第3章 エマーヌエル・ラスカー(続き)
それどころか試合内容はつまらないどころではなかった。ほとんどの場合二人の強豪が相手の読みを出し抜こうとして死力を尽くし、もう少しのところで勝ちを奪えなかった。最初の4局はシュレヒターがほとんどの間主導権を維持していたが引き分けに終わった。第5局は今回はラスカーが攻めたがずっとまたしても引き分けに終わるように見えた。
ルイロペス
白 シュレヒター
黒 ラスカー
1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nf6 4.O-O d6 5.d4 Bd7 6.Nc3 Be7
7.Bg5(ここは 7.Re1 が決まりきったような手だがラスカーはサンクトペテルブルク大会で実戦の珍しい手を指したことがあった。)7...O-O(この手は不当な批判を受けてきた。前述の1909年サンクトペテルブルク大会のラスカー対コーン戦では 7...exd4 8.Nxd4 O-O 9.Bxc6 bxc6 10.Qd3 と進んで白が少し有利だった。)
8.dxe5(ここで 8.Bxc6 は 8...Bxc6 9.dxe5 dxe5! 10.Qxd8 Bxd8 11.Nxe5 Bxe4 12.Bxf6 Bxf6 13.Nd7 Bxc3 14.Nxf8 Bxb2
となって明らかに黒に交換損の代償がある。)8...Nxe5 9.Bxd7 Nxd7 10.Bxe7 Nxf3+ 11.Qxf3 Qxe7
12.Nd5 Qd8 13.Rad1 Re8 14.Rfe1 Nb6 15.Qc3 Nxd5
15.Rxd5(16.exd5 は半点に終わるといっても時期尚早でない。白陣の広さによるわずかな優位を生かそうとしても自滅までは行かなくとも自分の陣形を悪くするだけである。)16...Re6 17.Rd3 Qe7 18.Rg3 Rg6 19.Ree3 Re8 20.h3 Kf8 21.Rxg6 hxg6
22.Qb4 c6 23.Qa3 a6 24.Qb3 Rd8 25.c4 Rd7 26.Qd1 Qe5
27.Qg4 Ke8 28.Qe2 Kd8 29.Qd2 Kc7 30.a3 Re7 31.b4 b5!
(ここでは黒が少し優勢である。そして黒が勝ちを目指し始める。)32.cxb5 axb5 33.g3 g5 34.Kg2 Re8 35.Qd1 f6
36.Qb3 Qe6 37.Qd1 Rh8 38.g4 Qc4 39.a4
(白が傍観していれば黒はじっくりと陣形を強化し ...c5 でクイーン翼から敵陣突破を図ることができる。実戦のポーンの犠牲はまたとない好機で、両者にとって非常に難解な戦いになる。)39...Qxb4 40.axb5 Qxb5 41.Rb3 Qa6 42.Qd4 Re8
43.Rb1 Re5 44.Qb4 Qb5 45.Qe1 Qd3 46.Rb4 c5
47.Ra4 c4 48.Qa1 Qxe4+ 49.Kh2 Rb5
50.Qa2(50.Ra7+ は 50...Kd8 51.Rxg7 Qe5+ で黒勝ちの収局になる。)50...Qe5+ 51.Kg1 Qe1+ 52.Kh2 d5 53.Ra8 Qb4 54.Kg2
54...Qc5?(このポカが敗着となった。54...Rb7 なら白が2ポーン損を補えるかどうかまだ怪しかった。)55.Qa6 Rb8(55...Rb7 は 56.Qe6 で白が勝つ。黒は 55...c3!? でクイーンを取らせるのが実戦的に最も有望だった。)56.Ra7+ Kd8(56...Qxa7!?)57.Rxg7 Qb6 58.Qa3 Kc8 59.Qf8+ 黒投了
あと2手で詰む。
(この章続く)