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キングズ・ギャンビット アーカイブ

2006年05月09日

「キングズ・ギャンビットの不思議」第1回

初めに

この最も物議をかもす戦法は時代と共に大きく変容して
きました。それは1950年頃までの過去100年間で外見の
変化が顕著だった良い実例です。

19世紀においても多様な見解がありました。穏健な考え
方のスタントン(Staunton)はキングズ・ギャンビットを「最も
難解で美しい手筋を産み出す賞賛すべき戦法」と称えて
いました。他方メーソン(Mason)は自著の「Art of Chess」
(チェスの技法)で「概してこれらのギャンビット類は正当な
戦法とはみなされておらず、結果的に今日の実戦ではあ
まり大した地位を占めていない」と書いています。

今日ではメーソンの見解を指示する人が多数派になって
います。もっと洞察力のある人たちはブラックバーン
(Blackburne)の見解に同調しています。彼は「現在のとこ
ろキングズ・ギャンビットは重要な大会ではめったに指され
ない。それは重要なものが賭かっている時には、わざわざ
この戦法につきものの訳の分からない危険がいっぱいの
局面に跳び込んで行こうという者はほとんどいないことに
ある。従って他の者たちより冒険心のある者がこの戦法を
やろうとしても相手は数ある拒否の戦型を選択する策にで
るのが普通である。」と書いています。

実際多くの著名な選手たちは簡単に対処できるという考
えのもとにギャンビットを見下していました。しかし本当に
そうでしょうか?これは独りよがりにより、容易に解決でき
ない問題を避けたいという人間の精神の潜在的な怠慢か
ら引き起こされたものです。このギャンビット退治の問題
は何人かの名手達によって研究されました。彼らの結論
は考えているほどには布局の問題を簡単に解決すること
はできないというものでした。布局から指せる局面に至る
には黒は複雑で危険を伴う防御を採用するか、又はより
安全な防御型の見返りに白に永続的な主導権を与えな
ければなりません。

昔のキングズ・ギャンビットの指法には多くの偏見があり
ました。しかし1920年代にはルビーンシュタイ(Rubinstein)
とタルタコーワ(Tartakower)、続いて1930年代にはシュト
ルツ(Stoltz)、そして1940年代にはケレス(Keres)とブロン
シュテイン(Bronstein)が、キングズ・ギャンビットが大局
的に指せる戦法であることを実証しようとしてきました。彼
らの幾つかの努力により、19世紀にこの戦法に付きまとっ
ていた魅惑と神秘のベールをが今日ようやく取り払われつ
つあります。しかし今日でもまだ真実は不透明なままです。

第1章 キングズ・ギャンビット受諾

キーゼリツキー・ギャンビット

【第1局】アンデルセン(A.Anderssen) - キーゼリツキー(L.Kieseritzky)
ロンドン、1851年

  1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Nf3 g5 4.h4 g4 5.Ne5 h5

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キーゼリツキー推奨のこの手は g4 のポーンの保持が目
的で黒の陣型の維持には欠かせません。この手の評価
は当時は確固としたものでした。

  6.Bc4 Rh7 7.d4

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  7...d6

ブロンシュテイン(Bronstein)対ドゥビーニン(Dubinin)戦(ソ
連選手権戦、1947年)で黒は 7...Bh6 と指し、以下 8.Nc3
Nc6 9.Nxf7! Rxf7 10.Bxf7+ Kxf7 11.Bxf4 Bxf4 12.O-O
Qxh4 13.Rxf4+ Kg7 14.Qd2 d6 15.Raf1 Nd8 16.Nd5 Bd7
17.e5! dxe5 18.dxe5 Bc6 19.e6! Bxd5 20.Rf7+ Nxf7
21.Rxf7+ Kh8 22.Qc3+ Nf6 23.Rxf6 と進み 27 手目で
黒の投了となりました。ドイツの名手のアンデルセンより
も積極果敢な攻撃で、アンデルセンの手は最強手ではあ
りませんでした(次の手の解説を参照)。

  8.Nd3

緩手です。シュレヒター(Schlechter)によればここでもビ
ショップを f7 で切るのが決め手でした。

  8...f3

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  9.g3

この手もキーゼリツキーの推奨手です。しかし今日では緩
手と考えられていて、正着はスタントンの発案で、現代の
「Larobok i Schack」(訳注 スウェーデンの Collijn の名著)
が保証している 9.gxf3 Be7 10.Be3 Bxh4+ 11.Kd2 gxf3
12.Qxf3 です。

  9...Be6

受けの好手で後にキングズ・ギャンビットのフィリドール
(Philidor)防御で採用されました。白はセンター・ポーンの
固定化を余儀なくされます。

  10.d5 Bd7 11.e5 dxe5 12.Nxe5 Bd6 13.Bf4 Ne7

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  14.O-O Bf5 15.Nc3 Nd7 16.Nxd7 Qxd7 17.Bb5 c6
  18.dxc6 Bc5+

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キーゼリツキーは巧妙な防御によりセンター列での白の
攻撃の可能性をすべて排除しました。面白いことに現代
の見解としてスタントンは黒の 18 手目を「このチェックが
できたことは黒にとって幸運だった」と評していました。こ
の手がキーゼリツキーの当初からの防御の構想だったと
スタントンが考えていなかったことは明らかです。今日で
はこのチェックは防御の戦術の一部として特に言及され
ないでしょう。

  19.Kh2 bxc6 20.Bd3 Bxd3 21.cxd3 f5 22.Re1 Rd8
  23.Qa4

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  23...f2

スタントンは 23...Qb7 の方が優ると考えていました。しか
しその手に対しては 24.Qc2 で Re6 又は Na4 を狙う手が
あり黒の応手が難しくなります。従ってクィーンの交換を狙
うキーゼリツキーの手の方が今日の指し方とはるかに調
和しています。

  24.Re2 Kf8 25.Be3 Bxe3 26.Rxe3 Qd4 27.Qxd4 Rxd4
  28.Rf1 f4 29.Rxf2 Nf5!

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上手いナイトの捌きで、ラスカーの指し方をほうふつとさせ
ます。黒はポーンを返して白の攻撃力を削ぎポーンの優
勢を強調します。

  30.Ne2!!

アンデルセンも「目には目を」で迎え撃ちます。当面の負
けを免れるにはこの手しかありません。興味深いのは黒
の次の手の後キングを含む両者のすべての役駒が戦闘
に関わってくる有様です。局面はまるでプロブレムのよう
な構造を呈しています。

  30...Rf7

この手で有利なルーク収局になります。30...Nxe3 とルー
クを取るのは 31.Nxd4 f3 32.Nxc6 Rc7 33.Ne5 Rc1
34.Nxf3! Nd1 35.Rf1 gxf3 36.Rxf3+ Kg7 37.Rf5 となり黒
が駒得ですが勝つ可能性はありません。

  31.Re5

31.Nxd4 は 31...fxe3 32.Rxf5 Rxf5 33.Nxf5 e2 で白が負
けてしまいます。

  31...fxg3+ 32.Nxg3 Nxg3 33.Rxf7+ Kxf7 34.Kxg3

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  34...Rxd3+ 35.Kf4 Rd4+ 36.Kg3 Rd5 37.Re3 Kf6
  38.Rc3 c5 39.Ra3

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  39...Kf5!

黒はルーク収局を上手く指し回してきました。39...Rd7 と
消極的に守るよりも本譜のようにキングを活用するのは現
代の指し方と同じです。

  40.Rxa7 Rd3+ 41.Kf2 Rd2+ 42.Kg3 Rxb2

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  43.Rg7!

唯一のチャンスです。43.Rc7 Rc2 44.a4 Rc3+ は白の敗
勢です。

  43...c4 44.Rg5+ Ke4 45.Rxh5 c3 46.Rc5 Kd3

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  47.Kxg4

この手は疑問手です。正着はすぐに 47.h5 と突く手でした。

  47...Rb4+ 48.Kg5 Rc4 49.Rd5+ Ke2 50.Re5+

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  50...Kf2

50...Kf1 と逃げると 51.Rf5+ Kg1 52.Re5 から53.Re1 で
黒のポーンが止まります。

  51.Rb5 Kg3

51...c2 は 52.Rb2 の後 Rxc2 から h5 です。

  52.Rb1 Rc5+

これは悪手です。52...Rxh4 なら黒の勝ちでした。

  53.Kf6 Kf4

53...Kh4 とポーンを取ると 54.Ke6 で引き分けです。

  54.Rc1 Ke4 55.Rxc3 1/2-1/2

(Fritz9 の分析によると 55...Rxc3 で黒の勝ちです。55.h5
又は 55.Kg6 なら引き分けです。)

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2006年05月12日

「キングズ・ギャンビットの不思議」第2回

第1章 キングズ・ギャンビット受諾

ベルリン防御

【第2局】ロザネス(Rosanes) - アンデルセン(A.Anderssen)
ブレスラウ(Breslau)、1863年

  1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Nf3 g5 4.h4 g4 5.Ne5 Nf6

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このいわゆる「ベルリン防御」は当初のキーゼリツキー
(Kieseritzky)戦法に取って代わりました。それは g5 の
ポーンを間接的に守ることができること(又はもし取られた
場合でも十分な代償が得られること)そして白のセンターに
圧力をかけることができることが実証されたことによるもの
です。黒の防御法の発展の中で重要な地歩を占めていま
す。

  6.Bc4

この本能的な手はルビーンシュタイン(Rubinstein)が改良
版の 6.d4 を提唱(第6局を参照)するまで 70 年近くの間
採用されてきました。

  6...d5 7.exd5 Bd6 8.d4 Nh5

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  9.Bb5+

この手は良い手ではありませんが、それでもその不当性
を証明するにはアンデルセンの天才を必要としました。し
かし 19 世紀の批評家たちによって広められたのと同じ
理由、即ち「具体的な有利が得られなければ他の役駒が
展開できていない時に布局で同じ役駒を2度動かしては
いけない」という昔からの金言でこの手を批判することは
できません。今日ではこの手は有利な収局という長期的
な目的は早まった攻撃の要求を上回るという現代の考え
方により批判の対象になります。付け加えると黒の g5 の
ポーンは間接的に守られています。もし白が 9.Nxg4 と
ポーンを取ると 9...Ng3! 10.Rh2 Qe7+ 11.Kf2 Rg8 で黒の
勝ちです。

  9...c6 10.dxc6

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  10...bxc6

アンデルセンの素晴らしい大局観が良く現われています。
以前にモーフィー(Morphy)は 1858 年の対ハルビッツ
(Harrwitz)戦で 10...O-O と指し以下 11.cxb7 Bxb7
12.Qxg4+ Ng7 13.Bxf4 と進み白ははるかに良い形勢で
した。

  11.Nxc6 Nxc6 12.Bxc6+

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  12...Kf8!

すべてを見通した好手です。12...Bd7 は 13.Bxd7+ Qxd7
14.O-O で白の指せる局勢です。

  13.Bxa8 Ng3

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  14.Rh2

14.Kf2 は 14...Nxh1+ 15.Qxh1 g3+ 16.Ke1 Qe7+ 17.Kd1
Bg4+ 18.Bf3 Bxf3+ 19.gxf3 Rg8 20.Qg2 Rg6! 21.Nc3 Rh6
22.Ne2 Rxh4 23.Bd2 Rh2 で黒の勝ちです。

  14...Bf5 15.Bd5 Kg7! 16.Nc3 Re8+ 17.Kf2 Qb6

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18...Be5 を狙っています。

  18.Na4 Qa6

今度は 19...Qe2+! を狙っています。

  19.Nc3

19.c4 は 19...Qxa4 20.Qxa4 Re2+ 21.Kg1 Re1+ 22.Kf2
Rf1# で詰みです。

  19...Be5 20.a4

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  20...Qf1+ 21.Qxf1 Bxd4+ 22.Be3 Rxe3 23.Kg1 Re1#
  0-1

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2006年05月15日

「キングズ・ギャンビットの不思議」第3回

第1章 キングズ・ギャンビット受諾

モーフィーの攻撃強化策

【第3局】モーフィー(P.Morphy) - メドレー(G.W.Medley)
ロンドン、1858年

  1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Nf3 g5 4.h4 g4 5.Ne5 Nf6
  6.Bc4 d5 7.exd5 Bd6 8.d4 Nh5 9.Nc3!

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1850 年から 1860 年にかけて 9.Bb5+ が一貫して用い
られ研究されてきました。モーフィーのこのシンプルに展
開する手は非常に穏やかな手で新手に当たるとはとても
信じられません。しかし権威あるビルガー(Bilguer)の
「Handbuch des Schachspiels」(チェスのハンドブック)に
新手であると記述されています。見かけは単純な手です
が秘めた攻撃力が隠されています。例えばレーベンター
ル(Lowenthal)の推奨する 9...Ng3 には 10.Bxf4 Nxh1
11.g3 Qe7 12.Qd2 f6 13.O-O-O fxe5 14.dxe5 Bb4
15.d6 という応手があります。

  9...Bf5

この手は弱手です。ラスカー(Lasker)の研究によると黒に
は指せる手が2種類ありました。
(a) 9...Qe7 (10.O-O? Bxe5 11.dxe5 Qxc5+ により白の
キャッスリングを妨げています) 10.Bb5+ c6 11.dxc6 bxc6
12.Nd5 Qe6 13.Nc7+ Bxc7 14.Bc4 Qf5 15.Bxf7+ Qxf7!
(15...Kf8 は 16.Bxh5 Bxe5 17.dxe5 Qxe5+ 18.Qe2 Qxh5
19.Bxf4 Bf5 20.O-O で白良しです) 16.Nxf7 Kxf7 でクィー
ン対小駒3個の駒割りで黒良しです。
(b) 9...O-O (アンデルセン(Anderssen)の研究) 10.Ne2
Re8 11.N2xf4!(ブラックバーン(Blackburne)の推奨) Bxe5
(11...Nxf4 12.Bxf4 Nd7! の方が勝ります。) 12.Nxh5 Bg3+
13.Kf1 Re1+ 14.Qxe1 Bxe1 15.Bg5 Qd6 16.Rxe1 Bd7
17.Re5 h6 18.Be7 Qb6 19.Nf6+ Kg7 (19...Kh8 20.Rg5)
20.Bd3 Qxd4 21.Rg5+ hxg5 22.hxg5 Qf4+ 23.Ke2 Qe5+
24.Kd1 Qxe7 25.Rh7+ で詰みになります。

面白いけれどちょっとトリッキーな変化です。モーフィーの
9.Nc3 が後により論理的で落ち着いた 9.O-O Qxh4
10.Qxe1 Qxe1 11.Rxe1 O-O 12.Bd3! (互角の形勢です)
に取って代わられたのも驚くには当たりません。

  10.Ne2 Qf6 11.N2xf4 Ng3 12.Nh5!

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天才の閃きの攻撃手です。この手を発見するのは難しく
ないかもしれませんが、9.Nc3, 10.Ne2, 11.N2xf4 という
モーフィーの素晴らしい駒捌きの骨子になっていることは、
後にキングズ・ギャンビットの同様の局面で一様に採用
されたことと相まって特筆すべきことです。

  12...Nxh5 13.Bg5

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  13...Bb4+

正着は 13...Qg7 14.O-O Ng3 15.Rxf5 Nxf5 16.Qxg4 で
マローツィ(Maroczy)によれば攻撃は本譜のように簡単に
はいかなかっただろうとのことでした。

  14.c3 Qd6 15.O-O Ng7 16.Rxf5 Nxf5 17.Qxg4 Ne7
  18.Re1 h5

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この手は緩手です。

  19.Qf3 Rh7 20.Bb5+ c6 21.dxc6 bxc6 22.Nxc6 Nbxc6

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  23.Bxc6+ Kf8 24.Bxe7+ Qxe7 25.Rxe7 Bxe7 26.Bxa8
  1-0

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本局では 9.Bb5+ が絶頂期だった時に布局に対するモー
フィーの先入観のない指法の好例が見られました。モー
フィーが現代定跡を研究していたのは確かですが(しかも
最善手を採用していました)独自の客観性も持ち合わせて
いました。それはラスカーやカパブランカ(Capablanca)の
ような偉大な選手たちに見られる特質でもあります。

2006年05月18日

「キングズ・ギャンビットの不思議」第4回

第1章 キングズ・ギャンビット受諾

パウルセン防御

19 世紀後半を席巻したシステムを創案したのは「防御の
名人」ルイス・パウルセン(Louis Paulsen)でした。彼はど
んなギャンビットに対しても受けきることができると言い放
ったと言われています。彼にしてみればギャンビットを拒
否することは弱さの現われでした。

攻撃の武器としてのフィアンケット・ビショップの威力を最
初に認識したのはスタントン(Staunton)でしたが、白のセ
ンターへ圧力をかけることのできる防御部隊として導入し
たのはパウルセンでした。

定跡の知識が格段に増えた今日では種々の変化が当
たり前のこととして受け入れられているので彼の構想の
斬新さを把握するのは簡単ではありません。一つの例と
して今では布局の嵌め手として良く知られている短手数
局を紹介します。この試合は新システムの初期の実戦
例の一つです。

白 不詳 - 黒 パウルセン
  1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Nf3 g5 4.h4 g4 5.Ne5 Bg7!

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この手は一見したところ、元の形を保持するのが普通の
黒のキング側ポーンを白が崩すのを許すので、棋理に反
した手のように見えます。

  6.Nxg4 (正着は 6.d4) d5! 7.exd5? (ここでも正着は
  7.d4) Qe7+ 8.Kf2 Bd4+ 9.Kf3 Bxg4+ 10.Kxg4 Nf6+
  11.Kh3 Qd7+ 12.Kh2 Ng4+ 13.Kh3 Nf2+

で黒の勝ちです。

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【第4局】シュタイニッツ(W.Steinitz) - ツカートルト(J.J.Zukertort)
ウィーン(Vienna)、1882年

  1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Nf3 g5 4.h4 g4 5.Ne5 Nf6
  6.Bc4 d5 7.exd5 Bg7

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  8.Nc3 O-O 9.d4 Nh5 10.Ne2 c5

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この手はパウルセンの防御システムの眼目手です。黒は
白のセンターに対して速攻を開始します。このようにロマ
ンチックなキングズ・ギャンビットの戦いでも他のすべての
布局定跡と同様の原則が適用されているのを見ることが
できます。

  11.c3

もっと複雑な反撃の 11.Nxg4 については次局で採り上げ
ます。

  11...cxd4

この手は最も単純な応手です。パウルセンの推奨した
11...b5 も良い手ですが非常に複雑な戦いになります。
シュピールマン(Spielmann)対レオンハルト(Leonhardt)
戦(番勝負、ミュンヘン(Munich)、1906年)では 11...b5
12.Bb3 c4 13.Bc2 Qxd5 14.N2xf4 Nxf4 15.Bxf4 f6
16.Nxg4 Qxg2 17.Nf2 Re8+ 18.Be5 Bg4! と進みました。

  12.cxd4 Nd7

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  13.Nxd7

白は他に良い手がありません。13.N2xf4 とポーンを取る
のは 13...Ng3 14.Ne6 fxe6 15.dxe6 Kh8 で黒の勝勢です。

  13...Bxd7 14.Qd3 Rc8 15.Nxf4 Re8+ 16.Kd1

16.Kf1 とこちらに逃げるのは 16...Qf6 が厳し過ぎます。

  16...b5!

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この手が決め手となりました。17.Bxb5 とこのポーンを取
ると 17...Rxc1+ 18.Rxc1 Nxf4 で黒の勝ちです。

  17.Nxh5 bxc4 18.Qa3 Bxd4 19.Bd2 Qb6 20.Bc3 Re3
  21.Re1 Bxc3 22.Rxe3 Qxe3

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  23.bxc3

23.Qxc3 とクィーンで取ると 23...Ba4+ で決まります。

  23...Qg1+ 24.Kd2 Qxg2+ 25.Ke3 Re8+ 26.Kd4 Qe4+
  27.Kc5 Qe7+ 28.d6 Qe5+ 29.Kxc4 Qe4+ 30.Kb3 Rb8+
  31.Qb4 Rxb4+ 32.cxb4 Qd3+ 33.Kb2 Qd4+ 0-1

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2006年05月21日

「キングズ・ギャンビットの不思議」第5回

第1章 キングズ・ギャンビット受諾

ブラックバーンの貢献

ツカートルト(Zukertort)は黒が首尾よく白のセンターを攻
撃し破壊することができることを証明しました(前局を参照)。
これはパウルセンの優れた防御の構想を裏打ちしていま
す。ツカートルトの対シュタイニッツ戦の勝利は長期に渡る
影響がありました。それはガンズバーグ(Gunsberg)やそ
の他の者によってキーゼリツキー(Kieseritzky)・ギャンビッ
トへの反駁であるとみなされました。

その後ブラックバーン(Blackburn)は白にとって非常に重
要な新構想を披露しました。それは本局に最も良く現わ
れています。

【第5局】シュタイニッツ(W.Steinitz) - シュレヒター(K.Schlechter)
ウィーン(Vienna)、1897年

  1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Nf3 g5 4.h4 g4 5.Ne5 Bg7
  6.d4 Nf6 7.Bc4 d5 8.exd5 O-O 9.Nc3 Nh5 10.Ne2 c5
  11.Nxf4

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これがブラックバーンの新機軸です。白はセンターを保持
しようとせず、黒の幾分散漫なポーンの形を乱そうとして
います。それこそがこの戦型の中心的な構想です。

  11...Ng3 12.Ne6

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  12...fxe6

ブラックバーン対パウルセン(L.Paulsen)戦(ウィーン、1873
年)では 12...Bxe6 13.dxe6 Nxh1 14.Qxg4 Qxd4 15.exf7+
Kh8 16.Qxd4 cxd4 17.Bf4 Nc6 と進み、ここで白が(実戦
の 18.Nd7? の代わりに) 18.Nxc6 と指していれば有利な
形勢でした。

  13.dxe6 Bxe6 14.Bxe6+ Kh8 15.Qxg4 Nxh1 16.Be3

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  16...cxd4

黒は 16...Nc6 17.Nxc6 bxc6 18.Rd1 Qc7 と指すほうが
簡明でした。

  17.Bxd4 17...Qxd4!

ハッとさせるクィーン切りです。黒の防御戦略はこの手に
かかっていました。そして形勢はほぼ互角のはずでした。

  18.Qxd4 Nc6

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  19.Nxc6

この手は仕方がありません。19.Qg1 とクィーンを引くのは
19...Bxe5 20.Qxh1 Bg3+ 21.Kd2 Rad8+ となり、白のクィー
ンが遊んでいるので本譜よりも黒の攻撃が強力です。

  19...bxc6

致命的な悪手です。黒は形勢を楽観していました。
19...Bxd4 20.Nxd4 Ng3 21.O-O-O なら互角の形勢でした。

  20.Qc4 Rab8

20...Nf2 なら 21.Ke2 です。

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  21.O-O-O

この手は最善手です。21.c3 は 21...Nf2 が非常に強力な
手になります。

  21...Bxb2+ 22.Kd2 Nf2 23.Rb1 Rad8+ 24.Ke2 Bg7
  25.Rb7!

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この手は後に分かるように受けに重要な役目を果たします。

  25...Rd4 26.Qxc6 Re4+ 27.Kd2 Rd4+ 28.Ke3

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  28...Nd1+

28...Re4+ は 29.Qxe4 と切られてダメです。

  29.Ke2 Bh6 30.Bf7!

30...Rf2+ からの詰みを防いでいます。

  30...Rfd8 31.Qxh6 1-0

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熱戦でしたが今日の試合ではあまり見られない波乱万丈
の展開でした。しかし評価に当たってはこの試合が 19 世
紀の巨匠たちの得意戦法に含まれる戦型から発展した試
合であるということを忘れてはなりません。当時の研究や
実戦に見られるように難解な戦術が主流だったので、昔の
達人たちが今日の我々よりもはるかに速くこの種の込み
入った局面を正しく判断する能力は高く評価できます。

2006年05月24日

「キングズ・ギャンビットの不思議」第6回

第1章 キングズ・ギャンビット受諾

キーゼリツキー・ギャンビットの現代の指法

今日ではキーゼリツキー・ギャンビットはほとんど指される
ことがなくなっているので、現代ではどのように指されてい
るのかを語ることは至難になっています。1914年にバーデ
ン・バイ・ウィーン(Baden bei Wien)で開催された最後の
ギャンビット大会では全く指されませんでした。それは恐
らく黒が難なく有利になるとみなされていたためでしょう。

第一次世界大戦後の布局に対する偏見なき取り組みと
いうべき見解の変化はキングズ・ギャンビットにも影響を
与えました。シュピールマン(Spielmann)はかつてレティ
(Reti)やルビーンシュタイン(Rubinstein)と共に「Larobok
i Schack」を改訂するよう依頼され、キングズ・ギャンビッ
トのところに来た時少し新しい変化を書き足せば済むと
予想していたところ、すぐに文中の古い変化の多くが現
代の見方と相容れないので全く新しい観点から布局の
分析を行なう必要があったと語っていました。ルビーン
シュタインは黒の仮想的な弱点の f7 を狙うための白の
6.Bc4 は 6...d5 によって攻撃が頓挫してしまうので正着
ではないと考えました。それゆえに彼は白がすぐに黒の
キング側のポーンの形を崩すのを推奨しました。これは
フィリドール(Philidor)の古い研究に基づいた構想です。
彼の提唱は革新的でしたが耳を貸すものはほとんどいま
せんでした。それは多分本がスウェーデン語でだけ出版
されたことと、この布局が一般的に不人気だったことに帰
せられます。

本局はルビーンシュタインの推薦を例証する本当に唯一
の試合です。

【第6局】シュトルツ(G.Stoltz) - ゼーミッシュ(F.Samisch)
スヴィーネミュンデ(Swinemunde)、1932年

  1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Nf3 g5 4.h4 g4 5.Ne5 Nf6 6.d4

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この簡明な手はルビーンシュタインの構想に沿ったもの
です。白は自分のセンター・ポーンを犠牲にしても黒の f
ポーンを取り払おうとします。

  6...d6 7.Nd3 Nxe4 8.Bxf4

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  8...Qe7

黒はフィリドールの研究手順を踏襲しています。ルビーン
シュタインはここで 8...Bg7 9.c3 O-O 10.Nd2 Re8 11.Nxe4
Rxe4+ 12.Kf2 Qf6 13.g3 Bh6 14.Be2 という変化手順を紹
介し白が有利であるとしています。

  9.Qe2 Bg7 10.c3

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  10...h5

黒は危険に気付いていません。ポーン得で安泰で、いつ
でも強制できるクィーン交換によって白の予想される攻撃
を撃退できるのものと楽観しています。この手の代わりに
10...Bf5 としてクィーン側へのキャッスリングを目指してい
れば安全でした。

  11.Nd2!

ポーン損の白が自分からクィーンの交換を迫ってくること
を全然予期していなかった黒にとってこの手は全く意表の
手だったに違いありません。フィリドールはここで 11.g3 を
推奨していて 11...d5 12.Bg2 c5 13.Nd2 Be6 で黒が有利
としています。

  11...Nxd2 12.Kxd2 Qxe2+ 13.Bxe2

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  13...Bf5

13...O-O ならば 14.Be3! Bf5 15.Nf4 Bg6 16.Nd5! です。

  14.Rhf1 Nd7

14...Nc6 と展開すると 15.Bg5! Bg6 16.Nf4 O-O 17.Bd3!
Bxd3 18.Nxd3 f6 19.Be3 Kf7 20.Nf4 Rh8 21.Nd5 Rac8
22.Bg5 と攻撃が続きます(ベッカー(Becker)の研究)。

  15.Nb4 Nf6 16.Bb5+!

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  16...Bd7

16...c6 と受けるのは 17.Nxc6 bxc6 18.Bxc6+ Ke7
19.Bxa8 Rxa8 20.Bg5 Be6 21.Rf2 の後 22.Raf1 です。

  17.Rae1+ Kd8

17...Kf8 とこちらによけるのは 18.Bxd7 Nxd7 19.Nd5 Rd8
20.Nxc7 Nf6 (20...Nb6 21.Bg5) 21.Bg5 で白の勝勢です。

  18.Bg5! Bxb5 19.Rxf6! 1-0

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19...Bxf6 と取っても 20.Bxf6+ Kd7 21.Re7+ Kd8 22.Rxf7+
Ke8 23.Re7+ Kf8 24.Rxc7 で白の勝ちです。

駒がこんなに減少しても白の攻撃は衰えませんでした。

2006年05月27日

「キングズ・ギャンビットの不思議」第7回

第1章 キングズ・ギャンビット受諾

古典的防御

この戦法はキングズ・ギャンビットの最古の防御法の一つで、これまでの防御法よりも堅固であると考えられています。理由は黒が自陣のキング側の連鎖ポーンをそのままに保つことができるからで、白がこれを解体するには役駒を犠牲にするしかありません。今日ではこの防御法はキングズ・ギャンビットに対する最も重要な防御法の一つと考えられています。かつてこの防御法はキングズ・ギャンビット受諾から強制的にこの戦法に移行でき、キーゼリツキー(Kieseritzky)・ギャンビットとビショップ・ギャンビットを避けることができると考えられていました。そのため広くこの防御法が採用されていました。しかしこの移行は必ずしも実現されないことが証明されます。それは 1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Nf3 h6 4.b3 で白は黒の 4...g5 を防ぐことができるからです。

布局の戦型にはそれぞれ歴史があり、キングズ・ギャンビットでもほとんど全ての手に歴史があります。この戦法の歴史的な発展の軌跡をたどるために、最も初期の試合の一つを例に採り上げ、次局で比較的最近の例を採り上げます。

【第7局】

グレコ(Greco)・ギャンビット

  1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Nf3 g5 4.Bc4 Bg7 5.h4 h6
  6.d4 d6 7.Nc3

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  7...c6

この手はフィリドール(Philidor)の推奨によるものです。しかし今日では 7...Nc6 8.Ne2 Qe7 9.Qd3 Bd7 10.Bd2 O-O-O の方が良いと考えられています。

  8.hxg5 hxg5 9.Rxh8 Bxh8 10.Ne5

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非常に面白いが不正なナイト捨てです。この手はグレコ(1600-1634)によって創始されたと思われてきました。しかし実際には 1585 年から 1590 年の間にポレリオ(Polerio)によって書かれた本で最初に発表されました。

  10...dxe5 11.Qh5 Qf6 12.dxe5 Qg7 13.e6

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  13...Nf6

もっと簡明な受けは 13...Bxe6 14.Bxe6 Nf6 15.Bxf7+ Ke7 16.Qg6 Qxf7 で黒の勝勢でした。

  14.exf7+ Kf8?

この手は大失着で、以下に見られる見事な手筋により白の勝勢に変わりました。14...Ke7 が正着で 15.Qe2 Bg4 16.Qd3 Nbd7 で黒の楽勝でした。

  15.Bxf4!

鮮やかなビショップ切りです。15...Nxh5 は 16.Bd6# で詰み、15...gxf4 は 16.Qc5# で詰みです。

  15...Ke7

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  16.Bd6+

シュレヒター(Schlechter)は 16.Bxg5 を推奨していました。

  16...Kxd6

16...Kd7 とかわすのは 17.Qxh8 Qxh8 18.f8=Q でダメです。

  17.e5+! Kxe5

17...Ke7 と逃げると 18.exf6+ Qxf6 19.O-O-O です。

  18.f8=Q

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  18...Qxf8

18...Nxh5 とクィーンを取っても 19.Qc5+ で白の勝ちです。

  19.Qxg5+ Kd6 20.Qf4+ Ke7 21.O-O-O

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以下白勝ちです。(Fritz9 によると 21...Nbd7 で黒の勝勢です。)

2006年05月30日

「キングズ・ギャンビットの不思議」第8回

第1章 キングズ・ギャンビット受諾

古典的防御

【第8局】シュピールマン(R.Spielmann) - グリュンフェルド(E.Grunfeld)
ウィーン(Vienna)、1922年

  1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Bc4 Nc6

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この手は手待ちで、黒は古典的防御への移行を意図し
ています。

  4.Nf3

4.d4 と指せば白は古典的防御への移行を避けられまし
た。しかし「Larobok i Schack」によれば 4...Nf6 5.e5 d5
6.Bb5 Ne4 7.Bxf4 f6 (訳注 Fritz9 によれば 7...Qh4+ で
簡単に黒の勝勢のようです) 8.Nf3 fxe5 9.Nxe5 Bb4+
10.c3 O-O 11.O-O となって形勢はほぼ互角です。

  4...g5 5.O-O d6 6.d4 Bg7

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  7.c3

7.Nc3 に対してはシュレヒター(Schlechter)は 7...Be6 を
推奨していました(訳注 Fritz9 によると 8.d5 で白の勝勢
です)。

  7...h6 8.g3 g4 9.Nh4 f3

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  10.Qb3

他に考えられる手は 1922 年のテプリツ-シェーナウ
(Teplitz-Schonau)でのシュピールマン対グリュンフェルド
戦の 10.Nd2 Bf6 11.Ndxf3 gxf3 12.Qxf3 Rh7? (最善手は
12...Qe7) 13.Ng6! でシュピールマンが勝ちました。しかし
検討の結果このナイト捨ては無理筋でした。本譜で採用
された戦略はこの戦型での攻撃法の中で最も有力であ
ると考えられています。

  10...Qe7 11.Nf5 Bxf5

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  12.exf5

12.Qxb7 は難解な戦いになります。以下 12...Qxe4
13.Bb5 Nge7 14.Qxa8+ Kd7 15.Qb7 Bxd4+ 16.cxd4 Qxd4+
17.Rf2 Qd1+ 18.Rf1 となり黒は強制的に引き分けにでき
ます。17.Kh1 は危険な手で 17...f2 が強硬な応手です。

  12...Nd8

12...O-O-0 の方がより安全な手で 13.Bxf7 Qe2 14.Qe6+
Rd7 となり白は 15.Rf2 Qd1+ で引き分けにするしかありま
せん。

  13.Bf4 Nf6 14.Nd2 O-O 15.h3!

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  15...h5 16.Bd3 Qd7 17.hxg4 hxg4 18.Kf2 Nc6
  19.Rh1 Rfe8

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シュピールマンは圧倒的な態勢を築きましたがここでチャ
ンスを逃がしました。20.Rh4 と指していたならば攻撃は
揺るぎないものとなっていたでしょう。黒は本譜のように
20...d5 から ...Ne4+ と指すことができません。それは f6
のナイトが g4 の守りに縛り付けられているからで、しか
も Rah1 となれば白の圧力は圧倒的だったでしょう。
20.Rh4 d5 21.Rah1 Ne7 22.Be5 Nxf5 23.Bxf6 Bxf6
24.Rxg4+ となれば攻撃は決定的です(Fritz9 によれば
23...Nxh4 で黒の方が優勢です)。

  20.Bg5? d5 21.Rh4

この手は手遅れでした。

  21...Ne4+ 22.Bxe4 dxe4 23.f6

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  23...e3+!

唯一の凌ぎ手です。

  24.Bxe3 Bxf6 25.Rh5 Rxe3

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今や攻守所を換え黒が攻撃する立場になりました。

  26.Kxe3 Bxd4+ 27.Kd3 Rd8! 28.Kc2 Be3

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  29.Qc4

29...Qd3+ に備えた手です。

  29...Qxd2+ 30.Kb3 Qd7 31.Re1 f2

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  32.Reh1

32.Rxe3 は 32...Qd1+ の後 33...f1=Q です。

  32...Qe6 33.Qxe6 fxe6 34.R5h4 Rf8 35.Rxg4+ Kf7
  36.Re4 Ke7 37.Rf1 Rf3 0-1

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2006年06月02日

「キングズ・ギャンビットの不思議」第9回

第1章 キングズ・ギャンビット受諾

カニンガム・ギャンビット(復活版)

スコットランドのマスターのカニンガム(A.Cunningham、
1650-1730)によって創始され以前は人気のあったこの
防御法は19世紀に良く指されました。しかし 1.e4 e5
2.f4 exf4 3.Nf3 Be7 4.Bc4 Bh4+ の後白は
5.Kf1! によって有利になれるのでポーンを犠牲(5.g3 fxg3
6.O-O)にする必要がないことが分かってからは廃れてし
まいました。

第二次世界大戦以来クモッホ(Kmoch)がこの防御法を
復活させました。彼はビルガー(Bilguer)の「Handbuch
des Schachspiels」(チェスのハンドブック)の示唆に従って
(4...Bh4+ の代わりに)4...Nf6 を推奨しました。

【第9局】クレーマー(H.Kramer) - エイベ(M.Euwe)
番勝負、1941年

  1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Nf3 Be7 4.Bc4

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  4...Nf6!

この単純な展開の手がこれまでの100年もの間注目を
逃れてきたことは、いかにチェスの進化が先入観によって
妨げられるかということのさらなる証拠です。以前は
4...Bh4+ だけが指されていました。そしてルークを取らせ
る次のような複雑な戦型が精力的に研究されていました。
4...Bh4+ 5.Kf1 d5 6.Bxd5 Nf6 7.Nc3 Nxd5 8.Nxd5 f5
9.Nxh4 Qxh4 10.Nxc7+ Kd8 11.Nxa8 fxe4 12.Qe1 Qe7
13.Qf2 Nc6
これは黒が有利であると考えられていました。しかし後の
研究によって白が 14.b4 (15.b5 および 15.Qc5 の狙い)
Qxb4 15.Qh4+ Kd7 (15...Ne7 16.Qxf4) 16.Qg4+ Kd8
17.Qxg7 で有利になることが示されました。

  5.e5

5.Nc3 と受ける手もあり 5...Nxe4 6.Bxf7+ Kxf7 7.Nxe4
Rf8 となります。

  5...Ng4

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この手は 6...Bh4+ があるのですぐには退却させられな
いのでここでは強手になっています。

  6.d4

6.O-O とキャッスリングすると 6...Nc6 7.d4 d5 8.exd6e.p.
Bxd6 9.Re1+ Ne7 で黒有利となります。

  6...d5 7.Bb3

7.Bd3 の方が堅実でした。また 7.exd6e.p. Bxd6 は白が
悪いでしょう。

  7...Bh4+ 8.Kf1

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  8...b6!

もちろん 8...Nf2 は 9.Qe1 Nxh1 10.Qxh4 でナイトが逃げ
られないのでダメです。

  9.Bxf4 Ba6+ 10.c4

他に指しようがありません(10.Kg1? Bf2#)。

  10...dxc4 11.Ba4+ b5

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  12.Nc3

12.Bc2 は 12...b4 です。

  12...bxa4 13.Qxa4+ c6 14.h3 Nh6

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  15.d5

15.e6 は 15...O-O 16.Bxb8 Bb5! の好手で駒損になりません。

  15...Nf5 16.Rd1 O-O 17.g4 Qb6 18.Qc2

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  18...Qe3!!

思いもよらぬ手です。昔からのキングズ・ギャンビットの
精神にピッタリです。黒は駒得を維持しています。

  19.Bxe3 Nxe3+ 20.Ke2 Nxc2 21.Nxh4 cxd5 22.Rxd5
  Bb7 23.Rc1 Bxd5 24.Nxd5 Nd4+ 25.Ke3 Ne6 0-1

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この防御法はまだあまり研究されていませんが棋理にか
なっていると考えられていて多くの質の高い試合が生ま
れることでしょう。不自然な 4...Bh4+ の研究に多くの時
間がかけられ自然な手の 4...Nf6 が気付かれずにいたこ
とを考えると、旧式の布局に現代の取り組みをもって臨め
ば色々な新型が創造されるであろうし、特にキングズ・
ギャンビットにおいてそれが期待されます。

2006年06月05日

「キングズ・ギャンビットの不思議」第10回

第1章 キングズ・ギャンビット受諾

ビショップス・ギャンビット

ビショップス・ギャンビット(Bishop's Gambit)はかつてはキ
ングズナイト・ギャンビット(King's Knight Gambit)よりも本
筋であると考えられていましたが、人気がなくなってきま
した。それは黒が 3...Nc6 によってこの戦法を避けること
ができること(第8局を参照)や、わざとクィーンで3手目に
チェックをかけたりせず 3...Nf6 によって大した危険もなく
センターで十分な態勢が得られることが分かったことに
よります。

【第10局】シュピールマン(R.Spielmann) - ボゴリュボフ(E.D.Bogoljubov)
カールスバート(Carlsbad)、1923年

  1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Bc4

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タルタコーワ(Tartakower)博士は小ビショップス・ギャン
ビット(Lesser Bishop's Gambit)の方が良いと考えていま
した。しかし旧法の 3.Be2 f5! 4.e5 d6 5.d4 dxe5 6.dxe5
Qxd1+ 7.Bxd1 Nc6 は黒が有利となります。

  3...Nf6 4.Nc3

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  4...c6

4...Nc6 は 5.Nf3 Bb4 6.Nd5 Nxe4 7.O-O O-O 8.d4 Nf6
9.Nxb4 Nxb4 10.Bxf4 (シュピールマン対ボゴリュボフ、
トリベルク(Triberg)、1921年)で、白が有利でした。本譜
の手はこれよりも積極的な手です。

  5.d4

この手は緩手でした。5.Qf3 d5 6.exd5 Bd6 7.d3 Bg4
8.Qf2 O-O 9.Bxf4 Re8+ 10.Kf1 b5 11.Bb3 b4 12.Nce2
Nxd5 13.Bxd5 cxd5 14.Qg3 Bxe2+ 15.Nxe2 Qf6 と指す
方が良く形勢は互角でした(訳注 Fritz9 によると黒の勝
勢です)。

  5...Bb4 6.Qf3

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  6...d5!

ビルガー(Bilguer)の「Handbuch des Schachspiels」(チェ
スのハンドブック)はここで 6...O-O 7.Bxf4 Nxe4 を推奨し
ていました。本譜の方がはるかに積極的な手です。

  7.exd5 O-O 8.Nge2 cxd5 9.Bd3

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  9...Bg4!

黒の主導権を維持する好手です。

  10.Qxf4 Bxe2!

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  11.Kxe2

11.Bxe2 と取るのは 11...Re8 で白のキングがキャッスリ
ングできません。シュピールマンは本譜の手の後キング
を安全な所に移すつもりです。

  11...Nc6 12.Be3 Re8 13.Rhf1

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Rf3 として Kf1 とするつもりです。

  13...Qe7 14.Rf3 Rad8!

白の待ち受けている手には乗りません。14...Nxd4+ には
15.Qxd4 Bc5 16.Nxd5 があります。

  15.Kf1 Rd6

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  16.Qh4

16.Kg1 は受け一方の手で 16...Bxc3 17.bxc3 Ne4! で白
の形が悪くなります。そこでシュピールマンは本譜の手
で攻撃に転じます。

  16...Bxc3 17.Bg5

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形勢は白の有利に転じたように見えます。しかしタルタ
コーワはここで正着を見つけます。

  17...Bxd4!!

シュピールマンはここで 17...h6 18.Bxh6 Ng4 19.Bh7+!
で白に有利な複雑化を期待していたのかもしれません
(訳注 Fritz9によると 19...Kxh7 20.Bg5 Rh6 で黒の圧倒
的勝勢です)。

  18.Bxf6 Qxf6 19.Qxh7+ Kf8 0-1

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(第1章終わり)

2006年06月08日

「キングズ・ギャンビットの不思議」第11回

第2章 現代のキングズ・ギャンビット受諾

キングズ・ギャンビットに対する現代防御(Modern defence)

ルイス・パウルセン(Louis Paulsen)はキーゼリツキー
(Kieseritzky)・ギャンビットでの彼の構想により黒が十分
な局勢を得ていると考えられていた時代の1884年にこの
現代的な戦型を登場させました。しかし前の戦法が難解
なのに比しこの新戦法は簡明直截的でした。この戦法は
パウルセン防御と同じくセンターの緊張の緩和という考え
に基づいていて、旧来の防御法と比べて序盤で自分の
キング側の弱体化に手を染めないという利点がありまし
た。布局における問題点はまだ徹底的には研究されて
おらず実戦での徹底的な試練も経ていないので、この防
御法の評価はまだ定まっていません。本局は最も初期
の試合の一局です。

【第11局】シャロップ(E.Schallop) - パウルセン(L.Paulsen)
ナッセングルント(Nassengrund)、1884年

  1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Nf3 Nf6 4.Nc3 d5

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  5.exd5 Nxd5 6.Nxd5 Qxd5 7.d4 Bd6

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この局面がキングズ・ギャンビットに対する現代防御で通
常見られる局面です。黒はセンターの形を決め ...g5 と指
すことなくポーンを守ろうとします。1914年のバーデン・バ
イ・ウィーン(Baden bei Wien)で開催されたギャンビット大
会で絶えず指されたこのビショップ出は相手からの攻撃
にさらされます。

  8.c4 Qe6+ 9.Kf2 c5 10.Bd3 Qf6 11.Re1+ Kf8 12.b4

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このポーン捨ては白の最も有望な手順です。

  12...cxd4 13.c5 Bc7 14.Bb2 Nc6 15.b5 Ne5
  16.Bxd4 Bg4

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この難解な局面でパウルセンは受けの絶対手を見つけ
ました。釘付けと逆釘付けによる手筋により戦いは佳境
に入ってきました。

  17.Be4

17.Nxe5? は 17...Qh4+ ではまりです。

  17...Bxf3 18.Bxf3 Rd8 19.Kf1

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黒の狙いの 19...Rxd4 20.Qxd4 Ng4+ を避けました。

  19...g5

三つ目の駒をビショップによる釘付けの利きにさらすのは
かなり無思慮のように思われます。しかし黒は他に指し
ようがありません。それどころかこの手は 20.Bxb7 に対
するすごい狙いを秘めていました。即ち 20...f3 21.gxf3
(21.Bxf3? g4! これが 19...g5 の意味でした) Qe6! で
22...Qc4+ と 22...Qh3+ の二つの狙いがあります。見事
な受けの手筋です。

  20.b6! axb6 21.cxb6 Bb8 22.Rc1 Kg7

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パウルセンは相手のビショップの利きに四つ目の駒を置
いても指しこなせる自信を持っていたことでしょう。

  23.Rc7

絵に描いたような局面です。黒の前途は怪しそうです。し
かし白がどのように e5 のナイトに対する圧力を増すのか
というとそれはかなり難しい問題です。23.Rc5 は
23...Qxb6 24.Rexe5 (24.Rcxe5 Qxd4!) Bxe5 25.Bxe5+ f6
26.Rc7+ Kh6 というねじり合いになり、黒にとって不利で
ありません。

  23...Rxd4!

パウルセンは明らかに白の23手目を予期していました。

  24.Qxd4 Bxc7 25.bxc7 Nxf3 26.Qxf6+ Kxf6

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  27.gxf3 Rc8 28.Rc1 Ke6 29.Rc5

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  29...f6

この受けの妙技で黒はギャンビット・ポーンを守ることが
できます。皮肉にもそれを活用することはできませんでし
た。29...f5 と指すと 30.h4 g4 (30...h6 31.h5) 31.Kg2 b6
32.Rc4 Ke5 33.a4 となり、黒は f4 のポーンを犠牲にし
ないと陣形を良くすることができないし、勝てる可能性も
ごくわずかです。

  30.h4 gxh4

この手はたちどころに引き分けになります。黒は 30...b6
31.Rc6+ Ke5 32.h5 f5 33.Kg2 Kd4 を試みることもできま
した。

  31.Kg2 Kd6 32.Rf5 Rxc7 33.Rxf4 Ke5 34.Rb4

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この手は最善手です。

  34...Rc2+ 35.Kh3 Rxa2 36.Rxb7 Kf4 37.Rxh7 Kxf3
  38.Rf7 Ra6

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  39.Kxh4 Kf4 40.Kh3 f5 41.Kg2 Ra2+ 42.Kf1 Ke4
  43.Rb7

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  43...Kf3 44.Rb3+ Kg4 45.Rc3 f4 46.Rb3 Rh2 47.Ra3

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以下59手目で引き分けになりました。

パウルセンの見事な指し回しで自分のキング側の形を崩
すことなくギャンビット・ポーンを保持することができました。
最も印象深いのはセンターでの白のポーンの進攻を防い
だ素晴らしい手筋でした。今日では白の攻撃は成功する
はずだったと思わずにはいられません。しかしこの試合は
新しいシステムの最初の一局で、それゆえに完璧を期待
することはできないことを忘れるわけにはいきません。

2006年06月11日

「キングズ・ギャンビットの不思議」第12回

第2章 現代のキングズ・ギャンビット受諾

ルビーンシュタインの指法

第一次世界大戦後に超現代派が現われました。ルビー
ンシュタインも幾つかの新構想をひっさげてキングズ・ギャ
ンビットの復活を模索しました。彼の主眼点はキングズ・
ギャンビットは大局観に基づいて指せるし白はポーンを犠
牲にすることによってセンターの支配を得、キング側の黒
のポーンの形を乱すことができるというものでした。彼は
自分の主張を「Larobok i Schack」中の素晴らしい研究に
留めることなく、実戦でそれらを採用しました。アンデルセ
ン(Anderssen)と並ぶ妙技は彼の功績です。本局は新手
法によって正統な防御陣形と戦う彼の2回目の試みです。

【第12局】ルビーンシュタイン(A.Rubinstein) - イェーツ(F.D.Yates)
ヘースティングズ(Hastings)、1922年

  1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Nf3 Nf6 4.Nc3 d5 5.exd5 Nxd5
  6.Nxd5 Qxd5 7.d4

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  7...Be7

タラシュ(Tarrasch)が1893年に指摘していたこの手は前
局の 7...Bd6 よりはるかに勝る手です。それは f4 のポー
ンを(...Qe4+ により)間接的に守っているうえにこのビショッ
プが攻撃にさらされないからです。

  8.Bd3 g5 9.Qe2 Bf5 10.Bxf5 Qxf5

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  11.g4

ルビーンシュタインの構想を体現した面白い手です。この
手は黒のポーン群をばらばらにするためにブロックし、もし
必要ならばポーンも犠牲にしようとするものです。しかし
もっとゆっくりと 11.Bd2 (11...Qxc2 なら 12.Rc1) の後
12.O-O-O と指すのも考えられました。

  11...Qd7!

この手は 11...Qe6 12.Qxe6 fxe6 13.h4 gxh4 14.g5 O-O
15.Rxh4 Bd6 16.Bd2 Nc6 17.c4 (ルビーンシュタイン対コ
スティッチ(Kostic)、ハーグ(The Hague)、1921年) よりも
ずっと良い手です。その試合は黒が優勢を維持しました。
ルビーンシュタインがその試合と同じ手順を踏んだのは
白にもっと良い手を見つけていたからかもしれません。し
かしイェーツはその機会を与えず、しかもポーンを犠牲に
する本譜の手はこの布局の精神に合致しています。なぜ
なら白が 12.Nxg5 とポーンを取るのは 12...Nc6 13.c3
O-O-O 14.Nf3 Rhe8 又は 12...Nc6 13.Bxf4 Nxd4
14.Qe4 O-O-O 15.O-O-O Qxg4 16.Rxd4 Bxg5 で黒が
ポーン得を維持するので白が良くないからです。

  12.Bd2 Nc6 13.O-O-O O-O-O 14.h4 f6 15.c4

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  15...Qxg4

かなり危険を伴う手筋の攻撃が始まり、白にもチャンスが
生まれます。受けに徹した 15..Rde8 なら 16.hxg5 fxg5
17.d5 Nd8 18.Qf2 Kb8 となり黒の優勢が明らかだったで
しょう。

  16.hxg5 fxg5 17.d5

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  17...Nb4

17...Nb8 と引くと 18.Rdg1 Qd7 19.Bc3 Rhe8 20.Rxh7 と
ポーンを取られます。

  18.Qxe7 Nd3+ 19. Kc2 Qxf3 20.Qe6+ Kb8 21.Rh3

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  21...Qxd1+!

このクィーン切りが黒の唯一のチャンスです。21...Nc5
22.Rxf3 Nxe6 23.dxe6 Rde8 24.Re1 a5 で駒損に甘んじ
る順は黒の敗勢でしょう。

  22.Kxd1 Nf2+ 23.Ke1 Nxh3 24.Qxh3 h5 25.Bc3 g4
  26.Qh4

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  26...Rhg8

26...Rde8+ 27.Kf1 Rh7 でポーンを捨てない変化は、黒の
ポーン群をせき止めながら白のクィーン側のポーンの進攻
が速く黒が良くありません。

  27.Qxh5 g3 28.Bd4 Rde8+ 29.Kd2

29.Kf1 は 29...f3 で白が負けます(Fritz9 によると 29...g2+
30.Kg1 Re1+ 31.Kf2 g1=Q+ 32.Kf3 Qg3# で即詰みです)。

  29...Ref8

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  30.d6

30.Qf3 は 30...g2 31.Bg1 Rg3 32.Qf2 b6 で黒に ...Rg4
から ...f3 の狙いが残ります。

  30...cxd6 31.Qh6 Ka8 32.Qxd6 Rd8 33.Qc5 Rxd4+!

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  34.Qxd4 g2 35.Qg1 Rg3 36.b4 a6 37.Ke2 f3+ 1/2-1/2

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38.Kf2 なら 38...Rh3 39.Qd1 Rh1 40.Qd8+ で千日手の
チェックによる引き分けです。

この試合の特徴は明快な戦略にあります。前局と比較す
ると早い動きに気付かされます。それは38年という懸隔
の間に技術全般が進歩したことの現われです。黒は中盤
で目標を見失いましたがそれでも防御システムの強固さ
を証明し白が早い段階でもっと攻撃的に指す必要がある
ことも証明しました。

2006年06月14日

「キングズ・ギャンビットの不思議」第13回

第2章 現代のキングズ・ギャンビット受諾

キングズ・ギャンビットの最近の動向

本局の白は黒に f4 のポーンを強固に支える暇を与えな
いうちにセンターの支配を目指します。この戦型は第二
次世界大戦の前に人気が出たばかりです。しかしキング
ズ・ギャンビット自体があまり流行っていないので定跡の
進歩はゆっくりとしています。

【第13局】サンタシエレ(A.Santasiere) - レビン(J.Levin)
米国選手権戦、1946年

  1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Nf3 Nf6

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  4.Nc3

4.e5 も面白い手です。旧来の手順は次のようになってい
ます。

(a) 4.e5 Nh5 5.d4 d5 6.c4 Nc6 7.cxd5 Qxd5 8.Nc3 Bb4
9.Kf2 Bxc3 10.bxc3 Bg4 11.Be2 O-O (レティ(Reti)対ニ
ホルム(Nyholm)、アバジア(Abbazia)、1912年) 黒が優勢
です。

(b) ケレス(Keres)の指法 4.e5 Nh5 5.Qe2 Be7 6.d4 O-O
7.g4 fxg3e.p. 8.Qg2 d6 9.hxg3 Bg4 10.Be3 (シュピールマ
ン(Spielmann)は 10.Nh2 を推奨していましたが 10...Nxg3
11.Nxg4 Nxh1 12.Qxh1 Bh4+ と逆襲されます) Nc6
11.Nc3 dxe5 12.d5 Nb4 13.Nxe5 Qc8 (バンドビル
(Bandvir)対トルシュ(Tolush)) 黒が優勢です。

  4...d5 5.exd5 Nxd5 6.Nxd5 Qxd5 7.d4 Be7

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  8.c4

通常の 8.Bd3 よりも厳しい手です。

  8...Qe4+ 9.Kf2 Bf5 10.c5

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  10...Nbd7

10...Nc6 と指す方が良く 11.Bb5 Qd5 12.Bxf4 O-O-O
13.Be3 Bf6 14.Qa4 Be4! で形勢互角です(キーニンガー
(Kieninger)対エリスカセス(Eliskases)、シュツットガルト、
1939年)。

  11.Bb5 c6 12.Re1 Qc2+ 13.Qxc2 Bxc2

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  14.Bxf4! Nf6 15.Bc4 Rd8 16.Re2 Be4

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  17.Rae1 Ng4+ 18.Kg1 f5 19.Be6 g6

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20.Bxf5 に備えた手です。

  20.Ng5 h5

21.Nxe4 と 21.Nf7 を同時に防ぐ手はありません。

  21.Nxe4!

この手は 21.Nf7 Bf6 よりもずっと強い手です(黒はまだ
頑張れます)。単純化して勝ちの収局に導く手法は参考
になります。

  21...fxe4 22.Bxg4 hxg4 23.Rxe4 Rh7 24.Bd6 Rd7
  25.Kf2 Kd8

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  26.Bxe7+ Rdxe7 27.Rxe7 Rxe7 28.Rxe7 Kxe7
  29.Kg3 Ke6 30.Kxg4 Kd5 31.Kg5 Kxd4 32.Kxg6 1-0

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この試合には人々が今でもキングズ・ギャンビットに結び
付けたがる華麗な手筋が見られません。しかし明快で論
理的な試合で、現代の基準に照らしても好局に値します。

2006年06月17日

「キングズ・ギャンビットの不思議」第14回

第2章 現代のキングズ・ギャンビット受諾

ブロンシュテインの指法

若い世代のマスターのうちケレス(Keres)だけでなくブロ
ンシュテインもキングズ・ギャンビットを採用しています。
ブロンシュテインの場合はキングズ・ギャンビットは不正
でもなければ無茶でもないという確固たる信念を表明し
ています。最も大切な対局で用いていることは彼のこの
布局への信頼の現われです。

本局はキングズ・ギャンビットが大抵のクィーンズ・ギャン
ビットよりも退屈な試合になることがあることの良い実例
です。

【第14局】ブロンシュテイン(D.Bronstein) - ラゴージン(V.Ragosin)
ザルツヨバーデン(Saltsjobaden)、1948年

  1.e4 e5 2.f4 d5 3.exd5 exf4 4.Nf3 Nf6 5.Bb5+

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  5...Nbd7

5...c6 の方が良さそうですが 6.dxc6 Nxc6 7.d4 Qa5+
8.Nc3 Bb4 9.Qe2+ Be6 10.O-O O-O 11.Bd2 Qb6
12.Bxc6 bxc6 13.Bxf4 (トマス(A.R.B.Thomas)対サージャ
ント(E.G.Sergeant)、フィーリクストウ(Felixstowe)、1949
年)によればそうでもなさそうです。この戦型の実戦例は
ほとんどないので確かな判断は得られません。多くの選
手(本局のラゴージンもそうです)は黒の攻撃の可能性は
長続きせず白の収局の展望の方が勝るのでこの戦型を
避けています。

  6.O-O Nxd5 7.c4 N5f6 8.d4 Be7 9.Bxf4 O-O

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  10.Ba4 Nb6 11.Bb3 Bg4 12.Nc3 c6 13.Qd2 a5

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この手は黒のポーンの形を弱めます。しかし白のセンター・
ポーンによって動きが制約されているので他に指す手が
ほとんど見つかりません。

  14.a3 a4 15.Ba2 Nbd7 16.Rae1 Rfe8 17.Ng5 Bh5
  18.Kh1 Bg6

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  19.Nf3 Nh5 20.Be3 Qc7 21.Qd1 Qa5 22.Bd2 Qa7
  23.c5!

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  23...b6

23...b5 で a ポーンに紐を付けようとしても 24.cxb6e.p. が
あります。

  24.Bg5 Bxg5 25.Nxg5 Nhf6

a ポーンを犠牲にするのは黒の最善の策のようです。

  26.Rxe8+ Rxe8 27.Qxa4 Qxa4 28.Nxa4 bxc5 29.dxc5

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  29...Re2 30.Bc4 Rc2 31.Bb3 Re2 32.Nf3 Ne4 33.Bd1

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  33...Re3

33...Nf2+ は 34.Kg1 Nxd1 35.Rxd1 です。

  34.Kg1 Nexc5 35.Nxc5 Nxc5 36.Re1 Rxe1+ 37.Nxe1

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黒はポーンを取り返しました。しかし白のパス・ポーンが
非常に強力で、自分がパス・ポーンを作るのには手数が
かかるため形勢はまだ芳しくありません。

  37...Kf8

37...Nd3 は 38.Nxd3 Bxd3 39.Kf2 Kf8 40.Ke3 で白キン
グの働きが強くなります。

  38.Kf2 Ke7 39.Ke3 Kd6 40.b4 Na6 41.Be2 Nc7
  42.Nf3 Nd5+

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  43.Kd4 Nf4 44.Bf1 f6 45.Nd2 Ne6+ 46.Kc3 Nc7
  47.Nc4+ Ke7

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  48.Nb6 Nb5+ 49.Kb2 Bf5 50.a4 Na7 51.Kc3 h5
  52.Kd4 Kd6

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  53.Nc4+ Kc7 54.Kc5 Bd7 55.Nd6 h4 56.Be2 f5

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  57.g3 hxg3 58.hxg3 Nc8 59.Nxc8 Bxc8 60.Bf3

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  60...Bb7

60...Bd7 は 61.a5 g5 62.a6 Bc8 63.b5 cxb5 64.a7 で白
が勝ちます。

  61.a5 g5 62.Bg2 f4 63.gxf4 gxf4 64.Bf3 Ba6

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  65.Bxc6 Be2 66.b5 f3 67.a6 1-0

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67...f2 としても 68.b6+ Kd8 69.a7 f1=Q 70.a8=Q+ Ke7
71.Qe8+ Kf6 72.Qf8+ の後 73.Qxf1 から 74.b7 です。

前局と本局はキングズ・ギャンビット受諾の現代の戦型
を象徴しています。しかし黒がこの布局の主要な課題を
避けているので(本局の黒の5手目に対する解説を参照)
将来どのようになるのかについては不透明です。従って
シュタイニッツ(Steinitz)のように危険な戦型に嬉々として
乗り込んでいくマスターが現われるか、あるいはルイス・
パウルセン(Louis Pausen)式に複雑な防御法に対処して
いくマスターが現われるまで、実戦で復活することは考え
られないでしょう。

(第2章終わり)

2006年06月20日

「キングズ・ギャンビットの不思議」第15回

第3章 キングズ・ギャンビット拒否

「キングズ・ギャンビット拒否」は「キングズ・ギャンビット
受諾」と同じくらい古い戦法ですが「受諾」ほど人気が出
たことはなく劣った戦法とみなされていました。「受諾」は
戦型が複雑化し種類も増えていきましたが「拒否」は簡
明な対抗策と思われていました。可能性が尽くされたわ
けではありませんが防御は簡単にはいかないというのが
一般的な認識です。

モーフィーの指法

モーフィーは定期的に本局の戦型を採用しました。この
戦型では白は黒の強力な c5 のビショップの効果を殺ぎ
その後で f 列での攻撃を開始することを目的としています。

黒のキング側ビショップをブロックするために白は d4 と
指すことが必要であると考えられていました。この手は
「浮きポーン」を産み出します。これらのポーンが強いか
弱いかは生じる戦いの主題となる課題です。

【第15局】モーフィー(P.Morphy) - ボーデン(S.Boden)
ロンドン、1858年

  1.e4 e5 2.f4 Bc5 3.Nf3 d6

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  4.c3

この手は最も古い手の一つで白はポーン・センターの確
立を目指します。今日ではこの戦型が唯一白の主導権
を保持すると考えられています。

代わりに 4.Bc4 は 4...Nf6 5.Nc3 Nc6 6.d3 Be6 7.Bb5 a6
8.Bxc6+ bxc6 9.Qe2 exf4 10.Bxf4 Qb8! 11.Nd1 O-O
12.c3 Re8 13.Be3 Bxe3 14.Nxe3 Ng4 (シュピールマン
(Spielmann)対タラシュ(Tarrasch)、ピスチャン(Pistyan)、
1922年)で局面が単純化されます。

  4...Bg4 5.Be2

5.Qa4+ の方が強い応手です(次局を参照)。

  5...Nc6

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  6.b4

6.Nxe5 は 6...Bxe2 7.Nxc6 Bxd1 8.Nxd8 Bc2 9.Nxb7 Bb6
10.b4 Bxe4 となって黒良しです。

  6...Bb6 7.b5 Na5

レーベンタール(Lowenthal)はモーフィーとの番勝負第4
局で 7...Nce7 と指しましたが本譜の手の方がこの布局
の精神にふさわしい手です。

  8.d4 Bxf3 9.Bxf3

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  9...exd4 10.cxd4 Qf6 11.Be3 Nc4 12.Bf2 Qxf4 13.O-O

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  13...Nf6

ここまでは白ポーンの弱点を突くボーデンの戦略的指し
方は非の打ちどころがありません。モーフィーはポーンを
犠牲にしてやっと持ちこたえることができました。しかし本
譜の黒の手はゆっくりし過ぎていて白に立ち直りを許しま
した。正着は 13...Ne3 で以下 14.Qc1 (14.Qd2? Qxh2+!
15.Kxh2 Nxf1+) Bxd4 15.Nc3 Qe5 16.Bxe3 Bxc3 となれ
ば黒の優勢はゆるぎなかったでしょう。

  14.Qd3 Na5 15.Nc3

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  15...O-O

ここで 15...Ng4 は 16.Nd5 Nxf2 (訳注 16...Qxh2# で頓
死です) 17.Rxf2 で、ポーン損の代償に d5 のナイトが強
力なので白が優勢です。

  16.g3 Qh6 17.Kg2 Rae8 18.Rae1 Kh8 19.Be3 Qg6
  20.Ne2

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モーフィーのチェスの特徴は完璧とも言える駒の連係で
す。それは時として個々の動きの意味をぼかす要素とも
なっています。この局面を13手目の局面と比較すると白の
駒は皆センター化されているのに比し黒の駒は周辺に
追いやられていることが分かります。本譜の手は大局上
のはめ手です。黒クィーンを僻地のh7に押し込め、d5の
地点を支配して黒の動きを押さえ込むことを狙っています。

  20...h6

20...Nxe4? とポーンを取るのは 21.Nf4! Qf5 22.g4! で成
立しません。

  21.Bd2 d5 22.Nf4 Qh7 23.e5 Qxd3 24.Nxd3

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  24...Nc4

今すぐに 24...Ne4 と跳び込むのは 25.Bxe4 dxe4
26.Bxa5 exd3 27.Bxb6 axb6 28.Rd1 でダメです。

  25.Bb4 Ne4 26.Bxf8 Rxf8

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黒の防御戦略はこの犠牲に基づいていました。しかしこ
こで思わぬ手が待ち受けていました。

  27.Nf4!

正確な手です。27.Bxe4 は 27...dxe4 28.Nf4 (28.Rxe4?
Nd2) Kg8 で黒は交換損の代わりに2個目のポーンを狙
います。

  27...Ned2

ここで 27...c6 は 28.Bxe4 dxe4 29.Ng6+ でまた交換得
を重ねます。キングズ・ギャビット拒否の主題の構想であ
る開放 f 列の活用が決め手となっています。

  28.Bxd5!

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白は交換得を返却します。これが最短の勝ち方です。モー
フィーの収局の指し方はカパブランカ(Capablanca)の簡明
でエレガントな手法を彷彿とさせます。

  28...Nxf1 29.Bxc4 Nd2 30.Bd5 Bxd4 31.e6!

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興味深い局面です。黒は布局で勝ち取ったポーンを保持
しています。しかし駒数の減少にも関わらず受けがありま
せん。

  31...g5 32.e7 Re8 33.Bxf7 gxf4 34.gxf4 Rxe7
  35.Rxe7 1-0

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モーフィーはこの布局でかなりの成功を収めました。もっと
もセンターのみならず両翼でも作戦を行なう彼の戦略は危
険であったことは疑いありません。当時は強いセンターと
弱いセンターの違いは発見されておらず、モーフィーは自
分の戦術能力を頼りに問題を解決していました。

2006年06月23日

「キングズ・ギャンビットの不思議」第16回

第3章 キングズ・ギャンビット拒否

シュピールマンの貢献

チェスの原則の知識が飛躍的に進歩したことは広く受け
入れられています。それでも昔のロマンチックなマスター
達の方が我々よりも攻撃に優れていたことは否めません。
シュタイニッツ(Steinitz)にも劣らない権威者もそう断言し
ています。それゆえに19世紀の最も攻撃的な選手が前
局でモーフィー(Morphy)が指したのと同じ布局でどのよう
な攻撃を見せてくれるのかは興味深いものがあります。
黒のキング・ビショップをポーンで撃退する白の戦略はそ
のポーンが弱体化する可能性があるので指し過ぎの気
味があることを注意しておきます。現代のマスターが危
険性は少ないけれど同じくらい効果的な手法でどのよう
に同じ問題に取り組むのかを見て行きましょう。

【第16局】シュピールマン(R.Spielmann) - タラシュ(S.Tarrasch)
カールスバート(Carlsbad)、1923年

  1.e4 e5 2.f4 Bc5 3.Nf3 d6 4.c3

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  4...Bg4

面白い変化は 4...Bb6 5.d4 (5.Bd3 から 6.Bc2 の方が堅
実です) Nf6 6.fxe5 dxe5 7.Nxe5 c5 8.Bb5+ Nbd7 9.Bg5
h6 (先に 9...cxd5 の方が良い手です) で黒は犠牲にした
ポーンの代償があります(シュピールマン対カルリン
(Karlin)、ルント(Lundt)、1939年)。

  5.fxe5 dxe5

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  6.Qa4!

マーシャル(F.Marshall)対コーン(E.Cohn)戦(カールスバー
ト、1907年)で指されたこのクィーン出は白のナイトの釘付
に基づいた黒の作戦を咎めます。

  6...Bd7

6...Nc6 (6...Qd7 7.Bb5 c6 8.Nxe5!) は 7.Nxe5 Qh4+ 8.g3
Bf2+ 9.Kxf2 Qf6+ 10.Kg1 Qxe5 11.Bg2 で白良しです。

  7.Qc2 Nc6

7...Qe7 は 8.d4 exd4 9.cxd4 Bb4+ 10.Nc3 Bc6 11.Bd3
で白良しです(エイベ(Euwe)対マローツィ(Maroczy)、番勝
負第4局、バート・アウスゼー(Bad Aussee)、1921年)。

  8.b4

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  8...Bd6

8...Bb6 と引くのは 9.b5 から 10.Nxe5 でポーンを取られ
ます。従って黒は戦略上の斜筋からビショップを退却させ
ることを余儀なくされました。

  9.Bc4 Nf6 10.d3

これで白は自分の戦略目標を達成しました。開放 f 列を
支配しセンターも好形です。

  10...Ne7

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  11.O-O

黒の反撃を封じるために 11.a4 と突くと 11...a6 12.Bb3
c5 となります。

  11...Ng6 12.Be3 b5 13.Bb3 a5 14.a3 axb4 15.cxb4

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  15...O-O

15...Bxb4? とポーンを取ると 16.Ng5 O-O 17.Nxf7 Rxf7
18.Bxf7+ Kxf7 19.Qb3+ から 20.Qxb4 で白の交換得にな
ります。

  16.Nc3 c6 17.h3 Qe7 18.Ne2

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  18...Bb8

白の黒枡ビショップと交換しようという狙いですがあまり
感心しない捌きです。正着は 18...Rac8 で次に 19...Be6
と出られるし 19...c5 と突く狙いも出て来ます。

  19.Kh2 Ba7 20.Bg5 h6 21.Bxf6 Qxf6 22.Nfd4!

Y060623G.GIF

  22...Qd6 23.Nf5 Bxf5 24.Rxf5 Nf4

Y060623H.GIF

f2 の地点への圧力が気にかかるようになってきました。
黒は f 列を閉鎖してあわよくばルークを生け捕りにしよう
としています。

  25.Raf1 g6

25...Qxd3? とポーンを取ると 26.Qxd3 Nxd3 27.Rxf7 Rxf7
28.Rxf7 でかえってひどいことにななります。

  26.R1xf4

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  26...exf4

26...gxf5 とこちらのルークを取るのは 27.Rxf5 の後 Ng3
で白の攻撃にはずみがつきます。交換損の犠牲は考え
出すのは難しくないかもしれませんが感心するのはそれ
が白の元々の戦略からの論理的な帰結となっている点
です。

  27.e5 Qe7 28.Rf6 Kg7

28...Kh8 29.Qc3 Kh7 30.d4 Rad8 31.Qc2 の方が ...Bxd4
から ...Qxe5 の狙いがある分わずかに勝りました。

  29.d4 Bxd4

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  30.Bxf7!

30.Nxd4 は 30...Qxe5 で良くありません。

  30...Bxe5?

これは即詰みになります。しかし 30...Rxf7 でも 31.Qxg6+
Kf8 32.Nxd4 Rxf6 33.exf6 Qf7 34.Qxh6+ Ke8 35.Nxc6
で Ne5 の狙いがあり決まっています。

  31.Qxg6+ Kh8 32.Qxh6# 1-0

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やはり決め手は開放 f 列での白の圧力でした。それで
は今日では攻撃の手法がどのように異なっていると言え
るのでしょうか?実際にどのような進歩があったのでしょ
うか?この試合にその答えがあります。違いは攻撃の態
勢でなく準備にあります。シュピールマンはセンターの形
を決めませんでした。その代わりに彼はクィーン側を安定
させて相手の反撃を弱め、キング側で自由に作戦が行な
えるようにしたのでした。

シュピールマンは僅かな差の主導権を生かして勝利をも
のにすることができました。これはモーフィーの時代から
受けがかなりの程度進歩したことの証拠です。

2006年06月26日

「キングズ・ギャンビットの不思議」第17回

第3章 キングズ・ギャンビット拒否

レティの指法

本局はキングズ・ギャンビット拒否の最新の戦型です。黒
は白にセンターを占拠させて ...f5 によって破壊することに
期待をかけます。本局は複雑性のゆえにあまり解明され
ていないこの戦型の最適の実戦例の一局です。

【第17局】シュトルツ(Stoltz) - シュピールマン(R.Spielmann)
番勝負第4局、1932年

  1.e4 e5 2.f4 Bc5 3.Nf3 d6 4.c3

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  4...f5

コーデル(Cordel)が推奨したこの手は白に意図を明らか
にさせる利点があります。局面は非常に複雑化し、もし
白が積極的に指すつもりならば駒を犠牲にしなければな
りません。

  5.fxe5 dxe5 6.d4!

白が主導権を得ようとするならばこう指すしかありません。
6.exf5 は 6...Bxf5 7.d4 exd4 8.cxd4 Bb6! で黒良しです。

  6...exd4 7.Bc4!

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レティ(Reti)の推薦した手です。白は黒の斜筋の弱点(こ
の戦型の主眼点です)を戦術的に利用しようとします。

  7...fxe4

スベノニウス(Svenonius)によって研究されたこの手は非
常に複雑なルークの犠牲を基調にしています。レティが
「Larobok i Schack」で発表した代替手は複雑さが少な
いわけではありませんが 7...Nc6 8.b4 Bb6 9.Qb3 Nh6
(9...Nf6 10.b5 Ne7 11.Ne5) 10.O-O fxe4 11.Nxd4! Qe7
12.Bxh6 gxh6 13.Bf7+ Kd8 14.Kh1 で白が攻勢です。こ
の変化は非常に複雑ですが 7...Nf6 のような堅実な応手
は 8.e5 Ne4 9.cxd4 Bb6 (9...Bb4+ 10.Ke2) 10.Nc3 Nc6
11.Be3 Ne7 12.Qb3 c6 13.Bf7+ Kf8 14.Nxe4 fxe4
15.O-O exf3 Rxf3 で白が有利です(レティ対ロマン
(Loman)、スヘーフェニンゲン(Scheveningen)、1919年)。

  8.Ne5 Nf6 9.Nf7 Qe7 10.Nxh8

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  10...d3

明らかにシュピールマンはオランド(Olland)推奨のこの手
に大きな期待をかけていました。スベノニウスの研究手
順は 10...Nc6 でしたが 11.Bg5! Ne5 12.Bxf6 gxf6
13.Qh5+ Kd7 14.cxd4 で白が優勢を保持しているようで
す(タルタコーワ(Tartakower))。恐らくシュピールマンは本
譜の手が改良手になると考えたのでしょう。

  11.Bg5 Bf2+ 12.Kxf2 Qc5+ 13.Be3!

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白は当然ながら黒のセンター・ポーンをせき止めるビショッ
プを残す方を望みます。

  13...Qxc4 14.h3 Be6 15.Nd2 Qd5

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模擬戦(そのほとんどは研究手順でした)の煙が晴れて
局面が一段落しました。駒の損得はほぼ互角です。h8
のナイトは逃げられないので黒は交換損に対してポーン
を2個得た勘定です。次の手でシュトルツは自分のキング
の前のポーンに関する昔からの原則にとらわれていない
ことを示します。

  16.g4! Nc6 17.c4

クイーンを追い払います。

  17...Qd7 18.g5 Bg4

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  19.Qf1!

受けの好手です。ビショップがクイーンに当てながら逃げ
ることができるので一見おかしな手に見えます。しかし
19.Qg1 は 19...Qf5+ 20.Ke1 Nb4 21.hxg4 Nc2+ 22.Kd1
Nxg4 で黒が有利です。

  19...Be2 20.Qg2 Qf5+ 21.Kg1

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  21...Nd7

21...Bf3 には 22.Rf1! があります。

  22.Qxe4+ Qxe4 23.Nxe4 Ke7 24.Ng3 Rxh8

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黒はようやくナイトを取りましたがその間にセンター・ポー
ンを一つ失いました。試合は白の駒数の優位によって決
着します。

  25.Nxe2 dxe2 26.Rh2! Kf7 27.Rxe2 Re8 28.Rd1 Nde5

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  29.Bf4 Re6 30.Kf1 Kg6 31.Rd5 Kf5 32.Bg3 Re7
  33.b4 1-0

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定跡で重要な地歩を占める戦いでした。前半はルークの
犠牲と以降の戦力の不均衡とによる古めかしい趣があり
ました。しかしこれはみな「研究手順」で、現代定跡が想
定している乱戦です。この種の布局は特定の棋風の人に
だけ向いています。シュトルツは 16 手目(g4)によって分
かるようにその棋風を持っていました。

(第3章終わり)

2006年06月29日

「キングズ・ギャンビットの不思議」第18回

第4章 続・キングズ・ギャンビット拒否

ファルクビア逆ギャンビット(Falkbeer counter gambit)

この戦法は(1950 頃までの)過去100年間に専門家達の
見解が絶えず変化した布局です。モーフィー(Morphy)や
ピルズベリー(Pillsbury)のような攻撃型の選手達はこの
戦法で成功を収めました。しかしチゴーリン(Tchigorin)や
後のレティ(Reti)やケレス(Keres)のような真のギャンビッ
ト選手達は一時的な主導権のために黒が 3 手目にポー
ンを犠牲にする余裕はないと考えていました。最新の定
跡では白が犠牲ポーンを維持しようとすれば困難に直面
するが返却すれば僅かな有利を保持できると考えられて
います。

モーフィーの指法

本局はファルクビア戦法の初期の実戦例で、逆ギャンビッ
トの基本的な構想を包含しています。

【第18局】シュルテン(J.W.Schulten) - モーフィー(P.Morphy)
ニューヨーク、1857年

  1.e4 e5 2.f4 d5

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  3.exd5 e4 4.Nc3 Nf6 5.d3

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  5...Bb4

この手は近年まで不変の手でした。クラパレド(Claparede)
は 5...Bf5 を推奨し以下 6.Qe2 Qe7 7.dxe4 Nxe4 8.Nxe4
Qxe4 9.Qxe4 Bxe4 10.c4 Bc5 11.Bd2 c6 で黒優勢とし
ていました。

  6.Bd2 e3!

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この局面に対するモーフィーの洞察力を際立たせるこの
手は定跡でもまだ最善手とみなされています。戦いは e4
の地点を中心に行なわれています。しかし黒はいつまで
もこの地点を死守できないので e 列の開放に活路を求め
ます。

  7.Bxe3 O-O

この手も最善です。多くの人は 7...Nxd5 でポーンを取り
返したがりますがそれは 8.Bd2 Bxc3 9.bxc3 O-O (9...Qf6
10.Ne2 Bg4 11.h3) 10.Qf3! で白が万全です。

  8.Bd2 Bxc3 9.bxc3 Re8+ 10.Be2 Bg4

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  11.c4

11.h3 は 11...Qxd5 12.hxg4 Qxg2 です。

  11...c6 12.dxc6

ここで 12.h3 は 12...Bxe2 13.Nxe2 Qe7 で白はキャッス
リングに支障をきたします。

  12...Nxc6 13.Kf1 Rxe2 14.Nxe2

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  14...Nd4 15.Qb1 Bxe2+ 16.Kf2 Ng4+ 17.Kg1