエル・ラスカーの手に渡った。(ツーカートルト戦での勝利から)9年間の君臨のあと次にまたタイトルが移動するのは27年後であった。
(この章終わり)