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「ヒカルのチェス」(148)

「Chess Life」2009年10月号(1/1)

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2009年ワールドオープン

ジェリー・ハンケン

 今年のワールドオープンはこれまでのように7月4日の週末にかけてフィラデルフィア(立派なシェラトン・シティーセンター)で開催された。しかし今回は今までと変わったところもあった。オープン部門で98選手中37名がグランドマスターというように非常に上が厚かった。これは2400未満の部門に強豪が集まった結果だった。同点優勝は米国選手権者のGMヒカル・ナカムラと、3年連続で同点1位のロシアのGMエブゲニー・ナイェルだった。去年ナイェルは一発勝負の優勝決定戦を制したが今年は優勝決定戦ができなかった。台風の目のヒカルが来たのは金曜日で、忙しい3日コースで5試合中4½点をあげ、大西洋に発つ前に二日間しかいなかった。月曜日からスペインでの素晴らしいサンセバスティアン大会で対局する予定だったので、最後の2局を不戦の半点ずつにしてこのスケジュールで試合をするしかなかった。(時差ぼけには影響を受けなかったようで、初戦で元世界チャンピオンのカルポフを破り優勝決定戦の快速チェスでこの一流の大会に優勝した。何ということだ!)この大会でヒカルは二日目に世界レベルのGMイリヤ・スミリンと引き分け、第7回戦でナイェルを順当に破った。これがその試合である。

フランス防御 (C10)
白 GMエブゲニー・ナイェル (2714)
黒 GMヒカル・ナカムラ (2787)
ワールドオープン第7回戦、フィラデルフィア、2009年7月4日

 私の記憶によればこの試合は米国のチェスの中で傑作の部類の一つである。ヒカルが黒で対戦したのは去年まで2年連続ワールドオープンで優勝した相手だった。ヒカルは翌日の2試合を不戦にしてあるのでこれが最後の試合であることは分かっていた。そして「大金」を獲得する可能性を残すためには勝たなければならなかった。選んだ戦法は一種のカロカンで、クイーン翼にキャッスリングした。

 驚いたのはクイーン翼にキャッスリングして収局に勝つことができたことだった。米国チャンピオンが魔法をかけるところを見てみよう。

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nd2 dxe4 4.Nxe4 Bd7 5.Nf3 Bc6 6.Bd3 Nd7 7.O-O Bxe4

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 これが最初の大きな驚きである。ささやかな手得のために双ビショップを譲ってしまった。

8.Bxe4 c6 9.c4 Ngf6 10.Bc2 Qc7 11.Qe2 O-O-O

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 これが第2の驚きである。クイーン翼にキャッスリングした。

12.Rb1 h6 13.b4 g5 14.Rb3 g4 15.Nd2 h5

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16.c5

 どうしてd5の地点を敵のナイトに譲るのだろうか。私なら 16.b5 と指したい。

16...Nd5 17.Ne4 Nb8 18.Bg5 Be7

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 これまた驚きである。このビショップを交換すると白のナイトがd6の地点に跳び込める。

19.Bxe7 Nxe7 20.Nd6+ Rxd6!

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 これはずっと先まで見通した交換損である。私のスーパーコンピュータのリブカは白がプラス・オーバー・マイナスと判定している。ヒカルは読みだけでなく直感で指している。彼にはナイトの絶妙な連係が分かっている。

21.cxd6 Qxd6 22.Rd1 a6 23.a4 b5

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 これでキングに対する現実的な危険が鈍り、b4が弱点として固定される。

24.h4 Nd5 25.axb5 axb5 26.Be4 Nf4 27.Qc2 f5 28.Bd3 Kb7 29.Bf1 Na6 30.Qd2 Nd5

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 「ナイトが家に帰って仲間と一緒にbポーンに狙いをつけている。」ここで明らかになったのは黒はキング翼を狙っているのではなく収局を目指しているということである。

31.Re1 f4 32.Re5 Naxb4 33.Qe1 Rh6 34.Rg5 Kb6

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 黒キングは全く安全でeポーンはよく守られている。

35.Qb1 g3

 絶好のはがしである。

36.fxg3 fxg3 37.Re5 Rf6 38.Rxg3 Rf4 39.Qd1

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 リブカは白が優勢と考えてきたがここへ来てようやく「心」を入れ替えた。

39...Nf6 40.Qe1 Ng4

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 この跳ね回る畜生をよく見ているがよい。白のビショップは傍観者で、白がすぐ破滅するのを避けるためには交換損を返さなければならない。

41.Rxg4

 41.Rxh5 は 41...Qxd4+ 42.Kh1 Nc2 43.Qb1 Nf2+ 44.Kh2 Rxh4+ 45.Rxh4 Qxh4+ 46.Rh3 Nxh3 47.gxh3 Qf2+ 48.Bg2 Ne1 49.Qe4 Qxg2+ 50.Qxg2 Nxg2 51.Kxg2 b4
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で良くない。

41...Qxd4+ 42.Kh2 hxg4 43.Rxe6 g3+ 44.Kxg3 Rxh4

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45.Qe5

 45.Qe3 は 45...Nd5 46.Qxd4+ Rxd4 となって連結パスポーンで勝利が決まる。

45...Qg4+ 46.Kf2 Qf4+ 47.Qxf4 Rxf4+ 48.Ke2 Nc2 49.Rg6 b4 50.g3 Rxf1

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 気持ちのよい決め手が出た。残ったナイトがルークを圧倒しgポーンは役に立たない。

51.Kxf1 b3 52.Rg8 Kc5 53.Rb8 Nb4 54.Rd8 b2 55.Rd1 Kc4 白投了

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 あとの速度計算は自分でできるだろう。この試合は真の傑作である。

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(この号終わり)

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2009年10月30日 11:13に投稿されたエントリーのページです。

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