第3章 エマーヌエル・ラスカー(続き)
エマーヌエル・ラスカーはほぼ48年に渡ってチェスの大会に出場した。一流の競技会での試合のほとんどは現代のチェスが大きな発展を遂げていた時代だった。それにもかかわらず批評家たちは「彼はチェスの理論にほとんどか全く貢献しなかった」という点で一致していた(ウィリアム・ウインター著『チェスの王者たち』)。エーべ博士は『チェスの棋風の形成』という著書の「技術と型」という章にタラシュ、ピルズベリー、マーシャル、カパブランカと一緒にラスカーを含めている。その言わんとするところはシュタイニッツの後を継いだマスターたちは「既知の原則をほぼそのまま適用することだけを追求して」新しい原則を明確に打ちたてようとしなかったということである。もちろんこれが当てはまるのはチェスの原則が盤上のチェス駒同士の関係だけを問題にし、誤りを犯しがちな二人の人間によって不完全な理解とごく限られた時間で戦われる試合については何も言っていないことを認める場合だけである。シュタイニッツと、彼ほどではないが代表的な信奉者のタラシュはもっと抽象的な見方をしていた。そして既に見たようにシュタイニッツは理論的な原則にこだわるあまり誰もが驚くような実戦的な窮地に身を置いていた。これに反してラスカーは現存した最も実戦的な選手で、正しいチェスだけでなく勝つためのチェスの指し方を自分の実戦で何度も何度も実証した。
(この章続く)