「Chess Life」2009年10月号(2/3)
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教育界
すごいぞロブソン(続き)
次の試合はIMサム・シャンクランドが本誌のために特に解説してくれたものである。この試合には本大会に特徴的な多種多様な要素が現れていてこの大会をよく象徴している。その要素とは順位に関係のない激しく妥協のない戦い、重要な、時には直感で、決断が要求されるいくつかの急所の局面、相手の読みの積極的な妨害、別の作戦を選ぶ柔軟性、そして最も大切と思われるお互いへの敬意と協力的な真理追究の雰囲気で対局後の検討を行なうことである。サムの解説は分かり易くて読むのが楽しい。
自戦解説 IMサム・シャンクランド
シチリア防御スヘーファニンゲン戦法 (B84)
白 FMエリオット・リュー (2359)
黒 IMサム・シャンクランド (2553)
2009年米国ジュニア選抜大会第6回戦、2009年7月15日
この大会はかなり出来が悪かった。この試合は2連敗後の対局である。最初の負けはルーク得でポカを指したことによるもので、次の負けは相手の22手の布局研究にはまったためである。エリオットも不調で、直前まで3連敗していた。しかしこのような状況でも我々はなんとか非常に面白い戦いをすることができた。
1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6
このナイドルフ戦法が私の好きな定跡である。
6.Be3 e6 7.Be2!?
これは良い手であるが全然別方向のスヘーファニンゲン戦法に行ってしまう。7.f3 b5 8.Qd2 Nbd7 9.O-O-O(9.g4 h6 10.O-O-O b4)ならほぼ主手順の範囲内である。
7...Qc7
この融通性のある手はカスパロフの好んだ手である。黒は 7...b5 と指したいのだが今のところは無理である。...Qc7 は黒がいつでも指したい手だが、b8のナイトはc6とd7のどちらが良いのかまだ不明である。7...b5? は 8.Bf3! e5(8...b4 9.e5 dxe5 10.Nde2 は白の戦力得になる)9.Nf5 で白が明らかに有利である。
8.a4
この手は黒からの ...b5 を止めている。
8...b6
黒がこの手を指さずに 8...Be7 9.O-O O-O 10.f4 Nc6 と指せば局面はスヘーファニンゲン戦法に移行する。
8.f4 Bb7 9.Bf3 Nbd7 11.Nb3
黒は ...Nc5 でe4のポーンを取る手を狙っていた。
11...Be7 12.O-O O-O 13.g4
このような手はこの種の戦型では普通の手である。白は自分のキングが何も切迫した状況にないのでキング翼の陣地を広げることができる。
13...Nc5
この手はもう一つのナイトがd7に来れるようにするためである。
14.Nxc5
14...bxc5!?
14...dxc5 と取る手もあるが次のようにつまらない局面になるようである。15.e5 Rfd8 16.Qe2 Nd5 17.Nxd5 Bxd5 18.Bxd5 Rxd5 19.c4 Rd7 20.Rad1
こうなれば引き分けの可能性が非常に高い。
15.g5 Nd7 16.Bg2
白は Rf3-h3 から Qh5 と指すつもりだが手数がかかる。
16...f5?!
これは着想は良いのだがタイミングが悪かったかもしれない。私の見るところ白の唯一の現実的な作戦は Rf3-h3 から攻撃をかけることで、白ルークが既にその変な位置にいれば ...f5 がもっと効果的になる。しかし黒としても白の方から f5 と突いてくる可能性を常に警戒していなければならない。そこでその芽をすぐに摘むことにしたのだった。
16...Rae8 なら 17.f5 exf5! 18.exf5(18.Rxf5 は 18...g6 19.Rf1 Qd8 20.h4 f6
となって黒の十分満足できる局面だろう。この後 21.Nd5 fxg5 22.Nxe7+ Qxe7 23.Bxg5 Qe5 となれば黒が優勢である。)18...Bxg2 19.Kxg2 Qb7+ 20.Kg1 Qxb2 21.Nd5 Bd8
となるがこの局面が非常に気に入らなかった。理由はd5のナイトが非常に強力だしキング翼の白陣の広さが攻撃の可能性を高めていると考えたからである。しかし実際にはあまり恐れることはなくて、この局面は黒の方が少し優勢かもしれない。
17.Qe2!
この手待ちは良い手だった。白は Qc4 を狙っている。
17...Rae8
黒の狙いは ...fxe4 である。黒はすぐに 17...fxe4? と指したいのだが次の手順でうまくいかない。18.Bh3! e5(18...Rf5 黒は ...d5 と指せるならばこの交換損の犠牲が有効なのだがそれができない 19.Bxf5 exf5 20.Qc4+ Kf8[20...Kh8 は 21.Qf7 で白が良い]21.a5! 黒のナイトにb6に来させない。白が優勢である。代わりに 21.Nd5? は 21...Nb6! 22.Nxc7(22.Nxb6 は 22...Qxb6 で黒が ...d5 と指せて優勢である)22...Nxc4 23.Nxa8 Nxe3 24.Nb6 Nxc2
で黒が二重に交換損だが2個の連結パスポーンと双ビショップが強力で白のルークはどちらもすぐには働かない。黒が優勢である。)[訳注 「18.Bh3! e5」のあとの手順ないしは解説が抜けています。]
18.Rae1 fxe4
19.Nxe4
19.Bxe4? d5 この手は ...dxe4 と ...d4 の両にらみである 20.Bxh7+ Kxh7 21.Qh5+ Kg8 22.Rf3
白の攻撃は強力そうである。直感では黒が守り切れて勝つと思っていたが黒の次の手は気づかなかった。22...Bxg5! 23.Qxg5(23.fxg5 Rxf3 24.Qxf3 d4 白は指し切っていて駒損になり対角斜筋が弱い。完全にだめである。)23...d4 これで黒が駒損を取り戻す。ナイトがf6に行けばすべての弱点をカバーする。
19...d5 20.Ng3 Bd6
黒は何か手がありそうに見えるが白が Qg4 と指した後では指し方が難しい。
21.Qg4
21...Nb6
21...d4 これがコンピュータの推薦手で黒が優勢だそうである。実戦ではビショップを強制的に下がらせて白ルークの利きを通させ白ナイトに恒久的なe4の安住の地を与えるのは良くないと考えていた。しかし具体的な手順を見るとそうでない。22.Bxb7 Qxb7 23.Bc1 Qd5 24.Ne4 c4
このあと黒は ...Nc5 と指して優勢である。
22.Bc1 Bc8 23.b3 e5
24.Qh4
これは積極性に欠けた手だった。24.f5!? なら a5 から Bxd5+ が狙える。以下 24...e4 25.g6!(25.c4 は Bxg3! 26.hxg3 g6 で黒も指せる局面のようだがまだまだ難しい。)25...hxg6(25...h6 は前の変化でg6の地点が使えないことが決定的に違う。26.c4 で白が主導権を握る。)26.Qxg6 Be5 27.c4
となって難解な局面である。
24...exf4 25.Rxe8 Rxe8
26.Bxf4!
エリオットが a5 突きで賭けに出なかったのは正しい判断だった。例えば 26.a5 fxg3 27.axb6 gxh2+ 28.Kh1 Qxb6!-この手は局後の検討で見つかった。初めは二人とも黒がd5を守るために ...Qc6 か ...Qb7 と指さなければいけないと思っていた。-29.Bxd5+ Be6-白が指せているように見えるが実際は黒には何の危険もなく白の負けである。-30.Be4 g6 31.Bb2 c4
これで Bxg6 にはいつでも ...Bd5+ がある。...Qg1# があるので白はルークを最下段から動かすこともできない。黒は戦力的に優勢で、最初はそう見えないかもしれないが白キングの方が黒キングよりはるかに危険な状態である。
26...Bxf4 27.Qxf4 Qxf4 28.Rxf4
あとはもう指す余地がほとんどない。
28...a5 29.Kf2 Re5 30.h4 Be6 31.Bf3 Nc8 32.Bg4 Bxg4 33.Rxg4 Nd6 34.c3 c4
35.bxc4
局面の均衡を崩すなら 35.b4 が最後の機会だがうまくいかないようである。35...axb4 36.cxb4 c3 で黒の方が完全に速い。
35...Nxc4 引き分け
激戦が平和的に終結した。
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(この号続く)