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あなたの棋力診断 アーカイブ

2008年01月23日

あなたの棋力診断(1)

あなたの棋力診断(How Good Is Your Chess?)
レナード・バーデン(Leonard Barden)

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初めに

 多くのチェス愛好家は実戦の十分な時間や機会が足りないと感じている。そうでない人でも本から知識を吸収しようという動機が不十分なために自分の読みが一般原則に習熟した相手に通じないという悩みを抱えている。ここに本当の問題点がある。つまり自分の実戦に良く現れる問題を採り上げてくれない本には関心が持ち難いのである。本書はそのような問題を二つのやり方で解決しようというものである。まず実戦の色々な側面、即ち大局観、攻撃、駒捨ての手筋、受けそれから収局といった最も良く遭遇する局面が現れる試合を選んだ。それから読者がマスターによって指された手を一緒に考えて且つその手の説明を読むことによって実際の試合に参加している状況を作り出している。

 本書は好局集として読むこともできる。各々の手の質問に答える必要もなくただ楽しむために指し手を並べるだけで良い。そのためにほとんどの場合近年の大会で指され英語圏の読者には馴染みの薄い試合を選んである。

 本書のもっと楽しく役に立つ使い方は読者が試合でマスターのパートナーとなったと想像して彼の手を推量することである。そのためには紙かカードでページをおおい1行ずつずり下げると良い。どの試合でも局面図までの手が示されてありその後からは星印でそのすぐ後にパートナー側の指し手が書いてある。だからその手を予想した後で紙をずり下げるのである。各試合とも最高点は50点である。棋力の適正な評価のために8章(訳注 第1章 中原の支配 2局、第2章 展開の優位 1局、第3章 大局観 11局、第4章 攻め方 8局、第5章 受けの技法 2局、第6章 手筋 6局、第7章 封じ込めの技術 1局、第8章 収局 4局)の中からそれぞれ最低1局ずつ選んでその平均点を用いるのが良い。平均点が出たら次の表と照らし合わせておおよその棋力が判定できる。

8局の平均点国際レイティング対応する棋力
45-502400以上マスターやグランドマスター級の強さ。米国または英国選手権戦への参加資格あり。プロになることも考えよ。
40-442300-2399U.S.オープン、英国選手権、主要な国際オープン大会での上位の成績。
35-392200-2299英国選手権の平均レベル。週末のローカルなオープンでの優勝。クラブや州のチャンピオン。
30-342100-2199クラブの強豪選手。国内オープンでの勝率50%。米国のアマチュアのチャンピオン級。
25-292000-2099クラブの上級選手。国内オープンで時々勝率50%。16歳未満のジュニアの国際大会選手。
15-241800-1999クラブの平均よりは上の選手。
8-141400-1799家庭で又は時々指す選手からクラブの中くらいの選手程度。
0-71400未満初心者かそれに近いレベル。実戦の経験を積むためにチェス・クラブか週末のオープンで指すのが良い。

第1章 中原の支配

第1局

 本局のあなたは白番で、指導パートナーは前世界選手権者のミハイル・ボトビニクである。本局の相手はスイスのマスターのグロープである。この試合はボトビニクが1956年にチューリヒで時計を用いて行なった同時対局の8局の内の一局である。局面図までの手順は次のとおりである。

1.Nf3 Nf6 2.c4 d5 3.cxd5 Nxd5 4.e4 Nf6 5.Nc3 e6 6.d4 c5

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**********

7.d5

 4点。黒の2手目は白に中原での優位を与えた悪手である。強気の 7.d5 で白は主導権を握った。7...exd5 に対して 8.exd5 はパスポーンができるが孤立し容易にせき止められるのでほとんど価値がない。代わりに 8.e5 d4 9.exf6 dxc3 10.Bb5+ Nc6 11.Qe2+ Be6 12.O-O Qxf6 13.Bg5 で白は1ポーンを犠牲に好調な展開になる。堅実な 7.Bc4、7.Bf4、7.Bg5 及び 7.Be2 はそれぞれ1点。7.Be3 は 7...Ng4 がうるさいので0点。

7...a6

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8.Bg5

 2点。次の 9.e5 が厳しい。8...h6 で追い払おうとすれば 9.Bh4 g5 10.Bg3 で黒のポーンの形が乱れる。魅力的な 8.d6(8...Qxd6 9.Qxd6 Bxd6 10.e5)は0点。黒はこの手に対しては 8...e5 9.Nxe5 Bxd6 と応えて互角である。パッとしない 8.Bf4 と 8.Be2 はそれぞれ1点。

8...Qb6

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9.Bxf6

 2点。中原が半開状態でクイーン翼ポーンも既に動いているので、キング翼のポーンも乱せば黒キングの安全な居場所はたちまちどこにもなくなる。

9...gxf6

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10.Qd2

 2点。10.Qc2 は黒ビショップが 10...Bh6 に出て来れるので1点。

10...h5

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11.Be2

 1点。

11...Nd7

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12.O-O

 3点。開いたg筋を怖がる必要はない。なぜなら黒は自分のキングのせいで勢力が二分されているので大駒で攻撃態勢を整えることは期待できないからである。12.Rd1 は1点。12.O-O-O?? は 12...Bh6 があるので6点減点。

12...h4

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13.a4

 3点。このポーンがさらにa5に進めば黒のcポーンを無理やり孤立化させ攻撃目標にできる。13.h3 は1点。黒はまだ 13...h3 14.g3 とするわけにはいかない。こう形をきめてしまうと自分の黒枡ビショップがf4の地点に行けなくなる。f4の地点からは白キングに少し重圧をかけると共に自分のクイーン翼の弱い黒枡に利いているのでクイーン翼にキャッスリングできる可能性が出てくる。

13...Bh6

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14.Qc2

 1点。

14...Bf4

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15.a5

 1点。

15...Qc7

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16.Rfd1

 1点。黒のポーンの弱点は恒久的なのであわてて攻める必要はない。だから落ち着いて自陣の整備に努めることができる。

16...Ne5

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17.Nxe5

 1点。

17...Bxe5

**********

18.h3

 1点。ここに来てようやくこの手が必要となった。

18...Bd7

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19.Na4

 3点。白は展開が完了したので攻撃を開始することができる。この手を指すに当たり白は 19...Qxa5 の変化を読んでおく必要があるがそれは 20.Nxc5 Qc7 21.dxe6 Bxe6 22.Qa4+ Qc6 23.Bb5! で大丈夫である。

19...Bxa4

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20.Rxa4

 2点。この手は Rc4 から b4 という狙いを含んでいる分 20.Qxa4+(1点)より勝る。

20...Rc8

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21.Rc4

 1点。

21...Qxa5

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22.b4

 2点。

22...Qa3

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23.Rxc5

 3点。23.bxc5(2点)でも良いが本譜の手の方が決定的な敵陣突破を図ることができる。

23...Rd8

 23...Rxc5 と交換に応じるのは 24.Qxc5(次に 25.Qc8+ がある)Qc3 25.Qxc3 Bxc3 26.Rc1 で白が駒得する。

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24.dxe6

 2点。黒キングは白の大駒の砲火にさらされるようになった。24.Rc8 は 24...O-O で黒が一息つけるので0点。

24...Bd6

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25.Rxd6

 5点。鮮やかな決め手で必勝形になる。25.Rc8 と 25.exf7+ は少しぬるいのでそれぞれ2点。

25...Rxd6

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26.Rc8+

 2点。

26...Ke7

 26...Rd8 と受けるのは 27.Qc7 Rxc8 28.Qd7+ で詰みになる。

**********

27.Qc7+

 2点。27.Rxh8(1点)でも良いが本譜の手の方がきれいに決まる。

27...Kxe6

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28.Bg4+

 1点。

28...f5

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29.Bxf5+

 1点。

29...Ke5

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30.Qc5+

 4点。30.Rxh8 と 30.Qe7+ Re6 はそれぞれ1点。

黒投了。

診断 本局の得点が低かったら二つの理由が考えられる。もし前半で得点が低ければ展開が済む前に早まった攻撃を仕掛けているからかもしれない。逆に後半の得点が低ければ読みに正確さを欠いていることが考えられる。

2008年01月30日

あなたの棋力診断(2)

第1章 中原の支配

第2局

 本局のあなたは黒番で、指導パートナーは長年ソ連の第一級のグランドマスターの1人であるアレクサンダー・コトフである。対戦相手はブラジルのA.マンジニである。この試合は1957年にマル・デル・プラタで行なわれた。局面図までの手順は次のとおりである。

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Bd3 Nc6 6.c3

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**********

6...e5

 3点。黒は自分から中央の二つのポーンを突くことによって相手の消極的な序盤につけいる。6...Nxd4 7.cxd4 は中原に白の二つのポーンを配置させてしまうので0点。6...d5 7.Nxc6 bxc6 8.e5 も黒が押し込まれるので0点。6...e6 と 6...g6 はそれぞれ1点。

7.Nc2

**********

7...d5

 2点。他の手では 8.c4 で白の中原を強化させてしまう。

8.exd5

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8...Nxd5

 1点。8...Qxd5 9.O-O は次に白にポーンをc4に突かれてクイーンが逃げなければならないので0点。

9.O-O

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9...Be6

 この手または 9...Bd6 は1点。9...Be7 はこんなに消極的に指す必要はない。

10.Qf3

**********

10...Bd6

 1点。

11.Ne3

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11...Nxe3

 2点。この手が理にかなっている。d5のナイトが下がると白のナイトは急所のf5の地点に来れる。11...Nf4 は 12.Be4 で長くその地点に留まれない。

12.Bxe3

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12...O-O

 1点。

13.Nd2

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13...f5

 3点。この手で黒が主導権を握った。他の手は消極的で白に Bf5 又は Ne4 で良い態勢を作らせてしまう。

14.Bc4

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14...Qe7

 2点。この手は明らかに 14...Bxc4 より勝る。白の望むビショップの交換は許すがその代わり黒の残りの役駒の働きがだんだん良くなっていく。

15.Bxe6+

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15...Qxe6

 1点。

16.b4

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16...e4

 3点。16...f4 は 17.Bc5 で白のナイトがe4の地点を占めることができて黒の攻撃が勢いを削がれるのでそれほど良くない。...Rg6 による攻撃を意図した 16...Rf6 は強い手で2点。16...Rae8 は 17.b5 と突かれてaポーンを犠牲にしなければならないのでそれほど明快でない。ポーンを犠牲にするのは他にはっきりした指し方がない時にだけ行なうべきである。

17.Qe2

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17...Qe5

 3点。詰みだけでなくc3のポーンにも当たっている。この両当たりで白の駒は不利益な枡へ行かされる。17.f4(0点)を考えた人が多いだろうがこの中央のポーンの厚みはそう早く活用できない。18.Bc5 Bxc5 19.bxc5 Rfe8 20.Rfe1 e3 21.fxe3 fxe3 22.Nf1 で黒のポーンが急激に弱体化する。

18.Qc4+

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18...Kh8

 1点。

19.g3

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19...Rac8

 2点。白キングの周囲が弱くなっただけでなくc3のポーンも重圧を受けている。直接の狙いは 20...Nxb4 である。19...f4 も狙いは鋭いが 20.Bxf4 Rxf4 21.gxf4 Qxf4 22.Rfd1 Qxh2+ 23.Kf1 e3 24.Ne4 で黒の攻撃はあまり効果的とは思われない。(訳注 24...Rf8 で黒の勝勢です。黒の正着は多分 20.Bd4 か 20.Bc5 です。)この局面のように優勢が長続きする性質(敵のポーンと枡が弱い)の時は最終攻撃を仕掛ける前に駒組を最良の態勢に強化する余裕がある。

20.Rfd1

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20...Qf6

 4点。白の手には罠がある。20...Nxb4 と取ると 21.cxb4 Rxc4 22.Nxc4 から 23.Nxd6 で黒が十分過ぎる駒割りになる。本譜の手は ...Ne5-d3 を狙っている。

21.Qb3

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21...Be5

 2点。21...Ne5(1点)は 22.Bd4 又は 22.Bxa7 で白が混戦に持ち込めるので本譜の手の方が明快である。本譜の手で白のc3の弱いポーンが目標となった。

22.Nc4

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22...f4

 4点。22...Bxc3(2点)でも勝である(23.Rd6 Bxa1 24.Rxf6 Bxf6 25.Nd6 Rc7)。しかし本譜の手の方がはるかに厳しい。例えば 23.Bxf4 なら 23...Bxf4 24.gxf4 Qxf4 の後 ...b5 から ...Ne5 が攻撃の決め手になる。また 23.Nxe5 なら 23...fxe3 である。

23.Bc5

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23...e3

 4点。やはりこの手が 23...Bxc3 又は 23...Rfe8(それぞれ1点)より厳しい。黒の戦略はアリョーヒンが最も劇的な勝利のいくつかで用いていた手法を踏襲している。それは敵を弱点のある方の防御に引き寄せることによって反対側での猛襲を可能にするという攻撃法である。

24.Bxf8

 24.fxe3 は 24...fxg3 が早い。24.gxf4 Qxf4 又は 24.Nxe5 exf2+ も同様である。

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24...exf2+

 3点。単に 24...Rxf8(3点)も同じく良い。しかし 24...fxg3(0点)は 25.fxg3! で良くない。(訳注 25...Qf2+ で黒の勝勢のようです。)

25.Kg2

 25.Kxf2 は 25...fxg3+ である。

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25...Rxf8

 2点。25...fxg3 は 26.Bc5 と逃げられて黒キングに即詰みがないので2点減点である。また 25...f3+ は 26.Kxf2 と取られるので0点である。

26.Rd3

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26...fxg3

 2点。もし 27.hxg3 なら 27...f1=Q+ である。

27.Nd2

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27...gxh2

 1点。

28.Nf1

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28...Qg6+

 2点。

 白投了。29.Rg3 と防いでも 29...Bxg3 30.Nxg3 f1=Q+ 31.Rxf1 Rxf1 32.Kxf1 Qxg3 で終わりである。

診断 本局で得点の低かった人は恐らく二つの良くある誤りのいずれかでつまづいたのであろう。一つは黒が中原での進攻を行なえるよう十分な展開をする前に時期尚早の攻撃を始めたことである。もう一つは後半でポーンが前進し攻撃のための筋も開けたのに自分の駒の可能性を過小評価して慎重になり過ぎたことである。

2008年02月06日

あなたの棋力診断(3)

第2章 展開の優位

第3局

 本局のあなたは黒番で、指導パートナーは著者である。対戦相手はロンドンの著名な選手のグリーンである。この試合は1956年にボグノーで行なわれた。局面図までの手順は次のとおりである。

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.g3 Bg7 4.Bg2 O-O 5.Nf3 d6 6.O-O Nc6 7.d5 Na5 8.Nd2 c6 9.Nc3 cxd5 10.cxd5

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10...Ng4

 2点。白の狙いは 11.b4 Ng4 12.Bb2 で駒得を図ることである。しかしこの狙いは単に 10...Bd7(3点)でもっと経済的に防ぐことができた。もし 11.b4 なら 11...Rc8 で良い。私の手の狙いはナイトをe5の地点に据えることだったが完全に安定した地点とは言えなかった。

11.Rb1

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11...Bd7

 2点。もちろん黒は白が h3 と一手かけてくれるまでナイトをe5の地点に動かさない。

12.h3

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12...Ne5

 1点。

13.b3

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13...Qc8

 3点。白の直前の手は見落としで、黒は早速それにつけ込む。

14.b4

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14.Nac4

 4点。手の選択に迷った時は通常は不確かな手筋よりも永続的な陣形の優位を確保する手を選んだ方が良い。例えば 14...Qxc3(1点)15.bxa5 は 15...Qxa5 ならば 16.Rxb7 から 17.f4 の狙いで、また 15...Rab8 でも 16.Bb2 Qxa5 17.f4 で乱戦になる。

15.Kh2

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15...Nxd2

 2点。強手の 15...Ne3(2点)16.fxe3 Qxc3 も落ち着いた 15...b5(2点)も良い手だった。黒の本譜の手は一本道の手順で7段目を占拠する構想を思い描いていた。

16.Qxd2

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16...Bf5

 この手と 16...Nc4、16...Ng4+ は2点。この手に対して当然の 17.e4 は 17...Bxh3! ではまりとなる。

17.Ne4

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17...Qc4

 3点。黒はc筋から進入すると同時に白に次の手で白枡ビショップを隠居させる。白がそれを嫌って 18.Qe3 と指せば黒は手順に白のaポーンが取れる。

18.f3

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18...Rfc8

 2点。黒は状況によっては後でa列をこじ開けたくなるかもしれないのでこの手の方が 18...Rac8(1点)よりわずかに良い。

19.Rd1

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19...Qc2

 2点。

20.Rb2

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20...Qa4

 3点。黒の直接の狙いは 21...Nc4 である。それと共に ...Rc7、...Rac8、...Rc2 で7段目にまた殺到する準備でもある。

21.Qe1

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21...Rc7

 2点。21...Nc4(2点)も同様に強い手である。

22.Nd2

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22...Bc2

 2点。もちろん白の直前の手はポカである。しかしいずれにしても白の形勢は非常に困難な状況だった。

23.Nb3

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23...Bxd1

 1点。

24.Qxd1

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24...Rac8

 3点。25...Rxc1 を狙っていて 24...Qxb4(1点)よりも強い手である。

25.Rd2

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25...Qxb4

 1点。

26.h4

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26...a5

 4点。白はさらなる戦力損が避けられなくなった。

27.a3

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27...Qb6

 2点。27...Qb5 は 28.Nd4 で白が少し長く抵抗を続けることができるので1点。

28.a4

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28...Rc3

 4点。

29.Bh3

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29...R8c7

 2点。

30.f4

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30...Qxb3

 黒がさらに駒得を重ねる(1点)。

白投了

診断 白の苦戦は浮き駒(13手目)の危険性に十分な注意を払わなかったことに起因している。多くの試合がこの種の戦術的なポカで失われる。このような敗戦を失くすには手を指す前にいつも盤面全体を見渡して(a)現在の局面と(b)自分の指した後の局面に何か見落としがないか注意する必要がある。罠や初歩的な見落としに引っ掛かり易い人にはこのアドバイスをいくら強調してもし過ぎることはない。

 この試合の二つ目の要点は黒が永続性のある戦略的な優勢を保ち、白の反撃を招くような(黒の14手目)訳の分からない戦いを避けたことである。そこであなたが本譜と違う手を選んだなら指し方の方針に整合性を欠き目に映った手に飛び付くからかもしれない。

2008年02月13日

あなたの棋力診断(4)

第3章 大局観

第4局

 本局のあなたは白番で、指導パートナーはドイツのグランドマスターのボルフガング・ウンツィカーである。対戦相手はコロンビアのミゲル・サンチェスである。この試合は1952年にスウェーデンのサルツヨバーデンで開催された世界選手権インターゾーナル大会で指された。局面図までの手順は次のとおりである。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 Na5 9.Bc2 c5 10.d4 Qc7 11.a4 b4 12.cxb4 cxb4 13.h3 O-O 14.Nbd2 Bd7 15.Nf1 Rfc8

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16.Ne3

 2点。この手は 16.Bd3 又は 16.Bb1(それぞれ1点)よりも活動力がある。ルイ・ロペスでは白のクイーン翼ナイトはd5またはf5の地点を目指すのが普通である。

16...Nc6

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17.Bb3

 3点。黒の狙いは 17...Nxd4 でポーン得することだった(これを見逃していたら3点減点)。17.d5(0点)はこのような局面では滅多に良い手となることがない。それは黒からd4のポーンを取らせる可能性を失くし、自分のナイトからも好所を奪うからである。17.dxe5(0点)も無害である。本譜の手で白はビショップを以前の働きの良い筋に戻した。17...Nxe4? には 18.Nd5 で大丈夫である。

17...Na5

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18.Bd5

 2点。18.Bc2(1点)と手を繰り返したり 18.Nd5(1点)と跳ねる手よりも本譜の手の方がずっと強力である。

18...Bc6

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19.Bxc6

 2点。黒にd5の地点で2回交換を許せば白の有利は消えてしまう。

19...Nxc6

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20.Nf5

 3点。ナイトが「理想」の二箇所の拠点の一つに来ることができた。

20...Bf8

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21.Bg5

 2点。この手は展開と同時に狙いも持っている。黒は 22.Bxf6 で白ナイトを恒久的に居座らせることはできない。

21...Ne8

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22.Rc1

 1点。

22...Qb7

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23.Qd3

 3点。白は中原とキング翼で優勢を確立した。ここからは次の攻撃のための方策を考えなければならない。黒キングは無傷の黒ポーンの壁と二つの小駒で守られているので当面は白がキング翼でこれ以上できることはない。しかし黒のbポーンは攻撃の対象とすることができもし黒が ...a5 と守れば白はb5の地点に新たに拠点を確保することができる。23.Qb3 と 23.Rc4(同様の考え)は 23...Na5 で拒否される。

23...Rc7

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24.Ne3

 3点。黒のキング翼のナイトとビショップは受け一方なのでこのナイトをクイーン翼での攻撃に回すことができる。黒の直前の手のおかげでこのナイトは先手でd5の地点に行ける。

24...Rac8

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25.Nd5

 1点。

25...Rd7

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26.Bd2

 2点。黒のbポーンに照準を定めるのが理にかなった手である。

26...g6

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27.Rc4

 2点。これで黒はほとんどbポーンが守れない。27...a5 ならば 28.Rec1 の釘付けが強烈である。

27...exd4

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28.Bxb4

 3点。この手の方が 28.Nxb4 よりもはるかに良い。d5のナイトは頼もしい存在であり軽々しく交換すべきでない。28.Nxd4? は 28...Ne5 があるので4点減点。

28...Bg7

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29.Bd2

 6点。29.Rec1(0点)は 29...Nxb4! があるのでこの手が必要である。今度こそ 30.Rec1 が有力な狙いとなる。例えば 29...Qxb2 とポーンを取ってくると 30.Rec1 Qb7 31.Rb1 Qa7 32.Nb6 で白の必勝形となる。又 29...Ne5 ならば 30.Nxe5 dxe5 31.Rxc8 Qxc8 32.Nb6 で同様である。

29...Rb8

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30.Rec1

 1点。

30...Ne5

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31.Nxe5

 1点。

31...dxe5

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32.Rb4

 4点。これでポーン得になる。32.Qc2(3点)も強い手である。

32...Qa7

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33.Rxb8

 2点。

33...Qxb8

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34.Qxa6

 1点。

34...Rb7

 34...Qxb2 は 35.Rc8 Qxd2 36.Rxe8+ Bf8 37.Nxf6+ で白が勝つ。

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35.Rc8

 6点。この決め手で黒が投了した。35...Qxc8 なら 36.Ne7+ である。

診断 白がずっと主導権を維持できたのは小駒が中央のd5とf5を跳躍点として利用したことによる(18、20及び25手目)。白のもう一つの勝因は「戦線の移動」の原則の利用である。黒の小駒が受けのみに追いやられると(20手目と21手目)白は機動性の優位を活かして攻撃を反対翼に向けた。そこで白は圧倒的な戦力の優位を行使することができた(24手目から27手目)。

2008年02月20日

あなたの棋力診断(5)

第3章 大局観

第5局

 本局のあなたは黒番で、指導パートナーは世界で最も負かし難いことで定評のあるアルゼンチンのフリオ・ボルボチャンである。対戦相手はイディゴラスである。この試合は1956年にマル・デル・プラタで行なわれた。局面図までの手順は次のとおりである。

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.g3 Bg7 4.Bg2 O-O 5.Nf3 d6 6.O-O Nc6 7.b3 Rb8 8.Bb2 a6 9.d5 Na5 10.Nd4 Bd7 11.Nd2 c5 12.dxc6e.p. bxc6 13.Rb1

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13...c5

 2点。この局面での黒の有利さはほんのわずかである。黒は中央列でのポーンの数では勝っているが弱点を作らずに前進させることはほとんどできない。白の陣形には特に弱点はない。もっとも黒はb列に大駒を重ねてaポーンを前進させて重圧をかけることはできるかもしれない。それでも白が建設的な作戦を見つけることは非常に難しい。それは黒が中原をしっかり押さえ込んでいるために白が両翼で主導権を発揮する見込みは非常に小さくなっているからである。13...c5 は黒の中原の押さえ込みを強化する。13...e5 は 14.N4f3 でdポーンが弱くなるので0点である。

14.Nc2

**********

14...Qc8

 2点。黒がb列で行動を起こすには白の白枡ビショップを交換で消すことが必要である。他に考えられる手は 14...Bc6 と 14...Nc6 だが少し根拠に欠ける。

15.Ne3

**********

15...Nc6

 2点。すぐに 15...Bh3 と交換を挑むのは 16.Bxf6 Bxf6 17.Nd5 がかなり厄介なので0点。それで黒はナイトを中央に引き戻してeポーンに紐をつけた。

16.Nd5

**********

16...Nxd5

 1点。

17.cxd5

**********

17...Ne5

 2点。17...Nd4(1点)は 18.e3 又は 18.Nf3 ですぐに中央の位置から追い払われるので本譜の手の方が少し良い。ポカの 17...Bxb2? は 18.dxc6 で駒損になるので6点減点。17...Ne5 に対して 18.f4 は 18...Ng4 で明らかに白が悪い。

18.Qc2

**********

18...Bh3

 1点。

19.Nc4

**********

19...Bxg2

 1点。

20.Kxg2

**********

20...Nxc4

 1点。この交換も必要である。20...Nd7(0点)は白のナイトがあまりに好位置だし、放っておくと 21.Nxe5 で二重ポーンと孤立ポーンができてしまう。

21.bxc4

**********

21...Bxb2

 1点。

22.Rxb2

**********

22...Rxb2

 2点。他の手ならば白は 23.Rfb1 でb列を支配し有利を勝ち取る。

23.Qxb2

**********

23...Qg4

 2点。駒交換にもかかわらず黒が優勢を保っている理由がはっきりする。このようなポーンの陣形はキングズ・インディアン防御などの序盤で黒が ...c5 と突いた型からよく生じる。白陣の弱点は連鎖ポーンの土台のc4が攻撃を受け易いことにある。これに反し黒の連鎖ポーンの土台のe7ははるかに守るのが容易である。ぱっとしない 23...Qc7 と 23...Qb8 は 24.Rb1 とされるので1点減点である。

24.Qc2

**********

24...Rb8

 1点。

25.e4

**********

25...a5

 3点。この手の狙いは 26...a4 27.Qxa4(取らないと 27...a3)Qxe4+ から ...Rb4 でポーン得することである。

26.h3

**********

26...Qh5

 3点。今度の狙いは 27...a4 28.Qxa4 Qe2 である。

27.f3

**********

27...Qe5

 2点。ついに白はルーク交換に追い込まれた。しかしクイーン+ポーンのエンディングでも黒は問題を抱えている。

28.Rb1

**********

28...Rxb1

 1点。

29...Qxb1

**********

29...a4

 3点。白は黒の作戦を妨げることはできない。例えば 30.a3 なら 30...Qc3 31.Qa2 Qb3 である。

30.Qc2

**********

30...a3

 1点。

31.Qe2

**********

31...g5

 この手と 31...h5 に5点。クイーン翼では当面これ以上何もすることがない(31...Qb2 は 32.Kf2 なので0点)。そこで黒は反対翼で侵入口を作るつもりである。

32.Kf2

**********

32...h5

 1点。

33.Qd2

**********

33...h4

 2点。

34.gxh4

**********

34...gxh4

 1点。

35.Kf1

**********

35...Kf8

 2点。35...Qg3? は 36.Qg2 で黒が劣勢のポーン・エンディングになるので6点減点である。

36.Ke2

**********

36...Ke8

 2点。

37.Ke3

**********

37...f5

 2点。黒はポーン・エンディングに移行する前にできるだけ陣形上の優位を拡大させておくつもりである。

38.Qc2

**********

38.Kf7

 この手と 38...f4+ に2点。

39.Qd3

**********

39...f4+

 1点。

40.Kf2

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40...Qb2+

 1点。白投了。この後の想定手順は 41.Qe2 Kf6 42.Kf1 Ke5 43.Qd3 Qa1+ 44.Ke2 Qxa2+ から 45...Qb2 で黒が簡単に勝つ。

診断 強い選手でも黒で自在に指しこなすのは非常に難しいものである。しかし経験豊かなマスターになるとそのような場合でも少しずつ陣形上の優位を積み重ねていく。本局の成績が悪かった場合、そもそも黒が有利であることを十分認識できていなかった可能性がある。引き分けの試合が非常に多い人は、くみ取るべき教訓ははっきりしているだろう。

2008年02月27日

あなたの棋力診断(6)

第3章 大局観

第6局

 本局のあなたは黒番で、指導パートナーはソ連のスエティンである。対戦相手はフランスのモニロである。この試合は1955年にリヨンで開催された世界学生団体選手権戦の1局である。局面図までの手順は次のとおりである。

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.Be2 Nf6 4.Nc3 Nc6 5.d4 cxd4 6.Nxd4 e5 7.Nb3 Be7 8.O-O O-O 9.Be3 a5 10.a4

YRate06.JPG

**********

10...Nb4

 3点。シチリア防御のボレスラフスキー戦法は今日では最も指されている戦法の一つになっている。それは黒のd列の出遅れポーンが何の支障にもならないことが実戦経験から分かってきたからである。白の 10.a4 を誘って黒はナイトをb4の強固な地点に据えることができた。このナイトは将来の ...d5 突きを助け、白クイーンを守りに縛りつけている。10...Be6 も同じくらい強い手で3点。

11.f4

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11...Be6

 1点。しかし 11...exf4 の方が正確なので3点。この後は 12.Bxf4 Be6 と進み 13...d5 と 13...Nxc2!(14.Qxc2 Qb6+)が狙いとなる。

12.f5

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12...Bd7

 2点。12...Bc8 と 12...Bxb3 は0点。このビショップはdポーン突きを助けなければならない。

13.Bf3

**********

13...Bc6

 1点。

14.Bg5

 14.Qe2 として黒が ...d5 と突いてくれば Rad1 で釘付けになるようにした方が良かった。

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14...Qc7

 2点。

15.Bxf6

**********

15...Bxf6

 1点。

16.Qe2

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16...Rad8

 この手と 16...Rfd8 に2点。

17.Rad1

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17...Rd7

 3点。17...b6(1点)に1手かけることはない。

18.Kh1

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18...Rfd8

 1点。

19.Nc1

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19...d5

 3点。もちろんこの一手である。これ以上の準備は必要ない。

20.exd5

**********

20...Nxd5

 1点。

21.Nxd5

**********

21...Bxd5

 1点。

22.Bxd5

**********

22...Rxd5

 1点。

23.Rxd5

**********

23...Rxd5

 1点。

24.Rd1

**********

24...Rxd1+

 この手と 24...Qd8、d7 又は d6 に2点。どれも良い手である。

25.Qxd1

**********

25...h6

 2点。短兵急な 25...Qd8 は 26.Qxd8+ Bxd8 27.Nd3 f6 28.Nc5 で白の勝ちが非常に困難になるので0点。

26.Ne2

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26...e4

 3点。この手に対して 27.c3 なら 27...Qc4 から ...Qd3 で白は指す手に困る。

27.Ng3

**********

27...Bxb2

 2点。

28.Nxe4

**********

28...Qf4

 3点。28...Qc4(2点)でも十分である。

29.Nc5

**********

29...Be5

 3点。

30.g3

**********

30...Qc4

 3点。30...Qxf5 は 31.Qd8+ Kh7 32.Qd3 で勝ち切るにはまだまだ大変なので1点。

31.Nd3

**********

31...Qd5+

 2点。

32.Kg1

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32...Bd4+

 1点。

33.Kf1

 33.Nf2 は 33...Bxf2+ でクイーンを素抜かれる。黒が 31...Qe4+ でなく 31...Qd5+ としたのはこのためである。

**********

33...Qh1+

 3点。33...Qxf5+ は1点。

 34.Ke2 と逃げても 34...Qg2+ 35.Ke1 Bc3+ があるので白はここで投了した。

診断 この試合は二つの段階に分けられるだろう。第1段階は19手目までで黒は ...d5 突きの実現に全力を注いだ。この部分の成績が悪かったら全ての指し手ごとに作戦計画に合っているか確認するようにするのが良い。第2段階は24手目から最後までで、陣形の優位を正確に認識する能力のテストである。

2008年03月05日

あなたの棋力診断(7)

第3章 大局観

第7局

 本局のあなたは黒番で、指導パートナーはフランス系ポーランド人のマスターで現在は米国に住んでいるステファン・ポペルである。対戦相手はイギリスで最も有望な若手選手の1人であるムーアである。この試合は1955-56年にヘースティングズで開催された第2最高メジャー大会の1局である。局面図までの手順は次のとおりである。

1.d4 Nf6 2.Nf3 e6 3.c4 Bb4+ 4.Bd2 Qe7 5.e3 O-O 6.Bd3 Nc6 7.a3 Bxd2+ 8.Nbxd2 d6 9.O-O e5 10.d5 Nb8 11.e4

YRate07.JPG

**********

11...Bg4

 2点。このような閉鎖的な局面ではビショップ、特に白のそれはとりわけ利きに乏しい。だから黒は自分のナイトが黒枡のc5、d4及びf4を占める機会を増やすために自分のビショップを相手のナイトと交換して構わない。11...a5 と 11...c5 も良い手なので1点。

12.Qc2

**********

12.Nbd7

 この手と 12...a5 は1点。

13.b4

**********

13...a5

 1点。

14.Rfc1

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14...axb4

 2点。a列を開けること自体には効果はない。だが黒は相手のクイーン翼を固定するための面白い作戦を立てている。それは数手で明らかになる。14...Rfc8 も2点。これも大局観に裏打ちされた手で ...Nf8-g6-f4 と ...c6 をもくろんでいる。

15.axb4

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15...c5

 2点。この手に対する白の応手は定まっている。実際 16.bxc5 Nxc5 と 16.b5 Nb6 は白のビショップが非常に無力な駒になってしまう。

16.dxc6e.p.

**********

16...bxc6

 1点。

17.Ne1

 17.Rxa8 Rxa8 18.c5 の方が積極性があって良かった。

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17...c5

 2点。これでクイーン翼を固定する黒の駒繰りは完了した。白に遠方パスポーンができるがこの局面ではあまり重要でない。それはこのポーンは長い間進むことができないからである。

18.b5

**********

18...Nb6

 1点。

19.Nf1

**********

19...Qb7

 3点。多目的の手である。Ra6 に備え、状況によりa列でのルーク交換とクイーンによるa列の占拠を準備し、白のeポーンをにらんでいる。

20.Ne3

**********

20...g6

 2点。20...Be6(1点)21.Nf5 Bxf5 22.exf5 でも黒が優勢であるが、白のeポーンを移動させない方が理にかなっている。

21.Nxg4

**********

21...Nxg4

 1点。

22.Be2

**********

22...Nf6

 2点。22...f5 は0点。この手では 23.exf5 gxf5 24.Qd2 から Bf3 の狙いで白の無力なビショップが息を吹き返す。

23.Bf3

**********

23...Rxa1

 1点。この局面での白のビショップのように戦略的に無能な駒をかかえていることによる不利益は駒交換によって際立ってくるのが普通である。

24.Rxa1

**********

24...Ra8

 1点。

25.Rd1

**********

25...Ne8

 2点。黒はどの駒で当たりのdポーンを守るのが良いかということである。クイーンとルークは明らかにa列からの侵入に必要である。b6のナイトはbポーンをせき止めながら白のcポーンを攻撃している。このcポーンは黒の最初の攻撃目標となる。

26.Be2

**********

26...Ra4

 2点。26...Ra5 と 26...Ra3 は1点。

27.f3

**********

27...Qa8

 この手と 27...Qa7 は1点。

28.Rd2

**********

28...Qa5

 2点。28...Ra1 は1点。

29.Kf2

**********

29...Kf8

 1点。黒は当面陣容を向上させることができそうにないので、収局に向けて自分のキングを中央に差し向ける。

30.g3

**********

30...Ke7

 1点。

31.Ng2

**********

31...Nxc4

 4点。前手か前々手でもこの手が成立していたのでいずれかで選んでいたら4点。

32.Bxc4

**********

32...Rxc4

 1点。

33.Qxc4

**********

33...Qxd2+

 1点。

34.Kf1

**********

34...Qd1+

 1点。35.Kf2 は 35...Qd4+ なので白はナイトを受けに使わなければならない。

35.Ne1

**********

35...Qb1

 1点。

36.Qa4

**********

36...Nc7

 2点。白投了。二つ目のポーンが落ちるので形勢は絶望的である。

診断 黒の素晴らしい大局観指法の主眼は白のビショップを無力にすることであった。黒は着実に(11,13,15及び18手目)黒枡の支配を強固にし、白のビショップを守勢一方に追いやり、その後a列から侵入した。多くの選手は内在する大局的な優位が局面にしっかり確立されるよりも前に攻撃しがちである。そういう人にとって本局はまたとない教訓となるであろう。

2008年03月12日

あなたの棋力診断(8)

第3章 大局観

第8局

 本局のあなたは白番で、指導パートナーはチェコスロバキアを代表する選手のミロスラフ・フィリップ博士である。対戦相手はヤン・セフツである。この試合は1956年にマリアンスケ=ラズネで開催された国際大会で指された。局面図までの手順は次のとおりである。

1.c4 e6 2.g3 d5 3.Bg2 dxc4 4.Qa4+ Bd7 5.Qxc4 Bc6 6.Nf3 Nd7 7.O-O Ngf6 8.Qc2 e5 9.Nc3 Bd6 10.e4 Bc5 11.Rd1 Ng4 12.Rf1 O-O 13.h3 Ngf6 14.Rd1 Qe7

YRate08.JPG

**********

15.d4

 4点。この局面での白の優位は中原ポーンが多いことと黒ビショップの位置の悪さにある。

15...exd4

**********

16.Nxd4

 1点。

16...Bxd4

**********

17.Rxd4

 1点。

17...Rfe8

**********

18.b4

 4点。黒のビショップが格好の攻撃目標となっているのでここでの少数派攻撃は特に有効である。

18...a6

**********

19.Bf4

 3点。19.a4 は2点。前の手で 18.Bf4 を選んでいたら4点。

19...Ne5

**********

20.Rad1

 2点。ここは非常に単純な手が優勢を維持する局面の一つである。黒はe5のナイトを損するのですぐにはd列を争えない。

20...Ng6

**********

21.Be3

 2点。21.Bg5(1点)h6 でも構わないがhポーンを突かせる方が良いというわけでもない。

21...Red8

**********

22.Qd2

 3点。この手もd列を支配するためである。

22...Rxd4

**********

23.Qxd4

 1点。

23...Re8

**********

24.f3

 1点。

24...h6

**********

25.a4

 4点。中原を支配下におさめたので白は少数派攻撃に戻ることができる。

25...b6

**********

26.Bf2

 3点。白はすぐに 26.b5(3点)と指すこともできたが急ぐ必要はない。黒が ...a5 又は ...b5 とポーンを突けばかえってその弱点が目立ってくる。

26...Bb7

**********

27.Kh2

 1点。27.b5 も1点。

27...Ne5

**********

28.b5

 1点。

28...axb5

**********

29.axb5

 1点。

29...Ng6

**********

30.Ne2

 6点。白の明白な攻撃目標は黒のcポーンである。しかし白がそれを攻撃しようとして単純にクイーンとルークをc列に移動すれば、黒はd列を占拠して反撃の機会を得る。そこで白の計画はまず Pg4 から Bg3 として敵のクイーンを弱いポーンの守りに縛り付けることである。しかしすぐに 30.g4 とすると 30...Nf4 と反撃される。従って 30.Ne2 が必要である。

30...Nf8

**********

31.Nf4

 4点。黒の狙いは 31...Ne6 としてクイーンをポーンの守りから解放することだった。

31...Ne6

**********

32.Nxe6

 1点。

32...Qxe6

**********

32.g4

 1点。

33...Qe5+

**********

34.Qxe5

 1点。

34...Rxe5

**********

35.Bf1

 2点。白のbポーンが当たりになっていることを見落としていたら5点減点。

35...Re7

**********

36.Bg3

 1点。

36...Kf8

 この手は黒の負けを早めた。しかし黒は次の白の狙いにもはや適切な応手がない。37.Rd8+ Kh7 38.Rb8 c5 39.bxc6e.p. Bxc6 40.Rxb6 ここでポーンは全部盤の同じ側にあるが白には2ビショップがあるので理論的に必勝の形勢である。

**********

37.Rd8+

 1点。

37...Re8

 つらい手である。しかし 37...Ne8 は 38.Rb8 c6 39.Bd6 である。

**********

38.Bxc7

 1点。完全な1ポーン得に加えてルークの交換と盤上を支配する2ビショップのために白の勝ちは容易である。以降の手順は 38...Rxd8 39.Bxd8 Nd7 40.Bc7 Ke7 41.Kg3 g5 42.Kf2 Ba8 43.Ke3 Bb7 44.Kd4 f6 45.Bc4 Ke8 46.Bd5 Bc8 47.Bc6 Ke7 48.Kd5 Ne5 49.Bd6+ Kf7 50.Bxe5 で黒が投了した。

診断 マスターの試合では適度に開放された局面の2ビショップは他の要因が互角ならばそれだけで勝勢に近い。白のビショップが並んで斜筋を支配したために黒はしだいに追い込まれていった。

2008年03月19日

あなたの棋力診断(9)

第3章 大局観

第9局

 本局のあなたは黒番で、指導パートナーはフランスのマスターで現在は米国に在住しているニコラス・ロッソリーモである。対戦相手は著者である。この試合は1950-51年にヘースティングズで指された。局面図までの手順は次のとおりである。

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.f4 e6 7.Be2 Qc7 8.O-O Nc6 9.Be3 Bd7 10.g4(黒がキャッスリングする前なので時期尚早である。)

YRate09.JPG

**********

10...Nxd4

 2点。黒が第一に考えなければならないことは他の何よりもまずf6のナイトのg8以外の逃げ場所を用意するということである。本譜の手に代わる唯一の候補は 10...O-O-O(1点)11.g5 Ne8 である。しかしキャッスリングした側の延び過ぎた白ポーンは理論上は弱点であるが、実戦的には主導権が永続的に続くのでその不利益を上回る。

11.Bxd4

**********

11...Bc6

 1点。

12.Bf3

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12...e5

 2点。タイミングの良い中原での攻撃で黒枡ビショップの道が開けるか白ポーンが分離される。12...d5 は0点である。この手は白が 13.e5 と突いてくれれば 13...Ne4 でうまいが、13.exd5 exd5 14.Re1+ とされると具合が悪い。

13.Be3

**********

13...Be7

 1点。13...exf4 14.Bxf4 Be7 はdポーンが弱くなるのでやらずもがなである。

14.f5

 14.g5 の方が良かった。

**********

14...h6!

 この機敏な応手(3点)によって白の攻撃は完全に頓挫し、自分自身のポーンによって閉じ込められた不良白枡ビショップと幾つかの黒枡に弱点が残ってしまった。15.g5 と突いても 15...hxg5 16.Bxg5 Qb6+ から 17...Qxb2 と安全にポーンをかすめ取られる。

15.Qd2

**********

15...b5

 2点。本局と第24局を比べてみると良い。本局はキングを真ん中に留め置き側面から攻撃を行なうのが勝る珍しい例である。15...O-O(4点減点)は 16.h4 の後明らかに白から猛攻を食らう。15...O-O-O(0点)も 16.b4 で黒の反撃にとって好都合となる。

16.Rad1

**********

16...Rc8

 2点。16...b4(0点)は 17.Nd5 でやぶ蛇である。本譜の手の後ならば白のcポーンが浮いているのでこのナイト跳びを牽制している。16...Qb7 で白をeポーンの守りにつかせる手もあり得る。

17.a3

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17...Qb7

 1点。

18.Qd3

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18...Nd7

 3点。黒は新たなポーンの弱点を作らせて攻撃目標としようとしている。このナイトはc5又はc4に侵入することを狙っている。

19.b4

**********

19...Nb6

 1点。

20.Bc1

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20...Nc4

 1点。

21.Nd5

**********

21...Bxd5

 1点。

22.exd5

**********

22...Bg5

 2点。このおなじみの策略で黒は相手の「優良」ビショップと交換し、味方のポーンによって閉じ込められた精彩のない相棒を残させる。

23.Rfe1

**********

23.Qe7

 2点。23...Bxc1 は1点。

24.Be4

**********

24...Bxc1

 1点。

25.Rxc1

**********

25...h5

 3点。黒のみごとな戦略の総仕上げである。クイーン翼で順調に行なわれていた攻撃が反対翼でも行なわれる。25...Qg5 は1点。

26.Qg3

**********

26...hxg4

 2点。26...h4? は考えるまでもない手である(1点減点)。黒は素通しのh列を活用することができる。

27.Qxg4

**********

27...Qf6

 1点。黒は 28.f6 を防いだ。

28.Bd3

**********

28.Rh4

 1点。

29.Qg3

**********

29...Nb6

 2点。この手は単にdポーンを攻撃するだけでなく、反対翼の攻撃に投入するためでもある。29...Nxa3 は申し分ない手で3点(30.Ra1 Nxc2 31.Rac1 Nxe1 32.Rxc8+ Kd7)。

30.Re4

**********

30...Rh5

 2点。30...Rxe4 31.Bxe4 Rc4 32.Re1 は0点。

31.Rg4

**********

31...Nxd5

 2点。31...Kf8(1点)32.Be4 より簡明である。

32.Rxg7

**********

32...Nf4

 1点。32...Ke7 も1点。

33.Rg8+

**********

33...Kd7

 1点。

34.Rxc8

**********

34...Kxc8

 1点。

35.Qg8+

**********

35...Kb7

 1点。35...Kc7 36.Qa8 は0点。本譜の手に対して 36.Be4+ なら 36...d5 である。

36.Kh1

**********

36...Qh6

 3点。37.Qxf7+ Kb6 はh2が受からなくなる。それで次の手が必然である。

37.Qg1

**********

37...Nxd3

 2点。

38.cxd3

**********

38...Rxh2+

 3点。

 ここで白は投了した。この後のポーン・エンディングは形だけのものである。

診断 長い目で見ればポーンの弱点の不利益はポーンそれ自体でなく、それを守るために役駒が守勢になることにある。本局で黒はまずクイーン翼で相手の駒の利きを狭め、それから反対翼で決定的な攻撃を仕掛けることができた。

2008年03月26日

あなたの棋力診断(10)

第3章 大局観

第10局

 本局のあなたは黒番で、指導パートナーはアルゼンチンのグランドマスターのエルマン・ピルニクである。対戦相手はハンガリーのグランドマスターのラスロ・サボである。この試合は1955年にマル・デル・プラタで指された。局面図までの手順は次のとおりである。

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.f3 O-O 6.Be3 Nbd7 7.Qd2 c5 8.Nge2 Re8 9.dxc5 Nxc5 10.Nd4 Ne6 11.Be2

YRate10.JPG

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11...Nxd4

 2点。『一般的に交換は凝り形を楽にしてくれる。』

12.Bxd4

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12...Be6

 1点。攻撃的な 12...Qa5 も1点。

13.O-O

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13...Qa5

 1点。13...Rc8 は0点。この手に対して白は浮いている黒のaポーンに付け込んで 14.Nd5! Bxd5 15.exd5 と指すことができる。これでクイーン翼でポーンが多数になり、同時に黒に ...a6 または ...b6 でポーンの形を弱めさせることができる。

14.Rfd1

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14...Rac8

 2点。ここで 15.Nd5 ときても 15...Qxd2 16.Rxd2 Nxd5(黒のaポーンは今度は大丈夫である)17.exd5 Bxd4+ 18.Rxd4 Bd7 19.b4(19...a5 でポーンの進攻を止められるのを防ぐため)19...b6 20.a4! で、白は多数派ポーンを可動性のある状態に保てないから(多数そのものでなく可動性こそ重要な要因である)黒はこのエンディングを引き分けにできる。最後の 20.a4 の代わりに 20.a3 なら 20...a5 21.Rb1 Ra8 22.Kf2 axb4 23.axb4 Ra2 でやはり黒は適切に反撃できる。

15.b3

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15...a6

 1点。厳密にはこの手は必要ない。黒は 15...Nd7 または 15...Nh5(いずれも2点)で黒枡での反撃を目指すのがより理にかなった指し方だった。

16.Qb2

 この非中央化の手は序盤の「マロツィ縛り」(c4とe4のポーン対d6のポーン)の結果として白がここまで維持してきた優位の多くを失ってしまう。16.Qe3 が良い手だった。

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16...Nh5

 2点。16...Nd7 は 17.Bxg7 Kxg7 18.Nd5+ から 19.b4(物量の始動)だし、他の手も 17.Nd5 を許すので明らかにこの手が良い。

17.Bxg7

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17...Nxg7

 1点。

18.Rac1

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18...Rc7

 2点。黒の狙いは ...Rec8 から ...b5 である。黒は 19.Nd5 を警戒する必要はなくなっている。なぜなら 19...Bxd5 20.exd5(20.Rxd5 の方が良いが危害は無い)20...Qc5+ から 21...Nf5 で困るのは白の方である。本譜の手以外でもかまわない。例えば 18...Nh5、18...Qe5、18...Qg5 である(全て黒枡での反撃を意図している。これは白の16手目の緩着がe3の地点で交わる二つの黒枡の斜筋を弱めてから急に黒が利用できるようになった)。これらの手はいずれも1点である。

19.Kh1

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19...Qe5

 1点。19...Rec8 も1点。

20.Qa3?

 これも非中央化の緩着である。20.Qd2 が正着だった。

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20...Nh5

 1点。

21.Nd5

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21...Bxd5

 1点。

22.Rxd5

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22...Qf4

 2点。22...Qe6、22...Qf6 又は 22...Qg7(いずれも1点)23.Rcd1 よりも働きがある。

23.Rcd1

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23...Qh6

 3点。この尋常でない手は見え見えの 24...Ng3+ から ...Nxe2 又は ...Qe3# を狙っている。

24.Kg1

 これしかない。

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24...Qe3+

 1点。

25.Kf1

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25...Nf4

 1点。

26.R5d2

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26...Rc5

 3点。黒の狙いは痛烈な 27...Nh3! 28.gxh3 Rg5 である。ここまでの黒の最後の4手は全て黒枡だけで活動していることに留意されたい。

27.Qb2

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27...Nxg2!

 4点。27...Nh3 は 28.Qd4! で受かるので1点減点。

28.Rd5

 28.Kxg2 は 28...Rg5+ 29.Kh3(29.Kh1 は 29...Qf2 30.Bd3 Qxf3+ 31.Rg2 Qxd1+)29...Qf2 30.f4 Qg2+ 31.Kh4 Qxh2+ 32.Kxg5 Qg3+ 33.Bg4 h6+ 34.Kxh6 Qh4+ であと1手で詰みになる。

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28...Rxd5

 1点。

29.Rxd5

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29...e6

 精妙なこの手は3点。29...Nf4(2点)又は 29...Nh4(1点)よりも速やかに勝ちが決まる。

30.Rxd6

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30...Qf4

 1点。

31.Rd7

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31...Qxh2

 1点。

32.Qf6

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32...Rf8

 1点。

33.c5

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33...Nf4

 2点。33...Qh1+ 34.Kf2 と 33...Ne3+ 34.Ke1 ははっきりした勝ち筋はない。

34.Bc4

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34...Qg2+

 1点。34...Qh3+ 35.Kf2 Qg2+ 36.Ke3 は勝ちが難しくなるので0点。

35.Ke1

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35...Qxf3

 1点。

36.Qd4

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36...h5

 3点。前進あるのみ!このポーンをさえぎるものはない。

37.Rxb7

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37...h4

 1点。

38.Qe5

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38...Rd8

 5点。急転直下の終局となった(38...h3 は1点のみ)。39.Rb8(他の手なら 39...Rd1# で詰み)39...Ng2# で詰みなので白は投了した。

診断 本局は白ポーンがc4とe4、黒ポーンがd6にある時に出現する「マロツィ縛り」の局面の実地教育である。白の領域の優位は黒枡の弱点と引き換えに得られた。この弱点を十分に守らなかったのは黒の失敗で直接の敗因につながった。本局のあなたの得点が低かったら黒の攻撃がこれらの黒枡の弱点を利用したものであることを低く評価したのではなかったかと振り返って見るのが良いだろう。

2008年04月02日

あなたの棋力診断(11)

第3章 大局観

第11局

 本局のあなたは黒番で、指導パートナーはブラジルのカルバーリョである。対戦相手はイタリアのプリマベーラである。この試合は1952年にヘルシンキで開催された国際団体戦で指された。局面図までの手順は次のとおりである。

1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 c5 4.cxd5 exd5 5.Nf3 Nc6 6.g3 c4 7.Bg2 Bb4 8.O-O Nge7 9.Bf4 O-O 10.Ne1

YRate11.JPG

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10...Bg4

 3点。この局面の最も大きな特徴はクイーン翼で黒ポーンが多数派で可動性もあるということである。クイーン翼で多数派の側はほとんど常に収局を目指すべきである。そうすれば敵キングがまだ反対翼にいるうちに側面のポーンからパスポーンを作ることができる。しかし黒のクイーン翼の多数派と引き換えに白は中原で多数派となっている。そしてもし白が e4 と突くことができれば黒のcポーンは孤立し容易に攻撃目標となる。黒は e4 を 10...f5(1点)で直接防ぐことができた。しかしそうすれば黒のdポーンが白の小駒によって攻撃にさらされる。例えば 11.Nc2 Ba5 12.Ne3 Be6 13.Bg5 という具合である。そこで黒は e4 を間接的な手段で防いだ。もし白が適切な準備無しにポーンを突けば自分のdポーンが非常に弱くなってしまう。

11.Nc2

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11...Ba5

 1点。11...Bd6(1点減点)は 12.Nxd5 Nxd5 13.Bxd5 Bxf4 14.Bxc6 で良くない。

12.h3

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12...Be6

 2点。12...Bf5(1点)の方が融通が利いて良さそうに見えるが 13.e4! Bxc3(13...dxe4 は 14.Ne3)14.bxc3 Bxe4 15.Bxe4 dxe4 16.Qe2 でポーンを取り返して白が良い。

13.Kh2
 (13.e4 の方が良かったがそれでも黒は 13...f5! で局面を閉鎖的に保つ。)

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13...Qd7

 2点。これでほぼ展開を完了し、d列における自分の立場を強化してさらに e4 突きを抑止している。直接的な ...f5 は1点。後に Bg5-Bxe7 で白がいくらか楽になる。

14.f3

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14...Rad8

 2点。14...f5 は1点。

15.Qd2

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15...Ng6

 2点。これはe7のナイトが釘付けにされないようにして ...f5 と指すためである。

16.Bg5

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16...f6

 1点。一貫性のある継続手はもちろんこれしかない。

17.Be3

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17...f5

 1点。

18.Bg5

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18...Rde8

 2点。この位置は白のeポーン突きを依然としてくじくためである。しかし 18...Rb8(2点)でできるだけ早く ...b5 突きを狙うのも可能である。みずから釘付けに入る 18...Nce7 と 18...Nge7 は2点減点である。

19.e3

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19...b5

 1点。釘付けのおかげで多数派ポーンの動員は特に準備が要らない。

20.a3

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20...a6

 1点。2手前に ...Rdb8 と指していれば良かった理由はbポーンをさらに突き進めるためにこの準備が必要なかったことである。つまり 20...Bc7 と指してその後すぐに ...a5 と指すことができた。

21.Rae1

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21...h6

 1点(前の手でこの手を選択していたらその手も1点)。黒はまず2ビショップ体勢にしてから次の段階に進む。

22.Bf4

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22...Nxf4

 1点。

23.exf4?

 これは黒にとって大助かりである。23.gxf4 がはるかに良かった。

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23...Bf7

 3点。駒交換が進んで収局に近づくと遠方の多数ポーンがほとんど常に大切になってくる。それで黒は唯一の開通列で大駒の総交換をしむける。白はほとんど拒めない。さもないと黒はe列でクイーンとルークを2重または3重に重ねてついには敵陣に侵入してくる。23...Bb6(2点)も白をdポーンの守りに縛り付けて強い手である。23...b4? は1点減点である。理由は将来的にパスポーン作りを容易にするためにはポーンを連結させておくのが黒にとって非常に大切だからである。

24.Rxe8

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24...Rxe8

 1点。

25.Re1

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25...Rxe1

 この手と 25...Re7、25...Re6 はどれも1点。

26.Qxe1

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26...Qe6

 1点。

27.Qxe6

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27...Bxe6

 1点。

28.Kg1

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28...Bb6

 2点。白のdポーンが弱いので黒は多数派ポーンを楽に進攻させることができる。これはつまり白が23手目でeポーンで取ったのが悪手であったことの現れである。

29.Ne2

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29...a5

 1点。

30.Kf2

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30...b4

 1点。

31.axb4

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31...axb4

 1点。

32.Ke3

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32...Kf7

 1点。

33.g4

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33...g6

 1点。もちろん黒は 33...fxg4?(3点減点)で相手の二重ポーンを解消してやることはない。

34.h4

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34...h5

 3点。これで最終的にキング翼のポーンが固定され、白の最後の希望である Bh3 から h5 で暴れる手を防いでいる。

35.g5

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35...Bc8!

 3点。35...Ba5(1点)や 35...b3(36.Na3! Ba5 37.Nb1 で黒は敵陣突破が容易でなくなるので1点減点)よりも残りの小駒を働かせる方がずっと確実である。

36.Bf1

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36...Ba6

 1点。

37.Kd2

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37...Ke6

 1点。

38.Ke3

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38...Bb5

 1点。前の手でこの手を選んでいたらそれも1点。

39.Bh3

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39...Ba4

 1点。

40.Na1

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40...Bd1

 2点。白の1ポーンが落ちる。

41.Bg2

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41...Bxe2

 1点。

42.Kxe2

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42...b3

 2点。すぐにポーンを取る(1点)よりもずっと強い手である。

42.Kd2

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43...Bxd4

 1点。

 白投了。

診断 基本的にこの試合から得られる教訓は簡単である。クイーン翼でポーンが多数で、それが可動性があり攻撃にさらされていなければ、自信を持って駒を交換して収局に向かうことができる。本局での成績が悪かったらこの原則の理解が不十分であることを示している。

2008年04月09日

あなたの棋力診断(12)

第3章 大局観

第12局

 本局のあなたは白番で、指導パートナーは元世界選手権挑戦者でグランドマスターの中でも最も気さくで好かれている一人のダビッド・ブロンシュテインである。対戦相手は元英国選手権者のハリー・ゴロンベックである。この試合は1956年にモスクワで開催されたアリョーヒン記念大会で指された。局面図までの手順は次のとおりである。

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 Bb4 4.Nf3 b6 5.e3 Bb7 6.Bd3 Ne4 7.O-O Bxc3 8.bxc3 O-O 9.Ne1 f5 10.f3 Nf6 11.a4 Nc6

YRate12.JPG

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12.e4

 2点。このような陣形の局面はニムゾ・インディアン防御から良く生じ、白黒双方にとって重要な形である。両者とも自分の作戦を速やかに遂行しなければならない。白の作戦は自分の双ビショップのために中央を開放状態にし、最終的にはキング翼攻撃を行なうことである。黒は相手をc4のポーンの守りに縛り付けるように努めなければならない。そのための手段は ...Na5、...Ba6、...c5、...Rc8 である。従って 12.Nc2 のような受身の手は0点である。12.Qc2、12.Qe2、12.Ba3 はどれも1点である。

12...fxe4

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13.fxe4

 1点。

13...e5

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14.Bg5

 3点。

 14.d5(1点)は 14...Na5 で局面を閉鎖状態にしてしまい(白の双ビショップにとっては好ましくない状況)、黒のナイトを元々行きたかった地点に行かせてしまう。14.dxe5(0点)は黒の二つのナイトを動き易くさせてしまう。14.Nf3 と 14.Be3(どちらも2点)も十分考えられる手だが本譜の手よりは積極性が劣る。

14...Qe7

 14...exd4 15.cxd4 Nxd4? は 16.e5 があるのでだめである。

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15.Nc2

 1点。

 攻撃されているdポーンを守った。

15...Qd6

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16.Bh4

 4点。黒はdポーンを取る手を狙っていた。この手はそれを間接的に防いでいる。16...exd4 は 17.Bg3 Qc5 18.cxd4 Nxd4? 19.Bf2 で失敗する。16.d5 は1点、16.dxe5 は0点である。

16...Rae8

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17.Bg3

 2点。明らかに最善手である。eポーンが釘付けになっているので黒は15手目を引っ込めるしかない。

17...Qe7

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18.Ne3

 3点。白はまたしても中原ポーンの固定化を巧い手筋で回避している。即ち 18...exd4 なら 19.Nf5 である。18.d5 と 18.dxe5 は共に0点である。

18...d6

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19.Bh4

 4点。ビショップの行ったり来たりは奇妙に思われるかもしれない。しかし双ビショップ体勢にすることが白の作戦であることを考えればきわめて理にかなっている。19.Nf5、19.Nd5、19.Ra2(ルークを重ねる準備)はどれも2点である。これらはどれも合理的な手だが本譜の手より迫力に欠ける。

19...Nd8

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20.Nd5

 1点。

20...Bxd5

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21.cxd5

 2点。こちらのポーンで取る方が 21.exd5(0点)よりはるかに良い。白の狙いは 22.Bb5 である。双ビショップ体勢になった白の次の課題は双ビショップが十分に効果を発揮できるように局面を開放状態にすることである。

21...c6

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22.Qb3

 3点。22.dxc6(2点)も当然の良い手である。しかし白はこの手を指す前にさらに自陣を強化する余裕がある。本譜の手に対して 22...cxd5 と来ればやはり 23.Bb5 が成立する。

22...Kh8

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23.Rae1

 2点。23.dxc6、23.Rf2、23.Ra2 はどれも1点。

23...h6

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24.Qa3

 5点。多分本局で一番難しい手である。この手は黒クイーンに対して隠れた狙いを持っているので黒は ...g5 から ...Nh5 で自陣をくつろげることができない。具体的には 24...g5 25.Bg3 Nh5 26.dxe5 dxe5(26...Nxg3 なら 27.exd6)27.Bxe5+ である。すぐに 24.Bg3(1点)とするのは 24...Nh5 で同じ変化にはならない。24.dxc6 は2点である。24.dxe5 dxe5 25.c4 は 25...c5 で白に保護パスポーンができるが黒はナイトをd6に配置してせき止めることができるのでかえって黒が楽になる。

24...g5

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25.Bg3

 1点。

25...Nd7

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26.dxc6

 2点。他の手なら黒は 26...cxd5 と取れるので今取る必要がある。

26...Nxc6

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27.Bb5

 2点。

27...Rxf1+

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28.Rxf1

 1点。

28...Ncb8

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29.Bc4

 2点。この手の狙いは 30.Rf7 である。白の双ビショップが本領を発揮し始めた。

29...Rf8

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30.Rxf8+

 1点。

30...Qxf8

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31.dxe5

 1点。これで1ポーン得になる。黒が 31...Nxe5 と取るのは駒損になる。

31...Nc5

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32.exd6

 1点。

32...Nxe4

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33.d7

 3点。33.Be5+ も速い手なので3点。

33...Nc5

 33...Qxa3 なら 34.d8=Q+ で白が勝つ。

**********

34.Be5+

 1点。

34...Kh7

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35.Bd3+

 2点。黒投了。35...Kg8 と逃げても 36.Qa2+ で決まる。

診断 本局では戦略の目標(ここでは双ビショップ体勢の確立と自分に都合の良い局面の開放)が戦術的手段によってどのように達成されるかが示されている。このような状況はアマチュアの選手にとって最も苦手な分野の一つである。それは大局的な判断と同時に具体的な変化を読まなければならないからである。

2008年04月16日

あなたの棋力診断(13)

第3章 大局観

第13局

 本局のあなたは黒番で、指導パートナーはソ連外の最強選手のサミュエル・レシェフスキーである。対戦相手はエイブ・ターナーである。この試合は1956年にニューヨークで開催されたローゼンワルド大会で指された。局面図までの手順は次のとおりである。

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 Bb4 4.Qc2 c5 5.dxc5 O-O 6.Bf4 Bxc5 7.e3 Nh5 8.Bg3 Nc6 9.Be2 Nxg3 10.hxg3

YRate13.JPG

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10...h6

 2点。このような詰みの狙いをどのように受けたらよいかは常に問題となる。この局面では 10...g6 と受けるのは黒のポーンが余りにも白枡に片寄って自分の白枡ビショップの障害になりいつか白クイーンがh6に侵入してくる危険性を排除できなくなる。10...f5 は明らかな悪手で 11.g4 で黒の二重ポーンを解消させるし、ますます自分のキング翼を薄くしてしまう。

11.Rd1

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11...b6

 2点。白の小駒は容易に攻撃に加われないので黒は今のところは素通しのh列をあまり気にする必要はない。この手は ...d6 から ...Bd7 と展開する手よりも積極的な手段である。

12.Nf3

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12...Bb7

 1点。

13.g4

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13...Be7

 1点。白の狙いは g5 突きである。黒はこの狙いを防ぐためにポーンを動かして自分のポーンの形をさらに崩すのを嫌った。

14.Qb1

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14...Rc8

 2点。黒は自分のポーンの形を決める前にインディアン防御によく出てくるのだが役駒を動かして敵のポーンの形に隙を作らせる良く知られた戦略に従っている。14...d6(1点)も考えられる手である。しかし 14...Qc7 は 15.Nb5 と来られ、クイーンがb8に引っ込むと隅のルークが動けなくなり、他の所へ行けば白のナイトがd6に居座ってしまう。

15.O-O

 自らの攻撃に将来性がないことを認めた手である。

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15...d6

 1点。今度は 15...Qc7(1点)も可能である。16.Nb5 と来ても 16...Qb8 でよい。

16.Rc1

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16...Qc7

 1点。白の次の手を避けた 16...Qd7 は2点である。

17.Nd5

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17...Qd7

 2点。17...exd5 18.cxd5 は0点である。白は駒を取り返した後f5の地点を自分のナイトのための拠点として利用できるようになる。

18.Nc3

 一貫性のない手である。白は 18.Nxe7+ と指すべきで互角の形勢である。白は 18...Qc7 19.Nd5 と同じ手を繰り返して黒が引き分けに同意してくれることを期待していた。

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18...Rfd8

 この手と 18...Bf6 は2点。

19.Rfd1

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19...Bf6

 1点。

20.Ne4

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20...Qe7

 2点。21.Nxf6+ と取ってくれば 21...Qxf6 でクイーンが攻撃的な位置を占める。代わりに 20...Be7 と守ると 21.c5 で白にとってありがたい。

21.Nc3

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21...Na5

 2点。黒は展開が完了したので相手のポーンの形を組織的に弱めていく作戦を開始した。

22.Nb5

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22...a6

 1点。23.Na7? と入ってくれば 23...Ra8 で取られる。

23.Nbd4

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23...g6

 1点。黒は欠陥のない陣形でさらなる展開を見据えている。白はとっくの昔にキング翼での攻撃を断念しているのでこの手は陣形を弱めることにはならない。23...Rc7 と 23...Nc6(どちらも1点)も良い手である。

24.b4

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24...Nc6

 1点。

25.a3

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25...Kg7

 この手と 25...Nxd4 及び 25...Rc7 はどれも1点。

26.Bd3

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26...Nxd4

 この手と 26...Rc7 は1点。

27.Nxd4

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27...Rc7

 1点。

28.Be2

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28...Rdc8

 1点。黒が白のcポーンを取れる見込みは当分ないが圧力をかけることによって白の駒をその守りに縛り付ける。

29.Nb3

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29...Be5

 3点。この手はさらに白のポーンの弱体化を誘う目的で指された。30.f4 なら 30...Bf6 で黒はビショップまたはクイーンをg3に潜り込ませる狙いである。しかしこの方が本譜の白の手よりも良かった。

30.Nd2

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30...Qf6

 3点。...Bb2 が常に狙いとして浮かび上がった。

31.Nf1

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31...Bc6

 3点。黒の狙いは ...Ba4 である。32.b5 なら 32...axb5 33.cxb5 Bd5 でいずれにしても黒の二つのビショップは理想的な平行または交差した斜筋で威力を発揮する。

32.Re1

**********

32...Ba4

 1点。

33.Bd1

 この手は見落としによる悪手だった。33.Qa2 ならまだねばれた。

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33...Bxd1

 1点。

34.Rcxd1

**********

34...Rxc4

 1点。

35.f3

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35...d5

 この手と 35...Rc2 は1点。

36.Rd3

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36...Rc2

 1点。

37.Red1

**********

37...Rb2

 2点。白はクイーンを取られてしまう。

38.Qa1

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38...Rxg2+

 1点。

39.Kxg2

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39...Bxa1

 1点。

40.Ng3

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40.Rc2+

 この手と 40...Qb2+ 及び 40...Rc3 は1点。

41.R1d2

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41...Qb2

 この手と 41...Rxd2+ は1点。

42.Nf1

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42...Rxd2+

 1点。

43.Rxd2

**********

43.Qxa3

 1点。

 白投了。

診断 この試合は相手が主導権を取る努力をしようとせず、あなたの方から相手を捕まえるのを待っている時に取るべき技法を示している。このような状況では全面攻撃を開始する前に自分の駒を最も攻撃的でお互いに協力し合う位置に配置し直す時間がある。特に注目すべきは23,25,29,30及び31手目のように少しずつではあるが確実に自分の陣形をじっくり良くしていく指法である。このような手は大局観指法の真髄である。

2008年04月23日