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世界のチェス雑誌から アーカイブ

2008年09月14日

世界のチェス雑誌から(1)

「British Chess Magazine」2008年9月号(1/2)

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世界ジュニア選手権戦

 世界ジュニア選手権戦(スイス式13回戦)は8月3日から15日までトルコのガジアンテップで開催された。デービド・ハウエルは英国が長年抱いていたメダルへの期待を背負ってこの大会に参加した。17歳9ヶ月にして既に数値棋力(レイティング)は英国の第4位である。

 参加者の中での順位は14位だがトルコに来る直前にはアンドラのオープン大会で十数名の強豪GMを抑えて8/9という素晴らしい成績で優勝していた。だから彼がこの由緒ある大会で英国二人目の優勝者(トーニー・マイルズが1974年に優勝したのみ)となるのではないかという期待が大きかった。

 ハウエルは早々とトップ集団から抜け出し6/7の成績でアーリク・ブラウンと先頭をきっていた。FIDEの「vapidplay」(怪速試合)の持ち時間とホテルの良くない宿泊環境のために選手たちの成績はレイティング順とはほど遠く上位10人のうちの多くは不振を極めていた。

 第8回戦でハウエルは中国のリー・チャオとの試合で137手に及ぶマラソン試合を演じた。彼は早い段階で持ち時間をほとんど使ったので終わりの少なくとも70手ほどを毎手30秒の加算時間で指し続けた。その間の試合内容も難解で彼の黒キングは白の大駒があたりにいるにもかかわらずg8の地点からa3を通ってd1の地点へ移動した。引き分けにするチャンスが訪れたが去って行き不運にも負けてしまった。

 こんなとんでもない試合の後は弱い選手ならへこたれてしまうところだがハウエルはちょうど次の試合でまたも127手のこれまた難しい試合をロシアのGMイワン・ポポフと指した。またしても才能ある指し回しで非常に少ない持ち時間を耐えきった。そして今度は彼が優勢をつかみついにクイーン対ルークの収局で勝ちをもぎ取った。

 これで先頭のアーリク・ブラウンと0.5点差になったがそこでフィリピンの神童ウェスリー・ソーに2敗目を喫した。恐らく2007年世界ジュニア選手権者のアーメド・アドリーも優勝する途中で2敗したのを覚えていたのだろう、ハウエルは全てのシリンダーに火をつけて発奮し次の2局を連勝した。そのうちの一局は黒番で数値棋力2605のイスラエルのマクシム・ロッドシュテインが相手だった。これで共にインドのアブヒジート・グプタ及びパリマルジャン・ネギと首位に立ち最終回に入った。そして最終戦で同じ得点になれば順位判定で有利な成績だった。

 ハウエルはことによると先のマラソン試合で体力を消耗していたのかもしれないのだが全力を出し切れず最終戦でアブヒジート・グプタに負けてしまった(グプタは最後の5戦を全勝した)。この結果ハウエルは同点3位に落ちた。しかしどの基準に照らしてもあっぱれな戦いぶりだった。先のアンドラでの大会の優勝と合わせ内容的にずっと高い水準に達したことを示した。彼はまだ十分若くて来年以降のこの大会にも年齢的に参加が可能である。

世界ジュニア選手権戦
ガジアンテップ(トルコ)、8月3日-15日
スイス式13回戦

アブヒジート・グプタGM インド 2551 10
パリマルジャン・ネギGM インド 2529 9.5
デービド・ハウエルGM イギリス 2561 9
アーリク・ブラウンIM ドイツ 2533 9
エルタイ・サファルリGM アゼルバイジャン 2527 9
ホウ・イーファン女流GM 中国 2557 9
バッセム・アミンGM エジプト 2561 9
...
69カール・マクフィリップス アイルランド 2221 6
...
79ピーター・コンスタンティノウ イギリス 2225 5.5

セアラ・ヘガティは女流ジュニア選手権の部で6.5点

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(この号続く)

2008年09月24日

世界のチェス雑誌から(2)

「British Chess Magazine」2008年9月号(2/2)

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2008年世界ジュニア選手権戦
白 マクシム・ロートシュテイン
黒 デービド・ハウエル
イギリス布局 [A16]

1.c4 Nf6 2.Nc3 d5 3.cxd5 Nxd5

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4.g3 g6 5.Bg2 Nb6 6.d3 Bg7

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7.Be3 Nc6 8.Nf3 O-O 9.O-O e5 10.b4 Nd4[訳注 10...Nxb4 は 11.Bc5]

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11.Rb1

 1999年イスラエルでのゲルファント対アブルーフ戦では 11.a4 Be6(2001年ダッカでのデイビーズ対ホッセイン戦では 11...a5 12.b5 h6 13.Nd2 c6 14.Rb1 と進み引き分けに終わった)12.Ng5 Bb3 13.Qb1 a5 14.b5 c6 15.Nge4 と進み白が勝った。

11...Bg4 12.Nd2 c6 13.Nb3

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 白としてはやや消極的な手で、この対局(第12回戦)までに全選手にとって過酷な大会だったことが反映しているのかもしれない。

13...Nd5 14.Bxd4 exd4 15.Nxd5 cxd5

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16.h3 Bf5 17.Rc1 b6 18.Qd2 Qd6

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19.Rc2 Rac8 20.Rfc1 h5 21.a3 Rxc2 22.Rxc2 Bd7

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 黒の中原のポーンは二重ポーンになっているが白陣に対して締め付ける効果を発揮している。ここでは確かに黒が悪くない。

23.Rc1 Re8 24.h4 Kh7 25.Qc2 Qe6

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26.Re1 Rc8 27.Qa2 Ba4 28.Qb1 Rc3 29.Nd2 Qc6

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 黒の優勢が明らかになってきた。

30.Qa1 Bf6 31.Nf3 Kg7 32.Ng5 Rc2 33.Qb1 b5

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34.Nh3 Be5 35.Ng5 a6 36.Qa1 Bf6 37.Nh3 Bb3 38.Nf4

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38...Be5

 白は多分 38...Ra2?! を期待していたのだろう。それなら 39.Qb1 Rxa3 40.Rc1 Qd6 41.Rc5 で黒のルークとビショップがクイーン翼でくつわを並べて遊び駒になってしまう。

39.Kf1 Rc3

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40.Qb2?!

 白は 40.Nh3 で卑屈に徘徊を続けるべきところだろう。

40...Bxf4 41.gxf4 Qc7

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42.f5

 42.Qd2? は 42...Rc2 43.Qd1 Qxf4 で負ける。

42...gxf5 43.Qd2 f4

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44.Qb2

 44.Bf3 の方が固そうだがいずれにしても局面は問題を抱えたままである。

44...f3! 45.Bxf3 Qf4

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46.Kg2

 おそらく白はここで何か幻影を見ていたのであろう。46.Bxh5 Qxh4 47.Bf3 なら少し不安はあるがまだ戦えた。

46...Qxh4 47.Rh1 Qg5+ 48.Kh2 Kf8 49.Rg1

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49...Qf4+ 50.Kg2 Rc6 51.Kh3 Rc3 52.Kg2 Bc2!?

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53.Qa2

 もちろん 53.Bxd5?? はだめで 53...Qg5+ でただ取りされる。53.Rc1? も 53...Rb3! 54.Qa1(54.Qxc2 は 54...Rc3 で黒勝ち)54...Bxd3!! 55.exd3 Rxd3 で白の負けになる。

53...Rc6!

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 ハウエルは白がこの手に対して Qc1 と指せないことにつけ込んだ。もしそれが可能なら白が受け切れる。

54.Qb2 Bxd3!

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55.Rd1

 55.exd3 なら 55...Rg6+ 56.Kf1 Qxf3 57.Rxg6 Qxd3+ でポーンが次々と落ちる。

55...Rg6+ 0-1

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 56.Kf1 しかないが 56...Qxf3! ですぐに詰みになる。

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(この号終わり)

2008年10月08日

世界のチェス雑誌から(3)

「Schach」2008年9月号(1/5)

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アーリク・ブラウン 金へまっしぐら、最後は銅メダル
トルコのガジアンテップでインド勢が圧勝

 世界ジュニア(20歳以下)選手権戦はあらゆる若者の競技会のうちで最高峰の大会である。なぜならそれはチェスの世界で名を成すための登竜門となっているからである。かつてはスパスキーやカスパロフ(1980年のドルトムント大会)のような名人もこの栄光の座についた。現在では世界の若者のトップクラスはこの大会に参加しなくなっている。マグヌス・カールセンの名前もセルゲイ・カリャーキンの名前もない。それにしてもヤン・ニェポムナシュチイ、マクシム・バシエ=ラグラーブ、ファビアノ・カルアナたちの名前も見当たらない。

 それでも今年の大会は相変わらず多くの参加者があった。ドイツ選手は2名でダーフィト・バラミゼとアーリク・ブラウンが代表だった。ダーフィトはビールの大会の最終日にこちらへ来たが全く調子が悪かった。しかしその分アーリクが頑張った。

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表彰式で左からパリメルジャン・ネギ、アブヒジート・グプタ、アーリク・ブラウン

 マクフィリップスとトウフィギに2連勝した後イギリスのハウエル(FIDE2561)とベラルーシのシガルコ(FIDE2583)とに対して互角の熱戦の2引き分けが続いた。第5回戦はアルマースバッハ・イム・タル出身の20歳にとって最初のハイライトとなった。

準スラブ防御 [D15]
白 ブラウン (2533)
黒 ラズニツカ (2601)

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.Nc3 a6 5.c5 Nbd7

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6.Bf4 Nh5 7.Bd2 Nhf6 8.Rc1 g6 9.h3 Qc7 10.g3 Bg7

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11.Bf4 Qd8 12.Bg2 O-O 13.O-O Nh5 14.Bd2 f5 15.Qb3

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 この陣形と22手目までの全手順はゾルタン・リブリと事前に研究済みだった。元世界選手権挑戦者候補のハンガリー人はガジアンテップでドイツの選手とオーストリアのマルクス・ラガーのコーチを務めていた。

15...e5?

 「相手が研究手順どおりに指してきたのでもちろんうれしかった。15...Kh8 と指した前例が1局あったが彼は知らないようだった。」

16.Ng5!

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 この手以降の戦術的な帰結はリブリとブラウンで正確に調べてあった。

16...exd4

 e6での両当たりを 16...Qe7 で防ぐのは 17.Bxd5+ でうまくいかない。

17.Nxd5 cxd5

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18.Bxd5+ 新手

 代わりに 18.Ne6?! は 18...Qe7 19.Nxf8 Nxf8 20.Bxd5+ Kh8 で2008年ブンデスリーガ(ドイツ国内団体リーグ)のベルケシュ対バクロ戦で引き分けに終わった。

18...Kh8 19.Ne6 Qe7 20.c6! bxc6 21.Bb4 Qf6 22.Rxc6!

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 白が勝勢である。後は勝負所はない。

22...Bb7 23.Nxf8 Bxc6 24.Nxd7 Bxd5 25.Qxd5 Qd8 26.Rc1 Qg8

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27. Qb7 Rd8 28.b3 Qe8 29.Ba5 Nxg3 30.fxg3 f4 31.Bxd8 Qe3+

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32.Kh1 Qxc1+ 33.Kg2 Qc2 34.Qf3 h5 35.Bf6 d3 36.Bxg7+ 1-0

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世界ジュニア選手権戦
ガジアンテップ、2008年8月3日-15日
男子 参加者109名/スイス式13回戦
グプタ(インド)255110
ネギ(インド)25299.5
ブラウン(ドイツ)2533
ハウエル(イギリス)2561
サファルリ(アゼルバイジャン)2527
ホウ・イーファン(中国)2557
アミン(エジプト)2561
ロートシュテイン(イスラエル)26058.5
ソー(フィリピン)25778.5
10グエン(ベトナム)25798.5
11メルクミャン(アルメニア)25078.5
12シガルコ(ベラルーシ)25838.5
13ウェン・ヤン(中国)24878.5
14シュギロフ(ロシア)25458.5
・・・
34バラミゼ(ドイツ)25937.5
女子 参加者67名/スイス式13回戦
ドロナバリ(インド)246110.5
ムシチュク(ウクライナ)2413
オズトゥルク(トルコ)2188
ゴメス(インド)2316
パイキゼ(グルジア)2277
ミカゼ(グルジア)22588.5
マメジャロワ(アゼルバイジャン)22848.5
ネムコバ(チェコ)23728.5
カシモワ(アゼルバイジャン)21488.5
10ボドナルク(ロシア)23948.5
11ソウミャ(インド)2293
12セウェリュキナ(ロシア)2300
13ナディヒ(インド)2241
14ナハバイェワ(カザフスタン)21707.5
・・・
32フールト(ドイツ)22986.5

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(この号続く)

2008年10月15日

世界のチェス雑誌から(4)

「Schach」2008年9月号(2/5)

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アーリク・ブラウン 金へまっしぐら、最後は銅メダル(続き)

 この一勝がはずみとなった。アーリクが金メダル候補へのし上がった。そして次の2局も連勝した。その初めの試合は穏やかな陣形戦のクイーン無し中盤戦の局面からである。

白 ストゥパク (2458)
黒 ブラウン (2533)

YCM0004A.JPG 24...Nd7-c5

 黒は何といっても要衝に陣取っている Nc5 のおかげで優位に立っている。白は何も反撃策がなく弱いポーンもかかえている。しかし巧妙な指しまわしはまだ必要でなかった。そしてベラルーシの選手は少し疑問手を出した。

25.Rd1 Kf8 26.f4 Ke7 27.Kf2 f6 28.Ke3 Bg8 29.Bf1 Be6 30.Be2 g5

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31.fxg5?!

 このポーン交換はその後の手とも相まって黒の有利を拡大させたとアーリクは要約し後に確信している。

31...fxg5 32.e5?! Rf8!

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 勝利への道である。e5のポーン取りの 33...Rf5 を狙っている。

33.Rf1 Rxf1 34.Bxf1 Bf5 35.Ne2 Bd3 36.Kd4 b6 37.h4 Kf7

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38.hxg5 hxg5 39.Kc3 Kf8 40.Kd4 Ke7 41.g4 Bxe2 42.Bxe2 Nxa4 43.Bf3 Kd7 0-1

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(この号続く)

2008年10月22日

世界のチェス雑誌から(5)

「Schach」2008年9月号(3/5)

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アーリク・ブラウン 金へまっしぐら、最後は銅メダル(続き)

 次の試合で前評判の高かった中国のチャオ・リー(2590)に勝った試合は同様にブラウンの楽勝のようだった。この時点でデービド・ハウエルと共に3人(チャオ・リー、サファルリ、ホウ・イーファン各5½点)を抑えて6/7でトップに立った。

 黒でアゼルバイジャンのサファルリと引き分けた後は中国の少女ホウ・イーファンとの対戦だった。ホウは本大会以前に急激に強くなり明らかに第二のユーディット・ポルガーになろうとしている。この試合は本大会でのアーリクの名局の一つになった。

自戦解説 アーリク・ブラウン

ニムゾ・インディアン防御 (E32)
白 アーリク・ブラウン (2533)
黒 ホウ・イーファン (2557)

 事前の研究でこの中国の少女は戦術にかなり長けていることに気付いていた。例えばラズニツカ戦では不利な局面をしのいだだけでなく勝ってしまった。だからボールを低く保つように努めたかった。

1.d4 e6 2.c4 Nf6 3.Nc3 Bb4 4.Qc2

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4...O-O

 4...d5 を予想していたのでこの手は意外だった。

5.a3 Bxc3+ 6.Qxc3

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6...d6

 6...b6 が断然多く指されている手である。

7.Bg5 Nbd7 8.f3

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8...b6

 白に e2-e4 と指させないために 8...d5 と突く手も考えられる。

9.e4

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9...c5

 9...Nxe4 10.Bxd8 Nxc3 11.Bxc7 Na4 12.b3 +-

10.Nh3 h6 11.Be3 Ba6 12.Rd1 cxd4 13.Qxd4 Rc8 14.b3

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 双ビショップと陣地の広さで白はわずかだが確固とした優勢を保っている。それに加えて重要なことは白が黒を押さえ込んでいるので 14...d5 などは 15.e5 で無理である。

14...Ne8 15.Be2 Nc5

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16.Qb2

 16.b4 と突いてc4のポーンを弱めたくなかった(16...e5 17.Qb2 Ne6)。

16...Qe7 17.Nf4 Nf6 18.O-O Rfd8 19.b4

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 19...Ncd7?(20.c5! +-)だけ考えていたのでここではもうほとんど勝勢だと思っていた。しかし黒の強硬で実戦的な必然の応手は考えていなかった。

19...e5!

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20.Nd5

 20.bxc5 exf4 21.cxd6 Rxd6 22.Bxf4(22.Qb4 Re6! 23.Bxf4 Bxc4)22...Rxd1 23.Rxd1 Bxc4 ははっきりしないと思った。

20...Nxd5

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21.exd5

 21.cxd5?? Na4! 22.Qd2 Bxe2 23.Qxe2 Nc3 -+

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21...Nd7

 21...Na4 22.Qb3 b5 23.Rc1(23.cxb5 Nc3 24.bxa6 Nxe2+ 25.Kh1 Rc3)23...Qd7 24.cxb5 Bxb5 25.Bxb5 Qxb5 26.Bxa7 +/=|+/-

22.Rc1

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 白は以前のように自由闊達に振る舞っている。黒は反撃が困難である。

22...Rc7 23.Rc3 Rdc8 24.Rfc1 Bb7 25.Bd3

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25...Nf6

 25...b5 26.cxb5 Rxc3 27.Rxc3 Rxc3 28.Qxc3 Nf6 29.Bxa7 Nxd5 30.Qd2 +/-

26.Bf5 Re8 27.a4

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 長期間 b6-b5 突きを阻止しなにかの時に a4-a5 突きを可能にした。

27...Bc8

 27...e4 28.Bd4! exf3 29.Rxf3 +/-

28.Bb1 Bb7 29.Qd2

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29...Rd8?

 これが黒の敗着である。しかし 29...Qf8 でも 30.a5 bxa5 31.b5 で白がはっきり良い。

30.Bxh6!

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30...a5

 30...gxh6 31.Qxh6 の後は次のように白の攻撃が決まる。

 a)31...Re8 32.f4 exf4 33.Qxf4!(33.Rh3?? Qe1+!)

 b)31...Bc8 32.Re1 から 33.f4 でc3のルークの転回が決め手になる(32...e4 33.Bxe4 +-)。

31.bxa5 bxa5 32.Bxg7!

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 もう黒はこのビショプを取るしかない。

32...Kxg7 33.Qg5+ Kf8 34.Qh6+

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34...Ke8

 34...Kg8 35.f4 +-

35.Qh8+ Qf8 36.Qxf6 Qe7 37.Qh6 Qf8 38.Qe3

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38...Rc5 39.f4 Qe7 40.fxe5 dxe5 41.Re1 Kd7 42.Qxe5 Qxe5 43.Rxe5

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43...Rb8 44.Rf5 Ke7 45.Re3+ Kf8 46.Bd3 Bc8 47.Rf6 Rb4 48.Ref3 Rxa4

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49.Rxf7+ Ke8 50.Bg6 Ra1+ 51.Kf2 Ra2+ 52.Kg3 Kd8 53.Ra7 1-0

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 7½/9というブラウンの驚異の成績だがまだあと4回戦が残っていた。

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(この号続く)

2008年10月29日

世界のチェス雑誌から(6)

「Schach」2008年9月号(4/5)

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アーリク・ブラウン 金へまっしぐら、最後は銅メダル(続き)

よくよくたたるb7のポーン

 残りの対局のうち2局は同じように苦しめられるはめになった。イスラエルのロートシュテイン(ブラウンによれば「布局理論に非常に強い」)はシュバーベン在住のブラウンの弱点を見つけていたように思われる。ブラウンは攻めに秀でていて大きな危険を犯して敵キングに襲いかかる。しかし今回はあまりにも早くクイーン交換になってしまった。

準スラブ防御 (D15)
白 ロートシュテイン (2605)
黒 アーリク・ブラウン (2533)

1.d4 d5 2.Nf3 Nf6 3.c4 c6 4.Nc3 a6 5.a4 e6

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6.g3 dxc4 7.Bg2 c5 8.dxc5 Qxd1+ 9.Nxd1 Nc6 10.Ne3

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10...Bxc5 11.Nxc4 Ke7 12.O-O Bd7 13.Nfe5

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13...Nxe5?

 ここからはずっと白が優勢だった。しかしブラウンは 13...Rac8 14.Nd3 でc5のビショップを交換されるのも嫌だった。14...Nd4 15.Bxb7 (ゲルファンド対モブセシアン、バトゥーミ、EU(欧州連合)男子チーム選手権戦)の後ヒューブナー・シュバルツはメガベースで(15...Rc7 の代わりに)15...Nxe2+ 16.Kg2 Bc6+ 17.Bxc6 Rxc6 をすすめている。しかし 18.Nce5 Rcc8 19.Be3! で問題は解決していない(e2のナイトがお荷物)。

14.Nxe5

 ここからすぐにb7のポーンの防御が問題となった。

14...Ra7 15.Nd3!

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15...Bd4

 このビショップはa3-f8の斜筋を守りとおすことができない。15...Bd6? は 16.Be3 ですぐにb7のポーンを失う。

16.e3 Bb6 17.b3!

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 黒キングは自分のいる斜筋に白ビショップから覗かれると具合の悪いことになる。

17...Rc8 18.Ba3+ Ke8 19.Rfc1 Bd8 20.Ne5 Be7 21.Bb2 b6

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 ようやくb7のポーンが動けた。しかしそれでもまもなく取られてしまう。

22.Rxc8+ Bxc8 23.Rc1 Bd7 24.Bd4 Bd8 25.a5 Nd5

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26.Nc4 Ke7 27.e4 Nf6 28.axb6 Ra8 29.Bc5+ Ke8 30.b7 1-0

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2008年11月05日

世界のチェス雑誌から(7)

「Schach」2008年9月号(5/5)

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アーリク・ブラウン 金へまっしぐら、最後は銅メダル(続き)

よくよくたたるb7のポーン(続き)

 これでアーリクは足踏みして追いつかれた。しかし直後の第11回戦ではフィリピンの強豪のウェスリー・ソーに危なげなく勝ち単独首位を奪い返した。

 今や金メダルが目前だった。残るはあと2局だった。アブヒジート・グプタ戦は黒番である。このインド選手は何をやってきたか。二日前にロートシュテインがブラウン戦で勝ったのと全く同じ戦法できたのである。もちろんアーリクはこの間にもっと詳しく研究しておいた。しかし・・・

準スラブ防御 (D15)
白 アブヒジート・グプタ (2551)
黒 アーリク・ブラウン (2533)

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.Nc3 a6 5.g3 dxc4 6.a4 e6 7.Bg2 c5 8.dxc5 Qxd1+ 9.Nxd1 Nc6 10.Ne3

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10...c3!? 新手

 事前に用意していた改良手である。

11.bxc3 Bxc5 12.Nc4

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12...O-O?!

 アーリクは後でこの手は緩手で積極的に 12...Ne4!? と指すべきだったと評している。13.Nd4 Nxd4 14.cxd4 Bxd4 15.Ra2
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の後f2のポーンを取るのは黒が良くないが 15...f5 なら恐らく問題なかっただろう。

13.O-O

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13...Rd8

 ここで 13...Ne4 は 14.Ba3 で空振りに終わる。ロートシュテイン戦と同様にここでもじきにb7のポーンが弱点として標的にされた。

14.Ba3 Bxa3 15.Rxa3 Rb8 16.a5 Ne4 17.Rc1 Nc5 18.Nd4

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18...Bd7

 d4の地点で2度駒交換するのは駒損する。

19.Nb3 Nxb3 20.Rxb3 Rdc8

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 この手はすでに交換損を承知している。さもないと白がb7に対する圧力を強めてくる。

21.Nb6! Nxa5 22.Rb4

YCM0007G.JPG

22...Bb5

 22...Rc7? 23.Nxd7 Rxd7 24.Ra1 +-(24...b6 25.Rxa5)

23.Nxc8 Rxc8 24.e3 Bc6 25.Bf1 Be8 26.Ra1 Rc5

YCM0007H.JPG

27.Bg2 Kf8 28.h4 h6 29.Bxb7 Nxb7 30.Rxb7

YCM0007I.JPG

 アーリクは敵陣の白枡の弱点につけ込みひょっとしたら封鎖線を作れるのではないかと期待していた。しかしそれはむなしかった。

30...a5 31.Ra7 Rxc3 32.R1xa5 Bc6 33.Kh2 Rc2 34.Ra2 Rc1 35.Ra1 Rc2

YCM0007J.JPG

36.R7a2 Rc4 37.Rb1 Bd5 38.Rab2 f5 39.Kg1 Kf7 40.Rb4 Rc2

YCM0007K.JPG

41.g4 Kf6 42.gxf5 exf5 43.Rb6+ Bc6 44.Ra1 Ke5 45.Ra5+ Bd5

YCM0007L.JPG

46.Kf1 f4 47.Rbb5 Rd2 48.Ke1 fxe3 49.fxe3 Rd3 40.Ke2 1-0

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 金メダルの夢は断ち切られた。しかし翌日に白番でインドのネギ選手と死闘の末引き分けてアーリクは銅メダルを獲得することができた。2年前の18歳以下のタイトル(訳注 アーリク・ブラウンは2006年10月にバトゥーミで開催された世界少年少女選手権戦の男子18歳以下で11回戦中9点をあげ単独優勝しています)と同様に価値がある。

ディルク・ポルダウフ

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(この号終わり)

2008年11月12日

世界のチェス雑誌から(8)

「New In Chess」2008年第7号(1/4)

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インドから二人のジュニア・チャンピオン

 まずなにかを成し遂げられると信じなければならない。その後で成すべき事を成して達成されるのが普通であるがそうなることは珍しい。トルコのガジアンテップで開催された世界ジュニア選手権戦で二人のインド選手が優勝したことは多くの人たちを驚かせた。これは優勝が初めて同じ国に行ったからではなく、おもに「どうしてそのようなことが起こったのか」という疑問からだった。ドロナバリ・ハリカは女子の部でシード首位だったから理解できる。しかしアブヒジート・グプタが20歳以下全体のチャンピオン?彼はどんな選手なのか?たまたま幸運に恵まれた若者なのか?全然そんなことはない。グプタのトレーナーのビシャル・サリーンが説明する。

ガジアンテップ 2008年 男子 20歳以下
 1 グプタ GM インド 2551 10
 2 ネギ GM インド 2529 9½
 3 ブラウン IM ドイツ 2533 9
 4 ハウエル GM イギリス 2561 9
 5 サファルリ GM アゼルバイジャン 2527 9
 6 ホウ・イーファン 女流GM 中国 2557 9
 7 アミン GM エジプト 2561 9
 8 ロートシュテイン GM イスラエル 2605 8½
 9 ソー GM フィリピン 2577 8½
10 チュオン・ソン GM ベトナム 2579 8½
11 メルクミャン IM アルメニア 2507 8½

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誓いを実現し世界ジュニア優勝のトロフィーを持つアブヒジート・グプタ。栄誉を分かち合うのはコーチのビシャル・サリーン。

 ナイジェル・ショートがインドのボンペイで開催された英連邦選手権戦で優勝したのは2004年のことだった。そのことには何も注目するようなことはない。しかし2回戦で彼はあまり知られていない「田舎の少年」に引き分けに持ち込まれた。この少年-アブヒジート・グプタ-が4年後に世界ジュニアで優勝するとは誰も知るよしもなかった。

 そうはいうもののアブヒジートは当時インドのチェス界でも無名だった。彼は13歳でインドのジュニア選手権を獲得した。その記録はまだ破られていない。そして15歳の時には前途が有望になっていた。彼の努力は誰も気に留めていなかった。それはおもに15歳でグランドマスターになるのは朝飯前の時代では遅すぎる年齢だったからだ。機会はそれほど大きくなかった。しかしアブヒジートはいつも使命感を持っていた。「いいからいいから、僕はいつか大きな大会で勝つよ」というのが彼の友人たちへの口癖だった。

 全然大したことではないが彼は勝ち続けた。国内で千ドルちょっとのまあまあの賞金のオープン大会を少し制覇しさらに2回インドのジュニア選手権を取りスペインのチェス・リーグではGM基準を獲得した。これはこれで良かった。ただ進歩を続けていた。

 真の飛躍は去年の12月にやってきた。その時グランドマスターの称号を手に入れ英連邦選手権戦で3位に入り年明けの1月にはインドの最大規模のパルスブナート・オープン大会で強豪を相手に9/10で優勝した。今から思えばまさしく快挙への先駆けだったようである。

 それでアブヒジートの良いところは何だったのか。レイティング2551が示す洗練された布局のレパートリー、優れた読みの能力、よく鍛えられた技術、そして最も重要なのは大試合を戦う精神力である。これこそ肝心な時にうまくやり遂げるもとである。この点については後に述べるとしてまずは女子のチャンピオンに目を向けよう。

ガジアンテップ 2008年 女子 20歳以下
 1 ドロナバリ IM インド 2461 10½
 2 ムジチュク 女流GM ウクライナ 2413 9
 3 オズトゥルク 女流FM トルコ 2188 9
 4 ゴメス 女流IM インド 2316 9
 5 パイキゼ 女流FM グルジア 2277 9
 6 ミカゼ 女流IM グルジア 2258 8½
 7 マメジャロバ 女流GM アゼルバイジャン 2284 8½
 8 ネムコバ 女流GM チェコ 2372 8½
 9 カジモバ -- アゼルバイジャン 2148 8½
10 ボドナルク 女流FM ロシア 2394 8½
11 ソウミャ 女流IM インド 2293 8

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「対局ではハリカはおとなしい選手である。盤から離れると快活である。親しくなってみれば知性あるユーモアに驚かされるだろう。」

 南インドの名前はその複雑さを知らない人にとってはたいてい謎である。ドロナバリ・ハリカはドロナバリでなくハリカである。初めの名前は姓である。ハリカはアンドラ・プラデシュ州の比較的大きな地方の出身で神童と呼ばれていた。コネル・フンピーほどではないかもしれないがインドの女性のチェスでは皆の心に浮かぶ2番目の名前であることは確かである。

 ハリカにとって勝つことは大切なことである。ゆっくりと、大局的に、用心して、前向きに、諦めないで、長時間の試合、相手のミスを待つ。これらはチェスを指す技法である。彼女はそのような指し方を習った。ラマ・ラージュはどこでも思い当たるという名前ではないがハリカにとって彼女のコーチは優勝の最も重要な原動力の一つである。

 少し年齢別選手権に参加したがあまり結果が出せなかった後ハリカは2004年に14歳以下の世界タイトルを獲得するという成果を収めた。2006年には18歳以下でも優勝し今年2008年にはジュニア選手権者になった。

 加えてアジア室内競技会でも少しメダルを獲得しアジア及び英連邦選手権戦では多くのメダルを獲得し現英連邦選手権者である。世界ジュニアの直後にはアリジュナ賞を受賞した。これは政府によってスポーツ選手に贈られる第二位の賞である。若いインドの選手にとってこのような経歴にまさるものはめったにない。

 対局ではハリカはおとなしい選手である。盤から離れると快活である。彼女の普通の振る舞いは大会中は部屋からほとんど出ず、家で作って包装しておいた食べ物を好み、心底内向的である。親しくなってみれば知性あるユーモアに驚かされるだろう。

 世界ジュニアではどの選手もこの大会が非常に厳しくて明確な目標を維持し続けることが難しいことを理解している。一戦一戦が大切であるがこのような大会では長距離走の最終ファーロング(訳注 長さの単位で約210メートル)のように最後の踏ん張りが最も重要であることもきわめて明らかである。去年のアルメニアでハリカは8½/10で首位に立っていて選手権に優勝するためにはそこそこの結末で構わなかった。ところが最後の3回戦で思わぬ不運に見舞われた。3局全てに負けメダリストの中にも加われなかった。今年の彼女は出だしでもたついたが相手が完全に互角の局面で時間が切れて何とか1回戦に勝った。しかし7回戦の後の休日の時点では既に6/7でゆうゆうと半点のリードをつけていて、そのまま首位に留まった。10回戦の後でマリヤ・ムジチュクにちょっとだけ並ばれたがその後の危なげのない2連勝で1点差をつけた。それで1回戦を残して優勝を決め最終回戦は早々と引き分けにした。次の棋譜は彼女の最も気に入っている試合の一つからで彼女自身の解説である。

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(この号続く)

2008年11月19日

世界のチェス雑誌から(9)

「New In Chess」2008年第7号(2/4)

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インドから二人のジュニア・チャンピオン(続き)

自戦解説 ドロナバリ・ハリカ

現代ベノニ (A65)
白 ドロナバリ・ハリカ
黒 グルミラ・ダウレトバ
ガジアンテップ、2008年、第6回戦

 この試合は第6回戦である。相手は主にキング翼インディアンを指す。そこでこれまで指したことのない新しい手を用意した。

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7

 予想通りだった。

4.e4

 キング翼インディアンの主流戦型を指したのはほんの数局しかない。そしてその時は主にフィアンケットだった。

4...d6 5.Bd3

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 この戦型を指すのは初めてだった。相手も驚いたことだろう。

5...O-O 6.Nge2

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 この戦型を初めて見たのはアレックス・ヤーモリンスキーの「チェス上達への道」という本の中だった。そしてそれらの棋譜に非常に感銘を受けた。あまり指されない戦型だがセイラワン、ソコロフ、ゲオルギエフ、チャタルバシェフらのグランドマスターは定期的に指している。モイセエンコが2008年に指した3局も気に入っている。

6...c5

 相手がこの手をぱっと指してきた時には非常に驚いた。彼女が承知でこの手を指したのかどうかは今でも分からない YCM0009Z.JPG 。これで戦型は現代ベノニのクナーク戦法に移行する。

7.d5 e6 8.O-O exd5 9.cxd5

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 これがクナーク戦法の基本形である。現代ベノニに対する最も危険な攻撃的戦型の一つとなっている。ナイトが控えめなe2の地点にいるのは見掛け倒しである。白の構想は駒を次のように攻撃的に配置することである。即ち(h3と突いてg4の地点を確保して)f4と突いてからe2のナイトをg3に据えクイーンをf3に置く。これで白はe5やf5のポーン突撃の準備完了である。

9...Nbd7

 ゼノン・フランコの「チェス詳解-現代ベノニ」から最も好きな実戦例を見てみよう。有名な局面(ペンローズ対タリ、ライプチヒ・オリンピアード、1960年)で、白が理想的な体勢を築いた。9...a6 10.a4 Qc7 11.h3 Nbd7 12.f4 Re8 13.Ng3 c4 14.Bc2 Nc5 15.Qf3 Nfd7 16.Be3 b5 17.axb5 Rb8 18.Qf2 axb5
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黒の狙いは 19...b4 でc3のナイトを中央から追い払うことである。しかし手番は白である。白は全ての駒が理想的な地点にいる。f列の圧力からは f5 と突いてこの列を開けることが思いつく。しかし黒はナイトをe5の強力な地点に据えて守ることができる。ペンローズは 19.e5!! dxe5 20.f5 という正解手順を考えついた。この捌きは標準になった。白はちょっとの間d7のナイトを拠点を奪うことにより、そしてg7ビショップを斜筋をふさぐことにより、共に無力化する。そして作戦は適当な時にf列を開けることである。もっとも f6 と突くことも選択肢にある。20...Bb7(fxg6 から Qxf7+ を狙われているので黒は典型的な逆襲の ...e4 でd7のナイトとg7のビショップを活性化させて守ることができない)21.Rad1 Ba8?!(e5のポーンを捨てる方が良かった)22.Nce4(g3のナイトでe4の地点をよけいに守っているのがこの戦型の長所である。白は強力な封鎖を維持できる)22...Na4?! 23.Bxa4 bxa4 24.fxg6 fxg6 25.Qf7+ Kh8 26.Nc5
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d7のナイト取りと 27.Ne6 の狙いで白が駒割で得をする。

10.a4

 この手は必要なかった。10.h3 又は 10.Ng3 と指すべきだった。

10...b6

 黒のナイトはb8から動いてしまったので ...Ba6 でビショップ交換をすることができない。黒の作戦が ...a6 から ...b5 と指すことならばこの手は手損になる。

11.h3 a6 12.f4 Re8 13.Ng3 Qc7 14.Qf3 c4 15.Bc2 Rb8

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 白は理想的な陣形になり全ての駒が絶好の位置についている。

16.Qf2

 16.Be3 の方が良かった。

16...b5 17.axb5 axb5 18.Ra7

YCM0009G.JPG

18...Qd8

 18...Qb6 なら 19.Be3 Nc5 20.Raa1 で白が優勢である。

19.e5

 ここではこのポーン捨てが有効である。

19...dxe5 20.f5 Rf8

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21.d6

 21.Bg5 でもよい。

21...Qb6 22.Qxb6 Rxb6 23.Rd1

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 この局面はポーン損でも白の方が良い。白のd6のポーンは非常に強力で白駒も好所にいて連係が良い。白は十分以上の代償がある。

23...Re8 24.Be3

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 ここでは二人ともあまり時間がなく制限時間までにあと17手指さなければならなかった。この局面は黒が時間切迫の状況で指すのが難しい局面だと思う。一方白の作戦は非常に簡明でこの後はあまり時間を必要とせず相手のいくつかの悪手の後勝ちを収めた YCM0009Z.JPG

24...Rb8

 24...b4 なら 25.Bxb6 bxc3 26.Ba5 cxb2 27.Bc3 Bh6 28.Kf2 Bc1 29.Ra2、また 24...Rb7 なら 25.Ra5 b4 26.Nce4 で白が良い。

25.Nce4 Bb7 26.Nxf6+

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26...Bxf6

 26...Nxf6 なら 27.d7 Red8 28.Bb6 Rxd7 29.Rxd7 Nxd7 30.Bc7 でやはり白が優勢である。

27.Be4

 27.fxg6 hxg6 と交換してから 28.Bc4 の方が強力だった。

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27...Bc8

 27...Bxe4 28.Nxe4 gxf5 29.Nxf6+ Nxf6 30.d7 Red8 31.Bg5 Rxd7(31...Kg7 32.Rd6 Ne4 33.Bxd8 Rxd8 34.Rb6 と 31...Rb6 32.Rc7 Kf8 33.Be3 Rbb8 34.Bc5+ も黒が良くない)32.Rdxd7 Nxd7 33.Rxd7 は白の楽勝になる。

28.Bc6 Rd8 29.Ne4

 29.fxg6 hxg6 30.Ne4 の方が簡明だった。

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29...Bg7

 29...gxf5 でも 30.Nxf6+ Nxf6 31.Bg5 Kg7 32.d7 h6 33.Bxf6+ Kxf6 34.Rd6+ Kg7 35.dxc8=Q で白の勝ちである。

30.fxg6 hxg6 31.Rc7 Nf8 32.Ba7 Bf5 33.Bxb8 Rxb8

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34.g4

 もっとすっきりした勝ち方は 34.d7 Nxd7 35.Rdxd7 Bxd7 36.Rxd7 だった。

34...Bxe4 35.Bxe4 Ne6 36.Ra7 Bf8 37.Kh1 b4 38.Bd5 c3

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39.Bxe6 fxe6 40.bxc3 bxc3 41.Rc7 Rd8 42.Rxc3 g5 43.Rc5 Bg7

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44.Kg2 Kf7 45.Rc7+ Kf6 46.Kf3 Bf8 47.d7 Ba3 48.Rc8 Ke7

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49.Rxd8 Kxd8 50.Ke4 Bb2 51.Rd6 Bd4 52.Rxe6 黒投了

YCM0009R.JPG

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(この号続く)

2008年11月26日

世界のチェス雑誌から(10)

「New In Chess」2008年第7号(3/4)

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インドから二人のジュニア・チャンピオン(続き)

YCM0010A.JPG
入賞者たち。左からパリマルジャン・ネギ、アブヒジート・グプタ、アーリク・ブラウン、エルタイ・サファルリ、ホウ・イーファン、バッセム・アミン。

 一般の部でアブヒジートの出だしは2½/3だったが第4回戦で中国の無称号のリン・チェンに負けた。7回戦が終わったところでデービド・ハウエルが6/7で首位に立っていた。グプタは4½だった。4人のGMー他の3人はパリマルジャン・ネギ、G.N.ゴパール、GM確定のアルン・プラサドーが参加しているにもかかわらずインドの少年たちの陣営の雰囲気は重苦しかった。彼らは皆苦戦していた。第8回戦の後コーチの私とアブヒジートの間でもう次の世界ジュニアの場所や時期の話題まで出ていた。しかしまだ5回戦も残っている。どこまでできるか頑張ってみよう。5/8の成績で残りの試合を全部勝つ以外なかった。

 巻き返しの道は第9回戦から始まった。ディープ・セングプタ戦でアブヒジートは戦術的な小競り合いを慎重に制した。第10回戦をむかえてパリマルジャンとアブヒジートは6点だった。アーリク・ブラウンが新たに首位に立っていたが天敵ともいうべき第2シードのマクシム・ロートシュテインにやられた。パリマルジャンとアブヒジートはここからの2局を勝ち8/11で射程距離に入った。第11回戦のあとアーリク・ブラウンが再び首位に立ったがその後アブヒジート戦で足踏みしてしまった。その試合は後で勝者の解説で掲載する。

 最終の第13回戦に入ってハウエル、パリマルジャン、アブヒジートが新たに9/13で首位に立っていた。最終結果には色々な可能性があった。しかしアブヒジートは一つのことだけを知っていた。「もし勝てば自分がチャンピオンだ。」

イタリア試合 (C54)
白 デービド・ハウエル
黒 アブヒジート・グプタ
ガジアンテップ、2008年、第13回戦

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.d3 Bc5

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5.c3 O-O 6.O-O d5!? 7.exd5 Nxd5 8.Re1 Bg4

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9.Nbd2 Nb6 10.Bb5 Bd6 11.Ne4 Qd7 12.h3 Bh5

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13.g4 Bg6 14.Nh4 Be7 15.Nxg6 hxg6 16.Ng3 Bd6

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17.h4?!

 多分この手の後はもう黒が少し優勢になっている。ハウエルは安全策を取った方が良かっただろう。

17...a6 18.Bxc6 bxc6 19.h5 gxh5 20.Nxh5 f5!

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 簡明で気持ちの良い手である。白キングは既に大きな困難に陥っている。幕が下りるのも近い。

21.Ng3 fxg4 22.Re4 Rf3 23.Qb3+ Nd5

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24.Qc4

 黒の支配を如実に示す変化の1例は 24.c4 Bc5! 25.cxd5 Rxg3+ 26.Kf1 Qf5 である。

24...Raf8 25.Rxg4 R3f4 26.Bxf4 exf4

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27.Rg5 fxg3 28.fxg3 Qe7 29.Qg4 Ne3

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30.Qh5 Qf6 31.Kh1 Nf1 32.Qg4 Qh6+ 白投了

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2008年12月03日

世界のチェス雑誌から(11)

「New In Chess」2008年第7号(4/4)

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インドから二人のジュニア・チャンピオン(続き)

 アブヒジートが勝った後パリマルジャンの試合がまだ残っていた。そして彼も期待に背(そむ)かなかった。アーリク・ブラウンも頑張って一時は優勢だったが結果は引き分けに終わった。パリマルジャンは相応の銀メダル、ブラウンは銅メダルに輝いた。もっともパリマルジャンは最後の5試合で4½点をあげたが、大会の進行状況からして全勝していてもやはり2位だった。

 しかしアブヒジートと同じくパリマルジャンも特に最後の方の回戦で内容の良い試合をした。15歳なのでまだ何年も期待できる。アブヒジートにとってはこの優勝はとりわけもっと質の高いチェスを指す責任を伴う。アブヒジートの「いいからいいから、僕はいつか大きな大会で勝つよ」という口癖は本当だった。彼はこれまでの最強の世界ジュニアの一つで優勝した。

自戦解説 アブヒジート・グプタ

スラブ防御 (D15)
白 アブヒジート・グプタ
黒 アーリク・ブラウン
ガジアンテップ、2008年、第12回戦

 この試合を解説することにした理由は相手が明らかな悪手を指していないのに戦いらしい戦いをしないうちに負けたからである・・・(彼がどう思っているかは分からないYCM0011Z.JPG

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.Nc3 a6

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 彼が二日前にロートシュテイン戦でこの戦型で負けているのでグリューンフェルトでくると予想していた。

5.g3 dxc4 6.a4 e6 7.Bg2 c5 8.dxc5 Qxd1+ 9.Nxd1 Nc6 10.Ne3 c3

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 ここで前局のロートシュテイン戦と別れた。

11.bxc3 Bxc5 12.Nc4!

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 この新手は強手だと思う。しかし彼が研究でこの手を見逃していたことがわかって驚いた。

12...O-O

 彼が研究で見逃していたのは恐らく 12...Ne4 に対する 13.Ba3! だった。以下は例えば 13...Bxf2+ 14.Kf1 Bc5 15.Nd4 Bxa3(15...Nxd4 なら 16.cxd4 Bxa3 17.Rxa3 f5 18.Bxe4 fxe4 19.Kf2 で白が優勢である)16.Nxc6(16.Rxa3 は 16...f5 17.Nxc6 bxc6 18.Nd6+ Ke7 19.Nxe4 fxe4 20.Bxe4 Rb8! 21.Bxc6 Bb7 22.Bxb7 Rxb7 23.Kf2 Rf8+ 24.Ke3 Rf5 で白はまだ克服しなければならない技術的な問題がいくつかある)16...f5 17.Nb6 でa8のルークが召し上げられる。

13.O-O Rd8 14.Ba3! Bxa3 15.Rxa3 Rb8

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16.a5

 16.Rb1 は 16...b5 17.Nce5 bxa4 18.Rxb8 Rd1+ 19.Bf1 Nxb8 20.Rxa4 Bd7 21.Nxd7 Nfxd7 で黒がしのげる公算が大きい。

16...Ne4 17.Rc1!

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 この手はとても気に入っている。見つけるのに20分かかった。リブカ(訳注 世界最強のチェスソフト)でも5分以上要したYCM0011Z.JPG

17...Nc5

 17...Nd6 でも 18.Nfd2 Nb5 19.Ra2 Bd7 20.Ne4 で白がわずかな優勢を維持する。

18.Nd4

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18...Bd7

 18...Na7 なら 19.Nb3 Nxb3 20.Rxb3 Nb5 21.Rcb1 Kf8 22.f4 で白が断然良いYCM0011Z.JPG

19.Nb3!

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 b7ポーンの主要な守り手と交換しようという手である。

19...Nxb3 20.Rxb3 Rdc8

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 この手は単なるポカだった。しかしいずれにしても黒が劣勢である。

21.Nb6 Nxa5 22.Rb4

YCM0011I.JPG

22...Bb5

 22...Rc7 なら 23.Nxd7 Rxd7 24.Ra1 で黒のナイトが取られる。

23.Nxc8 Rxc8 24.e3 Bc6 25.Bf1 Be8 26.Ra1 Rc5 27.Bg2 Kf8 28.h4 h6

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29.Bxb7?!

 ここから最善でない手が飛び出し始めた。29.g4! がずっと良い手だった。

29...Nxb7 30.Rxb7 a5

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31.Ra7

 31.Rd1 Rc8 32.Ra7 a4 33.c4 で決まっていた。

31...Rxc3 32.R1xa5 Bc6 33.Kh2 Rc2 34.Ra2

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 ここら辺は必要手数を満たすためだけに指していた。

34...Rc1 35.Ra1 Rc2 36.R7a2 Rc4 37.Rb1 Bd5 38.Rab2 f5 39.Kg1 Kf7 40.Rb4 Rc2 41.g4

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 ようやく40手を越えた。

41...Kf6 42.gxf5 exf5 43.Rb6+ Bc6 44.Ra1 Ke5 45.Ra5+

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45...Bd5?

 この手は悪手だが非常に面白い罠を含んでいる。45...Ke6 と指す方が良かったが 46.Kf1 g5 47.hxg5 hxg5 48.Ke1 g4 49.Kd1 で白の明らかな勝勢である。

46.Kf1

 46.f4+? は誤りで 46...Ke4 47.Rb4+ Kf3 48.Rxd5 Rc1+ 49.Kh2 Rc2+ 50.Kh3 Rc1 51.Rd2 Rh1+ 52.Rh2 Rg1
YCM0011O.JPG
で引き分けになる。

46...f4 47.Rbb5 Rd2 48.Ke1 fxe3 49.fxe3 Rd3 50.Ke2 黒投了

YCM0011P.JPG

 最後にこの機会に円滑な大会運営に対してトルコ・チェス連盟に感謝したい。それからコーチのビシャル・サリーン氏には多大な支援に対して、友人のディープとサハジに対してはこの大会で多大の助力を与えてくれたことに対して、同じく感謝したい。

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(この号終わり)

2008年12月10日

世界のチェス雑誌から(12)

「CHESS」2008年11月号(1/7)

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解説 マルコム・ピーン

世界ジュニア選手権戦
ガジアンテップ、トルコ
2008年8月3日-15日

GM アブヒジート・グプタ インド 10
GM パリマルジャン・ネギ インド 9½
以下は9点台
IM アーリク・ブラウン ドイツ
GM デービド・ハウエル イギリス
GM エルタイ・サファルリ アゼルバイジャン
女流GM ホウ・イーファン 中国
GM バッセム・アミン エジプト
さらに8½点台が続く
GM マクシム・ロートシュテイン イスラエル
GM ウェスリー・ソー フィリピン
GM ゴク・グエン ベトナム
IM フラント・メルクミャン アルメニア
GM セルゲイ・シガルコ ベラルーシ
GM ヤン・ウェン 中国
GM サナン・シュギロフ ロシア

 世界ジュニアでのデービド・ハウエルの業績は過小評価すべきでない。強い現GMや将来のGMたちの誰も破るのは生易しいことではない。しかしハウエルはこの選手権で驚くことに8局も勝った。

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世界ジュニア選手権戦でデービド・ハウエルは傑出した成績をあげた

ジュオコ・ピアノ
白 デービド・ハウエル(2561)
黒 ローラント・プルイセルス(2452)
第2回戦、世界ジュニア、2008年

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4!

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 ハウエルは今では多様な戦法が指しこなせる。

3...Bc5 4.c3 Nf6 5.d3 a6 6.Bb3 Ba7 7.O-O d6

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8.Re1 h6 9.Nbd2 O-O 10.Nf1 Ne7 11.Ng3 Ng6 12.d4

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 この局面はルイ・ロペスに似ている。白はわずかに主導権を持っているが黒陣も堅固である。

12...Re8 13.h3 b5?! 14.d5 Bb7 15.Nh2 c6 16.dxc6 Bxc6 17.Ng4

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 黒のビショップはルイ・ロペスよりも活動的だがe7かf8にあった方がキングを守るのに役立っただろう。

17...Nxg4 18.Qxg4 Qf6 19.Nf5 Kh7 20.h4! Ne7 21.Ne3

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 もちろん白は駒交換を避ける。

21...Rad8 22.a4!

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 ここはルイ・ロペスの第2戦線である。

22...Bc5 23.axb5 axb5 24.Bc2

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 この手は ...d6-d5 を防ぎ黒に Ne3-d5 の心配をさせている。

24...b4!? 25.cxb4

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25...Bd7

 25...Bxb4 は 26.Nd5 Nxd5 27.exd5+ で白の勝ちになる。

26.Qh5 Bxb4 27.Nd5 Nxd5 28.exd5+ Kg8 29.Re3!?

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 火かき棒で引っ掻き回す。この大会の試合は短めの持ち時間で行なわれていた。

29...Rc8

 29...e4! に 30.Rxe4?(30.Bxe4 Re5 31.Qf3 Qxh4)なら 30...Rxe4 31.Bxe4 Re8 で黒の勝ちになる。

30.Rf3 Qe7 31.Bxh6!!

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31...Rxc2

 31...gxh6 は 32.Rg3+ Kf8 33.Qxh6# で詰む。

32.Bxg7! f5 33.Bh6! Rc4 34.Rg3+ Rg4 35.Rxg4+ fxg4 36.Qg6+ Kh8 37.Bg5 1-0

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 38.Bf6+ が待っている。

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(この号続く)

2008年12月17日

世界のチェス雑誌から(13)

「CHESS」2008年11月号(2/7)

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解説 マルコム・ピーン

 ハウエルの出だしは4½/5で、2局のマラソン試合の時は6/7だった。次の試合がその第1局である。

白 チェン・リー(2590)
黒 デービド・ハウエル(2561)
第8回戦、世界ジュニア、2008年

 次の局面はハウエルが 20...Rxf4 と指したところで形勢不明である。

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 70手ほど飛ばす。お互いにキングが前進し時間切迫に陥った後ポーンの前進が始まった。

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89.g4 a5 90.g5 Qc7+ 91.Bf7 a4 92.g6 Qd6 93.Kg8 Kb2 94.Qe2+ Ka3 95.g7 Rh4

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 奴のキングをポーンの前に居続けさせよ。

96.Qf3 Qb8+ 97.Re8 Qd6 98.Ra8 Kb4 99.Be8 Nc5 100.Qg2 Rh2 101.Qg4+ Ka3 102.Bf7 Qd3 103.Qf4 Rh1 104.Kf8

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 なんとキングがのこのこ出てきた。

104...Nd7+ 105.Ke7 Re1+ 106.Be6

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106...Nc5

 コンピュータによれば 106...Rxe6+ 107.Kxe6 Nc5+ 108.Ke5 Qc3+ 109.Qd4 Qg3+ で引き分けだが持ち時間が加算分しか残っていないのでは無理である。

107.Rxa4+! Nxa4 108.g8=Q

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 なんとハウエルはもう少しで生還するところだったが白は誤らなかった。

108...Re3 109.Qh8 Rxe6+! 110.Kxe6 Nc5+ 111.Kf7 Qd5+ 112.Kg6 Qg2+ 113.Qg5 Qe4+ 114.Qf5 Qg2+ 115.Kh6 Qh2+ 116.Kg7 Qg3+ 117.Kf7

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117...Qc7+ 118.Kg6 Qg3+ 119.Qg5 Qd3+ 120.Kf7 Qc4+ 121.Kg6 Qd3+ 122.Kh5 Qh3+ 123.Qh4 Qf3+ 124.Kg6 Qd3+ 125.Kg7 Qd7+ 126.Kg6 Qd3+ 127.Kh5

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127...Qf3+ 128.Kh6 Qe3+ 129.Kg7 Qe5+ 130.Kg6 Qd6+ 131.Q8f6 Qd3+ 132.Qf5 Qd6+ 133.Kh5 b5 134.Qhf2 Ne6 135.Qa7+ Kb4 136.Qe4+ Kb3 137.Qae3+ 1-0

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(この号続く)

2008年12月24日

世界のチェス雑誌から(14)

「CHESS」2008年11月号(3/7)

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解説 マルコム・ピーン

カロ・カン防御
白 デービド・ハウエル(2561)
黒 イワン・ポポフ(2549)
第9回戦、世界ジュニア、2008年

1.e4 c6 2.d4 d5 3.exd5 cxd5 4.c4 Nf6 5.Nc3 Nc6

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6.Bg5 dxc4 7.Nf3 Bg4 8.d5 Bxf3 9.gxf3 Ne5 10.Bxc4 Nxc4

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11.Qa4+ Qd7 12.Qxc4 h6 13.Bxf6 exf6 14.Rg1 Rc8 15.Qb3 g6

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16.Ne4 Bg7 17.Qb4 Qe7 18.Qb5+ Kf8 19.d6 Qe6 20.d7 Rd8 21.O-O-O!

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 ハウエルは苦労しながらも優勢になった。しかしここから勝利を決めるまで大変な道のりをたどった。

21...Kg8 22.Rge1 f5 23.Ng5 Qf6 24.Re8+ Bf8

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25.Rxd8! Qxg5+ 26.Kb1 Qxd8 27.Rc1

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 黒はクイーンを捨てざるを得ないが代わりに要塞を築く。

27...Kg7 28.Rc8 Bd6 29.Rxd8 Rxd8 30.Qxb7 Bc5 31.Qc8 Bb6 32.b4

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 50手後には次の局面になった。

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 そして最後に127手目に飛ぶ。

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 ここで黒が投了した。127...Rh5+ としても 128.Kc6 Ka5 129.Qd8+ Ka4 130.Qd1+ でルークが取られる。

 ハウエルのスタミナは驚異的である。2日間で260手以上指し、これ以上はないほど残念な敗戦から立ち直った。

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(この号続く)

2008年12月31日

世界のチェス雑誌から(15)

「CHESS」2008年11月号(4/7)

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解説 マルコム・ピーン

カタロニア布局
白 マクシム・ロートシュテイン(2605)
黒 アーリク・ブラウン(2533)
第10回戦、世界ジュニア、2008年

 ハウエルはまだ優勝争いに残っていたが残り3試合で新たにマクシム・ロートシュテインが首位に立った。このカタロニア布局もどきはクラムニクの試合のようだった。

1.d4 d5 2.Nf3 Nf6 3.c4 c6 4.Nc3 a6 5.a4 e6 6.g3 dxc4 7.Bg2 c5

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 黒は1手遅れのカタロニア布局を受け入れた。恐らく ...a6 と a4 の交換は自分に有利だと思ったのだろう。黒のb6の地点に何が起こるか注目するとよい。

8.dxc5 Qxd1+ 9.Nxd1 Nc6 10.Ne3 Bxc5 11.Nxc4 Ke7!?

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 ちょっと楽観気味だった。クイーンはいないが残りの駒はまだ全部ある。私ならキャッスリングしていただろう。

12.O-O Bd7

 12...Rb8 なら 13.Bf4! が良い手である。

13.Nfe5!

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 g2のカタロニア・ビショップを働かせる典型的な手である。

13...Nxe5 14.Nxe5 Ra7 15.Nd3 Bd4 16.e3 Bb6 17.b3!

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 急に黒キングが攻撃にさらされるようになる。黒はカタロニア・ビショップに対しても問題を抱えている。

17...Rc8 18.Ba3+ Ke8 19.Rfc1

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 単純に Rxc8 から Rc1 を狙っている。

19...Bd8 20.Ne5 Be7 21.Bb2!

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 黒がキングの問題を解決しようという時に、新しく Bd4 というきびしい狙いが発生する。

21...b6 22.Rxc8+ Bxc8 23.Rc1 Bd7 24.Bd4 Bd8 25.a5 Nd5 26.Nc4

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 b6のポーンが落ちて勝敗も定まった。

26...Ke7 27.e4 Nf6 28.axb6 Ra8 29.Bc5+ Ke8 30.b7

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 30...Rb8 と逃げても 31.Ba7 Rxb7 32.Nd6+ なので黒はここで投了した。白の快勝だった。

1-0

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2009年01月07日

世界のチェス雑誌から(16)

「CHESS」2008年11月号(5/7)

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解説 マルコム・ピーン

スラブ防御
白 ゴク・チュオン・グエン(2579)
黒 マクシム・ロートシュテイン(2605)
第11回戦、世界ジュニア、2008年

1.Nf3 Nf6 2.c4 c6 3.d4 d5 4.e3 Bf5 5.Nc3 e6 6.Nh4 Bg6

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 この堅実な戦型は2006年のクラムニク対アナンドの番勝負でも指された。

7.Be2 Nbd7 8.O-O Bd6 9.g3 dxc4 10.Nxg6 hxg6 11.Bxc4 Nb6 12.Bb3 e5 13.Qf3 Qe7

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 黒が好調であるのに対し白のビショップは働いていない。

14.dxe5 Bxe5 15.Rd1 O-O 16.Bd2 Nbd7 17.Be1 Nc5 18.Bc2 a5 19.Rab1 Rfd8 20.Kg2 Qe6 21.h4

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21...a4?

 黒は見損じをしていた。先に 21...Rxd1 としてから 22.Rxd1 a4 と指すべきだった。

22.Nxa4! Rxd1 23.Nxc5! Rxb1 24.Nxe6 Rxe1 25.Ng5 Rxa2 26.Nxf7!

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 黒は白枡で解体される。

26...Bc7

 26...Rxb2 なら 27.Bxg6 Ree2 28.Nxe5 である。

27.Bxg6 Ra5 28.Ng5 Bd6 29.e4!

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 Qb3+ のための筋を開けた。29.Rb5 なら 40.Qd3 又は 40.Qc3 でやはり決め手となるb1-g8の斜筋に乗る。無念のロートシュテインは金メダルが目の前から消えていくのを見たに違いない。

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(この号続く)

2009年01月14日

世界のチェス雑誌から(17)

「CHESS」2008年11月号(6/7)

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解説 マルコム・ピーン

シチリア防御
白 デービド・ハウエル(2561)
黒 アンテ・ブルキッチ(2530)
第11回戦、世界ジュニア、2008年

1.e4 c5 2.c3 Nf6 3.e5 Nd5 4.Nf3 Nc6 5.Bc4

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 この手はシチリア防御の主流手順を避けるためのハウエルの得意戦型である。黒は準備していたに違いないが役立たなかった。

5...e6 6.d4 cxd4 7.O-O d6 8.cxd4 Be7 9.a3

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 この手は Bc4-d3 の後 Nb4 でいじめられないようにするためである。

9...O-O 10.Re1

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 マレー・チャンドラーが1970年代にこの戦型を指していた。

10...a6

 10...b6 又は 10...Bd7 の方が適切かもしれないがこの手でも何も悪くないと思う。

11.Bd3 Bd7 12.Qe2 Qb6 13.Qe4 f5 14.exf6e.p. Nxf6 15.Qh4

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 黒は十分展開ができているが少し形がゆるんでいる。私なら白を持ちたい。

15...d5

 15...h6 なら単に 16.Nc3 でよい。15...g6 に対しては 16.Bg5 Qxb2 17.Nbd2 Qb6 18.Rab1 Qc7 19.Ne4 と応じて厳しい狙いがあり7個の駒が活発に働いている。

16.Nc3 Ne4 17.Qh3

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17...Nxd4

 17...Rxf3!? には 18.gxf3! と応じる。

18.Be3!

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 これで駒得になる。もっとも白は暴れる黒の面倒を見なければならない。

18...Nxf3+ 19.gxf3

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19...Bc5

 19...Qxb2 は 20.Nxd5! exd5 21.Qxd7 で黒陣が壊滅する。e4とd5が当たりになっている。

20.Bxc5 Qxc5 21.fxe4 Qxf2+ 22.Kh1

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22...Rf3

 22...e5 には 23.Qg3 でよい。しかし 23.Qxd7? は 23...Qf3+ 24.Kg1 Qf2+ で引き分けになってしまう。

23.Qf1!

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 この手が要点である。黒の狙いは容易にかわされてしまうので駒1個の代わりにポーン2個では割に合わない。

23...Raf8 24.Be2 R3f4 25.Qxf2 Rxf2 26.exd5 exd5 27.Rf1

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27...d4 28.Rxf2 Rxf2 29.Kg1! Rf5 30.Ne4 Bc6 31.Bc4+

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31...Kf8 32.Ng3 Rc5 33.Bd3 h5 34.Rf1+ Ke8 35.Nxh5 1-0

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(この号続く)

2009年01月21日

世界のチェス雑誌から(18)

「CHESS」2008年11月号(7/7)

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解説 マルコム・ピーン

シチリア防御
白 デービド・ハウエル(2561)
黒 アブヒジート・グプタ(2551)
第13回戦、世界ジュニア、2008年

 最終の第13回戦に入った時もハウエルにはまだ金メダルの可能性があった。しかし複雑な心理状態とまずい時間管理のせいで指し過ぎてしまった。黒は相手の早まった攻撃をみごとにとがめ、グプタが10/13で金メダルを獲得することになった。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.d3 Bc5 5.c3 O-O 6.O-O d5 7.exd5 Nxd5 8.Re1 Bg4

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9.Nbd2

 9.h3 Bh5 10.g4 Bg6 11.Nxe5 Nxe5 12.Rxe5 Bxf2+ 13.Kxf2 Qf6+ 14.Qf3 Qxe5 15.Qxd5 は白が良い。白キングはクイーン交換または 15...Qh2+ 16.Qg2 の後収局に都合がよい位置にいる。しかしこの手順中 12...c6! なら Qh4 の狙いで黒が面白い。例えば 13.d4? なら 13...Bd6 14.Re1 Qh4 15.Qf3 Rfe8 で名高いマーシャル攻撃になる。

9...Nb6 10.Bb5 Bd6 11.Ne4 Qd7 12.h3 Bh5

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 勝負どころである。ハウエルの選んだ手はうまくいかなかった。13.Ng3 Bg6 14.Nxe5 Bxe5 15.Rxe5 Bxd3 16.Bxc6 bxc6 なら危険を冒すことなく少し優勢になっていただろう。しかし全力でいかなければならないという衝動に突き動かされたのに違いない。

13.g4 Bg6

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14.Nh4

 14.d4! が良かった。

14...Be7! 15.Nxg6 hxg6

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 これでd3のポーンが少し弱くなる。

16.Ng3 Bd6

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17.h4

 17.Qf3 なら 17...Nd4! 18.cxd4 Qxb5 である。

17...a6 18.Bxc6 bxc6!

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 黒は捌けた局面に有利な陣形になっている。まず第一にルークが連結している。

19.h5?! gxh5 20.Nxh5 f5!

YCM0018G.JPG

 以降はインターネットで観戦していて見るに忍びなかった。

21.Ng3 fxg4 22.Re4 Rf3! 23.Qb3+ Nd5

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24.Qc4

 24.c4 なら 24...Bc5 25.cxd5 Bxf2+ 26.Kg2 cxd5 27.Re2 Bxg3 である。

24...Raf8 25.Rxg4 R3f4!

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26.Bxf4 exf4 27.Rg5 fxg3 28.fxg3 Qe7 29.Qg4 Ne3 30.Qh5 Qf6 31.Kh1 Nf1 32.Qg4 Qh6+

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 33.Rh5 なら 33...Nxg3+ である。

0-1

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(この号終わり)

2009年01月28日

世界のチェス雑誌から(19)

「Chess Life」2009年1月号(1/7)

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2008年世界少年少女選手権戦

YCM0019A.JPG シャクランドと

YCM0019B.JPG ヤンが銅メダル

 チェスの本を下に置きナイトをつまみ上げ、チーム米国ははるか向こうのベトナムでチェスを満喫するのだ

記 GMジョン・フェドロウィッツ

 私はまたしても世界少年少女選手権戦でコーチを務める光栄に浴した。2008年はベトナムの小さな海浜保養地のブンタウで10月20日から30日まで開催された。これまで長年の間チェスのために旅行してきたがこんなに遠くまで来たことはなかった。通路側の自分の席を見て生きて帰れないのではと思った。

 ニューヨークのジョン・F・ケネディー空港から香港までのキャセイパシフィック航空の飛行は15½時間の予定で、その後はホーチミン市まで2時間の飛行だった。驚くべきことに旅行は滞りなく進行した。確かに非常に退屈だったが問題は皆無だった。乗り継ぎの飛行機を待っている間にカナダのグレンとジョーナ・リーと親しくなってしまった。

 ベトナムのビザの取得は日数がかかったが気にならなかった。飛行機でなくて良かった。3人(グレン、ジョーナそれに私)は空港の外で出迎えを受けすぐにホテルに連れて行かれた。移動はホーチミン市を通って2時間ちょっとだった。交通渋滞はラッシュアワーのニューヨークなどのんびりしているように見えるほどだった。あんなに多くのオートバイが走っているのは見たことがなかった。ほとんどは交通規則を無視していた。私はこれまですぐに時差(米国東部標準時より11時間進んでいる)に適応できる人間ではなかったで三日前に着くのは必須だった。テレビのリモコンのチャンネルをはしごしたら野球のプレーオフを生中継していたので驚き喜んだ。それで大会前を楽しく過ごすことができた。

 さて本題のチェスに入る。私としては若く比較的経験不足のチームにどれほどの成績を期待したらよいのか分からなかった。しかし幾つかの年齢群ではかなりメダルの可能性があると思っていた。ダーウィン・ヤンと昨年の世界少年少女選手権戦優勝のダニエル・ナロディツキーは私の期待の二人だった。それからセアラ・チャン、ジョナサン・チャン、シモーヌ・リャオ、ダニエル・ルートビヒ、サム・シャンクランドも有力だった。何しろ我々には最強の支援軍団の一つがついていた。6人のコーチはFIDE上級トレーナーのマイケル・ホダルコフスキー、FIDEマスターのアビブ・フリードマン、IMアルメン・アムバルツォウミアン、GMドミトリー・グレビッチ、GMサム・パラトニクそれに私である。

 コーチ会議で棋力と個人の生徒に従って選手を割り当てた(コーチ1人当たり5人)。また、布局の課題と試合の分析でお互いに相談し合った。私の日課は午前9時にダン・ルートビヒから始まり午前11時にキャロライン・チューで終わっていた。1選手当たり30分は準備として大した時間ではないが、それで十分としなければならなかった。

 試合は午後3時から始まった。その間にコーチたちは試合の分析のために午後4時30分にロビーのところに司令部を設けた。我々は過去の世界少年少女選手権戦から、以前の試合に基づいて他の国に研究される傾向に気付いていた。そのため布局の不備を埋めたり中盤戦の問題を修正するのが必須となっていた。

チーム米国の成績

女子8歳以下 アリシャー・チョーラ 4、リーバ・シン 6½、ハンナ・リュー 7、サライ・ギリェン 4
(チームで銅メダル)

女子10歳以下 シモーヌ・リャオ 7、マーガレット・フア 4½

女子12歳以下 セアラ・チャン 7、キャロライン・チュー 5½

女子14歳以下 アリーナ・カッツ 6½、アンナ・マトリン 6、キャサリン・ウー 4½

女子16歳以下 カルステン・マクベイ 5½、ジェニー・リュー 4

オープン8歳以下 ジョナサン・チャン 8、トミー・ヘイ 7、レイモンド・サン 6½
(チームで銀メダル)

オープン10歳以下 ジーバン・カラムセティ 7、クリストファー・ウー 6

オープン12歳以下 ダーウィン・ヤン 8(銅メダル)、アレクサンドル・オストロフスキー 5½、アレクサンダー・ベリカノフ 6、アトゥーリャ・シェティ 5½、ジャロード・パマトマト 6、デービド・アーデルベルク 6½
(チームで銅メダル)

オープン14歳以下 ダニエル・ナロディツキー 7½

オープン18歳以下 サム・シャンクランド 8(銅メダル)、ダニエル・ルートビヒ 6½、マット・パリー 5

コーチ
FIDE上級トレーナーIMマイケル・ホダルコフスキー、FMアビブ・フリードマン、IMアルメン・アムバルツォウミアン、GMドミトリー・グレビッチ、GMサム・パラトニク、GMジョン・フェドロウィッツ

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(この号続く)

2009年02月04日

世界のチェス雑誌から(20)

「Chess Life」2009年1月号(2/7)

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2008年世界少年少女選手権戦(続き)

シャンクランドとヤンが銅メダル

 それでは最も良い成績の選手たちを紹介していこう。メダル獲得者のダーウィン・ヤンは少年12歳以下の部門で開始順位が3番目で一番期待がかけられていた。彼は金メダルを獲得することになるサヤンタン・ダスとの第5回戦での快勝を含めて6½/7で突っ走っていた。

ルイ・ロペス/アルハンゲリスク及びメラー防御 [C77]
FMダーウィン・ヤン(FIDE2182)
サヤンタン・ダス(FIDE2112)
2008年世界少年少女選手権戦、ベトナム・ブンタウ

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.d3

YCM0020A.JPG

 この安全な手はベルリンやアルハンゲリスクなどの膨大なルイ・ロペス定跡を避けている。

5...b5 6.Bb3 Bc5

 アルハンゲリスク戦法は非常に流行していて近年は定跡が非常に進歩している。しかし白が既に d2-d3 と突いているので普通の 6...Be7 でほぼ互角の形勢だった。

7.O-O O-O 8.c3 d6 9.Nbd2 Bb6

YCM0020B.JPG

 この手は不要だろう。このビショップはc5で良い位置を占めている。

10.Re1 Bb7?!

 この位置のビショップは働きがなさそうである。10...Bg4?! は 11.h3 Bh5 12.Nf1 でh5のビショップを追い払った後白が白枡を制圧する。黒の最善手は 10...Be6!? である。

11.Nf1 Ne7 12.Ng3 Ng6 13.Nf5

YCM0020C.JPG

13...d5!?

 ポーンを犠牲にするのは良くなかった。13...Bc8!? でf5のナイトを見張るのが一つの代案である。...Be6 も考えられる。

14.exd5 Nxd5 15.Nxe5

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15...Bxf2+

 これで大乱戦に突入するがダーウィンの読みの方が少し深かった。15...Nxe5 は 16.Rxe5 でマーシャル攻撃のような形だが黒はほとんど代償がない。

16.Kxf2 Qf6 17.Bxd5!? Bxd5 18.Qh5 Be6 19.g4

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19...Nxe5

 19...Bxf5 は 20.Qxf5 Qh4+ 21.Kf1 Qxh2 22.Nf3 Qg3 23.Be3 で白が良い。

20.Rxe5! g6

 20...Qxe5?? には 21.Ne7+ がある。

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21.Qg5

 21.Qh4! Qxe5 22.d4 Qe4 23.Ne7+ Kg7 24.Bh6+ の方が勝ちが速かった。

21...Qxg5 22.Bxg5

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22...gxf5

 22...f6 に対して 23.Rxe6? なら 23...fxg5 で黒が問題ない。実際は 23.Ne7+ Kf7 24.Rxe6 Kxe6 25.Re1+ Kd7 26.Bh6 Rfe8 27.Nd5 で白が黒のポーンをむしり取り始めて戦力差が広がる。

23.Bh6 Rfe8 24.gxf5 Bd7 25.Rg1+ Kh8 26.Bg7+ Kg8 27.Rc5 h5 28.f6 Bg4 29.Rxg4! 黒投了

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 黒が 29...hxg4 と取り返せば 30.Rh5 から詰まされてしまう。

 我々にとってもダーウィンにとっても残念だったのは最後の4回戦が3引き分け1敗に終わったことだった。それでも最終成績は8-3で楽に銅メダルを獲得した。

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(この号続く)

2009年02月11日

世界のチェス雑誌から(21)

「Chess Life」2009年1月号(3/7)

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2008年世界少年少女選手権戦(続き)

シャンクランドとヤンが銅メダル

 非常に嬉しい誤算はサム・シャンクランドが同点1位になり、チーム米国に二つ目の銅メダルをもたらしたことだった。サムはまだ17歳ながら既に経験豊富である。彼は米国選手権戦は言うまでもなく世界少年少女選手権戦にも以前に参加したことがある。少年18歳以下の部門で開始順位が17位だったので期待されていなかったが頑強さが最後で真価を発揮した。サムの強みは布局に通じていることと試合への真剣な取り組みである。この第10回戦でインド選手に圧勝してインターナショナル・マスターの認定基準を獲得しメダル争いにも加わった。

スラブ防御 [D19]
IMパンディアン・カルティケヤン(FIDE2402)
サム・シャンクランド(FIDE2436)
2008年世界少年少女選手権戦、ベトナム・ブンタウ

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.Nc3 dxc4

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 準スラブは黒の非常に堅固なシステムである。

5.a4

 他の手では黒が ...b7-b5 でポーンを維持する。

5...Bf5 6.e3 e6 7.Bxc4 Nbd7 8.Qe2 Bb4 9.O-O O-O

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10.e4

 白は 10.Rd1!? ともっとゆっくり指すべきで少し優勢である。

10...Bg4

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11.e5!?

 シャンクランドはこの手を批判したが問題だったのは白の次の手である。11.h3? は 11...Bxf3 12.Qxf3 Nb6 13.Qd3 Bxc3 14.bxc3 Nxc4 15.Qxc4 Nxe4 で黒がポーン得する。

11...Nd5

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12.Na2?!

 12.Nxd5 cxd5 13.Bd3 ならほぼ互角だった。

12...Ba5

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 この局面は小駒の働きが良いので黒をもちたい。

13.Bxd5?!

 この手は短期的には一つの問題を解決したが虫の詰まった別の缶を開けてしまった。13.Qe4!? なら互角に近い。

13...exd5!?

 最も攻撃的な応手である。ドミトリーとシャンクランドと共に私も 13...cxd5 の方が好きである。黒は素通しのc列と双ビショップを活用することになる。

14.h3 Bh5

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15.g4?

 白は躍起になって自分のキングを捌きにきた。15.Qe3 で釘付けを解消しておく方が賢明だった。

15...Bg6 16.h4 h6!

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 この冷静な手が白のもくろみを打ち砕く。

17.Bf4 Qe7 18.Nc3 Qe6 19.Nh2 f6 20.Bg3

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20...fxe5 21.dxe5 d4 22.Ne4 Qd5 23.Nd6 d3 24.Qe3 Bb6 25.Qe1

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25...Bd4 26.e6 Ne5 27.e7 Qxd6 28.exf8=Q+ Rxf8 29.Kg2 Qd5+ 30.f3

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30...Nc4 31.Bf2 Re8 32.Qb4 Re2 33.Kg1 Bxf2+ 34.Rxf2 Qd4! 白投了

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 35.Rf1 Rxf2 36.Rxf2 d2 で終わりである。

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(この号続く)

2009年02月18日

世界のチェス雑誌から(22)

「Chess Life」2009年1月号(4/7)

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2008年世界少年少女選手権戦(続き)

シャクランドとヤンが銅メダル

 将来に明るい希望を抱かせてくれた二人はジョナサン・チャンと妹のセアラである。ジョナサンは8点で5位、セアラは7点で同点判定により13位だった。ジョナサンの素晴らしい成績のおかげで8歳以下オープン部門で米国は銅メダルに輝いた。第10回戦でジョナサンは見事な斬り合いで相手を片付けた。

ピルツ防御 [B07]
ジョナサン・チャン(FIDE1535)
ディン・グエン・アン・レ(FIDE無し)
2008年世界少年少女選手権戦、ベトナム・ブンタウ

1.e4 g6 2.d4 Bg7 3.Nc3 d6 4.Be3 Nf6 5.f3!?

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 これは対ピルツの非常に危険なシステムである。白はユーゴスラビア攻撃の態勢を布きキング翼ポーンで強襲する。

5...a6?!

 既に黒は正しい構想を見つけるのに苦労している。5...c6!? で黒は ...b7-b5 の反撃を準備しクイーンをかかわらせることができる。

6.Qd2 Nc6 7.O-O-O e5

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8.d5!?

 ジョナサンは中原を閉鎖したが、後にまた開放しなければならなくなった。8.Nge2 で情勢を流動的に保っておけば白はポーン強襲を始めることができる。

8...Ne7 9.g4

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9...b6

 黒は手損している。9...h5!? なら全局を睥睨(へいげい)し互角の形勢を望むことができた。

10.Bh6 Kf8

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11.Bxg7+

 アビブが指摘したようにこれは黒の形をほぐすのを手助けしている。11.h4!? の後 h4-h5 と突いていく方が正確で、白が支配権を握っている。

11...Kxg7 12.h4

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12...h5

 12...h6 の方が良い。それなら白は突破口を見つけるのに苦労する。例えば 13.g5(13.h5 g5 は難攻不落である)は 13...Nh5 で白の攻撃は頓挫する。

13.g5 Nd7 14.Bh3!

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 ジョナサンは f3-f4 を準備している。それが彼の唯一の侵攻策である。

14...Qf8 15.Nce2 f5 16.Qc3!

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 黒にc7の地点を守るよう強制した。

16...Ra7

 キング翼の戦いでは黒がルーク損しているような感じである。

17.f4

 ここでは明らかに白が優勢である。

17...Kh7 18.Rf1 Qg7 19.exf5 gxf5 20.fxe5 Nxe5 21.Nd4

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21...Nxd5 22.Qb3 Ne7 23.Nxf5 Nxf5 24.Bxf5+ Bxf5 25.Rxf5 Qg8 26.Qa4

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26...b5

 黒の最後のチャンスは 26...Qc4!? だった。

27.Qe4! Qg6 28.Qf4 Kg7 29.Nf3 Nxf3 30.Qxf3 Qe8 31.Rf1 c6 32.Qc3+ Kg8 33.Rf8+ 黒投了

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(この号続く)

2009年02月25日

世界のチェス雑誌から(23)

「Chess Life」2009年1月号(5/7)

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2008年世界少年少女選手権戦(続き)

シャクランドとヤンが銅メダル

 私のチェス生徒のレバ・シンはこれが初めての大きな国際大会だったが健闘した。彼女の挙げた6½点は少女8歳以下の部門で米国チームの銅メダル獲得の主要な原動力となった。次の試合は彼女の攻撃感覚の良さがよく現れていて彼女も満足している。

ルイ・ロペス [C77]
シリ・ビンデル(FIDE無し)
レバ・シン(FIDE無し)
2008年世界少年少女選手権戦、ベトナム・ブンタウ

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6

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5.d4!?

 早くもレバはひねった手に直面させられた。5.O-O b5 6.Bb3 Be7 7.Re1 なら何百万回も見たことのある通常の手順である。

5...b5!?

 黒の安全な手順は 5...Nxd4 6.Nxd4 exd4 7.e5 Ne4 8.Qxd4 Nc5 である。

6.Bb3 exd4 7.O-O

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7...Bc5?!

 レバには以前からギャンビットポーンにはしがみつかないようにと注意していたのだが。7...d6!? が堅実な応手のようである。8.Nxd4?? なら 8...Nxd4 9.Qxd4 c5 から ...c5-c4 で有名な「ノアの箱舟」の罠にはまる。

8.Re1?!

 ポーンを犠牲にしたからには白はもっと攻撃的に指さなければならない。これで黒の方が良くなった。8.e5! なら黒の応手が非常に難しかった。8...Ng4(8...Ne4 は 9.Qe2 d5 10.exd6 f5 11.dxc7 Qxc7 12.Ng5 で黒キングに安住の地がない)なら 9.Bxf7+ Kxf7 10.Ng5+ Kg8 11.Qxg4 で黒の難局である。

8...O-O 9.Bg5 d6 10.Bd5

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10...Bb7 11.Bxc6 Bxc6 12.e5 dxe5 13.Rxe5 Bb6 14.Rf5 Kh8!

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 白の Bxf6 を予期した手である。キングの前の二重ポーンは必ずしも悪くない。

15.Bxf6 gxf6 16.Rf4 Rg8

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 これでどちらが攻撃しているのか分からない。レバが形勢を逆転させた。黒の展開、双ビショップ、素通しのg列およびポーン得が白にとって重荷である。

17.Rh4

 白は作戦の方針を立てるのに苦労している。

17...Qe7 18.Qd3 Rg6

 簡単に詰みの狙いをかわした。

19.Nbd2 Re8 20.b3 Ba5!

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 白のd2とf3の守備駒を消す狙いである。

21.h3 Bxd2

 黒の勝勢である。

22.Qxd2 Bxf3 23.Qd3 Qe1+!

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 きれいに勝負を決めた。

24.Rxe1 Rxe1+ 25.Qf1 Rxg2+ 26.Kh1 Rxf1# 0-1

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(この号続く)

2009年03月04日

世界のチェス雑誌から(24)


「Chess Life」2009年1月号(6/7)

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2008年世界少年少女選手権戦(続き)

シャクランドとヤンが銅メダル

 デービド・エーデルバーグが大会のほとんどの間メダル争いに加わるとは予期していなかった。しかし最後は脱落した。第8回戦の勝局では非常に激しいナイドルフで巧みな攻撃を見せつけた。デービドの好成績が少年12歳以下の部門で米国チームの銅メダル獲得に役立った。

シチリア防御、スヘフェニンゲン/ナイドルフ [B87]
ミハイル・アンティポフ(FIDE1887)
デービド・エーデルバーグ(FIDE無し)
2008年世界少年少女選手権戦、ベトナム・ブンタウ

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6

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 ナイドルフ戦法は 1.e4 に対する大変攻撃的な応手とみなされている。

6.Bc4

 ソージン戦法はボビー・フィッシャーをはじめ数多くのグランドマスターたちの得意戦法だった。

6...e6

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7.O-O

 7.Bb3 と指さないことにより白は ...Nbd7-c5 の手法を回避している。7.Bb3 Nbd7 8.f4 Nc5 9.Qf3 b5 は黒に反撃の楽しみがある。

7...b5 8.Bb3 Be7 9.Qf3 Qc7 10.Qg3 Nc6 11.Nxc6 Qxc6 12.Re1 Bb7

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13.Qxg7?!

 このポーンをかすめ取ると黒に永続的な主導権を与えてしまう。13.a3!? が安全で理にかなっていた。13...O-O 14.Bh6 Ne8 15.Rad1 Rd8 16.Rd3(16.Bg5 もある)16...Kh8 17.Bg5 Bxg5 18.Qxg5 Nf6 19.Qd2 Rd7 が1987年モスクワテレビでのドルマトフ対ポルガエフスキー戦の手順で、ほぼ互角の形勢だった。

13...Rg8 14.Qh6 O-O-O 15.f3

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 黒キングは安全である。白は長いこと守勢に立たされる。

15...Rg6 16.Qh3 Kb8 17.Be3 Rdg8 18.g3 h5 19.Ne2 Qe8 20.Nf4 Rg5

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21.Bf2

 白は 21.Nd3!? で千日手になれば喜ぶべきだった。

21...Bc8 22.Qf1?

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 クイーンはg3の地点を見張っている必要がある。

22...h4!

YCM0024G.JPG

23.Qd3

 23.g4 なら黒には 23...Nxg4 24.fxg4 Rxg4+ 25.Ng2 h3 という強手がある。

23...hxg3 24.hxg3 Nd7 25.Qe3 Nc5

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26.Rad1

 26.Kg2 とするしかなかった。

26...Rxg3+!

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 この素晴らしい交換損の犠牲で白陣が崩壊する。

27.Bxg3 Rxg3+ 28.Kf2 Qg8 29.Rg1 Bh4! 30.Kf1 e5

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 c8のビショップの筋を通した。

31.Rxd6 exf4 32.Rb6+ Ka7 33.Rg6 Qxg6 34.Qxc5+ Qb6

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 駒をどんどん盤上から消し去る方がデービドによってはやり易い。

35.Qxb6+ Kxb6 36.Rxg3 fxg3

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 残るは簡単な掃討作戦である。

37.Kg2 Be6 38.Bxe6 fxe6 39.b4 Be7 40.Kxg3 Bxb4 41.Kf4 Bd6+

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42.e5 Bb8 43.Ke4 Kc5 44.f4 Kc4 45.Kf3 Kd4 46.Kg4 Ke4

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47.Kg5 b4 48.Kf6 Kxf4 49.Kxe6 Bxe5 50.Kd5 Bc3 51.Kc4 a5

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52.a3 Ke3 53.axb4 axb4 54.Kb3 Kd2 55.Ka2 Kc1 白投了

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(この号続く)

2009年03月11日

世界のチェス雑誌から(25)

「Chess Life」2009年1月号(7/7)

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2008年世界少年少女選手権戦(続き)

シャクランドとヤンが銅メダル

 ホテルに落ち着いた後私は一つ重要なことをした。それは大会会場を見ることだった。会場はホテルから1½マイル離れた所にあり暑さと湿度で歩くのが大変だった。それは三流どころの大学のバスケットチームが競技するような室内競技場だった。戦いにやって来た大選手群を楽に収容できる大きさだった。組み合わせはいつも時刻どおりに発表された。オンラインでも見られるしホテルの外にも掲示された。その日の対戦相手の試合はオンラインでも見ることができた。これで我々の試合前の準備は大いに助かった。「準備」が良ければ選手たちが自信を持つしどんな小さなことでも大切である。

 ビーチは通りのすぐ向こう側にあり非常に大きなプールもそばにあった。チーム米国のほとんどは五つ星のホテル・ディク・スターに泊まっていた。料理はとてもうまいしメニューも豊富だった。何か問題が起こってもおかしくないことを考えれば大会は非常に良く組織されていたと思う。バスは各回戦前にホテルから出発し一定の間隔で帰ってきた。

 不満な点が二つある。一つ目は大会会場の冷房である。気温がとても高い国では冷房がないと健康に悪いし危険である。主催者たちは冷房に努力したが扇風機と空調設備さえ十分ではなかった。将来に向けてFIDEはこのような状況に目を向け二度と起こらないようにする必要がある。我々のチームのミーティングで選手たちは各回戦の開始の5分前に着席していなければならないと言われていた。もしこの規則に従わないと不戦敗になってしまう。この規則はドレスデン・オリンピアードでも使われるそうである。この愚行が実際に施行されるのか興味を持っている。これもまたFIDEの素晴らしい仕事である。彼らはもっと重要なことに頭を使った方が良いのではないか。

 今年最も目覚しかった国はインドである。信じがたい4人の世界チャンピオンを生んでメダル獲得数で圧倒した。インドは「アナンドブーム」に沸いているのだろう。チェスがクリケットの代わりに一番人気のあるスポーツになっているのかもしれない。米国にはそのようなブームこそないが非常に多くの強い若者集団がある。ダーウィン・ヤンやダニエル・ナロディツキーのような選手を始めとして将来はインドのような国と渡り合っていくことを期待している。

 最後にいく人かの人たちに感謝したい。まずFIDEシニア・トレーナーのマイケル・ホダルコフスキーにはチェスとその他のあらゆる問題に対処してもらった。他のコーチたちとは忌憚なく話し合えて楽しかったしキンバリー・ドゥー、シャロン・センキウィッツそれにダイアン・パーともそうだった。友人のグレン、ジョーナ、アンナ、シーメン、ウィリアムそれにエリザベスは私を多忙にさせてくれた。国際大会のチェスの経験を良い思い出にしてチーム米国は来年新たな決意と希望で戻って来る。来年のトルコ・アンタリヤまで対局に励み大いに勉強して欲しい。

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(この号終わり)

2009年03月18日

世界のチェス雑誌から(26)

「New In Chess」2009年第1号

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収局の混沌

YCM0026A.JPG 35...Nxe3
ラウソン対小島、2008年ドレスデン・オリンピアード、第6回戦

36.Re7?

 この手は比較的早く指したが元々の構想に誤りがあった。たぶんナイトの動きを気にし過ぎていて、少し前のクイーン交換でキングの安全がそれほど問題でなくなっていたことに十分に順応していなかった。36.Rb3! の方が良く対局時は 36...Nxf1 なら 37.Kxf1 a5 38.Ke1! Rg2 39.a4 Kg6(39...Rg1+ 40.Kd2 Ra1 41.Ra3)40.Kd1 Kf6 41.Kc1 g6 42.Re3
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(Kc1-b1-a2-b3-c3 から b3 の狙い)で白の勝ちが有望であることに気づいていた。一般にポーンが2対1の方が1対0よりもはるかに多くの可能性がある。その理由は主に独りぼっちのポーンが非常に取られ易いことにある。それにこの局面では白キングがポーンに陰に隠れることができ、黒ルークが白ポーンの背後に回ることが難しい。さらに 36...Nd1 なら 37.Rd3! Rxd3 38.Bxd3 Kg6 39.b4 で勝ちであることも読んでいた。しかし 36...Ng4 と指されたらどうなるのかがよく分からなかった。対局時は 37.Bh3 Kg6 38.Kf1 Nf2 39.Bg2 Ne4 40.Bxe4 fxe4 51.Rb5
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ではっきりした勝ち筋が見えなかった。この局面がはっきり勝ちなのかどうかを判断するのは難しい。しかし実戦より有望であることは確かなようである。

36...Nxf1 37.Kxf1 Rxb2 38.Rxa7

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 制限時間を前にしてこの局面に持ち込んだ時、してやったと思っていた。なぜならポーンがまだa2にいるので、Ra3 とすることができその後はキングをb1にやり Re3 としaポーンを突いていけば勝ちになるからである。何たることか、色々な理由でこれは成立しないのである。それはおいおい明らかとなってくる。

38...Kh6?

 奇妙な手と言うしかない。この収局は引き分けであることにちょうど納得しかけていたので少し希望が持てると感じた。若い対戦相手は300点以上も低い格下で、元々私はこの試合に勝つ気満々だった。だからこの手を見た時は戦いを続けるべき青信号だと思った。38...Kg6!? なら 39.Ra3 Kf6 40.Ke1 g6 41.Kd1 Ke6 42.Kc1 Rg2 43.Kb1
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で黒には引き分けにできる手段が幾つもある。その中でも最も簡明かつ最も重要で私の見落としていたのは 43...Rg1+ 44.Kb2 Rg2+ で、態勢を改善することができない。

39.Ra6+ g6

 39...Kh7

40.Ra7

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 ここでもまだ引き分けだろうと感じていた。しかし黒キングは閉じこもり状態なので全然悲観していなかった。

40...Rc2

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41.a4

 41.a3!? はやってみてもよかった。黒はもう1回間違えてくれるかもしれない。41...Ra2(41...Rb2)42.a4 Ra1+ 43.Kg2 Ra2+ 44.Kh3 Ra1 45.a5 Ra2? 46.a6
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で白キングが脱出するか7段目のポーンを7段目のルークで守る形になる。最初の予定は 41.Ra3 だったがやはり 41...Kg7 42.Ke1 Rg2! 43.Kd1 Rg1+ 44.Kc2 Rg2+ で簡単に引き分けになる。

41...Rc1+ 42.Kf2 Rc2+

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43.Ke1

 43.Ke3 は 43...Rc3+ 44.Kd4 Rxg3 45.Ke5 Rg4 で黒の方が良さそうである。また 43.Kg1 は43...Rc1+ 44.Kg2 Rc2+ 45.Kh3 Ra2 46.a5 Ra1 47.a6 Ra2 で相互手詰まりだがあいにく白の手番である。

43...Rg2

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 引き分け提案と共にこの手が指された。客観的には正当だと思うが、状況からすればちょっと厚かましいように思われる。

44.a5 Rxg3

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 この時点で私が理解していなかったことは、反撃のために黒はルークを4段目に保たなければならないがそうするとa列でのクイーン昇格を止めるためのチェック間隔が足りないのでわずかながらも白に勝つ可能性があるということである。

45.a6

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45...Ra3?!

 たぶん a7 と突かせて私のキングからa7の地点を奪ってしまった方が良いだろう。45...Rf3! 46.Ra8 Kg7 47.a7(47.Rb8 Ra3 48.Rb7+ Kf6 49.a7
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こういう手段もあるが勝つには十分でない。49...Ke6 50.Kd2 Kd5 51.Kc2 Ke4 52.Kb2 Ra6 53.Kb3 Kxf4 54.Rb4+ Kg3 55.Ra4 Rxa7 56.Rxa7 Kxh4 57.Kc3 g5 58.Kd4 Kg3 59.Ra3+ Kg2 60.Ke5 h4
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これで引き分けのはずである)47...Ra3
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これで周知の理論的引き分けの局面である(たとえg列に白ポーンがあっても)。白キングがaポーンに近寄れば黒ルークがチェックをかけ続け、aポーンから離れればa列に戻る。

46.Kd2 Ra1 47.Kc3

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47...Ra5?!

 これも白にやる気を起こさせる変な手である(47...Ra2)。

48.Kb4 Ra1 49.Kb5 Rb1+ 50.Kc5 Ra1

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51.Kb6

 51.Kd6 Ra4

51...Rb1+ 52.Kc7 Rc1+

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53.Kb8

 53.Kd8 からのキング翼での詰み形(Kf6/f7 Rh8 及び Kg8 Rh7)には気がついていた。しかし黒はいつでもf4のポーンを取ってからこの詰みを逃れる手順があるようである。

53...Ra1 54.Ra8

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54...Ra4?

 54...Ra2?(貴重な1手を無駄にしてしまう)55.Ka7(55.a7? は 55...Kg7 で白キングはチェックから隠れる所がない)55...Kg7(55...Ra4 56.Kb6 Rxf4 57.a7)56.Rc8 Ra4 57.Kb6 Rxf4 58.a7
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これは白の勝ちである。しかし 54...Kg7! なら白が勝てるのか判然としない。黒はルークを切る前に2ポーンを取ることができるようである。55.Ka7(他に何もないだろう)55...Rf1 56.Rc8 Rxf4 57.Kb6 Rxh4 58.a7 Ra4
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確信はないがこの収局は引き分けだと思う。

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55.Ra7?

 どうしてこう指したのか覚えていない。手を繰り返すことを考え三つ目の結果の可能性をちょっとの間忘れたのではないかと思う。まだ引き分けは残っているがここが正念場だった。55.a7! で白の勝ちなのでなおさらそうである。黒ルークが4段目にいてチェック間隔が狭く黒キングがh6の悪い位置にいるのでこの手が成立する。55...Kg7(55...Rxf4 56.Kc7 Ra4 57.Rh8+)56.Kb7 Rb4+ 57.Ka6 Ra4+ 58.Kb6 Rb4+ 59.Ka5 Rb1(59...Rb7 60.Ka6 Rb4 61.Rb8)60.Re8
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55...Rxf4 56.Rc7!?

YCM0026X.JPG

 この手を指す時引き分け提案をした。状況が変わってはもちろん厚かましいが一部には自分の手の要点を隠すためもあった。

56...Rxh4

 すぐにこう指してきたがたぶん正着でない。56...Rb4+!? 57.Rb7 Rxh4 58.a7 Ra4 59.a8=Q Rxa8+ 60.Kxa8 h4
YCM0026Y.JPG
なら実戦より良さそうである。

57.a7

YCM0026ZA.JPG

57...Ra4

 57...Rb4+ 58.Rb7 Ra4 59.a8=Q Rxa8+ 60.Kxa8 h4

58.Rc4! Rxa7 59.Kxa7 Kg5

YCM0026ZB.JPG

 これが収局の本に出てくるような局面である。ある著者は後に続く誤った手を大いに楽しんでいる。しかし対戦者たちを、当惑し憔悴しているのではなく思い違いをし無知であると不当に扱っている。言うまでもなくこれは初手ではなく試合は既にいくつかの紆余曲折を経てきている。我々二人の対局者はほぼ1手30秒に追い込まれていて、ここまでの60手近く(2度の引き分け提案といくつかのポカを含めて)はまだ比較的記憶に新しかった。私はたぶん負けだろうと判断し(その判断は誤っていたが)、心理状態は正確には思い出せないが明晰とはいえないことは確かだった。頭がくらくらしているようなそんな時には一度に1手を考えるのも難しい。そして私の覚えているのは差し迫るポーン雪崩についての予感のぼんやりした感覚だけである。

60.Kb6 h4 61.Kc5 h3

YCM0026ZC.JPG

62.Rc2?!

 これは何とも説明に困る奇妙な判断だった。最大のチェック間隔はどうなってしまったのだろう。意外にもまだ引き分けの範囲内にあるのである。しかし 62.Rc1! Kf4 63.Rh1! が引き分けへの近道だった。以下は 63...Kg4 64.Rg1+! Kh5 65.Kd4
YCM0026ZD.JPG
である。

62...Kf4 63.Kd4 g5

YCM0026ZE.JPG

64.Rc1??

 64.Rf2+! Kg4 65.Ra2! なら次のように依然として引き分けだった。65...Kg3 66.Ra3+ Kh4 67.Ra2 g4 68.Ke5 g3 69.Kf4 h2
YCM0026ZF.JPG
70.Ra8 Kh3 71.Rg8 h1=Q 72.Rh8+ Kg2 73.Rxh1 Kxh1 74.Kxg3

64...h2 65.Rf1+ Kg3 66.Rxf5

YCM0026ZG.JPG

 暗澹たる気持ちだった。

66...h1=Q 67.Rxg5+ Kf4 68.Rc5

YCM0026ZH.JPG

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「Behind the Scene」に小島選手自身の解説があります。
Dresden Dream(10) -Rowson VS Kojima-(1)
http://chessplayer.jugem.jp/?eid=15
Dresden Dream(11) -Rowson VS Kojima-(2)
http://chessplayer.jugem.jp/?eid=16

(この号終わり)

2009年03月25日

世界のチェス雑誌から(27)

「Chess Life」2007年10月号

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2007年ワールドオープン

ジェリー・ハンケン

 昨年のワールドオープンの大きな話題は不正行為のスキャンダルだった。ニューヨーク・タイムズ紙も記事にした。しかし今年は審判団も準備してきた。第一に無線信号検知器を持ってきた。第二に新しい規則を設けた。それは80%以上の勝率の選手はいつでもどんなイヤホーンを使うことを禁じられた。選手の中には相手が音楽を聴く機器を使っていると苦情を言う者もいた。しかし審判団としては良い成績でなければ「ガンズ=アンド=ローゼズ」[訳注 1986年結成の米国のヘビーメタルバンド]を聴いていてもよいと説明しなければならなかった。ほとんどの選手は理解してくれた。この非常に実際的な「80%規則」はこれからコンチネンタル・チェス協会の主要な4大会、つまりシカゴ、ワールドオープン、フォックスウッヅ、ラスベガスの大会で適用される。

 それにもかかわらず『サタデー=ナイト=ライブ』[訳注 米国のエンターテインメント番組]に登場するロザンヌ・ロザンナダナ(ギルダ・ラドナー)がよく言っていたように「必ず何かある」。次の試合は棋力別部門の最終戦で指された(8手で終わったので並べる必要もない)。

現代ベノニ [A61]
白 しぶしぶ氏
黒 ふんがい氏
ワールドオープン(第9回戦)、2007年7月
1.d4 Nf6 2.c4 c5 3.d5 e6 4.Nc3 exd5 5.cxd5 d6 6.Nf3 g6 7.Bg5 Nxd5???? 8.Bxd8 黒投了

 これは上位の対戦で起こった。そして高額の賞金を目指して近くで対局していた他の選手たちの注目を引いた。審判に複数の苦情があがったが両選手とも何もおかしなことはないと否定した。

 名うての大会審判のスティーブ・イミット(「2006年最優秀大会審判」に選ばれていて、その後に続く3人の合計よりも多くの米国大会の審判を務めた)によって調査が行なわれた。スティーブは若い目撃者を見つけた。彼は4卓下位で対局していてこの奇妙な試合に当惑していた。彼は両対局者に「一体どうしたんですか」と尋ねていた。勝った選手は上機嫌で引き分けよりもどちらかが勝った方がより多くの賞金がもらえると教えてくれた。両対局者は明らかにコイン投げかじゃんけんで勝つ方を決めたようだった。

 若者は告げ口のようなことをしたくなかったようで少々渋りながらスティーブにこのことを話してくれた。(これはジェイ・レノのお気に入りのジョーク「間抜けな犯罪者」を思い出させる。)そこでスティーブは両対局者を没収試合とし壁に貼ってある対戦表に書き込んだ。負けた方の選手Bは憤慨しながら審判室に入って来た。彼はナイトに触ったのでそれを動かすことにしたと説明した。ナイトに触った理由を聞かれると彼は答えられなかった。そして目撃者がいると言われるとすぐに後悔の念にとらわれ全面的に告白した。「悪いことだとは知っていて申し訳なく思う。このようなことは二度としない。」彼は没収試合を受け入れてこれ以上の処罰は受けないことになった。

 後ほど「勝った」選手が憤慨しながら審判室に怒鳴り込んできた。仲間の共謀者が告白したことを告げられると態度が一変した。「分かった、確かにやった。悪いことだと知っていた。申しわけない。これから短縮した時間で本当の試合を指すことはできないだろうか?」なかなか理解しない人もいるものだ。彼はもちろん汽車が駅を出てしまったからかにはどんな条件でもだめだと言われた。両者失格は人目についたがそれ以上の処罰はなかった。本心を言えば私は厳罰は望まない。しかし私なら二人を大会から完全に追放し倫理委員会に報告するだろう。「告白」したことで彼らは救われたがコンチネンタル・チェス協会の監視必要者リストに名前が載せられている。

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(この号終わり)

2009年04月01日

世界のチェス雑誌から(28)

「Peón de Rey」2009年1・2月号

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オリンピアードの次の一手

黒の手番
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 正解はコメント欄にあります。

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(この号終わり)

2009年04月08日

世界のチェス雑誌から(29)

「British Chess Magazine」2009年1月号(1/22)

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ドレスデン・オリンピアード

 第38回ドレスデン・オリンピアードの男子/オープンの模様をジョン・ソーンダーズの記事、および彼とイアン・ロジャーズの棋譜解説でお伝えする。

 オリンピアードではとにかく色々なことが起きるので、何から書き始めたらよいのかしばしば迷う。オリンピアードは変化するチェスの宇宙の定点である。ほぼ60年の間その西暦が2で割り切れればこの惑星のどこかでプロ、アマ、それに(はっきり書こう)多くのどへぼがみんなの愛好する競技で自国を代表してわんさか集まってくるのである。

 そこでまず始めに隔年の奇跡であるチェス・オリンピアードに感謝しなければならない。しかし仔細に観察し批判することを許してもらえるならば、非常に多くのことが多年の間に変わり、しかもその中にはよい方向への変化でなかったものもある。今はこれについてはこのくらいにしておこう。本号のどこかに2008年の色々な規則の変更とその結末について現地にいたイアン・ロジャーズから興味深い洞察が掲載されているだろう。

 他の多くの点でドレスデンでは物事がいつもよりも改善されていた。選手はより長い持ち時間が与えられた。40手を過ぎたら30分が追加された(覚えているだろうがトリノでは全指し手に対して90分でそれに毎手30秒の加算だった)。豪華な超一流選手も出場した。世界チャンピオンのビシー・アーナンドの出場こそなかったが彼に最近血祭りにされたウラジミル・クラムニクは出場した。それに他の2700超の選手のほとんども顔をそろえた。世界ランキング第2位のアレクサンダー・モロゼビッチはロシアチームの下位の第4卓だった。世界ランキング第25位のエブゲニー・アレクセーエフはロシアチームに加われなかった。

 驚くほどではないがクラムニク、スビドレル、グリシュク、モロゼビッチ及びヤコベンコという陣容のロシアは2002年のブレッドで首にかけたのを最後に遠ざかった金メダルを奪還すべく優勝の大本命だった。消息通はみなロシアが2006年の屈辱的な6位から断固たる決意で燃えていると予想していた。ロシアはバレエフをはずし新星のヤコベンコを迎え入れた。これではもうしくじりようがないことは確かではないか。

 それがあるのである。そしてロシアはしくじった。ヤコベンコはチームへの貴重な援軍となった。しかし他の4人は普段より少しだけだが悪かった。勝ち点方式への変更によりウクライナとアルメニアに負けた2回の 1½-2½ が効いて優勝争いから脱落した。最終回のスペイン戦の2-2の引き分けで2大会連続で何のメダルも取れなかった。

第38回オリンピアード 最終順位表
オープン/男子(11回戦、勝ちは勝ち点2、引き分けは勝ち点1)



1アルメニア1952スコットランド12103モナコ9
2イスラエル1853スイス12104ボツワナ9
3米国1754ブラジル12105チュニジア9
4ウクライナ1755ポルトガル12106イエメン9
5ロシア1656エジプト12107アフガニスタン9
6アゼルバイジャン1657南アフリカ12108ネパール9
7中国1558FYROM12109韓国9
8ハンガリー1659オーストラリア12110アンドラ9
9ベトナム1660アイルランド12111リビア9
10スペイン1661フェロー諸島12112蘭領アンティル諸島9
11グルジア1662シンガポール12113マルタ9
12オランダ1563アラブ首長国連邦12114ウルグアイ9
13ドイツ11564アイスランド11115ジャージー9
14ブルガリア1565パキスタン11116ニカラグア9
15イングランド1566ベネズエラ11117ザンビア8
16インド1567カタール11118バルバドス8
17スロベニア1568アルゼンチン11119モザンビーク8
18ベラルーシ1469ベルギー11120ウガンダ8
19ルーマニア1470コスタリカ11121サンマリノ8
20セルビア1471タジキスタン11122キプロス8
21ノルウェー1472エクアドル11123ナミビア8
22フランス1473モンゴル11124エチオピア8
23キューバ1474メキシコ11125トリニダードトバゴ8
24ギリシャ1475ヨルダン11126ガーンジー8
25スウェーデン1476日本11127英領バージン諸島8
26クロアチア1477ルクセンブルク11128ホンジュラス7
27カナダ1478エルサルバドル11129モーリシャス7
28モンテネグロ1479ICSC11130ケニア7
29ポーランド1380ジャマイカ11131スリナム7
30ボスニアヘルツェゴビナ1381ウェールズ11132香港7
31スロバキア1382キルギスタン10133パプアニューギニア7
32フィンランド1383トルクメニスタン10134マカオ7
33リトアニア1384シリア10135アルバ7
34エストニア1385イラク10136中国台湾7
35ドイツ31386ボリビア10137バーミューダ7
36トルコ1387グアテマラ10138マラウィ6
37カザフスタン1388IPCA10139リヒテンシュタイン6
38チェコ共和国1389アルジェリア10140ガーナ6
39デンマーク1390ドミニカ共和国10141米領バージン諸島6
40イラン1391IBCA10142ガボン5
41イタリア1392パナマ10143フィジー5
42オーストリア1393アルバニア10144セイシェル5
43ドイツ21394プエルトリコ10145マダガスカル4
44ラトビア1395スリランカ10146ルワンダ3
45モルドバ1396マレーシア10
46フィリピン1397ニュージーランド10持ち時間
47バングラデシュ1398アンゴラ10最初の40手につき90分
48パラグアイ1399レバノン10残りにつき30分
49コロンビア12100タイ10最初から
50ウズベキスタン12101パレスチナ9毎手30秒加算
51インドネシア12102ナイジェリア9

IBCA = International Braille Chess Association(国際点字チェス協会)
IPCA = International Physically Disabled Chess Association(国際身障者チェス協会)
ICSC = International Committee of Silent Chess(国際黙音チェス委員会)
FYROM = Former Yugoslav Republic of Macedonia(マケドニア共和国)

オープン/男子部門の個人メダル

主将 金 ピーター・レコ(ハンガリー)7½/10、銀 ボリス・ゲルファント(イスラエル)7½/10、銅 ベセリン・トパロフ(ブルガリア)6½/8
副将 金 ウラジミル・アコピアン(アルメニア)8/11、銀 パコ・バリェホ(スペイン)9/11、銅 バシリオス・コトロニアス(ギリシャ)8½/11
三将 金 ガブリエル・サルギシアン(アルメニア)9/11、銀 ブガル・ガシモフ(アゼルバイジャン)6½/9、銅 タイガー・ヒラープ・ペルソン(スウェーデン)8/10
四将 金 ドラギサ・ブラゴイェビッチ(モンテネグロ)8/9、銀 アレクサンドル・デルチェフ(ブルガリア)8/9、銅 ダニエル・フリドマン(ドイツ1)7/10
五将 金 ドミトリー・ヤコベンコ(ロシア)7/9、銀 マキシム・ロートシュテイン(イスラエル)7/9、銅 フェレンツ・ベルケス(ハンガリー)6½/9

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(この号続く)

2009年04月15日

世界のチェス雑誌から(30)

「British Chess Magazine」2009年1月号(2/22)

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ドレスデン・オリンピアード(続き)

YCM0030A.JPG
アルメニアの青年たちがまたやった。左から右へ団長のアルシャク・ペトロシアン、アルタシェス・ミナシアン、ウラジミル・アコピアン、レボン・アロニアン、ガブリエル・サルギシアン、ティグラン・L・ペトロシアン。2009年はアルメニアでは「ペトロシアン年」で、生誕80周年が祝われる。偉大なる故世界チャンピオンでオリンピアードの達人はきっと若き後継者たちを誇らしく思っていることだろう。

アルメニア I
T
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A
F
A
I
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N
E
D
A
Z
E
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U
S
F
R
A
I
S
R
S
R
B
C
H
N
得点TPR%
レボン
アロニアン
27571½-½½½½½01½5½/10274355
ウラジミル
アコピアン
26791½1½½1½1½1½8/11281373
ガブリエル
サルギシアン
2642111½1½111½½9/11286982
ティグラン・L
・ペトロシアン
2629111½½½½10½17½/11271268
アルタシェス
ミナシアン
2541--1--------1/1-100
チーム得点194324331/44  
(ITA=イタリア、MDA=モルドバ、FAI=フェロー諸島、UKR=ウクライナ、NED=オランダ、AZE=アゼルバイジャン、RUS=ロシア、FRA=フランス、ISR=イスラエル、SRB=セルビア、CHN=中国)

 それでいくつかの国々にも優勝の可能性ができた。しかし結局はトリノと同じ結果になった。アルメニアは2006年のオリンピアードで優勝し今回も優勝の呼び声が非常に高かった。しかしこの間に金メダリストの一人のカレン・アスリアンの死去という悲劇をこうむっていた。それでほとんどの消息通は雷は同じ場所に二度落ちないと決めてかかっていた。それが落ちたのである。それもほとんど同じように。またしてもガブリエル・サルギシアンとウラジミル・アコピアンが突出した大活躍でレイティングの点でトリノを上回った。アコピアンは8/11の成績をあげ(トリノでは9/12)サルギシアンは9/11だった(トリノでは10/13)。二人とも2回のオリンピアードで負け無しで、アコピアンはこれで4オリンピアードで負け無しである。

 これにつけて思い起こされるのはアルメニアの別の偉大なオリンピアード出場選手である。ちょうど今大会の前にアルメニアのチェス記者で理事のガクイク・オガネシアンと連絡をとった。その時彼からアルメニア・チェス連盟は故世界チャンピオンの生誕80周年を記念して2009年を「ペトロシアン年」とする計画であると言われた。もちろんペトロシアンはこれまでのうちで最も偉大なオリンピアード選手の一人であった。たぶん最高の偉大な選手だろう。ペトロシアンの成績はものすごい。129局対戦して78勝50和1敗である。1958年から1974年の間に9回のチーム金メダルと6回の個人金メダルを獲得した。だからハミルトン=ラッセル杯の管理人としてアルメニアが「ペトロシアン年」を始めるのは当を得ている。

 ウラジミル・アコピアンとガブリエル・サルギシアンに触れたからには他の金メダリストにも触れるのが公平だろう。レフ・アロニアンの成績もトリノと似たようなものだった。主将として相手はきつかったが自分の非常に高いレイティングどおりの試合をした。アルタシェス・ミナシアンはまたしても一種の「ウォーミングアップ役」として使われた。トリノでは最初の3試合に出た後は残りは全然出なかった。ドレスデンでは格下のフェロー諸島と当たった時アロニアンに休息を与えるために呼ばれて1局指しただけだった。4局だけのチェスで2個のオリンピアード・チーム金メダル。もらえるなら割のいい仕事である。

 大事なことを一つ言い残したが「年少」ティグラン・ペトロシアンはチームの新入りで期待を裏切らなかった。彼の実効レイティングはチームで最低だったが2712では団長のアルシャク・ペトロシアンも不満などあるはずもない。ついでながら団長のペトロシアンはドレスデンで天にも昇る気持ちだったに違いない。チームは金メダルを獲得し、娘の夫のピーター・レコは(イバンチュク戦でルーク対ルーク+ビショップの収局を負けたにもかかわらず)主将の金メダルを獲得した。これ以上良いことがあり得るだろうか。昨年のコーラス大会でナイジェル・ショートが「神は確かに一人存在するがブルガリア人ではない」と印象的なことを言った。なるほどそうかもしれない。しかしその神はアルメニア人かもしれないという証拠が増えている。

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(この号続く)

2009年04月22日

世界のチェス雑誌から(31)

「British Chess Magazine」2009年1月号(3/22)

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ドレスデン・オリンピアード(続き)

YCM0031A.JPG
米国、米国・・・ 最終回におけるウクライナ戦での米国男子チームの顔ぶれ。結果は衝撃的な3½-½での勝利だった。イワンチュクのドーピング検査拒否の反響はまだ解決していないかもしれない[訳注 その後無罪放免になりました]。

イスラエル L
A
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M
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L
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Y
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W
E
E
S
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1
A
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M
U
K
R
N
E
D
得点TPR%
ボリス
ゲルファント
2719-1½11½½11½½7½/10283375
マイケル
ロイズ
2677½-1½-½½½½½15½/9270161
ボリス
アブルーフ
265701-1½½-½0-½4/8257150
エブゲニ
ポストニ
2674½1001-1½-0-4/8254550
マキシム
ロートシュテイン
26091½½-111-1½½7/9277678
チーム得点1822328/44  
(LAT=ラトビア、MNE=モンテネグロ、LTU=リトアニア、EGY=エジプト、DEN=デンマーク、SWE=スウェーデン、ESP=スペイン、GE1=ドイツ1、ARM=アルメニア、UKR=ウクライナ、NED=オランダ)

 準優勝はイスラエルで、オリンピアードでどの色にせよ初のチームメダル獲得だった。ボリス・ゲルファントは絶好調で、主将の金メダルを判定で惜しくもレコに奪われた。10人のグランドマスターと対戦し、アロニアンを破って金メダル獲得国に対して自分のチームの勝ちをもぎ取った。大会序盤におけるラトビア及びリトアニア戦での引き分けと最終戦の前の回でのウクライナ戦での負けのために金メダルを逃がした。ロイズとロートシュテインも素晴らしい活躍をした。

米国 I
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A
A
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E
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G
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B
H
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U
S
I
N
D
G
E
1
U
K
R
得点TPR%
ガータ
カームスキー
2729½½-01½½11½16½/10276865
ヒカル
ナカムラ
2704-½1011½011½6½/10269565
アレグザンダー
オニシュク
2644111½-01½½016½/10271465
ユーリ
シュールマン
26160-½½11½--115½/8252569
バルージャン
アコビアン
2606101-1--01--4/6250367
チーム得点1721429/44  
(ISL=アイスランド、GRE=ギリシャ、RSA=南アフリカ、AZE=アゼルバイジャン、HKG=香港、CUB=キューバ、HUN=ハンガリー、RUS=ロシア、IND=インド、GE1=ドイツ1、UKR=ウクライナ)

 第10シードの米国は銅メダル獲得で自身も驚いたかもしれない。もっとも2006年も同じことを成し遂げている。ギリシャとの引き分けとアゼルバイジャン戦での大敗は幸先が良くなかった。第5回戦では格下の香港とのこっけいな組み合わせだった(対局の一つはレイティング差がほぼ1000点もあった)。これは順位判定での可能性を損なうことが予想された。カームスキーがスビドレルに勝ったにもかかわらずロシア戦も負けた。しかしスイス式で良い結果を得る秘訣は最後の追い込みにある。そして米国の最後はものすごかった。インド戦での大勝、開催国ドイツ戦での辛勝、そして最終戦での対ウクライナであり得ないような3½-½での圧勝である(イワンチュクはむかっ腹を立てドアをけりドーピング検査を受けなかった)。

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(この号続く)

2009年04月29日

世界のチェス雑誌から(32)

「British Chess Magazine」2009年1月号(4/22)

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ドレスデン・オリンピアード(続き)

イングランド T
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I
T
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A
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V
I
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H
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C
R
O
得点TPR%
マイケル
アダムズ
27341½100-½½1½½5½/10266855
ナイジェル
ショート
2642-11½10111½07/10274170
デービド
ハウエル
2593½1111½0½½½17½/11267568
ガーウェイン
ジョーンズ
25481½-½½½½½½0½5/10255650
スチュアート
コンケスト
25260-1--0-----1/3228833
チーム得点15342123226/44  
(TUR=トルコ、DEN=デンマーク、MLT=マルタ、NOR=ノルウェー、ITA=イタリア、RUS=ロシア、AZE=アゼルバイジャン、GEO=グルジア、VIE=ベトナム、CHN=中国、CRO=クロアチア)
スコットランド G
E
1
I
B
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P
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C
A
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C
H
N
J
P
N
G
E
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L
A
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B
A
N
N
O
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G
R
E
得点TPR%
ジョナサン
ラウソン
25960111½00½10-5/10253750
ジェイコブ
アーガード
2528-1-0½-½½1104½/8259456
ジョン
ショー
24690-1½0½0-0-02/8230225
ケテバン
アラハミア
24480½11-1-½1½16½/9260572
コリン
マクナブ
2455½11-½10½-½05/9246756
チーム得点12½4½232123/44  
(GE1=ドイツ1、IBC=国際点字チェス協会、PUR=プエルトリコ、CAN=カナダ、CHN=中国、JPN=日本、GEO=グルジア、LAT=ラトビア、BAN=バングラデシュ、NOR=ノルウェー、GRE=ギリシャ)
アイルランド P
O
L
L
U
X
S
U
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B
I
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K
M
S
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B
J
P
N
S
U
I
M
G
L
E
T
H
I
R
得点TPR%
アレグザンダー
バブーリン
25440--½½11½0½½4½/9238650
ブライアン
ケリー
24880110½-1½1-½5½/9247361
サム
コリンズ
24120110-000-114/9224344
マーク
クイン
2401011-1½1001-5½/9235461
マーク
ハイデンフェルド
2364-110½0--½115/8239262
チーム得点12044½31324½/44  
(POL=ポーランド、LUX=ルクセンブルク、SUR=スリナム、BIH=ボスニア=ヘルツェゴビナ、TKM=トルクメニスタン、SRB=セルビア、JPN=日本、SUI=スイス、MGL=モンゴル、ETH=エチオピア、IRQ=イラク)
ウェールズ T
P
E
P
O
R
G
E
2
M
A
W
P
A
K
B
O
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S
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L
I
B
K
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O
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B
O
T
得点TPR%
リチャード
ジョーンズ
230710½-½1½½½1½6/10232860
ヨアン
リース
22971½01-1½0½116½/10230165
ティム
ケット
22721-010½0-1½15/9216156
ジョナサン
ブラックバーン
217510-100-0-0-2/7178729
アラン
スパイス
2173-00½0-½10-02/8199625
チーム得点114½½½221½/44  
(TPE=台湾、POR=ポルトガル、GE2=ドイツ2、MAW=マラウイ、PAK=パキスタン、BOL=ボリビア、SUI=スイス、LIB=レバノン、KEN=ケニア、HON=ホンジュラス、BOT=ボツワナ)

ジャージー クルジストフ・ベルゾ 3½/9、クリス・タンディ 5/9、ジョナサン・ホーウェス 3½/9、グレアム・ムーニー 3½/9、ルーイス・ジュアールト 2½/8 勝ち点9、総得点18
ガーンジー ピーター・ロウ 2/9、フレッド・ハムパール 3/9、マーク・オザンヌ 4/9、ピーター・カービー 4/9、トービー・ブルックフィールド 2/7 勝ち点8、総得点14½

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ドレスデンでイングランドのために戦うマイケル・アダムズとナイジェル・ショート。ショートはこの試合では白番だったが、いくつかの重要な対戦で黒で大勝ちした。

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デービド・ハウエルは7½/11の成績を挙げて非常に立派なオリンピアード初出場を飾った。この対グルジア戦は2½-1½でイングランドの勝ちだった。

ドレスデンでのイングランド

 イングランドのオリンピアードは前回より大いに満足できるものだった。順位の上昇は19位から15位に過ぎなかったけれども今回のイングランドは少なくとも強豪チームのいくつかとしのぎを削り立派に渡り合った。非常に良かった点は初参加したデービド・ハウエルの素晴らしい成績だった。その活躍は早過ぎる引退をしたマシュー・サドラーの力量に匹敵する。ゆくゆくはショートやアダムズの例にならうことを期待しても無理なことではないだろう。

 ナイジェル・ショートも最高の力を発揮した。惜しいことにクロアチアのコズルに最終戦で負けて席順別メダルを逃がした。第5回戦から第8回戦まで4局連続して黒番だったが強豪相手に3勝をあげた。奇妙なことに彼らは皆ショートの黒枡ビショップにしてやられた。このビショップはいずれもa1-h8の斜筋で絶大な働きをした。4局黒番の2局目はウラジミル・クラムニク相手の負けで致し方なかった。この試合でショートは序盤で黒枡ビショップを奪われた。

 アダムズは最高の状態には少し及ばなかった。そして二人の若手に連続して苦杯を喫するという不運に見舞われた。まずマグヌス・カールセンに負け(これで彼との対戦成績は0勝2和4敗になった)、次の回でもっと若い米国育ちのイタリアの神童ファビアノ・カルアナにも負けた。それでも実効レイティング2668をあげることができた。これはほとんどの人の基準では上出来の成績である。

 ガーウェイン・ジョーンズはハウエルよりも活躍しなかったがレイティングどおりの成績で全体的に安定していた。もっと意欲的だったら世界第2位のモロゼビッチ相手の黒番で優勢な局面を勝ち切ろうとしたかもしれない。しかし分別が勇気を上回った(昔のことを覚えている我々は1968年のルガノでマイク・バズマンがスミスロフの引き分け提案をけって後で悔やむことになったことを思い出すかもしれない)。

 スチュアート・コンケストは積年の英国チャンピオンの呪いをわずらい、1回戦でレイティング2436のトルコのIMに負けた後は2局しか対局しなかった。そのうちの1局はロシアの好調のヤコベンコ戦で、容赦なくつぶされた。

イングランド対ロシア

 この対戦でアダムズが抜け番になったことは英国のチェス愛好家には意外だった。しかしこれは主将が若手相手に2連敗したことを考慮したものだった。好調のショートでも黒でクラムニクを押さえることはできずチームは1-3で負けた。他にチームでイングランドが負けたのは中国だけで、3局が引き分けだったがジョーンズが一番下の順位の対局で長手数の末敗れた。結論的にはチームも団長のピーター・ウェルズも満足してよい賞賛に値する成績だった。

他の同胞国

 スコットランドは2006年の時と同じ順位(52位)に終わった。同チームはケテバン・アラハミア=グラントがスコットランド(及びオープン)に初めて加わったことによってかなり強化されたのでこの結果は少し残念だったに違いない。実際この元グルジア選手は3度目かつ最終のグランドマスター基準を達成(レイティング2500にはまだ届いていない)するという抜群の成績を残した。そしてジェイコブ・アーガードもレイティング以上の活躍をした。しかしジョナサン・ラウソンは実力を出せずジョン・ショーは見る影もなかった。

 アイルランドとウェールズは大体予想通りに終わった。ウェールズはオリンピアードで素晴らしい成績を残していた主将のレイトン・ウィリアムズを病気で欠いていたがそれを考慮すれば健闘した。

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(この号続く)

2009年05月06日

世界のチェス雑誌から(33)

「British Chess Magazine」2009年1月号(5/22)

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ドレスデン・オリンピアード(続き)

解説 ソーンダーズ

第2回戦 イングランド対デンマーク
白 ナイジェル・ショート
黒 ペーター・ハイネ・ニールセン

ペトロフ防御 [C42]

1.e4 e5 2.Nf3 Nf6 3.Nxe5 d6 4.Nf3 Nxe4 5.d3 Nf6 6.d4 d5

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7.Bd3 Be7 8.h3 Nc6 9.a3 O-O 10.O-O Re8 11.Nc3 h6 12.Re1 Bf8

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 この試合の序盤の段階で意気込みをかき立てるのは難しい。両対局者とも用心深い試合運びで相手の出方を見守っている。これは団体戦のチェスでは非常によくあることである。

13.Bf4 Rxe1+ 14.Qxe1 Bd6 15.Qd2 Be6 16.Re1 Bxf4 17.Qxf4 Nh5

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18.Qe3 Nf6 19.Ne2 Qd6 20.Ng3 Ne7 21.Ne5 Qb6 22.f4!?

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22...Nc6

 事態が少し面白くなり始めた。22...Qxb2? は 23.f5 Bc8 24.Nxf7 で明らかに白が良い。

23.c3

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23...Re8

 黒はまだb2のポーンを取る気になれなかったがたぶん取るべきだった。23...Qxb2!? 24.Rb1 Qxa3 25.Rxb7 Qd6 となった後白がどのようにポーン損の代償を取れるのかはそれほどはっきりしない。代わりに黒は優柔不断を続け白が陣容を強固にする機会を得た。

24.b4 Ne7 25.f5 Bc8 26.Ng4 Nxg4 27.hxg4

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27...Qd6?!

 たぶん黒は 27...Bd7 でe列を何とかしておくべきだし、あるいは 27...f6 で白のgポーン突きを抑えるべきかもしれない。

28.g5! hxg5 29.Qxg5 f6 30.Qh4 Bd7 31.c4!

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31...Nc8

 31...dxc4? はうまくいかない。32.Bxc4+ Nd5 33.Ne4! Qc6 となってここで単に 34.Bb3! で必殺の 35.Nc3! の狙いがある。

32.Rxe8+ Bxe8 33.c5 Qe7 34.Kf2! a6 35.Ne2 Bb5 36.Bxb5 axb5 37.Qf4!

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 ショートは陣容を慎重にまとめながら攻撃の矛先を転じているようである。本局における彼の指し回しは明快さが印象的である。

37...Qd7 38.g4 Ne7 39.Qf3

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 このクイーンの捌きの骨子はナイトをf4に据える前に敵クイーンの侵入を防ぐことである。

39...Kf7 40.Nf4 c6 41.Qh1 Kg8 42.Qh5 Qc8

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43.Kg2

 43.Ng6 Qe8(43...Nxg6 はここの変化の主手順に戻る)44.Kf1!
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は洗練された手詰まり戦術である。44...Nxg6(44...Kf7 は 45.Nf4+ でクイーンを取られる)45.fxg6 Qe6 46.Qh7+ Kf8 47.Qh2!
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これで黒は白の狙いに対処できない。例えば 47...Qxg4 48.Qh8+ Ke7 49.Qxg7+ Ke8 50.Qf7+ Kd8 51.Qxf6+ Ke8 52.Kf2
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は白の楽勝である。

43...Qb8 44.Ne6 Qc8 45.Qh2

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45...Ng6?

 これはポカだがしょせん形勢は敗勢である。(前述の変化のように白が必ず勝ちの手順を見つけることができるという仮定による。45...Kf7 46.Qh5+ Kg8 47.Nf4 Qf8 48.Ng6 Qe8 49.Kf2!)
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46.fxg6 1-0

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 46...Qxe6 47.Qb8+ で詰みになる。

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(この号続く)

2009年05月13日

世界のチェス雑誌から(34)

「British Chess Magazine」2009年1月号(6/22)

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ドレスデン・オリンピアード(続き)

解説 ソーンダーズ

第2回戦 デンマーク対イングランド
白 ラルス・シャンドルフ
黒 デービド・ハウエル

レーティ-グリューンフェルト [A16]

1.Nf3 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 d5 4.cxd5 Nxd5 5.Qa4+ Bd7

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6.Qh4 Bc6 7.Ne5 Bg7 8.Nxc6 Nxc6 9.e3 O-O 10.Be2 e6

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11.Qa4

 1993年ブエノスアイレスでのミロス対カームスキー戦では 11.Qe4 Nce7 12.O-O c5 13.Qc2 Rc8 14.d3 Qd7 と進み引き分けに終わった。11.Qxd8 Raxd8 12.Nxd5 Rxd5 はたぶん少し覇気に欠け黒にわずかに主導権がある。

11...Nce7 12.d4?!

 この手の後黒が主導権を握った。白は 12.O-O と指すべきで互角の形勢である。

12...c5! 13.Nxd5 Nxd5

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14.dxc5

 14.O-O は 14...cxd4 15.exd4 Qb6 16.Rd1 Rfc8 で黒が良さそうである。

14...Nc3!

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15.Qb4?!

 15.Qc2 でキャッスリングの権利を残しておいたほうがよい。しかし 15...Nxe2 16.Qxe2 Qa5+ 17.Bd2 Qxc5 でまだ黒に明らかに主導権がある。

15...Nxe2 16.Kxe2 Qg5 17.g3 Rac8 18.Bd2 Rxc5

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19.Qxb7

 19.Rac1 の方がわずかに優るが、すべてが白にとって非常にまずくなり始めている。

19...Qg4+ 20.Qf3 Qc4+ 21.Ke1 Bxb2 22.Rd1 Rd8 23.Qe2 Qxe2+ 24.Kxe2 Rc2 0-1

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 白は黒からの ...Bc3 で駒得する狙いを防げない。25.Ke1 なら 25...Rdxd2 26.Rxd2 Bc3 でやはり黒の勝ちである

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(この号続く)

2009年05月20日

世界のチェス雑誌から(35)

「British Chess Magazine」2009年1月号(7/22)

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ドレスデン・オリンピアード(続き)

解説 ロジャーズ

第2回戦 シンガポール対ベトナム

YCM0035A.JPG パシエンシア対グエン・ゴク

 局面は黒がちょうど 19...Rfc8 と指したところで、黒の読みは 20.Bxa6? Rxc1+ 21.Rxc1 Qa7 22.Rc7 Qb8!
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で、白が駒損になる。白はもちろん冷静に 20.Ne5 と指せば少し優勢である。しかし代わりにもっと意欲的な手を読んでいた。

20.Qxa6!? Nc3! 21.Qd3

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 白がまんまとポーンを食い逃げしたように見える。しかしグエンは白も最下段に問題をかかえていることを見せつけようとする。

21...Qa7!?

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22.h4?

 黒の手に動揺した白はおとなしく駒を譲りすぐに勝負も譲った。しかし実際は黒のクイーン捨ては受諾すべきで、22.Rxa7 Nxe2+ 23.K1! Rxc1+ 24.Kxe2 Rxa7 25.Nd2!
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で白が悪くなかった。

22...Qxa1 23.Rxa1 Rxa1+ 24.Kh2 Bc4 25.Qc2 Nxe2 26.Ng5

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26...f5 27.Nxe6 Bxe6 28.Qxe2 Rac1 29.Qb5 R1c2 30.Qe5 Re8 31.Kg3

YCM0035G.JPG

31...b3 32.h5 h6 33.Qb5 Bf7 34.Qxf5 Rxb2 35.Qb5 Rd2 0-1

YCM0035H.JPG

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(この号続く)

2009年05月27日

世界のチェス雑誌から(36)

「British Chess Magazine」2009年1月号(8/22)

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ドレスデン・オリンピアード(続き)

解説 ソーンダーズ

第4回戦 ノルウェー対イングランド
白 ライフ・ヨハネッセン
黒 デービド・ハウエル

レーティ-グリューンフェルト [A16]

1.Nf3 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 d5 4.cxd5 Nxd5 5.Qa4+ Bd7 6.Qh4 Bc6 7.Qd4

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 既に掲載したように第2回戦でシャンドルフは 7.Ne5 の方を選んだ。本譜の手はそれよりも多く指されている。

7...Rg8!?

 少数の試合では 7...Nf6 8.Qxd8+ Kxd8 9.Ne5 と進んだがほとんどは白が優勢だった。7...f6 はかなり黒の成績が良い。ハウエルは新しい手を試した。

8.Ne5

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8...e6

 8...Bg7 は 9.Nxc6 でそれほど良くない。9...Bxd4 10.Nxd8 Bxc3 11.bxc3 Kxd8 は白に強力な双ビショップが残る。また 9...bxc6 10.Qc4 は黒のポーン構造に恒久的な弱点ができる。

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9.Nxc6

 9.e4!? は 9...Nb4 10.Qxd8+ Kxd8 で白は ...Nc2+ の狙いにどうするか決めなければならないが 11.Kd1 で大丈夫みたいである。

9...Nxc6 10.Qa4 Qd7 11.e3 O-O-O 12.Be2

 12.Bb5 の方が無難なようである。

12...Ndb4

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13.O-O

 13.d4!? なら白は形勢不明の 13...Nxd4!? の可能性を読んでおかなければならない。しかし本譜の白の手の後黒は陣形的に有利になった。

13...Nd3 14.b4!?

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14...Kb8!

 14...Bxb4 は 15.Rb1! で白に主導権が戻ってしまう。

15.b5 Nce5 16.f4 Nxc1 17.Raxc1 Nd3 18.Bxd3 Qxd3 19.Ne4 f5

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 両対局者とも正確で思い切った手を指し続けてこの局面に至った。しかしまだ形勢の優劣は定かでない。

20.Ng5?!

 この手は危険すぎた。20.Nf2! ならクイーンを追い払える。20...Qxd2?? は ...Qxe3 がチェックにならないので 21.Rfd1 で黒の負けになる。

20...Qxd2

YCM0036G.JPG

21.Nf7

 21.Kh1!? は 21...Qxe3 22.Qc4 Bd6 23.Nxe6 Rde8 24.Rfe1 Qb6 でたぶん白はポーンの代償が十分でないだろう。

21...Rd5!?

 これは最下段を空けることの顛末を読み切った選手の自信のこもった手である。

22.b6

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 たぶん最善の試みである。

22...axb6 23.Qe8+ Ka7

YCM0036I.JPG

24.Nh6

 24.Qxe6 は 24...Bc5 25.Kh1 Bxe3 で黒の思うつぼのようだが本譜の手は急速に結末を迎える。

24...Ba3! 25.Nxg8 Qxe3+ 26.Kh1 Bxc1

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27.Ne7

 27.Qa4+ は 27...Ra5 28.Qc2 Bd2 29.Qxc7 Qd3 30.Rg1 Rc5 で黒の攻撃が速すぎる。

27...Qxf4! 28.Rg1 Ba3!

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 黒の戦術の読みは非常に正確である。

29.Nxd5 exd5

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30.Qd7

 30.g3 なら黒は単純に 30...Qe4+ で応じることができ、黒ポーンの圧倒的支配で勝ちになる。

30...Bd6 31.Qxh7 d4 32.g3 Qe4+ 33.Rg2 d3 0-1

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(この号続く)

2009年06月03日

世界のチェス雑誌から(37)

「British Chess Magazine」2009年1月号(9/22)

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ドレスデン・オリンピアード(続き)

解説 ロジャーズ

第6回戦 アルメニア対アゼルバイジャン
白 ウラジミル・アコピアン
黒 シャフリヤル・マメジャロフ

シチリア防御 [B63]

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 Nc6 6.Bg5 e6

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7.Qd2 Be7 8.O-O-O a6 9.f4 Nxd4 10.Qxd4 b5 11.Bxf6 gxf6

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12.e5

 白は最も攻撃的な手を選択した。12.f5 は 12...Rb8 の後 ...Qb6 で、今のところ黒の方が好結果を収めている。

12...d5 13.Kb1

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13...Bb7?!

 これが主流手順だったが、この試合の後黒はこの戦型を生き残らせるために恐らく 13...Rg8 14.Bd3 f5 に目を向けることになるだろう。

14.f5 fxe5 15.Qxe5 Bf6 16.Qg3 Qe7 17.fxe6 fxe6 18.Be2

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18...h5

 1998年のカスパロフ対イワンチュクの快速戦で 18...O-O-O 19.Bg4 が白にとってうまくいったので本譜の手が不可欠である考えられてきた。

19.a4!

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19...h4

 19...b4 は 20.Ne4! が良い応手で、20...dxe4 21.Qg6+ Qf7 22.Qxf7+ Kxf7 23.Rd7+ での収局は黒が良くない。

20.Qg6+ Qf7

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21.Qg4!

 初めて前例にない手になったが-これまでの手は 21.Qd3 だった-黒に深刻な問題を突きつけた。21.Qg4 の後白は 21...Bxc3 22.bxc3 を恐れる必要はない。なぜなら 23.Rhf1 から始まる白の攻撃の方が早く到着する。

21...Rg8 22.Qh3 Rg5 23.Bg4 Ke7 24.Rhe1

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24...Be5?!

 ここから黒陣が急速につぶれる。24...Re5 が必然だったが白はb5のポーンをただ取りできる。

25.Qe3! Rag8 26.Qa7! 1-0

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 早い投了だが 26...Kf8 と受けても 27.Rf1 Bf6 28.Bxe6! で黒が壊滅する。

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(この号続く)

2009年06月10日

世界のチェス雑誌から(38)

「British Chess Magazine」2009年1月号(10/22)

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ドレスデン・オリンピアード(続き)

解説 ソーンダーズ

第7回戦 アゼルバイジャン対イングランド
白 シャフリヤル・マメジャロフ
黒 ナイジェル・ショート

クイーン翼ギャンビット拒否 [D55]

1.d4 e6 2.Nf3 Nf6 3.c4 d5 4.Nc3 Be7 5.Bg5 h6 6.Bxf6 Bxf6

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7.e3

 これは『現代チェス定跡(Modern Chess Openings)』の第10版で採り上げられているが私は昔からこの手順の要点とf6での交換は 7.e4 dxe4 8.Nxe4 O-O 9.Qd2 と指せることであると考えてきた。前例は1949年サウスシーでのパッハマン対ローデス戦で、解説者たちは白が少し良いと考えていた。しかし 8...Nc6 が黒のより俊敏な防御で、白には特にこれといった優位がない。

7...O-O

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8.Qb3

 ここでは堅実な展開の 8.Rc1 c6 9.Bd3 の方がもっとよくお目にかかる。しかしマメジャロフはもう少し活発なものを望んでいる。

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8...dxc4

 実戦では 8...c6 と 8...c5 が良い成績を挙げている。しかしこの手にも何も悪いところはない。

9.Qxc4 b6

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10.O-O-O

 2000年ベイクアーンゼーでのP.ニコリッチ対ルプティアン戦では 10.Be2 Ba6 11.Qa4 Bxe2 12.Kxe2 c5 13.Rhd1 cxd4 14.Nxd4 Qc7 から引き分けに終わった。

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10...Bb7

 ショートは相手を未知の領域に引きずり込んだ。1962年ストックホルム・インターゾーナルでのコルチノイ対アーロン戦では 10...Ba6 11.Qa4 Bxf1 12.Rhxf1 Qe7 13.Ne4 Rc8 14.Kb1 c6 15.Rc1 と進み白が勝った。

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11.Bd3

 この手に対する黒の痛烈な応手と試合の結果を考慮すればたぶん 11.e4 を考えてみる必要があるだろう。少なくともこの手は 11...c5?! を思いとどまらせる。なぜなら 12.e5 で白が非常に有望のようだからである。

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11...c5!

 双ビショップを自在に働かせたがっている黒は大胆にもポーンを犠牲にしてきた。

12.dxc5 Qe7

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13.Ne4?!

 13.cxb6? は 13...axb6 でa列に攻撃を結集させ ...Rc8 からc列で強力な圧力を構築させるのであまりに危険すぎるようである。13.Bc2 なら本譜より良さそうである。この手に対して黒はポーンを取り返して互角の局面にする選択肢があるし、あるいはもっと攻撃的に指す選択肢もある。しかし 13...Nd7?? は 14.Qd3 でh7での詰みとd7のナイト取りを狙われるので不可である。

13...Nd7 14.Bc2 Rfc8

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15.Nd6

 この複雑な局面でのコンピュータの一案は 15.Rxd7!? Qxd7 16.Nxf6+ gxf6 17.Qg4+ Kf8 だが白にとって満足な局面とはとても思われない。

15...Rxc5 16.Qd3 Nf8 17.Nxb7 Qxb7

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 黒は序盤の小競り合いから抜け出してはっきり優勢になった。白キングはクイーン翼でひどく露出している。

18.Kb1 Rac8

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19.Rd2

 19.Bb3 と指すこともできるがそこでの斜筋は将来の展望がない。

19...a5!

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 黒のクイーン翼でのポーン突きは陣形上の優位を生かす要(かなめ)である。

20.Qe4 Qc7 21.Nd4 a4!

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22.a3

 白は有効な手がなくなってきた。22.b3 は 22...axb3 23.Nxb3 Rc4 24.Qd3 Rb4! で白キングが容赦なく砲火にさらされる。

22...b5

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23.f4

 23.Rhd1 は 23...Qb6 の後 ...b5-b4 で攻撃が止まらない。

23...b4

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24.axb4

 24.Bxa4 は 24...Rc1+ でルークを取られる。

24...Rc4!

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25.b5

 25.Qd3 は 25...Rxb4 26.Kc1 Bxd4 27.exd4 Rb3 28.Qe4 a3 29.bxa3 Rxa3 で白キングの露出が致命的である。

25...a3 0-1

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 26.b3 は 26.Rxd4! で Qc3 の狙いが決め手である。また 26.bxa3 は 26...Bxd4 27.exd4 Qa5 で黒には ...Qxd2 と ...Qxa3 から ...Rb4+ の狙いがある。

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(この号続く)

2009年06月17日

世界のチェス雑誌から(39)

「British Chess Magazine」2009年1月号(11/22)

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ドレスデン・オリンピアード(続き)

解説 ロジャーズ

第7回戦 アルメニア対ロシア
白 サルギシアン
黒 グリシュク

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 これは天下分け目のアルメニア対ロシア戦の重要な試合の正念場の局面である。サルギシアンは試合の初めの方で駒を犠牲にした。しかしグリシュクの獅子奮迅の防御のおかげで白の勝利は風前のともし火である。

 図の局面で最大の問題は白キングが深く進攻してクイーンをe7で交換して勝ちを決める前に、白の前進したポーンによって大駒が縛り付けられている黒がクイーン翼の多数派ポーンを働かせることができるかどうかということである。

56.Qd7!

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56...b4!

 56...Qxd7 と取るのは 57.exd7 Be7 58.Kg4 となって白キングが気をそらされずに自由に動き回ることができるので白が楽である。

57.axb4 Bxb4 58.Kg4 Kh6 59.Kf3 b5!

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60.Ke4

 60.Qxb5? は 60...Qd6! で黒クイーンが働けるようになってしまう。

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60...Bc5?

 黒は驚異の受けの 60...Qg7! 61.Kd5(61.Qxb5? なら 61...Qc7!! が黒クイーンのフェイントに隠された戦術的要点である)61...Bf8! 62.Kc6 b4
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に気づかなかった。これで白クイーンが黒ポーンを止めるために退却しなければならず黒クイーンが自由に動けるようになる。白は 62.Kc6 より巧みな作戦があるかも知れないが勝ちとはほど遠い。

61.Kd5

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61...Bb4

 黒が 61...Kg7 で手待ちしようとすると 62.h5! で手詰まりに陥る。例えば 62...Kh6 なら 63.Kc6 b4 64.Qd2+ Kg7 65.h6+ Kg8
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となり、ここでゴルベフ指摘の狙いすました 66.h7+!? がある。以下は 66...Kh8 67.Qd7! c3 68.Qxe7! Bxe7 69.Kd7
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となって白のキングとポーンが黒の新クイーンを打ち負かす局面になる。

62.Kc6 Qc5+ 63.Kb7 Qe7 64.Ka6 1-0

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 白はクイーン翼のポーンを取った後クイーンを交換して簡単に勝てる。

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(この号続く)

2009年06月24日

世界のチェス雑誌から(40)

「British Chess Magazine」2009年1月号(12/22)

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ドレスデン・オリンピアード(続き)

解説 ロジャーズ

第8回戦 アルメニア対フランス
白 ウラジミル・アコピアン
黒 マクシム・バシエ・ラグラーブ

シチリア防御ナイドルフ戦法 [B84]

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Be3 e6 7.Be2 Qc7 8.a4

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8...b6!?

 これはバシエ・ラグラーブの得意戦法で、カスパロフとイワンチュクも用いたことがある。8...Nc6 は1980年代のカスパロフ対カルポフの世界選手権戦で大々的に用いられたスヘフェニンゲン戦法の主流手順に戻る。

9.f4 Bb7 10.Bf3 Nbd7 11.Qe2 g6 12.O-O

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12...e5

 12...Bg7 はバシエ・ラグラーブが2006年トリノ・オリンピアードで悟ったように 13.e5! dxe5 14.fxe5 Nxe5 15.Bxb7 Qxb7 16.Bh6!! で黒がひどい目に遭う。

13.Rad1!!

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 この局面はバシエ・ラグラーブが2008年に2回指して何の問題もなかったが、アコピアンは素晴らしい新機軸を披露した。

13...Be7

 ここは黒がビショップを展開させたい地点ではなかったが、13...Bg7 14.Ndb5! と 13...exd4 14.Bxd4 のどちらも猛攻を浴びる。

14.fxe5

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14...Nxe5?

 ここは 14...dxe5 でなければならなかった。それでも 15.Nd5! Nxd5 16.exd5 O-O 17.Nc6 で白が優勢である。

15.Bh6 Bf8 16.Bxf8 Kxf8

 無事に 17...Kg7 と指す機会が得られれば黒はしのぐだけでなく優位に立つかもしれない。しかしアコピアンは戦術を途切れさせない。

17.Qe3!

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17...h6?!

 以降の打撃を見れば 17...Kg7 が必要だった。その後は 18.Qg5 は 18...Qc5! で黒が良いので白は 18.Be2 と指すべきである(19.Rxf6 Kxf6 20.Qh6 が狙い)。

18.Bh5!!

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18...Qe7

 18...Kg7 はもう手遅れである。19.Bxg6! Nxg6(19...Kxg6 は 20.Qg3+ ですぐに駒を取り返される)20.Nf5+ Kg8 21.Nxd6 で黒がつぶれる。

19.Bxg6!

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19...Nxg6

 19...fxg6 には 20.Rxf6+! がある。

20.Nf5 Qe5 21.Qxb6

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21...Bxe4?!

 21...Ng4 が最後のチャンスだった。もっとも 22.Qxd6+ Kg8 23.h3 Qxd6 24.Nxd6 Ne3 25.Nxb7 で交換得の代わりに取られたポーンが多過ぎて絶望的である。

22.Qxd6+ Qxd6 23.Nxd6 Bxc2 24.Rxf6!

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24...Ra7

 あいにく 24...Bxd1 は 25.Rxf7+ Kg8 26.Nd5! から詰みになる。

25.Rd2 Kg7 26.Rf3! 1-0

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 正確な仕上げだった。26...Bb3 と逃げても 27.Nf5+ Kh7 28.Rh3 で黒はどうしようもない。

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(この号続く)

2009年07月01日

世界のチェス雑誌から(41)

「British Chess Magazine」2009年1月号(13/22)

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ドレスデン・オリンピアード(続き)

解説 ソーンダーズ

第9回戦 イスラエル対アルメニア
白 マクシム・ロートシュテイン
黒 ティグラン・L・ペトロシアン

スラブ防御 [D30]

1.Nf3 d5 2.d4 c6 3.c4 Nf6 4.e3 e6 5.b3

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 金メダル争いの天王山の一局で両対局者は激しいシステムよりも堅固なシステムを選んだ。味方を早々とがっかりさせる者には誰もなりたくない。

5...Bd6 6.Bb2 O-O 7.Nbd2 b6 8.Bd3 Nbd7 9.O-O Bb7

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10.Ne5

 以前は白はまず 10.Qe2 と指していた。

10...c5 11.cxd5 exd5 12.f4 Qe7 13.Rf3

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13...cxd4?

 輝かしい名前の本家はこの不必要なポーン交換に口をあんぐりさせたことだろう。この手は白の黒枡ビショップを働かせるだけである。黒はたぶん 13...Ne4 と指して白の戦略をまねるかルークを展開しておくべきである。

14.Nxd7! Nxd7 15.Bxd4

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15...g6?!

 この手は非常に危なそうに見えるが黒は次の手で白の黒枡ビショップを撲滅することに期待していた。しかしキング翼の構造的な弱点は他の駒によってもつけ込まれる。それは白が如実に証明する。15...Nf6 16.Rh3 h6 の後黒はたぶん 17.g4 を恐れていたのだろうが 17...Bc8! という手があり白の攻撃が大きく制約される。

16.Rh3 Bc5 17.f5! Nf6 18.Qf3 Bxd4 19.exd4

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19...g5

 この手はひどい愚形である。黒は形が非常に悪いのでこう指さないといけないのだろうか。最初は黒が悲観しすぎていると思った。しかし局面を見れば見るほど問題が一杯のように思われる。もし 19...Qc7!? で白の Qf4-h6 の作戦を抑制しc3から侵入しようとすれば、白は 20.Qf2 と指して Qh4 と Nf3-e5/g5 の作戦を明示する。黒は反撃を策することもはっきり守りきることもできないようである。

20.Rg3

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20...h6

 20...Kh8!? の方が良い受けかもしれない。21.Rxg5 Ne4 22.Nxe4 dxe4 23.Qe3 Qf6 24.Bc4 Rg8 25.Rh5 Rad8 の後黒はポーン損だが白が2個の弱いポーンを守らなければならないのでしのげるかもしれない。

21.h4

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21...Qb4

 黒は ...g5 から ...h6 と指した時この反撃に期待していたのだろう。しかし白のキング翼攻撃は強力すぎる。黒は 21...g4!? 21.Qf4 Kh7 を試みることができた。この後たとえば派手な 23.Qxg4!?(23...Nxg4 を期待して 24.f6+ を用意した)は 23...Rg8! 24.Qf4 Rxg3 25.Qxg3 Ne4 と応じることができ、黒はポーン損だが引き分けにできるかもしれない。

22.Qf4! Ne4 23.Nxe4 Qxd4+ 24.Kh2

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24...f6

 黒は敗勢である。24...dxe4 なら 25.f6! Kh7 26.hxg5 Rg8 27.Bc4 で白が勝つ。

25.hxg5

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25...hxg5

 25...fxg5 なら 26.Qd6 で白が勝つ。

26.Nxf6+! Qxf6 27.Rxg5+ Kf7 28.Qc7+ 1-0

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(この号続く)

2009年07月08日

世界のチェス雑誌から(42)

「British Chess Magazine」2009年1月号(14/22)

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ドレスデン・オリンピアード(続き)

解説 ソーンダーズ

第10回戦 スペイン対ブルガリア
白 アレクセイ・シロフ
黒 ベセリン・トパロフ

カロカン防御/突き越し戦法 [B12]

1.e4 c6 2.d4 d5 3.e5 Bf5 4.Nc3 e6 5.g4 Bg6 6.Nge2 c5 7.h4 h5 8.Nf4

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8...Bh7

 他に有力な手は 8...Nc6 だが 9.Nxg6 fxg6 で黒のキング翼が乱される。本譜の手はポーンを犠牲にする。気弱なカロカン党は突き越しカロカンの激しい変化のために指すのを止めてしまった。しかしもちろんトパロフはそんなことはあり得ない。

9.Nxh5

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9...Nc6

 この手よりは 9...cxd4 10.Qxd4 Nc6 11.Bb5 Nge7 の方が多く指されている。

10.dxc5

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10...Bxc5

 10...Nxe5 はそれほど良くない。以下は 11.Bb5+ Nc6 12.Qd4 f6 13.Qa4 が白の強手である。

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11.Bg2

 2002年ドルトムントでのトパロフ対ゲルファント戦では 11.Bb5 Qc7 12.Bxc6+ Qxc6 13.Qf3 O-O-O 14.Nxg7 d4 15.Qxc6+ bxc6 16.Na4 Bf8 17.Nh5 Bxc2
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と進んで特に白が良いというわけでもなかったが最終的には白が勝った。11.Nxg7+ と別のポーンを取るのは 11...Kf8 12.Nh5 d4 で白が貴重な手を損し黒がいずれポーンの一つを取り返すことになる。

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11...Kf8

 2002年モスクワでのグリシュク対バレエフ戦では 11...Nd4 12.Bg5!? f6 13.Nxg7+ Kf7 14.exf6 Qd6 15.Nh5 Nxc2+ 16.Kf1 Nxa1 17.Qxa1
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となりほぼ互角の形勢だった。しかしここで黒は 17...d4? と誤り 18.Ne4 で白の小駒に名を成さしめた。2004年ラバツでのフェドロフ対ジメシ戦では 11...Bg6 12.Bg5 Be7 と進み、ここでフリッツは 13.Nxg7+ Kf8 14.Nxe6!? fxe6 15.Bxe7+ Qxe7 16.h5 Bh7 17.f4
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を白の面白い変化として推奨している。

12.Bf4 Rc8 13.Bg3

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13...Nge7

 黒は(次の手でなく)ここで 13...Bd4 と指す方が良かったかもしれない。

14.Nf4 Bd4 15.Qe2 Qb6 16.Nd3 Bxd3 17.cxd3

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17...Bxe5?

 これは失着だった。黒は 17...Ng6! 18.h5 Ngxe5 と指すべきで少し優勢だった。

18.Bxe5 Nxe5 19.Qxe5 Qxb2 20.Rb1 Qxc3+ 21.Qxc3 Rxc3 22.Rxb7 g6 23.Kd2 Ra3

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 たぶんトパロフはこれで黒の方が陣形的に優ると読んでいたのであろう。しかしシロフは喜んでa2のポーンをくれてやり、強力で連係の良いルークを得た。

24.Rc1! Rxa2+

 24...Rxh4? は 25.Rcc7 Rxg4 26.Rxe7 と応じられここで 26...Rxg2 は 27.Rxf7+ Kg8 28.Rg7+! Kh8 29.Rgd7
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で黒の負けになる。

25.Ke3 d4+!?

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26.Kf4!

 26.Kxd4 と取るのは 26...Rxh4 27.Rcc7 Rxg4+ 28.Be4 Nf5+ から Nh6 と応じられる。

26...Rh7

 26...Rxf2+ 27.Kg3 Rf6 は必ずしも負けと限らないが、黒は両方のルークが遊んでいて反撃に窮する。

27.Rcc7 Nd5+ 28.Bxd5 exd5 29.f3

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29...a5?

 分かり難いがこれは悪手である。ここでは 29...Rd2 か 29...Ra6 とするしかなかった。

30.h5!

 白の構想はキングがf6に行って黒の最下段で詰ませることである。しかし今すぐに 30.Kg5 でそこに行こうとすると黒は 30...Re2 で ...Re6+ の受けを用意する。

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30...gxh5

 30...g5+ なら 31.Kxg5 Re2 32.Rc8+ Kg7 33.f4 で白が目的を別の方法で達成する。

31.g5! Rg2

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 32.g6 を狙われているのでこの手は絶対である。29...a5? の問題点の一つがここで明らかとなる。つまり活動的なルークが有力な受けの手段であるa6の地点に行けなくなっているのである。

32.Kf5 Re2 33.Rc8+ Re8 34.Rxe8+ Kxe8 35.Kf6

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 これで万事休すである。黒はg6の地点を受けに使えないしパスポーンも反撃の種になるほど先まで進んでいない。

35...h4 36.g6 Rh6 37.Rxf7 1-0

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 37...Rh8 38.Ra7 Rf8+ 39.Ke6 で望みがない。

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(この号続く)

2009年07月15日

世界のチェス雑誌から(43)

「British Chess Magazine」2009年1月号(15/22)

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ドレスデン・オリンピアード(続き)

解説 ソーンダーズ

第11回戦 ギリシャ対スコットランド
白 ステリオス・ハルキオス
黒 ケテバン・アラハミア=グラント

キング翼インディアン防御 [E92]

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.Nf3 O-O 6.Be2 e5 7.Be3

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7...Ng4 8.Bg5 f6 9.Bh4 Nc6 10.d5 Ne7 11.Nd2 Nh6 12.f3 g5 13.Bf2 f5

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14.c5

 統計では 14.h3 の方がはるかに成績が良いが本譜の手の方が多く指されている。

14...Ng6

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15.Nc4

 15.g3!? は黒ナイトをf4の地点に来させないのに役立ち、黒のいつものキング翼進攻を抑えるのにも役立つ。2007年オークブルックでのシュールマン対バーシス戦ではこの後 15...fxe4(15...g4 は 16.fxg4 Nxg4 17.Bxg4 fxg4 18.Be3 で白が問題ない)16.fxe4 Bh3 17.Be3 b6 18.c6 と進み白がキングをクイーン翼の安全な所に移動させることができて勝った。

15...Nf4 16.O-O Rf6

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17.a4

 1998年のアグノス戦でハルキアスは 17.cxd6 cxd6 18.a4 Rg6 19.exf5 Nxf5 20.Bd3 g4 21.fxg4 Nxd3 22.Qxd3 Rxg4 23.Ne4 Bh6 24.Rae1
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と指して勝っている。本局では同様の手順だがd6でポーンを取らないで指している。

17...Rg6 18.exf5 Nxf5 19.Bd3 g4 20.fxg4 Qg5!?

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 これが新構想の手である。非常に危なそうに見えるが最終局なので黒はグランドマスター資格基準を満たすために何が何でも勝たねばならなかった。

21.h3 Qh6 22.Qf3

 もちろん 22.gxf5?? は 22...Rxg2+ から次の手で詰んでしまう。

22...e4!?

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 もう安全な手を指すには遅すぎる。黒は黒枡ビショップが外の空気を吸うことができるようにしたがっている。

23.Bxe4 Nd4

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24.Qe3

 24.Bxd4!? は 24...Bxd4+ 25.Kh1 Rxg4 となってここでコンピュータは 26.Nb5! と指したがるがこれは形勢判断が難しい。

24...Bxg4!

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25.Bxg6?

 白は欲張った(あるいは見損じた)。25.hxg4!? Rxg4 26.Bg3 Nfe2+ 27.Nxe2 Qxe3+ 28.Nxe3 Nxe2+ 29.Kf2 Nxg3 30.Nxg4 Nxe4+ 31.Ke3 Nxc5 32.Nf6+ Bxf6 33.Rxf6 Re8+
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が長いけれど一本道の手順で、駒割は不釣合いだがほぼ互角の形勢である。

25...Nxh3+! 26.gxh3 Nf3+ 27.Qxf3

 取らないと1手詰みである。

27...Bxf3

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28.Bg3??

 白はあり得ないようなしかし効果的な 28.Bf7+! を見逃した。以下は 28...Kxf7(28...Kh8? は 29.Bg3 Bd4+ 30.Kh2 Bg4 31.h4 Bxc5 で白が勝つはずである)29.Bg3! Qh5 でどちらも指せる分かれである。

28...Rf8

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29.Kh2

 もちろん 29.Bd3 は 29...Qxh3 で終わりである。

29...Qxg6 30.cxd6 cxd6

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31.Rf2

 31.Nxd6 は 31...Be5! で白が負ける。32.Rg1 と受けても 32...Qc2+ で詰みになる。

31...Qd3 32.Nxd6 Bxc3

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33.bxc3

 33.Rg1! ならもう少し面白い戦いが続いたが 33...Bf6 でしょせん黒の勝ちである。

33...Bxd5!

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34.Rb2

 黒の直前の手は必須だった。34.Rg1 Rxf2+ 35.Bxf2+ の後黒キングが安全なf8に逃げることができる。

34...Rf1 35.c4 Rxa1 36.cxd5 Qf1 37.Bf2 Qh1+ 38.Kg3 Qxd5 0-1

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 幸運は勇者に微笑むと言われるがまさにそれに値した。

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(この号続く)

2009年07月22日

世界のチェス雑誌から(44)

「British Chess Magazine」2009年1月号(16/22)

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ドレスデン・オリンピアード(続き)

解説 ソーンダーズ

第6回戦 ウェールズ対ボリビア
白 R.ジョーンズ
黒 サンブラーナ

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 ウェールズの主将がボリビアのグランドマスターと対戦した試合にはウェールズ人特有の熱情が表れている。

22.Rxd5!?

 フリッツはこの手が気に入らないが、フリッツはウェールズ人でない。

22...a5!

 22...Re1+ は 23.Rd1 と引かれて黒がポーン損しただけに終わる。本譜の黒の手は非常に強力である。

23.a4 bxa4 24.Bc4

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24...h6??

 この手は大失着だった。24...Re1+! 25.Rd1 Rxd1+ 26.Kxd1 Qb6! なら黒の勝つ可能性が高かった。

25.Rxd7!

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25...Re1+

 25...Qxd7 と取るのは 26.Rxh6+! gxh6 27.Qxh6+ Kg8 28.Qg6+! Kf8 29.Bh6+ Ke7 30.Qxf7+ Kd6 31.Qxf6+ Kc5 32.Be6!
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で白の勝ちとなる。

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26.Rd1

 ここは判断に迷うところだが多分 26.Kd2 の方が良かっただろう。以下は 26...Re5 27.Bxf6! Qxd7+ 28.Bd3 Rxc2+ 29.Kxc2 Qc6+ 30.Rc4
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となれば白が勝つ。

26...Rxd1+ 27.Kxd1 Ne4 28.Rxe4

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 黒には強烈な狙いがいろいろあるので白は選択の余地がほとんどない。

28...Qxe4 29.Bd3 Qd4 30.Be3 Qxb2

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 客観的には 30...Qf6 の方が良いが紛れる可能性は低くなるだろう。

31.f6

 31.Bxh6!? でも勝つが、脳の代わりにコンピュータがなけれ易々と読むことはできない。31...gxh6 32.Qxh6+ Kg8 33.f6 Qa1+ 34.Kd2 Qc3+ 35.Ke3 Re8+ 36.Kf3! Qc6+ 37.Kg3! Qd6+ 38.Kh3 Re3+ 39.g3 Qe6+ 40.Kg2! Qd5+ 41.Kg1!
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こんな変化に飛び込んで間違いなくやり遂げる選手は服を脱がされて隠した電子機器がないかの検査をされかねない。

31...Qa1+ 32.Ke2 Re8 33.Qf5 g6 34.Qf4!

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34...Kg8

 34...Rxe3+ は 35.Kxe3 Qc1+ 36.Kf3 Qd1+ 37.Kf2 で黒からのチェックが途切れる。

35.Bxg6! Qe5 36.Bh7+!

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 これはうまい挿入手で、黒キングをさらに働かなくし持ち時間も増える。

36...Kh8 37.Qxe5 Rxe5 38.Bd3 Rh5 39.h3 Rh4

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 白枡ビショップがc4に行くのを防いだが、もちろん白にはもう一つのビショップがある。

40.Bc5 Kg8 41.Ke3 Rh5 42.Kd4 Rg5 43.g4 h5 44.Bf5 1-0

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 「ヘファランプ(訳注 「くまのプーさん」に登場する生き物)を沼地に誘い出す」方法の絶好の見せ場だった。

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(この号続く)

2009年07月29日

世界のチェス雑誌から(45)

「British Chess Magazine」2009年1月号(17/22)

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ドレスデンのポカ集

 ドレスデンでは30手未満の引き分けはなかったかもしれないがイアン・ロジャーズが見つけたように多くのポカが展示されていた・・・

 オリンピアードの最終回はとりわけ大切である。勝ち点方式の採用で得点群の数が劇的に圧縮された2008年ドレスデンではなおさらそうであった。だからドレスデン・オリンピアードの第11回戦ではどの選手も最後まで戦ったことだろうと予想するだろう。ところが驚いたことに勘違いによる投了のコレクションに2例が追加されたのはまさにこの回なのである。

第11回戦 キューバ対オーストラリア
白 ノゲイラス
黒 G.シー

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 これはキューバ対オーストラリア戦の四将戦である。

 古豪グランドマスターのヘスス・ノゲイラスはジョージ・シーが次の手を指すまでこの若者相手に苦戦を強いられていた。

37...Re4? 38.Rxe4 dxe4 39.c4! Kf7 40.c5 Ke6 41.c6 1-0

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 時間制限が無事に過ぎてシーが投了した。41...h5 42.gxh5 gxh5 の後黒はまずeポーンを、その後hポーンを取られる。対局終了後しばらくしてからシーは「41...h6 と指しその後キングをe6とd6に動かして待っていたらどうなるんだ」と聞かれた。その時初めてシーは全く引き分けの局面で投了したことに気付いた。

 シーのへまを軽くする二つの要素があった。もう半点あってもチームの勝ち点には助けにならなかったこと、それにノゲイラスが1手前に意表の 41.cxb6! Kd7 42.g5
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による勝ちを見逃していたということが分かったことである。

第11回戦 ブルガリア対カザフスタン
白 チェパリノフ
黒 カジガレエフ

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 白はほとんどの間優勢を維持していてこの局面でとどめの一撃を放った。

53.e7 1-0

 両対局者は2600超のグランドマスターなので観戦者たちは投了に納得していた。しかし王様は服を着ていないと指摘して困惑させるような性格の探究心旺盛なある若者は 53...Rxd7! 54.Bxd7 Bxd7 55.Rf8 b4!
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で黒が引き分けにできることを明らかにした。以下は例えば 56.e8=Q Bxe8 57.Rxe8 Kf4 58.Kf2 b3 59.Rb8 c4 60.Rb4 Ke4! 61.Rxc4+ Kd3
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である。

 カジガレエフが何を見落としていたのかはよく分からないが、たぶん1手遅い 53...Rxe8 と指すしかないと考えていたのかもしれない。

 対照的に女子のオリンピアードでは遅すぎる投了が目立った。もっとも次の収局はそれに当てはまらないことが歴然である。

女子オリンピアード第9回戦 オーストラリア対シリア
白 モイラン
黒 アル=ジェルダ

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 白は投了を考えていたが「ちょっとだけチェックをかけたって何も害はないでしょ」とも考えた。それで試合が続いた。

71.Re8+ Kd2 72.Rd8+ Ke1?? 73.Rd3!!

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 黒は唯一勝たないための合法的な72手目を見つけた。黒はキングを上方に引き戻し、白ルークを最下段に下がらせ、それからキングを再び進ませるのが、手数はかかっても確実に勝つ手段だった。しかし黒はもうやり直しができなくなっている。試合は次のように終結した。

73...Rg2+

 73...h2+ 74.Kh1 g2+ 75.Kxh2 Kf1 と迫っても 76.Rd1+ Kf2 77.Rg1 Kf3 78.Ra1
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でどうにもできない。

74.Kh1 Kf2 75.Rd2+ Kf3

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76.Rxg2

 76.Rd3+ Ke4 77.Rd4+! が格好のよい引き分けの手段だった。

76...hxg2+ 77.Kg1 Kg4 78.Kxg2 Kf4 79.Kg1 Kf3 80.Kf1 Kf4 81.Kg1 ½ - ½

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(この号続く)

2009年08月05日

世界のチェス雑誌から(46)

「British Chess Magazine」2009年1月号(18/22)

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女子オリンピアード

 BCM編集長 ジョン・ソーンダーズ

 ドレスデンの「改革オリンピアード」の抜本的な規則変更は本号のどこかで論じられている。女子のオリンピアードは重要な1点を除いてこれまでと同じだった。その1点とは、オープンの団体戦が6人から5人に減ったのに対し(2006年トリノと比べて)、女子の団体戦は4人から5人に増えたことである。これにより対局するのは以前のオリンピアードの3人から4人になった。これでようやく試合形式の平等が達成され、色の不公平も一掃された。

 2006年のようにロシアがレイティング上での本命だった。アレクサンドラ・コステニウクを主将に、コシンツェバ姉妹、エカテリーナ・コルブト、ナタリヤ・ポゴニナから成っていた。平均レイティングが2495で平均年齢が約23歳の彼女たちは非常に均質なチームで、伸び盛りの選手たちだった。最大のライバルと目されていたのは前回優勝のウクライナで、平均レイティングは2486で平均年齢は少し高いだけだった(それも選手の一人が30歳代だったため)。そのすぐ後に中国が続いていた(平均年齢はずっと若かった)。

 しかし本大会は少なくとも最終戦の大詰めに入る時にはわけの分からないことになっていた。中国の出足はものすごかった。最初の6戦を全部勝って、インドとグルジアに引き分けていたロシアに勝ち点2の差をつけていた。ロシア対グルジア戦では現女流世界チャンピオンのコステニウクが偉大な先輩の一人のマヤ・チブルダニゼから手厳しい教訓を受けていた。チブルダニゼの年齢はコステニウクのほぼ2倍で、彼女の母親に匹敵する年齢である。それはカルポフが復帰してビシー・アーナンドを叩きのめしたようなものだった。

第38回オリンピアード 最終順位表
女子(11回戦、勝ちは勝ち点2、引き分けは勝ち点1)



1グルジア1839イラン1277アルバニア10
2ウクライナ1840スイス1278スリランカ9
3米国1741コロンビア1279ウェールズ9
4ロシア1742インドネシア1280ウルグアイ9
5ポーランド1743フィリピン1281レバノン9
6アルメニア1644ルクセンブルク1282プエルトリコ9
7セルビア1645カザフスタン1283コスタリカ9
8中国1546ポルトガル1284パラグアイ9
9イスラエル1547ドイツ31285中国台湾9
10ベラルーシ1548ブラジル1286イラク9
11ルーマニア1549キルギスタン1287カタール9
12イタリア1550イングランド1188エジプト8
13フランス1451リトアニア1189アラブ首長国連邦8
14ハンガリー1452エクアドル1190アンゴラ8
15インド1453ノルウェー1191チュニジア8
16スロバキア1454フィンランド1192イエメン8
17モンゴル1455ドミニカ共和国1193ボツワナ8
18オランダ1456スコットランド1194アイルランド8
19ブルガリア1457南アフリカ1195バルバドス8
20ドイツ11458ボスニアヘルツェゴビナ1196日本7
21クロアチア1459トルクメニスタン1197ナイジェリア7
22ウズベキスタン1460アイスランド1198ホンジュラス7
23スペイン1461IPCA1199マルタ7
24ギリシャ1362ニュージーランド11100スリナム7
25キューバ1363オーストラリア10101リビア7
26ベトナム1364エルサルバドル10102パナマ7
27オーストリア1365カナダ10103パキスタン7
28ラトビア1366メキシコ10104マカオ7
29アルゼンチン1367ベネズエラ10105フィジー7
30トルコ1368グアテマラ10106韓国7
31アゼルバイジャン1369IBCA10107トリニダードトバゴ7
32エストニア1370デンマーク10108アルバ6
33モルドバ1371ICSC10109ケニア5
34ドイツ21372ボリビア10110セイシェル3
35モンテネグロ1373アルジェリア10111アフガニスタン1
36チェコ共和国1274シリア10最初の40手につき90分
37スロベニア1275タジキスタン10残りにつき30分
38スウェーデン1276バングラデシュ10毎手30秒加算

IBCA = International Braille Chess Association(国際点字チェス協会)
IPCA = International Physically Disabled Chess Association(国際身障者チェス協会)
ICSC = International Committee of Silent Chess(国際黙音チェス委員会)

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(この号続く)

2009年08月10日

世界のチェス雑誌から(47)

「British Chess Magazine」2009年1月号(19/22)

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女子オリンピアード(続き)

 BCM編集長 ジョン・ソーンダーズ

 しかしグルジアの復活は長続きできなかったのだろうか。グルジアの出だしは対イングランド戦の辛勝だった(元リトアニアのダグネ・チュクシテが新チームのイングランドで初戦を飾った)。そしてロシア戦の引き分け後でも調子を上げるのに時間がかかっていた。次の対戦相手はポーランドだったが、ポーランドがかなり楽にグルジアを下した。これでグルジアの挑戦も終わりになってもおかしくなかった。7回戦が終わったところで中国が勝ち点13、ウクライナが12、6チームが11(ロシア、米国、ポーランドなど)で、グルジアはその後の勝ち点10のチーム群に入っていた。第8回戦は米国がロシアを3-1で負かすという番狂わせが起きた。米国女子選手権戦の決勝での一発勝負でひと悶着起こしたイリーナ・クラシュとアンナ・ザトンスキーが隣どうしに座っていてそれぞれアレクサンドラ・コステニウクとタチアナ・コシンツェバに勝った。

 第9回戦では首位だった中国がついにつまずいた。セルビア戦に負け初めて首位の座から滑り落ちた。ポーランドが米国に勝って、残り2回戦での順位はウクライナ、ポーランド、セルビアが勝ち点15、中国、グルジア、アルメニアが14、そして勝ち点13の中に米国とロシアがいた。

 第10回戦でグルジアが中国を破って脱落させた。ポーランドがアルメニアを破って首位を奪った。残り1回戦で開始順位9位のポーランドが勝ち点17で驚きの首位に立ち、その後にウクライナ(まだ負け無し)、グルジア、セルビアが勝ち点16で続いた。最終回でウクライナがポーランドを破ってメダルの可能性を完全になくさせた。グルジアがセルビアを破ってウクライナと同じ勝ち点で並んだ。しかし順位判定の計算をしてみると(最も勝ち点の少ない相手を除外した全対戦相手の勝ち点を合計するとともに、各対戦相手の勝ち点にこの相手に対する得点をかける-実際複雑なことは全然ない)グルジアが金メダルを獲得したことが明らかになった。他のちょっとした驚きは米国が盛り返してロシアとポーランドを押さえて銅メダルをさらったことだった。

 このようにグルジアが1996年以来初めてチームの金メダルを獲得した。ロシアはまだ金メダルを獲得していない。グルジアの切り札はマヤ・チブルダニゼの驚異的な絶好調だった。彼女は最後の4戦で強豪相手に全勝した(もっともそのうちの2局は考えられないようなハラキリの自爆のようだった)。個人としての実効レイティング2715は大会選手中断トツだった(もっともレイティング2284のポーランド選手のヨアンナ・マイダンは2621の実効レイティングを記録した)。マヤ・チブルダニゼに言及した以上はグルジアの同僚のナナ・ザグニゼとソピコ・フハシビリも非常に立派な成績をあげたことを述べておく。同国チームは最後の5回戦全てから勝ち点をあげた。そのうち最初の3戦は4-0で勝ち、個々の20局のうち負けたのは1局だけだった。

グルジア E
N
G
R
O
M
I
S
L
H
U
N
R
U
S
P
O
L
E
S
P
M
D
A
S
L
O
C
H
N
S
R
B
得点TPR%
マヤ
チブルダニゼ
2489-1½½1½-11117½/9271583
ナナ
ザグニゼ
2503½½½0-11111½7/10252670
レラ
ヤバヒシビリ
24730½-½½011-½½4½/9234750
マヤ
ロミネイシビリ
24371½11½01-10-6/9243267
ソピコ
フハシビリ
24091-1-0-111-16/7256486
チーム得点18322444331/44  
(ENG=イングランド、ROM=ルーマニア、ISL=アイスランド、HUN=ハンガリー、RUS=ロシア、POL=ポーランド、ESP=スペイン、MDA=モルドバ、SLO=スロベニア、CHN=中国、SRB=セルビア、TPR=実効レイティング)
ウクライナ A
R
G
I
R
I
M
G
L
L
T
U
S
V
K
A
R
M
N
E
D
C
H
N
R
O
M
S
R
B
P
O
L
得点TPR%
カテリナ
ラーノ
2488½½0-½11½-½½5/9246556
ナタリア
ジュコバ
2488½11½½1-01½17/10255370
アンナ
ウシェニナ
2496½1-01½1½½-16/9242667
インナ
ガポネンコ
2473½-1½--11½½05/8233962
ナタリア
ズデプスカヤ
2419-11111½-1½-7/8252888
チーム得点18232322230/44  
(ARG=アルゼンチン、IRI=イラン、MGL=モンゴル、LTU=リトアニア、SVK=スロバキア、ARM=アルメニア、NED=オランダ、CHN=中国、ROM=ルーマニア、SRB=セルビア、POL=ポーランド、TPR=実効レイティング)
米国 M
N
E
I
S
R
T
K
M
M
D
A
N
O
R
R
O
U
C
H
N
R
U
S
P
O
L
U
Z
B
F
R
A
得点TPR%
イリーナ
クラシュ
2452-½1111010106½/10247465
アンナ
ザトンスキー
24401-1½11½1½1½8/10257180
ルスダン
ゴレティアーニ
23591111½1½½½119/11254282
カテリナ
ロホニアン
2334½01½-11½0½16/10234260
タテフ
アブラハミアン
2286½0--½------1/3204933
チーム得点173433423130½/44  
(MNE=モンテネグロ、ISR=イスラエル、TKM=トルクメニスタン、MDA=モルドバ、NOR=ノルウェー、ROU=ウルグアイ、CHN=中国、RUS=ロシア、POL=ポーランド、UZB=ウズベキスタン、FRA=フランス、TPR=実効レイティング)

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 グルジアが女子の金メダルを獲得。ナナ・ザグニゼ(左)が7/10、マヤ・チブルダニゼ(右)が7½/9の成績をあげた。

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 オリンピアード初出場のソピコ・フハシビリが6/7の成績で個人別金メダルを獲得した。

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 レラ・ヤバキシビリが三将で4½/9の成績だった。

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 米国女子は開始順位1位のロシアを3-1で下した。クラシュとザトンスキーがコステニウクとT.コシンツェバを破った。

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(この号続く)

2009年08月19日

世界のチェス雑誌から(48)

「British Chess Magazine」2009年1月号(20/22)

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女子オリンピアード(続き)

 BCM編集長 ジョン・ソーンダーズ

 同胞国

 トリノの出場選手のうちジョバンカ・ハウスカを除いた全員を欠いたイングランドは好成績を期待されていなかったが出だしはかなり良かった。金メダルに輝くことになるチームに対する惜敗は非常に立派だったしその後は4連勝した。

 その次はブルガリアに負けたがジョバンカ・ハウスカが元女子世界チャンピオンのアントアネータ・ステファノーバに勝った(それも堂々たる勝利で、前の回のビクトリヤ・チミリテ戦の勝利は少し幸運だった)ので勝ったも同然のような感じがした。ダグネ・チュクサイトは初戦から5連勝したし、カンワル・バーティアは3連勝した。しかし第7回戦のエクアドル戦での手痛い敗戦でチームの士気が落ちたようで、その後は振るわなかった。50位という結果は残念だったろう。

 スコットランドは最も経験豊富なヘレン・ミリガンがニュージーランドに移籍したが56位という結果は非常に良い成績だった。それに若い選手たちには貴重な経験になった。同様にウェールズも健闘しスージー・ブラックバーンとオリビア・スミスはレイティングを上げた。

イングランド G
E
O
B
R
A
N
Z
L
C
A
N
L
T
U
B
U
L
E
C
U
M
N
E
B
I
H
W
L
S
E
S
T
得点TPR%
ジョバンカ
ハウスカ
2399½1-½110½0105½/10232955
ダグネ
チュクサイト
23391111100-11½7½/10236975
イングリッド
ローターバーク
217800111010-½04½/10210445
メリ
グリゴリヤン=ライエル
20760-10--½101-3½/7210450
カンワル
バーティア
2065-11-10-½0-03½/7203750
チーム得点  344121½24½/44  
(GEO=グルジア、BRA=ブラジル、NZL=ニュージーランド、CAN=カナダ、LTU=リトアニア、BUL=ブルガリア、ECU=エクアドル、MNE=モンテネグロ、BIH=ボスニアヘルツェゴビナ、WLS=ウェールズ、EST=エストニア、TPR=実効レイティング)

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 イングランド女子チームのジョバンカ・ハウスカ(左端)、ダグネ・チュクサイト、イングリッド・ローターバーク、カンワル・バーティアが3-1でブラジルに勝利

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 ウェールズ女子チームのスージー・ブラックバーン(赤い髪の毛)、オリビア・スミス、ジュリー・ウィルソン、ミーガン・オーエンズがグアテマラと対戦(3-1で勝ち)

第5回戦 リトアニア対イングランド
白 チミリテ
黒 J.ハウスカ

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 白はこの局面でしばらくの間勝とうとしていた。しかし引き分けで妥協する代わりに指し過ぎてしまった。

48.Rd7??

 48.Rg7+ Kf8 49.Rh7 Kg8 なら引き分けである。

48...Bxd7+ 49.Kxd7 Kf7

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50.Bf6

 50.c8=Q は白が駄目で 50...Rxc8 51.Kxc8 Ke6 ですぐに決着がつく。

50...f4 51.Bd8 Re3

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52.Kd6

 もう引き分けになる道はない。52.c8=Q Rd3+ 53.Kc6 Rc3+ 54.Kb7 Rxc8 55.Kxc8 もやはり白の負けである。

52...Rc3 53.Bxg5 f3 54.Be3 Rd3+ 0-1

YCM0048F.JPG

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(この号続く)

2009年08月26日

世界のチェス雑誌から(49)

「British Chess Magazine」2009年1月号(21/22)

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女子オリンピアード(続き)

 BCM編集長 ジョン・ソーンダーズ


第5回戦 ロシア対グルジア
白 アレクサンドラ・コステニウク
黒 マヤ・チブルダニゼ

シチリア防御/リヒター・ラウザー戦法 [B61]

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 Nc6 6.Bg5 Bd7 7.Qd2 Rc8 8.f4 Nxd4 9.Qxd4 Qa5

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10.O-O-O

 10.e5 の方が勝率が良いがコステニウクは疑問手とされる古い手を選んだ。黒は交換損を炸裂させる。

10...Rxc3

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 これが眼目の手である。1960年代から定跡手順として知られるお決まりの手である。

11.Qxc3?!

 この手は全くおかしい。何十年も前から定跡書で「疑問手」と烙印を押されてきた。11.bxc3 はまだ指せる手とされているが、本譜の手はそうでない。

11...Qxc3 12.bxc3 Nxe4 13.Bh4 Nxc3 14.Rd3 Ne4 15.Be2 g6 16.Re1 Bc6

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 駒割は互角だが白のルークはどちらも働き場所がない。明らかに黒が良い。

17.Rb3 a6 18.Bf3 f5 19.Bxe4 fxe4 20.Rh3 h5 21.Rc3

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 白のルークは働き場所を探してうろうろするばかりである。

21...d5 22.Bf2 Bh6 23.Be3 Rf8 24.g3 Bg7

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 白ポーンをまた黒枡に進ませて(敵のビショップを封じ込めるため)黒は役に立つ斜筋を支配下に収めた。

25.Ra3 d4 26.Bd2 Rf5 27.Ra5 Kd7 28.Bb4 e5 29.Kb1 Ke6 30.fxe5 Bxe5 31.Rd1 e3 32.Re1 Rf2 33.c3 Be4+

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 ここまでの数手については特に言うことはない。黒はひたすら無人の戦場に自軍を進ませたが何の抵抗にも会わなかった。

34.Kc1 Rxh2 35.cxd4 Bxd4 36.Rg1 Rc2+ 0-1

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(この号続く)

2009年09月02日

世界のチェス雑誌から(50)

「British Chess Magazine」2009年1月号(22/22)

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女子オリンピアード(続き)

 BCM編集長 ジョン・ソーンダーズ

第6回戦 イングランド対ブルガリア
白 J・ハウスカ
黒 ステファノバ

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 いろいろな小競り合いが一段落した後白は陣形的に優勢になっていた。

22.O-O Qe7 23.a3 Qe6 24.Rfd1!?

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24...Nc4

 黒はタダのh2のポーンに誘惑されなかった。24...Qh3 なら 25.Ba5 でクイーン翼に向けられた白の狙いと駒の優越はh2のポーンをはるかにしのぐ。

25.Qc3

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25...Nxd2?!

 白に中央列の支配を強めさせるよりも 25...b5 でc4のナイトを支える方が良さそうである。

26.Qxd2

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26...Ke7?

 難しくなってきた局面でとんでもないポカが飛び出した。代わりに 26...Rd8 なら 27.Rc5!(Rd5 と指す狙い)27...Bxc5 28.Qxd8+ Qe8 29.Rd5 で白のポーン得になる。

27.Bg4!

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 この手の後黒には適当な受けがない。

27...Qf6

 27...Qxg4 なら 28.Qxd6+ Ke8 29.Rc7 Qe6 30.Qb4 b6 31.Rd6 で白が勝つ。

28.Qd5

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28...Rab8

 28...Rhd8 なら実戦より少し長引くがそれでも 29.Qxb7+ Kf8 30.b4 で絶望的である。

29.Rd3 g5 30.Rf3 Qg6

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31.Rc7+! Bxc7 32.Qd7+ Kf8 33.Be6! f6 34.Qxc7

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34...Ra8

 34...Qe8 は 35.Qd6+ でb8のルークが取られ 34...Re8 は 35.Qd6+ Re7 36.Rc3 で決定的である。

35.Rd3 Qe8 36.Qxb7 Rb8 37.Qxa7 Rh7 38.Rd7 Rc8 39.Rf7+ 1-0

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(この号終わり)

2009年09月09日

世界のチェス雑誌から(51)

「British Chess Magazine」2009年7月号(1/2)

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目次

360ページ 棋譜のデパート おめでたいことに常連執筆者のサム・コリンズ氏が最近行なわれた全日本選手権戦で優勝した。日本での最近の試合から2局を自戦解説でお送りする。

棋譜のデパート

 IMサム・コリンズ - 意見感想はsamcollins@bcmchess.co.ukまで

 今月は日本での試合から2局採り上げる。1局目は私が9½/11で優勝した全日本選手権戦からで、2局目は4½/5でGMアレックス・バブーリンと同点優勝した名古屋オープンからである。全体的には面白い試合が指せたと思う。それはレイティングが実力より低い日本選手たちの底力に助けられた面が大きい。しかしどの試合でもレイティングに大きな差があるとうかつな手が咎められずに済むこともときどき起こる。2局目がそれである。

2009全日本選手権戦
白 塩見亮
黒 IMサム・コリンズ

スコットランド試合 [C47]

 ざっと見ただけでは本局は取り立てて言うことがない(全日本選手権戦での私の最短手数局)。しかし私の考えでは布局での最も大切な原則の一つがよく現れている。それは開放戦型(1.e4 e5)では中盤に至るまで展開が最も重要な関心事であるということである。本局で白はこの原則をおろそかにしたために特にひどい失着もないのにあっけなく負けてしまった。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.d4 exd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 Bb4 6.Nxc6 bxc6 7.Bd3 d5 8.exd5

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8...Qe7+!?

 主手順をちょっとひねってみた。若い対戦相手を定跡書から離れさせ難解なクイーン無し収局に引きずり込みたかったのである。8...cxd5 なら普通で 9.O-O O-O 10.Bg5 c6 でよく見かける局面になる。

9.Qe2 Qxe2+ 10.Kxe2 cxd5

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 黒はナイトで取ることもでき、その方が本筋だろう。

11.Nb5! Ba5

YCM0051C.JPG

12.c3?

 この手には積極性がない。白黒両方とも急いで展開を完了させe列をルークで占めなければならない。それに白はもっと意欲的であるべきだった。この白の手はスムーズに Re1 と Kf1 を行なう上では申し分ない。しかし黒にも手番があり白の計画を妨げることは難しいことではない。12.Bf4 と 12.Bd2 Bb6 13.a4 のどちらでも白に通常どおりの布局の有利さがあった。

12...a6 13.Nd4 O-O

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14.f3?

 ここから白はe列で苦労することになる。14.Re1 なら互角だった。

14...Re8+

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15.Kd1?

 代わりに 15.Kf2 だと ...c5、...Bb6 から ...c4+ とされることを相手は恐れたに違いない。しかしきちんと読んでみれば次のように白は大丈夫である。15...c5 16.Nb3 Bb6 17.Bc2 この後黒は 17...a5 で絶好の態勢になるが白もまだ十分戦える。

15...c5

 中央の列が素通しになるのを防ぐことができないので白は絶望的である。

16.Nf5

 これは私の言い分を通させてしまうが他にどうしようもなかった。16.Ne2 なら 16...Ra7! から ...Rae7 が非常に強力である。

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16...c4

 この手は見つけるの時間がかかった。しかし18手目に決め手があり黒の勝勢となることに気づいた。16...Ne4 が最初の読み筋だったが 17.fxe4 dxe4 18.Nd6 Rd8(18...exd3!? 19.Nxe8 Bg4+ 20.Kd2 Rxe8 は黒が展開で大差をつけているので十分代償があるかもしれない)19.Bxe4 Rxd6+ 20.Kc2 で白が優勢である。

17.Bc2 Bxf5 18.Bxf5 d4

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 攻撃がよどみなく進む。

19.Bd2

 19.cxd4 Rad8 20.Bg5 も考えられるが 20...Rxd4+ 21.Kc1 Nd5 で黒の攻撃は圧倒的である。ここで重要なことは白キングが中央の列で危機に瀕しているということである。確かにクイーンはなくなっているが黒はルーク2個得で指しているに等しい。

19...Rad8 20.Rc1

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 最強の頑張りとは言えない手だがここに至ってはどんな手を指してもしょせん負けである。

20...dxc3 21.bxc3 Nd5 22.Re1

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22...Ne3+

 c3のポーンを取ってもよいのだが実戦の手の方が簡明だと思う。

23.Rxe3 Rxe3 24.Kc2 Re2 25.Rd1

 勝敗は決まっているので白の最後の方の手には厳格に記号を付けなかったが最も頑強な抵抗でないことは確かである。

25...Bb6 0-1

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 26.Kc1 Rexd2 27.Rxd2 Be3 で黒のルーク得になる。

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(この号続く)

2009年09月16日

世界のチェス雑誌から(52)

「British Chess Magazine」2009年7月号(2/2)

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棋譜のデパート(続き)

 IMサム・コリンズ - 意見感想はsamcollins@bcmchess.co.ukまで

2009年名古屋オープン
白 渡辺暁
黒 IMサム・コリンズ

キング翼インディアン防御 [E94]

 名古屋オープンの最終戦に入る時バブーリンと私が3½/4で首位に並んでいた。この日既に2局を指していたので相手も私も疲れていた(彼は前の2回とも最後に終わっていたので私より疲れていたに違いない)。このような状況では気の抜けないキング翼インディアン防御を選んだのは良い選択だったと思う。もっとも私の指し方には反省すべき点が多かったが。

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 O-O 5.Be2 d6 6.Nf3 Na6 7.O-O e5

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 日本でこの戦法を使ったところ好成績だった(3戦3勝)。6...e5 7.O-O Nc6 よりも一本道の手が少ないので、研究豊富だけれど実戦経験の少ない選手に対して用いれば効果的ではないかと思う。

8.Be3

 全日本選手権戦の飯沼対コリンズ戦で相手は 8.d5?! と指してきた。しかし 8...Nc5 9.Nd2 a5 10.Rb1 Bh6 11.f3?! Be3+ 12.Kh1 Nh5 13.Nb3 Bxc1 14.Nxc1 f5
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と進んで黒の楽な展開になり勝った。

8...c6

 これは非常に難解であまり研究の進んでいない戦型である。目指したのは両者が自分の道を行く不均衡な局面である。この点ではうまく行ったが多大の犠牲を払うことにもなった。というのは暁氏はキング翼インディアンの経験が豊富だったのでそれが以降の進行に生きてきたからである。全日本選手権戦の別の黒番では 8...Ng4 9.Bg5 Qe8 10.h3 h6 11.Bh4 exd4 12.Nxd4 Nf6 13.f3?!(13.Bf3 Nh7)13...Nh5 14.f4?? Nxf4 15.Rxf4 Qe5
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と進んで楽勝だった。この手順中白が穏やかに指したいならば 10.dxe5 dxe5 11.h3 が正確な手順である。また 10.c5!? はポーンの犠牲を伴う非常に攻撃的な手で、チェパリノフによって始められハリフマンによって何度も用いられた。

9.d5 Ng4 10.Bg5 f6 11.Bh4 c5

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 ポーンをc5まで進ませることができて黒は陣形的に大きな成果を収めた。しかしキング翼ではh4のビショップのためにすぐに ...f5 と突くことができないので通常のようには指せない。

12.Ne1

 白はよくここでナイトをd2に引くが実戦の Ne1-d3 の方がずっと機敏だと思う。

12...Nh6

 他には 12...h5 13.h3 Nh6 という手順もある。初めはこの方がキング翼で活発に動けh3に弱点を作らせるので実戦より明らかに良さそうに見える。しかしキング翼のポーンを動員するのはそう簡単ではない。

13.f3 Bd7?

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 ゆっくり指し進めて ...g5 から ...f5 を狙うというのが私の基本方針だった。しかし ...Bd7 はb7の地点を弱めて陣形をだいなしにしてしまった。

14.Nd3 Qe7 15.Rb1 b6

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16.b4!

 白が 16.a3 に一手かけることを期待していたのだが暁氏は必要ないことを見破った。

16...Nxb4 17.Nxb4 cxb4 18.Rxb4

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18...g5

 18...Nf7 19.a4 Bh6 という手順もある。しかし白のクイーン翼での進攻が進んでいるので私は黒側を持って指す気になれない。

19.Bf2 f5 20.a4

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 このあたりで私は長考に沈んで自分の陣形をひどく嫌っていた。私の次の手順は反撃を狙う最善手だったと思う。

20...g4 21.a5 gxf3

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22.Bxf3

 22.gxf3 fxe4 23.Nxe4 という手順も気にしていた。23...Bh3 の後白は交換損を受け入れることもできるし拒否することもできる。

22...Ng4

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23.Bxg4

 ポーンの犠牲を拒否した黒の判断は正しかった。23.axb6 Nxf2 24.Rxf2 axb6 25.Rxb6 は黒に黒枡での永続的な代償がある。客観的にはこの代償は十分なものだが実戦的にはそれ以上のものがあると思う。

23...bxa5 24.Rb7 fxg4

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 ここは白に色々な選択肢がある。以前の戦いで疲労困憊の暁氏が争点をできるだけ解消しようとしたのは意外に当たらない。しかしキング翼インディアンの収局では黒が負けるという常識はここでは当てはまらない。私の黒枡ビショップはまだ死んでいないし、aポーンの一つは貴重な資産になるかもしれなかった(後にそれが分かる)。

25.Qxg4

 25.Rxa7 Rxa7 26.Bxa7 は 26...Qg5 で黒も反撃に希望が持てる。しかし 25.c5! が有力な手だった。アレックス・バブーリンはこれが正着だと確信していて、一見しただけの局面や自分では指さない定跡で最善手を示唆するグランドマスターらしいおせっかいさをここでも見せてくれた。

 25...dxc5 は 26.d6 Qe6 27.Nd5(27.Bxc5 は 27...Rxf1+ 28.Qxf1 Rc8 29.Qf2 Qc4 で黒が良い)となって黒はどうやっても互角にできない。例えば 27...Rab8 なら 28.Rxa7 c4 29.Ne7+ Kh8 30.Nf5
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となって白は陣形的に圧倒的に良くなる。黒のクイーン翼のポーンが両方とも攻撃目標となっている。

25...Bxg4 26.Rxe7 Rfc8

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 この手は即座に指した。通常なら白のc4のポーンは勝ちを決める要因(c5突きによって)なのだがここでは弱点となっていることを強調しようとしたものである。しかし白の突進の可能性を軽視していた。

27.Nb5

 27.c5!? はわけの分からない変化になる。27...Bf8 28.Rb7 dxc5 29.h3 Bh5 30.Bg3 Rcb8 31.Rxb8 Rxb8 32.Bxe5 Rb3
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となって、三とおりのどの結果のうちどれもありそうである。一般に乱戦ではビショップが好きなので黒の方が分があると思うのだが、どちらの陣形が良いかは歴然である。

27...Bf8 28.Rxa7 Rxa7 29.Bxa7 Rxc4 30.Bb8

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 この局面では持ち時間をほとんど使い切っていた。これは実戦的にまずいやり方だろう。というのは明快な方針を見つけることができていなかったし残り時間が十分にあれば後で有効に使えるかもしれないからである。

30...Rxe4

 30...Rb4? は 31.Bxd6 がうまい切り返しである。30...Be2 31.Re1 Rb4 32.Rxe2 Rxb5 33.Bc7 a4 なら黒が良かった。この変化にいかなかったのは私のポーンとビショップが同じ色の枡にいるのを気にしたからだった。しかし実際は白のe4のポーンの弱点の方がもっと重大だったろう。

31.Bxd6 Bxd6 32.Nxd6 Rd4

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33.Ne8

 これが私の期待していた手だったが最善手ではないだろう。33.Ra1 Rxd5 34.Nb7 ならaポーンが取れる。そうなれば黒の勝てる見込みはなかったと思う。

33...Be2

 33...a4 の方が本筋だったろうが残り時間2分では指し切れない(少なくとも私のような穏健派で年長の者にとっては)。

34.Re1 Rd1 35.Kf2 Rxe1 36.Kxe1

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36...a4??

 この手は残り時間1分に迫っていたので(毎手加算の30秒はあるが)ぱっと指した。36...Bc4 ならまだいくらか優勢だった。

37.Kd2??

 しかし暁氏はまだ10分残っていたのでここはe2のビショップを取る手が成立するかどうか腰を落ち着けて読むべきだったろう。次のようにこのビショップは取れたのである。

 37.d6! Kf8 38.d7 Ke7 39.Kxe2 a3 40.Nd6 a2 41.Nb7 Kxd7 42.Nc5+ Kd6 43.Nb3
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黒がこの収局をしのげるとは思えない。最初は楽観的でaポーンがナイトと相殺できると考えていたが、実際はそうはならない。例えば 43...e4 44.Ke3 Kd5 45.Na1 Ke5 46.Nc2!
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でd5の地点に地雷が仕掛けられて持ちこたえることができない。

37...a3 38.Kc3 Kf7 39.Nd6+ Ke7 40.Nf5+ Kf6 41.Ne3 e4

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42.Nc2??

 アレックス・バブーリンによれば 42.Kb3 が絶対で、やはり正しかった。もっとも今度は少なくとも私の直感も同じだった。想定手順は次のとおりである(対局後の検討で見つけた手順もいくつか入っている)。42...Ke5 43.Kxa3 Kd4 44.d6 Bb5 45.Kb4 Be8 46.Nf5+ Kd3 47.Nh4 e3 48.Nf3 Ke2
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49.Kc5 Kf2 50.Nd4 e2 51.Nxe2 Kxe2 52.Kd5 Kf2 53.Ke6 Kxg2 54.Ke7 Bc6 55.Kf6
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これで引き分けになる。

42...a2 43.Kd4 Bd3 44.Na1 Kf5 45.g3 Bb5 0-1

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 早すぎる投了のように思えるかもしれないが、白は次のように指す手がなくなる。46.Nc2 Ba4 47.Na1 Bd1 48.h3 Ba4 49.h4 h6 50.h5 Bd1 51.d6 Ke6 52.Kxe4 Kxd6
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(この号終わり)

2009年09月23日

世界のチェス雑誌から(53)

「Chess Life」2009年6月号(1/1)

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2009年トロフィーズ・プラス・オールアメリカチーム

 米国チェス連盟が待望の2009年オールアメリカチームを発表

 12月12日から14日にかけてフロリダ州オーランドで開催された2008年全国児童生徒選手権戦でチームメンバーが紹介された。2009年オールアメリカチームの各メンバーは米国チェス連盟の学校担当常務理事ジェリー・ナッシュからチームジャケットと盾を贈られた。

 オールアメリカチームは1987年に18歳以下の最強選手たちをたたえるために創設された。チームの一員に選ばれることは年少のチェス選手たちが達成できる国内最高の栄誉の一つで、年間の年齢、レイティング及び実績を基に選出される。今年の候補者たちは2008年1月1日現在の年齢と、2007年7月1日から2008年6月30日までの各大会後の最高レイティングとを基に選ばれた。

 オールアメリカチームは5年連続でアイオワ州の「トロフィーズ・プラス・オブ・テンプルトン」の後援を受けている。トロフィーズ・プラスの所有者のドイル・エンゲレン氏からはこの賞の支援に加えて国内大会のトロフィーと大会後のトロフィーの発送もお世話になっている。米国チェス連盟はトロフィーズ・プラス社(www.trophiesplus.com)が今年のオールアメリカチームの後援により学校教育チェスの一翼を担っていることを光栄に感じている。

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IMアレックス・レンダーマン、18歳
レイティング2552、ニューヨーク州
2005年世界少年少女選手権戦16歳以下の部優勝、2008年世界チェスライブ・グランプリ優勝。3年ほどで数学の教師になる予定で、現在は「学校にチェスを」でチェスを教えている。


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IMサルビユス・バーシス、18歳
レイティング2494、ニューヨーク州
2002年世界少年少女選手権戦14歳以下の部3位。米国選手権戦に2回出場。


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ダニエル・J・ラドウィグ、17歳
レイティング2454、フロリダ州
2006年米国マスターズ・チャンピオン、2004年米国新鋭チャンピオン、2004年世界少年少女選手権戦男子14歳以下の部4位。


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GM確定ロバート・L・ヘス、16歳
レイティング2538、ニューヨーク州
主な戦績-小学3年生国内チャンピオン(2001年カンザスシティ)、2005年世界少年少女選手権戦14歳以下の部で8/11で5位、2009年第4回スーパー・ナショナルズ優勝、2005年パリ選手権戦・2006年ラスベガスマスターズ・2007年カンヌオープンでIM基準獲得、2008年フォックスウッズ・2009年フォックスウッズ(7/9で同点優勝)・2009年SPICE春季招待3者同点でGM基準獲得。


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ダニエル・A・イェーガー、16歳
レイティング2376、ペンシルベニア州
2008年高校チャンピオン・デンカー大会優勝、2008年国内高校チャンピオン。


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ジョン・ダニエル・ブライアント、16歳
レイティング2373、カリフォルニア州
2007年アメリカン・オープン準優勝、2009年西部州オープンでGM2名を破り2400未満単独優勝


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IMサミュエル・L・シャンクランド、16歳
レイティング2369、カリフォルニア州
2009年米国ステート・チャンピオン・オブ・チャンピオンズ優勝、前年にはFIDEレイティングが2200から2450超へ急上昇した。ベトナムでの世界少年少女選手権戦18歳以下で同点1位で銅メダルを獲得。


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ウォーレン・ハーパー、16歳
レイティング2351、テキサス州
2007年米国新鋭チャンピオン、2007年高校チャンピオンズ・デンカー大会優勝、2007年テキサス州高校チャンピオン。


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マーク・タイラー・アーノルド、15歳
レイティング2422、ニューヨーク州
国際マスター基準を3度獲得、2006年米国新鋭チャンピオン、2007年米国青少年チャンピオン。


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マーク・ハイマン、14歳
レイティング2366、ペンシルベニア州
2008年第64回オハイオ州チェス大会単独優勝、この大会でレイティング31点を獲得しシニア・マスター位到達。


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FMマイケル・リー、14歳
レイティング2314、ワシントン州
2008年中学3年生チャンピオン、2005年小学6年生国内チャンピオン、2003年小学4年生国内チャンピオン、2005年からオールアメリカチームのメンバー。


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アレグザンダー・ハイマン、14歳
レイティング2289、ペンシルベニア州
7戦全勝で2007年中学3年生チャンピオン。


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ビクター・シェン、14歳
レイティング2265、ニュージャージー州
2006年学校生選手権戦の中学2年同点優勝、2007年世界少年少女選手権戦14歳以下で7点。


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FMアレック・ゲッツ、14歳
レイティング2265、ニューヨーク州
2008年第19回汎アメリカ少年少女チェス選手権戦16歳以下で金メダル獲得、同時にFIDEマスター位と国際マスター基準を獲得、4度の国内学生チャンピオン(中学2年、中学3年、中学3年ブリッツ、中学1年)


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IMレイ・S・ロブソン、13歳
レイティング2467、フロリダ州
現在米国最年少IM、2009年サムフォード奨学金獲得、2008年マイアミオープンと2008年フロリダ州選手権戦で同点優勝。


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パーカー・バイ・グアン・チャオ、13歳
レイティング2247、ニューヨーク州
2008年ニューイングランド・マスターズ4位(国際マスター基準獲得)、2007年フォックスウッズ2200以下1位、2005年中学3年選手権戦と2003年小学3年選手権戦で同点1位、2000年幼稚園選手権戦で優勝。

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(この号終わり)

2009年10月21日

世界のチェス雑誌から(54)

「L'Italia Scacchistica」2009年7・8月号(1/1)

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Momento decisivo!
決定的瞬間

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第2986問 飯沼対リーバー
白先白勝ち

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(2009全日本選手権戦)
1.Rg8+! 1-0

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(この号終わり)

2009年10月28日

世界のチェス雑誌から(55)

「Chess Life」2009年10月号(1/3)

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教育界

すごいぞロブソン

米国ジュニア選手権戦に優勝してIMレイ・ロブソンが世界ジュニア選手権戦と2010年米国選手権戦への出場資格を獲得した

記 FMアレックス・ベタネリ

YCM0055B.JPG サルビユス・バーシス

YCM0055C.JPG サム・シャンクランド

YCM0055D.JPG アレックス・レンダーマン

YCM0055E.JPG エリオット・リュー

YCM0055F.JPG マックス・コールマン

YCM0055G.JPG マイケル・リー

YCM0055H.JPG レイ・ロブソン

YCM0055I.JPG ジョエル・バナワ

 米国ジュニア選抜選手権戦が今年の7月12日から17日にかけてウィスコンシン州ミルウォーキー市で開催された。この都市はチェスの伝統が豊富で、有名な大会は少なくとも50年前までさかのぼる。1957年にボビー・フィッシャーが北部中央オープンで優勝して、大人の大会で快挙を収めた最初の頃の一つとなった。ウィスコンシンは歴史に残る偉大なチェス界の功労者たちの名前にちなんだ大会を開催して彼らをたたえている。例えばアーパド・イーロウ記念は今日まで少し修正して用いられているレイティングシステムを考案した物理学博士にちなんでいる。だから今度「イーロウ・レイティング」の「イーロウ」とは何かと聞かれたらわけの分からない頭字語だ答えるのはよして、レイティングの発明者のことを話して質問者を感心させて欲しい。

 平均レイティングが2454のこの大会は14歳の国際マスター(IM)のレイ・ロブソンが難なく優勝した。13歳で優勝というフィッシャーの記録には及ばないがそれでも大したものである。2751という実効レイティングをあげてレイは今年アルゼンチンで開催される世界ジュニア選手権戦の代表の座を獲得し2010年選抜米国選手権戦への出場資格を得た。これに加えて優勝賞金千ドル、米国チェス連盟のレイティング20点増加、それに2500の壁を楽に突破するFIDEのレイティングを付け加えればレイの満足度が十分に分かるというものである。

 レイ以外の参加者はもう二人のIM(サム・シャンクランドとサルビユス・バーシス)、一人のGM(アレックス・レンダーマンは次のFIDE総会で称号が承認されるのを待っているところである)、三人のFIDEマスター(ジョエル・バナワ、エリオット・リュー及びマイケル・リー)それに2008年米国ジュニアオープンの優勝者(マックス・コールマン)で、総当たりのリーグ戦で行われた。この大会は米国の参加者限定にもかかわらず国際大会のような雰囲気があった。つまりアレックスはロシア出身であり、サルビユスは家族と共にリトアニアから移住してきたし、ジョエルはフィリピンからやってきた。参加者はみな国際的な言語のチェスを最も流暢に話したのはいうまでもない。

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(この号続く)

2009年11月04日

世界のチェス雑誌から(56)

「Chess Life」2009年10月号(2/3)

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教育界

すごいぞロブソン(続き)

 次の試合はIMサム・シャンクランドが本誌のために特に解説してくれたものである。この試合には本大会に特徴的な多種多様な要素が現れていてこの大会をよく象徴している。その要素とは順位に関係のない激しく妥協のない戦い、重要な、時には直感で、決断が要求されるいくつかの急所の局面、相手の読みの積極的な妨害、別の作戦を選ぶ柔軟性、そして最も大切と思われるお互いへの敬意と協力的な真理追究の雰囲気で対局後の検討を行なうことである。サムの解説は分かり易くて読むのが楽しい。

自戦解説 IMサム・シャンクランド

シチリア防御スヘーファニンゲン戦法 (B84)
白 FMエリオット・リュー (2359)
黒 IMサム・シャンクランド (2553)
2009年米国ジュニア選抜大会第6回戦、2009年7月15日

 この大会はかなり出来が悪かった。この試合は2連敗後の対局である。最初の負けはルーク得でポカを指したことによるもので、次の負けは相手の22手の布局研究にはまったためである。エリオットも不調で、直前まで3連敗していた。しかしこのような状況でも我々はなんとか非常に面白い戦いをすることができた。

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6

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 このナイドルフ戦法が私の好きな定跡である。

6.Be3 e6 7.Be2!?

 これは良い手であるが全然別方向のスヘーファニンゲン戦法に行ってしまう。7.f3 b5 8.Qd2 Nbd7 9.O-O-O(9.g4 h6 10.O-O-O b4)ならほぼ主手順の範囲内である。

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7...Qc7

 この融通性のある手はカスパロフの好んだ手である。黒は 7...b5 と指したいのだが今のところは無理である。...Qc7 は黒がいつでも指したい手だが、b8のナイトはc6とd7のどちらが良いのかまだ不明である。7...b5? は 8.Bf3! e5(8...b4 9.e5 dxe5 10.Nde2 は白の戦力得になる)9.Nf5 で白が明らかに有利である。

8.a4

 この手は黒からの ...b5 を止めている。

8...b6

 黒がこの手を指さずに 8...Be7 9.O-O O-O 10.f4 Nc6 と指せば局面はスヘーファニンゲン戦法に移行する。

8.f4 Bb7 9.Bf3 Nbd7 11.Nb3

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 黒は ...Nc5 でe4のポーンを取る手を狙っていた。

11...Be7 12.O-O O-O 13.g4

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 このような手はこの種の戦型では普通の手である。白は自分のキングが何も切迫した状況にないのでキング翼の陣地を広げることができる。

13...Nc5

 この手はもう一つのナイトがd7に来れるようにするためである。

14.Nxc5

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14...bxc5!?

 14...dxc5 と取る手もあるが次のようにつまらない局面になるようである。15.e5 Rfd8 16.Qe2 Nd5 17.Nxd5 Bxd5 18.Bxd5 Rxd5 19.c4 Rd7 20.Rad1
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こうなれば引き分けの可能性が非常に高い。

15.g5 Nd7 16.Bg2

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 白は Rf3-h3 から Qh5 と指すつもりだが手数がかかる。

16...f5?!

 これは着想は良いのだがタイミングが悪かったかもしれない。私の見るところ白の唯一の現実的な作戦は Rf3-h3 から攻撃をかけることで、白ルークが既にその変な位置にいれば ...f5 がもっと効果的になる。しかし黒としても白の方から f5 と突いてくる可能性を常に警戒していなければならない。そこでその芽をすぐに摘むことにしたのだった。

 16...Rae8 なら 17.f5 exf5! 18.exf5(18.Rxf5 は 18...g6 19.Rf1 Qd8 20.h4 f6
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となって黒の十分満足できる局面だろう。この後 21.Nd5 fxg5 22.Nxe7+ Qxe7 23.Bxg5 Qe5 となれば黒が優勢である。)18...Bxg2 19.Kxg2 Qb7+ 20.Kg1 Qxb2 21.Nd5 Bd8
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となるがこの局面が非常に気に入らなかった。理由はd5のナイトが非常に強力だしキング翼の白陣の広さが攻撃の可能性を高めていると考えたからである。しかし実際にはあまり恐れることはなくて、この局面は黒の方が少し優勢かもしれない。

17.Qe2!

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 この手待ちは良い手だった。白は Qc4 を狙っている。

17...Rae8

 黒の狙いは ...fxe4 である。黒はすぐに 17...fxe4? と指したいのだが次の手順でうまくいかない。18.Bh3! e5(18...Rf5 黒は ...d5 と指せるならばこの交換損の犠牲が有効なのだがそれができない 19.Bxf5 exf5 20.Qc4+ Kf8[20...Kh8 は 21.Qf7 で白が良い]21.a5! 黒のナイトにb6に来させない。白が優勢である。代わりに 21.Nd5? は 21...Nb6! 22.Nxc7(22.Nxb6 は 22...Qxb6 で黒が ...d5 と指せて優勢である)22...Nxc4 23.Nxa8 Nxe3 24.Nb6 Nxc2
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で黒が二重に交換損だが2個の連結パスポーンと双ビショップが強力で白のルークはどちらもすぐには働かない。黒が優勢である。)[訳注 「18.Bh3! e5」のあとの手順ないしは解説が抜けています。]

18.Rae1 fxe4

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19.Nxe4

 19.Bxe4? d5 この手は ...dxe4 と ...d4 の両にらみである 20.Bxh7+ Kxh7 21.Qh5+ Kg8 22.Rf3
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白の攻撃は強力そうである。直感では黒が守り切れて勝つと思っていたが黒の次の手は気づかなかった。22...Bxg5! 23.Qxg5(23.fxg5 Rxf3 24.Qxf3 d4 白は指し切っていて駒損になり対角斜筋が弱い。完全にだめである。)23...d4 これで黒が駒損を取り戻す。ナイトがf6に行けばすべての弱点をカバーする。

19...d5 20.Ng3 Bd6

 黒は何か手がありそうに見えるが白が Qg4 と指した後では指し方が難しい。

21.Qg4

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21...Nb6

 21...d4 これがコンピュータの推薦手で黒が優勢だそうである。実戦ではビショップを強制的に下がらせて白ルークの利きを通させ白ナイトに恒久的なe4の安住の地を与えるのは良くないと考えていた。しかし具体的な手順を見るとそうでない。22.Bxb7 Qxb7 23.Bc1 Qd5 24.Ne4 c4
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このあと黒は ...Nc5 と指して優勢である。

22.Bc1 Bc8 23.b3 e5

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24.Qh4

 これは積極性に欠けた手だった。24.f5!? なら a5 から Bxd5+ が狙える。以下 24...e4 25.g6!(25.c4 は Bxg3! 26.hxg3 g6 で黒も指せる局面のようだがまだまだ難しい。)25...hxg6(25...h6 は前の変化でg6の地点が使えないことが決定的に違う。26.c4 で白が主導権を握る。)26.Qxg6 Be5 27.c4
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となって難解な局面である。

24...exf4 25.Rxe8 Rxe8

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26.Bxf4!

 エリオットが a5 突きで賭けに出なかったのは正しい判断だった。例えば 26.a5 fxg3 27.axb6 gxh2+ 28.Kh1 Qxb6!-この手は局後の検討で見つかった。初めは二人とも黒がd5を守るために ...Qc6 か ...Qb7 と指さなければいけないと思っていた。-29.Bxd5+ Be6-白が指せているように見えるが実際は黒には何の危険もなく白の負けである。-30.Be4 g6 31.Bb2 c4
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これで Bxg6 にはいつでも ...Bd5+ がある。...Qg1# があるので白はルークを最下段から動かすこともできない。黒は戦力的に優勢で、最初はそう見えないかもしれないが白キングの方が黒キングよりはるかに危険な状態である。

26...Bxf4 27.Qxf4 Qxf4 28.Rxf4

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 あとはもう指す余地がほとんどない。

28...a5 29.Kf2 Re5 30.h4 Be6 31.Bf3 Nc8 32.Bg4 Bxg4 33.Rxg4 Nd6 34.c3 c4

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35.bxc4

 局面の均衡を崩すなら 35.b4 が最後の機会だがうまくいかないようである。35...axb4 36.cxb4 c3 で黒の方が完全に速い。

35...Nxc4 引き分け

 激戦が平和的に終結した。

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(この号続く)

2009年11月11日

世界のチェス雑誌から(57)

「Chess Life」2009年10月号(3/3)

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教育界

すごいぞロブソン(続き)

 平和的な引き分けはほとんどなかったので、主催者の一人のアシシュ・バーヤは表彰式で参加者全員の闘志を褒めたたえた。選手はみな、大会の終わりに記念のジャージーを贈呈してくれた大リーグチームのミルウォーキーブリュワーズを良い思い出として忘れないだろう。このチームはずっとチェスを支援し若者の心の成長を励ましていることを高く評価されている。

 選抜大会に先駆けて2009年米国ジュニアオープン大会が開催された。サム・シャンクランドが21歳未満部門の優勝トロフィーをエリック・ローゼン(イリノイ州)に授与し、来年のジュニア選抜大会の最初の公式参加者となったエリックを歓迎した。エリックはケビン・ブー(ミネソタ州)と共に4½点をあげたがスリル満点の一発勝負で勝って優勝した。

 この大会は米国チェス連盟、バヤ国際チェス学園それにウィスコンシンチェス学園の共催だった。インターネット・チェスクラブが大会の実況中継を行なった。ウィスコンシン学校教育チェス協会は大会の円滑な運営を助けた。素晴らしい対局会場を提供してくれたラマダ・ホテルには特別の感謝を表したい。大会会長、主任カメラマン、それに各種の社会活動と関連催しの実行者として働いたフランク・ベリーには最高の謝辞を送りたい。

2009年米国ジュニア選抜選手権戦
2009年7月13日-16日、ウィスコンシン州ミルウォーキー



#選手 12345678合計
1IMレイ・ロブソン2557XX½111½116
2IMサルビユス・バーシス2503½XX½½1½115
3IMアレックス・レンダーマン26360½XX½11014
4IMサミュエル・シャンクランド25530½½XX01½1
5FMマイケル・リー24060001XX1½1
6FMジョエル・バナワ2408½½000XX113
7FMエリオット・リュー2359001½½0XX½
8CMマックス・コールマン2182000000½XX½

2009年米国ジュニア選抜選手権戦
開催日 2009年7月13-16日
場所 ウィスコンシン州ミルウォーキー、ラマダ・ミルウォーキーホテル会議室
順位 1位 レイ・ロブソン 6点、2位 サルビユス・バーシス 5点、3位 アレックス・レンダーマン 4点、4-5位 サミュエル・シャンクランド、マイケル・リー 3½点、6位 ジョエル・バナワ 3点、7位 エリオット・リュー 2½点、8位 マックス・コールマン ½点
主審 フランク・ベリー
参加補助費 各選手に諸経費の援助として300ドルずつ

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(この号終わり)

2009年11月18日

世界のチェス雑誌から(58)

「British Chess Magazine」2009年10月号(1/4)

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棋譜のデパート

 IMサム・コリンズ - 意見感想はsamcollins@bcmchess.co.ukまで

 この講座では大会を丸ごと取り上げることはめったにないが、それが今月やろうと思ったことである。新潟親善チェス大会は日本の最も楽しい催しの一つで、美しい庭園でとても素晴らしい打ち解けた雰囲気の中で開催された。この快速大会の優勝賞品は自転車だった。大会後選手たちは長い宴会にふけり、チェスの話をしたり最近の日本チャンピオン同士で「新旧」の相談試合をしたりした。

 この大会で私の指した全4局を短い解説でおおくりする。比較的楽な航海だったが最終局だけは非常に問題があった。ちょっと軽めではあるが内容を楽しんでいただけたらと思う。

新潟親善チェス大会
白 サム・コリンズ
黒 山本大輔

カロカン防御パーノフ攻撃 [B14]

1.e4 c6 2.d4 d5 3.exd5 cxd5 4.c4 Nf6 5.Nc3 e6 6.Nf3 Bb4 7.cxd5 Nxd5

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8.Qc2

 8.Bd2 もある。

8...O-O 9.Bd3 h6 10.O-O Nc6 11.Rd1 Nf6

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 黒は有力な防御陣形のどれも採用しなかった。特にどうして ...h6 と ...Nf6 の両方を指す必要があるのか理解しづらい。勝とうとするならばそもそもポーンをかすめとることを考えなければならない。8...Nc6 9.Bd3 Ba5 10.a3 Nxc3 11.bxc3 Nxd4! 12.Nxd4 Qxd4
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白のポーン損の代償はキャッスリングしていない黒キングへの攻撃にある。

12.a3 Be7 13.Bf4 Bd7

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14.Qe2

 すぐに 14.d5 と突くのが良いタイミングのように見えるが、そのような仕掛けは黒がうまく立ち回ればどうしようもない引き分け模様の局面にしかならない。私の考えるところでは次の手順でできる。14...exd5 15.Nxd5 Nxd5 16.Bh7+ Kh8 17.Rxd5
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白の見た目に圧倒的な態勢は次のように2手の的確な応手で無力にできる。17...Qc8 18.Rad1 Be6 19.Rh5 Bg4 20.Bf5 Bxf5 21.Rxf5 Rd8 22.Rxd8 Nxd8
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これで闘いが終息しそうである。

14...Qb6 15.Bc2 Nd5 16.Qd3 f5 17.Nxd5 exd5

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18.Re1 Bf6 19.Ne5 Be6 20.Nxc6 Qxc6 21.Rac1

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 駒の働きの良さと二つの素通し列を制して白にとっては願ってもない局面である。

21...Qd7 22.Be5 Rac8 23.h3 Rc6 24.Rcd1 Qf7

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25.Ba4 Rcc8 26.Bb3 a6 27.Qf3

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27...g6??

 27...Bxe5 の方が良いがどちらで取り返しても白がはっきり優勢である。

28.Bxf6 Qxf6 29.Rxe6 Qxe6 30.Bxd5 1-0

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(この号続く)

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