第3章 エマーヌエル・ラスカー(続き)
2年前にもほとんど同じ大差の成績(8勝1敗8分)でタラシュがマーシャルに勝っていたのでこの結果はまったく予想できないわけではなかったがマーシャルの多くのファンには大きな失望だったに違いない。マーシャル自身はかなり冷静に受け止めていたようだった。この後も若いカパブランカに1勝8敗14分で負けているので彼の相次ぐ惨敗は周りの者を当惑させるのに値する。同様の一方的な結果(例えば1971年挑戦者決定番勝負でボビー・フィッシャーがマルク・タイマノフとベント・ラルセンに6-0で完封勝ち)の解明にも通じるものがあるかもしれない。マーシャル自身は次のように書いている。
『番勝負について言えばこの時期にいくつかの不運な結果をこうむった。誰もが知っているように番勝負よりも大会での結果の方が常に良かった。そしてそれは少しも不思議ではない。私はいつも新しい相手、新しい対局地、序盤での新手、目くるめく攻撃や反撃に魅了されていた。同じ相手とずっと戦うという陰うつな仕事は私の性に合わないのである。』[フランク・マーシャル著「私のチェス50年」]
(この章続く)