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チェス500名局 アーカイブ

2007年11月18日

チェス500名局(1)

「チェス500名局」
タルタコーワ、デュ・モン著

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 はしがき

 本書には固有の価値を持つ棋譜が収められている。古今の棋譜には傑出した内容の棋譜が多数存在するが、ここではチェスの歴史においてそれぞれの時代を代表する名局が選ばれている。

 棋譜を定跡別に分類しそれぞれの中では年代順に並べることにより、棋譜の学習的な価値が増すことを期待した。

 布局の特性はしばしば中盤に及び、またポーン構造の特徴によっては終盤にまで影響を及ぼす可能性がありしばしばそうなることがあることは銘記しておいた方が良い。本書のような編集は布局定跡の標準的な棋譜集を補うものと見ることもできる。

 著者らは全体の校正に多大の労苦をして頂いたカステヨ氏およびコレス氏、援助をして下さったその他の方たちに感謝の意を表したい。

 さらにジョーン・キーリー嬢、現ロナルド・スミス夫人には特に感謝したい。彼女は8千局もの棋譜から、最終的な選択のために2千局以上をコピーし一部は訳すという偉業を、類まれな完璧さと正確さで行なってくれた。

 タルタコーワ、デュ・モン

第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第1局

白 ブレダウ
黒 フォン・デル・ラーザ
1839年、ベルリン

 モーフィーの確立した偉大な原則-ポーン中原の形成、役駒の最速の展開(たとえ数量損をしても)、攻撃の筋のこじ開け、深く進攻したポーンの絶大な効果-これらは全て古い本局に既に見かけられる。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3

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 次にポーンをd4に突くことによりポーン中原を確立する構想。今のチェスが生まれた頃から既に知られ認められている構想である。

4...Qe7

 初期の頃の防御法の一つ。

5.d4 Bb6

 前の手と関連した手。黒は明らかにe5の地点を保持したがっている。もし 5...exd4 と中原を放棄すれば白は 6.O-O とポーンを犠牲にして(6...dxc3 7.Nxc3)圧迫を強め、黒にとっては面倒なことになるだろう。

6.O-O d6 7.a4

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 黒が放置すれば白が駒得をする。つまり 8.a5 Bxa5 (8...Nxa5 は 9.Rxa5 Bxa5 10.Qa4+ でビショップが取られる) 9.Rxa5 Nxa5 10.Qa4+ Nc6 11.d5 a6 12.dxc6 b5 13.Bxb5 で白が駒得を維持する。

7...a5

 7...a6 8.b4 という変化もある。

8.Be3 Nf6

 8...exd4 9.cxd4 Qxe4 とポーンをかすめ取るのは 10.Re1 で、キングとクイーンが直列に並んでいるので黒の方が困る。

9.dxe5

 9.Nbd2 として中原の争点を維持することもできた。

9...Nxe5 10.Nxe5 dxe5 11.Bxb6 cxb6 12.Nd2 O-O 13.Qe2

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13...Bd7

 13...Be6 で単純化を目指す代わりに、黒はもっと積極的な行動を取る。

14.Rad1

 白はポーン損をかえりみずに展開を急ぐ。

14...Bxa5 15.b3 Bc6 16.f4

 f筋を開けるのは重要である。

16...Rad8 17.fxe5 Qxe5 18.Rf5

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18...Qd6

 18...Qe7 と逃げるのは 19.e5 b5 20.Ne4 で白の圧迫がさらに効果的になる。

19.e5 Qc5+ 20.Kh1 Ne4

 駒交換により一息つけようという黒のもくろみは失望に終わる。しかし 20...Nd5 と逃げるのは 21.e6 と突かれるし、20...Nd7 又は 20...Rde8 には 21.Rdf1 とルークを重ねられて白の優勢は動かない。

21.Nxe4 Rxd1+ 22.Qxd1 Bxe4

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 攻撃的なルークが逃げてくれることを期待している(例えば 23.Rg5 なら 23...h6 24.Rh5 Bg6 の後 25...Qxe5、又は 23.Rh5 なら 23...Bg6 24.Rg5 Qe3)。それよりも面白いのは本譜の以下のドラマで、敏感なf7の地点を巡って展開される。

23.Rxf7 Rxf7 24.Qd8+ Qf8 25.Bxf7+ Kxf7 26.e6+ Kg8 27.e7 黒投了

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 このポーンの働きが攻撃の決め手になった。

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2007年11月28日

チェス500名局(2)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第2局

白 タラシュ
黒 アリョーヒン
1925年、バーデン=バーデン

 本局での黒の戦略は深く練られ余人には思いもつかないような駒の組み替えに満ちている。11...Qd8 と 13...Ba7 はそのような絶妙な手待ちであり、意表の飛び出しの 21...Bf5 は勝着の 22...Bxh3 の先触れだった。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 Bb6

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 古い手順の 4...Qe7 5.d4 Bb6 と同じことになる。しかし微妙な違いがある。本譜の手に対して白が (5.d4 の代わりに) 5.d3 と指せば黒はeポーンの「過剰防御」のためにクイーンを動かす必要がなく、この点において勝っている。

5.d4 Qe7 6.O-O Nf6

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 この手も定跡の改良であり 6...d6 よりも積極的である。ここで白はeポーンを守るために何かしなければならない。そしてそのために白の攻撃力が減殺される。

7.Re1

 ここでの最も快活な手は 7.Bg5 である。7.dxe5 では局面が単純化し過ぎるし、7.d5 Nb8 では窮屈な局面になる。

7...d6 8.a4 a6 9.h3

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 精力的な 8.a4 の後のこの手は慎重すぎてキング翼の弱点となる可能性もある。意欲的に指すならば 9.Na3 である。

9...O-O 10.Bg5 h6 11.Be3

 この手に対して 11...Nxe4 ははまりで、12.d5 で黒が駒損になる。

11...Qd8

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 eポーンを守る役目を終えてクイーンは元の位置に戻り、ナイトのためにその地点を空けてやる(12.d5 Ne7)。

12.Bd3

 ここは白にとって 12.dxe5 Nxe5 13.Nxe5 dxe5 14.Bxb6 cxb6 15.Qe2 で単純化を図る機会で、互角の形勢となるところだった。

12...Re8 13.Nbd2 Ba7

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 これも先受けの手。このビショップ引きは 14.Nc4 に備えると共に、14.d5 に続く 15.Bxb6 により黒のポーン構造が壊されるのを防いでいる。

14.Qc2 exd4 15.Nxd4

 15.cxd4 とポーンで取ると 15...Nb4 が来る。

15...Ne5 16.Bf1

 ここまで深く引くよりも 16.Be2 の方が良かった。

16...d5

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 このポーン突きにより白は主導権を握った。

17.Rad1

 17.f4 は 17...Ng6 18.e5 Nh5 で黒が有利である。

17...c5 18.N4b3 Qc7 19.Bf4

 駒を交換することにより争点を緩和する意図である。

19...Nf3+

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 読みの入った手。黒はキング翼に襲撃部隊を集結させることに成功し、ポーンの犠牲も十分な根拠がある。

20.Nxf3 Qxf4 21.exd5

 差し出されたポーンを頂く。この手に対してすぐに 21...Bxh3 は 22.gxh3 Qxf3 23.Bg2 で白の陣形は強固なので怖くない。

21...Bf5

 この威嚇的な手の意味は白のビショップを監視の地点からそらしてから、薄くなったキング翼に襲いかかろうというものである。

22.Bd3

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 もっともそうな手。しかし直前の解説に照らして 22.Qc1 又は 22.Qd2 と指す方が賢明だった。しかしそう指しても黒が 22...Qxa4 とポーンを取り返して優勢だったろう。

22...Bxh3

 白陣を破壊し(白の9手目の解説を参照)さらに 23...Bxg2 24.Kxg2 Qg4+ を狙っている。

23.gxh3

 23.Qd2 の方がもっとねばれた。

23...Qxf3 24.Rxe8+

 だまって 24.Bf1 と指し以下 24...Rxe1 25.Rxe1 Qxd5 となれば白は1ポーン損ではあるが本譜のような破滅を避けられただろう。

24...Rxe8 25.Bf1 Re5

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 縦からの攻めが決め手である。

26.c4 Rg5+ 27.Kh2 Ng4+

 素晴らしい。

28.hxg4

 28.Kg1 とかわしても 28...Nxf2+ で簡単に詰む。

28...Rxg4 29.Bh3 Rh4 白投了

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2007年12月03日

チェス500名局(3)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第3局

白 エリスカセス
黒 グリューンフェルト
1933年、モラフスカ・オストラバ

 本局は典型的な現代風の指し方で、消耗戦を連想させる。そこで見られるのは「精算の捨て駒」とも呼ぶべき技法である。

 その観点から見ていくとまず華麗な 27.Nf5 による駒損は一時的なもので白は開通したg筋に侵入口を確保する。その後の 40.h5 はbポーンを捨ててもすぐに取り返しb筋に活動拠点が得られることを見越している。最後に 45.Qf7+ は大切なポーンも捨てるが、ルークが敵陣に侵入するというもっと重要な代償を得る。

 最終手の 53.Rh8 も理論的には、深く進入したdポーンをおとりにして最後に残った役駒を精算することが目的と言える。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 Bb6 5.d4 Qe7 6.O-O Nf6 7.d5

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7...Nb8

 後でd7の地点から戦闘に復帰するつもりである。7...Nd8 は長いことそのままでいなければならないだろう。7...Na5 は 8.Bd3 の後 9.b4 で野垂れ死にする。

8.Bd3

 中原地帯は閉鎖されたが白は永続する圧力に期待をかけている。危険がないとはいえない精力的な指し方は 8.d6 からのポーンの犠牲に始まる。以下 8...Qxd6 9.Qxd6 cxd6 10.Bd5 となりクイーンがいなくなったにもかかわらず白が一帯を制圧している。

8...d6 9.Nbd2 a6

 10.Nc4 の狙いに備えて黒は活動的なビショップを取られないようにする。

10.Nc4 Ba7 11.a4 O-O 12.b4 Ne8

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 次に 13...f5 と突いて攻勢に移ろうという意図である。しかし白は次の手でそれを阻止する。

13.Qc2 g6

 黒はそれでもなお ...f5 と突く望みを捨てない。それと同時に現在働いていないキング翼のナイトの活用も意図している。しかし黒の陣形は凝り形のままである。

14.Bh6 Ng7 15.Ne3 f6

 黒は狙っていた ...f5 突きを断念しなければならないと自分の方から認めた。

16.Rad1 Rf7 17.Kh1

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17...Nd7

 他の手たとえば 17...Kh8 でも白は 18.Rg1 で次にポーンを g4 に突き積極的な攻勢を開始するだろう。

18.g4 Nf8 19.Rg1 Bxe3 20.fxe3 Bd7 21.Rg3

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21...c6

 黒は 21...Rc8 と準備してからこの反抗を行ないたいところだが 22.Bc4 で完全にその目論見はつぶされる。

22.Bc4 cxd5 23.Bxd5 Be6 24.Rdg1 Rc8 25.Nh4 Bxd5 26.exd5

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26...Rc7

 26...Kh8 に対しても白は本譜と同じく 27.Nf5 で応じる。以下 27...gxf5 28.gxf5 で、黒のg7のナイトは動くと 29.Rg8# で詰んでしまうので動けなくなる。

27.Nf5

 主戦場に巧妙に兵力を集中した白はいよいよ敵の防御を崩しにかかる。

27...gxf6

 27...Nxf5 28.gxf5 g5 とg筋を開けさせないのは 29.h4 あるいはもっと手っ取り早く 29.Bxg5 fxg5 30.Rxg5+ で抵抗を打ち破られる。

28.gxf5 Qe8 29.Qg2 Qd7

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30.Rxg7+ Rxg7 31.Bxg7 Qxg7 32.Qc2 Ng6 33.fxg6 h6

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 33...h5 なら白は本譜と同じように指し進めしかもさらに効果的になる。ここで全体的には黒が敵の攻め足を食い止めることに成功し、白は新たな戦場を求めることになる。

34.Qf5 Qf8

 34...Rxc3 とポーンを取ると 35.Qe6+ Kh8 (35...Kf8 は 36.Qxd6+) 36.Qe8+ Qg8 37.g7+ Kh7 38.Qg6# で詰んでしまう。

35.c4 Kg7

 ここでも 35...Rxc4 とポーンを取るのは 36.Qe6+ Kg7 (36...Kh8 は 37.g7+ でひどい) 37.Qd7+ K 任意 38.Qh7# で詰んでしまう。

36.Rc1 b6

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37.e4 Qe7 38.Qf2 Rb7 39.h4

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39...a5

 39...Qd7 と受ける方が良かった。39...Kxg6 とポーンを払うのは自殺手とも言うべき手で 40.Rg1+ でgファイルからの殺到が厳しすぎる。

40.h5 axb4 41.Rb1 b3 42.Rxb3 Qd7

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43.Qf5

 白は決定的な要所を占拠した。黒はクイーンの交換に応じることもできなければ(43...Qxf5 44.exf5 で 45.a5 が狙い) 43...Qxa4 で最悪の事態を逃れることもできない(44.Rf3)。

43...Qe7 44.Qe6 Qc7 45.Qf7+ Qxf7 46.gxf7 Ra7

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 47.a5 に備えた。しかし白ルークの敵陣への侵入で勝敗が決する。

47.Rxb6 Rxa4 48.Rxd6 Rxc4 49.Rxf6 Kf8 50.d6 Rxe4 51.d7 Rd4 52.Rxh6 Kxf7 53.Rh8 黒投了

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 投了も止むを得ない。53...Rxd7 とポーンを取るよりないが 54.Rh7+ Ke6 55.Rxd7 Kxd7 56.h6 で黒キングが「正方形」の外側にいるのでhポーンの勝利への進軍を止めることができない。

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2007年12月05日

チェス500名局(4)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第4局

白 ド・ラ・ブルドネ
黒 マクドネル
1834年、番勝負

 本局はルークの使い方の好例である。ルークは一般に考えられているよりも柔軟に使えることが示される。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 d6

 狙いを持って展開する 4...Nf6 の方が積極性がある。

5.d4 exd4 6.cxd4

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6...Bb6

 6...Bb4+ なら白には 7.Nc3 と 7.Kf1(8.d5 から 9.Qa4 の狙い)の二途がある。本譜では黒のビショップは敵の中原に睨みを利かせ続ける。

7.d5

 中原を閉鎖する。とりわけ自分のビショップの利きも止まる。しかし白は代わりに他の駒が自由に動けるようになることを期待している。最も強硬な手は 7.Nc3 である。

7...Ne5

 7...Na5 は悪手で 8.Bd3 と引かれた後 9.b4 でナイトを取られる手が残る。7...Nce7 と引くのは 8.e5 で白に楽しみが多い局面である。

8.Nxe5 dxe5 9.Nc3 Nf6

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 この型にはまった手よりも、白の守備の要のナイトが交換でいなくなったことに乗じて 9...Qh4 と出る手が面白かった。

10.Bg5 O-O

 早急に釘付けを緩和するために黒が 10...h6 と指しても白は 11.Bh4 g5 12.Bg3 Qe7 あるいは 11.Bxf6 Qxf6 で互角の局面にしたりはしない。代わりに手順の妙で 11.Bb5+ Bd7 12.Bxd7+ Qxd7 13.Bxf6 gxf6 14.Qf3 Qd6 15.O-O で全局的に圧倒する。

11.Qf3 Qd6

 この手はナイトの釘付けを解消し、白の手によっては局面が単純化される。似たような構想でもっと効果的だったのは 11...h6 12.Bxf6 Qxf6 13.Qxf6 gxf6 という進行で、ここで 14.g4 なら 14...Kh7 でさっさと引き分けの形を作り上げる。

12.Bxf6 Qxf6 13.Qxf6 gxf6

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14.g4

 これは見事な構想である。受け(14...f5 からの捌きを封じる)と攻め(g筋から攻め込む)とを兼ね備えている。14...Bxg4 は 15.Rg1 h5 16.h3 でビショップを取られるのでこのポーンは取れない。

14...Kg7

 せっかちな性格のマクドネルは逆襲(後の 18...h5)を計画する。しかしここは 14...Kh8 の方が穏当だった。他に受ける手としては 14...h6 又は 危険な駒を取り除く 14...Ba5 があった。しかし黒は敵の策略を意に関していないようである。

15.Ne2 Rh8 16.Rg1 Kf8 17.Rg2

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 f2を守ってキングが動けるようにするのと、重要なg筋にルークを重ねる目的である。

17...Ke7 18.O-O-O h5

 黒の14手目から狙っていた手である。もっと賢明な手は 18...Bd7 の後 19...Rag8 とルークを活用する手であろう。

19.g5

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19...f5

 ここが勝負所である。黒はまたもや敵の手を軽視し形勢を楽観しているようである。次のように難解な変化があった。

19...fxg5 20.Rxg5 Bxf2 (21...Be3+ の狙い)

A) 21.Rxe5+ Kd6 これはルークの逃げ場がなく黒の勝ち。

B) 21.Kd2 (21...Be3+ の防ぎ) Bh4 で受け切れる。

C) 21.d6+ cxd6 22.Rg7 Be6 23.Bxe6 Kxe6 24.Rf1 Be3+ 25.Kd1 Raf8 これは黒の陣形がしっかりしている。

D) 21.Rg7 (22.d6+ の狙い) Kf8 22.Rg2 Be3+ 23.Kc2 Rg8 黒陣は安泰である。

E) 21.Rg2 (最善の攻撃手) Be3+ 22.Kc2 これなら互角の形勢。

20.Nc3 Bc5

 21.d6+ cxd6 22.Nd5 に備えた手。

21.g6 Bd6 22.gxf7 Kxf7

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23.f4

 すぐに 23.Rdg1 とルークを重ねると黒に 23...f4 と封鎖される。

23...exf4 24.Rdg1 Kf8

 24...Bd7 は 25.Rg7+ Ke8 26.e5 Bf8 (26...Bxe5 は 27.Re1) 27.R8g6 で白の独壇場となる。

25.Rg6

 全力による総攻撃への準備。

25...f3 26.exf5 Be5 27.d6

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 7.d5 以来20手もの間封印されていた筋を再び開ける。その効果は絶大である。

27...cxd6 28.Rg8+ Rxg8 29.Rxg8+ Ke7 30.Nd5+ Kd7 31.Bb5# 1-0

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2007年12月10日

チェス500名局(5)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第5局

白 シュピールマン
黒 ヤノフスキー
1907年、カールスバート

 この好局の見どころは白がe筋を完璧に利用するところである。白はポーンを一時的に犠牲にして(8.O-O)この筋を開通させ、後にはまたポーンを犠牲にして(19.d6)この筋を支配下に治めた。

 次々と敵陣に侵入した白の駒(18.Re7, 25.Nfe7+, 29.Ne7)は敵を壊滅させた。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 d6 5.d4 exd4 6.cxd4 Bb6

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7.h3

 7.Be3 又は 7.Nc3 には黒の 7...Bg4 がうるさいので、白はわざわざ一手かけて黒のこの手を完全に封じた。

7...Nf6 8.O-O

 8.Nc3 とポーンを守ると次のようないつもの単純化の手順がある。8...Nxe4 9.Nxe4 (9.Bxf7+ Kxf7 10.Nxe4 Re8 はキャッスリングはできなくなったが黒が良い。9.Qe2 なら 9...O-O でよい。) d5

 だから白は攻勢を取るためにポーンを取らせた。

8...Nxe4 9.Re1 O-O 10.Rxe4 d5 11.Bg5

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 白は際どい所でこの手を利かせる。黒は 11...f6 とはできなかった。それは 12.Bb3 fxg5 13.Nc3 で白が良くなる。

11...Qd6 12.Bxd5 Qxd5 13.Nc3 Qd7 14.d5

 この中原の孤立ポーンはブロックの役割をはたす。

14...f6 15.Be3

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15...Nd8

 e6の地点に利かせるためにここに引いた。15...Ne7 と引くのは 16.Bxb6 axb6 17.Qb3 Kh8 18.Nd4 で白には色々な狙いがある。

16.Bxb6 axb6 17.Qe2

 e筋を強化した。

17...Nf7 18.Re7 Qd8

 次に 19...Ne5 を見ている。

19.d6

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 ポーンを突き捨てて他の駒の働き良くする。

19...Nxd6

 ここは勝負所である。19...Qxd6 とクイーンで取るのは 20.Nb5 (20.Rd1 でも良い)で明らかに白が良い。19...c6 は 20.d7 Bxd7 21.Rd1 Ne5 22.Rdxd7 Nxd7 23.Qe6+ Kh8 24.Rxd7 という好手順で有利な駒割りになる。19...cxd6 は 20.Nb5 (本手は 20.Re3 で後で黒のクイーン翼の乱れをつく) Ra5 21.Rd1 Ne5 で 22...Rxb5 を狙い形勢不明である。

20.Nd5 Rf7 21.Re1 Bd7 22.Nh4

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 もう一つのナイトの働きに負けまいとするかのように飛び跳ねた。

22...Ra5

 最下段の大切な守りを放棄するよりも黒は 22...c6 と催促する方が良かった。

23.Rxf7 Nxf7 24.Nf5

 このナイトも戦闘に加わった。24...Bxf5 と取ると 25.Qe8+ Qxe8 26.Rxe8# で詰んでしまう。

24...Ne5

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 ルークへの出動命令をこの後取り消して混乱をきたす。それよりも黒キングは自ら 24...Kf8 と守りを買って出るべきだった。

25.Nfe7+ Kh8 26.b4 Ra8 27.f4 Ng6 28.Nxg6+ hxg6 29.Ne7

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29...Qe8

 黒陣の危険な状況は次の変化からも分かる。29...Be8 30.Rd1 で黒クイーンは奥まったb8に引っ込むしかない。その後白は 31.Qg4 で必殺の 32.Qh4# を狙う。

30.Qf2 g5 31.fxg5 fxg5

 詰みを逃れるためとはいえ黒陣は既にぼろぼろである。

32.Qd2 b5 33.Qxg5 Ra6 34.Re4

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34...Rh6

 黒はもはや受けが効かない。34...Qf7 と守っても 35.Rh4+ Rh6 36.Rxh6+ gxh6 37.Qxh6+ Qh7 38.Ng6+ (38.Qf8+ でも同様に詰む) Kg8 39.Qf8# で詰みになる。

35.Nf5 Qg6

 交換損を避けるための手だが代わりにビショップを取られる。35...Qxe4 も 35...Re6 も 36.Qxg7# があるのでだめである。黒は 35...Qf8 36.Nxh6 gxh6 も手を少し延ばすだけとみて本譜の手を選んだ。

36.Qd8+

 36.Nxh6 と交換得すると黒は 36...Qxg5 でなく(37.Nf7+ から 38.Nxg5) 36...Qxe4 で助かる。

36...Kh7 37.Qxd7 Rh5 38.Rg4 Rg5 39.Rh4+ 黒投了

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2007年12月12日

チェス500名局(6)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第6局

白 ベッカー
黒 マティソン
1929年、カールスバート

 名局の多くは軟弱なf7の地点への攻撃を戦略の基礎においている。本局ではこの古くからのテーマに新しい一面が見られる。白の二つのナイトが入れ替わり立ち代り重要なf筋に出没する。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 d6 5.d4 exd4 6.cxd4 Bb6 7.Nc3

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 この手の目的はコンパクトであると同時に動き易い中原を何としても維持することである。

7...Nf6 8.O-O Bg4

 この手は白の中原に挑むのが可能であることを証明しようとするものである。

9.Be3 O-O

 9...Bxf3 は 10.gxf3 で中原が強化され、二重ポーンの不利が埋め合わされる。一方開通したg筋も白に有利に働く (Kh1 から Rg1)。

10.Bb3

 10...Nxe4 11.Nxe4 d5 で中原の黒の劣勢を和らげようという黒の狙いを未然に防いだ。

10...Re8 11.Qd3

Y071212B.JPG

11...Bh5

 ここでも 11...Bxf3 12.gxf3 は白の目的のお手伝いになるだけである。本譜の手で黒は次に 12...Bg6 とビショップを引いて敵のeポーンに狙いを定める気である。

12.Nd2 Ng4

 この手は時期尚早の反撃である。この局面の要求に合った手は、前の手で触れたように 12...Bg6 である(13...d5 を狙う)。ただし 13.d5 Ne5 14.Qe2 で白の形はしっかりしている。

13.Nd5 Nxe3 14.fxe3

Y071212C.JPG

 白は双ビショップの特権は失ったが、代わりに開通したf筋は非常に利用価値がある。

14...Rf8 15.Rf2 Ne7 16.Nf4 Bg4

 これで重要なf7を守る黒の駒が一つ減った。白はそこをめがけて早急に全兵力を集中させる。

17.Raf1 Qc8

 18.Ne6 という手が生じてきたのでその狙いに対処するのが最善である。

18.h3 Bd7 19.Nc4

Y071212D.JPG

19...g6

 何とか駒を捌こうという 19...Bb5 は 20.Nxb6 Bxd3 21.Nxc8 Bxf1 22.Nxe7+ Kh8 23.Rxf1 で黒の駒損に終わる。

20.g4

 この手から白の猛攻が始まる。

20...Kg7 21.e5

 この手は次に 22.Nxb6 axb6 23.Nh5+ gxh5 24.Rxf7+ Rxf7 25.Rxf7+ で詰めようという手である。

21...d5

 ポーンを与えてなんとか相手の攻勢を和らげようとする。

22.Nxb6 axb6

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23.e4

 23.Nxd5 Nxd5 24.Bxd5 とポーン得するのは 24...Be6 で受け側としても何とか息がつける。しかし白はそれに見向きもせず攻撃に全精力を注ぐ。

23...dxe4 24.Qxe4 Bc6 25.Qe3

 26.Nh5+ をひそかに狙っている。

25...Kh8

Y071212F.JPG

26.Nh5

 それでもこれを決行する。もう少し迫力には欠けるが 26.Ne6 でも良かった。

26...gxh5

 取らないと 27.Qh6 が来る。

27.Rxf7 Rxf7 28.Rxf7

Y071212G.JPG

 f7の地点が占領されて黒は受けがなくなった。

28...Nd5

 28...Bd5 でも29.Qh6 である (29...Bxf7 30.Qf6+ 31.Kg8 31.Bf7+ で3手の詰み)。

29.Qh6 Qg8 30.Bxd5 Qg6

 30...Bxd5 は 31.Qf6+ で詰む。

31.Rf8+ 黒投了

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2007年12月17日

チェス500名局(7)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第7局

白 シュタイニッツ
黒 フォン・バルデレーベン
1895年、ヘースティングズ

 本局の見どころは白がどのように敵陣のちょっとした弱点につけ込み巧みな捌きによって敵キングのキャッスリングを阻んだかというところである。盤上の支配を一度も緩めることなくシュタイニッツは最も華々しく美しい手筋の連続で本局を締めくくった。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 Nf6 5.d4 exd4 6.cxd4 Bb4+ 7.Nc3

Y071217A.JPG

 ザ・カラブレーセ(グレコの異名)によって既に1619年に推奨されていた手で、白はポーンを捨てて攻勢を取る。

7...d5

 7...Nxe4 が普通で何も悪くない。ただし黒はポーン得を守り通すことは期待できない。

8.exd5

 白は前哨戦の小競り合いで中原にポーンを得た。このポーンは孤立しているが強力さの象徴となる。

8...Nxd5 9.O-O

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9...Be6

 この手は理にかなった手のはずであるが、この後キャッスリングの機会がなかったことを考えれば黒は何をおいても 9...Bxc3 としてから展開に努めるべきであった。

10.Bg5 Be7 11.Bxd5 Bxd5 12.Nxd5 Qxd5 13.Bxe7 Nxe7 14.Re1

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 ばたばたと駒交換が行われた後気付いてみれば黒はキャッスリングができない状態になっていた。次の手から黒は「人工キャッスリング」でキングを安全地帯に置こうとするが手数がかかりすぎた。

14...f6 15.Qe2 Qd7 16.Rac1 c6 17.d5

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 軽妙なポーンの突き捨てでナイトがd4の地点に行けるようになり攻撃力が増す。

17...cxd5 18.Nd4 Kf7

 黒はほぼキャッスリングを成し遂げたがまだ完全ではない。

19.Ne6

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 狙いは 20.Rc7 である。

19...Rhc8 20.Qg4 g6 21.Ng5+ Ke8 22.Rxe7+

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 この局面にはただただ驚くばかりである。白の駒は全部当たりになっていて黒には ...Rxc1 による詰みの狙いがある。しかし黒はチェックしている白ルークを取ることができない。例えば 22...Qxe7 は 23.Rxc8+ Rxc8 24.Qxc8+ で白が駒得になる。22...Kxe7 の変化は極度の正確さが必要で、白が本譜の手を指す前に読んでいなければならないものであった。つまり 22...Kxe7 23.Re1+ Kd6 24.Qb4+(24.Re6+ Kc5 も 24.Qf4+ Kc5 もうまくいかない)Rc5(24...Kc6 は 25.Rc1# で詰み。24...Kc7 は 25.Ne6+ Kb8 26.Qf4+ で白勝ち)25.Re6+ で白が勝つ。以下のきれいな手順の中でルークはずっと取られる状態が続き最後は黒がそのルークを取らざるを得なくなり詰まされる。

22...Kf8 23.Rf7+ Kg8 24.Rg7+ 黒投了

Y071217G.JPG

 以下の11手詰めはひどい駒損によってのみしか回避できない。

24...Kh8 25.Rxh7+ Kg8 26.Rg7+ Kh8 27.Qh4+ Kxg7 28.Qh7+ Kf8 29.Qh8+ Ke7 30.Qg7+ Ke8 31.Qg8+ Ke7 32.Qf7+ Kd8 33.Qf8+ Qe8 34.Nf7+ Kd7 35.Qd6#

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2007年12月19日

チェス500名局(8)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第8局

白 シュタイニッツ
黒 ラスカー
1896-7年、

 本局の見どころは重要な原則である手段の経済性である。黒は役駒を得して受けに回るかそれともポーン得に甘んじて陣形的優位を取るかの選択に直面して、ちゅうちょすることなく見せかけの得を放棄する。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 Nf6 5.d4 exd4 6.cxd4

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6...Bb4+

 おとなしく 6...Bb6 と下がるのは白に次のように中原での優位を利用されるだろう。7.d5 Ne7 8.e5 Ne4(8...Ng4 でも同じく白は強手の 9.d6 で有利を確保する)9.d6(くさびを打ち込む)cxd6 10.exd6 Nxf2 11.Qb3 Nxh1(11...O-O は 12.Ng5 で勝勢)12.Bf7+ Kf8 13.Bg5 で白が勝つ。

7.Nc3 Nxe4 8.O-O

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8...Bxc3

 8...Nxc3 とナイトで取るのは 9.bxc3 Bxc3 の後威勢のいい 10.Qb3(既に1619年にグレコによって示唆されていた)で白のチャンスが広がる。

9.bxc3

 ここは黒の捌きを防ぐために 9.d5 と「正義の一撃」を見舞うチャンスだった。駒損はすぐに取り返せる。

9...d5

 この手は良い手で黒の陣形がしっかりする。9...Nxc3 は悪手で 10.Qe1+ でこのナイトを取られる。

10.Ba3

 c4のビショップを見捨てたこの手は無理筋であることが証明される。しかし 10.Bd3 と逃げても 10...O-O 11.Bxe4 dxe4 12.Ng5 Qd5 で局面は黒がやはり優勢である。

10...dxc4 11.Re1

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11...Be6

 この手は役駒を返し1ポーン得で十分だという判断である。役駒得にこだわる 11...f5 は危険で 12.Nd2(13.f3 の狙い)Kf7 13.Nxe4 fxe4 14.Rxe4 で黒キングの安全が危うい。

12.Rxe4 Qd5 13.Qe2 O-O-O

 これで黒は序盤の課題をすべて解消した。

14.Ne5 Rhe8

Y071219D.JPG

15.Nxc6

 白の読みはナイトがいなくなれば異色ビショップなので引き分けになり易いだろうということである。

15...Qxc6 16.Re1 Rg8

 自分のビショップでe筋がふさがっているのでキング翼から攻勢をかけようという意図である。

17.Re5 b6 18.Bc1 g5

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 読みの入ったポーン捨て。白は取らない方が良かった。

19.Rxg5 Rxg5 20.Bxg5 Rg8 21.f4 Bd5

Y071219F.JPG

 この手は次に 22...h6 を狙っている。それを防いで 22.Qh5 と来てもやはり 22...h6(22...Bxg2 は23.Qxf7)が成立し以下 23.Qxh6 Qxh6 24.Bxh6 Rxg2+ で黒の優勢である。

22.g3 Kb7 23.h3 Qb5 24.Kh2 Rg6 25.Qc2 f6

Y071219G.JPG

 ビショップを追い払うと同時に 26.Re5 によるルークの侵入も防いでいる。

26.Bh4 Bc6 27.g4 Qd5

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 クイーンとビショップの組み換えにより対角筋での黒の利きが揺るぎないものとなった。

28.Qf2

 最強の受けは 28.f5 だった(28...Rh6 に対しては 29.Qf2 Rxh4 でなく29.Bg3 Qf3 30.Qe2)。これを逃がしたため黒は新たな兵力を投入することができた。

28...h5 29.g5 fxg5 30.Bxg5 h4

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 敵陣を完全に封鎖した。31.Rg1 なら 31...Rxg5 である(32.Rxg5 は32...Qh1# で詰み、32.fxg5 なら 32...Qd6+)。

31.Rf1 Rg8 32.Qd2 a5 33.a4

Y071219J.JPG

33...Re8

 次に 34...Re3 を狙っている。33...Bxa4 はゆるみで 34.Qg2 でクイーンを交換されてしまう。

34.f5 34...Rg8 白投了

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 白は手詰まりで指す手がない。どう指しても何かを損する。

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2007年12月24日

チェス500名局(9)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第9局

白 シュピールマン
黒 ドゥラス
1907年、カールスバート

 守りの薄いキングの危険性が本局で見られる。白は巧妙に黒の急所の地点のh7に忍び寄った。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 Nf6 5.d4 exd4 6.cxd4 Bb4+ 7.Nc3

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 7.Bd2 に代わるこのグレコの手は現在の実戦ではほとんど見られない。それは白が引き分けしか望めないからである。

7...Nxe4 8.O-O Bxc3 9.d5

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 1898 年に創案されたこのメラー攻撃は白が有望である。

9...Bf6

 この手以外は不利になる。

10.Re1 Ne7 11.Rxe4 d6

 ここで黒が 11...O-O とキャッスリングすると白には 12.d6 とポーンを突く手と「銃剣攻撃」の 12.g4 との選択肢がある。

12.Bg5

Y071224C.JPG

 ここでも 12.g4 と突く手がある。

12...O-O

 キングの囲いが乱されるのは承知の上である。詳細に研究された手順は 12...Bxg5 13.Nxg5 O-O 14.Nxh7(この手以外では攻撃が続かない。14.Qh5 は 14...h6 で黒には何も恐い所がなくなる)Kxh7 15.Qh5+ Kg8 16.Rh4 f5 17.Qh7+(他の手たとえば 17.Re1 や 17.Be2 ははっきりしない)Kf7 18.Rh6 Rg8 19.Re1 Qf8 20.Bb5(キングの逃げ道をふさぐ)Rh8 21.Qxh8 gxh6 22.Qh7+ Kf6 23.Rxe7 Qxe7 24.Qxh6+ で千日手である。

13.Bxf6 gxf6 14.Nh4

Y071224D.JPG

 この手の価値はクイーンが主戦場に最速で駆けつけられることにある。

14...Ng6 15.Qh5 Kh8 16.Rae1 Bd7 17.Bd3

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 最終攻撃の準備である。

17...Rg8

 18...Rg7 と守りを固めようという手である。

18.Re7

 ビショップの筋を通した。18...Nxe7 とは取れない。取れば 19.Qxh7# で詰んでしまう。

18...Rg7 19.Bxg6 fxg6 20.Nxg6+ Kg8

 20...Rxg6 は 21.Qxh7# で詰み。

21.Rxg7+ 黒投了

Y071224F.JPG

 21...Kxg7 22.Re7+ で黒は望みがない。

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2007年12月26日

チェス500名局(10)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第10局

白 シファース
黒 ハルモニスト
1887年、フランクフルト

 同時に二箇所以上の弱点を攻撃されると防御側は受けきることができなくなるのはよくあることである。

 本局で白は通常のf7への攻撃に加えてe筋も完全に抑えた。その締め付けは圧倒的であった。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 Nf6 5.d4 exd4 6.cxd4 Bb4+ 7.Bd2

Y071226A.JPG

 ビショップにはビショップを展開して対抗した。

7...Bxd2+

 7...Nxe4 でポーン得しようとするのは幻想である。白は 8.Bxb4 Nxb4 9.Qb3(f7の地点とb4のナイトの二重攻撃)d5 10.Qxb4 dxc4 11.O-O Qd5 12.Na3 でポーンを取り返し形勢も明らかに有利である。

8.Nbxd2 d5

 中原でのこのポーン突きによる反撃はほとんど全ての開放型の序盤で黒にとって非常に重要である。黒は中原の争点をかなり軽減することができる。自分の白枡ビショップが解放され敵の中原が一部消滅する。

9.exd5 Nfxd5

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 ここでの大局上の要点は白が中原に維持しているポーンが「孤立し」且つ黒の中原のナイトのために「動けなくなっている」ということである。

 勝負はほとんど互角で平和的な結末に向かっているように見える。

10.Qb3

 敵のd5の地点に圧力を加えた。

 次のように 10.O-O から面白い変化が生じる。10...O-O 11.Ne5(戦いを仕掛ける。ここでの 11.Qb3 は無理である。穏やかな 11.Re1 は 11...Nce7 から 12...c6 で引き分けしか望めない)Nxd4 12.Nb3 Nxb3 13.Bxd5 Nxa1(落とし穴にはまった。13...Qf6 なら互角だった)14.Bxf7+ Kh8 15.Qh5 で決まる。

10.Nce7

 10...Na5 は不注意な手で 11.Qa4+ c6 12.Bd3 O-O 13.O-O で白に 14.b4 の狙いが残る。

11.O-O O-O 12.Rfe1

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 すぐに開放e筋を占めたのには隠れた動機がある。12.Ne4 も良い手だった。

12...c6

 この受けの本手には三つの目的がある。(1)d5の地点を強化する。(2)13...b5 と突く機会をうかがう。(3)クイーンがいつでもクイーン翼に出られるようにする。

13.a4

 今言った 13...b5 を防ぎ白クイーンをもっと動き易くする。

 ここでも 13.Ne4 は良い手である。

13...Qc7

 13...Qb6 に対して白は 14.Qa3 と応じ形勢も白が良い。

14.Rac1

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 見え見えの 15.Bxd5 Nxd5 16.Qxd5 という狙いがある。他には 14.Ne4 や 14.Ne5 も積極的な手だった。

14...Nf4

 この手は大切なd5の地点を放棄し白の危険なビショップの筋も通してしまった。黒は 14...Qa5 あるいは 14...Qf4 で受けるべきであった。

 14...Be6 は弱い手で 15.Ng5 と来られる。14...Qb6 には前に言ったように 15.Qa3 で応じられる。

15.Ng5 Neg6

 黒にとって難しい局面であるが 15...Nf5 と積極的に受けるべきであった。

16.Re8

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 そらしの捨て駒の手筋がきれいに決まる。

16...Rxe8

 16...Be6 と受けるのは 17.Rxa8 Rxa8 18.Nxe6 Nxe6 19.Bxe6 fxe6 20.Qxe6+ で白は重要なポーンを取れる。

17.Bxf7+ Kh8

 17...Kf8 と逃げるのは 18.Nxh7+ Ke7 19.Re1+ Be6 20.Rxe6+ で白が勝つ。

18.Bxe8 Ne2+

Y071226F.JPG

 ルークは取れるが気休めに過ぎない。この後白は最終攻撃に乗り出す。

19.Kh1 Nxc1 20.Nf7+ Kg8 21.Nh6+ Kf8 22.Qg8+ Ke7

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23.Bxg6 hxg6 24.Qxg7+ Kd8 25.Qf8+ Kd7 26.Ne4

Y071226H.JPG

 控えのナイトが出て行って 27.Nc5# を狙う。

26...Qd8 27.Qd6+ Ke8 28.Nf6+ 黒投了

Y071226I.JPG

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2007年12月31日

チェス500名局(11)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第11局

白 ホフマン
黒 フォン・ペトロフ
1844年、ワルシャワ

 著名な本局はお互いにf2/f7のたたき合いが見どころである。

 黒の指し回しはクイーンのただ捨てで頂点に達し、敵キングを息つく暇もなくしとめた。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 Nf6 5.d4 exd4 6.e5

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 通常の 6.cxd4 に代わるこの一瞬のポーン突きは思わぬ効果が得られることがある。

6...Ne4

 このありきたりの手よりも 6...d5 と中原で積極的に反撃して陣地を争う方が勝る。

7.Bd5

 この手は指し過ぎだった。普通に 7.cxd4 Bb4+ 8.Bd2 Nxd2 9.Nbxd2 で白は何も不満がないはずだった。

7...Nxf2

 他に指しようがないが必然でもある。

8.Kxf2 dxc3+

Y071231B.JPG

9.Kg3

 e1 に戻る方が分別のある指し方だった。g3 ではつかの間の安全でしかない。9.Be3 ははっきりと誤りで 9...Bxe3+ 10.Kxe3 cxb2 11.Bxf7+ としても 11...Ke7(11...Kxf7 は 12.Qb3+ から 13.Qxb2)で黒が駒得になる。

9...cxb2 10.Bxb2 Ne7

Y071231C.JPG

11.Ng5

 白は手筋にひかれて想像力の赴くままに勢いで指した。しかしここは 11.h3(11...Nf5+ 12.Kh2)と受けに気を配るべきであった。

11...Nxd5 12.Nxf7

Y071231D.JPG

 これが白の狙い筋だった。しかし白の読み筋どおりに 12...Kxf7 13.Qxd5+ Ke8 14.Qxc5 と進んだとしても 14...Qg5+ 15.Kf2 Rf8+ 16.Ke1 Qxg2 で白が良くない。11手目での白の大局観は誤りだった。それは黒の次の妙手によっても如実に示される。

12...O-O

 黒はクイーンをあっさりくれてやり、替わりにf筋を支配して白キングの退路を断った。

13.Nxd8

 気が変わって 13.Nh6+ は 13...gxh6 14.Qxd5+ Rf7 15.Qxc5 Qg5+ 16.Kh3 d6+ で黒が勝つ。

 だまって 13.Qxd5 は 13...Rxf7 14.h3(14.h4 は 14...Bf2+ から 15...Qxh4# で詰み)Qg5+ 15.Kh2 Qf4+ 16.g3 Qf2+ 17.Qg2 Qxg2+ 18.Kxg2 Rf2+ 19.Kg1 Rxb2+ で黒が駒得を維持する。

13...Bf2+

Y071231E.JPG

 以下は古典的なキングの捕り物の例である。

14.Kh3 d6+ 15.e6 Nf4+ 16.Kg4 Nxe6

Y071231F.JPG

 17...Rf4+ から 18...Rh4 の2手詰めがある。

17.g3 Nxd8+ 18.Kh4 Rf4+ 19.Kg5 Ne6+ 20.Kh5 g6+ 21.Kh6 Rh4+ 22.gxh4 Be3# 0-1

Y071231G.JPG

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2008年01月02日

チェス500名局(12)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第12局

白 シューモフ
黒 フォン・イェーニッシュ
1845年、サンクト・ペテルブルグ

 本局の見どころは動きすぎの手(例えば 7.exf6、8.Qe2+、12.Qh5、14.Qb5+)がどのように無駄手と化し相手の展開を助けてしまうかという所にある。最後には白キングの守りが薄くなって当然の帰結を迎えた。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 Nf6 5.d4 exd4 6.e5 d5

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 この手は黒の陣形をくつろげる良い手である。

7.exf6

 この駒の取り合いは黒の展開を助ける。7.Bb5 又は 7.Be2 が普通の手で黒は 7...Ne4 で中原にナイトを据えることになる。

7.dxc4 8.Qe2+

 白は単に 8.fxg7 又は 8.cxd4 とすべきところを、1ポーン損のまま攻撃に活路を見出そうとする。

8...Be6 9.fxg7

 9.Ng5 は 9...Qxf6 と肝心のポーンを取られてしまう。

9...Rg8

Y080102B.JPG

10.cxd4

 10.Bg5 と指す方が良かった。ここでも 10.Ng5(狙いは 11.Nxe6 fxe6 12.Qh5+ から 13.Qxc5)は 10...Qd5 11.Nxh7 O-O-O 12.Nf6 Qxg2 で成立しない。

10...Nxd4 11.Nxd4 Bxd4

Y080102C.JPG

12.Qh5

 このクイーンの単独出撃は白の形勢悪化につながった。

 ここでは 12.O-O Qf6 13.Nc3 Qxg7 14.g3 と進めるべきであったがこの後 14...O-O-O で形勢は黒が良い。

12...Qf6 13.O-O Rxg7

 黒は平然と 13...O-O-O と指すこともできた(14.Bg5 は 14...Qxg7 で空振りに終わる)。しかし本譜の手は白の駒繰りの不都合をあからさまにする。

14.Qb5+

 白は遅ればせながら 14.Nc3 と展開すべきだった。

14...c6 15.Qxb7

Y080102D.JPG

 黒キングはキャッスリングできなくなったので白クイーンの面目は立った。しかし自分のキングが狙いすました強襲に遭う。

15...Rxg2+

 ルークを犠牲の殴り込みである。

16.Kxg2 Qg6+ 17.Kh1 Bd5+ 18.f3 Bxf3+ 0-1

Y080102E.JPG

 白の次の一手で詰みである。

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2008年01月07日

チェス500名局(13)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第13局

白 第1フュジリエ
黒 ボンベイ
1853年、ボンベイ

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 Nf6 5.d4 exd4 6.e5 d5

Y080107A.JPG

7.Bb5

 身をかわして早期のこぜりあいを避けた。7.exf6 dxc4 はぬるい。しかし 7.Be2 と引く手はある。

7...Ne4 8.Bxc6+

 8.Nxd4 に対して手堅く指すなら 8...Bd7 である。

 8.cxd4 には黒は 8...Bb4+ でなく(9.Kf1 の後 10.Qa4 がある)8...Bb6 と引くのが良く、それで形勢は互角である。

8...bxc6 9.cxd4

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9...Bb6

 9...Bb4+ なら白は前の変化と同じく 10.Kf1 の後 11.Qa4 を狙う。

10.O-O Bg4

 この手は 10...O-O 11.h3 よりも活発な戦いになる。

11.Be3 O-O

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12.Qc2

 誘いの隙を見せて局面の進展を図った。12.Nbd2 は 12...Nxd2 13.Qxd2 Bxf3 14.gxf3 Qh4、12.h3 は 12...Bh5 13.g4 Bg6 でどちらも思わしくない。

12...Bxf3 13.gxf3 Ng5 14.Qf5 f6 15.Qg4 h6 16.f4

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16...f5 17.Qg2 Ne6 18.Rd1 Qh4 19.Qg3 Qh5 20.Nc3 Rfe8 21.Rd2

Y080107E.JPG

21...Nf8 22.Ne2 Re6 23.Qg2 Rg6 24.Ng3 Qh4 25.Kh1

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 14手目からここまで白は落ち着いて駒の組み換えを進めてきた。そして自陣を固めるだけでなく反撃も狙っていた。

25...Ne6

 25...Qg4 には 26.h3、25...Qd8 には 26.Qh3 なので、本譜でのポーン損は避けられなかった。

26.Nxf5 Rxg2 27.Nxh4 Rg4 28.Ng2 Rf8 29.h3

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29...Rgxf4

 交換損は仕方ない。29...Rg6 と引くのは 30.Nh4 Kh7 31.f5 でもっとひどいことになる。

30.Nxf4 Nxf4 31.Kh2 Ng6 32.Kg3 Kf7

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33.b4 Ke6 34.Rg1 Rf7 35.h4 a5 36.a3 axb4

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37.axb4 Ne7 38.Kh3 Kd7 39.h5 Ke6 40.Rg4 Rf3+

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41.Kg2 Rf7 42.Rd1 Kd7 43.Rg1 Nf5 44.Kh3 Ke7 45.Rf4

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45...Ke8

 45...Kf8 とg7のポーンを過剰に守れば 46.e6 Rf6 47.Rg6 で白は優勢のまま駒交換を進めることができる。

46.Rxf5

 これが決め手である。キングとルークが敵陣に侵入できる。

46...Rxf5 47.Rxg7 Rxh5+ 48.Kg4 Rh1

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49.Kf5 Rd1 50.Ke6 Kf8 51.Bxh6 Rh1 52.Rg6+ Rxh6 53.Rxh6

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 先を見通した戦略のおかげで白は再び交換得した。後は平穏無事なルーク対ビショップエンディングである。

53...Bxd4 54.Rh3 Bb2 55.f4 d4 56.f5 Bc3 57.f6 黒投了

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2008年01月09日

チェス500名局(14)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第14局

白 シューモフ
黒 コーリッシュ
1862年、サンクト・ペテルブルグ

 第12局と同じようにシューモフは本局でも自陣の安全に気を配らない。相手陣に進攻することばかりに気を取られてどんどん自分の駒が出払ってしまい、キングの守りや開通g列が危うくなった。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.O-O

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4...Nf6

 相手のeポーンを攻撃することによって黒はキャッスリングを早めることができる。4...d6 なら白は 5.c3 と応じ 5...Bg4 に対して 6.Qb3、又はこちらの方が勝るかもしれないが 6.d4 exd4 7.Qb3 と逆襲に出る。

5.d4

 5.c3 なら 5...Nxe4 と取っても大した危険はない。本譜の大胆な手の代わりに白は 5.d3 又は 5.Nc3(イタリア4ナイト試合)と穏やかな手を指すこともできた。

5...Bxd4

 この手が最善である。5...Nxd4 なら 6.Nxe5、5...exd4 なら 6.e5 (マックス・ランゲ攻撃)で乱戦になる。

6.Nxd4

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6...Nxd4

 ここでも 6...exd4 とポーンで取るのは 7.e5 で白に有利に展開する。

7.f4

 これほど激しくない 7.Bg5 もあった。

7...d6 8.fxe5 dxe5 9.Bg5

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9...Qe7

 クイーン側へキャッスリングするつもりである。9...Be6 なら白は 10.Na3 が良い手である。

10.b4

 不必要に 10...Qc5 を恐れて自陣を弱めてしまった。10.Nc3 が普通の手で以下のような展開が考えられる。
(a)10...c6 11.Ne2 Bg4 12.c3 これで目障りな敵駒を追い払うことができる。
(b)10...Be6 11.Bd3 O-O-O 12.Kh1 形勢は互角である。
(c)10...Qc5(魅力的な手だが鮮やかに咎められる)11.Bxf7+ Kxf7 12.Qh5+ Ke6 13.Bxf6 gxf6 14.Nd5 これで白が勝つ。

10...Be6

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11.Bxf6

 この手から始まる駒交換で黒の中原がこじんまりと引き締まるので 11.Bd3 と交換を避ける方が良かった。白の次の手ではなおさら Bd3 の方が良かった。

11...gxf6 12.Bxe6 fxe6 13.Qh5+

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13...Qf7 14.Qh4 O-O-O 15.Na3 f5

 黒は積極策に出て主導権を握った。

16.Qf2 Qh5

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17.Rae1

 17...Ne2+ を防ぎ逆に 18.exf5 exf5 19.c3 Nc6 20.Qxf5+ を狙っている。しかし黒は当然だまって待つようなことはせずキング翼のポーンを強化した。

17...f4 18.c3 Nc6 19.b5

 白が他の手を指してもやはりd筋とg筋を抑えている黒の優勢である。

19...Nb8 20.Qxa7 b6

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 黒は格好の餌で敵の駒を主戦場から離脱させることができた。

21.Qa4 Rhg8 22.Rd1

 ルークをぶつけた手は甘かった。何をおいても 22.Rf2 と指すべきだった。

22...Rxg2+

 ルークの殴り込みである。この後は鮮やかな好手順が用意されていた。

23.Kxg2 Qe2+

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24.Kh1

 24.Rf2 は 24...Rg8+ 25.Kh1 Qxf2 26.Qc2 Qf3+ で詰まされる。24.Kh3 は 24...Rg8(次に一手詰み)25.Rd8+ Rxd8(25...Kxd8 は誤りで 26.Qd1+ でクイーンを交換される)26.Qc4 Rd3+ で白の勝ち。

24...Rd2 白投了

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2008年01月14日

チェス500名局(15)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第15局

白 タウベンハウス
黒 バーン
1886年、ノッティンガム

 本局の黒は積極的かつ組織的にdポーンを突き進めd筋に決定的な基盤を得た。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.d3

 このポーンを4段目に進める代わりに(事前に c3 と突く突かないにかかわらず)、白は時にジュオコ・ピアニッシモと呼ばれる穏やかな戦型を選んだ。

4...d6 5.c3

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 この戦型でもこの手はそれなりの利点がある。5...Bg4 とかかってきた場合この手は危険な 6...Nd4 を防いでいる。それから白クイーンにクイーン翼への出口を与えている。他方この手はb1のナイトから自然な居場所のc3を奪っている。だから戦略家の中には 5.Nc3 の方を好む者もいる。

5...Nf6 6.Be3 Bb6 7.Qe2 Ne7

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 このナイトの捌きは黒の中原での反攻となる ...d5 への手始めである。このポーン突きが指せれば黒が主導権を握ることができる。

8.Nbd2 Ng6 9.h3 c6 10.Bb3 O-O

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11.g4

 この手は攻撃の強化のための手でなければ後の展開が示すように弱点(f3)を作り出すだけである。

 普通に 11.O-O としてその後 Rfd1、Nf1 と陣容を整えた方が良かった。

11...d5

 当然の応手である。側面攻撃には中原での反撃が定法である。これは準備が良ければ急速に勢力を拡張できる。

12.exd5 Nxd5

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13.Bxd5

 13...Ngf4 とされるとポーン損になるので白は「双ビショップ」を放棄することにした。実際 13.Bc2 と守ると 13...Ngf4 14.Qf1 f5 で黒が圧倒的な態勢になる。

13...cxd5

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14.Nf1

 目前の ...d4 の脅しに屈して白は当てもなくナイトを引いてしまった。ここは 14.Bxb6 Qxb6 15.Nb3 Nf4 16.Qd2 f6 17.O-O-O のように簡明さを追求すべきであった。そうすれば満足な陣形ではないけれどすぐには崩れなかったであろう。

14...d4 15.Bd2 dxc3 16.bxc3 Bd7

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 ここで局面を観察すると、黒は活動的な双ビショップの機動性に加えて白のd3の出遅れポーンに一貫して照準を合わせていることが分かる。

17.Ng3

 17.Rd1 なら 17...Ba4、17.Be3 なら 17...Ba5 で白陣の色々な弱点が露呈する。

17...Bb5 18.c4 Bc6 19.O-O

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19...f6

 黒の組織的で着実な駒捌きは見事と言わざるを得ない。19...Re8 とeポーンを守る手もある。

20.Nf5 Qd7

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21.h4

 21.Be3 に対しては 21...Bxf3 22.Qxf3 Qxd3 23.Qxb7 でなく落ち着いて 21...Rfd8 と指すのが良い。21.Rfd1 には 21...Ba4 がある。

 白は 21.Ne1 など考える気もしないので破れかぶれの策に打って出た。

21...Rad8 22.h5

 22.Ne1 と守っても 22...e4 と突かれるだけである。

22...Qxd3

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 黒は見事な指し回しの最初の成果を得た。

23.Qxd3 Rxd3 24.hxg6 Bxf3 25.Bb4 Re8

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26.gxh7+ Kxh7 27.c5 Bc7 28.Nd6 Rh8

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29.Nf7

 29.Kh2 は 29...Kg6+ 30.Kg3 Be2+ で黒が交換得し勝ちになる。

29...Rd4 30.Nxh8 Rxg4+ 31.Kh2 e4+ 32.Kh3 g5 白投了

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2008年01月16日

チェス500名局(16)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第16局

白 バード
黒 イングリッシュ
1883年、ロンドン

 熱闘の本局で白は第2戦線(つまりクイーン翼)で戦闘を仕掛けた。しかしこれがうまくいって敵の本陣へ殺到することになった。

 終盤ではルークとナイトのコンビが威力を発揮したがちょっとした油断から意外な結末を迎えた。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 Nf6

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5.b4

 5.d3 又は 5.d4 なら通常の手であるが、この側面で位を取る手は大胆で性急なマスターのバードのお気に入りの手だった。

5...Bb6 6.d3

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6...d6

 積極的に指すなら 6...d5 7.exd5 Nxd5 でeポーンの守りを放棄しても中原を開拓する手もあった。1851年のホルウィッツ対スタントン戦では次のような面白い展開になった。8.b5 Nce7 9.Nxe5 O-O 10.Bb2 Be6 11.O-O Kh8 12.a4 f6 13.Nf3 Ng6 14.Ba3 Re8 15.Qb3 Ngf4 16.Ra2 a6 17.bxa6 bxa6 18.Bc1 Rab8 19.Qc2 Bg4 20.Bxd5 Ne2+ 21.Kh1 Qxd5 22.c4 Qxf3 23.h3 Bxf2 24.Nd2 Ng3+ 黒があと4手で詰み(準窒息詰め)にできる。(訳注 25.Kh2 Qf4 26.Nf3 Nxf1+ 27.Kh1 Qh2+ 28.Nxh2 Ng3#)

7.O-O O-O 8.Bg5 Be6 9.Nbd2 Qe7

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10.a4 a6 11.a5 Ba7 12.Kh1 h6 13.Bh4 Rad8

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 この手は 14...d5 で整然とd筋を開ける準備である。そうなれば白はクイーン翼での活動がより一層難しくなる。

14.b5 Bxc4

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15.Nxc4

 15.dxc4 とポーンで取り返すのは 15...Nb8 16.Rb1 Nbd7 17.bxa6 bxa6 18.Rb7 Bb8 で白のクイーン翼の孤立ポーン群が恒久的な弱点になる。だから白は1ポーンを犠牲にしてクイーン翼での活動性を得ようとした。

15...axb5 16.Ne3 Bxe3 17.fxe3

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17...Qe6

 17...g5 は 18.Nxg5 と切ってこられるから明らかに時期尚早である。

18.Qb1

 今や主戦場となったクイーン翼で戦いが白熱化する。

18...g5 19.Bg3 Na7 19.c4

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 働き者の新兵を投入した。20...bxc4 は 21.Qxb7 があるので黒はこのポーンを取るわけにいかない。

20...c6 21.c5 Nh5 22.a6

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 白はポーンを次々と突き捨てて黒のポーンの形を乱そうとする。

22...bxa6 23.Rxa6 Qd7 24.d4 Nxg3+

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25.hxg3 Nc8 26.cxd6 f6 27.Rc1

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 白はポーン損を取り返しただけでなく主導権も握った。

27...Nxd6 28.Rcxc6 Ne8 29.Qxb5 g4

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30.Nh4 exd4 31.exd4 Qxd4 32.Nf5 Qxe4

Y080116L.JPG

33.Re6

 この手は慎重過ぎた。単純に 33.Nxh6+ Kh7 34.Qh5 と指せば白は黒の抵抗を封じることができた。34...Ng7 には 35.Qh4、34...Qg6 には 35.Ra7+ Ng7 36.Rxg7+ Kxg7(36...Qxg7 は 37.Nf5+)37.Rc7+ で白が勝つ。34...Rd7 も 35.Nf7+ Kg7(35...Kg8 は 36.Qh8+)36.Qh6+ Kxf7 37.Rxf6+ Nxf6(37...Ke7 は 38.Qxf8+ Kd8 39.Ra8+ Kc7 40.Qc5+ で次の手で詰み)38.Rxf6+ で以下詰みになる。(訳注 34...Rd7 の変化手順の中で 39.Ra8+ は 39...Qxa8 とただ取りされてしまいます。その前に 38.Rfe6+ で黒クイーンを取る手があります。)

33...Rd1+ 34.Kh2 Qb1 35.Qxb1 Rxb1

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 めまぐるしい戦いである。

36.Ra7

 白は筋の支配を完了した。しかし黒にも手は残っていた。

 36.Nxh6+ Kg7 37.Nxg4 は 37...Rh8+ で頓死を食らう。本譜の手の後白は 37.Nxh6+ Kh8 38.Ree7 からの詰みを狙っている。

36...Rb5 37.Nxh6+ Kh8 38.Nxg4 Rg5

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39.Rxe8

 この手は楽観的過ぎた。39.Kh3 はとんでもないポカで 39...Rh5# で頓死する。白は 39.Nf2 で相手をせかすべきだった。

39...Rh5+ 40.Kg1 Rxe8 41.Nxf6 Rh1+

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42.Kxh1

 これは取るしかない。42.Kf2 は 42...Rf8 で黒が勝つ。

 以下のステイルメイトの手筋は痛快である。

 バードは白を除くそこに居合わせた者全員が面白がったと報告している。

42...Re1+ 43.Kh2 Rh1+ 44.Kxh1 ステイルメイト

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2008年01月21日

チェス500名局(17)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第17局

白 デュボア
黒 シュタイニッツ
1862年、ロンドン

 本局の見どころはh筋での黒の反撃である。敵のキングがまだ原位置に留まっていて反対翼にキャッスリングできる時盲目的にキャッスリングする危険性の古典的な例が見られる。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.O-O Nf6 5.d3 d6

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6.Bg5

 ビショップがf6のナイトにかかっていったことにより白は厳しい反撃にさらされる。それは黒がまだキャッスリングしていないこと、それから特に自分のキングが居を構えた方面だったからである。今か次の手で 6.Be3 と指すべきだった。

6...h6 7.Bh4 g5 8.Bg3 h5

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 黒は既に戦場の支配者となっている。狙いは 9...h4 でビショップを殺すことである。

9.h4

 9.h3 は 9...h4 10.Bh2 g4 で黒が優勢である。

 9.Nxg5 には次のような巧妙な手が用意されている。9...h4 10.Nxf7 hxg3(このクイーンを取らせる手が成立する)11.Nxd8(11.Nxh8 とルークを取るのは 11...Bg4 12.Qd2 Qe7 の後 ...Qh7 の狙いで黒の攻撃が続く)11...Bg4 12.Qd2(12.Nc3 でクイーンを取らせる方が良い)Nd4(13...Ne2+ 14.Kh1 Rxh2# で詰みの狙い)13.Nc3(13.h3 は 13...Ne2+ 14.Kh1 Rxh3+ 15.gxh3 Bf3# で詰み)Nf3+ 14.gxf3 Bxf3(15...gxh2# で詰みの狙い)15.hxg3 Rh1# で詰み。

9...Bg4

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10.c3

 10.hxg5 は 10...h4 11.Bh2 Nh7 でかえって黒の攻撃に弾みがつく。

10...Qd7 11.d4 exd4 12.e5 dxe5 13.Bxe5 Nxe5 14.Nxe5 Qf5

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 白はある程度捌きに成功したが黒の攻撃は途切れない。

15.Nxg4

 15.Qa4+ には 15...Kf8 とよけておいて大丈夫である。

15...hxg4 16.Bd3

 16.cxd4 には幸便に 16...O-O-O とキャッスリングする。

16...Qd5 17.b4 O-O-O

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18.c4

 18.bxc5 とビショップを取ると黒は 18...dxc3 19.Bc2 でなく 18...Rxh4 19.c4 Rdh8 20.f3 g3 から ...Rh1# の受けなしに追い込む。黒の17手目がh筋からの攻撃にいかに弾みをつけたかが歴然としている。

18...Qc6 19.bxc5 Rxh4 20.f3 Rdh8

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 狙いは 21...g3 22.Bf5+ Qe6 23.Bh3(23.Bxe6+ は 23...fxe6 で詰みが受からない)Rxh3 24.gxh3 Qxh3 で、白キングは助からない。

21.fxg4 Qe8

 22...Qe3+ からの2手詰みがある。

22.Qe2 Qe3+ 23.Qxe3 dxe3

Y080121G.JPG

 相変わらず黒キングはf2から逃げられない。

24.g3 Rh1+ 25.Kg2 R8h2+ 26.Kf3 Rxf1+ 27.Bxf1 Rf2+ 28.Kxe3 Rxf1

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 駒の収穫が一段落して駒割りは互角である。しかし白陣は萎縮した形でポーンも活動性を失いもはや敗勢である。

29.a4 Kd7 30.Kd3 Nxg4 31.Kc3 Ne3 32.Ra2

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 もはや成すすべがない。

32...Rxb1 33.Rd2+ Kc6 34.Re2 Rc1+ 35.Kd2 Rc2+ 36.Kxe3 Rxe2+ 37.Kxe2 f5 白投了

Y080121J.JPG

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2008年01月28日

チェス500名局(18)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第18局

白 メーソン
黒 ヴィナヴェル
1882年、ウィーン

 どうやって敵陣に侵攻するか。有名な本局で白は天才の所業でこの問題を解いてみせた。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.d3 d6 5.Be3 Bb6 6.Nbd2 h6

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7.Nf1

 白は 7.O-O でキングの最終の落ち着き先を明らかにするより先に自陣内で駒の再編成に取りかかった。

7...Nf6 8.h3 Ne7 9.Ng3 c6 10.Bb3

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 このビショップ引きは黒のポーン突きの予防である。それでも 10...d5 とくれば 11.Nxe5 がある。

10...Bxe3

 あくまでも狙いを実現させるなら 10...Ng6 としてから 11...d5 だった。

11.fxe3 Qb6 12.Qd2 a5 13.c3 a4

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14.Bd1 Be6 15.O-O Qc7 16.Nh4 b5

Y080128D.JPG

17.Bc2

 17.d4 には 17...d5 で黒には 18...exd4 と 18...dxe4 の二つの狙いが残る。

17...c5 18.Ngf5 Bxf5 19.Nxf5 Nxf5 20.Rxf5 Nd7 21.Raf1 f6

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 黒はキング翼を封鎖したが同時にキング翼の弱体化という代償を伴った。黒の 10...Bxe3 によるf筋の開通は白にだけ利益をもたらしたことが明らかとなった。

22.Bd1

 ビショップが働き出した。

22...a3 23.Bh5+ Ke7

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 黒キングはポーンの堅固な城壁の中にいるが盤の中央列では比較的安全としかいえない。

24.b3 Rhf8 25.R5f3 Nb6 26.Rg3 Kd8 27.Bg4 Qe7 28.Be2

Y080128G.JPG

 このビショップ引きは 29.d4 を狙っている。そうなればビショップ(b5の地点に)とクイーン(d列で)が働き始める。

28...Kc7 29.d4 c4 30.Rb1

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 あっという間に戦線が移動した。

30...g5

 黒クイーンの活動範囲が回復した。

31.bxc4 bxc4 32.Rb4

Y080128I.JPG

 ポーン得は必至である。

32...Qe6 33.d5 Qc8 34.Bxc4 Na4

Y080128J.JPG

 35...Kd8 でポーン損を回復する手を狙っている。

35.Bb5 Nc5 36.Qe2

Y080128K.JPG

 37.Qh5 から敵陣を荒らす手を狙っている。

 白はポーンが1個多いといっても全局的にはそれほど大したことはない。白の優勢は実際には黒駒が連係を欠いていることによる。連係の悪さは彷徨するキング、働きのないクイーン翼ルーク及びポーンの周囲の空所が原因である。

36...f5 37.exf5

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37...e4

 すぐに 37...Qxf5 と取ると 38.Rf3 で白が必勝形になる。それでまず 37...e4 として次の 38...Qxf5 を狙った。

38.Bc6

Y080128M.JPG

38...Rb8

 38...Ra7 と逃げるのは 39.Qb5(次に 40.Qb6# で詰み)Qb8 40.Qxb8+ Rxb8 41.Rxb8 Kxb8 42.h4(敵の前線を破壊する)Rg7 43.f6 Rf7 44.hxg5 hxg5 45.Rxg5 Rxf6 46.Rg8+ Kc7 47.Ra8 から 48.Rxa3 で決定的なポーン得になる。

39.Qh5 Rf6

 陣形を固めたことになるのだろうか?白の次の一発がその疑問に答えを与える。

40.Rxg5

Y080128N.JPG

 ルークを切ってクイーンを侵入させた。

40...hxg5 41.Qh7+ Nd7 42.Bxd7

Y080128O.JPG

42...Qg8

 42...Qxd7 は 43.Rc4+ Kd8 44.Qh8+ でルークを取り返し猛攻が続く。

43.Rb7+

Y080128P.JPG

 この手は単なる手筋にとどまらずチェス史上最も洗練された着想の産物でもある。技術的にはその主眼点はそらし(43...Rxb7 44.Qxg8)、かく乱(43...Kd8 44.Rxb8+)及び両チェックによる分断(43...Kxb7 44.Bc8+)である。

43...Kxb7 44.Bc8+

Y080128Q.JPG

44...Ka8

 44...Kxc8 は 45.Qxg8+ Kc7 46.Qg7+ から 47.Qxf6 である。

 本譜の手は負けを承知のはかない抵抗である。

45.Qxg8 Rxf5 46.Qd8 Rxd5 47.Qd7 Rb1+ 48.Kh2 Rd2

Y080128R.JPG

49.Qc6+ Kb8 50.Qxe4 Rbb2 51.Be6 Kc7 52.Qc4+ Kb6

Y080128S.JPG

53.Bd5 g4 54.hxg4 Rf2 55.Qc6+ Ka7 56.Qc7+ 黒投了

Y080128T.JPG

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2008年02月04日

チェス500名局(19)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第19局

白 バックル
黒 ハルビッツ
1846年、ロンドン

 本局は次のような経過をたどった。穏やかな展開から中原での小競り合いが発生し両者のポーン陣形に弱点が生じる。白が巧妙に1ポーンを得する。駒の精算が進んでナイト・エンディングになる。さらに38手目で同数ポーン(4個)のエンディングになるが、白の遠方パスポーンが決定的な役割を果たす。黒のもがきは10手しか続かない。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.O-O Nf6

Y080204A.JPG

5.Nc3

 5.d3 又は 5.Re1(5...Ng4 6.d4)も良い手である。しかしポーンを犠牲にする 5.c3 Nxe4 又は 5.d4 Bxd4 はあまり明快な指し方でない。

5...d6 6.h3 O-O 7.d3 Be6 8.Bb3 Ne7 9.Ne2

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 両者ともじっくりした駒の展開で陣容を良くしようとしている。

9...Ng6 10.Ng3 c6 11.c3 d5 12.d4

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 このポーンのぶっつけで見たことがないような戦いになってきた。

12...dxe4 13.dxc5 exf3 14.Qxf3

Y080204D.JPG

 クイーンが手順に好所に来た。

14...Bxb3 15.axb3 Nd5

 この手は 16.Bg5 でナイトが釘付けにされるのを避けた。

16.Nf5

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 ナイトが重要な拠点を占めた。

16...b6

 この手は自分からクイーン翼のポーンを弱めて良くない。代わりに 16...Nh4 で単純化を図るか又はクイーンを 16...Qf6 に捌いて 17...b6 18.cxb6 axb6 19.Rxa8 Rxa8 を狙えば互角の形勢だった。

17.cxb6

Y080204F.JPG

17...Qxb6

 17...axb6 とポーンで取るのは 18.Rxa8 Qxa8 19.c4 Nde7(19...Ndf4 は 20.Bxf4 Nxf4 21.Qxc6 で本譜と同様にポーン得する)20.Nxe7+ Nxe7 21.Be3 Qb7 22.Rd1 で白が主導権を握る。

18.c4 Ndf4

 決死の覚悟で反撃を目指した手だが 18...Nde7 と引く方が賢明だった。

19.Bxf4 Nxf4

Y080204G.JPG

20.Rfd1

 20.Ne7+ Kh8 21.Nxc6 は 21...f6 でナイトが不安定である。だから白は別の手で黒の弱いcポーンを取りに行くことにした。なおここでの 20.Qxc6 は 20...Qxb3 と来られる。

20...Qc7

 20...Kh8 と先に逃げると 21.Rd7 と侵入される。本譜の手はそれを防いだ手だが白のもう一方の狙いには役立っていない。

21.Qxc6 Rfc8 22.Qxc7 Rxc7 23.Nd6

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 1ポーン得というわずかな有利を勝ちに結び付けるには白は真の卓越した技量を発揮しなければならない。

23...Ne2+ 24.Kf1 Nd4 25.b4 f5 26.c5 Rb8 27.Ra4

Y080204I.JPG

 攻防の手である。

27...g6 28.Rda1 Nc2 29.Rxa7 Rxa7 30.Rxa7

Y080204J.JPG

30...Nxb4

 30...Rxb4 は 31.c6 でこのポーンを止められない。ここから白は巧妙に駒の精算を推し進める。

31.Rb7 Rxb7

 31...Nc6 は 32.Rxb8+ Nxb8 33.b4 Na6 34.c6 でだめである。

 本譜のナイト・エンディングは勝つのが非常に大変そうに見える。しかし試合の流れは白に都合良くできていた。

32.Nxb7 Kf7 33.Ke2 Ke7 34.Kd2 Kd7

Y080204K.JPG

35.Na5 Na6 36.Nb3 Kc6 37.Kc3 Nxc5 38.Nxc5 Kxc5

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 白には「遠方パスポーン」があるのでこのポーン・エンディングは白の勝ちである。

39.h4 h6 40.f3

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40...g5

 黒が 40...Kb5 のように手待ちをしても 41.b4 で後退しなければならない。

41.h5 e4 42.fxe4 fxe4

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43.g4 Kd5 44.b4 Ke5 45.b5 Kf4 46.b6 e3 47.b7 Kf3 48.b8=Q 黒投了

Y080204O.JPG

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2008年02月11日

チェス500名局(20)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第20局

白 チゴーリン
黒 タラシュ
1902年、モンテ・カルロ

 キング翼の攻撃を企図し気の付き難い狙いと必要ならば捨て駒を織り交ぜて勝利を飾るのは偉大なマスターの資質というべきものである。

 本局はそのような攻撃の見事な実例である。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.Nc3 Nf6

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 この戦型は「イタリア4ナイト試合」と呼ばれている。

5.d3 d6 6.Be3

Y080211B.JPG

 これは堅実な手である。

6...Bb6

 6...Bxe3 7.fxe3 とビショップを交換すると二重ポーンにもかかわらず白の中原が引き締まりf列も白が使えるようになるので本譜の手の方が良い。

7.Qd2

 クイーンはこの位置が良い。7.Qe2 は 7...Bg4 とかかってこられるのが不快である。

7...Be6

 7...O-O なら白には対称形の 8.O-O と好戦的な 8.O-O-O があるが選択は棋風の問題である。

Y080211C.JPG

8.Bb5

 駒組を続けようとするならこの手に限る。8.Bb3 は 8...Bxb3 9.axb3 Bxe3 10.fxe3 d5 11.exd5 Nxd5 12.Nxd5 Qxd5 で局面の単純化を図られ互角の形勢となってしまう。

8...O-O 9.Bxc6 bxc6 10.d4 Ba5 11.Qd3 Qb8

Y080211D.JPG

 白は狙われたbポーンを守る気がしない。12.Rb1 と守れば 12...Bxa2 だし 12.dxe5 は 12...Qxb2 と取られて受けに窮する。12.O-O-O とキャッスリングしながら守ると黒は 12...Bxc3 13.Qxc3 Nxe4 14.Qxc6 でなくもっと厳しく 12...Qb7 13.dxe5 dxe5 14.Nxe5 Rab8 で主導権を握る。

12.O-O Qxb2

 このクイーンによるポーンのかすめ取りで白はさらにポーンを犠牲にして攻撃態勢を整えることができる。

13.Bd2 Bxc3 14.Bxc3 Qb5 15.dxe5

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15...Bc4

 この俗な駒得主義は良くなかった。15...Qxd3 16.cxd3 Nd7 が簡明で白は優勢でもほんのわずかの差でしかなかった。

16.Qe3 Ng4 17.Qg5 Nxe5 18.Nd4

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 縦方向からの攻撃のために駒を温存した。18.Nxe5 は 18...f6 でたちまち黒が優勢になる。

18...f6 19.Qg3 Qa6 20.Nf5 Ng6 21.h4

Y080211G.JPG

21...Be6

 21...Bxf1 と交換得に飛びつくのは 22.Rxf1 Rf7 23.h5 で黒が危険過ぎる。

22.Nd4 Bd7 23.h5 Ne7 24.f4 c5 25.Nf3 Qc4 26.Nh4

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 直接的にはビショップを守り間接的にはeポーンも守っている(26...Qxe4 なら 27.Rae1 で黒の駒損になる)。[訳注 27...Nf5 で黒の勝勢のようです。]

26...Qe6

 次に 27...Qg4 を意図している。

27.f5 Qf7 28.h6 Kh8 29.hxg7+ Qxg7

Y080211I.JPG

30.Qh2 Rf7 31.Rf3 Rg8 32.Raf1 Qg5 33.Bb2

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 筋を変えてビショップを働かせようという手である。

33...Bb5 34.Bc1 Qg4 35.Re1

Y080211K.JPG

35...Rgg7

 難しい局勢の中で黒の選択の余地は限られている。しかるに白の方は態勢を良くする手が色々ある。黒は 35...Bc6 と指すのが良かった。

36.Bh6 Rg8 37.Bf4 Rfg7 38.Bh6 Rf7 39.Bd2 Bc6 40.Rf4

Y080211L.JPG

40...Qg5

 40...Qg3 とぶつけるのは誤りで 41.Ng6+ Rxg6 42.fxg6 で白の交換得になる。

41.Rf2 Qh5 42.Rf3 Rg4

 この反撃を狙う手は裏目に出た。

41.Rh3

Y080211M.JPG

 ようやく決定的な駒の再編成が完了した。黒は 44.Ng6+ の狙いが受からない。

43...Rfg7

 43...Kg8 とあらかじめチェックを避けても 44.Nf3 で黒クイーンが「詰み」になる。

44.Ng6+ hxg6 45.fxg6 黒投了

Y080211N.JPG

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2008年02月18日

チェス500名局(21)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第21局

白 ボゴリュボフ
黒 レティ
1920年、イェーテボリ

 本局では黒の思慮深く且つ慎重な指し手が見られる。まず敵のくびきを振り払い(12...Kh8 と 14...Rg8)それから自ら勢力を広げ(13...Bc4 と 22...Bc4)ついには攻勢に転じた(27...f5)。ここに見られるのは理にかなった駒の捌きの威力である。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.d3 Nf6 5.Nc3 d6 6.Be3 Bb6

Y080218A.JPG

7.h3

 この様子見の手に代わる最も効果的な策略はクイーン翼キャッスリングを予定する 7.Qd2 である。

7...Be6 8.Bb5

 この手は 8.Bb3 よりもはるかに難しい戦いになる。

8...O-O

Y080218B.JPG

9.Bxc6

 この交換で黒の中原が強固になった。白はこの交換を遅らせてまず 9.Bg5 と指すべきだった。

9...bxc6 10.Bg5 Qe7 11.O-O h6 12.Bh4

Y080218C.JPG

12...Kh8

 この手は ...Rg8 から ...g5 でナイトの釘付け状態の解消を図るための準備である。すぐに 12...g5 は 13.Nxg5 と切られる。

13.d4 Bc4 14.Re1 Rg8 15.dxe5 dxe5

Y080218D.JPG

16.Bg3 Rad8 17.Qc1 Nd7 18.Nd1 f6 19.Ne3

Y080218E.JPG

19...Bf7

 このビショップ引きが本手である。19...Be6 は 20.Nf5 Bxf5 21.exf5 でほぼ互角の形勢となる。本譜の手なら今後のビショップの働きに期待することができる。(古い警句に『ビショップを持っている方に未来が輝く』というのがある。)

20.Nf5

 この手でしばらくの間白に主導権が残るが黒陣の弱点がしだいに目立ってくる。その弱点とは働きのないビショップ、f2の地点、戦線から遠ざけられたクイーン及び敵に支配された素通しのd列である。

20...Qf8

 当たりを避けながら白からの 21.Nxh6 の狙いを防いだ。

21.c3

 クイーン翼での活動を策したこの手は実際はd3の地点に弱点を作り出して良くなかった。21...Nc5 を防いで 21.b4 と突く方が良かった。それでも黒は 21...c5(21...Qxb4 には 22.Nxh6 と来られる)22.c3 Kh7 から ...g6 で優勢である。

21...Nc5

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 この手は 22...Nd3 を狙っている。それと共に白のe1のルークをeポーンの守りに縛り付けている。

22.Qc2

 白は受けに回った。激しく 22.Nxe5 fxe5 23.Bxe5 と迫るのは(次に 24.Qxh6# で詰み)うまく行かない。黒は 23...Kh7 24.Bxg7 Rxg7 25.Qxh6+ Kg8 26.Qh4 でなく 23...Bg6 24.Qxh6+ Bh7 で受け切る。

22...Bc4 23.Nd2

 eポーンを守るにはこの手しかない。23.Red1 は 23...Rxd1+ でeポーンか(24.Qxd1 Nxe4)aポーンが(24.Rxd1 Bxa2)落ちる。

23...Bd3 24.Qc1

 24.Qd1 は 24...Bxe4 とポーンを取られる。

24...g6

Y080218G.JPG

 この機会に相手の唯一働いている駒を追い払う。

25.Nh4 Ba6

 この立ち退きにより今度はナイトが大威張りでd3の地点に居座る。

26.Qc2 Nd3 27.Red1 f5

Y080218H.JPG

 次に 28...f4 でビショップをf2の守りからどかせる狙いである。

28.a4

 すてばちの手である。28.Rf1 とf2の地点を守っても 28...f4 29.Bh2 Nxf2 30.Rxf2 Bxf2+ 31.Kxf2 Qc5+ 32.Ke1 Qe3+ 33.Kd1 Qf2 34.Nhf3 Be2+ 35.Kc1 Bxf3 36.gxf3 Qxh2 で白の勝ちになる。[途中 34...Qf1+ 35.Ne1 Be2+ 36.Kc1 Qxe1+ 37.Qd1 Qxd1# で詰みます。]

28...f4 29.a5 Bc5 30.Kh2

 どうしても駒損は避けられない。30.b4 なら 30...Be7 である。

30.fxg3+ 31.fxg3 Qf2

Y080218I.JPG

 狙いは 32...Ne1 33.Rxe1 Rxd2 である。

32.Rf1 Ne1

 優勢な時には手に困らない。33.Rxf2 なら 33...Nxc2 で白の二つのルークが同時に当たりになっていて黒の交換得になる。

33.Raxe1 Bxf1 34.Rxf1 Qxd2

Y080218J.JPG

 以下55手目で白投了

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2008年02月25日

チェス500名局(22)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第22局

白 カナル
黒 ヨーナー
1929年、カールスバート

 本局は白が攻撃のために筋をこじ開ける手に魅了される。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.d3 Nf6 5.Nc3 d6 6.Bg5

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 この手から始まる4手をカナル攻撃といい、実戦的な指し方である。

6...h6

 この手は不快な釘付けをすぐに解消しようという手である。

 7.Nd5 に対処する他の手としては 6...Be6 と 6...Na5 がある。

7.Bxf6

 7.Bh4 と引くと 7...g5 8.Bg3 Bg4 で主導権が黒に渡る。

7...Qxf6 8.Nd5

Y080225B.JPG

8...Qd8

 8...Qg6 に対して白は 9.Nxc7+ Kd8 10.Nxa8 Qxg2 とは指さない。代わりに 9.Rg1 Bb6 10.c3 で全ての危険を取り除いて中原を制する。

9.c3 Ne7

 敵の中原のナイトを取り除こうとするこの手は本筋である。他山の石となる失敗は(実際に同じ大会のカナル対ベッカー戦に現れた)9...Be6 10.d4 exd4 11.cxd4 Bb6 12.Nxb6 axb6 13.d5 Na5 14.Bd3 Bg4 15.b4 で、白が駒得になり勝った。

10.d4 exd4 11.Nxd4

Y080225C.JPG

11...Nxd5

 もっと有効な反撃手段はこの時点でも 11...c6 である。

12.Bxd5 O-O 13.Qd3

 これでどちら側へもキャッスリングできる。

13...Qf6

Y080225D.JPG

14.Bb3

 有能なビショップを交換されないようにした。14.O-O は 14...Bxd4 15.cxd4 Be6 16.Bxe6(16.Bxb7 は 16...Rab8 から ...Rxb2)fxe6 で戦いの余地がなくなる。

14...Re8 15.O-O Be6 16.Bc2 g6

 e5突きを用心した手だがキングの周りが弱くなった。

17.Kh1

Y080225E.JPG

17...Rad8

 この手は 18...d5 でd列をこじ開ける手と 18...Bxd4 19.cxd4 c5(20.dxc5 dxc5 又は 20.d5 Bc8)で局面を単純化させる手を狙っている。しかし白の次の手の進攻でその暇がなくなった。

18.f4 Bd7

 18...d5 ならもちろん 19.e5 である。

19.f5 g5

Y080225F.JPG

 黒は急所のf列を開けないようにした。

20.Ne6

 この一時的な捨て駒で白はf列をこじ開けることができる。黒はそれを拒むことができない。例えば 20....Rc8 なら 21.Nxc5 dxc5 22.Qxd7、20...Bxe6 なら 21.fxe6 Qxe6 22.Bb3 で白が勝つ。

20...fxe6 21.fxe6 Qg6

 21...Qxe6 ならやはり 22.Bb3 である。

22.exd7 Rxd7

Y080225G.JPG

23.Rf5

 24.Rxc5 の狙いがあるので黒は 23...Rf8 と対抗することができず(23...Rf7 には 24.Bb3 がある)白はルークを素通しの列に重ねることができる。

23...Rde7

Y080225H.JPG

24.Raf1

 ポーンに目もくれないこの手は着実な手である。24.Qd5+ Kg7 25.Qxb7 は悪手で 25...Qxf5 26.exf5 Re1+ で頓死してしまう。24.e5 には 24...Qg7(24...Rxe5 は 25.Rxe5 Qxd3 26.Rxe8+ で白の勝ち)で応える。

24...Kg7

 24...Re5 には 25.Rf6 から 26.Bb3+、24...Rxe4 には 25.Qd5+ R4e6 26.Rf6 で白が勝つ。

25.e5

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 絶好のポーン突きである。この手は 26.Rf7+ Qxf7 27.Qh7+ Kf8 28.Qh8# を狙っている。

25...Rh8 26.e6

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26...Qxe6

 26...Rxe6 は 27.Rf7+ Qxf7 28.Rxf7+ Kxf7 29.Bb3 で白が大きな駒得になる。

27.Rf6 黒投了

Y080225K.JPG

 以下は 27...Qxf6 28.Rxf6 Kxf6 29.Qg6+ Ke5 30.Qf5# までの詰みとなる。

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2008年03月03日

チェス500名局(23)

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第1部 開放型

第1章 ジュオコ・ピアノ

第23局

白 カパブランカ
黒 エリスカセス
1936年、モスクワ

 上手な駒の清算の秘訣も所詮はポーンの管理法の一つである。

 機動性のあるポーン構造(例えば多くのゆとり手がある或いは本局で白が 48.f5 と突いたように敵の前線を打ち破る手があるなど)をうまく保持した側が最後まで優勢を維持した。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.Nc3 Nf6 5.d3 d6 6.Bg5 h6 7.Bxf6 Qxf6 8.Nd5 Qd8 9.c3

Y080303A.JPG

 局面から分かるように白は前手で遅滞なくc3の地点を空け、次は 10.d4 で又はいつかは b4 で中原での陣地の拡張を視野に入れている。

9...Ne7

 この手はすぐに中原の形を決めさせようとしている。他の手としては 9...a6(9...a5 もある)、9...Bb6(「先受けの引き」)又は最も単純な 9...O-O がある。

10.Ne3

 このナイト引きは陣形をめぐる静かな辛抱の要る戦いの前兆である。10.d4 Nxd5 11.Bxd5 exd4 12.Nxd4 O-O なら前局のように休む暇もない難解な戦いにもつれ込む。

10...Be6

 単純化を望むならこの手が一番である。しかし 10...O-O が本手だった。

11.Bxe6

Y080303B.JPG

 白は単純化の幻影など恐れない。それは敵陣に攻撃の対象となる小さな弱点が残るからである。

11...fxe6 12.Qb3

 白はここから主導権を握った。

12...Qc8

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13.d4

 13.Nxe5 は勝手読みである。黒は 13...dxe5 14.Qb5+ から 15.Qxc5 には引っ掛からず、先に 13...Bxe3 と切ってくる。

13...exd4 14.Nxd4

Y080303D.JPG

14...Bxd4

 黒のここまでの4手は絶対手である。もし 14...e5 なら 15.Ne6 と入ってこられる。

15.cxd4 O-O 16.O-O

 ここですぐに 16.Rc1 なら黒の動きはもっと難しかっただろう。

16...Qd7

Y080303E.JPG

17.Rac1

 17.Qxb7 は 17...Rfb8 18.Qa6 Rxb2 と逆襲される。本譜の手の後なら 18.Qxb7 が現実の狙いとなる(18...Rfb8 19.Qxc7)。

17...Rab8

 代わりに 17...c6 と守るのは収局でポーンの構造に弱点が残る。

18.Rc3

 白は 18.f4 による直接攻撃よりも兵力の集中を継続した。

18...d5

Y080303F.JPG

 敵が中原で何かを始めるまでの小休止を利用した。しかしこの手がもたらすポーン構造の変化には危険性が潜んでいる。態度を明らかにしないならば 18...Kh8 だった。

19.Qc2

 攻(cポーン)防(eポーン)の手である。19.e5(19...Nc6)と 19.Ng4(19...Rf4 20.Rg3 Kh7)はピッタリの手ではない。

19...c6 20.e5 Rf4

 この手は根拠のない攻勢なので簡単に撃退されてしまう。しかし黒のクイーン翼は完全に抑え込まれているので黒としては反対側で何かことを起こしたがっている。

21.Qd1 Raf8 22.f3

Y080303G.JPG

 手順に g3 から f4 とポーンを突いて行くつもりである。

22...Qd8 23.g3 R4f7 24.f4 Nf5 25.Nxf5 Rxf5 26.h4

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 ここからの「重砲」収局では陣地の広さで白が勝るのは明らかだが、勝ちに結び付けるには延々と駒繰りを行うことが必要である。

 本譜の手は 26...g5 を防いだ。この手には 27.hxg5 hxg5 28.Qg4 で白の勝勢となる。[訳注 カパブランカの解説によれば 28...R8f7 で引き分けなので黒は 26...g5 が最善だった。]

26...g6 27.Kg2 Qe7 28.a3 Qg7 29.Rcf3

Y080303I.JPG

 これもちょうど黒の 29...g5 を予期した手である(30.fxg5 Rxf3 31.Rxf3)。ここから黒は全くの専守防衛戦略に回る。

29...Qe7 30.Qc2 Kg7 31.g4

Y080303J.JPG

 白はキング翼でのポーンの数の優位に物を言わせようとする。黒のクイーン翼での優位は実際上封じられている。

31...R5f7 32.Kh3 Qd7 33.b4 Rg8 34.Rg1 Kh8 35.Qd2 Rh7 36.Qf2 h5

Y080303K.JPG

37.gxh5 Rxh5 38.Rg5 Qh7 39.Qg3 Qh6 40.Qg4 Rg7 41.Rg3 Kh7

Y080303L.JPG

42.Rg2 Kh8 43.Kg3 Kh7 44.Rh2 Re7 45.Rh3

Y080303M.JPG

45...Kg7

 一見良さそうな手だが白に「清算」によりエレガントに勝負を決めるのを許してしまった。45...Re8 の方がいくぶん良かった。

46.Rxh5 Qxh5 47.Qxh5 gxh5 48.f5

Y080303N.JPG

 これで敵陣突破がなる。

48...exf5 49.Kf4 Re6 50.Kxf5 Rg6

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51.e6 Rg4 52.Ke5 Re4+ 53.Kd6 Rxd4 54.Re3 黒投了

Y080303P.JPG

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2008年03月10日

チェス500名局(24)

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第1部 開放型

第2章 エバンズ・ギャンビット

第24局

白 デュフレーヌ
黒 ハルビッツ
1848年、ベルリン

 中原(d5とe5)での揺さ振り、(g列での)縦からの攻撃による黒キングの館の崩壊、これらは全て駒捨てによるものである。これらこそエバンズ・ギャンビットの真骨頂である。いみじくも「低迷するチェス界への神からの贈り物」と形容した人がいる。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.b4

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 1826年頃にエバンズ船長によって創案されたこの華々しい構想は強力な中原を作るために強制的に先手を取ろうとするものである。マクドネルによって大陸に「輸入」されたこの「新手」は性急のブルドネ、不滅のモーフィー、後には深遠のチゴーリンによって最も支持された。

 ラスカーの対応策の発見によって下火になったがタルタコーワ博士やアレグザンダーによって今でも指されている。

4...Bxb4 5.c3 Bc5

 5...Ba5 の他にはここへ引くのが唯一の本筋である。5...Be7 と 5...Bd6 は黒の前途を多難にするだけである。

6.O-O

 息もつかせぬ 6.d4 exd4 7.O-O という指し方もある。

6...d6

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7.d4 exd4 8.cxd4 Bb6

 このビショップの「指定席」である。

9.Bb2

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 最善の継続手の一つである。対角筋は前途が有望である。

9...Nf6

 もっと自重した 9...Nge7 なら白は 10.Ng5 又は 10.d5 と指すことになる。

10.Qc2

 10.Nbd2 は 10...Bg4 で明らかに良くない。すぐに 10.e5 と突くのも 10...dxe5 11.dxe5 Qxd1 12.Rxd1 Ng4 である。

 本譜の手はいくつもの役目を果たしている。つまりビショップにg4で釘付けにされることとクイーン交換を避けること、当たりのeポーンを守ること、そして見張りの位置につくことである。

10...O-O 11.e5

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11...dxe5

 11...d5 と突き返すのは 12.exf6 dxc4 13.fxg7 でキングの囲いが壊される。

12.dxe5 Nd5

 d列を「無効」にする希望は完全に打ち砕かれることになる。しかし 12...Ng4 では 13.Qe4(次に 14.e6 の狙い)で白の攻撃に拍車がかかる。

13.Rd1 Be6 14.Bxd5 Bxd5 15.Nc3

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15...Ne7

 15...Nb4 は 16.Qa4 a5 17.a3 で白が勝つ。

16.Ng5

 キングを標的とする攻撃が始まった。

16...Ng6

 16...g6 ならば白は 17.Nge4 Bxe4 18.Nxe4 Qc8 19.Nf6+ でf6の地点の「空所」につけ込んで必勝形になる。

17.Nxh7

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17...Kxh7 18.Nxd5 Qg5 19.Rd3

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 白は大々的に縦からの攻撃に着手した。

19...c6 20.Rh3+ Kg8 21.Rg3

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21...Qh4

 もっと頑強な受けは 21...Qh6 だった。というのは白にさらに駒を捨てる手が生じたからである。

22.Nf6+ gxf6 23.Rxg6+

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23...fxg6

 23...Kh8 なら 24.Rg3 である。

24.Qxg6+ Kh8 25.exf6 Rf7

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 26.Qg7# と 26.f7+ の両様の狙いを防ぐには泣く泣くルークを差し出すしかない。「対角筋の開放」はこの先も重大な役割を果たす。

26.Qxf7 Rg8

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 言わずと知れた 27...Qxf2+ からの詰みの狙いである。

27.Kh1

 これで受かっている。27...Rxg2 なら 28.Qe8+ Kh7(28...Rg8 は 29.f7+)29.Qe7+ Kh6(29...Kg8 は 30.f7+)30.Bc1+ で白が勝つ。

 良くないのは 27.g3(27...Rxg3+)や 27.Qe8(27...Qxf2+ から詰み)である。

27...Qg4 28.Rg1

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28...Bxf2

 28...Bd4 は受けにならない(29.Bxd4 Qxd4 30.Qh5#)。しかし本譜の手でも白の二の矢で勝負が決まる。

29.Qe8 Kh7 30.f7 黒投了

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2008年03月17日

チェス500名局(25)

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第1部 開放型

第2章 エバンズ・ギャンビット

第25局

白 バード
黒 リビエール
1858年、ロンドン

 本局で面白いのは白が無雑作に二度にわたりクイーンの交換を黙認または持ちかけたことである。それができるのは白がd列を所有しているからでありそれが勝敗を決めることになる。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.b4 Bxb4 5.c3 Bc5

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6.O-O d6 7.d4 exd4 8.cxd4 Bb6 9.h3

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 白は事を急がない。この予防手は白の立派な中原を脅かす 9...Bg4 による釘付けを未然に防いでいる。

9...Nf6

 9...Nge7 なら白には次のように想像力に溢れた指し方がある。10.Ng5 d5(10...O-O なら 11.Qh5)11.exd5 Na5 12.d6 Nxc4 13.Qa4+ c6 14.Qxc4 Nd5 15.Re1+ Kf8 16.Re7 で白が縦横無尽に指し回している。

10.Nc3 O-O

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 黒が危機を脱したように思われる。しかし黒の苦闘は始まったばかりである。それゆえに 10...h6 が良かったとされている。

11.Bg5

 『狙いは実行よりも強力である』という至言に沿った手である。この釘付けは 12.e5 を狙っているが黒にとっては次のようにすぐにやってこられるよりも深刻である。11.e5 dxe5 12.dxe5 Nd7 13.e6 fxe6 14.Bxe6+ Kh8 15.Ng5 Nde5 16.Qh5 h6 で白の攻撃は頓挫している。

11...Ne7

 釘付けを緩和しようという手だが欠点もある。11...h6 と反駁する手が示唆されている。

12.e5

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 いよいよ敵陣突破である。

12...dxe5

 すぐに 12...Nd7 は 13.Nd5 で白の勝勢となる。

13.dxe5

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13...Nd7

 仕方がない。13...Qxd1 は 14.Raxd1 で黒は駒損が避けられない。

14.e6

 ここでの 14.Nd5 は 14...Bc5 で受かる。本譜のポーン突きは黒陣を混乱に落とし入れる。
 
14...fxe6 15.Bxe6+ Kh8 16.Nd5

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16...Nf6

 今度は 16...Bc5 としても単刀直入に 17.Bxd7 Bxd7(17...Qxd7 は 18.Nxe7 で白が駒得する)18.Re1 Re8 19.Qc2 Bd6 20.Nxe7 Bxe7 21.Rxe7 Rxe7 22.Qc5 で釘付けが奏功する。

17.Bxf6 gxf6 18.Bxc8

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18...Rxc8

 黒は危険に気付かず戦利品を漁った。黒は次のように局面の単純化に甘んじるべきだった。18...Qxd5 19.Qxd5 Nxd5 20.Bxb7 Rad8 で黒は全部のポーンが弱いが受けきれる局勢だった。

19.Nf4

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 黒にとっては新たな肩透かしである。ポーン得だがクイーン交換を誘われた。

19...Qxd1

 19...Qe8 と交換を避けると 20.Ne6 でこのナイトの圧倒的な位置が形勢を左右する。

20.Raxd1 Rcd8 21.Ne6 Rxd1 22.Rxd1 Re8 23.Rd7

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 7段目の占拠はポーン損を補って余りある。『筋の開通は展開に勝る方に味方する』という原則がここでも確認できる。

23...Nd5

 この何とか駒を捌こうという苦心の手(24.Rxd5 Rxe6)に対して白はそれを上回る手で応じた。23...c5 に対しては白は欲張って 24.Rxb7 c4 と指したりせずに堅実に 24.Nd2 と指す。

24.Nd8

 黒キングを隅に留め置く。24.Ng7 は 24...Re7 と受けられる。

24...Nf4 25.Nf7+ Kg8 26.Nh6+ Kh8 27.Nh4

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 予備役のナイトが戦闘に加わった。次の手で黒のルークは最下段を離れるべきでなかった。黒は 27...Ng6 で駒の再編成をするべきだった。それでも黒の苦戦は免れがたい。

27...Re1+ 28.Kh2 Bxf2

 28...Re8 と戻るのは 29.N4f5 で白の攻撃が功を奏する形である。

5手で詰む(29.Rd8+ Re8 30.Rxe8+ Kg7 31.N4f5+ Kg6 32.Rg8+ Kh5 33.g4#)。

Y080317K.JPG

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2008年03月24日

チェス500名局(26)

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第1部 開放型

第2章 エバンズ・ギャンビット

第26局

白 モーフィー
黒 レーベンタール
1859年、ロンドン

 本局では開放列での攻撃の価値がどのようなものかが単なる言葉で説明するよりも明確に良く分かる。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.b4

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 モーフィーはこの手を多くの対局で強いアマチュア相手に指しているが彼の手にかかると目もくらむほどの結果を生み出した。

 本局の相手は第一級のマスターだった。

4...Bxb4 5.c3 Bc5 6.O-O d6 7.d4 exd4 8.cxd4 Bb6 9.d5

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 この手は当分の間「イタリア斜筋」を隠すがその代わり黒陣を混乱させる効果を持っている。

9...Ne5

 この捌きは白の駒繰りを速めるのを助けるだけである。正着は 9...Na5 で、この後よく指されているのは 10.Bb2 Ne7(10...Nxc4 は 11.Qa4+ から 12.Qxc4)11.Bd3 O-O 12.Nc3 Ng6 で両者とも仕掛けの機会をうかがうことになる。

10.Nxe5 dxe5 11.Bb2

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11...Qe7

 eポーンを守りながら将来の ...Qb4 の反撃を狙っている。

 黒が 11...f6 と守った場合白が 12.Bxe5 fxe5 13.Qh5+ Kf8 14.Qxe5 と駒を捨てて攻めるのは 14...Qf6 と受けられるので無理筋である。白の最善手は 12.Kh1 Ne7 13.f4 で有望な形勢である。

12.Bb5+

 12.Qh5 は 12...Bd4 がピッタリの受けである。

12...Bd7 13.Bxd7+ Kxd7 14.Qg4+

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 この最も簡単な手で白はポーンを取り返すだけでなく、攻撃を放棄することなくポーンをもう一つ獲得する。

14...f5

 14...Ke8 は 15.Qxg7 Qf6 16.Bxe5 で白の必勝形である。14...Kd6(今か次の手で)は 15.Nd2 で黒の運命は風前の灯である。

15.Qxf5+ Ke8

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16.Bxe5

 白は 16.Qxe5 Qxe5 17.Bxe5 Kf7 と清算するよりも直接的な駒の活動に期待している。

16...Nh6 17.Qf4 Kd7

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 黒はこの人工キャッスリングでルークの連結を望んでいる。

18.Nd2

 18.Nc3 は大悪手で 18...Rae8 で黒が駒得する。

18...Rae8 19.Nc4

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 受け(ビショップの守り)と攻め(20.d6 cxd6 21.Rad1)を兼ねている。

19...Bc5

 d6の地点を強化した。19...Kc8 と早逃げするのは 20.Rac1 で攻撃を勢いづかせる。

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20.Rad1

 白は 20.Bxc7 Rhf8(20...Qxe4 は 21.Ne5+ Rxe5 22.Bxe5 で良くない)21.Qe5(21.Qg3 は 21...Qxe4 22.Qxg7+ Nf7 で逆転)21...Ng4 22.Qxe7+ Rxe7 23.Bg3 Rxe4 でも大いに良かった。しかしモーフィーは締め付けを緩めない方を選んだ。

20...Bd6 21.Bxd6 cxd6 22.Rb1

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 この手と以降の手で白は大駒の攻撃目標をたちまちのうちに替えてしまった。

22...b6 23.Rfc1 Qf6 24.Qe3

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24...Ng4

 24...Rb8 は幸便に 25.e5 と突かれる。

25.Nxb6+

 鮮やかなナイト切りである。この後もっと豪勢な駒捨てが出てくる。

25...axb6 26.Rc7+

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26...Kd8

 崖っぷちの受けである。26...Kxc7 は 27.Qxb6+ Kd7 28.Qa7+ から 29.Rb8# で詰まされる。

27.Qxb6 Qxf2+ 28.Qxf2 Nxf2 29.Ra7

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 30.Rb8# の狙いが残っているので駒損を取り返すことができる。これで2ポーン得となり陣形の差も圧倒的である。

29...Nh3+ 30.gxh3 Kc8 31.Kf2 で白の勝ち。

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 31...Rhf8+ は 32.Ke3 で黒はどうしようもない。31...Rxe4 は 32.Ra8+ でもう一つのルークを取られるのでだめである。

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2008年03月31日

チェス500名局(27)

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第1部 開放型

第2章 エバンズ・ギャンビット

第27局

白 コーリッシュ
黒 パウルセン
1861年、ブリストル

 本局の前半(黒の17手目まで)は両者がもっぱら陣固めに専念した。

 それからは第2戦線のような所で行なわれていた局地戦が突然戦闘の中心舞台になった。そうなったのは主として黒の華麗なポーンの突き捨て(19...c3)と小駒の連係プレーによるものだった。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.b4 Bxb4 5.c3

Y080331A.JPG

5...Ba5 6.d4 exd4 7.O-O d6 8.cxd4 Bb6 9.d5

 (9.Bb2 や 9.Nc3 の代わりに)この手を主として用いたのはアンデルセンだった。

9...Na5

 この手は遅滞なくここに行けば手損にならない。それは白のビショップはいずれ動かなければならないし、黒は自陣を固めるのに必要な空間が確保できるからである。

10.Bb2

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10...Ne7

 自分の駒の展開にも注意を払っている。10...Nxc4 は 11.Qa4+ Bd7 12.Qxc4 で白駒の適正な配置の手助けにしかならない。

 本譜の手で黒は 11.Bxg7 を恐れていない。それは 11...Rg8 で黒が主導権を握れる。

11.Bd3 O-O 12.Nc3 Ng6 13.Ne2

 最初の頃の乱雑な小競り合いの後局面は慎重な駒繰りに入った。

 この「大局的」な様相はエバンズ・ギャンビットの多様な側面を現している。

13...c5

 白はクイーン翼での優位を生かそうとする。

14.Qd2

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14...f6

 相手の黒枡ビショップの対角筋の利きを止めた。

 14...c4 は 15.Bc2 で効果がない。

15.Kh1

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15...Bd7

 黒がクイーン翼で動くなら 15...Bc7 もある。以下 16.Rac1 Rb8 17.Ng3 b5 18.Nf5 c4 19.Be2 でどちらも指せる分かれである。

16.Rac1 a6

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17.Ne1

 これはfポーン突きの準備の継続である。しかしこの局面でしなければならなかったのは 17.Ng3 Bb5 18.Nf5 c4 19.Be2 だった。

17...Bb5 18.f4 c4 19.Bb1 c3

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 このポーンの突き捨ては巧妙である。重要な兵員(クイーン翼のナイト)のために場所を譲り、素通しとなるc列の活用を視野に入れながら敵駒をもつれさせる。

20.Rxc3

 他の応手は明らかにだめである。20.Nxc3 は 20...Bxf1、20.Qxc3 は 20...Bxe2、そして 20.Bxc3 は 20...Nc4 から 20...Ne3 で黒の交換得になる。

20...Nc4 21.Qc1 Rc8

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 この手は拠点を占めているクイーン翼のナイトを強化し、何よりも 22...Ba5 23.Rc2 Nd2 を狙っている。

22.Bd3 Be3

 決定的といえる敵陣侵入である。

23.Qc2 Nd2

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 前の手の継続手である。敵の弱い枡を支配する黒の指し回しは注目に値する。最終的にはそれは駒得に転化される。

24.Rg1 Rxc3 25.Qxc3 Qb6 26.Bc1 Bxg1 27.Nxg1 Bxd3 28.Nxd3 Nxe4 黒投了

Y080331I.JPG

 29.Qc4 なら 29...Re8、29.Qc2 なら 29...Qd4(30...Qxd3 31.Qxd3 Nf2# の狙い)30.Nh3 Re8 31.Bb2 Qxd3 32.Qxd3 Nf2+ 33.Nxf2 Re1+ で詰みになる。

Y080331J.JPG

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2008年04月07日

チェス500名局(28)

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第1部 開放型

第2章 エバンズ・ギャンビット

第28局

白 ブラックバーン
黒 シュタイニッツ
1862年、ロンドン

 本局は猛攻に対する辛抱強い受けの勝利である。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.b4 Bxb4 5.c3 Bc5

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6.d4

 この手は 6.O-O d6 7.d4 よりも直截(ちょくせつ)的である。[訳注 6.O-O d6 7.d4 は 7...Bb6 の余地を与えます。]

6...exd4 7.O-O

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7...d6

 「普通の局面」になろうとしている。7...dxc3 なら白は 8.Qd5 Qe7(当たりの2地点を同時に守る)でなく 8.Bxf7+ Kxf7 9.Qd5+ Ke8 10.Qxc5 で格好の攻撃態勢になる。

8.cxd4 Bb6

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9.Nc3

 9.Bb2 と 9.d5 は既に出てきたがこの手は効果的で素直な展開の手である。9.Qb3 は無理筋で 9...Na5 10.Bxf7+ Kf8 11.Qd5 Nf6 で白クイーンは深入りしたビショップを守れない。

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9...Bg4

 もっと普通の(というよりエバンズ・ギャンビットがまだ流行していた時はそうであった)手は 9...Na5 である。以下ゲーリング攻撃と呼ばれる 10.Bg5 f6 11.Be3 で白が長期間主導権を確保することになる。

10.Bb5

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 これで再びdポーンを守っている。そして逆に 11.d5 a6 12.Ba4 を狙っている。

10...Kf8

 類を見ない受けである。10...Bd7 は 11.e5 で白の勢力が広がる。

11.Bxc6

 せっかく黒のキャッスリングをできなくしたのに駒の交換によって相手の陣形をくつろがせてやることはなかった。ここ又は次の手での正着は 11.Be3 だった。

11...bxc6 12.Ba3

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 13.e5 は一時的な狙いである。しかし 12.Be3 と本来の斜筋に展開していればもっと役割を果たすことができた。

12...Bxf3 13.gxf3 Qg5+ 14.Kh1 Ne7

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15.Ne2 Ng6 16.Rg1 Qf6 17.Qd3

Y080407H.JPG

17...Kg8

 キャッスリングしなかったのでh7の地点に行こうとしている。7...Nf4 は 8.Nxf4 Qxf4 9.Rg4 Qh6(19...Qf6 なら 20.e5)20.e5 で白の圧迫が形を帯びてくる。

18.Bc1 h6 19.f4 Kh7

Y080407I.JPG

20.f5

 白はうまく駒を捌いて主導権を取り戻した。20.e5 も非常に強い手である。

20...Ne7 21.Bb2 d5

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 中原の陣地をめぐる争いはこの手以降非常に熾烈になった。

22.f3 Rad8 23.Nf4

Y080407K.JPG

 24.Nh5 が有力な狙いである。しかし 23.Ng3 なら 24.e5 も狙えた(f5のポーンがナイトで守られている)。

23...Rhg8

 頑強な受けである。23...dxe4 は難解な戦いになるが 24.fxe4 Bxd4 25.Nh5 Bxb2 26.Nxf6+ Bxf6 27.Qa3 Bxa1 28.Qxe7 Bf6 29.Qxf7 Rhe8 30.Qxc7 Rxe4 31.Rxg7+ Bxg7 32.Qxd8 で白が有望である。

Y080407L.JPG

24.Nh5

 24.Rg4 と準備してからこの手を指そうとしても 24...dxe4 25.fxe4 Bxd4 でその暇がない。

24...Qh4 25.f6

Y080407M.JPG

25...Qxh5

 25...gxf6 には 26.e5+ がある。

26.fxe7 Rd7 27.exd5+ g6

Y080407N.JPG

28.Rae1 Re8 29.Re5 Qh4

Y080407O.JPG

30.Rf5

 奇抜な手だが黒は適切な応手を見つけた。

 30.Re6 も今一歩で 30...Rdxe7 31.Rexg6 fxg6 32.Qxg6+ Kh8 33.d6 cxd6 34.d5+ Bd4 35.Bxd4+ Qxd4 36.Qxh6+ Rh7 37.Qg6 Rxh2+ 38.Kxh2 Qh4+ 39.Kg2 Re2+ で詰みとなる。

Y080407P.JPG

30...Qxe7

 30...Rdxe7 は明らかにだめで 31.Rxf7+ Rxf7 32.Qxg6+ Kh8 33.Qxf7 Qe7 34.Rg8+ Rxg8 35.Qxe7 で白が勝つ。

31.dxc6 Rdd8

Y080407Q.JPG

32.Ba3

 32.d5 に最後の希望を託しても 32...Bxg1 33.Qc3 Bd4 34.Qxd4 Qe1+ 35.Kg2 Re2+ 36.Kh3 Qf1+ で黒の勝ちとなる。

32...Qe6 33.Rf4 f5

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 終わりが近い。

34.Rh4 h5 35.Bb2 Rd5

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 ポーンを突かせない。

36.Qc2 Qe2

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 この侵入に対して陣形がバラバラで弱点だらけの白は逃げ回るしかない。

37.Qb3 Qb5 38.Qc3 Re2 39.f4 Rxd4 40.Qf3

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 41.Qxh5+ からの頓死が最後のお願いである。

40...Qd5 白投了

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2008年04月14日

チェス500名局(29)

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第1部 開放型

第2章 エバンズ・ギャンビット

第29局

白 コーリッシュ
黒 アンデルセン
1860年、パリ

 本局の黒のようにキングが原位置に留まっていると強襲にさらされる可能性が常につきまとう。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.b4 Bxb4 5.c3 Ba5

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 この位置への退却は白の手の届かない所なので 5...Bc5 よりも賢明である。

6.d4

 この手は 6.O-O よりも積極性がある。6.O-O に対して黒は次のように色々な応手がある。

(a) 6...d6 7.d4 Bd7(サンダーズ-アラピン防御。7...exd4 は 8.cxd4 Bb6 で通常の局面に戻る)8.Qb3 Qe7

(b) 6...Nf6 7.d4 O-O 8.Nxe5 Nxe4 で非常に難解な戦いになる。

(c) 6...Qf6(シュタイニッツ防御)次の第30局を参照。

6...exd4 7.O-O

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7...dxc3

 妥協防御と呼ばれるこの手で黒は当面は3ポーン得になるが猛攻にさらされることになる。他には以下のような手がある。

(a) 7...Bb6 8.cxd4(8.Qb3 なら 8...Na5)8...d6 は通常の局面になる。

(b) 7...d6 8.Qb3(ワラー攻撃)は 8...Qf6 9.e5 dxe5 10.Re1 Bd7 11.Bg5 で黒にとって非常に厄介である。

(c) 7...Nf6 8.Ba3 d6 9.e5 で黒の状況は一層悪い。

(d) 7...Nge7 8.cxd4 で攻撃が続く。

(e) 7...b5 8.Bxb5 dxc3 9.Ba3 で白の圧倒的な体勢である。

(f) 7...d3 次の試合(アンデルセン対デュフレーヌ、ベルリン、1853年)が有名である。8.Qb3 Qf6 9.e5 Qg6 10.Re1 Nge7 11.Ba3 b5 12.Qxb5 Rb8 13.Qa4 Bb6 14.Nbd2 Bb7 15.Ne4 Qf5 16.Bxd3 Qh5 17.Nf6+ gxf6 18.exf6 Rg8 19.Rad1
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(自然だが平凡な 19.Be4 に満足しないで破天荒な手筋をもくろんでいる)19...Qxf3(黒は本気にしていない。しかし 19...Rg4 なら 20.c4、19...Qg4 なら 20.Qxg4 Rxg4 21.Bf5 でしょせん白が良い)20.Rxe7+ Nxe7(20...Kd8 は 21.Rxd7+ Kc8 22.Rd8+ で白の勝ち)21.Qxd7+ Kxd7 22.Bf5+ Ke8 23.Bd7+ Kf8 24.Bxe7#
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で詰みである。実戦ではなかなかお目にかかることのできない比類ない手筋の連続であった。

8.Qb3

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8...Qf6

 8...Qe7 は 9.Ba3 d6 10.e5 で白が有望である。

9.e5

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9...Qg6

 9...Nxe5 は 10.Re1 d6 11.Nxe5 dxe5 12.Qa4+ で黒の駒損になる。

10.Nxc3

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10...b5

 この手は何とか白の矛先をかわそうという意味だが成功はおぼつかない。10...Bxc3 も 11.Qxc3 b6 12.e6 で白が順調である。比較的ましな手は 10...Nge7 だが 11.Ba3 O-O 12.Nd5 でやはり黒が前途多難である。

11.Nxb5 Rb8

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12.Qe3

 この機敏なクイーンの移動で白は黒の 12...a6 の狙いをかわし主導権を維持している。

12...Nge7 13.Qe2

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 この手は敵のクイーンを 14.Nh4 で捕まえる狙いである。

13...Qh5 14.Ba3

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14...Bb7

 14...a6 は 15.Nd6+ cxd6 16.exd6 で白が優勢である。

15.Rad1

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15...Nf5

 15...O-O は 16.Rxd7 があるのでまだキャッスリングできない。そこで黒はナイトの捌きを図る(狙いは 16...Nce7 から 17...Bxf3)。しかし黒の窮屈な陣形は災いを呼び込むことになる。

16.Rxd7

 「キング狩り」のためのルーク切りである。

16...Kxd7 17.e6+

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17...Kc8

 17...fxe6 は 18.Qxe6+ Kd8 19.Rd1+ Ncd4 20.Nxd4 で簡単に終わる。

18.exf7 Ba8 19.Nxa7+

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 この鮮やかな手は敵キングから逃げ道のb7を奪うためである。

19...Nxa7

 19...Kb7 ならば 20.Nxc6 で 20...Kxc6 と取り返してくれば 21.Ne5+ でクイーンを素抜ける。

20.Qe6+

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20...Kd8

 20...Kb7 は 21.Qa6# でも 21.Ba6# でも詰む。

21.Rd1+ Nd6

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22.Rxd6+

 事態は成り行きで当然の経過をたどる。しかし 23.Bxd6 の方がもっと早く決まっていた。

22...cxd6 23.Qxd6+ Kc8 24.Be6+ Kb7 25.Bd5+
 
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25...Qxd5

 つらいが仕方ない。25...Kc8 は 26.f8=Q+ Rxf8 27.Qxf8+ Kc7 28.Qe7+ で次の手で詰む[訳注 28...Kc8 29.Be6# のつもりだったようですが 28...Kb6 と逃げる手があり 29.Bc5+ Kb5 30.Nd4+ Ka4 31.Bb3+ Rxb3 32.axb3# までの詰みとなります]。

26.Qxd5+ Ka6 27.Qc4+ Kb7 28.Qe4+ Nc6 29.Ne5

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29...Ka6 30.Qc4+ Ka7 31.Bc5+ Rb6 32.Bxb6+

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 収穫を得た。

32...Bxb6 33.Nxc6+ Bxc6 34.Qxc6 黒投了

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2008年04月21日

チェス500名局(30)

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第1部 開放型

第2章 エバンズ・ギャンビット

第30局

白 チゴーリン
黒 シュタイニッツ
電報対局、1890-91年

 チェス界が何ヶ月も固唾を呑んで見守った本局は想像力豊かな攻撃の名手と不動の抵抗力を信じる防御の名手との対決である。しかし後者は不利な手(6...Qf6)を選んだおかげでみずからハンデを負った。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.b4 Bxb4 5.c3 Ba5 6.O-O

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6...Qf6

 時のチャンピオンの好みだったこのシュタイニッツ防御は常識的な 6...d6 よりもはるかに重い負担を黒に強いる。

7.d4

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7...Nh6

 黒はもう通常の受けでは間に合わずいびつな戦略に頼るしかない。例えば 7...d6 は 8.d5 から 9.Qa4+ で駒損になるし 7...exd4 は 8.e5 Qg6 9.cxd4 で中原を席巻される。

 7...h6 はのんびりした手でガンズバーグ対シュタイニッツ戦(番勝負、ニューヨーク、1891年)に例がある。
8.Qa4 Bb6 9.Bb5 Nge7 10.Ba3 exd4 11.e5 Qg6
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12.cxd4 Nd5 13.Re1 Nf4 14.g3 Qg4 15.Nbd2 Nh3+ 16.Kg2
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16...Ng5 17.Bb2 Ne7 18.Be2 Ne6 19.Kh1 Qf5 20.Nh4 Qxf2
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(みごとにはまった。しかし絶対手の 20...Qh7 でも黒は大苦戦である。)21.Ne4 で黒が投了した。次の 22.Bf1 で黒クイーンはどこにも逃げ場がない。

8.Bg5

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 この出撃でクイーンの早出の不当性が露わになる。黒は 8...Qg6 とかわしたいところだが 9.d5 Nb8 10.Bxh6 gxh6 11.Nxe5 で白はポーン得になり陣形でも勝っている。

8...Qd6 9.d5 Nd8 10.Qa4 Bb6 11.Na3

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 開放的な局面ではよくこうなるが白の手は直接の狙いを持って次々と要所に決まる。白の当座の狙いは 12.Nb5 Qg6 13.Bxh6 から 14.Nxe5 である。

11...c6

 この手のためにd6の地点が弱まり後に白につけ込まれた。しかし 11...a6 でも白は 12.Nb5 と跳べ(本譜と同じく 12.Be2 も良い手である)12...axb5 13.Qxa8 bxc4 14.Qxc8 O-O 15.Bxd8 c6 16.Qxb7 となる。

12.Be2 Bc7 13.Nc4 Qf8 14.d6

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 軽妙な「そらしの突き捨て」である。これにより白は左端から侵攻することができる。

14...Bxd6 15.Nb6 Rb8 16.Qxa7 Ne6 17.Bc1 Ng8

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 これは「シュタイニッツの布陣」とでも呼びたい局面である。多くの黒の駒が最下段でうごめいている。

 黒の陣型は満足に展開もしていなければ展開の余地もないと言うのが適当で、もちろんチェスとしては終わっている局面である。ロシアの偉大なるチャンピオンは実戦的にもそれを証明するために突き進む。

18.Ba3

 一手前にビショップを引いた意味がこれで明かされた。

18...c5

 もちろん 18...Bxa3 なら 19.Qxb8 である。本譜の手で黒は中原(d5)をさらに弱めることを余儀なくされた。

 一つの弱点は別の弱点をもたらすという月並みな事実の現れである。

19.Rad1 Nf6 20.Bc4

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 白の狙いは 21.Bxe6 fxe6 22.Bxc5 である。

20...Bc7

 20...Nxe4 と餌にとびつくと 21.Nxc8 Rxc8 22.Qxb7 Rc6 23.Nxe5 でもっとひどいことになる(23...Bxe5 24.Qxd7#)。

21.Nd5

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21...Bd6

 21...Nxd5 は 22.exd5 Nf4 23.d6 Bxd6 24.Bxc5 Bxc5 25.Qxb8 Kd8 26.Nxe5 で白の勝ちである。

22.Nh4

 黒が動きに不自由している間に白はさらに陣容の強化を図ることができる。

22...Nxd5 23.Nf5

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 この間をおいた華麗な捌きで白はすぐにたくさんの収穫が約束されていた。

23...g6 24.Nxd6+ Qxd6 25.Bxd5

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25...Qc7 26.Bxe6 fxe6 27.Bxc5

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27...Ra8

 27...d5 は 28.exd5 exd5 29.Rxd5 で次の 30.Bd6 がひどい。いずれにしても黒は交換損を避けられず以降は断末魔のあがきである。

28.Qxa8 Qxc5 29.Qa4 Kd8 30.Rd2 Kc7

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31.Rb1 Rd8 32.Rb5 Qc6 33.Qb4 d6

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34.a4 Qe8 35.Rb6 Qf8 36.Qa5

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36...d5

 36...Kb8 は 37.Rdb2 d5 38.Ra6 から 39.Ra8# を狙われる。

37.exd5 Kb8 38.d6 黒投了

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2008年04月28日

チェス500名局(31)

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第1部 開放型

第2章 エバンズ・ギャンビット

第31局

白 サンクトペテルブルグ市
黒 ウィーン市
1898年

 チェス選手の中には攻撃されるとうろたえる者がいる。本局の白はその例のように見える。白はどうも自分の方にだけ攻撃する特権があると考えていたようだ。しかし突然手ひどい狼藉(ナイト切りの 18...Nxg2 )にあった。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.b4 Bxb4 5.c3 Ba5 6.O-O d6 7.d4 Bb6

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 ここは定跡の大きな分かれ目である。古典的な 7...exd4 はほとんど当然のようにみなされてきた。その手の代わりに黒はギャンビット・ポーンを返す意向をすぐに明らかにした。目的は 8.dxe5 dxe5 9.Qxd8+ Nxd8 10.Nxe5 Nf6 となれば白のクイーン翼ポーンが弱いので有利な収局に持ち込むためである。本譜のラスカー防御は 6.O-O だけでなく 6.d4 d6 にも当てはまる(次の第32局参照)。

8.a4

 主導権をめぐる戦いである。他にも次のような手がある。
(a)8.dxe5 dxe5 9.Qb3(既に示したようにクイーン交換は白が悪い)9...Qf6 10.Bg5 Qg6 は黒が受け切っている。
(b)8.Qb3 Qf6 も黒の受けは問題ない。
(c)8.Ba3 exd4 9.cxd4 Bg4 は黒が反撃に出る。

8...Nf6

 黒の希望はポーン得を保ったまま展開を済ませることである。

9.Bb5

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9...a6

 この手は必要である。9...O-O や 9...Bd7 は 10.Bxc6 の後 11.a5 で黒が駒損になる。

10.Bxc6+ bxc6 11.a5 Ba7

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12.Qa4

 このクイーンの出撃は自分の当たりになっているeポーンを間接的に守ると共に黒のcポーンを狙っていて、主導権を維持しようとしている。12.dxe5 はチゴーリン対ラスカー戦(サンクトペテルブルグ、4者戦、1895-6年)に良い例があり次のように進んだ。12...Nxe4(ポーン取りにはポーン取り)13.Qe2 d5 14.Nd4 Nxc3(意表の手)
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15.Nxc3 Bxd4 16.Qd3 c5 17.Qg3 Be6 18.Bg5 Qd7
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19.Rac1 f6 20.exf6 gxf6 21.Bf4 Rhg8 22.Qf3 O-O-O
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23.Rfe1 c4 24.Qe2 Bf5 25.Qa2 Rxg2+(白陣の壊滅)
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26.Kh1 Rxf2 白投了

12...exd4

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 ちょうど良い時に黒は中原のポーンを取り除く。

13.cxd4 Bd7 14.e5 Nd5

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15.Ba3

 15.exd6 なら黒は 15...cxd6 でなく(16.Re1+)、15...O-O 16.dxc7 Qxc7 と指す。ポーンの数は同じになるが形勢は黒の方が良い(双ビショップ、より進んだ展開、中原のナイト)。

15...O-O

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16.Qc4

 16.exd6(ここで又は次の手で)ならば黒は 16...cxd6 17.Bxd6 でなく 16...Kh8 で主導権を握ることに努める[訳注 16...Kh8 でなく 16...Re8 の間違いと思います]。

16...Nf4 17.Kh1

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 この手は 17...d5 に対して 18...Ne2 による「家族チェック」を気にする必要なく 18.Qc1 と下がれるようにするためである。

17...Be6

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18.Qc1

 18.Qxc6 は 18...Bd5 があるのでだめである。本譜の手は猛烈な反撃を受けるので白はせめて 18.d5 Nxd5 19.Qxc6 と指すべきだった。

18...Nxg2

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 先まで読み切ったナイト切りである。

19.Kxg2 Bd5 20.Kg3 f5

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 この新兵投入でたちまち形勢が定まる。

21.Nbd2

 21.Qg5 は 21...f4+ 22.Kg4 Bxf3+ で決まる。

21...f4+ 22.Kg2 Qg5+ 23.Kh1 Qh5

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24.Qc3

 二つの狙われている地点(f3のナイトとd4のポーン)を同時に守ったが徒労に終わることになる。

 24.Kg2 には 24...Qg4+ がある。24.Qd1 は 24...Bxd4 25.Rc1 Bxe5 で黒が1役駒に対して4ポーン(それと攻撃)の収穫となる。

24...Bxd4

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 この新たな予期せぬ手で形勢は決定的である。

25.Qd3

 25.Qxd4 は 25...Bxf3+ 26.Nxf3 Qxf3+ 27.Kg1 Rf5 28.Rfe1 Qh3 で白は投了するしかない。

25...Bxa1 26.Rxa1 Qxe5 27.Rg1 Rab8 28.Rg2 Qh5

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29.Kg1 Bxf3 30.Nxf3 Qd5 31.Qc3 Rb1+ 32.Ne1 Qd4

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 とどめの一撃である(33.Qxd4 Rxe1#)。

33.Bb2 c5 白投了

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2008年05月04日

チェス500名局(32)

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第1部 開放型

第2章 エバンズ・ギャンビット

第32局

白 アレグザンダー
黒 タイラー
ヘースティングズ、1935-6年

 英国の輝ける若きマスターは本局で古今のあらゆる防御にもかかわらずエバンズ・ギャンビットが死んでいないことを証明した。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.b4 Bxb4 5.c3 Ba5 6.d4 d6

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7.Qb3

 白は主導権を失くすわけにはいかない。次のような展開は白にとって何の得にもならない。7.d5 Nce7 8.Qa4+ c6 これでビショップに紐がついている。7.Qa4 exd4 も良い見通しが立たない。7.O-O は 7...Bb6(ラスカー防御)で黒はどこにも問題がない。

 最も有力な手順は 7.dxe5 dxe5 8.Qb3(当然クイーン交換を避ける)8...Qf6(8...Qe7 なら 9.a4、8...Qd7 なら 9.O-O から 10.Rd1)9.Bg5 Qg6 10.Nbd2 Bb6 11.h4 Nf6 12.Bd5 で白が有利な体勢でポーンを取り返す。

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7...Qd7

 唯一の受けである。7...Qe7(又は 7...Qf6)では 8.d5 Nd4 9.Nxd4 exd4 10.Qb5+ でビショップを取られる。白の前の手(7.Qb3)の意味はここで明らかである。つまり敵のクイーンは愚形となり自分の白枡ビショップの動きの妨げとなっている。

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8.dxe5

 8.O-O ならここでも 8...Bb6 である(9...Na5 の狙い)。考慮に値する手は 8.a4 で 8...Bb6 を予期するが 9.a5 Nxa5 10.Rxa5(この犠牲で白は攻撃の継続と加速を期待する)10...Bxa5 11.dxe5 Nh6(1932年にアレグザンダーによって示唆された独創的な手)12.e6(12.Bxh6 は 12...gxh6 13.exd6 O-O で 14.Ne5 なら 14...Qe8 なのであまり大したことがない)12...fxe6 13.Ng5 c6 14.O-O Qe7 15.Bxe6 となると白が万全を尽くしたとはとても言えない。

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8...Bb6

 ギャンビット・ポーンを返すのがこの防御の精神である。8...dxe5 は 9.O-O で Rd1 又は Ba3 が続く。勧められないのは 8...Nxe5 で 9.Nxe5 dxe5 10.Bxf7+ Qxf7 11.Qb5+ から 12.Qxa5 で白が優勢である。

9.Nbd2 Nh6 10.O-O O-O

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11.exd6

 この手は 11.Ba3 よりももっと黒に捌きの機会を与えてしまう。

11...Qxd6

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12.Bd5

 ここでは 12.Ba3 は 12...Bc5 で効果がない。

12...Na5 13.Qb4 Qg6 14.Ne5 Qh5 15.Ndf3 c6

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16.Ba3

 この手は見かけ倒しである。すぐに 16.Bb3 と引く方が良かった。

16...Re8 17.Bb3

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17...c5

 17...Nxb3 18.axb3 c5 の方がもっと簡明だった。

18.Qb5 Rxe5 19.Nxe5 Qxe5

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20.Bd5

 20.Rad1 で 21.Qxb6 を狙う手も面白かった。

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20...c4

 この誘いの隙(21.Bxf7+ なら 21...Nxf7 でクイーンにひもが付く)は駒損につながる。20...Qe7 と受けておかなければいけなかった。

21.Bb4

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21...Be6

 黒は自らの罠にはまった。21...Nc6 は 22.Bxc6 で駒損になる。

22.Bxa5 Ng4

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 必死の反撃だが簡単にかわされる。

23.g3 Bxd5 24.exd5 Bxf2+ 25.Rxf2 Nxf2 26.Kxf2 Qf5+ 27.Kg1 黒投了

Y080505M.JPG

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2008年05月12日

チェス500名局(33)

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第1部 開放型

第2章 エバンズ・ギャンビット

第33局

白 リール市
黒 パリ市
1897年

 序盤の穏やかな出だしから白はa列に有望なパスポーンを得た。この脅威を回避するために黒は欲しようと欲しまいと白ルークに7段目に侵入させて猛威を振るうことを許さなければならない。収局は痛快な立ち回りが一杯である。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.b4

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4...Bb6

 この手はギャンビットを拒否して穏やかな展開になることを望んでいる。逆襲の 4...d5 は黒が悪い。5.exd5 Nxb4 6.Ba3 となって白が良い。

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5.a4

 白は断固たる決意の下に左端での攻勢を続ける。しかし穏やかな作戦も考えられた。それは 5.c3 Nf6 6.Qb3 O-O 7.d3 d6 8.Bg5 Qe7 でジュオコ・ピアノの1変化を思い起こさせる形になり互角の形勢である。

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5...a6

 この手は白からの 6.a5 Bd4 7.c3 に備えた。同じようでも 5...a5 はあまり良くない。つまり 6.b5 Nd4 7.Nxd4(7.Nxe5 は 7...Qg5)7...Bxd4 8.c3 Bb6 9.d4 Qf6 10.Be3 で白が良い。同様に 5...Nxb4 は 6.a5 Bc5 7.c3 Nc6 8.O-O で白が優勢である。

6.c3

 慎重に手を進めている。

6...d6

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7.Qb3

 このクイーン出をさしはさんで白の主導権は維持されている。

 代わりに 7.d3 Nf6 8.O-O とうわべだけの手を指していると黒は 8...Ne7 の後 ...c6 から ...d5 で局面を支配する機会を得る。

7...Qe7 8.a5 Ba7 9.b5

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9...axb5

 9...Nd8 は 10.b6 cxb6 11.axb6 Bb8 とクイーン翼を押し込められてもっと具合が悪い。

10.Bxb5

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10...Nf6

 10...Bd7 は 11.a6 bxa6 12.Rxa6 で圧迫を受ける。本譜の手の後で 11.a6 ならば 11...O-O で大丈夫である。

11.O-O

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11...O-O

 11...Nxe4 は 12.Bxc6+ bxc6 13.Qa4 でポーンとナイトの両当たりになる。

12.Bxc6 bxc6 13.d3

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 序盤戦は白がわずかに有利で終わった。白のパスポーンは役に立たないように見えるが後になって重要になってくる。

13...h6 14.Be3 Be6 15.c4 c5 16.Nc3

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16...Nh7

 この手はキング翼攻撃を意図している。しかし 16...Rfb8 を手始めに反対翼に兵力を集中する方が賢明な策だった。

17.Nd2 c6 18.f4

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18...exf4

 黒はここで 18...f6 と受けることができた。しかし次の手を見れば分かるように黒はもっと積極的な作戦を考えていた。

19.Rxf4 f5 20.exf5 Bxf5 21.Nce4 Ng5 22.Re1 Nxe4 23.dxe4

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 大砲を隣のf列に集めるためにe列を閉じた。

23...Be6 24.Ref1 Rxf4 25.Bxf4 Rf8 26.Qg3 Bb8

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27.Rb1

 瞬く間に目標を変えたことには感心させられる。白の狙いは 28.Rxb8 Rxb8 29.Bxd6 である。27.Bxh6 は明らかにだめで 27...Rxf1+ 28.Kxf1(28.Nxf1 は 28...Bxc4)28...Qf6+ 29.Bf4 d5 で黒の勝ちとなる。

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27...Qf6

 狙われたhポーンを守りちょっとした罠(28.Bxd6 は Qd4+ で黒の勝ち)を含んでいる。白ビショップに対する狙いも持っているがそれははかなく消えることになる。

28.h4

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28...Bc7

 これで白ビショップに対する狙いは本物であると考えた。しかし実際には白はお見通しである。いずれにしても黒にとって形勢は険しくなっている。例えば 28...Qxf4 は 29.Qxf4 Rxf4 30.Rxb8+ Rf8 31.Rb6(駒を清算するのは 31.Rxf8+ Kxf8 32.a6 Bc8 33.a7 Bb7 34.Nb1 Ke7 35.Nc3 Kd7 36.Na4 Kc7 で何にもならない)31...Ra8 32.Rxc6 Rxa5 33.Rxd6 で白が駒数的に得をしている。

29.a6

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 このポーンは気まぐれに行動をおこす。29...Qxf4 は 30.Qxf4 Rxf4 31.a7 Rf8 32.Rb7 Ra8 33.Rxc7 で白の有利は動かない。

29...Rb8 30.a7

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 この頼もしいポーンは進撃を続ける。黒は 30...Rxb1+ 31.Nxb1 Qf8 とはできない。それは 32.Bxh6 でつぶれる。

30...Ra8 31.Rb7

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 良く読んである手である。要点は三つある。途中の 33.Nb3 の捌き、パスポーンが消えた後の(黒クイーンがg7の守りから離れた)34.Bxh6(即詰みの狙い)それから最後に 38.Nxc5 の後の白ナイトの大活躍である。

31...Qa1+ 32.Kh2 Rxa7 33.Nb3 Qa3 34.Bxh6 d5

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35.Rxc7 Rxc7 36.Qxc7 gxh6 37.exd5

Y080512S.JPG

37...cxd5

 37.Bxd5 は 38.Qb8+ から 39.cxd5 で白が駒得になる。

38.Nxc5 Bf7 39.cxd5

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39...Qe3

 39...Bxd5 は 40.Qd8+ でビショップが取られてしまう。本譜の手の後 40.d6 は 40...Qf4+ があるので白はポーンを進められない。しかし白は全軍を動員し形勢を決める策を見つけた。

40.Nd7 Qd4 41.Qd8+

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41...Kh7

 41...Kg7 と逃げるのは 42.Qf8+ kg6 43.h5+ で白の勝ちである。

42.Qe7 Qf4+ 43.Kh3 Qf5+ 44.Kg3 h5 45.Ne5 Kg8 46.Qxf7+

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 清算を強制させる。

黒投了

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2008年05月19日

チェス500名局(34)

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第1部 開放型

第2章 エバンズ・ギャンビット

第34局

白 タルタコーワ
黒 ルービンシュタイン
ハーグ、1921年

 駒の働きに勝る白が28手目で有利な駒割り(ビショップ+ナイト対ルーク)を得ることができた。51手目で白は完全なナイト得になった。しかしプロブレムのような駒捌きによって初めて白は勝ちにつなげることができた。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.b4 Bb6 5.Bb2

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 このビショップは相手のeポーンへの攻撃と何かの場合のa1ルークの守りを兼ねている。

5...d6

 もっと積極的な受けは 5...Nf6 である。例えば 6.a4 Nxe4 又は 6.b5 Na5 7.Nxe5 O-O で難解な戦いになる。

6.a4 a6 7.b5

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 ちょっと面白い小競り合いが始まる。白はそれを利用して主導権を維持する。

7...axb5

 7...Na5 は 8.Be2 とかわされる。

8.axb5 Rxa1 9.Bxa1

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9...Nd4

 ここでも 9...Na5 はナイトを端に置くので良くない。9...Nb8 は悪い手でなく後でd7に跳んで戦いに戻れる。

10.Nxd4

 10.Bxd4 も十分考えられる。しかし白はまもなく黒枡ビショップを働かせることができると考えている。

10...exd4

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11.c3

 白は 11.d3 や 11.O-O のような当たり障りのない手でなくすぐに相手の目障りな橋頭堡を取り払おうとする。

11...Nf6

 黒は展開を急ぐ。11...dxc3 12.Nxc3 は敵を利するばかりである。

12.O-O O-O 13.d3 d5

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 黒は巧妙に自陣の解放を図る。

14.exd5 Nxd5 15.Qf3

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 しかし白はクイーンを好位置につかせて主導権を維持する。

15...Nf6 16.cxd4 Bxd4 17.Nc3 Ng4 18.Nd5 Bxa1 19.Rxa1

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19...Ne5 20.Qg3 Re8 21.h3 c6 22.bxc6 bxc6 23.Ne3

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23...g6

 もっと用心して 23...Bd7 と指すべきだった。実戦は白ルークが敵陣深く侵入できた。

24.Ra8

Y080519I.JPG

24...h5

 適当な時に白クイーンを好位置から追い払いたい考えである。

 24...Nxd3(25.Rxc8 Qxc8 26.Bxd3)や 24...Qc7(25.d4)は良くない。24...Qe7 も幸便に 25.d4 と突かせてしまう。以上の理由で 24...Qd7 が一番ましな手だった。

25.Ba6 h4 26.Qxe5

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 この清算のためのクイーン切りで白は1ルークの代わりに2個の役駒を得る。

26...Rxe5 27.Rxc8 Qxc8 28.Bxc8

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 マスターの実戦ではルーク対2小駒のエンディングは頻繁に現れることはない。本局では参考になるねばり強い戦いが見られる。

28...Ra5 29.Kf1 Ra2 30.Bb7 Rd2 31.Ba6

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 白ができるだけポーン交換を避けようとするのは言うまでもない。ポーンはそれぞれ将来への可能性を秘めている。

31...Kg7 32.Ke1 Rb2 33.Nd1 Rb1 34.Ke2

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34...f5 35.d4 Kf6 36.Bd3 Rb4 37.Ke3

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37...g5

 37...f4+ なら 38.Kxf4(38.Ke4 は 38...c5)38...Rxd4+ 39.Ke3 で白は黒のクイーン翼の孤立パスポーンを見張りながらキング翼の多数派ポーンに物を言わせることができる。

38.Be2 Rb3+ 39.Kd2 Rb4 40.Kc3 Ra4 41.Nb2 Ra1 42.Bf3 g4

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 落とし穴が二つある。43.hxg4 なら 43...h3 44.gxh3 Ra3+、43.Bxc6 なら 43...Rc1+ である。

43.Bd1 Kg5 44.Kc2 gxh3 45.gxh3 Kf4 46.Nd3+ Ke4 47.Nc5+

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 この妙手で狙われているポーンを救うことができ(47...Kxd4 48.Nb3+)敵キングを寄せ付けない(47...Kd5 48.Bf3+ Kc4 49.Be2+ Kd5 50.Kc3)。

47...Kf4 48.Kd2 Ra2+ 49.Kc3 Ra1 50.Ba4

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50...Rxa4

 巧妙な手段だが形勢は盛り返せない。50...Rh1 も 51.Nd3+ Kg5 52.Bxc6 Rxh3 53.d5 Kf6 54.d6 で白が勝つ。

51.Nxa4 Kf3 52.Kd2 Kxf2 53.Nc5 白勝ち

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 53...Kg3 54.Ke2 の時黒の時間が切れた。しかしいずれにしても以下のように黒の負けは避けられない。54...Kxh3(54...f4 は 55.Nd3 f3+ 56.Ke3)55.Kf3 Kh2 56.Ne6 Kg1 57.Nf4 Kf1 58.Ke3
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58...Kg1(58...Ke1 は 59.Ng2+)59.Ke2(敵キングを抑え込む)59...Kh1 60.Kf1 Kh2 61.Kf2 Kh1(61...h3 は 62.Nh5 Kh1 63.Ng3+)62.Ng6
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62...h3(62...Kh2 は 63.Kf3 h3 64.Nf4)63.Nf4 Kh2(63...h2 は 64.Kf1 c5 65.Nh3 から詰み)64.Nh5 Kh1 65.Ng3+ Kh2 66.Nxf5 Kh1 67.Ne3
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67...Kh2(67...h2 は 68.Nf1 から詰み)68.Ng4+ Kh1 69.Kf1 c5 70.dxc5 h2 71.Nf2# で詰み
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2008年05月26日

チェス500名局(35)

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第1部 開放型

第2章 エバンズ・ギャンビット

第35局

白 ホイッティカー(米国)
黒 トマス(英国)
電報対局、1930年

 これは波乱に富んだ試合である。勝利は勇者に輝いた。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.b4 Bb6 5.b5

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 気まぐれな手である。

5...Na5

 5...Nd4 は 6.Nxd4 Bxd4 7.c3 Bb6 8.d4 で良くない。

6.Nxe5

 6.Be2 と引くのが賢明な手だったが白は戦いを白熱化させる手を選んだ。

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6...Nh6

 ナイトとg2のポーンの両当たりの 6...Qg5 も面白い手だった。

7.d4 d6 8.Bxh6 dxe5

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 白のビショップが両方とも当たりになっている。

9.Bxg7 Rg8 10.Bxf7+ Kxf7 11.Bxe5

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11...Bg4

 重大な勝負どころである。11...Rxg2 は 12.Qf3+ があるのでだめである。最善手は 11...Qg5 で白は1役駒の代わりに4ポーンを得ているが主導権は黒が握っている。

12.Qd3 c5

 ここでも 12...Qg5 が考えられた。

13.Nc3 cxd4 14.Nd5 Qe8

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15.Qg3

 次の狙いは 16.Qf4+ Ke6 17.Qf6+ Kd7 18.Qd6+ で強力だがうまく防がれる。

 白の簡明な手は 15.Bxd4 Bxd4 16.Qxd4 だった。

15...Nc4 16.Qf4+ Ke6

 16...Kg6 は 17.Qf6+ Kh5 18.Nf4# で頓死である。

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17.h3

 この手は緩着である。17.Qf6+ も 17...Kd7 で後が続かない。白は 17.Nxb6 axb6 18.Bxd4 と指すべきだった。

17...Ba5+

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 ここからは黒の独壇場である。

18.c3

 白キングがすぐに 18.Kf1 と逃げてもやはりつぶされる。

18...Bxc3+ 19.Kf1

 19.Nxc3 は 19...Nxe5 で 20...Nd3+ の狙いが残る。

19...Nd2+

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20.Qxd2

 この一時的なクイーンの犠牲で白は局面の挽回を期待するがその目論見は間違っていた。20.Kg1 は 20...Nf3+ 21.Kf1 Qxb5# できれいに決まる。

20...Qxb5+

 先にこのチェックを入れるのが肝要である。

21.Kg1 Bxd2 22.Nc7+ Kxe5 23.Nxb5

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23...Bf3

 一番簡明な手である。

白投了。

 巧妙できれいな決め方は 23...Be2 24.Na3 Rxg2+ 25.Kxg2 Rg8+ 26.Kh2 Bf4# である。

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2008年06月02日

チェス500名局(36)

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第1部 開放型

第3章 2ナイト防御

第36局

白 フォン・デル・ラーザ
黒 マイエット
ベルリン、1839年

 本局のフェガテッロ(訳注 イタリア語で豚レバーの意味)攻撃と呼ばれる戦法は奇妙な序盤の一つで黒キングは試合開始早々あちこち引きずり回される。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6

 2ナイト防御では黒は 3...Bc5 よりも主導権を争うのにはるかに適した体勢がとれる。

4.Ng5

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 この衝動的な企ては攻撃側の役割を簡単に代えさせてしまうことがある。

4...d5

 最も弱いf7の地点に対する攻撃を退けるにはこの手しかないがそれで十分である。他の非常に巧妙な手はうまくいかない。例えば 4...Nxe4(5.Bxf7+ Ke7 6.d4)や 4...Bc5(5.d4 Bxd4 6.Nxf7)などである。

5.exd5 Nxd5

 この手は深刻な反響をもたらす。

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6.Nxf7

 これがフェガテッロ攻撃である。この着想は確かに素晴らしいが次の変化の方がもっと確実である。6.d4 exd4 7.O-O Be6 8.Re1 Qd7 9.Nxf7 Kxf7 10.Qf3+ Kg8 11.Rxe6 で白が勝つ。

6...Kxf7 7.Qf3+

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7...Ke6

 ナイトを取った以上はこう指さなければならない。7...Ke8 は 8.Bxd5 Qf6 9.Bxc6+ bxc6 10.Qxf6 gxf6 11.d3 で白が価値あるポーン得になる。

8.Nc3

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8...Nce7

 8...Ncb4 ならば白は 9.Qe4 で圧力を強める。以下 9...c6 10.a3 Na6 11.d4 Nc7 12.Bf4 Kf7 13.Bxe5 Be7 14.O-O-O で白が優勢である。

9.d4

 9.O-O c6 10.Re1 も有力だった。

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9...b5

 攻撃を遅らせようとするこの面白い手の他に次の二つの防御法が試みられてきた。(a)9...c6 10.Bg5(b)9...h6 10.O-O c6 11.Re1 どちらの場合も実戦的に白の指せる変化である。

10.Nxb5

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10...c6

 10...Ng6 は 11.Bxd5+ で即白勝ちになるのでだめである。しかし黒はすぐに 10...Bb7 と指すべきだった。

11.Nc3 Qb6

 この手はクイーンがそっぽへ行くのであまり良くなかった。しかしここで 11...Bb7 は 12.Ne4 で白の攻撃に拍車がかかる。

12.dxe5 Bb7 13.Ne4

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 さらなる駒捨ては良く計算されていて黒の防御を打ち破ることができる。

13...Qb4+ 14.Bd2 Qxc4

 この時点では黒が駒を2個得しているが局面は白が支配している。

15.Qg4+

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15...Kxe5

 15...Kf7 なら 16.Nd6+、15...Nf5 なら 16.Ng5+ から 17.Qxc4 である。

16.f4+

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16...Kd4

 16...Nxf4 なら 17.Bxf4+ Kxe4 18.Bd6+ Kd5 19.O-O-O+ で詰む。

17.c3+ Nxc3 18.Bxc3+ Kxe4 19.f5+ Kd5

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20.O-O-O+ Kc5 21.b4+ Kb5 22.a4+ 黒投了

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2008年06月09日

チェス500名局(37)

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第1部 開放型

第3章 2ナイト防御

第37局

白 ウェイト
黒 ウィリアムズ
1853年頃

 本局は序盤の小競り合いからすぐに勝敗を決する攻め合いに突入し黒が見事に圧倒した。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.Ng5 d5 5.exd5

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5...Na5

 申し分のない応手はこの手だけである。5...Nd4(フリッツ戦法)は現代の研究では 6.c3 b5 7.Bf1 Nxd5 8.Ne4 で白が文句なく良い。

6.Bb5+ c6

 黒は展開を急ぐために 6...Bd7 でポーンを取り返す手には目もくれない。

7.dxc6 bxc6 8.Qf3

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 当たりになっているビショップをすぐ引っ込める代わりに白は乱戦に持ち込もうとする。しかしいずれにせよ主導権は黒に渡る。

8...Qb6

 明らかに 8...cxb5(9.Qxa8)と 8...e4(9.Nxe4 Qe7 10.Bd3)はない手である。しかし 8...Qc7 はcポーンとeポーンを同時に守っているので本譜よりずっと働いていた。

9.Ba4

 9.Be2 なら黒の最善手は本譜と同じく 9...Bg4 である。

9...Bg4 10.Qg3

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10...Bc5

 もっと穏やかな手順は 10...h6 11.Nh3(11.Qxe5+ は 11...Kd7 12.Nxf7 Re8 13.Qxe8+ Kxe8 14.Nxh8 Qa6 15.f3 Bf5 で白はクイーンの代わりにルーク2個を得たが状況は良くない)11...Bd6 12.O-O O-O-O で互角である。本譜の手はさらにポーンを与える。

11.O-O

 白は 11.Qxe5+ と冒険するよりもキングの安全を第一に考えた。

11...O-O

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12.Bb3

 ここでも 12.Qxe5 は疑問である。12...Bxf2+ 13.Kh1(13.Rxf2 は論外で 13...Rae8 で白の勝ちである)13...Rae8 14.Qf4 h6 で黒が優勢になる。

12...h6 13.Nf3 Nxb3 14.axb3 e4 15.Ne5 Be2 16.Re1 Nh5

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17.Nd7

 17.Qh4 なら 17...g5(敵クイーンをf2の守りからどかせようとする)18.Qxe4 Bxf2+ 19.Kh1 Bxe1 20.Qxe2(黒の二つの駒が当たりになっている)20...Qf2 21.Nc3 Rfe8 で黒の勝ちとなる。

17...Qd8 18.Qe5

 この後幾つかの駒が当たりになった状態が続くのはなかなか面白い。

18...Qxd7 19.Rxe2

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19...Qg4

 このクイーン出は非常に厳しい。19...Qd5 は 20.Rxe4 で黒は2ポーン損の代償が得られそうにない。

Y080609G.JPG

20.Rxe4

 20.Nc3 は 20...Nf4 21.g3 Nxe2+ 22.Nxe2 Qxe2 23.Qxc5 f5 24.Qxc6 f4 となり黒は交換得で攻勢に立っている。

 20.Qxe4 なら次のような参考になる攻め筋がある。20...Nf4 21.Kf1 Qxe2+ 22.Qxe2 Nxe2 23.Kxe2(駒割りでは白は交換損で2ポーン得ているのでわずかに有利である。しかし大局的には黒の駒の働きが勝っていて勝勢である)23...Rfe8+ 24.Kf1 Re6 25.d3 Rae8 26.Bd2 Re2 27.Be3 Rxc2
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で白が勝つ。

20...Nf4

 きれいな決め手である。21...Qd1+ があるのでこのナイトはクイーンでもルークでも取れない。

21.g3 Bd6

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 これまでの作戦の仕上げである。この軽妙なビショップのただ捨てで白クイーンは厳重に守っていたe1への利きを放棄しなければならない(例えば22.Qxd6 なら 22...Qd1+、22.h3 なら 22...Qxh3)。

白投了

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2008年06月16日

チェス500名局(38)

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第1部 開放型

第3章 2ナイト防御

第38局

白 シュタイニッツ
黒 チゴーリン
(電報による番勝負、1890-1年)

 不十分な展開の陣形の危険性は今さら強調するまでもない。本局はこの点において身の毛もよだつ例である。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.Ng5 d5 5.exd5 Na5 6.Bb5+ c6 7.dxc6 bxc6 8.Be2

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 明らかに最良の引き場所である。しかし主導権は黒のものである。

8...h6

 黒はもちろんすぐに侵入者を追い払わなければならない。8...Bc5 は 9.Nc3 h6 10.Nge4、8...Nd5(ビルヌーブ戦法)は 9.d4 で白が有利である。

9.Nh3

 シュタイニッツが好んだこの奇妙な引き場所は本局で容赦なく咎められる。9.Nf3 とすべきだった。

9...Bc5

 ここでも後でも 9...Bxh3 10.gxh3 は白の苦難を楽にさせてしまう。

10.d3 O-O

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11.Nc3

 白もキャッスリングすれば困難から抜け出せるだろうか。いや、そんなことはない。想定手順は 11.O-O Nb7 12.Kh1 g5 13.c3 Bb6 14.Be3 Nd5 で黒が圧倒的な体勢である。

11...Nd5

 ナイトが中原の要所を占めるとともにfポーンを突けるようにした。

12.Na4

 12.Nxd5 cxd5 は黒の中原がますます強力になる。しかし言うまでもないことだが白の二つのナイトの奇妙さは白にとって有利とはならない。

 このように一つの不利が別の不利を生み、理にかなった展開の代わりに白は無理な捌きに訴えなくてはならない。

12...Bd6

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13.Ng1

 これが「シュタイニッツ流」である。しかし今回は彼の後ろ向き前進は成功しなかった。

 しかし 13.O-O しようとしても 13...Qh4 で両方のナイトが危険にさらされるのでできなかった。

13...f5 14.c3 Bd7

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 黒は落ち着いて展開を完了させることができる。黒の狙いは-といっても陣形的なものだが-15...c5 でd5の地点をせき止めると共に自分のナイトをc6の地点を経由して戦線に復帰させることである。

15.d4 e4 16.c4 Ne7 17.Nc3 Be6 18.b3 Bb4 19.Bb2 f4

Y080616E.JPG

 次の手は 20...Nf5 である。

20.Qc2

 ポーンを1個やって仮想的な攻撃態勢を得ようとするが黒にみごとに咎められる。

 20.a3 Bxc3+ 21.Bxc3 Rb8 22.Rb1 で骨の折れる受けに邁進した方が良かった。

20...Qxd4 21.Kf1

 ここでもまだ 21.a3 とした方が適切だった。

21...f3

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 いよいよ敵陣突破である。

 以降の肉薄戦では両者ともはっきりした目的を遂行している。しかし黒の作戦の方が上回っていた。

22.gxf3 exf3 23.Bxf3 Bf5 24.Ne4 Bxe4

Y080616G.JPG

25.Qe2

 25.Bxe4 なら黒は 25...Rxf2+ 26.Qxf2 Qxe4 27.Nf3 Rf8 28.Kg2 Ng6 で 29...Rxf3 30.Qxf3 Nh4+ の狙いで鮮やかに勝負を決める。

25...Bxf3

 クイーンはくれてやる。ただし対価はもらう。(ルーク、2個の役駒、それに攻撃権)

 25...Bc3 は 26.Rd1 とされる。

26.Qe6+ Kh7 27.Bxd4 Bxh1 28.Qh3 Nf5

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 黒は活発な駒が前面に出だした。

29.Be5 Rae8 30.Bf4 Nd4 31.Qd3+ Be4

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 黒はきれいに「清算」を行ない、素通しの列でルークを活躍させる。

32...Qxd4 Rxf4 33.f3 Ref8 34.Qxa7 c5 35.Qc7 Nc6 36.a3 Rxf3+ 37.Nxf3 Rxf3+ 38.Kg1 Bd2 白投了

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2008年06月23日

チェス500名局(39)

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第1部 開放型

第3章 2ナイト防御

第39局

白 ベッカー
黒 ビドマール
(カールスバート、1929年)

 一旦攻撃態勢に入ったら優柔不断は致命傷になるかもしれない。

 本局の敗北は黒がこの金言に全く従わなかったことによるものである。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.Ng5 d5 5.exd5 Na5 6.Bb5+ c6 7.dxc6 bxc6

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8.Be2

 カスタルディ対ケレス戦(ストックホルム、1937年)では 8.Bd3 が指され次のように一風変わった手順になった。8...Nd5(この手は以降で非常に積極的な働きをするので 8...h6 9.Ne4 より有効である。8...Ng4 も非常に良い手で白がナイトを引けば 9...f5 と指す)9.Ne4 f5 10.Ng3 Nf4 11.Bf1 Bc5 12.c3 Bb6 13.d4 Ng6 14.Bd3
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14...O-O(14...e4 15.Be2 で筋を閉鎖するよりも局面を開放的にしておく方を好んだ)15.b4 Nb7 16.Bc4+ Kh8 17.d5(この手の後突然波乱が生じた)17...Nd6 18.Bb3 f4 19.Nf1 Ne4
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で白が投了した。

8...h6 9.Nf3 e4

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 黒はポーン損の代償に勢力を拡張する。

10.Ne5 Qc7

 敵のナイトをさらにいじめる。黒はまず 10...Bd6 と指すこともできた。それに対して白の最善は本譜と同じく 11.d4 である。

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11.d4

 11.f4 で大事な斜筋を剥き出しにすると 11...Bc5 12.c3 Nb7 が良い手になってくる。

11...Bd6

 もっと直接的な手順は 11...exd3e.p. 12.Nxd3 Bd6 である。しかし黒は自分の橋頭堡のポーンを放棄しない方を選んだ。そしていずれ敵の橋頭堡のナイトを追い払えると期待している。

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12.Bd2

 面白い手抜きである。白は自分の展開を重視して喜んで余分のポーンを返す意図を明らかにした。

 別の非常に古い手順は 12.f4 O-O 13.O-O c5 14.c3 でどちらも気の抜けない戦いになる。

12...O-O

 12...Bxe5 13.dxe5 Qxe5 ですぐにポーンを取り返す手は 14.Bc3 Qc7 15.O-O 又は 14...Qg5 15.Qd6 で白優勢となるので薦められない。12...Nb7 と黒が自ら引き下がるのは 13.Bc3 とされる。

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13.Na3

 白は 13.O-O の代わりに積極策を追求する。本譜の手で白は 13...c5 を防いでいる(14.Nb5 があるので)。それから 13...Bxa3 も 14.bxa3 c5 15.c3 Rd8 16.Qa4 があるので恐くない。

13...Be6 14.O-O

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 白は早くもこの手の後で 15.Bxa5 Qxa5 16.Nac4 で大幅な清算を狙っている。

14...Nb7

 黒は陣容の縮小を余儀なくされた。14...Bxe5 は 15.dxe5 Qxe5 16.Bc3 Qc7(16...Qg5 なら 17.Qd6 で Qc7 を狙う)17.Qd2 Nb7 18.Bxf6 gxf6 19.Qxh6 で黒が負ける。

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15.Kh1

 15.f4 は 15...c5 16.Nb5 Qb6 で黒が盛り返してくる。

 同様に 15.Nac4 は 15...Bxc4 16.Bxc4 c5 で黒が良い。

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15...Rad8

 ここが勝負どころである。黒は重大な問題を軽々しく扱って、ゆっくりと自分の陣容を改善していくことができると考えた。本当は次のようにすぐに敵の橋頭堡を取り除いてポーンを取り返すべきだった。15...Bxe5 16.dxe5 Qxe5 17.Bc3 Qf5 これなら戦いはまだ続く。

16.Nac4 Bxc4 17.Nxc4

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17...Bxh2

 17...Be7 はさらに押し込まれるので黒は勝負に出た。

18.g3

 白は全然ひるまない。

18...Bxg3 19.fxg3 Qxg3

 黒は永久チェックを期待している。しかし白の次の手はその幻想を吹き飛ばした。

20.Bf4

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 この後白は駒得を生かして勝ちきった。[訳注 109手目で黒が投了しました。]

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2008年06月30日

チェス500名局(40)

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第1部 開放型

第3章 2ナイト防御

第40局

白 シュピールマン
黒 エリスカセス
(番勝負、1936年)

 本局では21手目までに早くも二つの列が黒のルークによって占拠された。

 予想できるようにこの機動力の優位がすぐに決定的な行動に結びついた。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.Ng5 d5 5.exd5 Na5 6.Bb5+ c6 7.dxc6 bxc6 8.Be2 h6 9.Nf3 e4 10.Ne5 Qc7 11.d4 exd3e.p.

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 黒はできるだけ開かれた戦いを目指した。

12.Nxd3 Bd6

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 白は次の手でキャッスリングできない。

13.Na3

 11...c5 に対して 12.Nb5 を用意した。13.Be3 は 13...c5 で黒が良い。しかし最善はできるだけ早くキャッスリングすることである。例えば 13.h3 O-O 14.O-O Bf5 15.Re1 Rad8 16.Bf1 で陣容固めに努める。

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13...Ba6

 正確な手である。13...O-O は 14.b4 Nb7 15.Nc4 で白が盛り上がる。しかし本譜の手に対して同じく 14.b4 とくれば 14...Nc4 で黒陣の方が良くなる。

14.g3 O-O 15.O-O Rad8

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16.Be3

 d列での敵ルークの潜在的な利きを考えに入れれば白は 16.Bd2 と指す方が良かった。もっともそれでも白の形勢は難しい。

16...Nd5

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17.Bc5

 17.Qc1 なら 17...Rfe8 で黒が良い。

17...Bxc5 18.Nxc5 Nc3

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 見事な着想である。要点は開いたd列の開通である。

19.Nxa6

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19...Qe5

 黒は役駒が1個少なくc3のナイトも当たりになっているがここからは駒も全部取り返し形勢も有利になる。

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20.Qe1

 クイーンを見捨てても無駄である。例えば 20.bxc3 Rxd1 21.Bxd1 は 21...Qxc3 22.Be2 Qxa3 で明らかに黒が優勢である。

20...Nxe2+

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21.Kh1

 21.Kg2 は 21...Qd5+ 22.f3 Rfe8 23.Rd1 Nf4+ 24.gxf4 Rxe1 25.Rxd5 Re2+ から ...Rxd5 で黒が交換得である。

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21...Rfe8

 完全に押さえ込んだ。しかし 21...Qd5+ は 22.f3 Rfe8 23.Rd1(23...Nxg3+ は 24.Qxg3)で、21...Qh5 も 22.f3 Rfe8 23.Qf2 Rd2 24.Rad1(これで攻撃を押さえ込んだ)で何もならないところである。

22.Rd1 Qh5

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 次は 23...Qf3# の一手詰めである。(白の14手目で作られた弱点が効いてきた。)

23.h4

 23.f3 は 23...Rxd1 24.Qxd1 Nxg3+ で明らかにだめである。

23.Qg4 24.Kg2

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 24...Nf4+ なら 25.Kg1 Rxe1 26.Rxd8+ Kh7 27.Rxe1 でほぼ無事に切り抜けようと期待している。しかし新たな強打がこの期待にとどめを刺す。

24...Nxg3 25.fxg3 Re2+

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 必殺のチェックである。

26.Rf2 Rxf2+ 27.Qxf2 Qxd1 白投了

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2008年07月07日

チェス500名局(41)

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第1部 開放型

第3章 2ナイト防御

第41局

白 サルベ
黒 マーシャル
(ウィーン、1908年)

 敵のキングの陣営への攻撃法及びその突破法を知っていることは攻撃的選手の備えるべき必須の資質である。それよりもまれな才能は敵がどちらにキャッスリングするかを予測しその方面をあらかじめ弱めておくことができることである。黒は本局でそれを12手目の ...Bb4+ でやってのけた。それにより黒は隠された目的である白のd3の弱体化を故意に仕向けた。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.Ng5 d5 5.exd5 Na5 6.d3

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 モーフィーの構想の一つで、ポーンを返して中原を強化しようとする。

6...h6 7.Nf3 e4 8.Qe2

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8...Nxc4

 もちろんすぐに 8...Bc5 と出るのは 9.dxe4 でだめで白クイーンが間接的にc4のビショップを守っている。

9.dxc4

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9...Bc5

 戦略的には重要な斜筋を占め戦術的には 10.Nd4 を防いでいる。9...Be7 又は 9...Bd6 ならこのナイト跳びが可能である。

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10.Nfd2

 この後退の捌きで白は自陣内を弱体化させないで陣固めをしようとする。弱体化させてしまうのは 10.h3 O-O 11.Nh2 e3 12.Bxe3 Bxe3 13.fxe3 Ne4 又は 10.c3 O-O 11.Nd4 Bg4 で黒が優勢になる。

10...O-O 11.Nb3

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11...Bg4

 黒はこの中間手で主導権を維持している。11...Bd6 は 12.Nc3 Re8 13.h3 Bb4 14.O-O で白が自陣を固めポーン得を維持する。

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12.Qf1

 黒はおとなしくクイーンを引かなければならない。12.Qd2 は 12...e3 13.fxe3 Bxe3 で良くない。

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12...Bb4+

 またも中間手である。この手がなければ白が自陣を固める機会があった。例えば 12...Bd6 ならば 13.h3 Bh5 14.g4 Bg6 15.Nc3 である。

 マーシャルのこの新機軸はこの定跡の趨勢を全く変えてしまった。

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13.c3

 一見もっともな手だが良くなかった。d3の地点の弱点が後で効いて来る。

 13.Bd2 も 13...Bxd2+ 14.Nbxd2 Re8 15.h3 e3 となるので薦められない。だから黒は 13.Nc3 に甘んじるべきだった。13...Bxc3+ 14.bxc3 b5 15.h3 Bh5 16.g4 Bg6 17.Ba3 Re8 18.O-O-O の後白にも反撃の余地がある。

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13...Be7

 ここでは 13...Bd6 もあった。

14.h3 Bh5 15.g4 Bg6 16.Be3 Nd7

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 『いったん退いて好機を待つ。』(フランス語の警句)このナイトの捌きは攻撃に新たな活力を吹き込む。

17.Nbd2 Ne5 18.O-O-O b5

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 白のまとまっていたポーン集団はこれで崩壊する。

19.cxb5 Nd3+

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 このナイトは非常に強力な位置を占めてこれからの進行に大きな効果を発揮することになる。

20.Kb1 Qxd5

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21.Ka1

 すぐに 21.f4 と指す方が少し良かった。

21...Qxb5 22.f4 a5

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23.Rb1

 23.f5 の攻め合いなら 23...a4 で黒の方が速い。

23...f5 24.Nd4 Qa4 25.b3

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 この手は敵クイーンを追い払うが重要な地点(c3)がまた一つ弱くなる。

25...Qd7 26.gxf5 Bxf5 27.Qg2 c5

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 白の唯一好所にいる駒をどかせる。

28.Nxf5 Qxf5 29.Qxe4

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 白は進攻したeポーンをめぐる局地戦に勝った。しかし以降の見事な反撃は黒がまだ戦略的に優位にあることを示している。その優位とは白キングの弱まった陣形に対する攻撃である。

29...Bf6

 ほんの一時的なクイーンのただ取らせに過ぎない(30.Qxf5 Bxc3+)。

30.Qc4+ Kh8 31.Ne4 Rae8 32.Nxf6 Rxf6

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33.Bc1

 33.Bd2 なら 33...Re2 と入って来られる。

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33...Rfe6

 33...Re2 や 33...Ne1 も強力な狙いだが黒はそれらを温存した。

34.Ba3 Re2 35.Rhd1 Ne1

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 いよいよ最終攻撃に取りかかった。このナイトは黒駒の中の断然たるヒーローである。

36.Bxc5 Nc2+ 37.Kb2 Nb4+ 白投了

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2008年07月14日

チェス500名局(42)

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第1部 開放型

第3章 2ナイト防御

第42局

白 ヘルマン
黒 ハルーセク
(ブダペスト、1896年)

 本局で黒は敵の防御線に侵入するや否やその攻撃は暴虐の限りを尽くした。終幕は色々な開きチェックに基づいた眼も覚めるような手筋によってもたらされる。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.Nc3

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 この手は 4.Ng5 や 4.d4 と異なり穏やかな進行になる。

4...Nxe4

 4...Bc5 5.d3 d6 ならイタリア4ナイト試合になるが、それよりもむしろ中原一帯で活発な戦闘を始めた。

5.Nxe4

 この手は逆ビショップ切りの 5.Bxf7+ よりもずっと良い。5.Bxf7+ 以降は 5...Kxf7 6.Nxe4 d5 で黒が有利である。例えば 7.Neg5+ なら 7...Kg8 8.d3 h6、7.Nfg5+ なら 7...Ke8 8.Qf3 Qe7 で白の意図に対抗できる。

5...d5

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6.Bxd5

 6.Bb5 や 6.Bd3(最善手)と指さずに「双ビショップ」を放棄した。

6...Qxd5 7.Nc3

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7...Qd8

 クイーンは最初の位置に戻るのが一番味方の駒の展開のじゃまにならない。これに対して 7...Qe6 はクイーン翼ビショップを閉じ込めるし敵の攻撃にもさらされ易い。

8.O-O Bd6 9.d3

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9...O-O

 9...Bg4 とすぐ釘付けにするよりも駒の動員の完了を優先した。

10.h3

 その釘付けを防いだが代償としてキングの周囲を弱めた。

10...f5 11.Re1 Bd7 12.Qe2 Qe8

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13.Be3

 13.Bd2 と指せば敵にポーン突きの先手を与えずに展開を完了していた。

13...Qg6

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14.Kh1

 とりあえず 14...f4 15.Bd2 Bxh3 の狙いをかわした。

14...f4 15.Bd2 Nd4

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 白のキング翼で最も重要な守備駒のナイトを取り除く意図である。

16.Nxd4

 白は危機を見くびっていた。しかし 16.Qd1 Qh6 もやはり危ない。16.Nxe5 は悪手で 16...Bxd5 17.Qxe5 Nxc2 18.Qd5+ Qf7 で黒が交換得になる。

16...exd4 17.Ne4 f3

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 敵陣突破の始まりである。

18.gxf3 Bxh3 19.Rg1 Qh5 20.Rg5 Qh4

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21.Kg1

 開きチェックで大損害をこうむるのを避けるために一か八かのキングの逃走を図った。例えば 21.Qe1 は 21...Bg4+ 22.Kg1 Qh2+ 23.Kf1 Qh1+ 24.Ke2 Bxf3# で詰みになる。

21...Bh2+

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 この華麗なビショップ捨て(キング翼手筋)で黒キングは逃走できない。22.Kxh2 なら 22...Bf1+ でクイーンを取られる。

22.Kh1 Bf1

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 同様の派手な手が続く。この手の目的は敵キングの逃げ道をふさぐことである。例えば 23.Qxf1 なら 23...Bg3+ ですぐ勝ちになる。

23.Qd1 Be2

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 とどめである。

白投了

(24.Qxe2 Bg3+ 25.Kg1 Qh2+ 26.Kf1 Qh1#)

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2008年07月21日

チェス500名局(43)

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第1部 開放型

第3章 2ナイト防御

第43局

白 タルタコーワ
黒 レティ
(番勝負、1920年)

 おなじみのf7の地点への駒捨ては数多くの勝利をものにしている。本局におけるこの手筋はちょっとした新味を含んでいる。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.Nc3 Nxe4 5.Nxe4 d5

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6.Bd3

 この手はビショップを温存しようという手である。6.Bb5 はそれほど良くない。即ち 6...dxe4 7.Nxe5 Qg5 となりこの後白にも色々手があるが例えば 8.Nxc6 Qxb5 あるいは 8.d4 Qxg2 で黒が有利である。

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6...dxe4

 この手は混戦に持ち込もうという 6...f5 よりも良い手である。6...f5 は 7.Nc3 e4 8.Bb5 exf3 9.Qxf3 で駒を取り戻せるが白の駒の配置の方がはるかに勝る。

7.Bxe4 Bd6

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8.d4

 白は中原付近で事を起こすのを急いでいる。お決まりの 8.O-O は 8...Bg4 から ...f5 で黒がさっそく主導権を握ることができる。

8...exd4

 別手段の 8...Nxd4 は次局である。

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9.Bxc6+

 白が当面中原での支配を確保しようとするならばこの手しかない。9.Nxd4 は 9...O-O 10.Bxc6(すぐに 10.O-O は 10...Nxd4 11.Qxd4 Bxh2+ で黒の勝ちとなる)10...bxc6 11.O-O Qh4 で黒が優勢になる。

9...bxc6 10.Qxd4 O-O

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11.O-O

 11.Be3 の後クイーン翼にキャッスリングするのは危険を伴う。

11...Bf5 12.b3

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12...c5

 12...Bxc2 13.Bb2 Qf6 14.Qxf6 gxf6 15.Bxf6 と総交換するのは白が有利である。

13.Qc3 Qd7 14.Ba3

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14...Qb5

 14...Qc6 は 15.Nd4 でだめである(例えば 15...Bxh2+ 16.Kh1 Qh6 17.Nxf5 で白が勝つ)。

15.Rfe1 Rfe8 16.Ne5

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16...Re6

 16...Bxe5 17.Rxe5 Rxe5 18.Qxe5 Bxc2 は 19.Bb2 f6 20.Qd5+ で白が勝つ。

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17.Nxf7

 思いがけず白が1ポーンをかすめ取る。17.Qf3(ルークとビショップの両当たり)は白のはまりで 17...Rae8 18.Qxf5 Bxe5 で形勢が入れ替わる。

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17...Rae8

 17...Kxf7 は 18.Qf3 で、17...Rxe1+ は 18.Rxe1 Re8 19.Ne5 で黒が芳しくない。

18.Rxe6 Rxe6 19.Bb2

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19...Bf8

 19...Kxf7 は 20.Qxg7+ Ke8 21.Qg8+ Bf8 22.Bg7 で白が勝つ。19...Rf6 でも 20.Nh6+ である。

20.Ng5 Rg6 21.Qf3

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21...Qd7

 懸命の受けである。21...Rxg5 は 22.Qd5+ Kh8 23.Qd8 h6 24.Qxf8+ Kh7 25.h4 でルークの逃げ場所に困る。

22.Rd1 Rd6 23.Rxd6 Qxd6 24.h4

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24...h6

 24...Bxc2 は 25.Qf7+ Kh8 26.Ne6 で白が勝つ。最善の受けは 24...Qd7 だっただろう。しかし 25.Qe2 h6 26.Nf3 で白が文句なく優勢である。

25.Qxf5 hxg5 26.hxg5 Qd1+ 27.Kh2

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27...Qh5+ 28.Kg3 Bd6+ 29.Be5 Qe2 30.Bxd6 cxd6 31.g6 黒投了

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2008年07月28日

チェス500名局(44)

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第1部 開放型

第3章 2ナイト防御

第44局

白 タルタコーワ
黒 アトキンズ
(ロンドン、1922年)

 開放列を支配するルークの基本的な威力はこの鮮やかな試合によく現れている。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.Nc3 Nxe4 5.Nxe4 d5 6.Bd3 dxe4 7.Bxe4 Bd6 8.d4

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8...Nxd4 9.Nxd4 exd4 10.Qxd4 O-O 11.Be3

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 もちろん 11.O-O は 11...Bxh2+ でだめである。本譜の手で白は中央部の集団の勢力に信頼を寄せている。

11...Qe7

 12.O-O を防いでいる。もしそう来れば 12...Be5 で白は応手に困る。

12.O-O-O Re8

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13.Bd5

 この手は黒に幸便に当てられる(14...c6)ので 13.Bf3 が正着だった。それでどちらにもチャンスがある。見事なはめ手は 13.Rfe1 Qxe4 14.Bh6 Bf4+ 15.Kb1 で白が勝つ。しかし黒は冷静に 13...Be6 と応じれば黒が有利になる。

13...Be5 14.Qa4 c6

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 徐々に黒が主導権を握ってきた。

15.Bf3 Be6 16.Kb1 a5

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 この強手は 17...Qb4 が狙いである。

17.Bd4 Bd6 18.Bb6 Bb4 19.c3 Ra6

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20.Be3 Bf5+ 21.Ka1 b5 22.Qb3 Bd6

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23.a4

 自分の陣形をさらに乱すよりも 23.Rd2 と辛抱して駒の組み換えを行なうべきだった。

23...Rb8

 これで黒の優勢が確定した。

24.Rd2 Be6 25.Qd1 Be5

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26.Bd4 Bf4 27.Be3 Bxe3 28.fxe3 b4

 決定的なポーン突きで局面を開放させる。

29.cxb4

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29...Rab6

 黒は精力的に攻撃を行なっている。とはいっても次のような指し方は時期尚早である。29...Rxb4 と 29...Qxb4(30.Rd8+ がある)それから 29...axb4 は 30.b3 で重要なa列を閉鎖されてしまう。

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30.Rd6

 次の変化は白がきれいに負かされる。30.bxa5 Ra6 31.b4 Rxa5 32.bxa5 Qa3+ で詰みになる。

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30...Rxb4

 31...Rxb2 と 31...Bb3 から 32...Rxa4+ を狙っている。

31.Bxc6 Rxb2 32.Bb5 Ra2+ 33.Kb1 Rxa4

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34.Kc2

 白キングは逃走を図っている。34.Qxa4 は 34...Qxd6 の後ビショップが落ちる。

34...Ra2+ 35.Kc3 Rc8+ 36.Bc6 Rxc6+

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 このルーク切りは激戦の最高の締めくくりである。

37.Rxc6 Qb4+ 38.Kd3 Qb5+ 39.Kd4 Qxc6

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40.Ke5 Qc5+ 41.Kf4 Qf5+ 42.Kg3 Qf2#

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2008年08月04日

チェス500名局(45)

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第1部 開放型

第3章 2ナイト防御

第45局

白 タウベンハウス
黒 シャロップ
(マンチェスター、1890年)

 どんな不活性物質にも内在する抵抗力は少し弱まったキングの周囲を持ちこたえさせることができるかもしれないが、二つ以上の弱点(例えば二つの開放斜筋や守り駒のない斜筋と列のように)が生じればその限りではない。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.d4

 積極的で分別のある手である。

4...exd4 5.Ng5

 しかしこれは衝動的な暴挙で信用のおけない手である。「正着」は 5.O-O である。

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5...Ne5

 他に白の意図をすべてくじく手は 5...d5 6.exd5 Qe7+ から 7...Ne5 である。

6.Bb3

 すぐに無風状態になるのは 6.Qxd4 Nxc4 7.Qxc4 d5 8.exd5 Qxd5 でクイーン交換を迫る変化である。

6...h6 7.f4 hxg5 8.fxe5 Nxe4

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9.O-O

 白はf7の地点に対する狙いを過大評価していた。そして砲火に直接さらされている自分のキングの周囲に対する襲撃の危険性に十分な注意を払っていなかった。

 たちまち引き分けになる奇抜な手順は 9.Bxf7+ Kxf7 10.Qf3+ Kg8 11.O-O d5 12.Qf7+ Kh7 13.Qh5+ によるチェックの千日手である。

9...d5 10.exd6e.p. Qxd6

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 うまい具合に自分のキングに退避用の枡を空け、同時に詰みを狙っている。黒は既に盤上をしっかりと支配している。

11.Bxf7+ Kd8 12.g3

 12.h3 は「おとりの犠牲」の 12...Bxh3 を誘ってもっと大変な事態になる。

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12...Bd7

 落ち着いた手だが白枡の対角斜筋を占めるという確固とした目的を持っている。この手に劣らぬほど的を射た手は 12...d3 で、たちまち対角の隣の黒枡斜筋を通す。

 カン対レベンフィッシュの興味深い試合(レニングラード、1933年)は次のように進んだ。12...d3 13.Qe1(13.Qxd3 は 13...Qxd3 14.cxd3 Bc5+ 15.Kg2 Bh3+ で黒が勝つ)13...Qb6+ 14.Be3 Bc5 15.Rf3 Bg4 16.Bxc5 Qxc5+ 17.Re3 Be2 で白投了。この後 18.Qc1 と受けても 18...d2 である。対角斜筋の勝利でこれほど良い例は他にない。

13.Qd3 Bc6

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14.Nd2

 圧迫を和らげようというむなしい希望である。しかしこの期に及んではどうにもならない。もし 14.Na3 なら 14...Qh6 15.Qxd4+ Bd6 で黒が勝つ。

14...Nxd2 15.Bxd2 Be7 16.Rae1 Rxh2

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 「空間を作るための犠牲」である(17.Kxh2 なら 17...Qh6+ から2手詰み)。

17.Rf5 Rxd2

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 「そらしの犠牲」である。

18.Qxd2 Qxg3+ 19.Kf1 Qh3+ 20.Ke2 Qg4+ 21.Kf1 Qxf5+ 白投了

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2008年08月11日

チェス500名局(46)

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第1部 開放型

第3章 2ナイト防御

第46局

白 ハルクセン
黒 ボゴリュボフ
(郵便戦、1930年)

 本局で逆駒捨ては完全に敵の意表を突き局面の様相を一変させ心からの賞賛に値した。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.d4 exd4 5.O-O

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5...Nxe4

 黒は局面の決まりをつけるのを望み、深く研究されている難解なマックス・ランゲ攻撃(5...Bc5)を避けた。

 5...d6 や 5...Be7 の防御は安全だが狭小な陣形になる。

6.Re1 d5 7.Bxd5

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 この一時的な駒捨てで白はポーンを取り返し中原での圧力を維持することができる。

7...Qxd5 Nc3

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8...Qa5

 最善の応手である。もっともクイーンが他の地点に逃げる 8...Qh5、8...Qd8 及び 8...Qc4 も詳しく研究されている。最後の手はミングレリアのダディアン対ビッチャム戦(ズグリディ、1892年)の名局に現れた。指し手は次のとおりである。8...Qc4 9.Rxe4+(最強の手は 9.Nxe4 Be6 10.b3 Qd5 11.Bg5 である)9...Be6
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10.Bg5(もっと慎重な手は 10.Nxd4 O-O-O 11.Be3 である。本譜の手に対して黒には白の思惑に従わない 10...Qc5 という手があった)10...Bc5 11.Nd2 Qa6 12.Nb3 Bb6 13.Nd5 h6 14.Nc5 Qb5 15.Rxe6+
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15...Kf8(15...fxe6 なら 16.Qh5+ Kf8 17.Nxe6+ Kg8 18.Nf6+ gxf6 19.Qg6# で詰まされる)16.Nd7+ Kg8 17.Qg4 h5
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ここで白が3手で詰ますことができる。

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9.Nxe4

 「狙いは実行よりも強し」という警句に従った手である。この手は 9.Rxe4+ よりもずっと強い手である。9.Rxe4+ は 9...Be6 10.Nxd4 O-O-O で急に黒が攻撃的になる。白にあまり薦められないのは中途半端な 9.Nxd4 でエーベ対レティ戦(番勝負、1920年)で指された。指し手は次のとおりである。9.Nxd4 Nxd4 10.Qxd4 f5 11.Bg5 Qc5 12.Qd8+ Kf7 13.Nxe4 fxe4
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14.Rad1(14.Rxe4 は 14...Bf5)14...Bd6(ルークの一つ目のただ捨て)15.Qxh8 Qxg5 16.f4(16.Qxh7 なら 16...Bf5)16...Qh4 17.Rxe4 Bh3(もう一つのルークのただ捨て)
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18.Qxa8 Bc5+ 19.Kh1 Bxg2+(もう捨てるルークがないのでビショップを捨てる番である)20.Kxg2 Qg4+
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2手以内の詰みが避けられないので白は投了した。小さな「不滅の局」である。

9...Be6

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10.Neg5

 この手の前に 10.Bd2 を入れておく方が良かった。

10...O-O-O 11.Nxe6 fxe6 12.Rxe6

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12...Qf5

 ポーンを返すことにより黒は白の攻撃をかわした。

 12...Be7 も面白い手で次に ...Bf6 を狙う。

13.Qe2

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13...h6

 13...d3 14.cxd3 Qxd3 で単純化を図るのは 15.Bg5 Qxe2 16.Rxe2 と強く反発され白が優勢になる。

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14.Bd2

 敵の砲火の下での展開である。14.Nh4 は 14...d3 が軽妙手となる(14.a3 なら 14...g5)。

14...Qxc2

 挑戦を受けて立った。

15.Rc1

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15...Qxb2

 用心深い選手なら 15...Qa4 と引き揚げるだろう。しかしそれでも 16.Rexc6 bxc6 17.Qe6+ Kb7 18.Ne5 Rd6 19.Qe8 で白の攻撃は熾烈である。本譜の手で黒はとりあえず戦力差を広げておきたかった。

16.Rexc6

 白はさらに交換損の犠牲で攻撃をつなぐしかない。

16...bxc6

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17.Qe6+

 当然そうな 17.Ne5 に対して黒は 17...Re8 18.Qa6+ Qb7 とうまく立ち回って受ける。

17...Kb8 18.Qe4 d3

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 パスポーンを有効に利用して 19.Rb1 の狙いを消した。

19.Ne5

 19.Qxc6 は 19...Bd6 で無駄である。

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19...Ka8

 この手は受けの妙手である。19...Qxd2 は 20.Rb1+ で終わってしまう。

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20.Nxc6

 20.Qxc6+ なら 20...Qb7、また 20.Nxd3 なら 20...Qb5 でどうにもならない。本譜の色々な狙いを含んだ手に対して黒は非常に巧妙な手を用意していた。

20...Qb7

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21.Rc3

 どう見ても恐ろしい狙い(22.Rb3)である。普通の局面ならば原則として何らかの受けの手があるものでここでも黒はそれを見抜いていた。

 白の最善手は 21.Qa4 であった。

21...Bc5

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 一時的に駒を犠牲にして自軍の連絡をつけた。

22.Rxc5 Rhe8

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23.Qb4

 肝要な手である。23.Qa4 は 23...Qb1+ 24.Rc1 Qxc1+ 25.Bxc1 Re1# で詰まされてしまう。

23...Qxb4

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 黒はすぐに駒を取り返して交換得を維持し勝ちになる。想定手順は次のとおりである。24.Nxb4 Re2 25.Rxc7 Rxd2 26.g3 Rd6 27.a3 Kb8 28.Rxg7 Rd1+ 29.Kg2 d2
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2008年08月18日

チェス500名局(47)

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第1部 開放型

第3章 2ナイト防御

第47局

白 カナル
黒 ジョーナー
(トリエステ、1923年)

 本局での黒キングに対するいじめはキャッスリングの前後ともその強烈さとしつこさが際立っていた。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.d4 exd4 5.O-O Nxe4 6.Re1 d5 7.Nc3

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 (7.Bxd5 Qxd5 8.Nc3 に取って代わる)カナルの創案したこの新手は目まぐるしい戦いになる。

7...dxc4

 徹底的な研究により 7...dxc3 とナイト捨てに応じるのは 8.Bxd5 で黒が困難な事態に陥るが 7...Be6 なら黒が白の攻撃の勢いを削ぐことができることが分かっている。

8.Rxe4+

 8.Nxe4 には 8...Be7 が非常に良い応手である。

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8...Be6

 8...Be7 は 9.Nxd4 f5 10.Rf4 で黒陣の弱点が増えてしまう。

9.Nxd4 Nxd4 10.Rxd4

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10...Qc8

 不自然な手である。10...Bd6 ならもっと防御が楽だったろう。ただし 11.Bf4 で白がポーンを取り返して少し優位に立つ。

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11.Bg5

 攻撃の名手で 11...f6(12.Bxf6 gxf6 13.Qh5+)と 11...Be7(12.Bxe7 Kxe7 13.Qh5)を防いでいる。

11...Bd6 12.Ne4 O-O

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 この手は特に 13.Rxd6 を防いだもので黒キングが安全になったように見える。しかし白は 13.Nxd6 cxd6 14.Rxd6 でポーン損を取り戻す手には目もくれずに猛攻を開始する。

13.Nf6+

 形を乱すためのナイト捨てである。

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13...gxf6

 この手は仕方がない。13...Kh8 は 14.Qh5 Bf5 15.Rh4 h6 16.Bxh6 Bg6 17.Qg5
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で 18.Bxg7+ Kxg7 19.Rh7# の詰みの狙いがある。

14.Bxf6

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14...Be5

 白の 15.Qh5 の狙いを前にして黒は得した駒を返し異色ビショップの単純化した局面に凌ぎを託すことにした。代わりに例えば 14...h6 ならば 15.Qh5 Kh7 16.Rh4 Bf4 17.Bg5
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で白が勝つ。

15.Bxe5 f6 16.Bg3

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16...Rd8

 16...Rf7 ならもっと頑強に抵抗できた。

17.Bh4 c5 18.Rxd8+ Qxd8 19.Qf3

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 黒陣の多くの弱点に対する攻撃が激しさを増してきた。

19...Kg7

 19...Bd5 なら 20.Qg4+ Kf7 21.Qf5 Kg7 22.Rd1 で白が勝つ。

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20.Qxb7+

 20.Bxf6+ Qxf6 21.Qxb7+ Bf7 22.Qxa8 Qxb2 で白は交換得になるが相手にも反撃の余地を与えることになる。

20...Bf7 21.Qf3 Rb8 22.Rd1 Qb6 23.Qg3+

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23...Bg6

 23...Kh6 は 24.Rd6 Qxb2 25.Qg5# で詰みになる。

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24.Rd7+

 7段目へのルークの侵入は終わりの始まりを告げている。24.Rd6 Qxb2 25.Bxf6+ は誤りで 25...Qxf6 と切り返される。

24...Kg8 25.Bxf6 Rb7 26.Rd8+ Kf7 27.Qf4

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 この手が決め手である(27...Qxf6 なら 28.Rf8+)。

27...Qe6 28.Bc3+

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28...Qf5

 代わりに 28...Bf5 なら 29.g4 で良い。

29.Qxc4+

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29...Qe6

 29...Ke7 なら 30.Rd5 で白が勝つ。

30.Rf8+ 黒投了

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2008年08月25日

チェス500名局(48)

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第1部 開放型

第3章 2ナイト防御

第48局

白 チゴーリン
黒 ハルーセク
(ブダペスト、1896年)

 本局で黒キングはキャッスリングしていなかったため色々な攻撃目標にされた。黒はキングを安全な場所に移そうと様々なことを試みたがうまくいかなかった。そこが本局の見所である。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.d4 exd4

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5.O-O

 5.e5 と突くのは 5...d5 と突き返されるので時期尚早である。

5...Bc5

 この手は良く知られたマックス・ランゲ攻撃を許す。この局面は手順前後で他の色々な布局定跡、例えばジュオッコ・ピアノ、スコットランド・ギャンビット、中原ギャンビットなどからも現れる。

6.e5 d5

 6...Ng4 に対する最善の応接は 7.c3 である。

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7.exf6

 7.Bb5 Ne4 8.Nxd4 Bd7 の後は均衡した局面になり易い。しかし本譜の手の後は血戦である。

7...dxc4 8.Re1+

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8...Be6

 8...Kf8 ならば 9.Bg5 gxf6 10.Bh6+ Kg8 11.Nc3 Bg4 12.Ne4 で白が圧倒的な攻勢に立つ。

9.Ng5

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9...Qd5

 9...Qxf6(10.Nxe6 fxe6 11.Qh5+ から Qxc5)も 9...O-O(10.Rxe6 fxe6 11.f7+ Kh8 12.Qh5 h6 13.Qg6 で白の勝ち)も全然だめである。

 一風変わった受けの 9...g6 に対しては白は 10.Qf3 で新たな兵力を戦いに参加させる。

10.Nc3 Qf5

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11.Nce4

 11.g4 Qg6 12.Nce4 Bb6 は性急過ぎる。

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11...Bb6

 11...O-O-O で自発的にポーンを返すよりもポーン得にしがみつこうとしている。

 11...Bf8 ならば白は一時的に 12.Nxf7 Kxf7 13.Ng5+ と駒を捨てて敵陣を乱す。

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12.Ng3

 12.fxg7 Rg8 13.g4 の方が白の攻撃にもっと迫力があっただろう。

12...Qg6 13.Nxe6 fxe6 14.Rxe6+ Kd7

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15.Nh5

 巧妙にルークを守った。代わりに 15.Qe2 なら 15...Rae8 と守られる。

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15...Rhe8

 15...Rae8 は 16.Nf4 Qf7 17.fxg7 で黒が手損する。

16.Nf4 Qf7 17.Qf3

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 白は巧妙に攻撃を継続させている。

17...Rad8

 黒は時間をかせいでキングを危険地帯から逃げ出せるようにしようとしている。17...Rxe6 はまだ無理で 18.Qd5+ Ke8 19.Nxe6 で悪い。

18.Bd2

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18...gxf6

 ここでも 18...Rxe6 は 19.Qd5+ Ke8 20.Qxe6+ Qxe6 21.Nxe6 Rd7 22.fxg7 Kf7 23.Re1 Re7 24.Re4
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で良くない。

19.Rae1

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19...Rxe6

 単純化の好機と見たが誤った判断だった。

 黒は 19...Ne5 をさしはさむことによって敵軍の連携を遮断し事を有利に運ぶことができた。つまり 20.Qd5+ Kc8 21.Rxe8 Qxe8 22.Qe4 Qd7 で態勢が整う。

20.Nxe6 Re8

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21.Ng5

 21.Qd5+ Kc8 の代わりに白は攻撃を復活させる手段を見つけた。

21...Rxe1+ 22.Bxe1 Qe7 23.Qf5+ Kd8 24.Bd2

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 攻めと受けを兼ねた手である。

24...Qe2 25.Qxf6+ Ne7 26.h4 d3 27.Nf7+

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27...Kc8

 27...Ke8 は 28.Ne5 Bxf2+ 29.Kh2 で 30.Qf7+ Kd8 31.Qf8# の狙いが残る。

28.Qh8+ Kd7 29.Qd8+

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29...Ke6

 29...Kc6 なら 30.Qe8+ Kd5 31.Qd7+ である。

30.Ng5+ Kf5 31.Qf8+ 黒投了

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 (31...Kg4 32.Qf4+ Kh5 33.Ne4)

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2008年09月01日

チェス500名局(49)

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第1部 開放型

第3章 2ナイト防御

第49局

白 チゴーリン
黒 タイヒマン
(ロンドン、1899年)

 本局ではキングとf列に対する縦からの攻撃が防御側の受けの手段がなくなるまで交互に行なわれた。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.d4 exd4 5.O-O Bc5 6.e5 d5 7.exf6 dxc4 8.Re1+ Be6 9.Ng5 Qd5 10.Nc3 Qf5 11.Nce4 Bb6 12.fxg7

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 この手は良いタイミングである。

12...Rg8 13.g4

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 このポーンが取れないことはすぐ分かる。即ち 13...Qxg4+ 14.Qxg4 Bxg4 15.Nf6+ でだめである。

13...Qg6

 13...Qe5 でも 14.f4 d3+ 15.Kf1 で大丈夫である。

14.Nxe6 fxe6 15.Bg5

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 この出撃は攻撃の継続に役立つ。さらに 15...O-O-O を阻止し 16.Nf6+ も狙っている。

15...Rxg7

 15...h6 でも白の応手は本譜と同じく 16.Qf3 である。以下は 16...hxg5 17.Nf6+ Kf7 18.Rxe6(めったやたらの駒捨て)18...Kxe6 19.Re1+ Ne5 20.Qd5+ Kxf6 21.Qxe5+ Kf7 22.Qe7#
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で詰む。

 15...d3 も 16.cxd3 cxd3 17.Qxd3 Rxg7 18.Rad1 で良くない。

16.Qf3

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16...e5

 キングが逃走を図ってもうまくいかない。例えば 16...Kd7 なら 17.Nf6+ Kc8 18.Rxe6(攻撃を成功させるためには大胆に行かなければならない)18...Qxg5 19.Rxc6 bxc6 20.Qxc6 Rb8 21.Re1
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で白が勝つ。

17.Nf6+ Kf7 18.h4 h6 19.Ne4+

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19...Ke6

 黒キングは否応なしに中央に足止めされる。19...Kg8 と逃げるのは 20.h5 で白が実戦よりも楽に勝ってしまう。

20.h5

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20...Qf7

 クイーン交換を期待したがあえなく拒否される。20...Qh7 は 21.Nf6 で状況は黒にとってもっと悪くなる。

21.Bf6 Rgg8 22.Qf5+ Kd5 23.b3

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 白は何が何でも攻撃を続けようとする。

23...Rxg4+ 24.Qxg4 Rg8 25.bxc4+ Kxc4 26.Bg5

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 白はビショップを犠牲にして敵の活動の根拠を閉鎖し、他の方面の支配権を得る。

26...hxg5 27.Qg3

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27...Na5

 一手詰み(28.Qb3#)を避けるためにキングが遁走を続ければ 27...Kb4 28.Reb1+ Ka4 29.Qd3 である。

28.Qxe5 黒投了

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2008年09月08日

チェス500名局(50)

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第1部 開放型

第3章 2ナイト防御

第50局

白 ミーゼス
黒 タイヒマン
(サンクトペテルブルク、1909年)

 最初から最後までスムーズにいく攻撃はほとんどみかけない。しばしば適当な時に再生が必要である。しかし主作戦が尻すぼみになっていけば結果は非常に不本意なものになり易い。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.d4 exd4 5.O-O Bc5 6.e5 d5 7.exf6 dxc4

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8.Re1+

 ポーンの切れたe列で圧力をかけ始める。8.fxg7 は時期尚早である(8...Rg8 9.Bg5 f6)。

8...Be6 9.fxg7

 この手は 9.Ng5 とは異なった展開の戦いになる。しかし黒はいずれにしても難しい問題に直面する。

9...Rg8 10.Bg5

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10...Be7

 正しい受けはこの手しかない。10...Qd5 は 11.Nc3 Qf5 12.Ne4 Be7 13.Bxe7 Kxe7 14.Nxd4 Nxd4 15.Qxd4
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で白が断然良い。

11.Bxe7 Kxe7

 dポーンを取らせまいという手である。しかし 11...Qxe7 の方が自然な取り方であることは確かである。

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12.Nbd2

 このお決まりの手は駒を進出させるが黒にも陣容を固めさせる。だから攻撃を緩めることになる。しかし 12.Re4 なら攻撃を強化することができた。明らかに狙いは目障りなdポーンを取ることである。

12...Qd5

 白の緩着のために黒の勢力範囲が着実に広がった。

12.b3 cxb3 13.Nxb3 Rad8 15.Qe2 d3

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 この一時的なポーンの犠牲で黒は 16.Rad1 で白がd列を補助的な作戦基地として利用することを防いだ。

16.cxd3 Rxg7 17.d4

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17...Kf8

 17...Rdg8 でg列に重火器を集中させても 18.g3 で簡単に防がれるので無駄である。

18.Rac1 Rg6

 ビショップを「過剰防衛」しキングの動く余地を広げた。

19.Rc3 a5

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 一番端の列のひねった手で黒は決着を図ろうとする。

20.Qd2 a4 21.Nc5 Nxd4

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 一貫性のある指し方で黒はこの地点に全力を集中することに成功しついに攻め落とした。

 仕上げは容赦のないものであった。

22.Nxe6+ Rxe6 23.Nxd4 Qxd4 24.Qc1 Rxe1+ 25.Qxe1 Qxc3 白投了

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2008年09月15日

チェス500名局(51)

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第1部 開放型

第3章 2ナイト防御

第51局

白 マーシャル
黒 タラシュ
(ハンブルク、1910年)

 この重要な試合で最も見事だったのは白が盤面全体を支配していたことである。即ちキング翼では押さえ込み(15.Bh6)クイーン翼では敵陣を突破し(23.a4)中央列では決定的な駒捨て(28.Rxd8+)を行なった。

1.e4 e5 2.d4

 この手は「中央ギャンビット」だが関連した多くの布局に移行することができる。

2...exd4 3.Nf3 Nc6 4.Bc4 Bc5 5.O-O Nf6 6.e5 d5 7.exf6 dxc4 8.Re1+ Be6 9.Ng5 Qd5 10.Nc3 Qf5 11.Nce4 O-O-O

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 この手はこれまで最善手と見られていたが本局で非常に巧みな手法で打ち破られた。

12.Nxe6

 12.g4 は 12...Qe5 13.f4 d3+ で黒が良い。

12...fxe6 13.g4 Qe5 14.fxg7 Rhg8

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15.Bh6

 これが眼目の手である。白はこの橋頭堡を断固として守り抜くつもりである。それによりg列からの反撃の危険性が現実化するのを防ぐのである。

 15.Ng5 は気の利かない手で(15...Qxg7 16.Nxe6 Qxg4+ 17.Qxg4 Rxg4+ 18.Kf1 Rd5)15.Nxc5 も 15...Qxc5 16.Rxe6 Rxg7 で攻撃権が完全に黒に渡ってしまう。

15...d3

 15...Be7 は 16.Qf3 とクイーンが進出して攻撃力が強化される。

16.c3

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16...Bd6

 自発的に陣地を譲る代わりに黒は 16...d2 17.Re2 Bb6 で自陣を広げることもできた。しかし単純に 18.Kg2 として白は優勢を維持する。

17.f4 Qd5 18.Qf3 Be7 19.g5

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19...Qf5

 もっと厳しい反撃策は 19...Rd7 でナイトを引く枡を空ける手だがそれでも白が優勢である。

20.Ng3 Qf7

 黒は本譜の受けに偏した手よりも 20...Qh3 でクイーンが少しでも働くようにすべきである。

21.Qg4

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 間髪を入れず白の破壊部隊が絶好の地点を占めた。

21...Rde8

 狙われているeポーンを間接的に守った(22.Qxe6+ Qxe6 23.Rxe6 Bc5+)。

22.Re4

 横(c4のポーン)と縦(ルークを重ねる)の2方向の狙いである。この決定的な補強で白の作戦に弾みがつく。

22...b5

 22...Na5 なら 23.Rae1 である。

23.a4

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 相手の手に乗って好調である。

23...a6 24.axb5 axb5 25.Kg2 Nd8 26.Qf3

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26...Qg6

 26...Bc5 なら 27.Re5 である。

27.Rd4 c6

 黒の最後の希望はナイトの守備力である。しかし排除の駒切りでそれがすべて覆される。

28.Rxd8+ 黒投了

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(28...Kxd8 29.Qxc6)

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2008年09月22日

チェス500名局(52)

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第1部 開放型

第4章 ハンガリー防御

第52局

白 レオンハルト
黒 フロマートカ
(ピエシュチャニ、1912年)

 面白い接近戦は冒険好きなクイーンが捕獲されて終わった。そのおかげで本局のもっと重要な戦略上の構想(素通しのa列をめぐる戦い)の影が薄くなった。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Be7

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 これがハンガリー防御と呼ばれる手で黒の陣形は狭いが十分指せる。

4.d4 d6

 4手目がこれからの進行の岐路である。相手の手に乗って 4...exd4 5.Nxd4(5.c3 なら 5...Na5)5...d6 と指せば黒は中原での封鎖を避けることができる。

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5.d5

 閉鎖的な局面への誘いを受け入れた。5.c3 や 5.h3 のような様子見の手も可能である。

 5.dxe5 なら穏当な手は 5...dxe5 である。しかし 5...Nxe5 はだめで 6.Nxe5 dxe5 7.Qh5 で白が勝つ。先例は1936年ビリンゲンでのアイジンガー対ネーゲリの派手な一戦である。7...g6 8.Qxe5 Nf6 9.Bh6 Rg8 10.Qb5+
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10...Qd7(他の受け手なら 11.Qb3)11.Nc3 c6 12.Qb3 Bc5 13.Rd1 Qc7 14.Bg5 Qe7 15.Bxf7+
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(鋭い切り込みである)15...Qxf7 16.Rd8+(これが狙い筋である)16...Ke7 17.Rxg8 Qxb3 18.axb3 Kf7 19.Rh8
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これで交換損に加えて2ポーン損で黒の投了となった。

5...Nb8 6.Bd3

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 この退却はcポーンに道を譲るためと側面からの 6...f5 の攻勢に備えて必要である。

6...Nf6

 黒はそれでも積極的に逆襲の 6...f5 を試みることができた。以下は 7.exf5 Nf6 8.Nc3 c6 9.dxc6 Nxc6 で混戦となる。

 しかし 6...c6 は 7.c4 とされて全く無駄である。

7.c4 Nbd7

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8.Nc3

 先に 8.h3 と突くと黒は 8...Nc5 で白の白枡ビショップと交換しにくる。

8...O-O

 8...Nf8 は 9.h3 h6 10.Nh2 g5(11.f4 を防ぐため)11.Ng4 で白が主導権を確保する。

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9.h3

 9.Be3 はまだ早い。それに対して黒は 9...Ng4 10.Bd2 Nc5 11.Bc2 f5 で捌きを完了する。

9...Nc5 10.Bc2 a5

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 黒は(11.b4 を防ぐことにより)クイーン翼に一種の監視所を設けようとした。

11.Be3 b6 12.g4

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 クイーン翼で活動する前に相手のキング翼での動きを制限しておくのが白の希望である。

12...Kh8 13.a3 Bd7

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 次に 14...a4 と指す目的だが(白の左端の2ポーンをせき止めるため)白は傍観していない。

14.b4 axb4 15.axb4 Na6 16.Rb1

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 ここまでの4手で白は拠点の黒ナイトをどかすことに成功し自分の横隊ポーンを引き締めた。

16...Ng8

 この手は ...g6 から ...f5 でキング翼で戦いを起こす意図である。白は反対翼での活動を急がされる。

17.Ba4 Bxa4 18.Qxa4 Nc5

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 白は17手目の手を指すに当たりこの手を予期していて何事も起こらない。

19.Qc2 Nd7 20.Ne2

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20...Ra3

 20...g6 は 21.Ng3 で狙いの ...f5 が永久に封殺される。黒がキング翼での野望を断念しクイーン翼に注意を向けたのはそのためである。そちらでは当分の間黒が強そうな感じである。

21.O-O Qa8 22.Kg2

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 この手はビショップが動けるようにして 23.Bd2 の後 Bc3 から Ra1 で重要なa列の勢力争いに決着をつけるためである。

22...Ra2 23.Rb2 Rxb2 24.Qxb2 Qa6

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 この手は敵のcポーンを攻撃することにより 25...Ra8 とする余裕を得たかった。そうなれば重要な素通しのa列を支配することができる。しかし白は目ざとく相手の意図を打ち砕く方策を見つけた。

25.b5 Qa4

 クイーンが敵陣深く迷い込んできた。黒が用意された奥深く巧妙な罠を疑っていたら 25...Qb7 と指していただろう。しかしそれでも 26.Ra1 Ra8 27.Ra3 で白が勢力争いのa列を征服し重要な陣形上の優位を確保していただろう。

26.Ra1 Qxc4 27.Ng3

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27...Qd3

 27...Nc5 なら 28.Nd2 Qd3(28...Nd3 なら 29.Nxc4 Nxb2 30.Nxb2 で白の駒得になる)29.Ra3 で盤を一杯に使ってクイーンを捕獲する。

28.Ra3

 28.Nd2 から 29.Ra3 でも良い。しかし白は黒クイーンに猶予を与えた。

28...Qd1 29.Nd2

 網を絞った。

29...Nc5 30.Bxc5 bxc5 21.Ra1 黒投了

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2008年09月29日

チェス500名局(53)

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第1部 開放型

第4章 ハンガリー防御

第53局

白 タラシュ
黒 タウベンハウス
(オステンド、1905年)

 本局では「科学派」が成功を勝ち得た手法がよく表れている。局面が単純化されたにもかかわらず大局的に少し優勢が得られその状態が続いた。28手目になってようやくこの優勢がポーン得に結びついた。それは小さなものであったが勝つには十分であった。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.d4 exd4 5.O-O d6 6.Nxd4 Be7 7.Nc3 O-O 8.h3

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 根拠のある待ち合わせの手である。

8...Nxd4

 黒は短気をおこした。先に駒を捨てる 8...Nxe4 は 9.Nxe4 d5 10.Nxc6 bxc6 11.Bd3 dxe4 12.Bxe4 で不利になる。堅実な手は準備をする 8...Re8 である。以下は 9.Bf4 Nxd4(9...Nd7 はだめで 10.Bxf7+ Kxf7 11.Ne6 Kxe6 12.Qd5+ Kf6 13.Qf5# で詰まされる)10.Qxd4 Be6 で駒交換を推し進めることになる。

9.Qxd4 Be6

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10.Bxe6

 白は駒交換を嫌がらない。だが 10.Bd3 も良い手だった。

10...fxe6 11.e5

 他の手なら黒が 11...d5 と指してくる。

11...Nd7 12.exd6 cxd6

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 黒の中央の2ポーンはかなり攻撃にさらされている。白のこれからの作戦はこのわずかな有利に基づいている。

13.Be3

 まず自分のfポーンの守りを強化した。

13...d5 14.Rfe1 Rf5 15.Ne2

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15...Bd6

 15...Bf6 なら 16.Qb4 である。

16.Qd2 Ne5 17.Nd4 Nc4 18.Qd3 Re5

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19.Nf3 Rh5 20.b3 Ne5 21.Nxe5 Bxe5 22.Bd4

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 両者とも単純化を目指している。

22...Bxd4 23.Qxd4 Rh6

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 しかし黒は自分のe6の弱点を解消することに成功しなかった。

24.c4

 ポーンを「かじる」うまい手である。

24...dxc4 25.Qxc4

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25...Qd5

 黒はさらに清算を図る。代わりに 25...Qf6 は 26.Rad1 Re8 27.Rd7 が強烈である。

26.Qxd5 exd5 27.Re7

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 ついに「7段目」に侵入した。

27...Rf8

 黒は助けられないポーンを見捨てた(27...Rb8 なら 28.Rd7 Rh5 29.Rd1)。その代わり1ポーンの優位は勝つのに不十分なことがよくあるルーク収局に望みを託した。

28.Rxb7 Rf7 29.Rb8+ Rf8 30.Rxf8+ Kxf8

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 これで両者が望んだルーク収局になった。黒の不運は白が両翼でそれぞれ1ポーン多く自分の孤立ポーンは容易に統制されてしまうことである。

31.Rd1 Ra6 32.a4 Rd6 33.Rc1

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33...Rd7

 33...d4 で攻勢をとるのは 34.Kf1 d3 35.Rc8+ Ke7 36.Ke1 で大したことがなく黒の陣形は弱点を抱えたままである。

34.Kf1 Rb7 35.Rc3 Ke7 36.Ke2 Kd6 37.Kd3 Rf7

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38.f3 Rb7 39.Kc2 Re7 40.Kd2 Rb7 41.Kd3

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41...Re7

 白キングの三角歩行の捌きに注意して欲しい。その結果黒ルークがそっぽへ行った。しかし 41...Rb8 の方が良かった。

42.b4 Re1

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 敵陣で暴れようというこの手は一手遅かった。しかし黒はもう受動的戦略では持ちこたえられない。以下の手順は非常に参考になる。

43.b5 Rg1 44.Rc6+ Ke5 45.Ra6 Rxg2

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 戦力バランスは当面回復した。ここで白が 46.Rxa7 とすれば黒は 46...Rg3 でまだ抵抗できる。

46.f4+

 この絶好の「軽妙手」で黒の反撃の機会が減る。

46...Kxf4 47.Rxa7 Ke5 48.b6 Kd6

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49.a5 Rg3+ 50.Kc2 Rg2+ 51.Kb3 Rg1 52.b7 黒投了

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2008年10月06日

チェス500名局(54)

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第1部 開放型

第5章 ルイ・ロペス

第54局

白 ラスカー
黒 ブラックバーン
(ロンドン、1899年)

 本局は前哨戦(8手目から21手目)での両者必死のポーンによる小ぜりあいが特徴である。

 本格的な戦いは連続ポーン捨て(12...g5)から始まりそれにより黒がg列とh列を支配した。そして黒はh列で印象的な駒の再編(28...Rh8)を図った。黒の力強い戦略はルーク捨て(31...Rh1+)で頂点に達しその結果白がクイーンを失うことになった。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 d6

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 この手でシュタイニッツ防御の戦型になった。黒陣は狭いが十分に戦える形である。

4.d4

 これで中原に争点が発生する。4.Bxc6+ は 4...bxc6 5.d4 exd4 6.Nxd4 Bd7 7.O-O Nf6 8.Nc3 Be7 で局面が単純化する。しかしこの後 9.f4 O-O、9.Bg5 O-O 及び 9.Qf3 c5 のいずれも黒の脅威とはならない。

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4...Bd7

 衝動的に 4...exd4 と取るのは 5.Qxd4 Bd7 6.Bxc6 Bxc6 7.Bg5 f6 8.Bh4 で白クイーンが中原に居座るのが主因で白が陣形的に永続的に有利となる。

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5.d5

 中原を閉鎖するのは薦められない。黒は 5.Nc3 で展開を続けどちら側へもキャッスリングできるようにしておくべきである。

5...Nb8 6.Bd3 Be7

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7.Nc3

 前進したポーンはすぐにしっかりと支えることが必要なので 7.c4 の後 Nc3 と指すのが理にかなっていた。

7...Nf6 8.Ne2 c6

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 型にはまった選手ならここでキャッスリングして白の陣形上の優位にしてやられるだろう。黒はひらめきの豊かな選手なので戦線を広げることを望んだ。

9.c4 Na6

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10.Ng3

 ここでも重要なe4、d5及びb5の地点をにらめるように 10.Nc3 と指す方が良かった。

10...Nc5 11.Bc2 b5

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12.b4

 白は 12.b3 で受けに回ることに満足せずみずからクイーン翼で騒動の元を作り出す。

12...Nb7 13.dxc6 Bxc6 14.cxb5 Bxb5 15.a4 Bd7 16.O-O g6

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17.h3

 すぐに 17.Bh6 は 17...Ng4 でだめである。しかし次の手で黒は自陣への侵入を断固防ぐ。

 それにしても本譜の手はキングの周りを弱めるので例えば 17.a5(18.a6 の狙い)17...a6 18.Bb3 でいろいろ含みを残しておく方が良かった。

17...h5

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 黒の非凡な技巧による攻撃が始まる。

18.Be3 a5

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 黒は両翼に気を配っている。本譜の手はc5の地点を争うためである。

19.b5 Rc8 20.Rc1 Nc5

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 敵のeポーンに新たに圧力を加えた。

21.Nd2 h4 22.Ne2

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22...g5

 「列開放」のためのポーン捨てである。

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23.Bxg5

 怖がらずにポーン捨てに応じた。怯えて 23.Kh1 は 23...g4、23.f3 は 23...Nh5 の後 ...Nf4 でいずれにしても黒はg列のポーンを切ることに成功する。

23...Rg8 24.Bxh4 Bxh3 25.Bg3

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 素通しの列の一つ(g列)を閉鎖した。もう一つの列は危険であると感じていない。

25...Be6 26.Re1

 16.f3 なら 16...Nh5 である。

26...Ng4 27.Nf1 Bg5 28.Rb1 Rh8

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 黒の構想は具体化を帯び始めた。

29.Nc3 Bf4 30.Nd5 Qg5

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 狙いは 31...Qh6 である。

31.f3

 既に手遅れである。黒は目の覚めるような捨て駒で白のクイーンを召し上げる。

31...Rh1+ 32.Kxh1 Bxg3

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33.Nxg3

 33.fxg4 なら 33...Qh4+ 34.Kg1 Bf2# で詰んでしまう。

33...Nf2+ 34.Kg1 Nxd1 35.Nf5 Bxf5 36.exf5 Qd2

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 この手は黒の一連の手筋の締めくくりである。この手がなかったら白はクイーンの代わりに同等の戦力(ルーク、ビショップ、ポーン)を得ていた。

37.Rexd1 Qxc2 38.Rbc1 Qxf5 39.Nb6 Rd8 40.Nc4 Nb7 41.Ne3 Qf4

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42.Kf2 Qxa4 43.Rc7 Nc5 44.Rh1 Rd7 45.Rc8+ Ke7 46.Rhh8 Qd4 白投了

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2008年10月13日

チェス500名局(55)

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第1部 開放型

第5章 ルイ・ロペス

第55局

白 タラシュ
黒 マルコ
(ドレスデン、1892年)

 本局は白の陣形にとてつもない機動力が潜んでいることを示したためにルイ・ロペス布局に大きな関心を引き起こした。

 布局理論における最も高級なはまり形の一つが描かれている。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 d6 4.d4 Bd7

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5.O-O

 明らかに白はポーン得できない。5.Bxc6 Bxc6 6.dxe5 dxe5 7.Qxd8+ Rxd8 8.Nxe5 に対して黒は 8...Bxe4 でポーンを取り返せる。

 現代でよく指される手順は 5.Nc3 Nf6 6.Bxc6 Bxc6 7.Qd3 でショーウォルター攻撃と呼ばれる。この最後の手はeポーンを守ると同時にクイーン翼へのキャッスリングを意図している。

5...Nf6 6.Nc3

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6...Be7

 黒はまだ中原ポーンの争点を 6...exd4 7.Nxd4 として解消する必要はない。なぜなら白がまた 7.Bxc6 Bxc6 8.dxe5 dxe5 9.Nxe5 によってポーン得の幻影を追い求めれば黒は 9...Bxe4 でポーンを取り返して全然不利に立たされないからである。

7.Re1

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 このeポーンの過剰防御の後黒は中原の争点を解消しておくべきだった。

7...O-O

 この一見良さそうだけれどうかつな手の後で問題は急速に山場を迎える。黒は 7...exd4 8.Nxd4 O-O と指すべきだった。これが「シュタイニッツ防御の標準形」で黒陣は狭いが頑丈である。

8.Bxc6

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8...Bxc6

 8...bxc6 は 9.dxe5 で黒が何の代償もなく重要なポーンを失う。

9.dxe5 dxe5

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10.Qxd8

 10.Nxe5 はまだ早く 10...Qxd1 11.Nxd1 Bxe4 で黒の方が有利になってしまう。

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10...Raxd8

 黒は問題を解決することができない。10...Bxd8 は 11.Nxe5 で急所のポーンを取られて明らかに不利である。

 10.Rfxd8 は 11.Nxe5 Bxe4 12.Nxe4 Nxe4 13.Nd3(13.Rxe4 は 13...Rd1+ で頓死する)13...f5 14.f3 Bc5+ 15.Kf1 Rxd3(他の手では駒損になるので止むを得ない)16.cxd3 で白の交換得になる。

11.Nxe5

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11...Bxe4

 11...Nxe4 は 12.Nxc6 で白がポーンでなく駒を丸得する。

12.Nxe4 Nxe4

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13.Nd3

 早まって 13.Rxe4 は 13...Rd1+ で再び頓死してしまう。

 黒は8手目の時にいろいろ読んでいたことが見て取れる。しかし本譜の抜け目のない捌きで黒の読みがすべてくつがえされる。

13...f5

 黒は自分の財産をできるだけ長く保とうとする。

14.f3 Bc5+

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15.Nxc5

 15.Kf1 は 15...Bb6 16.fxe4 fxe4+ が何とチェックである。
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(ここで黒の10手目でどちらのルークでクイーンを取るかがどうでもよいことではなかったことが分かる。)この後は 17.Nf4 e3 18.g3 g5 で黒は別に被害もなく駒を取り返すことができる。

15...Nxc5 18.Bg5

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 駒得か交換得になるこのとどめの襲撃は巧妙のきわみである。

18...Rd5

 まだ小駒を救おうとしている。他の手なら白の 17.Be7 でもっとひどいことになる。

17.Be7 Re8 18.c4

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 この手が最後の要点である。白は交換得になり試合に勝つ。

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2008年10月20日

チェス500名局(56)

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第1部 開放型

第5章 ルイ・ロペス

第56局

白 タラシュ
黒 ラスカー
(番勝負、1908年)

 本局は重要な駒が主戦場から離脱する(19.Qxa7)愚行の悲惨な結末をはっきりと見せてくれる。それ以後の黒の指し手は力強く情け容赦のないものであった。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nf6

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4.O-O

 4.Nc3 Bb4 なら「スペイン4ナイト試合」になる。

4...d6

 黒はシュタイニッツ防御の戦型に戻した。この手順は 3...d6 だと危険な「ショーウォルター攻撃」になるのを避けた改良版である。

5.d4

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5...Bd7

 5...Nd7 で中原を補強する手もある。

6.Nc3 Be7 7.Re1 exd4

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 前局からわかるようにここで中原の争点を解消しておく必要がある。

8.Nxd4 O-O

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 この「シュタイニッツ防御の標準形」における黒の陣形は「ハリネズミ陣」と呼ばれる。黒の小駒はすべて防御の役目を担っている。ここで白には良い指し手がいくつもあるがどれも黒の防御陣を崩すには至らない。

9.Nxc6

 この手は単純化につながる。

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9...Bxc6

 9...bxc6 が良い取り方で 10.Bd3 Rb8 11.b3 Ng4 で黒が主導権を取ろうとする展開になる。

10.Bxc6 bxc6 11.Ne2

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 白はこの手の込んだ捌きでキング翼を強化しながら 11...Nxe4 を誘っている。しかしそれははまりで 12.Nd4 で白が圧倒的に有利になる。

11...Qd7 12.Ng3 Rfe8 13.b3

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13...Rad8

 すぐに 13...Ng4 と跳ぶのは 14.Nf5 Bf6 15.Qxg4 Bxa1 16.Nh6+ でクイーンを取られる。

14.Bb2 Ng4

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 正確な読みに裏打ちされた積極的な防御である。この手に対して 15.h3 なら 15...Bf6 がうまい返し技で陣地拡張をもくろむ。また 15.Nf5 なら今度はクイーンにひもが付いているので 15...Bf6 16.Qxg4 Bxb2 とできる。

15.Bxg7

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 敵陣を乱してから別のところでポーンをかすめ取ることを期待している。

15...Nxf2

 15...Kxg7 は 16.Nf5+ Kh8 17.Qxg4 となる。本譜はナイトを高く売りつけた。

 戦いの様相と場所は万華鏡のようにくるくると変わっている。

16.Kxf2 Kxg7 17.Nf5+ Kh8 18.Qd4+ f6 19.Qxa7

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 遂に白はポーンを得した。しかしこれにはいくつかの「疑問符」がつく。(i)せっかく勝ち取ったこのポーンは戦闘とは無関係だった。(ii)このポーンをとるために白クイーンは味方からはるか離れた所に行かなければならなかった。(iii)白キングは危険にさらされることになった。

19...Bf8

 狙いは 20...Rxe4 21.Rxe4 Qxf5+ 22.Ke3 Bh6+ 23.Kd3 d5 で黒の勝ちになる。黒は一挙に死命を制した。

20.Qd4 Re5

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 fポーンを守ると同時に 21...d5 を狙っている。

21.Rad1 Rde8 22.Qc3 Qf7 23.Ng3

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 eポーンを守るとともに 23...Qh5 を防いでいる。

23...Bh6 24.Qf3 d5

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 e列の征服に向けた手である。この事業の道程は次のとおりである。非常に重要な途中のチェック(25...Be3+)、大駒の3重連(27...Qe6)、橋頭堡の確保(29...f4 と 30...d4)そして総仕上げとして駒の捌き(41...Bg5)。

25.exd5 Be3+ 26.Kf1 cxd5 27.Rd3 Qe6

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 素通しのe列に壮大な戦力が勢ぞろいした。

28.Re2

 28.Rdxe3 はむだで 28...Rxe3 29.Rxe3 Qxe3 30.Qxf6+ Kg8 で白の降伏となる。

28...f5 29.Rd1 f4 30.Nh1 d4 31.Nf2 Qa6 32.Nd3 Rg5

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 黒の重火器は好きに使える列がいくつもあるのでその重圧にはすぐに抵抗できなくなる。

31.Ra1 Qh6

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34.Ke1

 キングが逃げ出した。代わりに 34.h3 なら 34...Rg3 35.Qd5 f3(35...Qxh3 36.gxh3 Rg1# を期待するのは甘く白には 36.Qxd4+ という受けがある)である。

 また 34.Qh3 なら 34...Qxh3 35.gxh3 Rg1# で詰んでしまう。

34...Qxh2 35.Kd1 Qg1+ 36.Ne1 Rge5

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 この新たな駒の再編成で黒はとりあえず 37...d3 38.cxd3 Bd4 を狙っている。本譜の残りの指し手は壮快である。

37.Qc6 R5e6 38.Qxc7 R8e7 39.Qd8+ Kg7 40.a4 f3

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 この手は「場所を空けるための犠牲」である。続くのは非常に効果的な「筋を開ける捌き」である。

41.gxf3 Bg5 白投了

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2008年10月27日

チェス500名局(57)

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第1部 開放型

第5章 ルイ・ロペス

第57局

白 シュレヒター
黒 ラスカー
(10番勝負、1910年)

 この好局で特別の賞賛に値するのは次の2点である。まずは敵陣の弱点を利用する白の手腕で、最終的に大局的優位を戦力差に導いた。もう一つはどう見ても敗勢の局面で引き分けの可能性を見いだした黒の必死の独創的着想である。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nf6 4.O-O d6 5.d4 Bd7 6.Re1 exd4 7.Nxd4 Be7 8.Nc3 O-O 9.Bxc6

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 この単純化は全然無意味でない。黒ポーンの形が少し乱れ白のd4のナイトが中原の好所に居続けられる。

9...bxc6

 黒は代償として中原ポーンをもっとコンパクトにし「双ビショップ」を保持することを望んでいる。

10.Bg5

 ナイトにかかったこの手は賢明な手である。しかしこのビショップは 10.Bf4 又は 10.b3 Re8 11.Bb2 というぐあいに有利な地点に展開させることもできた。

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10...Re8

 10...Bb8 11.b3 をさしはさんでから 11...Re8 とするのも一理ある。どちらにせよ黒の狙いは 11...Nxe4 12.Bxe7 Nxc3 である。

11.Qf3

 11.Qd3 としてクイーンを働かせるのも良い手である。

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11...h6

 この手は次の手と関連していて釘付けの圧力を緩和する手段である。11...Ng4 は間違いで 12.Bxe7 Qxe7 13.Nxc6 で白のポーン得になる。

12.Bh4 Nh7 13.Bxe7 Qxe7 14.Rad1 Nf8 15.h3 Ng6 16.Qg3 Qg5

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 クイーン無し収局を誘った。そうなれば白の優位は極小に留まる。

17.Qxg5 hxg5 18.f3 f6 19.Kf2 Kf7 20.Nde2 a5

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21.b3 Reb8 22.Nc1 Be6 23.Nd3 c5 24.Nb2

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 相手が 24...c5 で二重ポーンを解消するのを巧妙に防いだ。

24...Ne5 25.Nd5 Rb7 26.Re3 Nc6 27.Rc3

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 冒険好きなルークである。

27...g6 28.a4 f5 29.Ne3 Re8 20.Nec4

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 狙いは 31.Rxd6 である。

30...Ra7 31.Re1 Bxc4 32.Nxc4 Kf6

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33.Ne3 Ne5 34.exf5 gxf5 35.g3 Rh8 36.f4

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 白は非常に巧みにキング翼の端に貴重な資産(パスポーン)を得てはっきりと優勢になる。

36...gxf4 37.Nd5+ Kf7 38.Nxf4 Rb7 39.Kg2 c4

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 反撃をもくろむこの手は白の41手目で咎められる。ついでに黒陣の弱点もさらけ出される。

40.bxc4 Rb4 41.c5 Rxa4 42.cxd6 cxd6

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43.Rc7+ Kf6 44.Nd5+ Kg5 45.h4+ Kh6 46.Ne7

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 白のどの一手も的を射ている。

46...Rf8 47.Rd1

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47...Rf7

 47...Nc4 とポーンを守っても 48.Kf2 の後 Rd4 で無駄なのでポーンを見捨てることにした。

48.Rxd6+ Kh7 49.Re6 Ng6 50.Rxg6 Rxe7

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51.Rgc6 Rxc7 52.Rxc7+ Kg6 53.Rc6+ Kf7 54.Kf3

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 巧妙な清算の後は難解なルーク収局になった。

 本譜の白の意図は 55.c4 の後キングをf4の地点に進めることである。しかしすぐに 54.c4 と突く方がもっと痛烈だった。そうすればこのパスポーンが危険な武器になれた。

54...Re4

 この見事な捌きで黒はより効果的な地点を占めるためにポーンをもう一つ捨てる。次のようなありきたりの指し方では不十分で黒の勝ちになる。54...Ra1 55.Ra6 a4 56.Kf4 Rf1+ 57.Kg5 Rf3 58.Rxa4 Rxg3+ 59.Kxf5
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55.Rc5 Kf6 56.Rxa4 Rc4

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 黒の深い構想が明かされる。黒ルークの位置は2ポーン損を補っている。

57.Ra6+ Ke5 58.Ra5+ Kf6 59.Ra6+ Ke5 60.Ra5+ Kf6 61.Ra2 Ke5 62.Rb2 Rc3+ 63.Kg2 Kf6 64.Kh3

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64...Rc6

 64...f4 ははまりで 65.Rb3 Rxc2 66.Rf3 で白が勝つ。

65.Rb8

 65.h5 と突いても 65...Kg5 と来られるので白は1ポーンを返してルークをもっと働かせることにした。しかしそれでも勝つには至らない。

65...Rxc2 66.Rb6+ Kg7 67.h5 Rc4

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 白キングを4段目で遮断した。

68.h6+ Kh7 69.Rf6 Ra4 引き分け

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2008年11月03日

チェス500名局(58)

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第1部 開放型

第5章 ルイ・ロペス

第58局

白 プジェピュルカ
黒 レーティ
(サンレモ、1911年)

 活気あるこの試合では攻撃的な相手に対して自分からあまりに多くの陣地を譲ることの重大な結果を見ることができる。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nf6 4.O-O d6 5.Nc3 Be7 6.d4 Bd7 7.Re1 exd4 8.Nxd4 O-O 9.b3

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 ゆっくりしているが理にかなった手である。

9...Re8

 黒が交換に訴えてくれば 9...Nxd4 10.Qxd4 Bxb5 11.Nxb5 Nd7(12...Bf6 の狙い)の後白は 12.Qc4 c6 13.Nd4 で黒陣に永続的な弱点を生じさせることができる。

10.Bb2 Bf8

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 黒は「前線の背後で」耐久性のある防御システム作りを続ける。

11.f3

 この受身の行動の代わりに白は 11.Nxc6 bxc6 12.Bd3 g6 13.f4 で主導権の確保に努めることができた。

11...g6

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 この対抗フィアンケットは黒枡の対角斜筋に位置する相手ビショップの圧力を和らげる意図である。

12.Bf1

 またしても陣地を放棄した。白は 12.Bxc6 または 12.Nxc6 で交換に甘んじるべきだった。

12...Bg7 13.Nde2

 13...Nxd4 14.Qxd4 Nxe4 を狙われているので白は新たな退却の捌きを行なうことにした。

13...Nh5

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 成功をもたらす反攻の開始である。

14.Qd2 Qh4 15.Nd1 Ne5

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 ビショップ交換を避け戦闘地域に新たな戦闘単位を投入した。

16.c4

 この手は 17.Nf2 と指せるようにするためである。しかし今すぐ 16.Nf2 と指すのは 16...Nxf3+ 17.gxf3 Bxb2 で不利に陥る。

 しかし本譜のもっともらしい手に対して黒が華麗に咎める手を見つけたので、白は陣容の「継ぎはぎ」をする他の手段、例えば 16.Bc3 を捜すべきだった。

16...Nd3

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 「入り口」のd3の弱点に芸術的につけ入った。

17.Qxd3 Qxe1 18.Nc3 Qh4

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 順当にしっかり交換得して黒クイーンは監視の地点に戻った。白の大義は失われた。

19.c5 Bc6

Y081103H.JPG

20.Nd4

 20.cxd6 と取るのは 20...Rad8 である。白が主導権を握る希望はないので 20.g3 の方が良かっただろう。

20...Be5 21.g3 Bxg3

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 白の要塞は崩壊しつつある。

22.hxg3 Qxg3+

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23.Bg2

 この手は新たな無慈悲な不意打ちを生む。23.Kh1 Nf4 24.Qd2 Re5 でも黒の勝ちになる。

23...Qxg2+ 24.Kxg2 Nf4+ 25.Kg3 Nxd3 白投了

Y081103K.JPG

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2008年11月10日

チェス500名局(59)

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第1部 開放型

第5章 ルイ・ロペス

第59局

白 コスティッチ
黒 セレズニエフ
(イェーテボリ、1920年)

 理想的な戦争の仕方は実際の戦闘を行なわずに単に策略で勝つことであると唱える戦記作家を持ち出すまでもなく、本局の最も面白い特色はまさにそのようにして勝ったということである。

 まず白クイーンが偵察の捌きを行ない、それからクイーン翼ルークがキング翼に転回(Ra1-d1-d3-h3-h6-h8+)し黒の戦力に大打撃(クイーンとポーンの消失)を与えた。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nf6 4.O-O d6 5.d4 Bd7 6.Nc3 Be7 7.Re1 exd4 8.Nxd4 O-O 9.Nde2

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 この手の理由づけは見られるとおり黒の困難を軽減させる駒交換を避けたことである。

9...Ne5

 この手は盤上から「スペイン・ビショップ」を消し去るが、そうすることにより黒は自陣に弱点を生じさせてしまう。最も積極的な防御は 9...a6 10.Bd3 Ng4 11.h3 Nge5 又は 11.Ng3 Bf6 で、形勢は互角である。

10.Ng3 Bxb5 11.Nxb5

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11...Nfd7

 黒が「前線の背後」で 11...Re8 12.b3 Bf8 13.Bb2 により別の再編成を試みても、それでも白は陣地が広い分有利である。

12.Bd2 Nc6

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 陣形上の脅しの 13.Ba5 b6 14.Bc3 でクイーン翼が乱されるのを未然に防いだ。

13.Bc3 Bf6 14.Qd2 a6 15.Bxf6 Nxf6 16.Nd4 Nxd4 17.Qxd4 Nd7

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 18...Qf6 でクイーンを交換して形勢互角にすることを期待した。

 この構想をくじく機敏な捌きは停滞に達したような戦いに新たな彩りを添える。

18.Qc3

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18...g6

 18...Rc8 なら 19.Nf5 で 19...Qf6 は交換損に至るのでできない。

19.Rad1 Re8

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 この手と次の手で黒は白の不快な 20.e5 突きを止めようとした。

20.f4 f6 21.h4

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 駒が少なくなったにもかかわらず白は軽快で愉快な攻撃を始める。

21...Nc5

 22.Qb3+ から Qxb7 でポーンを取られる手を防いだ。

22.h5 Qe7 23.hxg6 hxg6 24.b4 Ne6 25.f5

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 前線突破にとりかかった。ポーン得は一時的なことにすぎないが敵陣に生じた裂け目は恒久的である。

25...Ng7

 25...gxf5 26.exf5 も 25...Nf8 26.fxg6 Nxg6(26...Qe5 なら 27.Qb3+)27.Nh5 もだめである。

26.fxg6 Qe5 27.Qe3 Qg5 28.Qb3+ Ne6 29.Nf5 Qxg6 30.Rd3

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 ここからの転回の移動が勝利に結びつく。

30...Kf8 31.Rh3 d5

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 巧妙な反撃である。32.Qxd5 なら 32...Rad8 で黒に新たな可能性が開ける。しかし白は何も気にせずに自分の戦略的行動に取りかかる。

32.Rh6 Qg5 33.Qh3 dxe4 34.Rh8+

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 強制的にクイーンをルークとナイトと交換させる。

34...Kf7 35.Qh7+ Ng7 36.Nh6+

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36...Qxh6

 36...Ke6 と逃げるのは 37.Qxe4+ Kd7(37...Qe5 なら 38.Qc4+)38.Rd1+ で簡単に詰む。

37.Qxh6 Rxh8 38.Qf4 Rhe8 39.Qxc7+ Re7 40.Qc4+ Kf8 41.Rxe4

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 これで黒の最後の危険なポーンが消えた。それでも収局は(白の側の)色々な手腕を必要とする。

41...Rae8 42.Qc5 Kf7 43.Qd5+ Kf8 44.Rh4 Rc7 45.Rh8+ Ke7 46.Rh7 Kf8

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47.Qd6+ Ree7 48.Qxf6+ Kg8 49.Rh4 Re1+ 50.Kh2 Rf7 51.Qd8+ Re8 52.Qd5 Re6

Y081110O.JPG

53.c4 Ree7 54.a4 Rd7 55.Qe4 Rf5 56.a5 Kf7 57.Rh7 Kf6 58.Qh4+

Y081110P.JPG

58...Ke5

 58...Kf7 は 59.Qg4 Kf6 60.Rh6+ Ke5(60...Kf7 なら 61.Qg6+ で本譜と同様)61.Qe2+ Kf4 62.g3+ Kg5 63.Qe3+ Kg4 64.Rh4#
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で詰む。

59.Qg3+ Kf6 60.Rh6+ Kf7 61.Qg6+ Kg8 62.Rh4 Re7

Y081110R.JPG

63.Qd6 Kf7 64.Rh7 Rfe5 65.b5 axb5 66.cxb5 R7e6

Y081110S.JPG

67.Qc7+ Re7 68.Qc4+ Kg6 69.Qd3+ Kf7 70.Qg3 Kf6 71.Qf4+ 黒投了

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 71...Ke6 なら 72.Qh6+、71...Kg6 なら 72.Rh6# である。

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2008年11月17日

チェス500名局(60)

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第1部 開放型

第5章 ルイ・ロペス

第60局

白 ノイマン
黒 コーリッシュ
(パリ、1867年)

 本局はずっと昔の試合であるが非常に現代的な印象を受ける。黒のみごとな双ビショップ使いはとりわけ注目に値する。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nf6 4.O-O

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4...Be7

 4...Nxe4 の面倒な変化に踏み込まずに本譜の手は(4...d6 と同じく)シュタイニッツ防御に戻って行く。

5.Nc3 d6

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6.Bxc6+

 すぐに 6.d4 と指す方が活気あるチェスになる。本譜の駒交換の後の白陣ははるかに柔軟性に欠ける。

6...bxc6 7.d4 exd4 8.Nxd4 Bd7

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9.f4

 意欲的なポーン突きである。ここでは他にも幾つかの手がある。例えば 9.Bg5、9.b3 から Bb2、9.Qd3 及び 9.Qf3 である。最後の手は合理的で積極的である(狙いは 10.e5)。

9...O-O

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10.Qd3

 ここでも 10.Qf3 は存在理由がある。

10...Rb8 11.b3 c5

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12.Nf3

 このナイトはe2へ下がる方が柔軟性がある。そこからはg3へ行けるし(eポーンを守る)f4からd5へ行くこともできる(f5 と突いた後で)。

12...Bc6

 早くも黒の「双ビショップ」の一方が監視所を占めた。

13.Re1 Re8

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14.Nd5

 この手は急ぎ過ぎである。14.Bb2 で戦力を蓄積する方が良かった。

14...Nxd5 15.exd5 Bf6

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 機敏な中間手である。この手で2番目のビショップが働き始め黒に主導権をもたらす。

16.Rxe8+

 16.dxc6 は 16...Rxe1+ 17.Nxe1 Bxa1 18.c3(19.Nc2 の狙い)18...Qf6 19.Bd2 d5 20.Nc2(20.Qxd5 なら 20...Bxc3)20...c4 で白陣が崩壊する。

16...Bxe8 17.Rb1 Bd7

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 この後は 18...Qc8 から ...Bf5 である。このため白は 18.c4 と指せない。

18.Bd2 Qc8

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19.Re1

 この手は次に 20.Bc3 とした時に 20...Be7 とできないようにするためである。しかしすぐに 19.Bc3 と指すのが急務だった。以下の想定手順は 19...Bf5 20.Qd2 Be7 21.Re1 Qd7 22.h3 h5 で白クイーンは実戦のc4よりも居心地の良いd2に落ち着けた。

19...Bf5 20.Qc4

 cポーンを守るにはここへ行くしかない。

20...Qd7 21.c3 Re8

Y081117J.JPG

 黒は断固として清算を目指す。そうなれば「双ビショップ」の威力が増す。

22.h3 Rxe1+ 23.Nxe1 Qe8 24.g4

Y081117K.JPG

 こうしないと反撃狙いの 24...h5 から ...h4 で白のキング翼が封鎖される。

24...Bd7 25.a4 c6

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 開けた局面になれば双ビショップが全力を発揮することを正しく見通している。

26.Kf1

 自分のクイーンが動いても敵クイーンのe2への侵入を恐れる必要がないようにした。

26...h6 27.Qa6 cxd5 28.Qxd6 d4

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 黒はポーンを捨ててビショップの威力をさらに強いものにしようとしている。白が 24.Qxc5 と取れば 24...Qe4 25.cxd4 Bxd4 で黒がチェス盤の主要道路を完全に支配する。

29.c4 Bc6 30.Qxc5 Qe4 31.Qd6

Y081117N.JPG

 31...d3 の狙いに備えた。

31...Bh4

 このそっぽへ行った手は強い手のように見えるが敵クイーンを防御の要であるe5へ行かせてしまう。待機し事前準備する 31...Kh7 が筋の通った手だった。

32.Qb8+ Kh7 33.Qe5

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 生死にかかわる争いである。

33...Qh1+ 34.Ke2 Be4

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 うまく指している。dポーンを守るよりも永久チェック(35.Qf5+)を防ぐ方が大事である。

35.Qxd4 f5

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 深く練られた作戦を開始する。それには斜めからのチェックを防いでおく必要がある。

36.gxf5

 白が自陣の危険性を十分に把握していたらはるかに頑強な防御となる 36.Qe3 を選択していただろう。

36...Qh2+ 37.Kd1 Bxe1

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 きれいに決まっている。38.Bxe1 なら 38...Qc2#、また 38.Qxe4(チェックにならない。これが黒の35手目の隠された意味であった)も 38...Qxd2# である。

38.Kxe1 Qh1+

Y081117S.JPG

 ここからの短く激しい戦いで黒は最小限の手段で最大限の効果を生み出す。

39.Ke2 Qf3+ 40.Ke1 Bd3

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 待機の手でe2とf1の二つの詰みがある。

白投了

 (41.Qf2 Qh1+)名局である。

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2008年11月24日

チェス500名局(61)

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第1部 開放型

第5章 ルイ・ロペス

第61局

白 カパブランカ
黒 ベルンシュテイン
(サンセバスチャン、1911年)

 高い芸術性と競技性に加えて本局の価値は歴史的な興味によっても高められている。それは海の向こうからの新星とヨーロッパの代表的なマスターとの初対戦だったからである。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nf6 4.O-O Be7 5.Nc3 d6 6.Bxc6+ bxc6 7.d4 exd4 8.Nxd4 Bd7

Y081124A.JPG

9.Bg5

 カパブランカは理にかなった単刀直入な展開の手をとりわけ好んだ。しかしこのビショップは結局交換されるので戦略家の中には 9.b3 から Bb2 のようなもっと含みの多い展開を好む者もいる。

9...O-O 10.Re1

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10...h6

 この手は釘付けを緩和する良い手段である。10...Ne8 は 11.Bxe7 Qxe7 12.Qd3 で黒陣は凝り形のままである。

11.Bh4 Nh7 12.Bxe7 Qxe7 13.Qd3 Rab8 14.b3 Ng5

Y081124C.JPG

15.Rad1

 代わりに 15.f4 ならもっと激しい経過をたどっただろう。

15...Qe5

 この手は 16.f4 を防いでいるだけでなくそれを準備する 16.g3 も防いでいる(16...Qxd4 17.Qxd4 Nf3+ 18.Kg2 Nxd4 19.Rxd4 Rfe8 で黒好調である)。

 しかしクイーンの居場所を前線に決めてしまうのは急ぎすぎなので 15...Rfe8 で様子を見る方が理にかなっていただろう。

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16.Qe3 Ne6 17.Nce2 Qa5 18.Nf5 Nc5 19.Ned4

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 この手はf5の重要な橋頭堡の任務にナイトを維持するためである。その上 20.Nxc6 Bxc6 21.Ne7+ から Nxc6 で勝勢になる気づき難い狙いもある。19...Qxa2 も白のcポーンが守られているので 20.Ra1 Qb2 21.Reb1 で相手のクイーンを捕獲できるので白はもう恐れる必要がない。

19...Kh7 20.g4 Rbe8 21.f3 Ne6 22.Ne2

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 読みか、それとも直感か?キューバのマスターは当然ながらどちらの才能も持っていることで有名だった。

22...Qxa2

 黒は挑戦を受けて立った。もっともそのような冒険の危険性は数多くの経験で実証されてきた。もっと用心深い進行は 22...Qb6 だった。クイーン交換になれば白はわずかな陣形的有利しか得られない。

23.Neg3

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 白は悠然とポーンをもう1個与える。

23...Qxc2

 23...Qa5 の方が思慮深かった。目的は 24...Qb6 でクイーンを交換することでポーン得が残る。

24.Rc1

 明らかに 24...Qc5 を防ぐためである。

24...Qb2 25.Nh5

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 至高の技法を持つ白の攻撃が確かな形になってきた。

25...Rh8

 25...g5 は見かけは危険そうだが試みてもよい受けだった。

26.Re2 Qe5 27.f4 Qb5

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 黒クイーンが重大な区域から遮断されたので急に嵐が巻き起こる。

28.Nfxg7

 容易に分かるように駒損は一時的だが洗練された核心が欠かせない注意深い準備が必要だった。

28...Nc5

 28...Nxg7 は 29.Nf6+ Kg6 30.Nxd7 f6 31.e5(敵陣突破)31...Kf7 32.Nxf6 Re7 33.Ne4 で受けがない。とにかく裸のキングを運命に委ねる本譜の手よりも 28...Qb6 でクイーンを盤上から消す方が良かった。

29.Nxe8 Bxe8 30.Qc3

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 勝利を決定付ける斜筋である。

30...f6 31.Nxf6+ Kg6 32.Nh5 Rg8 33.f5+ Kg5 34.Qe3+ Kh4 35.Qg3+

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 白の次の手で詰みになる。

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2008年12月01日

チェス500名局(62)

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第1部 開放型

第5章 ルイ・ロペス

第62局

白 ド・ビア
黒 シュタイニッツ
(ダンディー、1867年)

 本局ではホームレスのキングが四方から攻撃され遂には鮮やかで素早い捨て駒の決め手に屈する様を目の当たりにする。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nf6

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 一時期ラスカーはこの積極的な(積極的すぎないかもしれないが)防御法を熱心に採用していた。

4.O-O

 白は 4.Qe2 又はもっとおとなしく 4.d3 でeポーンを守るのをつまらないとみた。そしてこのポーンを取らせれば自分の方の展開が良くなることを信じた。

4...Nxe4

 4...d6(5.d4 Bd7 =シュタイニッツ防御)又は 4...Be7 さらには 4...Bc5 などのもっと落ち着いた防御法を選ぶよりもむしろe列の雷鳴と稲妻に挑んだ。

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5.Re1

 5.d4 の方がもっと厳しい手で中央列での圧力を強める。5.Qe2 に対する防御は難しくない。例えば 5...Nd6 6.Bxc6 dxc6 7.Nxe5 Be7 8.Re1 Be6 9.d4 Nf5(9...O-O はまだ早く 10.Nxf7 とされる)10.c3 O-O
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で互角の形勢である。

5...Nd6

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6.Nxe5

 又は 6.Bxc6 なら 6...dxc6 7.Nxe5 Be7 から ...O-O という進行になる。

6...Nxe5

 この衝動的な応手は 7.Nxc6+ というひどい狙いをなくそうというものだが、代わりに沈着な 6...Be7 が正着だった。

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7.Rxe5+ Be7 8.d4

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8...f6

 この手はb5のビショップを没収しようという手だが自分のキングの銃眼付き胸壁をひどく弱めてしまいうまくいかなかった。

 一方 8...O-O は 9.Bd3 で白駒に絶好の攻撃態勢をとらせるので、8...Nxb5 9.Rxb5 で単純化を図るのが唯一の手段だった。

9.Re1

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9...Nxb5

 9...O-O は 10.Bd3 でやはり白の圧力が強まる。

10.Qh5+ g6 11.Qxb5

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11...c6

 11...O-O の後でも黒陣がぶざまなことは言うまでもない。

12.Qb3 d5 13.c4

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 重要なa2-g8の斜筋をめぐるこの戦いは勝利への不可欠の過程となる。

13...Kf7

 黒は人工のキャッスリングに打って出た。13...O-O は 14.cxd5 cxd5 15.Nc3 でdポーンとe7のビショップを同時に守ることができない。

14.Nc3

 14.cxd5 Qxd5 15.Qxd5 cxd5 16.Nc3 は 16...Bb4 で互角の形勢である。

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14...dxc4

 14...Be6 なら 15.Qxb7 である。

15.Qxc4+ Kg7 16.d5 cxd5 17.Nxd5

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17...Bf8

 17...Re8 は 18.Nc7 でだめだし 17...Bd6 も黒陣が不安定なままである。

18.Nxf6

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 ずっと先まで見通した駒捨てで、黒キングの砦がばらばらになる。

18...Qxf6

 18...Kxf6 なら 19.Qc3+ から Qxh8 である(訳注 19.Qh4+ でクイーンが取れます)。

19.Bd2 b5 20.Qd5 b4

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 恐ろしい狙いの 21.Bc3 はなくなったが代償に複数の弱点を抱えることになった。

21.Rac1

 餌にすぐ 21.Qxa8 と飛びつくと 21...Bc5 とされる。代わりに白は強烈な手段で圧力を一層強める(狙いは 22.Rc7+)。

21...Qf7 22.Qxa8 Be6 23.Qe4 Bxa2 24.Qe5+ Kg8 25.Rc7

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 この7段目への侵入で黒の抵抗が終わりを告げる。

25...Qd5 26.Qxd5+ Bxd5 27.Re8 黒投了

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(27...Bf7 28.Ra8 Kg7 29.Raxa7)黒のみごとな戦いぶりだった。

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2008年12月08日

チェス500名局(63)

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第1部 開放型

第5章 ルイ・ロペス

第63局

白 ヤノフスキー
黒 バーン
(ケルン、1898年)

 本局は沈着な応戦のみごとな例である。それにより黒は大上段のルーク(14.Rg5)、長斜筋の黒枡でのビショップ筋の貫通(19.Nf5)、クイーンのただ捨て(20.Qh4)といった相手の強引で鋭い企てをすべて打ち破ることに成功しそれらはすべて徒労に終わった。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nf6 4.O-O Nxe4 5.Re1 Nd6 6.Nxe5 Be7

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 e列をおおいキャッスリングの用意をするこの理にかなった受けで黒は均衡を保っている。

7.Bd3

 双ビショップを保持したいという気持ちは理解できるがもっと自然な手順は 7.Nc3 O-O 8.d4 で、理路整然とした展開が行なえた。

 この指し方の例はド・ビア対ミンチン戦(ロンドン、1871年)で見られる。7.Nc3 O-O 8.d4 Bf6 9.Bd3
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9...h6(9...Nxd4 なら 10.Bxh7+)10.Nd5 Ne8 11.Qg4 d6 12.Qe4 g6 13.Nxf7
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(切り込みの捨て駒)13...Rxf7 14.Qxg6+ Kf8 15.Bxh6+ Bg7 16.Qh7 Ne7 17.Qh8+ Ng8 18.Bh7 黒投了
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Y081208E.JPG

7...Nxe5

 もっと控えめな 7...O-O 8.Nc3 Ne8 という守備なら 9.Nd5 で白も楽だったろう。

8.Rxe5 O-O 9.Nc3 c6

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 黒はゆっくりと確実に駒の展開を完了させていく。

10.b3

 しかし白もクイーン翼ビショップの展開という課題を解決しながらゆっくりと進まなければならない。

10...Ne8 11.Bb2 d5

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12.Qh5

 ここはクイーンの急な出撃よりも 12.Qf3 の方が良かった。しかしどちらにしても黒は既に陣固めが済んでいる。

12...Nf6 13.Qh4 Be6

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14.Rg5

 このルークから波乱が巻き起こる。この手の消極的な目的は 14...Ne4 を 15.Rxg7+ により防ぐことである。積極的な目的は次の手の解説で示される。

 代わりに 14.Rae1 なら 14...h6 である。

14...g6

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 黒はひるむことなく 15.Nxd5 Bxd5 16.Rxg7+ Kxg7 17.Qxh7# の狙いをかわした。

 ここで長斜筋の利きを利用して白が無理を通すことができそうに思えるが、固まっているとはいえ密集した陣形の潜在的な抵抗力を以降の手順で見せつけられる。

15.Qh6

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 これでは白の狙いは大したことがない。白の意図は次のように捨て駒を連発してチェックの千日手による引き分けを得ることである。16.Bxg6 fxg6 17.Rxg6+ hxg6(又は 17...Kf7)18.Qxg6+ Kh8 19.Qh6+(19.Nxd5 なら 19...Rf7)19...Kg8(19...Nh7 は 20.Nxd5+ Bf6 21.Nxf6 Rxf6)20.Qg6+

15...d4

 この長斜筋の一時的な閉鎖は非常に重要である。次の手順は融和策でしかない。15...Ng4 16.Rxg4 Bxg4 17.Nxd5 f6 18.Bxg6 hxg6 19.Qxg6+ Kh8 20.Qh6+ これで講和を結ぶしかない。

16.Ne2 Ng4

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 ここから事態は劇的な展開を見せる。

17.Rxg4 Bxg4 18.Nxd4 Bg5 19.Nf5

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 これが最初のわなで 19...Bxh6 なら 20.Nxh6# である。

19...Bf6 20.Qh4

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 これが第2弾のわなで同じ絵画のような着想である。しかし対策を見つけるのは簡単である。

20...Bxb2 21.Ne7+ Kg7 白投了

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 面白い試合だった。

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2008年12月15日

チェス500名局(64)

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第1部 開放型

第5章 ルイ・ロペス

第64局

白 ショーウォルター
黒 ピルズベリー
(番勝負、1897年)

 チェスにおける駒繰りは攻撃にせよ防御にせよすべてできる限り基本的な構想に貫かれているべきである。本局における白の主要な構想は黒のクイーン翼ビショップがどちら側でも閉じ込められていることにつけ込むことである。

 そのため黒は最後までクイーン翼の駒抜きで戦うことになった。そして白はこの状況を利用して一連のすばらしい手筋を放った。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nf6 4.O-O Nxe4

 この「ベルリン」ナイトは非常によく飛びまわる。

5.d4

 このポーン突きは 5.Re1 や 5.Qe2 よりも積極的である。

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5...Nd6

 5...exd4 は危険が多すぎるし(6.Re1 のため)5...a6 は手損になる(6.Bxc6 dxc6 7.Re1)。最も堅実な手は 5...Be7 である。

6.Ba4

 独創のビショップ退却である。旧来の手は 6.Bxc6 だし現代の手順は 6.dxe5 Nxb5 7.a4 で白が駒を取り返す(マグデブルグ攻撃)。

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6...exd4

 実利に走った。もっと堅実な手順は 6...e4 7.Re1 Be7 8.Ne5 O-O で互角の形勢である。

7.c3

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 「ギャンビット式」の手である。

7...dxc3

 もっと手堅い 7...Be7 でも 8.cxd4 で白の重圧はポーン損を補って余りある。

8.Nxc3 Be7 9.Nd5 O-O 10.Re1

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10...Bf6

 10...Nf5 なら 11.g4 である。しかし 10...Re8 11.Bf4 Bf8 でも問題がないことはない。

11.Bf4

 直接の狙いは 12.Nxc7 Qxc7 13.Bxd6 である。

11...Ne8

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 ここが勝負所である。放っておけば黒は自陣を固める(12...d6)。しかし攻撃側は黙って見ていない。

12.Rxe8

 この手は排除のための犠牲である。

12...Qxe8

 12...Rxe8 は 13.Bxc7 でクイーンが「詰み」に近い。しかしここで白は大きな利子付きで戦力を取り戻す。

13.Nxc7 Qe4 14.Bd6

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 白は好調である。敵のルークは両方とも当たりになっていて黒のdポーンはふさがれたままである。

14...Rb8 15.Bc2 Qg4 16.Bxf8 Kxf8 17.Qd6+

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 ここから仕上げにかかる。

17...Be7 18.Re1

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 優美な挿話もある(18...Bxd6 19.Re8#)。

18...g6

 この手は不本意だが必要である。代わりに 18...f6 は 19.Bb3 Ne5 20.Qd5(最も効果的)20...Nxf3+(20...Bb4 なら 21.Rxe5 で白の勝ち)21.Kh1 で黒の降伏が確定する。

19.Qd2 Qh5 20.Nd5

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20...Bd8

 21.Nxe7 Nxe7 22.Qd6 の狙いをかわそうとして 20...Bd6 としても白の応手は同じく 21.Qc3 が決め手となる。

21.Qc3 f6 22.Nxf6 Ba5

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 5手で黒キングが詰む。(始まりは 23.Nxd7+)

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2008年12月22日

チェス500名局(65)

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第1部 開放型

第5章 ルイ・ロペス

第65局

白 ハルプリン
黒 ピルズベリー
(ミュンヘン、1900年)

 「最も華麗な実戦の引き分け」と適切に名付けられたように本局は変転きわまりない狙いと切り返しが眼前で展開された。それは数多くの激闘がそうであるように結局引き分けに終わった。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nf6 4.O-O Nxe4 5.d4 Nd6

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6.dxe5

 ドイツのアマチュアでマグデブルグのレルメの創案によるこの手は駒をただで取らせるように見えながらほとんどすぐに駒を取り返す。この手は通常の 6.Nc3 や 6.Ba4 よりも劣っているわけではないが、白ははっきりした有利が得られない。

6...Nxb5

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7.a4

 7.c4 は 7...d6 で黒が有利である。

7...d6

 黒は 7...Nbd4 でも 7...Nd6 でも良くはならない。

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8.e6

 ここから華々しい戦いが始まる。

 ありきたりの手順は 8.axb5 Nxe5 9.Re1 Be7 10.Nxe5 dxe5 11.Qxd8+ Kxd8 12.Rxe5 Bd6 で形勢互角である。

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8...fxe6

 8...Bxe6 は 9.axb5 Ne5 10.Nd4 Bd7 11.Nc3 Be7 でここでもまた戦闘は緩慢な様相を呈する。

9.axb5 Ne7

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10.Nc3

 白は落ち着いて展開を続けた。別手順は 10.Bg5 Qd7 11.Nc3 である。

10...Ng6 11.Ng5

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 このナイトの遠征がはるか先の結果をもたらすことになった。以降の手順は実戦で生じたみごとなプロブレムと見ることができる。

11...Be7 12.Qh5 Bxg5 13.Bxg5 Qd7

Y081222G.JPG

14.b6

 この急所の突き捨てで黒ポーンの連係が完全に乱される。すぐに 14.Nd5 なら黒は 14...O-O と応じる。

14...cxb6 15.Nd5

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 このナイト捨てでe列が素通しになる。

15...exd5

 16.Nxb6 を防いで 15...Qc6 なら白は 16.Ne7 Qxc2 17.Rac1 という鮮やかな手で勝つ。

16.Rfe1+

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16...Kf8

 もちろん 16...Kf7 は 17.Re7+ があるのでだめである。

17.Ra3

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 ここで白の7手目の骨子となる副次的な構想が明らかとなる。白の狙いは 18.Rf3+ Kg8 19.Re7 Qc6(19...Nxe7 なら 20.Qf7#)20.Rf8+ Kxf8 21.Qf3+ で、あと3手で詰みになる。

17...Ne5 18.Rxe5

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 これは「排除の駒切り」である。白は自分の通り道の障害物はすべて取り除く決意である。

18...dxe5 19.Rf3+ Kg8

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 黒キングはようやく安全圏に入ったか?

20.Bh6

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 手筋をさらに繰り出して白はまだ敵を問い詰めている。

20...Qe7

 クイーンが控えめに寄って黒は首締めから逃れようとしている。それとともに 20...gxh6 21.Rg3+ Kf8(21...Qg7 は 22.Qe8#)22.Rf3+ の永久チェックも防いでいる[訳注 22...Ke7 で黒が受けきるので正着は 22.Qxe5 です]。

 しかし 20...Qe6 は 21.Qg5 Qd7(21...Qxh6 は 22.Qd8#)22.Bxg7 で白の勝ちになる。20...g6 も 21.Rf8# で詰まされる。

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21.Bxg7

 白は解体の手筋で敵の本陣を粉砕した。ただし 21.Rg3 は 21...g6 で受けられる[訳注 22.Rxg6+ で白の勝ちなので正着は 21...Bd7 です]。

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21...Kxg7

 明らかに 21...Qxg7 は 22.Qe8+ で受けにならない。21...Bg4 も 22.Qxg4 h5(22...Qxg7 なら 23.Qe6+)23.Qg6 Qxg7 24.Qe6+ Kh7 25.Rf7 で白が優勢である。最後に 21...Bd7 は 22.Bxh8 e4(22...Kxh8 は 23.Rf7 で白の勝ち)23.Bf6 Qf7 24.Qg5+ Qg6(24...Kf8 は 25.Bg7+ で白の勝ち)25.Qxd5+ Qf7 26.Rg3+ Kf8 27.Qd6+ Ke8 28.Rg8+ Qxg8 29.Qe7# で詰みに終わる[訳注 22...Rf8 で黒がまだ粘れるので正着は 22.Bh6 で白の勝ちです]。

 本譜の手の後黒はルーク・ビショップ得だがどうすることもできない。

22.Rg3+ Kf8 23.Rf3+ Kg7 24.Rg3+ Kf8 25.Rf3+ Kg8

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 チェックの千日手による引き分けである。

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2008年12月29日

チェス500名局(66)

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第1部 開放型

第5章 ルイ・ロペス

第66局

白 タラシュ
黒 ラスカー
(番勝負、1908年)

 ニュルンベルクの博士は番勝負(世界選手権戦)に負けたが、この科学的な試合で組織的な指し方が戦術の達人をも打ち負かすことがあることを示した。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nf6 4.O-O Nxe4 5.d4 Be7

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 この手は慎重な指し方で本手ある。

6.Qe2

 白の圧力を増大させた。6.Re1 Nd6 又は衝動的な 6.d5 Nd6 はそれほど有効でない。6.dxe5 O-O 7.Qd5 Nc5 も黒が白の策動を減速させるのに成功する。

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6...Nd6

 6...d5 は 7.Nxe5 で良くない。6...f5 も 7.dxe5 O-O 8.Nc3 Nxc3 9.bxc3 と清算された後白が圧倒的な態勢になる。

7.Bxc6 bxc6

 この手は 7...dxc6 よりも気が利いている。7...dxc6 は白に素通しのd列を活用される恐れがある。

8.dxe5 Nb7

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 黒陣は窮屈だが耐久性がある。

9.Nc3

 この落ち着いた展開の手は自然な勢いでは 9.c4、9.b3、9.Nd4 及び 9.Be3 のような他の手をすべてしのいでいる。

9...O-O

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10.Re1

 この手は黒が二重ポーンを解消するのを防ぐためである。10...d5 とくれば 11.exd6e.p. Bxd6 とビショップで取らざるを得ない。黒のdポーン突きを防ぐためには 10.Nd4 も良い手である。

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10...Nc5

 10...Re8 は 11.Qc4 でだめだし前述したように 10...d5 も 11.exd6e.p. Bxd6 12.Qc4 で黒の望むところでない。

11.Nd4 Ne6 12.Be3 Nxd4 13.Bxd4

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13...c5

 すぐに 13...d5 と突くと 14.Qe3 から Na4 でc5の地点を完全に封鎖される。リオデジャネイロ戦法と呼ばれている本譜の事前準備の手の重要性は明らかに傑出している。黒は中原で活動を始める前にまずc5の地点の支配を確保する。

14.Be3 d5

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 突くなら今しかない。

15.exd6e.p. Bxd6

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 大局観に基づいた手である。クイーン翼の「弱い枡」にもかかわらず黒には長い斜筋に利いている双ビショップがあるので防御可能のはずである。

16.Ne4

 16.Rad1 の方が(この番勝負の後の試合で指されたように)もっと組織的な手である。しかしそれでも 16...Qh4 17.h3 Bb7 でほぼ互角の形勢である。

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16...Bb7

 これは偉大な戦術家のラスカー博士が相手の意図に気づかなかった極めてまれな例の一つだった。黒は 16...Bxh2+ 17.Kxh2 Qh4+ 18.Kg1 Qxe4 と指すべきだった。

 確かに本譜の手は露骨なわなを含んでいる(17.Nxc5 Bxc5 18.Bxc5 Qg5 で黒勝ち)。しかし黒が局面の内に潜む真の意味を見誤っていた。白は相手の二重ポーンを解消させただけでなく、ためらいなく異色ビショップを許した。それにより白は永続する攻撃し易い目標を黒陣に作り出した。

17.Nxd6 cxd6 18.Rad1

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 ここから直接的で正攻法の捌きが始まる。そこに見られるのは最高レベルの組織的な指し回しである。

18...Qf6

 18...Qb6 でも同様に 19.c4 で黒の出遅れポーンをせき止める。

19.c4 Rfe8 20.Qg4 Bc6

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 この手は 21.Qd7 を防ぎながら 21...Qxb2 を狙っている。

21.Re2 Re4 22.Qg3 Qe6

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 この手は機敏な受けである。(狙いは 23...Rg4 と 23...Qxc4)

23.h3

 何はともあれ 23...Rg4 を防いだ。明らかに 23.Rxd6 は 23...Qxc4 とかわされる。本譜の手の後 23...Qxc4 ならば白は 24.Bh6 g6 25.Rxe4 Qxe4 26.Rxd6 Re8 27.Kh2 と応じ黒に捌かせない。

23...Rd8 24.Red2 Re5

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25.Bh6

 この手に対して 25...Qxh6 ならば 26.Qxe5 である。白は非常にうまい手順で大局的な優位を最もよい条件の下で戦力差に転換した。すぐに 25.Bf4 は 25...Re1+ でそれほど良くない。

25...Qg6 26.Bf4 Re6 27.Bxd6 Qh5

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 この手は 28...Rg6 からの反撃を狙っている。

28.Qg4

 みごとな単純化の手法である。代わりに 28.Bf4 は 28...Qxd1+ 29.Rxd1 Rxd1+ 30.Kh2 Ree1 でやはり白の前途には障害が待ち構える。

28...Qxg4 29.hxg4 Re4 30.Bxc5 Rxd2 31.Rxd2 h5 32.Rd6

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 この手がとどめで白は戦力の優位を保持することができる。例えば 32...Bb7 なら 33.Rd8+ Kh7 34.Rd7 Bc6 35.Rc7 Be8 36.Bxa7 である。従って

黒投了

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2009年01月05日

チェス500名局(67)

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第1部 開放型

第5章 ルイ・ロペス

第67局

白 マーシャル
黒 ラスカー
(番勝負、1907年)

 最後には非常に読みの深い交換損の手筋として際立つことになる一時的な犠牲(13...fxe5)が本局の見どころであり黒の勝利の根底を成す。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nf6

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 以前に述べたようにラスカー博士はその棋歴のほとんどにおいてこのような積極防御にずっと忠実だった。

4.d4

 バリー指法と呼ばれるこの手は非常に創意に富み防御に優れている。ここでの最も有効な手は 4.O-O である。

4...exd4

 危険なポーンを取り除いた。このポーンは 4...Nxe4 5.d5 で面倒を引き起こすかもしれない。

5.O-O

 5.e5 は 5...Ne4 6.O-O Be7 で本譜に戻る。

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5...Be7

 5...d6 は価値の劣る手で 6.Nxd4 Bd7 7.Bxc6 bxc6 8.Qf3 で 9.e5 を狙われる。

6.e5

 この手は中原での圧迫を強めようとしている。一方 6.Nxd4 は 6...O-O 7.Nc3 Nxd4 8.Qxd4 d6 で戦いの熱気が治まる。

6...Ne4 7.Nxd4

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7...O-O

 これは賢明な手である。前の時代に指されたバード対シュタイニッツ戦は熱闘だった。5.e5 Ne4 6.Nxd4 Be7 7.O-O Nxd4 8.Qxd4 Nc5 9.f4 b6
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(うまくはめようとしたがはまったのは黒の方だった)10.f5 Nb3 11.Qe4(11.axb3 は 11...Bc5 ではまる)11...Nxa1 12.f6 Bc5+ 13.Kh1 Rab8 14.e6
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(突撃)14...Rg8(14...fxe6 なら 15.Qxe6+、14...O-O なら 15.e7)15.Qxh7 Rf8 16.exf7+ Rxf7 17.Re1+ Be7 18.Qg8+ Rf8 19.f7# お見事!
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8.Nf5 d5

 明らかに 8...Nxe5 は 9.Qd5 で駄目である。

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9.Bxc6

 白は「双ビショップ」を放棄する必要はなかった。筋の通った手順は 9.Nxe7+ Nxe7 10.f3 Nc5 11.b4 Ne6 12.f4 f5 で、閉鎖的な局面は互角の形勢になり易い。

9...bxc6 10.Nxe7+ Qxe7

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11.Re1

 この手は狙われているポーンを間接的に守ったが(11...Qxe5 なら 12.f3)f2の地点が弱くなった。これは 11.Bf4 f6 も 11.f3 Qc5+ も駄目なので黒の応手によって余計に目立つ。最善の手は 11.Qd4 だろう。

11...Qh4

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11.Be3

 即座に 12.f3 と守る方が落ち着いた手だった。この手に対して黒が 12...Qf2+ と指すのは 13.Kh1 Nc5 14.Be3 で良くない。正着は 12...Ng5 である。

12...f6

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13.f3

 白が黒の応手を見通していたら 13.Nd2 又は 13.g3 と指していただろう。

13...fxe5

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 この重要な対戦(世界選手権戦第1局)にふさわしい読みの入った着想である。

14.fxe4

 14.g3 は 14...Nxg3 15.hxg3 Qxg3+ 16.Kh1 Rxf3 で黒の狙いが受からない。

14...d4

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15.g3

 15.Bd2 なら 15...Qf2+ 16.Kh1 Bg4(取れば2手詰めなので擬似捨て駒である)17.Qc1 Rf6 で黒の攻めが決まる。

15...Qf6

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16.Bxd4

 自ら戦利品を返した。ここでも 16.Bd2 は 16...Qf2+ 17.Kh1 Bh3 18.Rg1 Bf1(19...Be2 から20...Bf3+ の狙い )で白が早く負ける。

16...exd4 17.Rf1 Qxf1+

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 この機に抜け目なく清算を行なった。

18.Qxf1 Rxf1+ 19.Kxf1

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19...Rb8

 非常に参考になる場面である。当然そうだが効果が非常に劣る 19...Ba6+ や 19...Bh3+ の代わりにルークが孤軍奮闘する。

20.b3 Rb5

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 4段目の制圧が非常に効果的な場合がよくある。

21.c4 Rh5 22.Kg1 c5 23.Nd2 Kf7 24.Rf1+ Ke7 25.a3

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25...Rh6 26.h4 Ra6 27.Ra1 Bg4 28.Kf2 Ke6 29.a4 Ke5

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 この局面の決定的な要素は黒の駒、特にキングの動きが非常に活発なことである。

30.Kg2 Rf6 31.Re1 d3 32.Rf1 Kd4 33.Rxf6 gxf6

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 ナイト+ポーン対ビショップ+ポーンのこの収局で白は手詰まりの犠牲者になる。

34.Kf2 c6 35.a5 a6

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36.Nf1

 36.Ke1 は 36...Ke3 で悲しい例となる。

36...Kxe4 37.Ke1 Be2 38.Nd2+ Ke3 39.Nb1 f5 40.Nd2 h5 41.Nb1 Kf3 白投了

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2009年01月12日

チェス500名局(68)

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第1部 開放型

第5章 ルイ・ロペス

第68局

白 ピルズベリー
黒 ポロック
(ヘースティングズ、1895年)

 本局特有の見どころは大局観に基づいて次から次へと捨てるポーンの数が異常に多いことである。25手目から40手目まで白はポーン損で指している。戦いはクイーン無しで行なわれたが白キングは驚くべき多様性を発揮した。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6

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 モーフィー防御の不可解性は専門家でもまだ計りかねているところである。

4.Ba4 Nf6 5.O-O

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5...Nxe4

 この「開放防御」によって(5...Be7 による「閉鎖防御」やその他の手法の代わりに)黒は直ちに自分の主導権の分け前を主張する。

6.d4

 e列を突き崩すために新たな主人公を導入した。6.Re1 や 6.Qe2 のような直接策はどちらも 6...Nc5 ですぐに互角の形勢になってしまう。

6...b5 7.Bb3 d5

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8.dxe5

 8.Nxe5 Nxe5 9.dxe5 Bb7 は意欲が足りない。

8...Be6

 黒は中原での駒組に信頼をおいている。8...Ne7 でdポーンを守るのはもっと不自然である(9.a4 Rb8 10.axb5 axb5 11.Nd4)。

9.c3

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 この手はd4の地点の強化と 9...Na5 又は 9...Nc5 の場合に 10.Bc2 を用意して「スペインビショップ」を温存する二重の目的がある。

9...Be7

 この用心深い手で開放防御の「標準局面」に至る。白は害毒の程度の差はあるが多くの選択肢がある(10.Re1、10.Nbd2、10.Qe2、10.Be3、10.Bf4、さらには特に正当性もなくeポーンを見捨てる 10.Nd4 もある)。

10.Re1

 この手は 11.Nd4 の準備である。

10...O-O 11.Nd4

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11...Nxd4

 この手は痛ましいタラシュの罠(11...Qd7 12.Nxe6 から 13.Rxe4 で白勝ち)にはまらないだけでなく次のブレスラウ戦法の種々の変化も避けている。11...Nxe5 12.f3 Bd6 13.fxe4 Bg4 14.Qd2 Qh4 黒の捨て駒の最終結論はまだ完全には解明されていない。

12.cxd4

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12...Bf5

 黒は困った時のためにナイトの逃げる枡を予約した。これは通常は 12...h6 で行なうがそれでも白は戦場の主人のままである(13.f3 Ng5 14.Nc3)。

13.f3 Ng5 14.Nc3 c6

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15.g4

 落ち着いた 15.Be3 に満足しない白は速戦即決を求めた。

15...Bc8 16.f4 b4

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 e4の地点を争っている。

17.Na4 Ne4 18.f5 Bg5 19.Qf3 Bxc1 20.Raxc1 Qh4

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21.Re2

 もっと慎重な受けの 21.Re3 を放棄した。

21...Ng5

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22.Qg3

 22.Qg2 Nh3+ 23.Kh1 Nf4 から分かるようにこの受けは絶対である。

22...Qxg3+ 23.hxg3 Nf3+ 24.Kf2 Nxd4

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 良好なポーンが落ちてしまった。しかし白は(恐らく既に21手目の時に)はるか先まで見通していたに違いない。白の全局に及ぼすことのできる圧力は戦力損を補って余りある代償である。

25.Rd2 Nxb3 26.axb3

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26...Bb7

 26...Bd7 なら 27.Nb6 Rad8 28.Nxd7 Rxd7 29.Rxc6 で白が優勢である。

27.Nc5 Bc8

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28.Ke3

 この手と後続の手でシュタイニッツの「キングは強い駒である」という金言を地で行った。もっとも 28.Nd3 では 28...g6 で黒にキング翼で事を起こされる。

28...h5 29.Kf4 g6 30.Kg5 Kg7 31.f6+ Kh7 32.Nd3 Bxg4

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 黒はまだポーン得である。

33.Rxc6 Rfe8 34.Rc7 Kg8 35.Kh6 Bf3

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 敵キングを利する手である。

36.Re7 Kf8

 黒は 36...Rxe7 37.fxe7 Re8 という別の受けを試みることもできた。

37.Rxe8+ Rxe8 38.Kg5

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 eポーンを守るために白キングが戻ってきた。

38...Be4 39.Kf4

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39...Rc8

 黒はこの手を過大評価していた。ここは 39...g5+ 40.Kxg5 Bxd3 41.Rxd3 Rxe5+ 42.Kf4 Re6 というように単に自己の安全に努めるべきだった。

40.Nxb4 Rc5 41.Nxa6 Rb5

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42.Ke3

 これで白キングは中原へ働きに行く。42.b4 は 42...Rb6 でポーンを取り返される。

42...Rxb3+ 43.Kd4 Rxg3

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 黒はまたポーン得になったが白が優勢であることには変わりない。

44.Nc5 h4 45.b4 h3 46.Ra2 Kg8 47.Ra8+ Kh7 48.e6

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 前線を突破した。

48...fxe6 49.Nxe4 dxe4 50.f7 Rf3 51.f8=Q Rxf8 52.Rxf8

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 チェスを勉強している人たちは1手の差で勝敗が決するのを目の当たりにすることができる。

52...g5 53.Kxe4 g4 54.Rf1 e5 55.b5 g3 56.Rh1 黒投了

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2009年01月19日

チェス500名局(69)

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第1部 開放型

第5章 ルイ・ロペス

第69局

白 アリョーヒン
黒 ルビーンシュタイン
(ビルナ、1912年)

 本局で黒の敢行した排除の手筋(19...Rxf3)はキングの安全性にとって「ナイトの守備」がいかに大切であるかを如実に示している。この排除によってキング翼の防備が完全に壊滅した。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Nxe4 6.d4 b5 7.Bb3 d5 8.dxe5 Be6 9.c3 Be7 10.Nbd2

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 居座っている邪魔なナイトを取り除こうとするこの姿勢は好ましい。

10...Nc5

 10...Nxd2 は 11.Bxd2 Na5 12.Nd4 から f4 で白が絶好の攻撃態勢を布く。黒の最善の方策は 10...O-O で、冷静に事態の進展を待つことである。

11.Bc2

 「攻撃ビショップ」を温存する手だが、11.Nd4 も非常に良い手である。

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11...Bg4

 この機会に 11...d4 で弱いポーンを消去しようとするのは 11.Ne4 で白が有望である。

12.h3

 ここでの最も理にかなった手は当たりのeポーンを守る 12.Re1 である。

12...Bh5

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13.Qe1

 ここでも 13.Re1 なら白が非常に好調だった。例えば 13...Qd7 なら 14.Nb3、また 13...d4 でも 14.Nb3 である。

13...Ne6 14.Nh2 Bg6

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 この予防手は白の 15.f4 で陣地を広げようという意図を予期したものである。

15.Bxg6 fxg6

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 この手は先まで見越した戦略である。黒はh列でなくf列が作戦の基盤として必要となると認識した。

16.Nb3

 16.f4 なら 16...d4 である。

16...g5 17.Be3 O-O 18.Nf3 Qd7

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19.Qd2

 白はg5のポーンを取ろうとして黒の狙いに十分な注意を払わなかった。良い手は互角の形勢に持ち込むための 19.Nfd4(19...Nxe5 なら 20.Bxg5)だった。

19...Rxf3

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 これは色々な利得のある手である。白キングの守りに不可欠な駒を取り除き、交換損の代わりにポーンを得、加えて敵キングの陣形を乱している。

20.gxf3 Nxe5 21.Qe2 Rf8 22.Nd2 Ng6 23.Rfe1 Bd6

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24.f4

 24.Qf1 なら 24...Nef4 である。

24...Nexf4 25.Qf1 Nxh3+

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 これで黒は交換損に対して攻勢に立っているだけでなく3個目のポーンを得た。このような状況では白の敗勢は免れ難い。

26.Kh1 g4 27.Qe2 Qf5 白投了

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2009年01月26日

チェス500名局(70)

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第1部 開放型

第5章 ルイ・ロペス

第70局

白 ボトビニク
黒 エーベ
(レニングラード、1934年)

 達人同士のこの対戦では狙いとしのぎがほどよく保たれていた。現代の幾人ものマスターたちの特色が良く現れている試合である。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Nxe4 6.d4 b5 7.Bb3 d5 8.dxe5 Be6 9.c3 Be7 10.Nbd2

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10...O-O

 黒は 10...Nxd2 や 10...Nc5 と性急に応じるのを避け冷静に事態を見守っている。というのも黒は 11.Nxe4 から生じる乱戦を恐れる必要がないからである。以下は 11...dxe4 12.Bxe6 exf3 13.Bd5 Nxe5 14.Bxa8(14.Bxf3 なら 14...Nxf3+ 15.Qxf3 でどちらも指せる)14...Qxa8 15.g3 Qc8
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で黒が勝勢である。

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11.Qe2

 このトマス攻撃により白はe4の地点をめぐる局地戦を続行する。この攻撃は 11.Re1 又は 11.Bc2(11...Nxd2 12.Qxd2 f6 13.exe6 Bxf6 で互角)の場合よりも熾烈である。

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11...Nc5

 11...Nxd2 12.Qxd2 による単純化は黒がやりにくいので論争を避けた。しかし最良の方針は 11...Bf5(12.Rd1 Na5 13.Nd4 Bg6 14.Nxe4 Bxe4)