第4章 ホセ・ラウル・カパブランカ(続き)
付け加えればカパブランカも特に準備しなかった。何となれば彼は一度もそういうことをしたことがなかった(マスターの棋力になるまでチェスの本を開いたことがないことが彼の自慢の種だった)。それにそもそも他のいくつかの有利な点があった。対局地は自分の地元だった。そこではチェス愛好家たちが彼を崇拝し彼の慣れた気候だった。それに年も20歳若かった。それでもラスカーの出だしは上々で最初の4局は優勢だったが全部引き分けに終わった。その後の第5局で不運に見舞われた。
クイーン翼ギャンビット拒否
白 カパブランカ
黒 ラスカー
1.d4 d5 2.Nf3 Nf6 3.c4 e6 4.Bg5 Nbd7 5.e3 Be7 6.Nc3 O-O 7.Rc1
7...b6
対局当時この手は既にいくらか旧式になっていて 7...c6 に人気を奪われていた。そのあとの通常の手順は 8.Bd3 dxc4 9.Bxc4 Nd5 10.Bxe7 Qxe7 11.O-O Nxc3 12.Rxc3 e5!
で、この解放の捌きはカパブランカによるものである。
8.cxd5 exd5
9.Qa4
この番勝負の第1局でカパブランカは 9.Bb5 と指した。しかし 9...Bb7 10.Qa4 a6 11.Bxd7 Nxd7 12.Bxe7 Qxe7 13.Qb3 Qd6!
となって優勢になれなかった。最善手はたぶん 9.Bd3 で実戦例は 9...Bb7 10.O-O c5 11.Qe2 c4 12.Bb1 a6 13.Ne5 b5 14.f4 +/-
である(ビドマール対イェーツ、ロンドン、1922年)。
9...c5
カパブランカが1914年モスクワでの対ベルンシュタイン戦でこの局面の黒番を持った時は 9...Bb7 と指し、以下 10.Ba6 Bxa6 11.Qxa6 c5 12.Bxf6 Nxf6 13.dxc5 bxc5 14.O-O Qb6 15.Qe2
と進んだ時 15...c4 で黒も指せる局面になった。本譜の手はポーンを犠牲にする。
10.Qc6 Rb8 11.Nxd5
11...Bb7
11...Nxd5 は 12.Qxd5 Bb7 13.Bxe7 Qxe7 14.Qg5 Qxg5 15.Nxg5 cxd4
となって恐らく黒にポーン損の十分な代償がある。
12.Nxe7+ Qxe7 13.Qa4
13...Rbc8
ここで 13...Bxf3 14.gxf3 cxd4 15.Qxd4 Ne5 16.Be2 Rbd8 17.Qf4 Rd6
と指していたら黒は反撃に期待が持てただろう。本譜の手は思わぬ逆(さか)ねじを食らわされた。
14.Qa3! Qe6 15.Bxf6! Qxf6 16.Ba6!
16...Bxf3
16...cxd4 は 17.Rxc8 Rxc8 18.O-O で白がはっきりとポーン得になる。
17.Bxc8 Rxc8 18.gxf3 Qxf3 19.Rg1 Re8 20.Qd3 g6
21.Kf1 Re4 22.Qd1 Qh3+ 23.Rg2 Nf6 24.Kg1 cxd4
25.Rc4!
25...Rg4 には 26.Rc8+ Kg7 27.Rxg4 +/- の意図である。
25...dxe3 26.Rxe4 Nxe4 27.Qd8+ Kg7 28.Qd4+ Nf6 29.fxe3 Qe6 30.Rf2 g5 31.h4
31...gxh4?
31...Kg6 の方が良い受けで 32.hxg5 Ne4 33.Qd3 Qg4+ 34.Rg2 Qh4 35.Qb1 Kg7
でポーンが取り返せて、引き分けに通じる反撃も保持している。しかし本譜の手でも白は容易でない。
31.Qxh4 Ng4 32.Qg5+ Kf8 Rf5
34...h5
34...Qxe3+ は 35.Qxe3 Nxe3 36.Rf2 で白の楽勝になる。
35.Qd8+ Kg7 36.Qg5+ Kf8 37.Qd8+ Kg7 38.Qg5+ Kf8 39.b3 Qd6
40.Qf4 Qd1+ 41.Qf1 Qd7 42.Rxh5 Nxe3 43.Qf3 Qd4 44.Qa8+ Ke7 45.Qb7+
45...Kf8?
これは敗着となるポカだった。45...Ke6 か 45...Kf6 なら黒は致命的なクイーン交換を避けられた。実戦はルーク対ナイトの収局になって絶望的である。
46.Qb8+ 黒投了
(この章続く)