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チェス500名局 アーカイブ

2007年11月18日

チェス500名局(1)

「チェス500名局」
タルタコーワ、デュ・モン著

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 はしがき

 本書には固有の価値を持つ棋譜が収められている。古今の棋譜には傑出した内容の棋譜が多数存在するが、ここではチェスの歴史においてそれぞれの時代を代表する名局が選ばれている。

 棋譜を定跡別に分類しそれぞれの中では年代順に並べることにより、棋譜の学習的な価値が増すことを期待した。

 布局の特性はしばしば中盤に及び、またポーン構造の特徴によっては終盤にまで影響を及ぼす可能性がありしばしばそうなることがあることは銘記しておいた方が良い。本書のような編集は布局定跡の標準的な棋譜集を補うものと見ることもできる。

 著者らは全体の校正に多大の労苦をして頂いたカステヨ氏およびコレス氏、援助をして下さったその他の方たちに感謝の意を表したい。

 さらにジョーン・キーリー嬢、現ロナルド・スミス夫人には特に感謝したい。彼女は8千局もの棋譜から、最終的な選択のために2千局以上をコピーし一部は訳すという偉業を、類まれな完璧さと正確さで行なってくれた。

 タルタコーワ、デュ・モン

第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第1局

白 ブレダウ
黒 フォン・デル・ラーザ
1839年、ベルリン

 モーフィーの確立した偉大な原則-ポーン中原の形成、役駒の最速の展開(たとえ数量損をしても)、攻撃の筋のこじ開け、深く進攻したポーンの絶大な効果-これらは全て古い本局に既に見かけられる。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3

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 次にポーンをd4に突くことによりポーン中原を確立する構想。今のチェスが生まれた頃から既に知られ認められている構想である。

4...Qe7

 初期の頃の防御法の一つ。

5.d4 Bb6

 前の手と関連した手。黒は明らかにe5の地点を保持したがっている。もし 5...exd4 と中原を放棄すれば白は 6.O-O とポーンを犠牲にして(6...dxc3 7.Nxc3)圧迫を強め、黒にとっては面倒なことになるだろう。

6.O-O d6 7.a4

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 黒が放置すれば白が駒得をする。つまり 8.a5 Bxa5 (8...Nxa5 は 9.Rxa5 Bxa5 10.Qa4+ でビショップが取られる) 9.Rxa5 Nxa5 10.Qa4+ Nc6 11.d5 a6 12.dxc6 b5 13.Bxb5 で白が駒得を維持する。

7...a5

 7...a6 8.b4 という変化もある。

8.Be3 Nf6

 8...exd4 9.cxd4 Qxe4 とポーンをかすめ取るのは 10.Re1 で、キングとクイーンが直列に並んでいるので黒の方が困る。

9.dxe5

 9.Nbd2 として中原の争点を維持することもできた。

9...Nxe5 10.Nxe5 dxe5 11.Bxb6 cxb6 12.Nd2 O-O 13.Qe2

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13...Bd7

 13...Be6 で単純化を目指す代わりに、黒はもっと積極的な行動を取る。

14.Rad1

 白はポーン損をかえりみずに展開を急ぐ。

14...Bxa5 15.b3 Bc6 16.f4

 f筋を開けるのは重要である。

16...Rad8 17.fxe5 Qxe5 18.Rf5

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18...Qd6

 18...Qe7 と逃げるのは 19.e5 b5 20.Ne4 で白の圧迫がさらに効果的になる。

19.e5 Qc5+ 20.Kh1 Ne4

 駒交換により一息つけようという黒のもくろみは失望に終わる。しかし 20...Nd5 と逃げるのは 21.e6 と突かれるし、20...Nd7 又は 20...Rde8 には 21.Rdf1 とルークを重ねられて白の優勢は動かない。

21.Nxe4 Rxd1+ 22.Qxd1 Bxe4

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 攻撃的なルークが逃げてくれることを期待している(例えば 23.Rg5 なら 23...h6 24.Rh5 Bg6 の後 25...Qxe5、又は 23.Rh5 なら 23...Bg6 24.Rg5 Qe3)。それよりも面白いのは本譜の以下のドラマで、敏感なf7の地点を巡って展開される。

23.Rxf7 Rxf7 24.Qd8+ Qf8 25.Bxf7+ Kxf7 26.e6+ Kg8 27.e7 黒投了

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 このポーンの働きが攻撃の決め手になった。

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2007年11月28日

チェス500名局(2)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第2局

白 タラシュ
黒 アリョーヒン
1925年、バーデン=バーデン

 本局での黒の戦略は深く練られ余人には思いもつかないような駒の組み替えに満ちている。11...Qd8 と 13...Ba7 はそのような絶妙な手待ちであり、意表の飛び出しの 21...Bf5 は勝着の 22...Bxh3 の先触れだった。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 Bb6

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 古い手順の 4...Qe7 5.d4 Bb6 と同じことになる。しかし微妙な違いがある。本譜の手に対して白が (5.d4 の代わりに) 5.d3 と指せば黒はeポーンの「過剰防御」のためにクイーンを動かす必要がなく、この点において勝っている。

5.d4 Qe7 6.O-O Nf6

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 この手も定跡の改良であり 6...d6 よりも積極的である。ここで白はeポーンを守るために何かしなければならない。そしてそのために白の攻撃力が減殺される。

7.Re1

 ここでの最も快活な手は 7.Bg5 である。7.dxe5 では局面が単純化し過ぎるし、7.d5 Nb8 では窮屈な局面になる。

7...d6 8.a4 a6 9.h3

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 精力的な 8.a4 の後のこの手は慎重すぎてキング翼の弱点となる可能性もある。意欲的に指すならば 9.Na3 である。

9...O-O 10.Bg5 h6 11.Be3

 この手に対して 11...Nxe4 ははまりで、12.d5 で黒が駒損になる。

11...Qd8

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 eポーンを守る役目を終えてクイーンは元の位置に戻り、ナイトのためにその地点を空けてやる(12.d5 Ne7)。

12.Bd3

 ここは白にとって 12.dxe5 Nxe5 13.Nxe5 dxe5 14.Bxb6 cxb6 15.Qe2 で単純化を図る機会で、互角の形勢となるところだった。

12...Re8 13.Nbd2 Ba7

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 これも先受けの手。このビショップ引きは 14.Nc4 に備えると共に、14.d5 に続く 15.Bxb6 により黒のポーン構造が壊されるのを防いでいる。

14.Qc2 exd4 15.Nxd4

 15.cxd4 とポーンで取ると 15...Nb4 が来る。

15...Ne5 16.Bf1

 ここまで深く引くよりも 16.Be2 の方が良かった。

16...d5

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 このポーン突きにより白は主導権を握った。

17.Rad1

 17.f4 は 17...Ng6 18.e5 Nh5 で黒が有利である。

17...c5 18.N4b3 Qc7 19.Bf4

 駒を交換することにより争点を緩和する意図である。

19...Nf3+

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 読みの入った手。黒はキング翼に襲撃部隊を集結させることに成功し、ポーンの犠牲も十分な根拠がある。

20.Nxf3 Qxf4 21.exd5

 差し出されたポーンを頂く。この手に対してすぐに 21...Bxh3 は 22.gxh3 Qxf3 23.Bg2 で白の陣形は強固なので怖くない。

21...Bf5

 この威嚇的な手の意味は白のビショップを監視の地点からそらしてから、薄くなったキング翼に襲いかかろうというものである。

22.Bd3

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 もっともそうな手。しかし直前の解説に照らして 22.Qc1 又は 22.Qd2 と指す方が賢明だった。しかしそう指しても黒が 22...Qxa4 とポーンを取り返して優勢だったろう。

22...Bxh3

 白陣を破壊し(白の9手目の解説を参照)さらに 23...Bxg2 24.Kxg2 Qg4+ を狙っている。

23.gxh3

 23.Qd2 の方がもっとねばれた。

23...Qxf3 24.Rxe8+

 だまって 24.Bf1 と指し以下 24...Rxe1 25.Rxe1 Qxd5 となれば白は1ポーン損ではあるが本譜のような破滅を避けられただろう。

24...Rxe8 25.Bf1 Re5

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 縦からの攻めが決め手である。

26.c4 Rg5+ 27.Kh2 Ng4+

 素晴らしい。

28.hxg4

 28.Kg1 とかわしても 28...Nxf2+ で簡単に詰む。

28...Rxg4 29.Bh3 Rh4 白投了

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2007年12月03日

チェス500名局(3)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第3局

白 エリスカセス
黒 グリューンフェルト
1933年、モラフスカ・オストラバ

 本局は典型的な現代風の指し方で、消耗戦を連想させる。そこで見られるのは「精算の捨て駒」とも呼ぶべき技法である。

 その観点から見ていくとまず華麗な 27.Nf5 による駒損は一時的なもので白は開通したg筋に侵入口を確保する。その後の 40.h5 はbポーンを捨ててもすぐに取り返しb筋に活動拠点が得られることを見越している。最後に 45.Qf7+ は大切なポーンも捨てるが、ルークが敵陣に侵入するというもっと重要な代償を得る。

 最終手の 53.Rh8 も理論的には、深く進入したdポーンをおとりにして最後に残った役駒を精算することが目的と言える。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 Bb6 5.d4 Qe7 6.O-O Nf6 7.d5

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7...Nb8

 後でd7の地点から戦闘に復帰するつもりである。7...Nd8 は長いことそのままでいなければならないだろう。7...Na5 は 8.Bd3 の後 9.b4 で野垂れ死にする。

8.Bd3

 中原地帯は閉鎖されたが白は永続する圧力に期待をかけている。危険がないとはいえない精力的な指し方は 8.d6 からのポーンの犠牲に始まる。以下 8...Qxd6 9.Qxd6 cxd6 10.Bd5 となりクイーンがいなくなったにもかかわらず白が一帯を制圧している。

8...d6 9.Nbd2 a6

 10.Nc4 の狙いに備えて黒は活動的なビショップを取られないようにする。

10.Nc4 Ba7 11.a4 O-O 12.b4 Ne8

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 次に 13...f5 と突いて攻勢に移ろうという意図である。しかし白は次の手でそれを阻止する。

13.Qc2 g6

 黒はそれでもなお ...f5 と突く望みを捨てない。それと同時に現在働いていないキング翼のナイトの活用も意図している。しかし黒の陣形は凝り形のままである。

14.Bh6 Ng7 15.Ne3 f6

 黒は狙っていた ...f5 突きを断念しなければならないと自分の方から認めた。

16.Rad1 Rf7 17.Kh1

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17...Nd7

 他の手たとえば 17...Kh8 でも白は 18.Rg1 で次にポーンを g4 に突き積極的な攻勢を開始するだろう。

18.g4 Nf8 19.Rg1 Bxe3 20.fxe3 Bd7 21.Rg3

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21...c6

 黒は 21...Rc8 と準備してからこの反抗を行ないたいところだが 22.Bc4 で完全にその目論見はつぶされる。

22.Bc4 cxd5 23.Bxd5 Be6 24.Rdg1 Rc8 25.Nh4 Bxd5 26.exd5

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26...Rc7

 26...Kh8 に対しても白は本譜と同じく 27.Nf5 で応じる。以下 27...gxf5 28.gxf5 で、黒のg7のナイトは動くと 29.Rg8# で詰んでしまうので動けなくなる。

27.Nf5

 主戦場に巧妙に兵力を集中した白はいよいよ敵の防御を崩しにかかる。

27...gxf6

 27...Nxf5 28.gxf5 g5 とg筋を開けさせないのは 29.h4 あるいはもっと手っ取り早く 29.Bxg5 fxg5 30.Rxg5+ で抵抗を打ち破られる。

28.gxf5 Qe8 29.Qg2 Qd7

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30.Rxg7+ Rxg7 31.Bxg7 Qxg7 32.Qc2 Ng6 33.fxg6 h6

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 33...h5 なら白は本譜と同じように指し進めしかもさらに効果的になる。ここで全体的には黒が敵の攻め足を食い止めることに成功し、白は新たな戦場を求めることになる。

34.Qf5 Qf8

 34...Rxc3 とポーンを取ると 35.Qe6+ Kh8 (35...Kf8 は 36.Qxd6+) 36.Qe8+ Qg8 37.g7+ Kh7 38.Qg6# で詰んでしまう。

35.c4 Kg7

 ここでも 35...Rxc4 とポーンを取るのは 36.Qe6+ Kg7 (36...Kh8 は 37.g7+ でひどい) 37.Qd7+ K 任意 38.Qh7# で詰んでしまう。

36.Rc1 b6

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37.e4 Qe7 38.Qf2 Rb7 39.h4

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39...a5

 39...Qd7 と受ける方が良かった。39...Kxg6 とポーンを払うのは自殺手とも言うべき手で 40.Rg1+ でgファイルからの殺到が厳しすぎる。

40.h5 axb4 41.Rb1 b3 42.Rxb3 Qd7

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43.Qf5

 白は決定的な要所を占拠した。黒はクイーンの交換に応じることもできなければ(43...Qxf5 44.exf5 で 45.a5 が狙い) 43...Qxa4 で最悪の事態を逃れることもできない(44.Rf3)。

43...Qe7 44.Qe6 Qc7 45.Qf7+ Qxf7 46.gxf7 Ra7

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 47.a5 に備えた。しかし白ルークの敵陣への侵入で勝敗が決する。

47.Rxb6 Rxa4 48.Rxd6 Rxc4 49.Rxf6 Kf8 50.d6 Rxe4 51.d7 Rd4 52.Rxh6 Kxf7 53.Rh8 黒投了

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 投了も止むを得ない。53...Rxd7 とポーンを取るよりないが 54.Rh7+ Ke6 55.Rxd7 Kxd7 56.h6 で黒キングが「正方形」の外側にいるのでhポーンの勝利への進軍を止めることができない。

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2007年12月05日

チェス500名局(4)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第4局

白 ド・ラ・ブルドネ
黒 マクドネル
1834年、番勝負

 本局はルークの使い方の好例である。ルークは一般に考えられているよりも柔軟に使えることが示される。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 d6

 狙いを持って展開する 4...Nf6 の方が積極性がある。

5.d4 exd4 6.cxd4

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6...Bb6

 6...Bb4+ なら白には 7.Nc3 と 7.Kf1(8.d5 から 9.Qa4 の狙い)の二途がある。本譜では黒のビショップは敵の中原に睨みを利かせ続ける。

7.d5

 中原を閉鎖する。とりわけ自分のビショップの利きも止まる。しかし白は代わりに他の駒が自由に動けるようになることを期待している。最も強硬な手は 7.Nc3 である。

7...Ne5

 7...Na5 は悪手で 8.Bd3 と引かれた後 9.b4 でナイトを取られる手が残る。7...Nce7 と引くのは 8.e5 で白に楽しみが多い局面である。

8.Nxe5 dxe5 9.Nc3 Nf6

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 この型にはまった手よりも、白の守備の要のナイトが交換でいなくなったことに乗じて 9...Qh4 と出る手が面白かった。

10.Bg5 O-O

 早急に釘付けを緩和するために黒が 10...h6 と指しても白は 11.Bh4 g5 12.Bg3 Qe7 あるいは 11.Bxf6 Qxf6 で互角の局面にしたりはしない。代わりに手順の妙で 11.Bb5+ Bd7 12.Bxd7+ Qxd7 13.Bxf6 gxf6 14.Qf3 Qd6 15.O-O で全局的に圧倒する。

11.Qf3 Qd6

 この手はナイトの釘付けを解消し、白の手によっては局面が単純化される。似たような構想でもっと効果的だったのは 11...h6 12.Bxf6 Qxf6 13.Qxf6 gxf6 という進行で、ここで 14.g4 なら 14...Kh7 でさっさと引き分けの形を作り上げる。

12.Bxf6 Qxf6 13.Qxf6 gxf6

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14.g4

 これは見事な構想である。受け(14...f5 からの捌きを封じる)と攻め(g筋から攻め込む)とを兼ね備えている。14...Bxg4 は 15.Rg1 h5 16.h3 でビショップを取られるのでこのポーンは取れない。

14...Kg7

 せっかちな性格のマクドネルは逆襲(後の 18...h5)を計画する。しかしここは 14...Kh8 の方が穏当だった。他に受ける手としては 14...h6 又は 危険な駒を取り除く 14...Ba5 があった。しかし黒は敵の策略を意に関していないようである。

15.Ne2 Rh8 16.Rg1 Kf8 17.Rg2

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 f2を守ってキングが動けるようにするのと、重要なg筋にルークを重ねる目的である。

17...Ke7 18.O-O-O h5

 黒の14手目から狙っていた手である。もっと賢明な手は 18...Bd7 の後 19...Rag8 とルークを活用する手であろう。

19.g5

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19...f5

 ここが勝負所である。黒はまたもや敵の手を軽視し形勢を楽観しているようである。次のように難解な変化があった。

19...fxg5 20.Rxg5 Bxf2 (21...Be3+ の狙い)

A) 21.Rxe5+ Kd6 これはルークの逃げ場がなく黒の勝ち。

B) 21.Kd2 (21...Be3+ の防ぎ) Bh4 で受け切れる。

C) 21.d6+ cxd6 22.Rg7 Be6 23.Bxe6 Kxe6 24.Rf1 Be3+ 25.Kd1 Raf8 これは黒の陣形がしっかりしている。

D) 21.Rg7 (22.d6+ の狙い) Kf8 22.Rg2 Be3+ 23.Kc2 Rg8 黒陣は安泰である。

E) 21.Rg2 (最善の攻撃手) Be3+ 22.Kc2 これなら互角の形勢。

20.Nc3 Bc5

 21.d6+ cxd6 22.Nd5 に備えた手。

21.g6 Bd6 22.gxf7 Kxf7

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23.f4

 すぐに 23.Rdg1 とルークを重ねると黒に 23...f4 と封鎖される。

23...exf4 24.Rdg1 Kf8

 24...Bd7 は 25.Rg7+ Ke8 26.e5 Bf8 (26...Bxe5 は 27.Re1) 27.R8g6 で白の独壇場となる。

25.Rg6

 全力による総攻撃への準備。

25...f3 26.exf5 Be5 27.d6

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 7.d5 以来20手もの間封印されていた筋を再び開ける。その効果は絶大である。

27...cxd6 28.Rg8+ Rxg8 29.Rxg8+ Ke7 30.Nd5+ Kd7 31.Bb5# 1-0

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2007年12月10日

チェス500名局(5)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第5局

白 シュピールマン
黒 ヤノフスキー
1907年、カールスバート

 この好局の見どころは白がe筋を完璧に利用するところである。白はポーンを一時的に犠牲にして(8.O-O)この筋を開通させ、後にはまたポーンを犠牲にして(19.d6)この筋を支配下に治めた。

 次々と敵陣に侵入した白の駒(18.Re7, 25.Nfe7+, 29.Ne7)は敵を壊滅させた。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 d6 5.d4 exd4 6.cxd4 Bb6

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7.h3

 7.Be3 又は 7.Nc3 には黒の 7...Bg4 がうるさいので、白はわざわざ一手かけて黒のこの手を完全に封じた。

7...Nf6 8.O-O

 8.Nc3 とポーンを守ると次のようないつもの単純化の手順がある。8...Nxe4 9.Nxe4 (9.Bxf7+ Kxf7 10.Nxe4 Re8 はキャッスリングはできなくなったが黒が良い。9.Qe2 なら 9...O-O でよい。) d5

 だから白は攻勢を取るためにポーンを取らせた。

8...Nxe4 9.Re1 O-O 10.Rxe4 d5 11.Bg5

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 白は際どい所でこの手を利かせる。黒は 11...f6 とはできなかった。それは 12.Bb3 fxg5 13.Nc3 で白が良くなる。

11...Qd6 12.Bxd5 Qxd5 13.Nc3 Qd7 14.d5

 この中原の孤立ポーンはブロックの役割をはたす。

14...f6 15.Be3

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15...Nd8

 e6の地点に利かせるためにここに引いた。15...Ne7 と引くのは 16.Bxb6 axb6 17.Qb3 Kh8 18.Nd4 で白には色々な狙いがある。

16.Bxb6 axb6 17.Qe2

 e筋を強化した。

17...Nf7 18.Re7 Qd8

 次に 19...Ne5 を見ている。

19.d6

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 ポーンを突き捨てて他の駒の働き良くする。

19...Nxd6

 ここは勝負所である。19...Qxd6 とクイーンで取るのは 20.Nb5 (20.Rd1 でも良い)で明らかに白が良い。19...c6 は 20.d7 Bxd7 21.Rd1 Ne5 22.Rdxd7 Nxd7 23.Qe6+ Kh8 24.Rxd7 という好手順で有利な駒割りになる。19...cxd6 は 20.Nb5 (本手は 20.Re3 で後で黒のクイーン翼の乱れをつく) Ra5 21.Rd1 Ne5 で 22...Rxb5 を狙い形勢不明である。

20.Nd5 Rf7 21.Re1 Bd7 22.Nh4

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 もう一つのナイトの働きに負けまいとするかのように飛び跳ねた。

22...Ra5

 最下段の大切な守りを放棄するよりも黒は 22...c6 と催促する方が良かった。

23.Rxf7 Nxf7 24.Nf5

 このナイトも戦闘に加わった。24...Bxf5 と取ると 25.Qe8+ Qxe8 26.Rxe8# で詰んでしまう。

24...Ne5

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 ルークへの出動命令をこの後取り消して混乱をきたす。それよりも黒キングは自ら 24...Kf8 と守りを買って出るべきだった。

25.Nfe7+ Kh8 26.b4 Ra8 27.f4 Ng6 28.Nxg6+ hxg6 29.Ne7

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29...Qe8

 黒陣の危険な状況は次の変化からも分かる。29...Be8 30.Rd1 で黒クイーンは奥まったb8に引っ込むしかない。その後白は 31.Qg4 で必殺の 32.Qh4# を狙う。

30.Qf2 g5 31.fxg5 fxg5

 詰みを逃れるためとはいえ黒陣は既にぼろぼろである。

32.Qd2 b5 33.Qxg5 Ra6 34.Re4

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34...Rh6

 黒はもはや受けが効かない。34...Qf7 と守っても 35.Rh4+ Rh6 36.Rxh6+ gxh6 37.Qxh6+ Qh7 38.Ng6+ (38.Qf8+ でも同様に詰む) Kg8 39.Qf8# で詰みになる。

35.Nf5 Qg6

 交換損を避けるための手だが代わりにビショップを取られる。35...Qxe4 も 35...Re6 も 36.Qxg7# があるのでだめである。黒は 35...Qf8 36.Nxh6 gxh6 も手を少し延ばすだけとみて本譜の手を選んだ。

36.Qd8+

 36.Nxh6 と交換得すると黒は 36...Qxg5 でなく(37.Nf7+ から 38.Nxg5) 36...Qxe4 で助かる。

36...Kh7 37.Qxd7 Rh5 38.Rg4 Rg5 39.Rh4+ 黒投了

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2007年12月12日

チェス500名局(6)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第6局

白 ベッカー
黒 マティソン
1929年、カールスバート

 名局の多くは軟弱なf7の地点への攻撃を戦略の基礎においている。本局ではこの古くからのテーマに新しい一面が見られる。白の二つのナイトが入れ替わり立ち代り重要なf筋に出没する。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 d6 5.d4 exd4 6.cxd4 Bb6 7.Nc3

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 この手の目的はコンパクトであると同時に動き易い中原を何としても維持することである。

7...Nf6 8.O-O Bg4

 この手は白の中原に挑むのが可能であることを証明しようとするものである。

9.Be3 O-O

 9...Bxf3 は 10.gxf3 で中原が強化され、二重ポーンの不利が埋め合わされる。一方開通したg筋も白に有利に働く (Kh1 から Rg1)。

10.Bb3

 10...Nxe4 11.Nxe4 d5 で中原の黒の劣勢を和らげようという黒の狙いを未然に防いだ。

10...Re8 11.Qd3

Y071212B.JPG

11...Bh5

 ここでも 11...Bxf3 12.gxf3 は白の目的のお手伝いになるだけである。本譜の手で黒は次に 12...Bg6 とビショップを引いて敵のeポーンに狙いを定める気である。

12.Nd2 Ng4

 この手は時期尚早の反撃である。この局面の要求に合った手は、前の手で触れたように 12...Bg6 である(13...d5 を狙う)。ただし 13.d5 Ne5 14.Qe2 で白の形はしっかりしている。

13.Nd5 Nxe3 14.fxe3

Y071212C.JPG

 白は双ビショップの特権は失ったが、代わりに開通したf筋は非常に利用価値がある。

14...Rf8 15.Rf2 Ne7 16.Nf4 Bg4

 これで重要なf7を守る黒の駒が一つ減った。白はそこをめがけて早急に全兵力を集中させる。

17.Raf1 Qc8

 18.Ne6 という手が生じてきたのでその狙いに対処するのが最善である。

18.h3 Bd7 19.Nc4

Y071212D.JPG

19...g6

 何とか駒を捌こうという 19...Bb5 は 20.Nxb6 Bxd3 21.Nxc8 Bxf1 22.Nxe7+ Kh8 23.Rxf1 で黒の駒損に終わる。

20.g4

 この手から白の猛攻が始まる。

20...Kg7 21.e5

 この手は次に 22.Nxb6 axb6 23.Nh5+ gxh5 24.Rxf7+ Rxf7 25.Rxf7+ で詰めようという手である。

21...d5

 ポーンを与えてなんとか相手の攻勢を和らげようとする。

22.Nxb6 axb6

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23.e4

 23.Nxd5 Nxd5 24.Bxd5 とポーン得するのは 24...Be6 で受け側としても何とか息がつける。しかし白はそれに見向きもせず攻撃に全精力を注ぐ。

23...dxe4 24.Qxe4 Bc6 25.Qe3

 26.Nh5+ をひそかに狙っている。

25...Kh8

Y071212F.JPG

26.Nh5

 それでもこれを決行する。もう少し迫力には欠けるが 26.Ne6 でも良かった。

26...gxh5

 取らないと 27.Qh6 が来る。

27.Rxf7 Rxf7 28.Rxf7

Y071212G.JPG

 f7の地点が占領されて黒は受けがなくなった。

28...Nd5

 28...Bd5 でも29.Qh6 である (29...Bxf7 30.Qf6+ 31.Kg8 31.Bf7+ で3手の詰み)。

29.Qh6 Qg8 30.Bxd5 Qg6

 30...Bxd5 は 31.Qf6+ で詰む。

31.Rf8+ 黒投了

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2007年12月17日

チェス500名局(7)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第7局

白 シュタイニッツ
黒 フォン・バルデレーベン
1895年、ヘースティングズ

 本局の見どころは白がどのように敵陣のちょっとした弱点につけ込み巧みな捌きによって敵キングのキャッスリングを阻んだかというところである。盤上の支配を一度も緩めることなくシュタイニッツは最も華々しく美しい手筋の連続で本局を締めくくった。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 Nf6 5.d4 exd4 6.cxd4 Bb4+ 7.Nc3

Y071217A.JPG

 ザ・カラブレーセ(グレコの異名)によって既に1619年に推奨されていた手で、白はポーンを捨てて攻勢を取る。

7...d5

 7...Nxe4 が普通で何も悪くない。ただし黒はポーン得を守り通すことは期待できない。

8.exd5

 白は前哨戦の小競り合いで中原にポーンを得た。このポーンは孤立しているが強力さの象徴となる。

8...Nxd5 9.O-O

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9...Be6

 この手は理にかなった手のはずであるが、この後キャッスリングの機会がなかったことを考えれば黒は何をおいても 9...Bxc3 としてから展開に努めるべきであった。

10.Bg5 Be7 11.Bxd5 Bxd5 12.Nxd5 Qxd5 13.Bxe7 Nxe7 14.Re1

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 ばたばたと駒交換が行われた後気付いてみれば黒はキャッスリングができない状態になっていた。次の手から黒は「人工キャッスリング」でキングを安全地帯に置こうとするが手数がかかりすぎた。

14...f6 15.Qe2 Qd7 16.Rac1 c6 17.d5

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 軽妙なポーンの突き捨てでナイトがd4の地点に行けるようになり攻撃力が増す。

17...cxd5 18.Nd4 Kf7

 黒はほぼキャッスリングを成し遂げたがまだ完全ではない。

19.Ne6

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 狙いは 20.Rc7 である。

19...Rhc8 20.Qg4 g6 21.Ng5+ Ke8 22.Rxe7+

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 この局面にはただただ驚くばかりである。白の駒は全部当たりになっていて黒には ...Rxc1 による詰みの狙いがある。しかし黒はチェックしている白ルークを取ることができない。例えば 22...Qxe7 は 23.Rxc8+ Rxc8 24.Qxc8+ で白が駒得になる。22...Kxe7 の変化は極度の正確さが必要で、白が本譜の手を指す前に読んでいなければならないものであった。つまり 22...Kxe7 23.Re1+ Kd6 24.Qb4+(24.Re6+ Kc5 も 24.Qf4+ Kc5 もうまくいかない)Rc5(24...Kc6 は 25.Rc1# で詰み。24...Kc7 は 25.Ne6+ Kb8 26.Qf4+ で白勝ち)25.Re6+ で白が勝つ。以下のきれいな手順の中でルークはずっと取られる状態が続き最後は黒がそのルークを取らざるを得なくなり詰まされる。

22...Kf8 23.Rf7+ Kg8 24.Rg7+ 黒投了

Y071217G.JPG

 以下の11手詰めはひどい駒損によってのみしか回避できない。

24...Kh8 25.Rxh7+ Kg8 26.Rg7+ Kh8 27.Qh4+ Kxg7 28.Qh7+ Kf8 29.Qh8+ Ke7 30.Qg7+ Ke8 31.Qg8+ Ke7 32.Qf7+ Kd8 33.Qf8+ Qe8 34.Nf7+ Kd7 35.Qd6#

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2007年12月19日

チェス500名局(8)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第8局

白 シュタイニッツ
黒 ラスカー
1896-7年、

 本局の見どころは重要な原則である手段の経済性である。黒は役駒を得して受けに回るかそれともポーン得に甘んじて陣形的優位を取るかの選択に直面して、ちゅうちょすることなく見せかけの得を放棄する。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 Nf6 5.d4 exd4 6.cxd4

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6...Bb4+

 おとなしく 6...Bb6 と下がるのは白に次のように中原での優位を利用されるだろう。7.d5 Ne7 8.e5 Ne4(8...Ng4 でも同じく白は強手の 9.d6 で有利を確保する)9.d6(くさびを打ち込む)cxd6 10.exd6 Nxf2 11.Qb3 Nxh1(11...O-O は 12.Ng5 で勝勢)12.Bf7+ Kf8 13.Bg5 で白が勝つ。

7.Nc3 Nxe4 8.O-O

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8...Bxc3

 8...Nxc3 とナイトで取るのは 9.bxc3 Bxc3 の後威勢のいい 10.Qb3(既に1619年にグレコによって示唆されていた)で白のチャンスが広がる。

9.bxc3

 ここは黒の捌きを防ぐために 9.d5 と「正義の一撃」を見舞うチャンスだった。駒損はすぐに取り返せる。

9...d5

 この手は良い手で黒の陣形がしっかりする。9...Nxc3 は悪手で 10.Qe1+ でこのナイトを取られる。

10.Ba3

 c4のビショップを見捨てたこの手は無理筋であることが証明される。しかし 10.Bd3 と逃げても 10...O-O 11.Bxe4 dxe4 12.Ng5 Qd5 で局面は黒がやはり優勢である。

10...dxc4 11.Re1

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11...Be6

 この手は役駒を返し1ポーン得で十分だという判断である。役駒得にこだわる 11...f5 は危険で 12.Nd2(13.f3 の狙い)Kf7 13.Nxe4 fxe4 14.Rxe4 で黒キングの安全が危うい。

12.Rxe4 Qd5 13.Qe2 O-O-O

 これで黒は序盤の課題をすべて解消した。

14.Ne5 Rhe8

Y071219D.JPG

15.Nxc6

 白の読みはナイトがいなくなれば異色ビショップなので引き分けになり易いだろうということである。

15...Qxc6 16.Re1 Rg8

 自分のビショップでe筋がふさがっているのでキング翼から攻勢をかけようという意図である。

17.Re5 b6 18.Bc1 g5

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 読みの入ったポーン捨て。白は取らない方が良かった。

19.Rxg5 Rxg5 20.Bxg5 Rg8 21.f4 Bd5

Y071219F.JPG

 この手は次に 22...h6 を狙っている。それを防いで 22.Qh5 と来てもやはり 22...h6(22...Bxg2 は23.Qxf7)が成立し以下 23.Qxh6 Qxh6 24.Bxh6 Rxg2+ で黒の優勢である。

22.g3 Kb7 23.h3 Qb5 24.Kh2 Rg6 25.Qc2 f6

Y071219G.JPG

 ビショップを追い払うと同時に 26.Re5 によるルークの侵入も防いでいる。

26.Bh4 Bc6 27.g4 Qd5

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 クイーンとビショップの組み換えにより対角筋での黒の利きが揺るぎないものとなった。

28.Qf2

 最強の受けは 28.f5 だった(28...Rh6 に対しては 29.Qf2 Rxh4 でなく29.Bg3 Qf3 30.Qe2)。これを逃がしたため黒は新たな兵力を投入することができた。

28...h5 29.g5 fxg5 30.Bxg5 h4

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 敵陣を完全に封鎖した。31.Rg1 なら 31...Rxg5 である(32.Rxg5 は32...Qh1# で詰み、32.fxg5 なら 32...Qd6+)。

31.Rf1 Rg8 32.Qd2 a5 33.a4

Y071219J.JPG

33...Re8

 次に 34...Re3 を狙っている。33...Bxa4 はゆるみで 34.Qg2 でクイーンを交換されてしまう。

34.f5 34...Rg8 白投了

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 白は手詰まりで指す手がない。どう指しても何かを損する。

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2007年12月24日

チェス500名局(9)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第9局

白 シュピールマン
黒 ドゥラス
1907年、カールスバート

 守りの薄いキングの危険性が本局で見られる。白は巧妙に黒の急所の地点のh7に忍び寄った。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 Nf6 5.d4 exd4 6.cxd4 Bb4+ 7.Nc3

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 7.Bd2 に代わるこのグレコの手は現在の実戦ではほとんど見られない。それは白が引き分けしか望めないからである。

7...Nxe4 8.O-O Bxc3 9.d5

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 1898 年に創案されたこのメラー攻撃は白が有望である。

9...Bf6

 この手以外は不利になる。

10.Re1 Ne7 11.Rxe4 d6

 ここで黒が 11...O-O とキャッスリングすると白には 12.d6 とポーンを突く手と「銃剣攻撃」の 12.g4 との選択肢がある。

12.Bg5

Y071224C.JPG

 ここでも 12.g4 と突く手がある。

12...O-O

 キングの囲いが乱されるのは承知の上である。詳細に研究された手順は 12...Bxg5 13.Nxg5 O-O 14.Nxh7(この手以外では攻撃が続かない。14.Qh5 は 14...h6 で黒には何も恐い所がなくなる)Kxh7 15.Qh5+ Kg8 16.Rh4 f5 17.Qh7+(他の手たとえば 17.Re1 や 17.Be2 ははっきりしない)Kf7 18.Rh6 Rg8 19.Re1 Qf8 20.Bb5(キングの逃げ道をふさぐ)Rh8 21.Qxh8 gxh6 22.Qh7+ Kf6 23.Rxe7 Qxe7 24.Qxh6+ で千日手である。

13.Bxf6 gxf6 14.Nh4

Y071224D.JPG

 この手の価値はクイーンが主戦場に最速で駆けつけられることにある。

14...Ng6 15.Qh5 Kh8 16.Rae1 Bd7 17.Bd3

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 最終攻撃の準備である。

17...Rg8

 18...Rg7 と守りを固めようという手である。

18.Re7

 ビショップの筋を通した。18...Nxe7 とは取れない。取れば 19.Qxh7# で詰んでしまう。

18...Rg7 19.Bxg6 fxg6 20.Nxg6+ Kg8

 20...Rxg6 は 21.Qxh7# で詰み。

21.Rxg7+ 黒投了

Y071224F.JPG

 21...Kxg7 22.Re7+ で黒は望みがない。

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2007年12月26日

チェス500名局(10)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第10局

白 シファース
黒 ハルモニスト
1887年、フランクフルト

 同時に二箇所以上の弱点を攻撃されると防御側は受けきることができなくなるのはよくあることである。

 本局で白は通常のf7への攻撃に加えてe筋も完全に抑えた。その締め付けは圧倒的であった。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 Nf6 5.d4 exd4 6.cxd4 Bb4+ 7.Bd2

Y071226A.JPG

 ビショップにはビショップを展開して対抗した。

7...Bxd2+

 7...Nxe4 でポーン得しようとするのは幻想である。白は 8.Bxb4 Nxb4 9.Qb3(f7の地点とb4のナイトの二重攻撃)d5 10.Qxb4 dxc4 11.O-O Qd5 12.Na3 でポーンを取り返し形勢も明らかに有利である。

8.Nbxd2 d5

 中原でのこのポーン突きによる反撃はほとんど全ての開放型の序盤で黒にとって非常に重要である。黒は中原の争点をかなり軽減することができる。自分の白枡ビショップが解放され敵の中原が一部消滅する。

9.exd5 Nfxd5

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 ここでの大局上の要点は白が中原に維持しているポーンが「孤立し」且つ黒の中原のナイトのために「動けなくなっている」ということである。

 勝負はほとんど互角で平和的な結末に向かっているように見える。

10.Qb3

 敵のd5の地点に圧力を加えた。

 次のように 10.O-O から面白い変化が生じる。10...O-O 11.Ne5(戦いを仕掛ける。ここでの 11.Qb3 は無理である。穏やかな 11.Re1 は 11...Nce7 から 12...c6 で引き分けしか望めない)Nxd4 12.Nb3 Nxb3 13.Bxd5 Nxa1(落とし穴にはまった。13...Qf6 なら互角だった)14.Bxf7+ Kh8 15.Qh5 で決まる。

10.Nce7

 10...Na5 は不注意な手で 11.Qa4+ c6 12.Bd3 O-O 13.O-O で白に 14.b4 の狙いが残る。

11.O-O O-O 12.Rfe1

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 すぐに開放e筋を占めたのには隠れた動機がある。12.Ne4 も良い手だった。

12...c6

 この受けの本手には三つの目的がある。(1)d5の地点を強化する。(2)13...b5 と突く機会をうかがう。(3)クイーンがいつでもクイーン翼に出られるようにする。

13.a4

 今言った 13...b5 を防ぎ白クイーンをもっと動き易くする。

 ここでも 13.Ne4 は良い手である。

13...Qc7

 13...Qb6 に対して白は 14.Qa3 と応じ形勢も白が良い。

14.Rac1

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 見え見えの 15.Bxd5 Nxd5 16.Qxd5 という狙いがある。他には 14.Ne4 や 14.Ne5 も積極的な手だった。

14...Nf4

 この手は大切なd5の地点を放棄し白の危険なビショップの筋も通してしまった。黒は 14...Qa5 あるいは 14...Qf4 で受けるべきであった。

 14...Be6 は弱い手で 15.Ng5 と来られる。14...Qb6 には前に言ったように 15.Qa3 で応じられる。

15.Ng5 Neg6

 黒にとって難しい局面であるが 15...Nf5 と積極的に受けるべきであった。

16.Re8

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 そらしの捨て駒の手筋がきれいに決まる。

16...Rxe8

 16...Be6 と受けるのは 17.Rxa8 Rxa8 18.Nxe6 Nxe6 19.Bxe6 fxe6 20.Qxe6+ で白は重要なポーンを取れる。

17.Bxf7+ Kh8

 17...Kf8 と逃げるのは 18.Nxh7+ Ke7 19.Re1+ Be6 20.Rxe6+ で白が勝つ。

18.Bxe8 Ne2+

Y071226F.JPG

 ルークは取れるが気休めに過ぎない。この後白は最終攻撃に乗り出す。

19.Kh1 Nxc1 20.Nf7+ Kg8 21.Nh6+ Kf8 22.Qg8+ Ke7

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23.Bxg6 hxg6 24.Qxg7+ Kd8 25.Qf8+ Kd7 26.Ne4

Y071226H.JPG

 控えのナイトが出て行って 27.Nc5# を狙う。

26...Qd8 27.Qd6+ Ke8 28.Nf6+ 黒投了

Y071226I.JPG

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2007年12月31日

チェス500名局(11)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第11局

白 ホフマン
黒 フォン・ペトロフ
1844年、ワルシャワ

 著名な本局はお互いにf2/f7のたたき合いが見どころである。

 黒の指し回しはクイーンのただ捨てで頂点に達し、敵キングを息つく暇もなくしとめた。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 Nf6 5.d4 exd4 6.e5

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 通常の 6.cxd4 に代わるこの一瞬のポーン突きは思わぬ効果が得られることがある。

6...Ne4

 このありきたりの手よりも 6...d5 と中原で積極的に反撃して陣地を争う方が勝る。

7.Bd5

 この手は指し過ぎだった。普通に 7.cxd4 Bb4+ 8.Bd2 Nxd2 9.Nbxd2 で白は何も不満がないはずだった。

7...Nxf2

 他に指しようがないが必然でもある。

8.Kxf2 dxc3+

Y071231B.JPG

9.Kg3

 e1 に戻る方が分別のある指し方だった。g3 ではつかの間の安全でしかない。9.Be3 ははっきりと誤りで 9...Bxe3+ 10.Kxe3 cxb2 11.Bxf7+ としても 11...Ke7(11...Kxf7 は 12.Qb3+ から 13.Qxb2)で黒が駒得になる。

9...cxb2 10.Bxb2 Ne7

Y071231C.JPG

11.Ng5

 白は手筋にひかれて想像力の赴くままに勢いで指した。しかしここは 11.h3(11...Nf5+ 12.Kh2)と受けに気を配るべきであった。

11...Nxd5 12.Nxf7

Y071231D.JPG

 これが白の狙い筋だった。しかし白の読み筋どおりに 12...Kxf7 13.Qxd5+ Ke8 14.Qxc5 と進んだとしても 14...Qg5+ 15.Kf2 Rf8+ 16.Ke1 Qxg2 で白が良くない。11手目での白の大局観は誤りだった。それは黒の次の妙手によっても如実に示される。

12...O-O

 黒はクイーンをあっさりくれてやり、替わりにf筋を支配して白キングの退路を断った。

13.Nxd8

 気が変わって 13.Nh6+ は 13...gxh6 14.Qxd5+ Rf7 15.Qxc5 Qg5+ 16.Kh3 d6+ で黒が勝つ。

 だまって 13.Qxd5 は 13...Rxf7 14.h3(14.h4 は 14...Bf2+ から 15...Qxh4# で詰み)Qg5+ 15.Kh2 Qf4+ 16.g3 Qf2+ 17.Qg2 Qxg2+ 18.Kxg2 Rf2+ 19.Kg1 Rxb2+ で黒が駒得を維持する。

13...Bf2+

Y071231E.JPG

 以下は古典的なキングの捕り物の例である。

14.Kh3 d6+ 15.e6 Nf4+ 16.Kg4 Nxe6

Y071231F.JPG

 17...Rf4+ から 18...Rh4 の2手詰めがある。

17.g3 Nxd8+ 18.Kh4 Rf4+ 19.Kg5 Ne6+ 20.Kh5 g6+ 21.Kh6 Rh4+ 22.gxh4 Be3# 0-1

Y071231G.JPG

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2008年01月02日

チェス500名局(12)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第12局

白 シューモフ
黒 フォン・イェーニッシュ
1845年、サンクト・ペテルブルグ

 本局の見どころは動きすぎの手(例えば 7.exf6、8.Qe2+、12.Qh5、14.Qb5+)がどのように無駄手と化し相手の展開を助けてしまうかという所にある。最後には白キングの守りが薄くなって当然の帰結を迎えた。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 Nf6 5.d4 exd4 6.e5 d5

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 この手は黒の陣形をくつろげる良い手である。

7.exf6

 この駒の取り合いは黒の展開を助ける。7.Bb5 又は 7.Be2 が普通の手で黒は 7...Ne4 で中原にナイトを据えることになる。

7.dxc4 8.Qe2+

 白は単に 8.fxg7 又は 8.cxd4 とすべきところを、1ポーン損のまま攻撃に活路を見出そうとする。

8...Be6 9.fxg7

 9.Ng5 は 9...Qxf6 と肝心のポーンを取られてしまう。

9...Rg8

Y080102B.JPG

10.cxd4

 10.Bg5 と指す方が良かった。ここでも 10.Ng5(狙いは 11.Nxe6 fxe6 12.Qh5+ から 13.Qxc5)は 10...Qd5 11.Nxh7 O-O-O 12.Nf6 Qxg2 で成立しない。

10...Nxd4 11.Nxd4 Bxd4

Y080102C.JPG

12.Qh5

 このクイーンの単独出撃は白の形勢悪化につながった。

 ここでは 12.O-O Qf6 13.Nc3 Qxg7 14.g3 と進めるべきであったがこの後 14...O-O-O で形勢は黒が良い。

12...Qf6 13.O-O Rxg7

 黒は平然と 13...O-O-O と指すこともできた(14.Bg5 は 14...Qxg7 で空振りに終わる)。しかし本譜の手は白の駒繰りの不都合をあからさまにする。

14.Qb5+

 白は遅ればせながら 14.Nc3 と展開すべきだった。

14...c6 15.Qxb7

Y080102D.JPG

 黒キングはキャッスリングできなくなったので白クイーンの面目は立った。しかし自分のキングが狙いすました強襲に遭う。

15...Rxg2+

 ルークを犠牲の殴り込みである。

16.Kxg2 Qg6+ 17.Kh1 Bd5+ 18.f3 Bxf3+ 0-1

Y080102E.JPG

 白の次の一手で詰みである。

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2008年01月07日

チェス500名局(13)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第13局

白 第1フュジリエ
黒 ボンベイ
1853年、ボンベイ

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 Nf6 5.d4 exd4 6.e5 d5

Y080107A.JPG

7.Bb5

 身をかわして早期のこぜりあいを避けた。7.exf6 dxc4 はぬるい。しかし 7.Be2 と引く手はある。

7...Ne4 8.Bxc6+

 8.Nxd4 に対して手堅く指すなら 8...Bd7 である。

 8.cxd4 には黒は 8...Bb4+ でなく(9.Kf1 の後 10.Qa4 がある)8...Bb6 と引くのが良く、それで形勢は互角である。

8...bxc6 9.cxd4

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9...Bb6

 9...Bb4+ なら白は前の変化と同じく 10.Kf1 の後 11.Qa4 を狙う。

10.O-O Bg4

 この手は 10...O-O 11.h3 よりも活発な戦いになる。

11.Be3 O-O

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12.Qc2

 誘いの隙を見せて局面の進展を図った。12.Nbd2 は 12...Nxd2 13.Qxd2 Bxf3 14.gxf3 Qh4、12.h3 は 12...Bh5 13.g4 Bg6 でどちらも思わしくない。

12...Bxf3 13.gxf3 Ng5 14.Qf5 f6 15.Qg4 h6 16.f4

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16...f5 17.Qg2 Ne6 18.Rd1 Qh4 19.Qg3 Qh5 20.Nc3 Rfe8 21.Rd2

Y080107E.JPG

21...Nf8 22.Ne2 Re6 23.Qg2 Rg6 24.Ng3 Qh4 25.Kh1

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 14手目からここまで白は落ち着いて駒の組み換えを進めてきた。そして自陣を固めるだけでなく反撃も狙っていた。

25...Ne6

 25...Qg4 には 26.h3、25...Qd8 には 26.Qh3 なので、本譜でのポーン損は避けられなかった。

26.Nxf5 Rxg2 27.Nxh4 Rg4 28.Ng2 Rf8 29.h3

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29...Rgxf4

 交換損は仕方ない。29...Rg6 と引くのは 30.Nh4 Kh7 31.f5 でもっとひどいことになる。

30.Nxf4 Nxf4 31.Kh2 Ng6 32.Kg3 Kf7

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33.b4 Ke6 34.Rg1 Rf7 35.h4 a5 36.a3 axb4

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37.axb4 Ne7 38.Kh3 Kd7 39.h5 Ke6 40.Rg4 Rf3+

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41.Kg2 Rf7 42.Rd1 Kd7 43.Rg1 Nf5 44.Kh3 Ke7 45.Rf4

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45...Ke8

 45...Kf8 とg7のポーンを過剰に守れば 46.e6 Rf6 47.Rg6 で白は優勢のまま駒交換を進めることができる。

46.Rxf5

 これが決め手である。キングとルークが敵陣に侵入できる。

46...Rxf5 47.Rxg7 Rxh5+ 48.Kg4 Rh1

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49.Kf5 Rd1 50.Ke6 Kf8 51.Bxh6 Rh1 52.Rg6+ Rxh6 53.Rxh6

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 先を見通した戦略のおかげで白は再び交換得した。後は平穏無事なルーク対ビショップエンディングである。

53...Bxd4 54.Rh3 Bb2 55.f4 d4 56.f5 Bc3 57.f6 黒投了

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2008年01月09日

チェス500名局(14)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第14局

白 シューモフ
黒 コーリッシュ
1862年、サンクト・ペテルブルグ

 第12局と同じようにシューモフは本局でも自陣の安全に気を配らない。相手陣に進攻することばかりに気を取られてどんどん自分の駒が出払ってしまい、キングの守りや開通g列が危うくなった。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.O-O

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4...Nf6

 相手のeポーンを攻撃することによって黒はキャッスリングを早めることができる。4...d6 なら白は 5.c3 と応じ 5...Bg4 に対して 6.Qb3、又はこちらの方が勝るかもしれないが 6.d4 exd4 7.Qb3 と逆襲に出る。

5.d4

 5.c3 なら 5...Nxe4 と取っても大した危険はない。本譜の大胆な手の代わりに白は 5.d3 又は 5.Nc3(イタリア4ナイト試合)と穏やかな手を指すこともできた。

5...Bxd4

 この手が最善である。5...Nxd4 なら 6.Nxe5、5...exd4 なら 6.e5 (マックス・ランゲ攻撃)で乱戦になる。

6.Nxd4

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6...Nxd4

 ここでも 6...exd4 とポーンで取るのは 7.e5 で白に有利に展開する。

7.f4

 これほど激しくない 7.Bg5 もあった。

7...d6 8.fxe5 dxe5 9.Bg5

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9...Qe7

 クイーン側へキャッスリングするつもりである。9...Be6 なら白は 10.Na3 が良い手である。

10.b4

 不必要に 10...Qc5 を恐れて自陣を弱めてしまった。10.Nc3 が普通の手で以下のような展開が考えられる。
(a)10...c6 11.Ne2 Bg4 12.c3 これで目障りな敵駒を追い払うことができる。
(b)10...Be6 11.Bd3 O-O-O 12.Kh1 形勢は互角である。
(c)10...Qc5(魅力的な手だが鮮やかに咎められる)11.Bxf7+ Kxf7 12.Qh5+ Ke6 13.Bxf6 gxf6 14.Nd5 これで白が勝つ。

10...Be6

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11.Bxf6

 この手から始まる駒交換で黒の中原がこじんまりと引き締まるので 11.Bd3 と交換を避ける方が良かった。白の次の手ではなおさら Bd3 の方が良かった。

11...gxf6 12.Bxe6 fxe6 13.Qh5+

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13...Qf7 14.Qh4 O-O-O 15.Na3 f5

 黒は積極策に出て主導権を握った。

16.Qf2 Qh5

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17.Rae1

 17...Ne2+ を防ぎ逆に 18.exf5 exf5 19.c3 Nc6 20.Qxf5+ を狙っている。しかし黒は当然だまって待つようなことはせずキング翼のポーンを強化した。

17...f4 18.c3 Nc6 19.b5

 白が他の手を指してもやはりd筋とg筋を抑えている黒の優勢である。

19...Nb8 20.Qxa7 b6

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 黒は格好の餌で敵の駒を主戦場から離脱させることができた。

21.Qa4 Rhg8 22.Rd1

 ルークをぶつけた手は甘かった。何をおいても 22.Rf2 と指すべきだった。

22...Rxg2+

 ルークの殴り込みである。この後は鮮やかな好手順が用意されていた。

23.Kxg2 Qe2+

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24.Kh1

 24.Rf2 は 24...Rg8+ 25.Kh1 Qxf2 26.Qc2 Qf3+ で詰まされる。24.Kh3 は 24...Rg8(次に一手詰み)25.Rd8+ Rxd8(25...Kxd8 は誤りで 26.Qd1+ でクイーンを交換される)26.Qc4 Rd3+ で白の勝ち。

24...Rd2 白投了

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2008年01月14日

チェス500名局(15)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第15局

白 タウベンハウス
黒 バーン
1886年、ノッティンガム

 本局の黒は積極的かつ組織的にdポーンを突き進めd筋に決定的な基盤を得た。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.d3

 このポーンを4段目に進める代わりに(事前に c3 と突く突かないにかかわらず)、白は時にジュオコ・ピアニッシモと呼ばれる穏やかな戦型を選んだ。

4...d6 5.c3

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 この戦型でもこの手はそれなりの利点がある。5...Bg4 とかかってきた場合この手は危険な 6...Nd4 を防いでいる。それから白クイーンにクイーン翼への出口を与えている。他方この手はb1のナイトから自然な居場所のc3を奪っている。だから戦略家の中には 5.Nc3 の方を好む者もいる。

5...Nf6 6.Be3 Bb6 7.Qe2 Ne7

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 このナイトの捌きは黒の中原での反攻となる ...d5 への手始めである。このポーン突きが指せれば黒が主導権を握ることができる。

8.Nbd2 Ng6 9.h3 c6 10.Bb3 O-O

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11.g4

 この手は攻撃の強化のための手でなければ後の展開が示すように弱点(f3)を作り出すだけである。

 普通に 11.O-O としてその後 Rfd1、Nf1 と陣容を整えた方が良かった。

11...d5

 当然の応手である。側面攻撃には中原での反撃が定法である。これは準備が良ければ急速に勢力を拡張できる。

12.exd5 Nxd5

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13.Bxd5

 13...Ngf4 とされるとポーン損になるので白は「双ビショップ」を放棄することにした。実際 13.Bc2 と守ると 13...Ngf4 14.Qf1 f5 で黒が圧倒的な態勢になる。

13...cxd5

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14.Nf1

 目前の ...d4 の脅しに屈して白は当てもなくナイトを引いてしまった。ここは 14.Bxb6 Qxb6 15.Nb3 Nf4 16.Qd2 f6 17.O-O-O のように簡明さを追求すべきであった。そうすれば満足な陣形ではないけれどすぐには崩れなかったであろう。

14...d4 15.Bd2 dxc3 16.bxc3 Bd7

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 ここで局面を観察すると、黒は活動的な双ビショップの機動性に加えて白のd3の出遅れポーンに一貫して照準を合わせていることが分かる。

17.Ng3

 17.Rd1 なら 17...Ba4、17.Be3 なら 17...Ba5 で白陣の色々な弱点が露呈する。

17...Bb5 18.c4 Bc6 19.O-O

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19...f6

 黒の組織的で着実な駒捌きは見事と言わざるを得ない。19...Re8 とeポーンを守る手もある。

20.Nf5 Qd7

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21.h4

 21.Be3 に対しては 21...Bxf3 22.Qxf3 Qxd3 23.Qxb7 でなく落ち着いて 21...Rfd8 と指すのが良い。21.Rfd1 には 21...Ba4 がある。

 白は 21.Ne1 など考える気もしないので破れかぶれの策に打って出た。

21...Rad8 22.h5

 22.Ne1 と守っても 22...e4 と突かれるだけである。

22...Qxd3

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 黒は見事な指し回しの最初の成果を得た。

23.Qxd3 Rxd3 24.hxg6 Bxf3 25.Bb4 Re8

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26.gxh7+ Kxh7 27.c5 Bc7 28.Nd6 Rh8

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29.Nf7

 29.Kh2 は 29...Kg6+ 30.Kg3 Be2+ で黒が交換得し勝ちになる。

29...Rd4 30.Nxh8 Rxg4+ 31.Kh2 e4+ 32.Kh3 g5 白投了

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2008年01月16日

チェス500名局(16)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第16局

白 バード
黒 イングリッシュ
1883年、ロンドン

 熱闘の本局で白は第2戦線(つまりクイーン翼)で戦闘を仕掛けた。しかしこれがうまくいって敵の本陣へ殺到することになった。

 終盤ではルークとナイトのコンビが威力を発揮したがちょっとした油断から意外な結末を迎えた。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 Nf6

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5.b4

 5.d3 又は 5.d4 なら通常の手であるが、この側面で位を取る手は大胆で性急なマスターのバードのお気に入りの手だった。

5...Bb6 6.d3

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6...d6

 積極的に指すなら 6...d5 7.exd5 Nxd5 でeポーンの守りを放棄しても中原を開拓する手もあった。1851年のホルウィッツ対スタントン戦では次のような面白い展開になった。8.b5 Nce7 9.Nxe5 O-O 10.Bb2 Be6 11.O-O Kh8 12.a4 f6 13.Nf3 Ng6 14.Ba3 Re8 15.Qb3 Ngf4 16.Ra2 a6 17.bxa6 bxa6 18.Bc1 Rab8 19.Qc2 Bg4 20.Bxd5 Ne2+ 21.Kh1 Qxd5 22.c4 Qxf3 23.h3 Bxf2 24.Nd2 Ng3+ 黒があと4手で詰み(準窒息詰め)にできる。(訳注 25.Kh2 Qf4 26.Nf3 Nxf1+ 27.Kh1 Qh2+ 28.Nxh2 Ng3#)

7.O-O O-O 8.Bg5 Be6 9.Nbd2 Qe7

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10.a4 a6 11.a5 Ba7 12.Kh1 h6 13.Bh4 Rad8

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 この手は 14...d5 で整然とd筋を開ける準備である。そうなれば白はクイーン翼での活動がより一層難しくなる。

14.b5 Bxc4

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15.Nxc4

 15.dxc4 とポーンで取り返すのは 15...Nb8 16.Rb1 Nbd7 17.bxa6 bxa6 18.Rb7 Bb8 で白のクイーン翼の孤立ポーン群が恒久的な弱点になる。だから白は1ポーンを犠牲にしてクイーン翼での活動性を得ようとした。

15...axb5 16.Ne3 Bxe3 17.fxe3

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17...Qe6

 17...g5 は 18.Nxg5 と切ってこられるから明らかに時期尚早である。

18.Qb1

 今や主戦場となったクイーン翼で戦いが白熱化する。

18...g5 19.Bg3 Na7 19.c4

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 働き者の新兵を投入した。20...bxc4 は 21.Qxb7 があるので黒はこのポーンを取るわけにいかない。

20...c6 21.c5 Nh5 22.a6

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 白はポーンを次々と突き捨てて黒のポーンの形を乱そうとする。

22...bxa6 23.Rxa6 Qd7 24.d4 Nxg3+

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25.hxg3 Nc8 26.cxd6 f6 27.Rc1

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 白はポーン損を取り返しただけでなく主導権も握った。

27...Nxd6 28.Rcxc6 Ne8 29.Qxb5 g4

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30.Nh4 exd4 31.exd4 Qxd4 32.Nf5 Qxe4

Y080116L.JPG

33.Re6

 この手は慎重過ぎた。単純に 33.Nxh6+ Kh7 34.Qh5 と指せば白は黒の抵抗を封じることができた。34...Ng7 には 35.Qh4、34...Qg6 には 35.Ra7+ Ng7 36.Rxg7+ Kxg7(36...Qxg7 は 37.Nf5+)37.Rc7+ で白が勝つ。34...Rd7 も 35.Nf7+ Kg7(35...Kg8 は 36.Qh8+)36.Qh6+ Kxf7 37.Rxf6+ Nxf6(37...Ke7 は 38.Qxf8+ Kd8 39.Ra8+ Kc7 40.Qc5+ で次の手で詰み)38.Rxf6+ で以下詰みになる。(訳注 34...Rd7 の変化手順の中で 39.Ra8+ は 39...Qxa8 とただ取りされてしまいます。その前に 38.Rfe6+ で黒クイーンを取る手があります。)

33...Rd1+ 34.Kh2 Qb1 35.Qxb1 Rxb1

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 めまぐるしい戦いである。

36.Ra7

 白は筋の支配を完了した。しかし黒にも手は残っていた。

 36.Nxh6+ Kg7 37.Nxg4 は 37...Rh8+ で頓死を食らう。本譜の手の後白は 37.Nxh6+ Kh8 38.Ree7 からの詰みを狙っている。

36...Rb5 37.Nxh6+ Kh8 38.Nxg4 Rg5

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39.Rxe8

 この手は楽観的過ぎた。39.Kh3 はとんでもないポカで 39...Rh5# で頓死する。白は 39.Nf2 で相手をせかすべきだった。

39...Rh5+ 40.Kg1 Rxe8 41.Nxf6 Rh1+

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42.Kxh1

 これは取るしかない。42.Kf2 は 42...Rf8 で黒が勝つ。

 以下のステイルメイトの手筋は痛快である。

 バードは白を除くそこに居合わせた者全員が面白がったと報告している。

42...Re1+ 43.Kh2 Rh1+ 44.Kxh1 ステイルメイト

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2008年01月21日

チェス500名局(17)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第17局

白 デュボア
黒 シュタイニッツ
1862年、ロンドン

 本局の見どころはh筋での黒の反撃である。敵のキングがまだ原位置に留まっていて反対翼にキャッスリングできる時盲目的にキャッスリングする危険性の古典的な例が見られる。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.O-O Nf6 5.d3 d6

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6.Bg5

 ビショップがf6のナイトにかかっていったことにより白は厳しい反撃にさらされる。それは黒がまだキャッスリングしていないこと、それから特に自分のキングが居を構えた方面だったからである。今か次の手で 6.Be3 と指すべきだった。

6...h6 7.Bh4 g5 8.Bg3 h5

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 黒は既に戦場の支配者となっている。狙いは 9...h4 でビショップを殺すことである。

9.h4

 9.h3 は 9...h4 10.Bh2 g4 で黒が優勢である。

 9.Nxg5 には次のような巧妙な手が用意されている。9...h4 10.Nxf7 hxg3(このクイーンを取らせる手が成立する)11.Nxd8(11.Nxh8 とルークを取るのは 11...Bg4 12.Qd2 Qe7 の後 ...Qh7 の狙いで黒の攻撃が続く)11...Bg4 12.Qd2(12.Nc3 でクイーンを取らせる方が良い)Nd4(13...Ne2+ 14.Kh1 Rxh2# で詰みの狙い)13.Nc3(13.h3 は 13...Ne2+ 14.Kh1 Rxh3+ 15.gxh3 Bf3# で詰み)Nf3+ 14.gxf3 Bxf3(15...gxh2# で詰みの狙い)15.hxg3 Rh1# で詰み。

9...Bg4

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10.c3

 10.hxg5 は 10...h4 11.Bh2 Nh7 でかえって黒の攻撃に弾みがつく。

10...Qd7 11.d4 exd4 12.e5 dxe5 13.Bxe5 Nxe5 14.Nxe5 Qf5

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 白はある程度捌きに成功したが黒の攻撃は途切れない。

15.Nxg4

 15.Qa4+ には 15...Kf8 とよけておいて大丈夫である。

15...hxg4 16.Bd3

 16.cxd4 には幸便に 16...O-O-O とキャッスリングする。

16...Qd5 17.b4 O-O-O

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18.c4

 18.bxc5 とビショップを取ると黒は 18...dxc3 19.Bc2 でなく 18...Rxh4 19.c4 Rdh8 20.f3 g3 から ...Rh1# の受けなしに追い込む。黒の17手目がh筋からの攻撃にいかに弾みをつけたかが歴然としている。

18...Qc6 19.bxc5 Rxh4 20.f3 Rdh8

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 狙いは 21...g3 22.Bf5+ Qe6 23.Bh3(23.Bxe6+ は 23...fxe6 で詰みが受からない)Rxh3 24.gxh3 Qxh3 で、白キングは助からない。

21.fxg4 Qe8

 22...Qe3+ からの2手詰みがある。

22.Qe2 Qe3+ 23.Qxe3 dxe3

Y080121G.JPG

 相変わらず黒キングはf2から逃げられない。

24.g3 Rh1+ 25.Kg2 R8h2+ 26.Kf3 Rxf1+ 27.Bxf1 Rf2+ 28.Kxe3 Rxf1

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 駒の収穫が一段落して駒割りは互角である。しかし白陣は萎縮した形でポーンも活動性を失いもはや敗勢である。

29.a4 Kd7 30.Kd3 Nxg4 31.Kc3 Ne3 32.Ra2

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 もはや成すすべがない。

32...Rxb1 33.Rd2+ Kc6 34.Re2 Rc1+ 35.Kd2 Rc2+ 36.Kxe3 Rxe2+ 37.Kxe2 f5 白投了

Y080121J.JPG

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2008年01月28日

チェス500名局(18)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第18局

白 メーソン
黒 ヴィナヴェル
1882年、ウィーン

 どうやって敵陣に侵攻するか。有名な本局で白は天才の所業でこの問題を解いてみせた。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.d3 d6 5.Be3 Bb6 6.Nbd2 h6

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7.Nf1

 白は 7.O-O でキングの最終の落ち着き先を明らかにするより先に自陣内で駒の再編成に取りかかった。

7...Nf6 8.h3 Ne7 9.Ng3 c6 10.Bb3

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 このビショップ引きは黒のポーン突きの予防である。それでも 10...d5 とくれば 11.Nxe5 がある。

10...Bxe3

 あくまでも狙いを実現させるなら 10...Ng6 としてから 11...d5 だった。

11.fxe3 Qb6 12.Qd2 a5 13.c3 a4

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14.Bd1 Be6 15.O-O Qc7 16.Nh4 b5

Y080128D.JPG

17.Bc2

 17.d4 には 17...d5 で黒には 18...exd4 と 18...dxe4 の二つの狙いが残る。

17...c5 18.Ngf5 Bxf5 19.Nxf5 Nxf5 20.Rxf5 Nd7 21.Raf1 f6

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 黒はキング翼を封鎖したが同時にキング翼の弱体化という代償を伴った。黒の 10...Bxe3 によるf筋の開通は白にだけ利益をもたらしたことが明らかとなった。

22.Bd1

 ビショップが働き出した。

22...a3 23.Bh5+ Ke7

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 黒キングはポーンの堅固な城壁の中にいるが盤の中央列では比較的安全としかいえない。

24.b3 Rhf8 25.R5f3 Nb6 26.Rg3 Kd8 27.Bg4 Qe7 28.Be2

Y080128G.JPG

 このビショップ引きは 29.d4 を狙っている。そうなればビショップ(b5の地点に)とクイーン(d列で)が働き始める。

28...Kc7 29.d4 c4 30.Rb1

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 あっという間に戦線が移動した。

30...g5

 黒クイーンの活動範囲が回復した。

31.bxc4 bxc4 32.Rb4

Y080128I.JPG

 ポーン得は必至である。

32...Qe6 33.d5 Qc8 34.Bxc4 Na4

Y080128J.JPG

 35...Kd8 でポーン損を回復する手を狙っている。

35.Bb5 Nc5 36.Qe2

Y080128K.JPG

 37.Qh5 から敵陣を荒らす手を狙っている。

 白はポーンが1個多いといっても全局的にはそれほど大したことはない。白の優勢は実際には黒駒が連係を欠いていることによる。連係の悪さは彷徨するキング、働きのないクイーン翼ルーク及びポーンの周囲の空所が原因である。

36...f5 37.exf5

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37...e4

 すぐに 37...Qxf5 と取ると 38.Rf3 で白が必勝形になる。それでまず 37...e4 として次の 38...Qxf5 を狙った。

38.Bc6

Y080128M.JPG

38...Rb8

 38...Ra7 と逃げるのは 39.Qb5(次に 40.Qb6# で詰み)Qb8 40.Qxb8+ Rxb8 41.Rxb8 Kxb8 42.h4(敵の前線を破壊する)Rg7 43.f6 Rf7 44.hxg5 hxg5 45.Rxg5 Rxf6 46.Rg8+ Kc7 47.Ra8 から 48.Rxa3 で決定的なポーン得になる。

39.Qh5 Rf6

 陣形を固めたことになるのだろうか?白の次の一発がその疑問に答えを与える。

40.Rxg5

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 ルークを切ってクイーンを侵入させた。

40...hxg5 41.Qh7+ Nd7 42.Bxd7

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42...Qg8

 42...Qxd7 は 43.Rc4+ Kd8 44.Qh8+ でルークを取り返し猛攻が続く。

43.Rb7+

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 この手は単なる手筋にとどまらずチェス史上最も洗練された着想の産物でもある。技術的にはその主眼点はそらし(43...Rxb7 44.Qxg8)、かく乱(43...Kd8 44.Rxb8+)及び両チェックによる分断(43...Kxb7 44.Bc8+)である。

43...Kxb7 44.Bc8+

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44...Ka8

 44...Kxc8 は 45.Qxg8+ Kc7 46.Qg7+ から 47.Qxf6 である。

 本譜の手は負けを承知のはかない抵抗である。

45.Qxg8 Rxf5 46.Qd8 Rxd5 47.Qd7 Rb1+ 48.Kh2 Rd2

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49.Qc6+ Kb8 50.Qxe4 Rbb2 51.Be6 Kc7 52.Qc4+ Kb6

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53.Bd5 g4 54.hxg4 Rf2 55.Qc6+ Ka7 56.Qc7+ 黒投了

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2008年02月04日

チェス500名局(19)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第19局

白 バックル
黒 ハルビッツ
1846年、ロンドン

 本局は次のような経過をたどった。穏やかな展開から中原での小競り合いが発生し両者のポーン陣形に弱点が生じる。白が巧妙に1ポーンを得する。駒の精算が進んでナイト・エンディングになる。さらに38手目で同数ポーン(4個)のエンディングになるが、白の遠方パスポーンが決定的な役割を果たす。黒のもがきは10手しか続かない。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.O-O Nf6

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5.Nc3

 5.d3 又は 5.Re1(5...Ng4 6.d4)も良い手である。しかしポーンを犠牲にする 5.c3 Nxe4 又は 5.d4 Bxd4 はあまり明快な指し方でない。

5...d6 6.h3 O-O 7.d3 Be6 8.Bb3 Ne7 9.Ne2

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 両者ともじっくりした駒の展開で陣容を良くしようとしている。

9...Ng6 10.Ng3 c6 11.c3 d5 12.d4

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 このポーンのぶっつけで見たことがないような戦いになってきた。

12...dxe4 13.dxc5 exf3 14.Qxf3

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 クイーンが手順に好所に来た。

14...Bxb3 15.axb3 Nd5

 この手は 16.Bg5 でナイトが釘付けにされるのを避けた。

16.Nf5

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 ナイトが重要な拠点を占めた。

16...b6

 この手は自分からクイーン翼のポーンを弱めて良くない。代わりに 16...Nh4 で単純化を図るか又はクイーンを 16...Qf6 に捌いて 17...b6 18.cxb6 axb6 19.Rxa8 Rxa8 を狙えば互角の形勢だった。

17.cxb6

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17...Qxb6

 17...axb6 とポーンで取るのは 18.Rxa8 Qxa8 19.c4 Nde7(19...Ndf4 は 20.Bxf4 Nxf4 21.Qxc6 で本譜と同様にポーン得する)20.Nxe7+ Nxe7 21.Be3 Qb7 22.Rd1 で白が主導権を握る。

18.c4 Ndf4

 決死の覚悟で反撃を目指した手だが 18...Nde7 と引く方が賢明だった。

19.Bxf4 Nxf4

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20.Rfd1

 20.Ne7+ Kh8 21.Nxc6 は 21...f6 でナイトが不安定である。だから白は別の手で黒の弱いcポーンを取りに行くことにした。なおここでの 20.Qxc6 は 20...Qxb3 と来られる。

20...Qc7

 20...Kh8 と先に逃げると 21.Rd7 と侵入される。本譜の手はそれを防いだ手だが白のもう一方の狙いには役立っていない。

21.Qxc6 Rfc8 22.Qxc7 Rxc7 23.Nd6

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 1ポーン得というわずかな有利を勝ちに結び付けるには白は真の卓越した技量を発揮しなければならない。

23...Ne2+ 24.Kf1 Nd4 25.b4 f5 26.c5 Rb8 27.Ra4

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 攻防の手である。

27...g6 28.Rda1 Nc2 29.Rxa7 Rxa7 30.Rxa7

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30...Nxb4

 30...Rxb4 は 31.c6 でこのポーンを止められない。ここから白は巧妙に駒の精算を推し進める。

31.Rb7 Rxb7

 31...Nc6 は 32.Rxb8+ Nxb8 33.b4 Na6 34.c6 でだめである。

 本譜のナイト・エンディングは勝つの